説明

手術進捗告知装置及び手術進捗告知用プログラム

【課題】手術の進捗を手術室外において人手を要することなく正確且つリアルタイムに認識し得ることで、結果的に当該手術後の関連業務等を円滑に行うことが可能となる進捗告知装置を提供する。
【解決手段】手術室OPにおける手術の進捗を当該手術室OPにおける消費電力量の時間変化により検出する処理部50と、検出された進捗を手術が行われている手術室OP外に告知するディスプレイ61等と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術進捗告知装置及び手術進捗告知用プログラムの技術分野に属する。より詳細には、手術室内における手術の実際の進捗状況を告知する手術進捗告知装置及び当該手術進捗告知装置用のプログラムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、医学の多様化等の理由により、一般の病院における手術の需要性が従来よりも増している。
【0003】
一般に、一つの手術を行う場合には、その付帯業務として、例えば、患者に対する手術準備及びその搬送、手術を担当する医師や看護師の手配、手術用器具の滅菌等や手術用機械の搬入/準備、或いは手術後の患者が搬入されるべき病室の準備等、様々な業務が発生する。
【0004】
一方、一つの病院内における手術室や担当医師等の数は限られているため、各手術を効果的且つ安全に行うためには、上述した付帯業務を含めて複数の手術全体を計画的に行う必要がある。この必要性は、近年の医師や看護師の不足等に起因して増大している。また、そもそも適正看護要員数が定められていないことも上記必要性を増大させる問題の一つである。
【0005】
このような要請に応えて開発された技術としては、例えば下記特許文献1に開示されているものがある。この特許文献1に開示されている技術は、各手術の予定や実際の手術における進捗を、当該予定にあっては手術全体の管理者が、また実際の手術の進捗にあっては実際に手術を行っている看護師や医師が入力し、それら入力結果をデータとして蓄積して統計的に処理/表示することとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−122174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されている技術は、複数の手術についてその予定と実績とを統計的に検討するためのものでしかなく、実際に行われている手術の進捗を外部に告知する点については全く考慮されていない。このため、当該手術が行われている手術室外では当該手術の実際の進捗状況をリアルタイムに認識することができず、結果として当該手術に関連付けて行われるべき業務に支障が出るという問題点があった。
【0008】
当該問題点としてより具体的には、例えば、その手術対象たる患者が術後に収容される病室の用意に関連する業務、当該手術の次に予定されている別の手術の準備業務、当該別の手術に当たる医師や看護師の割り当て業務、或いは救急の患者に対する手術実施の可否を判断する場合等において、現在実行されている手術の進捗及びある程度の精度を持ったその終了時期の予測等が不可能であることに起因する種々の支障(具体的には、医療スタッフの業務効率にムラが発生する等)が発生していた。ここで、当該医療スタッフとして具体的には、例えば、医師、臨床工学技師、看護師、看護補助者(看護助手とも呼ばれる)等が挙げられる。
【0009】
また、上述した特許文献1に開示されている技術では、手術中におけるその進捗については、当該手術室内にいる担当者(実際には看護師等)が直接手動で手術が開始された旨等を入力する操作を行う必要ある。従って、迅速性が重要視される高度な手術や看護師等が十分でない場合においては、そのような入力操作を行うこと自体が実際には不可能な場合が多いという問題点もある。
【0010】
そこで、本発明は上記の各問題点に鑑みて為されたもので、その課題は、手術の進捗を手術室外において人手を要することなく正確且つリアルタイムに認識し得ることで、結果的に当該手術後の関連業務等を円滑に行うことが可能となる進捗告知装置及び当該進捗告知装置用のプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、手術が行われている手術室における消費電力量を検出する処理部等の電力量検出手段と、前記検出された消費電力量に基づいて、前記手術の進捗を検出する処理部等の進捗検出手段と、前記検出された進捗を前記手術が行われている手術室外に告知するディスプレイ等の告知手段と、を備える。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、手術室における消費電力量を検出し、当該検出された消費電力量に基づいて手術の進捗を検出して手術室外に告知するので、当該手術の進捗を、手術室外において人手を要さずに正確且つリアルタイムに認識し得ることで、当該手術後の関連業務等を円滑に行うことができる。
【0013】
上記の課題を解決するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の手術進捗告知装置において、前記電力量検出手段は前記消費電力量の時間による積算値を検出し、前記進捗検出手段は前記検出された積算値の変化に基づいて前記進捗を検出するように構成される。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、手術室における消費電力量の時間による積算値の変化に基づいて手術の進捗を検出するので、手術の進捗に対応した消費電力量の積算値に基づいてより正確且つリアルタイムに手術の進捗を外部から認識することができる。
【0015】
上記の課題を解決するために、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の手術進捗告知装置において、前記電力量検出手段は単位時間当たりの前記消費電力量を検出し、前記進捗検出手段は前記検出された単位時間当たりの消費電力量の時間変化に基づいて前記進捗を検出するように構成される。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、単位時間当たりの消費電力量の時間変化に基づいて手術の進捗を検出するので、手術の進捗に対応した消費電力量の積算値に基づいてより正確且つリアルタイムに手術の進捗を外部から認識することができる。
【0017】
上記の課題を解決するために、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の手術進捗告知装置において、前記手術に用いられている機械各々における単位時間当たりの消費電力量を記憶する記憶手段を更に備え、前記進捗検出手段は、前記電力量検出手段による検出結果と、前記記憶されている消費電力量と、に基づいて、起動している前記機械を識別する機械識別手段を備え、当該進捗検出手段は、前記識別された機械に基づいて前記進捗を検出するように構成される。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、手術に用いられている機械各々における単位時間当たりの消費電力量を記憶し、電力量検出手段による消費電力量の検出結果と、記憶されている消費電力量と、に基づいて、起動している機械を識別し、その識別された機械に基づいて手術の進捗を検出するので、手術に用いられている機械における消費電力量に基づいて、当該手術の進捗を検出し、当該進捗をより正確且つリアルタイムに検出して手術室外に告知することができる。
【0019】
上記の課題を解決するために、請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の手術進捗告知装置において、前記告知手段は、前記手術に関連する医師待機室、看護師待機室、外来病棟、患者病棟、家族待機室、電源管理施設若しくは前記手術室が含まれる手術区画内の当該手術室以外の場所の少なくともいずれか一カ所に設置されている。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、手術に関連する医師待機室、看護師待機室、外来病棟、患者病棟、家族待機室、電源管理施設若しくは手術室が含まれる手術区画内の当該手術室以外の場所の少なくともいずれか一カ所に告知手段が設置されているので、当該各室等において手術の進捗を正確且つリアルタイムに認識することができる。
【0021】
上記の課題を解決するために、請求項6に記載の発明は、コンピュータを、請求項1から5のいずれか一項に記載の手術進捗告知装置における前記電力量検出手段及び前記進捗検出手段、並びに前記告知手段における告知を制御する告知制御手段、として夫々機能させる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、当該手術進捗告知用プログラムをコンピュータで読み出して実行することにより、手術室における消費電力量を検出し、当該検出された消費電力量に基づいて手術の進捗を検出して手術室外に告知するように当該コンピュータが機能するので、当該手術の進捗を、手術室外において人手を要さずに正確且つリアルタイムに認識し得ることで、当該手術後の関連業務等を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、手術室における消費電力量を検出し、当該検出された消費電力量に基づいて手術の進捗を検出して手術室外に告知するので、当該手術の進捗を、手術室外において人手を要さずに正確且つリアルタイムに認識し得ることで、当該手術後の関連業務等を円滑に行うことができる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、手術室における消費電力量の時間による積算値の変化に基づいて手術の進捗を検出するので、手術の進捗に対応した消費電力量の積算値に基づいてより正確且つリアルタイムに手術の進捗を外部から認識することができる。
【0025】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、単位時間当たりの消費電力量の時間変化に基づいて手術の進捗を検出するので、手術の進捗に対応した消費電力量の積算値に基づいてより正確且つリアルタイムに手術の進捗を外部から認識することができる。
【0026】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、手術に用いられている機械各々における単位時間当たりの消費電力量を記憶し、電力量検出手段による消費電力量の検出結果と、記憶されている消費電力量と、に基づいて、起動している機械を識別し、その識別された機械に基づいて手術の進捗を検出するので、手術に用いられている機械における消費電力量に基づいて、当該手術の進捗を検出し、当該進捗をより正確且つリアルタイムに検出して手術室外に告知することができる。
【0027】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、手術に関連する医師待機室、看護師待機室、外来病棟、患者病棟、家族待機室、電源管理施設若しくは手術室が含まれる手術区画内の当該手術室以外の場所の少なくともいずれか一カ所に告知手段が設置されているので、当該各室等において手術の進捗を正確且つリアルタイムに認識することができる。
【0028】
請求項6に記載の発明によれば、当該手術進捗告知用プログラムをコンピュータで読み出して実行することにより、手術室における消費電力量を検出し、当該検出された消費電力量に基づいて手術の進捗を検出して手術室外に告知するように当該コンピュータが機能するので、当該手術の進捗を、手術室外において人手を要さずに正確且つリアルタイムに認識し得ることで、当該手術後の関連業務等を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態に係る手術進捗告知装置の概要構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る手術の進捗を例示するタイムチャートである。
【図3】実施形態に係る消費電力量の積算値の時間変化の例を示すグラフ図である。
【図4】実施形態に係る手術進捗告知装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施形態に係る手術の進捗の告知例を示す図(I)であり、(a)は初期状態を例示する図であり、(b)は第一の告知例を示す図である。
【図6】実施形態に係る手術の進捗の告知例を示す図(II)であり、(a)は第二の告知例を示す図であり、(b)は第三の告知例を示す図である。
【図7】第一変形形態に係る予定/進捗表示画面例を示す図(I)である。
【図8】第一変形形態に係る予定/進捗表示画面例を示す図(II)である。
【図9】第二変形形態に係る単位時間当たりの消費電力量の変化の例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(I)実施形態
次に、本発明の実施形態について、図1乃至図6を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、一又は複数の手術室を備える病院等内に設置され、当該各手術室内おいて実施される手術の進捗状況を当該出術室外に告知するための手術進捗告知装置に対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0031】
また、図1は実施形態に係る手術進捗告知装置の概要構成を示すブロック図であり、図2は実施形態に係る手術の進捗を例示するタイムチャートであり、図3は実施形態に係る消費電力量の積算値の時間変化の例を示す図であり、図4は当該手術進捗告知装置の動作を示すフローチャートであり、図5及び図6は実施形態に係る手術の進捗の告知例を夫々示す図である。
【0032】
図1に示すように、実施形態に係る手術進捗告知装置Sは、手術室OP内に備えられた種々の手術用機械における消費電力量を検出し、その検出結果に基づいて当該手術の進捗状況をディスプレイ61等にリアルタイムに表示するものである。当該手術進捗告知装置Sは、図1に示すように当該各手術用機械に対して電源電力を供給する電源部PWにインターフェース50を介して接続された電力量検出手段の一例及び進捗検出手段の一例としての処理部50と、例えば医師待機室60、看護師待機室65、外来病棟70、患者病棟75及び病院全体に係る電源管理施設80等に夫々設置された告知手段の一例としてのディスプレイ61、66、71、76及び81と、により構成されている。
【0033】
より具体的に手術室OP内には、上記手術用機械として、時計10と、エコー装置11と、無影灯12と、電気メス13と、バイポーラ14と、心電図モニタ15と、凝固切開装置16と、Aラインモニタ17と、洗浄・吸引装置18と、血圧モニタ19と、ガーゼカウンタ20と、輸液ポンプ21と、レントゲン装置22と、輸液・輸血加温装置23と、空気圧迫装置24と、酸素飽和度測定モニタ25と、膀胱温モニタ26と、マット制御部27と、加温装置28と、麻酔装置29と、敷き布型のマット31と、掛け布型の体温保持器32と、が備えられており、これらは電源部PWを介して商用電源から駆動電力を得て駆動される。なおこのような手術用機械が備えられている手術室OPにおいて実施される手術としては、全身麻酔を行うような手術全般が当て嵌まるが、より具体的に例えば、胃切除術や開頭腫瘍摘出術等がある。また、実施形態に係る手術用機械として、いわゆる電子カルテ入出力装置を加えても良い。
【0034】
更に、処理部50は不揮発性のメモリ50Aを備えており、当該メモリ50Aには、手術室OP内に備えられている各手術用機械における単位時間当たりの消費電力量が記憶されている。実施形態に係るメモリ50Aの場合には、麻酔装置29における単位時間当たりの消費電力量と、電気メス13における単位時間当たりの消費電力量と、レントゲン装置22における単位時間当たりの消費電力量と、が記憶されている。
【0035】
図1において、手術を受ける患者Pが手術台30上に横たえられている状態では、マット31が患者Pと手術台30との間に設置され、その温度がマット制御部27により手術毎の適温に制御される。また体温保持器32は患者Pの身体の上から毛布のように掛ける形で設置され、その温度が手術毎の適温に制御される。
【0036】
一方、バイポーラ14は電気メス13と同様の原理により切開部等の血液を必要に応じて凝固させる機械で、形態がピンセット状等の機械である。また凝固切開装置16は上記電気メス13による切開と同時に、その切開部からの出血を止める等のために当該切開部を凝固させると同時に縫合する機械である。
【0037】
更にAラインモニタ17は患者Pの動脈圧(血圧)を観血的に監視するための機械であり、洗浄・吸引装置18は術野確保と術野洗浄のための生理食塩水等を放水又は吸引するための機械である。またガーゼカウンタ20は手術に使用されたガーゼの枚数を例えばその重量等から計数する機械であり、例えば手術した患者Pの体内にガーゼが置き忘れられること等を防止するための機械である。
【0038】
輸液ポンプ21は患者Pに対する点滴を一定のペースで滴下させるための機械であり、輸液・輸血用加温装置23は輸液又は輸血に使用されるコイル状のチューブを適温に加温する機械である。また空気圧迫装置24は深部静脈血栓症(いわゆるエコノミー症候群)を予防するべく、間欠的に患者Pの下肢を圧迫する機械である。更に酸素飽和度測定モニタ25は患者Pにおける酸素飽和度を測定する機械である。膀胱温モニタ26は尿道より挿入したカテーテル状の温度センサを用いて膀胱内の温度をそのときの患者Pの体温として測定する機械である。
【0039】
レントゲン装置22は例えば可搬式のレントゲン装置であり、手術後に板状のフィルムを患者Pの下に敷き、患者Pの上からX線撮影することで、患者Pの体内に手術器具等が残されていた場合にこれを発見するためのものである。最後に時計10は手術室OPにおける手術の開始からの経過時間を執刀医等が視認可能に計時するものである。
【0040】
このとき、上記各手術用機械の各々は、その用途に基づき、当該手術の進捗における使用時期(換言すれば使用開始及び使用終了のタイミング)が夫々に概ね予め決められるものである。
【0041】
この点についてより具体的に図2を用いて説明する。なお図2は、図1に例示した各手術用機械が手術の流れの中で使用されている期間(タイミング)を、当該各手術用機械毎に時系列的にハッチング表示等により例示するものである。
【0042】
図1に示す手術室OP内の各手術用機械の各々について図2に例示するように、例えば時計10や麻酔装置29は、麻酔開始のタイミングT1からそれらの電源スイッチがオンとされてそれらへの駆動電力の供給が電源部PWにより開始され、手術が終了して患者Pが覚醒する段階まで電源スイッチがオンとされたまま使用され続ける。これに対して加温装置28やマット31(マット制御部27)は、患者Pが手術室OPに入室してから覚醒後に手術室OPから退室するまでその電源スイッチがオンとされてそれらへの駆動電力の供給が電源部PWにより継続されるものである。
【0043】
一方、無影灯12は実際の手術が開始されるタイミングで電源スイッチがオンとされてそれへの駆動電力の供給が電源部PWにより開始されるものであり、また電気メス13やバイポーラ14は実際の手術中において頻繁に電源スイッチのオン/オフ、還元すれば、駆動電力の供給/停止が繰り返されるものである。
【0044】
更に、エコー装置11、ガーゼカウンタ20及びレントゲン装置22は、主として手術の最終段階で使用されるものであり、特にレントゲン装置22は手術における閉創前のタイミングT3において使用されるものである。
【0045】
上記の構成において、実施形態に係る手術進捗告知装置Sでは、当該手術中において使用される期間(タイミング)が上述した如き各手術用機械毎に予め決められており、且つ単位時間当たりの消費電力量が各手術用機械毎にほぼ一定であることに着目し、特定の手術用機械における消費電力量の合算としての手術室OP全体の消費電力量の積算値の時間変化を検出することで、その手術用機械が使用されるタイミングまで当該手術の進捗が進んだと見なし、当該進捗をリアルタイムに手術室OP以外の場所に告知しようとするものである。
【0046】
このため、実施形態に係る手術進捗告知装置Sでは、これら手術用機械における電源スイッチの活殺(オン/オフ)による手術室OP全体としての消費電力の積算値の時間変化が処理部50において検出可能なように、各手術用機械に上記駆動電力を夫々供給する電源部PWがインターフェース50を介して当該処理部50に接続されている。
【0047】
これにより処理部50は、手術の進捗を把握する上で特徴的な手術用機械の電源スイッチがオンとされることでその手術用機械への駆動電力の供給が始まり、これにより手術室OP全体としての消費電力の積算値の時間変化が生じたタイミングを検出し、それに基づいて当該手術の進捗を視覚的にディスプレイ61等上に表示する。
【0048】
ここで、上記消費電力の積算値の時間変化について、図3に例示しつつより具体的に説明する。なお図3は、実施形態に係る麻酔装置29、電気メス13及びレントゲン装置22が使用される手術を例に取った場合における、手術室OP全体としての消費電力の積算値の時間変化を例示する図である。
【0049】
図3に示すように、手術室OPに患者Pが搬入されたタイミング以降、例えば加温装置28やマット31の電源スイッチがオンとされてそれらに駆動電力が供給されると、手術室OPとしての消費電力料の積算値は、当該加温装置28やマット31夫々における単位時間当たりの消費電力量を合計した電力量(換言すれば、その時点で稼働している手術用機械夫々における単位時間当たりの消費電力量を合計した電力量)に対応するグラフ上の角度δで、時間の経過と共に増大する。
【0050】
そして、図2及び図3に例示するタイミングT1において麻酔装置29の電源スイッチがオンとされて当該麻酔装置29に駆動電力が供給されると、手術室OPとしての消費電力量の積算値は、麻酔装置29における単位時間当たりの消費電力量(当該消費電力量は上述したようにメモリ50Aに予め記憶されている)に対応する角度αを上記角度δに加えたグラフ上の角度で、時間の経過と共に増大するようになる。よってこの角度αに相当する分だけ消費電力量の積算値の増加量が増大したことを処理部50においてメモリ50Aの記憶内容を参照しつつ検出すれば、当該麻酔装置29の稼働が開始されたタイミングT1を認識することができる。これにより当該麻酔装置29の使用が開始されてその手術が開始されたと検出することができる。
【0051】
次に、図2及び図3に例示するタイミングT2において、麻酔装置29に加えて電気メス13の電源スイッチがオンとされて当該電気メス13に駆動電力が供給されると、手術室OPとしての消費電力量の積算値は、電気メス13における単位時間当たりの消費電力量(当該消費電力量もまた、メモリ50Aに予め記憶されている)に対応する角度βを更に加えたグラフ上の角度(即ち、角度δ+α+β)で、時間の経過と共に増大するようになる。よってこの角度βに相当する分だけ消費電力量の積算値の増加量が増大したことを処理部50においてメモリ50Aの記憶内容を参照しつつ検出すれば、当該電気メス13の稼働が開始されたタイミングT2を認識することができる。これにより当該電気メス13の使用が開始されてその手術における切開が開始された(換言すれば手術が進行している)と検出することができる。なお、電気メス13の使用が図2及び図3に例示するタイミングT2’において停止されると、そのタイミングT2’以降は、消費電力量の積算値は、元のグラフ上の角度δ+αでの変化に戻る。また、図2に例示するように、電気メス13はその使用が断続的に繰り返される場合が多いのであるが、図3では、電気メス13の一回目の使用における消費電力量の積算値の変化を例示しており、二回目以降の使用については、図示を省略している。
【0052】
更に、図2及び図3に例示するタイミングT3において、新たにレントゲン装置22の電源スイッチがオンとされて当該レントゲン装置22に駆動電力が供給されると、手術室OPとしての消費電力量の積算値は、レントゲン装置22における単位時間当たりの消費電力量(当該消費電力量もまた、メモリ50Aに予め記憶されている)に対応する角度γを新たに加えたグラフ上の角度(即ち、角度δ+α+γ)で、時間の経過と共に増大するようになる。よってこの角度γに相当する分だけ消費電力量の積算値の増加量が増大したことを処理部50においてメモリ50Aの記憶内容を参照しつつ検出すれば、当該レントゲン装置22の稼働が開始されたタイミングT3を認識することができる。これにより当該レントゲン装置22の使用が開始されてその手術の終了が近いと検出することができる。なお、レントゲン撮影が終了してレントゲン装置22の使用が図2及び図3に例示するタイミングT3’において停止されると、そのタイミングT3’以降は、消費電力量の積算値は、グラフ上の角度δ+αでの変化に戻る。
【0053】
その後、手術が終了して麻酔装置29の使用が図2及び図3に例示するタイミングT4において停止されると、そのタイミングT4以降は、消費電力量の積算値は、最初のグラフ上の角度δでの変化に戻る。
【0054】
これらにより、処理部50は、当該各検出結果を各ディスプレイ61等上に表示する。なお、手術の種類や医師の考え方等によっては、電気メス13の電源スイッチがオンとされたタイミングをもって「手術の開始」と検出しても良い。
【0055】
次に、より具体的に処理部50の動作について、図4を用いて説明する。
【0056】
図4に例示するように、処理部50は、手術室OP全体の主電源がオンとされたか否かを監視している(ステップS1)。当該主電源がオフとされている間は(ステップS1;NO)そのまま監視を継続し、一方、当該主電源がオンとされたとき(ステップS1;YES)、処理部50は手術室OPとしての消費電力量の積算値の増加量の監視を開始する(ステップS2)。
【0057】
次に、当該監視下において処理部50は、メモリ50Aに記憶されている麻酔装置29における単位時間当たりの消費電力量を参照しつつ、手術室OPとしての消費電力量の積算値の増加量が、図3に例示する角度α(即ち、麻酔装置29における単位時間当たりの消費電力量に対応する角度α)分だけ増大したか否かを確認する(ステップS3)。そして、当該角度αに相当する増加量の増大が検出されたとき(ステップS3;YES)、処理部50は、当該麻酔装置29が稼働している手術室OPにおいて、麻酔の開始により当該手術が開始された旨をディスプレイ61、66、71、76及び81上に表示し(ステップS4)、後述するステップS5の動作に移行する。このときのディスプレイ61等における表示態様については、後ほど図5(b)を用いて例示する。
【0058】
一方、ステップS3の確認において角度αに相当する消費電力量の増加量の増大が未だ検出されないとき(ステップS3;NO)、処理部50は上記ステップS2に戻って当該消費電力量の積算値の増加量の監視を継続する。
【0059】
手術室OPにおける手術が開始された旨を表示した後(ステップS4)、その監視下(ステップS2)において処理部50は、次にメモリ50Aに記憶されている電気メス13における単位時間当たりの消費電力量を参照しつつ、手術室OPとしての消費電力量の積算値の増加量が、図3に例示する角度β(即ち、電気メス13における単位時間当たりの消費電力量に対応する角度β)分だけ増大したか否かを確認する(ステップS5)。そして、当該角度βに相当する増加量の増大が検出されたとき(ステップS5;YES)、処理部50は、当該電気メス13が稼働している手術室OPにおいて切開が開始されて手術が進行している旨をディスプレイ61、66、71、76及び81上に表示し(ステップS6)、後述するステップS7の動作に移行する。このときのディスプレイ61等における表示態様については、後ほど図6(a)を用いて例示する。
【0060】
一方、ステップS5の確認において角度βに相当する消費電力量の増加量の増大が未だ検出されないとき(ステップS5;NO)、処理部50は上記ステップS4に戻ってディスプレイ61等における手術開始の旨の表示状態を維持しつつ、当該消費電力量の積算値の増加量の監視を継続する。
【0061】
手術室OPにおける手術が進行している旨を表示した後(ステップS6)、その監視下(ステップS2)において処理部50は、次にメモリ50Aに記憶されているレントゲン装置22における単位時間当たりの消費電力量を参照しつつ、手術室OPとしての消費電力量の積算値の増加量が、図3に例示する角度γ(即ち、レントゲン装置22における単位時間当たりの消費電力量に対応する角度γ)分だけ増大したか否かを確認する(ステップS7)。そして、当該角度γに相当する増加量の増大が検出されたとき(ステップS7;YES)、処理部50は、当該レントゲン装置22が稼働している手術室OPにおいて手術の終了が間近い旨をディスプレイ61、66、71、76及び81上に表示し(ステップS8)、後述するステップS9の動作に移行する。このときのディスプレイ61等における表示態様については、後ほど図6(b)を用いて例示する。
【0062】
一方、ステップS7の確認において角度γに相当する消費電力量の増加量の増大が未だ検出されないとき(ステップS7;NO)、処理部50は上記ステップS6に戻ってディスプレイ61等における手術進行中の旨の表示状態を維持しつつ、当該消費電力量の積算値の増加量の監視を継続する。
【0063】
手術室OPにおける手術の終了が間近い旨を表示した後(ステップS8)、処理部50は、手術室OPにおける手術が全て終了して当該手術室OP全体の主電源がオフとされたか否かを確認する(ステップS9)。これにより、当該主電源がオフとされたことが確認されないとき(ステップS9;NO)、処理部50は上記ステップS8に戻ってディスプレイ61等における手術の終了が間近い旨の表示状態を維持する。
【0064】
他方、ステップS9の確認において当該主電源がオフとされたことが確認されたとき(ステップS9;YES)、処理部50は実施形態に係る動作を終了する。
【0065】
次に、上記ステップS4、S6及びS8におけるディスプレイ61等の表示態様について、具体的に図5及び図6を用いて例示する。
【0066】
実施形態に係るディスプレイ61、66、71、76及び81は、基本的に同様の表示態様であり、具体的には図5(a)に例示するように、各手術室OPに付与されている手術室番号を表示する手術室番号表示欄101と、当該手術を執刀する医師(執刀医)の氏名、執刀医以外の担当医の氏名、担当看護師の氏名及び所属科名等を表示する情報表示欄102と、当該手術の当初の予定(予定開始時刻及び予定終了時刻を含む)を表示する予定表示欄103と、上記ステップS4、S6及びS8に係る手術の進捗を表示する進捗表示欄104と、を含む進捗表示画面100を表示する。
【0067】
このとき、進捗表示欄には、例えば図2に例示した手術の進捗における時間的な区分(「入室」、「麻酔開始」、「手術」等の区分)が併せて表示されている。また、予定表示欄103に表示されるべき予定は、例えば上記特許文献1に記載された技術により記録されている予定の内容を表示するように構成することができる。
【0068】
そして、上記ステップS4に対応する表示態様として具体的には、図5(b)に例示するように、進捗表示欄104における「麻酔開始」区分の先頭の部分(具体的には、例えば図2に示すタイミングT1)までの進捗表示105が表示される。
【0069】
次に、上記ステップS6に対応する表示態様として具体的には、図6(a)に例示するように、上記進捗表示105が、進捗表示欄104における「手術」区分内の切開開始に対応するタイミング(具体的には、例えば図2に示すタイミングT2)まで延伸された状態で表示される。
【0070】
最後に、上記ステップS8に対応する表示態様として具体的には、図6(b)に例示するように、上記進捗表示105が、進捗表示欄104における「手術終了」区分内のレントゲン撮影に対応するタイミング(具体的には、例えば図2に示すタイミングT3)まで延伸された状態で表示される。
【0071】
(II)変形形態
次に、本発明の変形形態について、図7乃至図9を用いて説明する。なお、各変形形態に係る手術進捗告知装置において実施形態に係る手術進捗告知装置Sと同様の構成については、同様の部材番号を付して細部の説明は省略する。
【0072】
(A)第一変形形態
始めに、第一変形形態について、図7及び図8を用いて説明する。
【0073】
上述した実施形態では、一つの手術室OP内で実施される手術の進捗状況を告知するための手術進捗告知装置Sについて説明したが、本発明はこれ以外に、第一変形形態として、複数の手術室OPを備える病院等における当該各手術室OPにおいて同時並行的に実施される手術の進捗状況を夫々告知する場合にも、全く同様に適用可能である。この場合には、当該複数の手術室OPにおける手術の進捗状況を、一つの表示画面内に並列して表示するように構成することが好ましい。
【0074】
即ち、第一変形形態に係る手術進捗告知装置の構成としては、図1を用いて説明した実施形態に係る手術進捗告知装置Sにおける手術室OPが複数存在している。そしてこれら複数の手術室OP夫々に設置されている手術用機械各々における消費電力量の変化が、インターフェース40と同様のインターフェース並びに各手術室OPの電源部PWを介して処理部50により検出される。この変形形態に係るインターフェースは、複数の手術室OP内の手術用機械と処理部50とを接続するインターフェースである。
【0075】
これにより処理部50は、実施形態の場合と同様にして各手術室OPにおける手術の進捗状態を、その手術室OPに設置されている手術用機械における消費電力量の変化を監視することにより検出し(図2及び図4参照)、その検出結果を一覧として各ディスプレイ61等に表示する。
【0076】
次に、第一変形形態に係る手術進捗の表示態様について、具体的に図7及び図8を用いて例示しつつ説明する。なお図7は、上記複数の手術室OPの夫々においてある日に予定されている手術のスケジュールを示す予定/進捗表示画面の例である。また図8は当該各手術の進捗状況をリアルタイムに一覧表示する予定/進捗表示画面の例である。
【0077】
図7に例示するように、第一変形形態に係る各ディスプレイ61等に表示される予定/進捗表示画面110には、複数の手術室OP毎に、その日に予定されている手術の時間(予定時間)が表示される。なおこの予定/進捗表示画面110を表示するために必要な各手術の予定等は、例えば上記特許文献1に開示されている技術を用いて事前にデータとして処理部50内に記憶されているものである。
【0078】
より具体的に図7に例示する予定/進捗表示画面110には、手術室番号「1」から「10」で示される十の手術室OPの夫々について、その日に予定されている手術の時間帯が予定表示200により夫々示されている。なお図7に示す例では、手術室番号「1」の手術室OP及び手術室番号「2」の手術室OPは、夫々整形外科及び眼科専用の手術室OPとされている。またそれ以外の手術室番号により示される手術室OPは、全ての科で共用される手術室OPである。
【0079】
更に、各予定表示200の傍にはプルダウンボタン201が夫々表示される。このプルダウンボタン201は、夫々、対応する予定表示200により示される手術に係る詳細表示をいわゆるプルダウン形式で予定/進捗表示画面110内に別途表示する際に操作されるボタンである。なおこの詳細表示は、その手術に使用される予定の各手術用機械の名称等とその使用タイミングとを、例えば図2に例示した形式で当該各手術用機械毎に表示するものである。また、予定/進捗表示画面110以外のディスプレイ61等の領域には、予定/進捗表示画面110における表示に係る凡例を表示する凡例欄111が設けられている。
【0080】
次に、図8に例示する予定/進捗表示画面110について説明する。
【0081】
図8に例示する予定/進捗表示画面110においては、図7に例示した予定/進捗表示画面110により表示されていた予定の各手術が実際にどのように進捗しているかが、各手術室OP毎に一覧表示される。この表示のため、処理部50は、複数の手術室OP夫々について、その中に設置されている手術用機械における消費電力量の変化を常に監視し、その監視結果に応じて各手術毎に進捗を表示する。
【0082】
即ち図8において、現在時刻指示400は現在時刻を示す縦棒状の指示であり、時刻の経過に伴って図8中左から右に移動していくものである。
【0083】
そして、現在時刻指示400により示される現在時刻において終了している手術については、終了表示300が対応する元の予定表示200に重なるように表示される。なお、手術室番号「9」の手術室OPについて例示するように、予定表示200により示されていた予定時間より遅れて終了した手術については、終了表示300に遅延終了表示301が追加され更に目立つ態様の警告表示315が付された状態で表示される。
【0084】
一方、現在時刻において進行中である手術については、手術室番号「2」、「5」又は「8」の手術室OPについて例示するように、手術段階である旨の手術段階表示305が同様に元の予定表示200に重なるように表示される。また各手術において、麻酔装置29の電源スイッチがオンとされた後電気メス13の電源スイッチがオンされるまでの間は、手術室番号「7」の手術室について例示するように麻酔段階表示320が元の予定表示200の一部に重なるように表示される。
【0085】
更に、レントゲン装置22の電源スイッチがオンとされたことが検出された場合、手術室番号「3」の手術室OPについて例示するように、その手術については退室準備表示310が元の予定表示200の一部に重なるように表示される。
【0086】
また、手術室番号「3」の手術室OPについて例示するように、元の予定表示200により示される予定時間帯が何らかの理由により変更となったことが手術開始前に入力された場合、元の予定表示200が変更予定表示202に変更されて予定/進捗表示画面110内に表示される。この場合であって元の予定表示200により示される予定時間よりもその終了が遅れることになる場合には、警告表示315が現在の終了予定時刻に対応した長さで併せて表示される。なおこの場合、変更予定表示202により示された変更後の予定時間通りに終わった場合には、遅延終了表示301は為されない。
【0087】
最後に、手術室番号「5」の手術室OPについて例示するように、現在進行中の手術において、処理部50により検出された進捗に基づいて判断したときにその終了時刻が予定表示200により示されていた終了予定時刻より遅れる場合には、警告表示315が現在の終了予定時刻に対応した長さで併せて表示される。
【0088】
なお、図8に例示する予定/進捗表示画面110内に表示されているプルダウンボタン201を操作した場合には、その操作した手術についての現在の進捗状況又は終了した場合の進捗表示がプルダウン形式で且つ例えば図2に例示した形式で表示される。
【0089】
(B)第二変形形態
次に、第二変形形態について、図9を用いて説明する。
【0090】
上述した実施形態では、手術室OP内で実施される手術の進捗状況を検出するために手術室OP全体としての消費電力の積算値の時間変化に着目したが、これ以外に、手術室OP全体としての単位時間当たりの消費電力量の時間変化を直接検出し、その検出結果とメモリ50Aに記憶されている各手術用機械の単位時間当たりの消費電力量とを比較して手術の進捗を検出するように構成することもできる。
【0091】
より具体的に、図3に例示した実施形態に係る手術の進捗と同様の進捗に対して手術室OP全体としての単位時間当たりの消費電力量の時間変化を直接検出した場合、その検出結果としては、例えば図9に示すように、タイミングT1において麻酔装置29としての単位時間当たりの消費電力量W29だけ増大し、更にタイミングT2において電気メス13としての単位時間当たりの消費電力量W13だけ更に増大することになる。その後、タイミングT2’において電気メス13に対応する消費電力量W13だけ減少し、その後新たにタイミングT3においてレントゲン装置22としての単位時間当たりの消費電力量W22だけ増大することになる。その後、タイミングT3’において上記消費電力量W22の分だけ減少し、最後にタイミングT4において上記消費電力量W29の分だけ更に減少することになる。
【0092】
そして、図4に示したフローチャートにおけるステップS3に代えて消費電力量が上記消費電力量W29分だけ増大したか否かを監視し、また当該フローチャートにおけるステップS5に代えて消費電力量が上記消費電力量W13分だけ増大したか否かを監視し、更に当該フローチャートにおけるステップS7に代えて消費電力量が上記消費電力量W22分だけ増大したか否かを監視するように構成すれば、実施形態と同様に手術の進捗を検出してその旨を夫々のディスプレイ61等において表示させることができる。
【0093】
以上夫々説明したように、実施形態及び各変形形態に係る手術進捗告知装置Sの動作によれば、手術室OPにおける消費電力量を検出し、当該検出された消費電力量に基づいて手術の進捗を検出して手術室OP外に告知するので、当該手術の進捗を、手術室OP外において人手を要さずに正確且つリアルタイムに認識し得ることで、当該手術後の関連業務等を円滑に行うことができる。より具体的に例えば、電気メス13の電源スイッチがオンとされたタイミングからレントゲン装置29の電源スイッチがオンとされたタイミングまでの時間が通常よりも極端に短いことが告知された場合、その患者Pに対する実質的な手術が行われずに閉創されることが推測される。このことが例えば患者病棟75において認識されると、当該患者病棟75において当該手術が予定よりも早く終了するであろうことが認識できる。そこで、患者病棟75では当該患者Pの受け入れの準備を早めて万全の体制で搬送されてくる患者Pを受け入れることができるのである。
【0094】
また、手術室OPにおける消費電力量の時間による積算値の変化に基づいて手術の進捗を検出する実施形態の場合、又は手術室OPにおける単位時間当たりの消費電力量の時間変化に基づいて手術の進捗を検出する第二変形形態の場合のいずれでも、より正確且つリアルタイムに手術の進捗を外部から認識することができる。
【0095】
更に、手術に用いられている機械各々における単位時間当たりの消費電力量をメモリ50Aに記憶し、消費電力量の検出結果と、記憶されている消費電力量と、に基づいて、起動している機械を識別し、その識別された機械に基づいて手術の進捗を検出するので、手術に用いられている機械における消費電力量に基づいて、当該手術の進捗を検出し、当該進捗をより正確且つリアルタイムに検出して手術室OP外に告知することができる。
【0096】
更にまた、消費電力量検出の対象を麻酔装置29として、当該麻酔装置29の電源スイッチがオンとされたとき手術が開始された旨が手術室OP外に告知され、消費電力量検出の対象を電気メス13として、当該電気メス13の電源スイッチがオンとされたとき切開処置が開始された旨が手術室OP外に告知され、更に、消費電力量検出の対象をレントゲン装置22として、当該レントゲン装置29の電源スイッチがオンとされたとき手術の終了が近い旨が手術室OP外に告知されるので、麻酔装置29の稼働開始を通じて手術の開始を、切開処置の開始を通じて当該手術の進捗を、更にレントゲン装置22の稼働開始を通じて手術の終了が近い旨を、手術室OP外において夫々正確且つリアルタイムに認識することができる。
【0097】
また、手術に関連する医師待機室60、看護師待機室65、外来病棟70、患者病棟75又は電源管理施設80の少なくともいずれか一カ所にディスプレイ61等が設置されているので、当該各室において手術の進捗を正確且つリアルタイムに認識することができる。
【0098】
なお、本発明は、上述した実施形態に係る手術進捗告知装置S以外の態様の手術進捗告知装置に対しても適用可能である。
【0099】
先ず、電気メス13等による手術の進捗の告知については、当該電気メス13が図2に例示するように断続的に稼働されるものである点に鑑み、一回の電源スイッチのオン/オフに対応する消費電力量の変化を夫々検出し、それに基づき、一回の電源スイッチのオンを検出する度に手術の進行を示す進捗表示105(図6(a)参照)を段階的に延伸させるように構成することもできる。
【0100】
また、手術の進捗に応じてその時点で電源スイッチがオンとされて稼働している他の手術用機械を別途いわゆるプルダウンメニュー等により表示するように構成することもできる。
【0101】
更に、上述した実施形態では、実際の手術の進捗のみを告知する構成としたが、これ以外に、例えば上記特許文献1に記載の技術により記録されている手術の予定に加えて、その開始の遅延状況等を併せて表示するように構成することもできる。
【0102】
更にまた、手術の進捗の告知の態様は、実施形態に示したような表示による告知の他に、例えば病院内の必要部署(上記医師待機室60等)に対する音声による告知としても良い。
【0103】
また、実施形態においては、医師待機室60等に対する各告知内容は全て同一としては、これ以外に、医師待機室60、看護師待機室65、外来病棟70、患者病棟75又は電源管理施設80の間でその表示態様の詳細度又は変更のタイミングを異ならせるようにしても良い。更にディスプレイ61等の設置場所として、家族待機室や手術室OPが含まれる手術区画内の当該手術室OP以外の場所(廊下等)を含ませても良い。
【0104】
なお、図4に示すフローチャートに対応するプログラムをフレキシブルディスク等の記録媒体に記録しておき、又はインターネット等のネットワークを介して取得して記録しておき、これを汎用のコンピュータで読み出して実行することにより、当該汎用のコンピュータを実施形態に係る処理部50として機能させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上夫々説明したように、本発明は手術進捗告知装置の分野に利用することが可能であり、特に複数の手術室OPを有する大きな病院における手術室の使用管理の分野に適用すれば特に顕著な効果が得られる。
【符号の説明】
【0106】
OP 手術室
PW 電源部
P 患者
10 時計
11 エコー装置
12 無影灯
13 電気メス
14 バイポーラ
15 心電図モニタ
16 凝固切開装置
17 Aラインモニタ
18 洗浄・吸引装置
19 血圧モニタ
20 ガーゼカウンタ
21 輸液ポンプ
22 レントゲン装置
23 輸液・輸血加温装置
24 空気圧迫装置
25 酸素飽和度測定モニタ
26 膀胱温モニタ
27 マット制御部
28 加温装置
29 麻酔装置
30 手術台
31 マット
32 体温保持器
40 インターフェース
50 処理部
60 医師待機室
61、66、71、76、81 ディスプレイ
65 看護師待機室
70 外来病棟
75 患者病棟
80 電源管理施設
100 進捗表示画面
101 手術室番号表示欄
102 情報表示欄
103 予定表示欄
104 進捗表示欄
105 進捗表示
110 予定/進捗表示画面
200 予定表示
201 プルダウンボタン
111 凡例欄
400 現在時刻指示
300 終了表示
301 遅延終了表示
315 警告表示
305 手術段階表示
320 麻酔段階表示
310 退室準備表示
202 変更予定表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術が行われている手術室における消費電力量を検出する電力量検出手段と、
前記検出された消費電力量に基づいて、前記手術の進捗を検出する進捗検出手段と、
前記検出された進捗を前記手術が行われている手術室外に告知する告知手段と、
を備えることを特徴とする手術進捗告知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の手術進捗告知装置において、
前記電力量検出手段は前記消費電力量の時間による積算値を検出し、
前記進捗検出手段は前記検出された積算値の変化に基づいて前記進捗を検出することを特徴とする手術進捗告知装置。
【請求項3】
請求項1に記載の手術進捗告知装置において、
前記電力量検出手段は単位時間当たりの前記消費電力量を検出し、
前記進捗検出手段は前記検出された単位時間当たりの消費電力量の時間変化に基づいて前記進捗を検出することを特徴とする手術進捗告知装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の手術進捗告知装置において、
前記手術に用いられている機械各々における単位時間当たりの消費電力量を記憶する記憶手段を更に備え、
前記進捗検出手段は、前記電力量検出手段による検出結果と、前記記憶されている消費電力量と、に基づいて、起動している前記機械を識別する機械識別手段を備え、
当該進捗検出手段は、前記識別された機械に基づいて前記進捗を検出することを特徴とする手術進捗告知装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の手術進捗告知装置において、
前記告知手段は、前記手術に関連する医師待機室、看護師待機室、外来病棟、患者病棟、家族待機室、電源管理施設若しくは前記手術室が含まれる手術区画内の当該手術室以外の場所の少なくともいずれか一カ所に設置されていることを特徴とする手術進捗告知装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から5のいずれか一項に記載の手術進捗告知装置における前記電力量検出手段及び前記進捗検出手段、並びに前記告知手段における告知を制御する告知制御手段、として夫々機能させることを特徴とする手術進捗告知用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−150537(P2011−150537A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11299(P2010−11299)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000137052)株式会社ホギメディカル (31)