説明

手術用ガウン

【課題】医療器具などのあらゆる手術具を保持することができ、手術中における医療器具の交換を、助手の補助を受けずに、迅速かつ正確に行うことができる手術用ガウンの提供。
【解決手段】前身頃と後身頃とからなる身頃本体と、該身頃本体の上端部の両側から伸びた両袖とからなる手術用ガウンであって、上記前身頃の表面の、少なくとも、着用者の胸部に対応する部分に、手術具を保持するための保持部材を着脱自在に係合する、面ファスナーを固着してなることを特徴とする手術用ガウン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術用ガウンに関する。さらに詳しくは、手術時における医療器具の交換を迅速かつ正確に行うことを可能にする手術用ガウンに関する。
【背景技術】
【0002】
手術には、数多くの医療器具を必要とする。例えば、眼科手術においては、メス、剪刀、鉗子、開瞼器、鑷子、持針器又は止血棒などの様々な種類の医療器具が必要であり、また、同じ種類の医療器具であっても、手術の状況や患者の状態などに応じて、形状や大きさの違うものを使い分ける必要もある。このため、手術の内容にもよるが、例えば、白内障手術においては、同じものも含めて、50〜60個位の医療器具が予め用意される。そして、これらの医療器具は、手術の状況に応じて頻繁に交換して使用される。
【0003】
従来、手術中における医療器具の交換は、看護師などの助手が、器具台などに用意しておいた医療器具の中から、手術者の指示によるものを取り出し、手術者に直接手渡しすることにより行われている。これは、手術者自身が医療器具の交換を行うとすると、適切な医療器具を見つけ出すのに手間取ったり、度重なる視点の変更を強いられたりして、円滑な手術を妨げる場合があるからである。
【0004】
一方、医療器具の交換を助手が補助する場合であっても、助手は手術者の指示を待って補助することから一定の時間が必要となり、必ずしも迅速な処置ができているとはいえなかった。また、手術者と助手のタイミングにズレが生じた場合においては、手術者のリズムが乱されたり、医療器具の鋭利部分に手術者の手が触れて怪我したりする可能性もあった。さらに、上述したように、手術には数多くの医療器具が予め用意されることから、手術者と助手の意思疎通がうまくいかない場合には、手術者が望む医療器具と異なったものが手渡されることがあり、円滑な手術を行えないこともあった。
【0005】
また、手術には、上述した医療器具以外にも、筆記具、時計又は眼鏡などの患者の処置に直接は用いないものも必要とされる場合がある。しかし、手術者は、手術用ガウンにより全身が覆われた状態となるため、これらを身に着けることができず、また、上述したように、これらを器具台の上に準備しておいた場合には、使用時に、これらを見つけ出すのに手間取ったり、手術者の視点の変更を強いられたりして、円滑な手術を妨げてしまう問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、医療器具、筆記具、時計又は眼鏡などの手術具(手術に用いる器具や道具全般を「手術具」という。)を保持することを可能にし、また、手術中における医療器具の交換を、助手の補助を受けることなく、迅速かつ正確に、行うことを可能にする手術用ガウンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に挙げた課題は、以下の本発明により解決される。すなわち、本発明は、前身頃と後身頃とからなる身頃本体と、該身頃本体の上端部の両側から伸びた両袖とからなる手術用ガウンであって、上記前身頃の表面の、少なくとも、着用者の胸部に対応する部分に、手術具を保持するための保持部材を着脱自在に係合する、面ファスナーを固着してなることを特徴とする手術用ガウンである。
【0008】
また、本発明の手術用ガウンは、着用者の胸部に対応する部分に固着される面ファスナーの形態が、縦50mm〜250mm、横100mm〜300mmの大きさの鳥居型形状であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の手術用ガウンは、前記保持部材が、複数の面ファスナーを組み合わせることにより、手術具を保持する部分と、手術用ガウンに固着された面ファスナーに係合する部分とを、形成させていることが好ましく、前記保持部材における手術具を保持する部分が、基材となる面ファスナーと、該面ファスナーの裏面に、表面の一部を対面させた面ファスナーとにより形成されている形態や、前記保持部材における手術具を保持する部分が、基材となる面ファスナーと、該面ファスナーの裏面からリング状に突出した、互いに係合可能な2つの面ファスナーとにより形成されている形態や、前記保持部材における手術具を保持する部分が、1の面ファスナーを長さ方向に折り返して裏面同士を対面させることにより形成されている形態にすることができる。
【0010】
また、本発明の手術用ガウンは、前記保持部材が、複数の、手術具を保持する部分を有していることが好ましく、また、本発明の手術用ガウンは、さらに、前記袖の表面の、着用者の上腕部に対応する部分に、手術具を保持するための保持部材を着脱自在に係合する、面ファスナーを固着していることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、医療器具などのあらゆる手術具を保持することができ、手術中における医療器具の交換を、助手の補助を受けずに、迅速かつ正確に行うことを可能にする手術用ガウンを提供することができる。すなわち、本発明によれば、円滑な手術を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の手術用ガウン1の一実施形態を示す正面図であり、前身頃2の表面側から見た状態を示す図である。本発明の手術用ガウン1は、図1に示すように、手術時に医師又は看護師などの助手が着用するガウンであり、その基本的な形態は、一般的に使用されている手術用ガウンと同様に、前身頃2と後身頃3とからなる身頃本体と、該身頃本体の上端部の両側から伸びた両袖4とから構成されている。
【0013】
図2は、本発明の手術用ガウン1の一実施形態に保持部材11を係合させた状態を示す正面図である。本発明の手術用ガウン1の特徴は、図1又は図2に示すとおり、一般的に使用されている手術用ガウンの前身頃2の表面のうち、少なくとも、着用者の胸部に対応する部分に、手術具21を自在に保持するための保持部材11を着脱自在に係合する、面ファスナー10を固着してなることにある。すなわち、本発明の手術用ガウン1は、手術者が着用する場合においては、手術者の目が向きやすく、手の届きやすい場所、さらには、手術の邪魔にならない場所に、手術具21を自在に保持できるようになる。これにより、手術者自らの手により、迅速で正確な医療器具21の交換を行うことが可能となる。また、助手が手術用ガウン1を着用する場合においても、手術者は手術具21の交換を助手の手術用ガウン1から直接に行うことができる。また、本発明の手術用ガウン1は、手術具21を保持する保持部材11を、面ファスナーを用いることで手術用ガウン1から自在に着脱できるようにしたものである。これにより、手術の内容などによって、手術用ガウン1に保持させる手術具21を最適な配置に変更することが可能となり、医療器具21の交換をより円滑に行うことができるようになる。本発明において、着用者の胸部に対応する部分に固着させる面ファスナー10は、具体的には、前身頃2の襟刳り部分から下方に向けて、50mm〜300mmの範囲のいずれかの位置に固着されていることが好ましく、さらには、100mm〜250mmの範囲のいずれかの位置に固着されていることがより好ましい。
【0014】
本発明において、着用者の胸部に対応する部分に固着される面ファスナー10は、手術具21を保持するための保持部材11を着脱自在に係合できるように、その表面側を手術用ガウン1の前方に向けた状態で固着される(図1又は図2参照)。また、この面ファスナー10の形態は、特に制限はないが、図1に示すような、鳥居型形状であることが好ましく、その大きさは、縦50mm〜250mm、横100mm〜300mmであることが好ましい。より好ましくは、縦80mm〜200mm、横150mm〜250mmの大きさである。さらに、この形態において、2本の横線部分の間は10mm〜40mmの範囲内であることが好ましい。このような形態にすることにより、数多くの保持部材11を配置することができるようになるとともに、配置させた保持部材11同士(又はこれに保持された手術具21同士)が重なってしまうのを防止できる。さらに、保持部材11や手術具21が、着用者の腹部付近の前方に位置する手術台や患者に触れてしまうのを防止することができる。また、本発明において、手術用ガウンに固着される面ファスナー10は、上述した鳥居型形状以外にも、複数の、例えば3本の横線の面ファスナーにより形成される形状や、複数の、例えば4本の縦線の面ファスナーにより形成される形状や、着用者の胸部に対応する部分全体を面ファスナーで覆う四角形状に形成させることもできる(図示なし)。これらの形状においても、上述した大きさの範囲内にすることが好ましい。
【0015】
このような面ファスナー10の手術用ガウンへの固着方法は、例えば、面ファスナー10を手術用ガウンに縫い合わせたり、面ファスナー10を手術用ガウンに粘着剤や接着剤で貼り付けたりするなどして行うことができるが、固着力の強い縫い合わせによる固着方法が好ましい。
【0016】
図3〜図5は、保持部材11の好ましい実施形態を示す斜視図である。保持部材11は、手術具を自在に保持する部分12と、手術用ガウンに固着される面ファスナー10に着脱自在に係合する部分13を有するものであれば、特に制限はないが、これに保持させる手術具21の種類に応じて、最適な形態にすることが好ましい。例えば、各手術具21を保持するのに最適な形態は、例えば、複数の面ファスナーを組み合わせることにより容易に形成させることができる。以下、複数の面ファスナーを組み合わせて形成させた保持部材11の好ましい形態について説明する。
【0017】
保持部材11の第1の好ましい形態としては、図3に示すような、手術具を保持する部分12が、基材となる面ファスナーと、該面ファスナーの裏面に、表面の一部を対面させた面ファスナーとにより形成されている形態が挙げられる。この形態においては、図7又は図8に示すとおり、手術具を保持する部分12、すなわち、2つの面ファスナーが対面している部分に手術具21を抜差自在に保持させることができる。また、この部分に保持させた手術具21は、面ファスナーの、植毛されている表面側と、そうでない裏面側に、それぞれ接した状態となり、適度な力で保持されることとなる。このため、手術具21を保持している間は、手術具21の落下を防止することができ、一方で、手術具21を使用する際は、手術具を保持する部分12から手術具21を容易に引き抜くことができる。
【0018】
この形態の保持部材11は、さらに、保持させる手術具21の形状や大きさなどに応じて、さらに最適な形態に形成させることができる。例えば、鑷子やスパーテルなどの手術具21を保持させるのに最適な保持用面ファスナーの形態としては、その手術具を保持する部分12が、図3(a)に示すような、基材となる面ファスナーの裏面側から表面側へ、細幅の面ファスナーの両端部を貫通させた後、この両端部の表面を基材となる面ファスナーの表面と係合させることにより形成される形態が挙げられる。さらに、この形態においては、図8に示すように、細幅の面ファスナーの対面している部分の長さが、保持させる手術具21の幅と同程度となるように調整されている。この形態は、最も簡易的な形態であり、設置場所をとらないため、数多く配置することができ有用である。
【0019】
また、眼鏡や鉗子などの細長い部分を有する手術具21を保持させるのに最適な保持部材11の形態は、図3(b)に示すような、その手術具を保持する部分12が、保持させる手術具21の長さに合わせて縦長状にした基材となる面ファスナーの裏面に、表面が対面するように複数の細幅の面ファスナーを巻きつけた後、これらを係合させることにより形成される形態が挙げられる。この形態において、複数の細幅の面ファスナーは、保持させる手術具21の長さにより所定間隔離れて設けられている。この形態において、例えば、眼鏡を保持させる場合は、折りたたんだ状態の眼鏡のつる側を保持部材11の表側に向けた状態で、眼鏡の片側のつるを、面ファスナーが対面している2つの部分、すなわち、手術具を保持する部分12に差し込んで保持させることができる(図7(d)参照)。これにより、眼鏡の蝶番部分が、上方に位置する細幅の面ファスナーの側面に引っかかる状態となり、安定的に保持されるとともに、眼鏡の抜き取りも容易となる。
【0020】
また、時計などの横長の手術具21を保持させるのに最適な保持部材11の形態は、図3(c)に示すような、その手術具を保持する部分12が、保持させる手術具21の横幅に合わせて横長状にした基材となる面ファスナーの裏面に、表面が対面するように面ファスナーを巻きつけた後、これらを係合させて形成される形態が挙げられる。さらに、この形態において、保持させる手術具21が重量のあるものの場合は、図3(c)に示すように、落下防止のための受け部分14を形成させることができ、例えば、時計を保持させる場合は、図7(c)に示すように保持させる。この受け部分も面ファスナーの組み合わせにより形成できる。
【0021】
また、保持部材の第2の好ましい形態としては、図4に示すような、その手術具を保持する部分12が、基材となる面ファスナーと、該面ファスナーの裏面からリング状に突出した、互いに係合可能な2つの面ファスナーとにより形成されている形態が挙げられる。この形態においては、図7(a)に示すとおり、手術具を保持する部分12、すなわち、2つのリング状の面ファスナーが対面している部分に、手術具21を挟持自在に保持させることができる。また、この形態においては、図7(b)に示すとおり、2つのリング状の面ファスナーのリング部分に、鑷子などの二股状の手術具21の各脚を挿入させて保持させることもできる。この形態において、基材となる面ファスナーとリング状の面ファスナーとは、リング状の面ファスナーの両端部を基材となる面ファスナーの裏面側から表面側に貫通させた後、この両端部の表面を基材となる面ファスナーの表面と係合させることにより組み合わせることができる。また、このリング状に突出させる面ファスナーの突出部分の長さは、例えば、10mm〜30mmにすることが好ましい。
【0022】
また、保持部材の第3の好ましい形態としては、図5に示すような、その手術具を保持する部分12が、1の面ファスナーを長さ方向に折り返して裏面同士を対面させることにより形成されている形態が挙げられる。この形態においては、図7(e)又は図8に示すとおり、手術具を保持する部分12、すなわち、2つの面ファスナーが対面している部分に手術具21を抜差自在に保持させることができる。この形態において、手術具21は、面ファスナーの裏面同士の間に接した状態で保持されることとなるため、面ファスナーの面による保持力は弱いが、一方で、面ファスナーの折り返しによる受けが形成されているため、この受けにより手術具21を安定的に保持できる。この形態において、面ファスナーの裏面同士を対面させた状態は、図5に示すとおり、他の面ファスナー15をこの対面部分の周りに係合させることにより維持させることができる。また、この形態は、1の面ファスナーを長さ方向に複数回折り返すことで、裏面同士が対面している部分を複数形成させることもできる(図5(a)参照)。また、この形態では、図5又は図8に示すように、保持させた手術具21が倒れたり、落下したりしないように、細幅の面ファスナー16を予備的に設置させていてもよい。
【0023】
保持部材11は、これ以外にも、保持させる手術具21の種類に応じて、様々な形態にすることができる。例えば、図6に示すように、別々の面ファスナーの裏面同士を対面させた状態にし、さらに、別の面ファスナーを用いて、この対面部分の密着度を調整できるようにした形態が挙げられる。また、保持部材11には、上述したような、手術具を保持する部分12以外にも、他の機能を備えた補助部を有していてもよい。例えば、先端から水が流出する洗浄器具などを保持させる場合においては、保持させた洗浄器具の先端から水が漏れて手術用ガウンなどが汚されてしまうのを防止するため、この先端部分を包んで水を溜めることができる小袋状の補助部を備えることができる(図示なし)。
【0024】
さらに、本発明においては、保持部材11が、例えば、図8に示すような、上述したような、複数の、手術具を保持する部分12を有した形態であってもよい。また、このような形態は、図8に示すように、上述した鳥居型形状をした手術用ガウンに固着される面ファスナーの横線部分に着脱自在に係合できるような配置の形状にすることができる。このような形状をした形態にすることにより、手術の内容ごとに最適な手術具21の配置位置を予め設定しておくことが可能となるので、手術を直ぐに開始できる利点がある。
【0025】
なお、手術者が本発明の手術用ガウン1の着用者である場合、手術用ガウン1の着用者(手術者)の胸部に対応する部分に保持させる手術具21としては、交換頻度の高い医療器具21であることが好ましい。すなわち、手術者の胸部付近は、手術者の目が向きやすく、手が届きやすい場所であることから、手術者自身が医療器具21を確認して交換するのを最も無駄なく行うことができる場所であるからである。また、この部分に保持させる医療器具21は、手術者が、主として右手で扱うものを左胸部付近に、主として左手で扱うものを右胸部付近に、それぞれ、配置させておくことが好ましい。これにより、より円滑で無駄のない医療器具21の交換が可能となる。また、助手が本発明の手術用ガウン1の着用者である場合においても、手術具21の交換が容易な箇所、すなわち、着用者(助手)の胸部に対応する部分に、交換頻度の高い医療器具21を保持させることが好ましい。
【0026】
また、本発明の手術用ガウン1は、図1又は図2に示すように、前身頃2表面の着用者の胸部に対応する部分以外にも、面ファスナー10を固着させることで、手術具21を保持するための保持部材11を着脱自在に係合できるようにしてもよい。例えば、前身頃2の表面のうち、着用者の太もも部に対応する部分(図1又は図2参照)や、着用者の肋骨部に対応する部分などに面ファスナー10を固着することができる。これらの部分には、交換頻度の少ない、予備的な医療器具21や、医療器具以外の手術具21を保持させることが好ましい。例えば、着用者の太もも部に対応する部分には、交換を要しない時計を保持させることが好ましい。当該部分に時計を保持させることにより、手術時に、太ももを多少上げるだけで、簡単に時間の確認を行え得る。一方、着用者の腹部に対応する部分は、手術の際、手術者の前方に位置する手術台や患者に接触しやすい場所であるため、手術具21の保持はなるべく避けた方が好ましい。
【0027】
本発明の手術用ガウン1は、さらに、図1又は図2に示すように、前身頃2以外にも、面ファスナー10を固着させることで、手術具21を保持するための保持部材11を着脱自在に係合できるようにしてもよい。例えば、袖4の表面の着用者の上腕に対応する部分に、面ファスナー10を固着することができる。この部分に保持させる手術具21は、眼鏡などの、予備的で交換頻度の少ない手術具21や、大き目の手術具21を好ましく保持させることができる。なお、後身頃3は、手術者の目が届きにくく、また、保持させる手術具21を手に取ることが難しい場所であることから、手術具11を保持させるために、面ファスナーを固着させる場所として好ましくない。
【0028】
本発明に用いる面ファスナーとしては、市販されているいずれのものも使用できる。例えば、伸和社製の商品名「マジクロス」に代表される、一対の面ファスナーの面上にフックの機能とループの機能をそれぞれ別々に設けることにより、当該面同士を密着させて係合する方式のものや、例えば、クラレ社製の商品名「自由自在バンド」に代表される、1枚の面ファスナーの面上にフックとループの機能を両方備えており、当該面同士を密着させて係合する方式のものを使用できる。なお、本発明において、面ファスナーの「表面」とは、フック及び/又はループの機能を有した面のことであり、面ファスナーの「裏面」とは、表面の反対側の面であり、フック及びループの機能を有しない面のことである。また、面ファスナーの素材は、特に限定はないが、例えば、手術糸などに用いられるナイロン樹脂製のものを好ましく用いることができる。また、これらの面ファスナーを、自由に組み合わせたり、加工したりして、上述したような形態に形成させる。
【0029】
また、本発明の手術用ガウン1は、保持部材11上に絵柄模様、例えば、キャラクターデザインなどを施すこともできる。これにより、手術時に、患者を和ませることが可能となる。
【0030】
図10は、本発明の手術用ガウン1を着用した状態を示す正面図である。図10に示すとおり、本発明の手術用ガウン1は、従来、一般的に使用されている手術用ガウンと、同様の方法で着用することができる。例えば、図1や図10に示される形態の本発明の手術用ガウン1は、以下のようにして着用できる。先ず、前身頃2を着用者の前面にした状態で両袖4に腕を通した後、襟刳りの部分に設けられた1対の襟刳り用面ファスナー6と紐7で左右の後身頃3の上端部分を連結する。次に、左右後身頃3の自由縁側を着用者の背中部分で合わせた後、この左右後身頃3の側縁部と前身頃2にそれぞれ設けられている腰帯5を結びつけることにより、手術用ガウン1は着用できる。本発明の手術用ガウン1は、このようにして着用した後、その表面に固着された面ファスナーに、手術具を自在に保持するための保持部材11を係合させ、さらに保持部材11に手術具21を保持させることにより使用できる。また、着用者が手術用ガウン1を着用する前に、予め、保持部材11を係合させたり、手術具21を保持させたりしておいてもよい。このように予め手術用ガウン1に手術具21を、しかも、手術の内容に適した配列で保持させておくことで、手術を行う前に、本発明の手術用ガウン1は手術具21と一括して消毒することが可能となる。これにより、手術者は、手術用ガウン1を着用するだけで手術に取り掛かることができ、迅速な手術を行うことが可能となる。つまり、手術を行う間際になって、手術具21や手術用ガウン1をそれぞれ個別に消毒したり、手術具21を消毒した後、これを器具台に配列させたりする煩雑な作業をなくすことが可能である。また、本発明の手術用ガウン1は、エチレンオキサイドなどのガス滅菌や、紫外線照射滅菌などにより、消毒することができる。
【0031】
以上のように使用する本発明の手術用ガウン1に加えて、手術時には、さらに、図9に示すように、帯状の面ファスナーと、該帯状の面ファスナーと着脱自在に係合する、手術具を保持するための保持部材11とからなるリストバンド31を用いてもよい。このようなリストバンドにおいて、帯状の面ファスナーは手術者の手首の大きさに合わせて長さを調整できるように形成されており、また、保持部材11は、上述したような形態に形成させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、医療器具などの手術具を保持することができ、また、手術中における医療器具の交換を、助手の補助を受けることなく、迅速かつ正確に、行え得る手術用ガウンを提供することができる。したがって、本発明の手術用ガウンは、安全かつ短時間に行うことが要求される眼科手術などの外科手術に着用する手術用ガウンとして最適であり、これにより、円滑で、患者負担の少ない手術を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の手術用ガウンの一実施形態を示す正面図。
【図2】本発明の手術用ガウンの一実施形態に保持部材を係合させた状態を示す正面図。
【図3】保持部材の好ましい形態を示す斜視図。
【図4】保持部材の好ましい形態を示す斜視図。
【図5】保持部材の好ましい形態を示す斜視図。
【図6】保持部材の好ましい形態を示す斜視図。
【図7】保持部材に手術具を保持させた状態を説明する正面図。
【図8】保持部材に手術具を保持させた状態、及び、複数の手術具を保持する部分を有する保持部材を説明する正面図。
【図9】リストバンドを説明する正面図。
【図10】本発明の手術用ガウンを着用した状態を示す正面図。
【符号の説明】
【0034】
1:手術用ガウン
2:前身頃
3:後身頃
4:袖
5:腰帯
6:襟刳り用面ファスナー
7:紐
10:手術用ガウンに固着される面ファスナー
11:保持部材
12:手術具を保持する部分
14:受け部分
21:手術具(医療器具)
31:リストバンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃と後身頃とからなる身頃本体と、該身頃本体の上端部の両側から伸びた両袖とからなる手術用ガウンであって、上記前身頃の表面の、少なくとも、着用者の胸部に対応する部分に、手術具を保持するための保持部材を着脱自在に係合する、面ファスナーを固着してなることを特徴とする手術用ガウン。
【請求項2】
着用者の胸部に対応する部分に固着される面ファスナーの形態が、縦50mm〜250mm、横100mm〜300mmの大きさの鳥居型形状である請求項1に記載の手術用ガウン。
【請求項3】
前記保持部材が、複数の面ファスナーを組み合わせることにより、手術具を保持する部分と、手術用ガウンに固着された面ファスナーに係合する部分とを、形成させている請求項1又は2に記載の手術用ガウン。
【請求項4】
前記保持部材における手術具を保持する部分が、基材となる面ファスナーと、該面ファスナーの裏面に、表面の一部を対面させた面ファスナーとにより形成されている請求項3に記載の手術用ガウン。
【請求項5】
前記保持部材における手術具を保持する部分が、基材となる面ファスナーと、該面ファスナーの裏面からリング状に突出した、互いに係合可能な2つの面ファスナーとにより形成されている請求項3に記載の手術用ガウン。
【請求項6】
前記保持部材における手術具を保持する部分が、1の面ファスナーを長さ方向に折り返して裏面同士を対面させることにより形成されている請求項3に記載の手術用ガウン。
【請求項7】
前記保持部材が、複数の、手術具を保持する部分を有してなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の手術用ガウン。
【請求項8】
さらに、前記袖の表面の、着用者の上腕部に対応する部分に、手術具を保持するための保持部材を着脱自在に係合する、面ファスナーを固着させた請求項1〜7のいずれか1項に記載の手術用ガウン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−249759(P2009−249759A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98580(P2008−98580)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(504332920)
【出願人】(508104499)
【Fターム(参考)】