説明

手袋及びその製造方法

【課題】 防水性と手にフィットする良好な作業性を維持しつつ、優れた断熱性(熱遮断性/保温性)を有し、炊事等における熱湯中或いは冷水中の作業をも長時間継続して行うことができ、加えて、耐久性が向上し、手荒れの心配もない手袋及びその製造方法を提供せんとする。
【解決手段】 手袋内側面を、太さ100デニール以下の裏糸によりパイル状に編成し、当該パイル面を起毛処理して平均厚み1.0mm以上の起毛部を形成するとともに、手袋表側面に、ゴム又は樹脂皮膜を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊事用やその他の屋内外の作業用として、或いはスポーツ用として好適に使用される手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
学校給食等における給食所作業に関して、従来より、手型上に防水性の塩化ビニル皮膜層を形成し、その上に接着剤層を形成した後、その上にレーヨン等の短繊維を静電気植毛加工により植毛し、離型、表裏反転してなる手袋が提案され(例えば、特許文献1参照。)、一般家庭で使われる厚手の手袋として実際に多く提供されている。
【0003】
この植毛手袋は、およそ0.3〜0.5mm程度の厚さの塩化ビニル皮膜と、手袋内面側に垂直状に植毛されたパイル間の空気層により、防水性と手にフィットする良好な作業性と適度の断熱性とを備えたことを特徴としている。
【0004】
一方、このような植毛手袋には、次のような問題があることが一般に知られている。
1)塩化ビニル皮膜に接着剤を介して各パイルが独立に植毛されているため、各パイルの接着強度に限界があり、使用時にパイルが脱落するといった耐久性の問題がある。
2)静電気植毛加工の際、パイルとなる短繊維を塩化ビニル皮膜に静電気で飛ばせて(飛昇させて)植毛するが、パイルに対して静電気でよく飛ぶように薬剤(飛昇剤)処理が施される。この薬剤が使用者の体質によっては手荒れの原因になる場合がある(非特許文献1参照。)。
【0005】
また、手型上の塩化ビニル皮膜の各指間の狭い根元部分に対して、パイルを均一かつ垂直状に植毛するためには、飛昇させるパイルの長さが所定の長さ以上になると巧く植毛加工することができず、0.8mmほどが限度となり、通常、0.5mm前後の長さのパイルが用いられている。
【0006】
このような短いパイルを植毛した従来の植毛手袋は、当該植毛部の厚みも薄く、使用中植毛されたパイルが手に押しつけられると容易に倒れてしまうことから、断熱効果には一定の限界があり、たとえば食器等を高温水で洗浄消毒する場合などでは、使用している作業者が短時間しか継続作業できず、また、寒冷水作業においても長時間耐えることはできない。
塩化ビニル皮膜を厚くすればある程度断熱効果の向上を期待することもできるが、その分作業性が低下してしまい、実際には採用することはできない。
【0007】
【特許文献1】特公平3−4643号公報
【非特許文献1】飯沼憲政著,「新高分子文庫17 フロック加工の実際」,初版,株式会社高分子刊行会,1979年8月,p.132−137
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、防水性と手にフィットする良好な作業性を維持しつつ、優れた断熱性(熱遮断性/保温性)を有し、炊事等における熱湯中或いは寒冷水中の作業をも長時間継続して行うことができ、加えて、耐久性が向上し、手荒れの心配もない手袋及びその製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述の課題解決のために、手袋内側面を、太さ100デニール以下の裏糸によりパイル状に編成し、当該パイル面を起毛処理して平均厚み1.0mm以上の起毛部を形成するとともに、手袋表側面に、ゴム又は樹脂皮膜を形成してなることを特徴とする手袋を構成した。
【0010】
ここで、前記起毛部の平均厚みが、2.5mm以下であることが好ましい。
【0011】
また、前記裏糸を構成している繊維1本あたりの平均太さが、1.1デニール以下であることが好ましい。
【0012】
さらに、前記ゴム又は樹脂皮膜の平均厚みが、0.1〜0.7mmであることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、原手を構成する生地の手袋内側面を、太さ100デニール以下の裏糸によりパイル状に編成し、当該パイル面を起毛処理することにより、平均厚み1.0mm以上の起毛部を形成した後、当該生地を縫製して原手を構成し、該原手の手袋表側面にゴム又は樹脂皮膜を形成してなる手袋の製造方法をも提供する。
【発明の効果】
【0014】
以上にしてなる本発明によれば、ゴム又は樹脂皮膜で手袋外側面は防水性になるとともに、裏糸によりパイル状に編成されたパイル面を起毛処理して平均厚み1.0mm以上の起毛部が形成されているので、当該起毛が手袋使用時に手に密着しても支え合いにより空気層を維持することから優れた断熱性(熱遮断性/保温性)を有し、炊事等における熱湯中或いは冬場等の寒冷水中の作業であっても長時間継続して行うことが可能となり、屋内外の作業用手袋として好適に使用できる。1.0mmより薄いと、手の密着により簡単に起毛が寝てしまい、断熱層となる空気層が十分に維持されない。
【0015】
また、当該裏糸の太さが100デニール以下であるため、適度な起毛密度となり、ごわごわ感がなく手にフィットする良好な作業性、嵌め心地が維持できる。100デニールより太いと、起毛密度が高まり、ごわごわ感が生じてしまう。
【0016】
さらに、静電気植毛したものではなく、起毛部はパイル状に編成した生地裏側を起毛して構成されているため、手荒れの心配がなく、当該起毛は根元において編成部分で確りと一体化されており、容易に抜けることなく、皮膜も表糸の編成部分を介して強固に付着しており、優れた耐久性を有する。
【0017】
また、起毛部の平均厚みが、2.5mm以下であるので、良好な作業性が維持される。2.5mmより厚くなると、ごわごわして作業性及び嵌め心地が低下する。
【0018】
また、裏糸の繊維一本あたりの平均太さが、たとえばマルチフィラメント糸のように1.1デニール以下であるので、柔らかい感覚が得られ、嵌め心地が著しく向上する。
【0019】
また、前記ゴム又は樹脂皮膜の平均厚みが、0.1〜0.7mmであるので、優れた作業性が維持される。
本発明では、起毛部の厚みが1.0mm以上であるが、裏糸をパイル状にした上で起毛しているため、起毛後は編成部分が実質的に薄くなり、前記ゴム又は樹脂皮膜の平均厚みを0.7mm以下に設定することにより、指等の屈曲性がよく柔軟であり、優れた作業性が維持されるのである。ただし皮膜強度、防水性の点から、前記ゴム又は樹脂皮膜の平均厚みは0.1mm以上が好ましい。より好ましくは、0.2mm以上、さらに好ましくは0.3〜0.5mmに設定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
本発明に係る手袋は、手袋内側面を、太さ100デニール以下の裏糸によりパイル状に編成し、当該パイル面を起毛処理して平均厚み1.0mm以上の起毛部を形成するとともに、手袋表側面に、ゴム又は樹脂皮膜を形成したものである。
【0022】
裏糸は、ポリエステル長繊維やポリエステルスパン糸を用いることが好ましい。また、表糸は、たとえば綿100%糸や、綿・ポリエステルの混紡糸、ポリエステル100%糸などを用いることができる。
【0023】
特に裏糸にポリエステル長繊維(ウーリーポリエステル)を用いたものは、「フリース」素材の特徴として知られているように軽く、肌に優しく肌触り(風合い)も良く、作業中汗をかいても直ぐ乾くため、いつまでもベトベトした不快感が残らず、脱着も容易となる。
【0024】
本発明では、生地の内側片面をパイル状に編成して起毛しているため、全体として編成部分が実質的に薄くなり、直接コーティングして皮膜層を形成した後も屈曲性が良く柔軟である。
裏糸を構成している繊維1本あたりの平均太さが、1.1デニール以下であることが好ましい。これは100デニールの糸であればおよそ91本以上の繊維から構成されていることを示し、例えば75D/72Fの糸や100D/96Fの糸が含まれる。
このような繊維の太さは、起毛処理により糸から独立する起毛一本あたりの太さとなり、当該起毛部は柔らかい感覚が得られる。
【0025】
起毛部の平均厚みは、1.0mm以上であれば、静電植毛のように起毛が倒れてしまうことがなく互いに絡まり空気層を維持でき、優れた断熱性を保持できる。ただし、当該平均厚みが2.5mm以下であることが好ましく、それより厚いと作業性、嵌め心地が低下する。より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1.3〜1.6mmに設定される。
【0026】
尚、起毛部の厚みをこのような数値に設定するためには、例えば、裏糸を75D/144Fのポリエステル長繊維(ウーリーポリエステル)とした場合、裏側のパイル状部分を構成する平均ループ長さを、設定する起毛部厚みの2.5倍ほどの長さとなるように編成しておけばよい。たとえば、起毛部平均厚みが1.5mmとなる手袋を製作するためには、3.8mm程のループとなるように編んでおき、このループを切断して起毛することで、起毛の長さが1.9mmとなり、これが捲縮加工されていることから互いに絡まって支え合い、起毛部の厚みは1.5mm程となる。
【0027】
防水効果を付与するゴム又は樹脂皮膜には、NBR配合物や塩化ビニルゾルなど、従来からの手袋に用いられている種々のコーティング材を用いることができる。コーティング後の皮膜の平均厚みは、皮膜強度や防水性を維持しつつ優れた作業性を維持するために0.1〜0.7mmとなるように設定される。
【0028】
次に、本発明に係る手袋の製造手順について説明する。
【0029】
まず、上記の表糸と裏糸からなる生地に対し、裏側のパイル面を起毛処理することにより、平均厚み1.0mm以上の起毛部を形成する。
起毛処理は、生地を起毛処理剤に浸漬処理した後、脱水し、乾燥して生地の裏側に起毛処理機で起毛を施す。なお起毛処理剤は従来から一般に使用されているものが使用できる。
【0030】
次に、起毛した原反を抜き型で手袋の形に抜き取り、縫製して裏返したときに手袋内側に起毛部がくるように、原手に縫製する。原手の縫製形態は特に限定されず、たとえば甲部側と掌側の2枚の生地を重ね合わせて縁部をミシン掛したものや、甲部側と掌側を一枚の生地で構成し、親指覆い生地を掌部側の生地に別途付け縫いするものであってもよい。
【0031】
次に、この縫製原手に対して精練剤を用いて、精練油抜き・不純物の除去とともに起毛処理剤を除去した後、撥水・撥油剤中に浸漬して取り出し、脱水・乾燥することにより撥水層又は撥油層を形成する。
【0032】
尚、本例では、このように撥水層又は撥油層を形成した上でコーティングする撥水・撥油コート法を採用しているが、本発明は特にこのようなコート法に何ら限定されず、その他凝固剤法など従来から用いられている種々のコート方法を採用できる。
【0033】
なお、凝固剤法によってコーティングする場合には、凝固剤液として用いるメタノール液が起毛部に吸い上げられ、環境悪化、作業環境悪化、経済的なロスといった問題が生じる可能性があるが、本発明のごとく100デニール以下の裏糸から起毛部を形成したものでは、100デニールよりも太い裏糸により高密度の起毛が形成されている一般の防寒用手袋に比べ、メタノールを吸い上げる量が少なく、上記問題の程度も低減する。
【0034】
そして、この撥水・撥油処理を施した原手を手型に被せ、原手表側に、コーティング液として例えばNBR配合物を過剰な圧力が掛からない状態でコーティングし、過剰分の滴下を行った後に乾燥・熱処理することにより、NBRの皮膜層を形成する。
【0035】
上記皮膜層の上に、さらに強度を持たせる為、別途皮膜層を形成してもよく、また、手首部より指先側の領域に滑り止め層を付着させるべく、滑り止め粒子を含んだ第3層を形成してもよい。
【0036】
油性のコーティング液をコートする場合も同様であり、撥水・撥油層を形成した原手に、例えば、コーティング液として塩化ビニルゾルを、過剰な圧力が掛からない状態でコーティングし、過剰分の滴下を行った後に加熱処理を行い、前記塩化ビニル樹脂の皮膜層を形成することができる。
なお、コーティング剤が上記NBR配合物や塩化ビニル樹脂に何ら限定されないことは上述のとおりである。
【実施例】
【0037】
次に、以下の実施例1、比較例1、2、3の手袋を用いた耐熱性、作業性、嵌め心地の比較試験について説明する。
【0038】
(実施例1)
表側を綿100%、32番手単糸の表糸を用いて編成するとともに、裏側(起毛部)をウーリーポリエステル100%、75D/144Fの裏糸を用いてパイル状に編成することにより生地を作成した。
ここで「75D/144F」は、「75デニール/144フィラメントカウント」の略記であり、144本のフィラメント(繊維)によって太さ75デニールの糸が構成されていることを示している。この糸の繊維1本あたりの太さは75デニール/144=0.52デニールである。
【0039】
起毛処理剤(明成化学工業(株)製「ミリナールF-20」5.0%o.w.f、浴比15)に、上記生地を浸漬した後、脱水し、100℃で5分間乾燥し、パイル状の生地裏側に対して起毛処理を施した。
生地裏側の起毛処理前の各ループの長さは、ほぼ4mm程度とされており、起毛処理により当該ループが切断され、裏糸繊維による各起毛の長さが約2mm程度となり、それら起毛が互いに絡み合う結果、下記皮膜層形成後の起毛部の厚みは1.53mmとなった。
【0040】
次に、起毛した原反から抜き型を使用して手袋の形に抜き取り(裁断し)、原手に縫製した。この縫製原手に、精練剤(松本油脂製薬(株)製「SSK−15A、浴比15、2g/L)を使用し、90℃前後の熱水で15分間精練油抜きを行い、不純物とともに起毛処理剤を除去した。これを濯いだ後に脱水し、撥水・発油剤(明成化学工業(株)製「AG−730」1.5%o.w.f、浴比13)中で攪拌等により当該薬剤を付着させ、これを取り出して脱水した後、約110℃・20分間タンブラー乾燥機にて乾燥させ、撥水層を形成した。
【0041】
撥水層を形成した原手を手型に被せ、NBRラテックスの熱架橋性配合物(NBRラテックス;日本ゼオン(株)製「Lx−550」、架橋剤;硫黄、ZnO、架橋促進剤;「ノクセラーBZ」(ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛)、顔料等)を、過剰な圧力が掛からない状態でコーティングし、過剰分の滴下を行った後に乾燥・熱処理を行い前記NBRの皮膜層を形成した。
皮膜層の厚みは、0.43mmとなり、上記起毛部と合せた全体の厚みは1.96mmである。
【0042】
(比較例1;従来の家庭用手袋)
手袋型を塩化ビニルゾル中に浸漬して引き上げ、次に前記手袋型の表面に付着している塩化ビニルを加熱して半ゲル化する。
この手袋型をアクリルエマルジョン中に浸漬した後引き上げて、適度に乾燥して表面にレーヨン短繊維を電気植毛する。
レーヨン短繊維は、太さが1デニール、長さが約0.5mmであり、この長さが植毛部の厚みとなる。
このレーヨン短繊維が植毛された塩化ビニルを約200℃で10分間加熱して完全にゲル化した。
離型して表裏反転してなる塩化ビニル手袋のフィルム厚は、0.42mmであり、前記植毛部と合せた全体の厚みは約0.92mmである。
【0043】
(比較例2;従来の防寒用手袋)
表側を実施例1と同じ綿100%、32番手単糸の表糸を用いて編成するとともに、裏側(起毛部)をウーリーポリエステル100%、太さが150D/144Fの裏糸を用いてパイル状に編成することにより生地を作成した。
本例では、裏側の起毛処理前の各ループの長さが、ほぼ8.6mm程度であり、起毛処理によって各起毛の長さが約4.3mm程度となり、これら起毛が互いに絡み合うことで皮膜層形成後の起毛部の厚みは3.25mmとなった。
この生地を起毛処理し、原手に縫製して皮膜を形成方法は、実施例1と同じ方法、薬剤を用いて行った。
NBRの皮膜層の厚みは、実施例1と同様、0.43mmである。
【0044】
(比較例3;従来の防寒用手袋)
表側を実施例1と同じ綿100%、32番手単糸の表糸を用いて編成するとともに、裏側(起毛部)をウーリーポリエステル100%、太さが150D/96Fの裏糸を用いてパイル状に編成することにより生地を作成した。
裏側の起毛処理前の各ループの長さ、各起毛の長さ、起毛が互いに絡み合った皮膜層形成後の起毛部の厚みは、上記比較例2と同じである。この生地を起毛処理し、原手に縫製して皮膜を形成方法は、実施例1と同じ方法、薬剤を用いて行った。NBRの皮膜層の厚みは、実施例1と同様、0.43mmである。
【0045】
これら実施例1、比較例1、2、3の糸の太さや起毛部、皮膜の厚み等の違いをまとめたものを、下記の表1、2に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
(耐熱性の比較試験)
実施例1および比較例1に対し、耐熱性を比較検討するため、それぞれ熱湯中で継続作業可能な時間について、パネラー5名によって60℃〜90℃まで熱湯温度を変えて測定し、その平均で評価した。なお、測定中は、熱湯中で手袋を嵌めた手指を屈伸させて食器洗いの作業を模した動作を行った。
測定結果を、下記表3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
表3の測定結果より、比較例1の従来の家庭用手袋では、60℃の熱湯中においては作業可能であるが、70℃の熱湯中では作業可能な時間が20秒と非常に短く、80℃以上の熱湯中では、ほとんど作業を行うことが不可能であることが分かる。
これに対し、本発明に係る実施例1の手袋では、90℃の熱湯中においても45秒と十分な作業時間が確保でき、より断熱性に優れていることが分かる。
【0051】
このように実施例1の手袋は、皮膜層の厚みが比較例1とほぼ同様の0.43mmであるにもかかわらず5〜6倍の断熱性を有しており、当該耐熱性の違いは、起毛部(植毛部)の違いが大きく反映していることが分かる。
すなわち、実施例1では、起毛により比較例1の静電植毛に比べて当該層を厚く構成でき、しかも、起毛が互いに絡まりあっているため手に嵌めた状態において静電植毛のように簡単に毛が寝てしまうことがなく、空気層が維持されるため、耐熱性に有意差を持たせることが出来ることが分かる。
【0052】
(炊事作業性・嵌め心地の比較試験)
次に、実施例1、比較例2および比較例3に対し、食器持ち運びの作業性と嵌め心地についてパネラー5名によって対比評価を行った。
それぞれ、◎ …非常に良い、○ …良い、△・・・良くない、×・・・悪いの四段階で評価した結果を、下記表4に示す。
【0053】
【表4】

【0054】
表4の結果より、起毛部の厚みと糸の太さの違いにより、作業性が大きく違い、嵌め心地にも影響したことが分かる。
比較例2、3のように起毛部が厚すぎると全体の厚みも増し、細かい作業等がしにくくなるし、起毛部の糸が太いことから起毛が密となり、屈曲性が低下して同じく作業性が悪化した。
また、防寒用であれば起毛部が厚くても嵌め心地は良いかもしれないが、家庭等における炊事用としては、比較例2、3の手袋のように起毛部が厚く起毛が密になるとごわごわ感が増し、爽快感が低下するとともに熱がこもりやすく汗ばんだ感じとなり嵌め心地は低下した。
ただし、繊維1本の太さが1.1デニール以下の比較例2では、嵌め心地は「△」となり、1.56デニールの比較例3に比べて良く、糸の太さが同じでも繊維1本の太さが細いと嵌め心地が向上することが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
手袋内側面を、太さ100デニール以下の裏糸によりパイル状に編成し、当該パイル面を起毛処理して平均厚み1.0mm以上の起毛部を形成するとともに、手袋表側面に、ゴム又は樹脂皮膜を形成してなることを特徴とする手袋。
【請求項2】
前記起毛部の平均厚みが、2.5mm以下である請求項1記載の手袋。
【請求項3】
前記裏糸を構成している繊維1本あたりの平均太さが、1.1デニール以下である請求項1又は2記載の手袋。
【請求項4】
前記ゴム又は樹脂皮膜の平均厚みが、0.1〜0.7mmである請求項1〜3の何れか1項に記載の手袋。
【請求項5】
原手を構成する生地の手袋内側面を、太さ100デニール以下の裏糸によりパイル状に編成し、
当該パイル面を起毛処理することにより、平均厚み1.0mm以上の起毛部を形成した後、
当該生地を縫製して原手を構成し、
該原手の手袋表側面にゴム又は樹脂皮膜を形成してなる手袋の製造方法。


【公開番号】特開2007−63720(P2007−63720A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253262(P2005−253262)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(591161900)ショーワグローブ株式会社 (39)
【Fターム(参考)】