説明

手袋及び手袋の製造方法

【課題】断熱性、耐寒性及びクッション性を有しつつ、グリップ性及び柔軟性に優れる手袋の提供をする。
【解決手段】多層構造を有する手袋であって、少なくとも掌領域が、第一基布2と、この第一基布に重畳された第二基布3と、上記第一基布の第二基布側と反対側の面へのゴム又は樹脂組成物の被覆により得られるコーティング層5とを備え、上記第二基布が、第一基布側に突出する凸状部を有し、上記コーティング層が、少なくとも上記凸状部の先端部まで含浸されていることを特徴とする。当該手袋は、上記第一基布が外側に配設され、第二基布が内側に配設されるとよく、また、上記コーティング層中に第二基布の凸状部全体が実質的に埋設されているとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手袋及び手袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手袋は、例えば工場等において作業者が着用したり、運搬作業に際して作業者が着用したり、ドライブの際にドライバーが着用して使用されている。このような手袋としては、手に伝わる衝撃を吸収又は緩和したり、断熱性や防寒性を付与することを目的として、繊維製手袋を複数枚重ねた手袋が知られている。
【0003】
上記のような複数枚重ねた手袋としては、例えば織布等に樹脂を被覆して形成した外側手袋と、織布等からなる内側手袋とからなる多層構造を有するものが提案されている(特開平4−361602号公報参照)。この特開平4−361602号公報に記載の手袋は手の甲側の外側手袋及び内側手袋と、掌側の外側手袋及び内側手袋とが手袋周辺部で縫着されている。
【0004】
しかし、上記特開平4−361602号公報に記載された手袋は、手の甲側と掌側のそれぞれが外側手袋及び内側手袋からなる二層構造を有しており、これらを重ねて縫着すると縫着部分では4層構造となる。そのため、縫着部分は他の部分よりも可撓性に劣り、特に指部においては両側面に上記4層構造が存在するため、指が曲げにくくなり、手袋を装着した状態での細やかな作業の妨げとなるおそれがある。また、上記特開平4−361602号公報に記載されている手袋は、外側手袋及び内側手袋が手袋周辺部で縫着されているだけなので、掌中央部分等では外側手袋と内側手袋とが作業中にズレやすく、手袋を装着して何かを掴もうとする場合に外側手袋と内側手袋の間で滑ってしまい、十分なグリップ性を発揮することができず作業性を低下させるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−361602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これらの不都合に鑑みてなされたものであり、断熱性及びクッション性を有しつつ、グリップ性及び柔軟性に優れる手袋の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
多層構造を有する手袋であって、
少なくとも掌領域の一部が、
第一基布と、
この第一基布に重畳された第二基布と、
上記第一基布の第二基布側と反対側の面へのゴム又は樹脂組成物の被覆により得られるコーティング層とを備え、
上記第二基布が、第一基布側に突出する複数の凸状部を有し、
上記コーティング層が、少なくとも上記凸状部の先端部まで含浸されていることを特徴とする手袋である。
【0008】
当該手袋は、少なくとも掌領域の一部に第一基布、第二基布及びコーティング層による多層構造が配設されるので、被把持物を把持した際の断熱性及びクッション性に優れている。また、上記第二基布の有する凸状部が第一基布側に突出し、上記コーティング層が少なくとも上記凸状部の先端部まで含浸することにより、上記第一基布と上記第二基布とがコーティング層を介して連結されることになる。そのため、第一基布と第二基布とが作業中にズレることを防止することができ、その結果、当該手袋に優れたグリップ力を付与することができる。さらに、上記のように第一基布と第二基布とをコーティング層によって連結していても、上記凸状部の存在によって第二基布の凸状部以外の布状部分と第一基布との間に中空部(空隙)を存在させることができるため、これにより各層が上記のように連結された多層構造となり当該手袋は十分な柔軟性を有する。
【0009】
当該手袋は、上記第一基布が外側に配設され、第二基布が内側に配設されるとよい。当該手袋の外側に配設された第一基布の外面への被覆によりコーティング層は形成されているので、被把持物を把持した際にコーティング層が被把持物に接触し、これにより十分なグリップ力が得られる。
【0010】
上記コーティング層中に第二基布の凸状部全体が実質的に埋設されているとよい。このように第二基布の凸状部全体がコーティング層の中に埋設されていることにより、上記第一基布と第二基布とが強固に連結され、第一基布と第二基布とのズレを的確且つ確実に防止することができる。
【0011】
上記凸状部としては、ループパイルのものを採用することが好ましい。ループパイルの凸状部を採用することによって、例えば、カットパイルを採用する場合に比べて第二基布の凸状部以外の布状部分と第一基布との間に中空部を大きく存在させることができる。つまり、例えばコーティング層が凸状部の先端部まで含浸されている場合(凸状部の根元まで含侵されていない場合)、ループパイルはカットパイルに比べて倒れにくいので、第二基布の凸状部以外の布状部分と第一基布との離間距離を保ちやすくなり、上記中空部が大きくなる。また、例えば、コーティング層がループパイルの先端部から根元方向にまで含侵されている場合(例えばループパイル全体がコーティング層の中に埋設されている場合)には、ループパイルのループ形状内(ループ形状に囲堯される部位)に中空部(空隙)が形成されやすい。つまり、ループパイルの先端部から含侵されたコーティング層形成材料(ゴム又は樹脂組成物)が、ループ同士の間(ループ形状の外側)に含侵されやすいもののループ形状内には含浸され難く、このため上記のようにループ形状内に中空部が形成されやすい。そして、このようにループ形状内に中空部を有すると、この中空部によって当該手袋のクッション性及び柔軟性、断熱性がより向上する。
【0012】
当該手袋は、上記第二基布のゲージが5ゲージ以上15ゲージ以下であるとよい。第二基布のゲージを上記範囲とすることにより、手袋として充分な強度及び耐久性を有すると同時に、当該手袋が優れた柔軟性を発揮することができる。
【0013】
また、当該手袋は、上記第二基布のパイル密度が25本/inch以上400本/inch以下であるとよい。第二基布のパイル密度を上記範囲とすることにより、第二基布が充分な数のパイルを有することとなり、結果として、当該手袋が優れた断熱性及びクッション性を発揮することができる。なお、ここで「本/inch」とは、1インチ四方の基布に存在するループパイルの本数を意味する。よって、ループパイルの先端がカットされて形成されるカットパイルの場合は、カット前の当初存在したループパイルの数をパイル密度とする。具体的には、カットパイルのパイル密度が「200本/inch」の場合は、1インチ四方の基布に200本のループパイルが存在していたことを意味するため、カットされた後のカットパイルの本数は2倍の400本となり、結果として1インチ四方の基布から400本のカットパイルが実際には延出していることを意味する。
【0014】
上記第二基布に用いる繊維の繊度は、手袋の用途に応じて適宜変更すればよいが、例えば210dtex以上8000dtex以下であるとよい。第二基布に用いる繊維の繊度を上記範囲とすることにより、手袋として充分な強度及び耐久性を有すると同時に、当該手袋がゴワつくことなく、優れた着用感を発揮することができる。
【0015】
また、第二基布のパイル長が0.1mm以上5mm以下であるとよい。第二基布のパイル長を上記範囲とすることにより、第一基布と第二基布との間に充分な離間距離を有することができる。その結果、断熱性及びクッション性をより向上することができる。なお、「パイル長」とは、基布から伸出しているパイルの長さであって、パイルを一直線に伸ばした状態での最長値を意味する。
【0016】
上記コーティング層を構成する材料が主成分としてジエン系ゴムを含むとよい。コーティング層を構成する材料の主成分として、ゴム成分の主鎖に二重結合を含むジエン系ゴムを用いることにより、コーティング層の弾性、耐久性、耐候性等の諸特性が向上し、当該手袋の耐久性等が向上する。なお、上記「主成分」とはコーティング層を形成する成分のうち最も多い成分を意味する。
【0017】
また、上記課題を解決するためになされた発明は、
少なくとも掌領域の一部で外側に向けて突出する複数の凸状部を有する第二基布を備える内側手袋と、第一基布を備える外側手袋とをそれぞれ形成する繊維性手袋形成工程と、
内側手袋の外側に外側手袋を重畳する手袋重畳工程と、
外側手袋の外面のうち少なくとも掌領域の一部へゴム又は樹脂組成物を被覆してコーティング層を形成するコーティング層形成工程と
を有し、
上記コーティング層形成工程において、上記コーティング層を少なくとも上記凸状部の先端部まで含侵させる
手袋の製造方法である。
【0018】
当該手袋の製造方法によれば、少なくとも掌領域が、第一基布と、この第一基布に重畳された第二基布と、上記第一基布の第二基布側と反対側の面へゴム又は樹脂組成物を被覆して得られるコーティング層とを備え、上記第二基布が、第一基布側に突出する凸状部を有し、上記コーティング層が、少なくとも上記凸状部の先端部まで含浸されている多層構造を有する手袋を製造することができる。そして、この手袋は、既述のように断熱性、クッション性、グリップ性及び柔軟性に優れている。
【0019】
なお、本発明における「凸状部」とは、第二基布の布状部分から突出しているものを意味し、上述のループパイルやカットパイル以外にも、フィラメント状のものや突出壁のようなものも含まれる。また、このような凸状部を有する第二基布は、編物、織物、又はいわゆる三次元立体編物(例えばフュージョン(登録商標)(旭化成せんい株式会社製)、キュービックアイ(登録商標)(株式会社ユニチカテクノス製)、3Dファブリックス(住江織物株式会社製)等)と呼ばれるものも含まれる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、当該手袋は、断熱性及びクッション性を有しつつ、グリップ性及び柔軟性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る手袋を甲側から見た一部切り欠き図である。
【図2】図1の手袋の模式的断面図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る手袋を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の第三実施形態に係る手袋を示す模式的断面図である。
【図5】本発明の第四実施形態に係る手袋を示す模式的断面図である。
【図6】本発明のその他の実施形態に係る手袋を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。
【0023】
[第一実施形態]
図1及び図2の手袋1は、第一基布2からなる外側手袋と、第二基布3からなる内側手袋とが重畳された手袋である。つまり、第一基布2が外側に配設され、第二基布3が内側に配設されている。この第二基布3には、凸状部として、外側(第一基布2側)に向けて突出する複数のパイル4を有している。また、当該手袋1は、掌(指を含む)領域、その側部領域及び指先端領域にコーティング層5を備えている。このコーティング層5は、第一基布2の第二基布3と反対側へのゴム又は樹脂組成物の被覆により得られる。
【0024】
<第一基布>
上記第一基布2は、外側手袋を構成するものであり、この第一基布2を手袋状に形成したものが外側手袋として用いられる。上記第一基布2は編布から構成されている。なお、第一基布2の素材は、編布に限定されるものではなく、例えば織布、不燃布等を用いることができる。
【0025】
上記第一基布2を手袋状に形成する手段としては、特に限定されず、例えば、縫い目なく編み上げるシームレス編を用いることができる。なお、その他、原反を抜き型で手袋の形に抜き取り、これを縫い合わせて手袋状に形成する縫製手袋も採用可能であるが、縫合部分がなく、手袋1としての柔軟性に優れる点においてシームレス編で第一基布2を手袋状に形成することが好ましい。
【0026】
上記第一基布2の厚みは、特に限定されず、例えば、1mm以下とすることができ、0.1mm以上1mm以下が好ましく、より好ましくは0.2mm以上0.5mm以下である。第一基布2の厚みが上記下限値よりも小さいと、手袋自体の強度に欠け、耐久性が低下するおそれが生じ、一方、第一基布2の厚みが上記上限値よりも大きいと、着用時における作業性が低下する。なお、上記第一基布2の厚みは、例えば商品名「ダイヤルシクネスゲージDS−1211(新潟精機株式会社製)」を用い、掌中央部半径2cm円内の任意の5箇所において測定した結果の平均値とすることができる。
【0027】
上記第一基布2を構成する繊維としては、特に限定されず種々の繊維を採用することが可能である。このような繊維としては、例えば、ウーリーナイロン、ポリエステル繊維、綿、麻、レーヨン繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、高強度ポリエチレン繊維、ポリウレタン繊維、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(商品名:「ケブラー(登録商標)」、デュポン社製等)、高密度ポリエチレン繊維(商品名:「ダイニーマ(登録商標)」、東洋紡績株式会社製等)、またはステンレスワイヤーをナイロン等でカバーリングした繊維等が挙げられる。
【0028】
上記第一基布2のゲージとしては、例えば、横編機を用いて作製する場合、5ゲージ以上26ゲージ以下が好ましく、13ゲージ以上26ゲージ以下がより好ましい。第一基布2のゲージを上記範囲とすることにより、後述するコーティング層5が手袋1の柔軟性を損なうほどに厚くなりにくく、ゴム又は樹脂組成物等の含浸を妨げない点で好ましい。なお、ゲージを高くする程、第一基布2は優れた柔軟性を有し、手袋1の触感が柔らかくなる。
【0029】
<第二基布>
上記第二基布3は編布から構成されている。また、凸状部として第一基布2側に向けて突出する複数のパイル4は、この第二基布3を構成する繊維と同一の繊維から形成されている。なお、第二基布3の素材としては、上記編布に限定されず、例えば織物、不燃布等を用いることができる。そして、この第二基布3を手袋状に形成したものが内側手袋として用いられる。なお、内側手袋において、手袋状に形成する方法は、外側手袋と同様とすることができる。
【0030】
上記第二基布3のゲージとしては、例えば、横編機にて作製した場合、5ゲージ以上13ゲージ以下が好ましく、7ゲージ以上13ゲージ以下がより好ましく、7ゲージ以上10ゲージ以下がさらに好ましい。第二基布3のゲージを上記範囲とすることにより、当該手袋1が手袋として充分な強度及び耐久性を有すると同時に、優れた着用感を発揮することができる。
【0031】
なお、上記第二基布3を構成する繊維の繊度は、編機や使用する糸の種類によって適宜変更すればよいが、例えば糸にウーリーナイロンを用い、10ゲージのパイル編機を用いて第二基布3を作製した場合は、地糸とパイル糸を併せて420dtex以上1000dtex以下であることが好ましく、同様に糸にウーリーナイロンを用い、7ゲージのパイル編機を用いた場合は、地糸とパイル糸を併せて420dtex以上5000dtex以下であることが好ましく、さらに同様に糸にウーリーナイロンを用い、13ゲージのパイル編機を用いた場合には地糸とパイル糸を併せて210dtex以上560dtex以下であることが好ましい。上記第二基布3を構成する繊維の繊度が上記上限値を超えると、編機のニードルベッドの影響から第二基布3を作製することが困難となるおそれがあり、一方、下限値を下回ると編成中に糸が切れて基布作製の不良率が向上するおそれがある。
【0032】
上記パイル4の形状としては、先端がループ状に構成されているループタイプを採用しているが、このループパイルの先端がカットされて形成されるカットタイプでもよい。なお、これらのループパイル又はカットパイルは起毛処理が施されていてもよい。
【0033】
上記パイル4のパイル長Lとしては0.1mm以上5mm以下が好ましく、0.5mm以上4mm以下がより好ましく、1mm以上3mm以下がさらに好ましい。第二基布3のパイル長Lを上記範囲とすることにより、当該手袋1がクッション性等を得るに十分な中空部6を第一基布2と第二基布3との間に設けることができ、また当該手袋1が厚くなり過ぎることを防止できる。なお、上記パイル4のパイル長Lは、ループ形状が維持されているパイル4(パイルの先端部がコーティング層5によって押しつぶされた形状のパイルを除く)の平均高さである。
【0034】
上記第二基布3における上記パイル4のパイル密度としては25本/inch以上400本/inch以下が好ましく、30本/inch以上200本/inch以下がより好ましく、35本/inch以上150本/inch以下がさらに好ましい。第二基布3における上記パイル4のパイル密度を上記範囲とすることにより、第二基布3から充分な量のパイル4が突出し、結果として、当該手袋1が優れた断熱性、耐寒性及びクッション性を有することができる。
【0035】
上記第二基布3の厚みは特に限定されず、例えば、2.5mm以下とすることができ、0.2mm以上2mm以下が好ましく、より好ましくは0.5mm以上1.8mm以下である。上記第二基布3の厚みが上記下限値を下回ると手袋の作製が困難となるおそれがあり、上記上限値を超えると着用時における作業性が低下するおそれがある。なお、厚み測定は第一基布2と同様である。
【0036】
<コーティング層>
このコーティング層5は、第一基布2の第二基布3と反対側へのゴム又は樹脂組成物の被覆により形成されている。このコーティング層5は、第一基布2の裏面まで含侵するとともに、第二基布3のパイル4の少なくとも先端部に含浸し、図2に示すようにパイル4の先端部から若干内側まで含侵されている。
【0037】
上記ゴム又は樹脂組成物は、主成分のゴム又は樹脂、溶媒及びその他の添加剤を含有する。このゴム又は樹脂としては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリウレタン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン樹脂、シリコーン樹脂、ブチルゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ウレタンゴム、塩素化ポリエチレン、エピクロヒドリンゴム、エチレン−プロピレンゴムあるいはこれらをブレンドしたもの等が挙げられる。これら中でも、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等のジエン系ゴム、ポリウレタン樹脂を用いることが好ましく、アクリロニトリルブタジエンゴムが経済面、加工面、弾性、耐久性、耐候性等の点で特に好ましい。
【0038】
上記溶媒としては、例えば水、有機溶媒等が挙げられる。特に、溶媒として水を用い、上記ゴム又は樹脂を分散させたラテックスが好ましい。上記主成分がアクリロニトリルブタジエンゴムの場合、アクリロニトリルブタジエンゴムと水との混合物としては、例えばNipol(登録商標)Lx−550(日本ゼオン株式会社製)、Nipol(登録商標)Lx−551(日本ゼオン株式会社製)、PERBUNAN(登録商標)N LATEX X 1138(PolymerLatex社製)等の市販のラテックスを好ましく用いることができる。このようなラテックスを用いることによって、第一基布2への被覆によりコーティング層5を容易かつ確実に形成することができる。
【0039】
また、上記ゴム又は樹脂組成物の主成分がゴムの場合は、加工性やゴム被膜の柔軟性及び強度を向上させるために、添加剤として、公知の金属酸化物、加硫促進剤、硫黄、界面活性剤、老化防止剤、pH調整剤又は充填剤等を適宜配合することが好ましい。
【0040】
上記金属酸化物としては、例えば酸化亜鉛、酸化鉛、四酸化三鉛などが挙げられる。これらは単独で又は必要に応じ2種以上を組み合わせて用いられる。上記金属酸化物の配合量は、ゴムの固形分100質量部に対して1質量部以上3質量部以下が好ましい。金属酸化物の配合量が1質量部未満では架橋が十分でないために引張強度及びモジュラスの基本特性が得られにくく、一方、金属酸化物の配合量が3質量部を超えると金属架橋が進み、手袋にした際にごわごわとした触感となる傾向が生じるためである。
【0041】
上記加硫促進剤としては、例えばチウラム系、ジチオカーバメート系、チオウレア系、グアニジン系の加硫促進剤が使用できるが、中でもジチオカーバメート系のものが好ましい。加硫促進剤の配合量は、ゴムの固形分100質量部に対し0.5質量部以上5.0質量部以下が好ましい。加硫促進剤の配合量が0.5質量部未満では、加硫の促進効果が十分でなく、一方、加硫促進剤の配合量が5.0質量部を超えると、硬い触感の手袋となったり、初期加硫が進み、スコーチ現象を起こすなどの問題が発生する場合がある。
【0042】
上記硫黄の配合量としては、ゴムの固形分100質量部に対し0.1質量部以上3.0質量部以下が好ましい。硫黄の配合量が0.1質量部未満では架橋が十分でないために、引張強度およびモジュラス(引張応力)の基本特性が得られにくく、一方、硫黄の配合量が3.0質量部を超えると、モジュラスが高すぎて手袋にした際にごわごわとした触感となる傾向がある。
【0043】
上記界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム、ロジン酸石鹸、脂肪酸石鹸などが挙げられる。これらは単独で又は必要に応じて2種以上を組み合わせて用いられる。上記界面活性剤の配合量は、ゴムの固形分100質量部に対し0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましい。界面活性剤の配合量が0.1質量部未満では、ラテックスの安定性が不十分となりやすく、一方、界面活性剤の配合量が5.0質量部を超えると、ラテックスが安定となり過ぎ、被膜が形成しにくくなる傾向がある。
【0044】
上記老化防止剤としては、例えばナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系、キノリン系、ハイドロキノン誘導体系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系、イミダゾール系、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系、亜リン酸エステル系、有機チオ酸系、チオウレア系等の化合物が挙げられる。上記老化防止剤の配合量は、ゴムラテックスの固形分100質量部に対し0.5質量部以上5.0質量部以下が好ましい。老化防止剤の配合量が0.5質量部未満では、劣化を遅延させる十分な効果が得られにくく、一方、老化防止剤の配合量が5.0質量部を超えると、特に劣化を遅延させる効果が増大するわけでもなく、さらには強度が低下する場合もある。
【0045】
上記pH調節剤としては、ラテックスの安定化や塗膜の厚み調節の目的で、アルカリあるいはアミノ酸、酢酸などの弱酸が使用できる。アルカリとしては、水酸化カリウム、アンモニアなどが、弱酸としては、グリシンなどが挙げられる。これらは単独で又は必要に応じて2種以上を組み合わせて用いられる。これらのpH調節剤は、ラテックスの安定性を損なわないよう使用前に水溶液として添加されるのが好ましい。また、硬化前のゴムのpHとしてはpH9.0以上pH10.5以下となるようにpHを調整することが好ましい。硬化前のゴムのpHが9.0を下回ると、凝集物が発生し始め、一方、硬化前のゴムのpHが10.5を超えるとゴムのアルカリが過多となり、ゴムが固化する場合がある。
【0046】
上記充填剤としては、例えばシリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム、珪藻土、アルミナ、酸化鉄、酸化スズなどの酸化物系充填剤;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛などの炭酸塩系充填剤;クレー、カリオナイト、パイロフィライトといったケイ酸アルミニウム;タルクのようなケイ酸マグネシウム;ウォラストナイト、ゾノトライトといったケイ酸カルシウム;ベントナイト、ガラスビーズ、ガラス繊維などのケイ酸塩系充填剤;窒化物系充填剤などが挙げられる。これらは単独で又は必要に応じて2種以上を組み合わせて用いられる。上記充填剤の配合量は、ゴムの固形分100質量部に対し0.1質量部以上15質量部以下が好ましい。充填剤の配合量が0.1質量部未満では、充填剤添加の効果が十分に得られる場合が少なく、一方、充填剤の配合量が15質量部を超えるとゴムの安定性が損なわれる場合がある。
【0047】
また、上記コーティング層5の膜厚を厚くしたい場合などは増粘剤を添加することができる。増粘剤としては、例えば、ポリアクリル酸系、セルロース系等の増粘剤が挙げられる。コーティング層5を構成するための材料の粘度は、BH型粘度計にて測定したV値が1000mPa・s以上2000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1300mPa・s以上1700mPa・s以下である。コーティング層5を構成するための材料の粘度が上記下限値より小さいと、コーティング層5の厚みが薄くなり十分な耐久性が得られないおそれがある。また、コーティング層5を構成するための材料の粘度が、上記上限値より大きいと材料に泡が混入しやすくコーティング層5の外面に不用意に凹み等が形成されてしまうことにより、手袋としての耐久性が低下するおそれがある。
【0048】
上記添加剤としては、上記以外にも、例えば可塑剤、安定剤、界面活性剤、増粘剤、顔料、着色剤、湿潤剤、消泡剤等を適宜用いることができる。これらは単独で又は必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
上記構成からなる当該手袋1にあっては、少なくとも掌領域の一部に第一基布2、第二基布3及びコーティング層5による多層構造が配設されるので、被把持物を把持した際の断熱性及びクッション性に優れている。また、上記第二基布3の有するパイル4が第一基布2側に突出し、上記コーティング層5が少なくとも上記パイル4の先端部まで含浸することによって、上記第一基布2と上記第二基布3とがコーティング層5を介して連結されることになる。そのため、第一基布2と第二基布3とが作業中にズレることを防止することができ、その結果、当該手袋1に優れたグリップ力を付与することができる。さらに、上記のように第一基布2と第二基布3とをコーティング層5によって連結していても、パイル4の存在によって第二基布3のパイル4以外の布状部分と第一基布2との間に中空部6を存在させることができ、これにより各層が上記のように連結された多層構造は十分な柔軟性、断熱性を有する。
【0050】
また、当該手袋1は上記第一基布2が外側に配設され、第二基布3が内側に配設され、この第一基布2の外面からの被覆によりコーティング層5が形成されているので、被把持物を把持した際にコーティング層5が被把持物に接触し、これにより十分なグリップ力が得られる。また、このコーティング層5は、第二基布3の内面まで含侵されておらず、着用者の手にコーティング層5が触れず第二基布3が触れるため肌触りがよい。
【0051】
また、当該手袋1は、ループタイプのパイル4を採用しているため、カットタイプのものを採用する場合に比べて第二基布3のパイル4以外の布状部分と第一基布2との間に中空部6を大きく存在させることができる。つまり、ループタイプのパイル4はカットタイプのものに比べて倒れにくいので、第二基布3のパイル4以外の布状部分と第一基布2との離間距離を保ちやすくなり、上記中空部6が大きくなるためである。このように第二基布3のパイル4以外の布状部分と第一基布2との間の中空部6を大きくすることにより、当該手袋1のクッション性、断熱性及び柔軟性がより向上する。
【0052】
当該手袋1は、上記第二基布3のゲージが5ゲージ以上15ゲージ以下であるため、手袋として充分な強度及び耐久性を有すると同時に、当該手袋1が優れた柔軟性を発揮することができる。
【0053】
また、当該手袋1は、上記第二基布3のパイル密度が25本/inch以上400本/inch以下であるため、第二基布3が充分な数のパイルを有することとなり、結果として当該手袋1が優れた断熱性及びクッション性を発揮することができる。
【0054】
さらに、第二基布3のパイル長Lが0.1mm以上5mm以下であるため、第一基布2と第二基布3との間に充分な離間距離を有することができる。その結果、断熱性及びクッション性をより向上することができる。
【0055】
次に、上記構成からなる当該手袋1の製造方法について概説するが、本発明の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0056】
上記手袋1の製造方法は、上記パイル4を有する第二基布3を備える内側手袋と、第一基布2を備える外側手袋とをそれぞれ形成する繊維性手袋形成工程と、内側手袋の外側に外側手袋を重畳する手袋重畳工程と、外側手袋の掌領域の外面へのゴム又は樹脂組成物の被覆によりコーティング層5を形成するコーティング層形成工程とを有している。
【0057】
上記繊維性手袋形成工程は、ウーリーナイロン等からなる繊維を手袋状に編製して、外側手袋及び内側手袋を形成する工程である。なお、この繊維性手袋形成工程にて、内側手袋は、第二基布3の外面からパイル4が突設するように形成される。
【0058】
上記手袋重畳工程は、上記繊維性手袋形成工程により形成された外側手袋及び内側手袋を、立体手型等を用いて第一基布2が外側に配設され、第二基布3が内側に配設されるように重畳する工程である。具体的には、立体手型にパイル地が表面となるように内側手袋を被せ、その上から外側手袋を被せ重畳させる。
【0059】
また、上記コーティング層形成工程は、上記重畳した手袋の最外面となる第一基布2の外面にゴム又は樹脂組成物、並びに溶剤等を含むコーティング層形成材料を被覆する工程である。具体的には、立体手型に被せ重畳した手袋に凝固剤を含浸させ、その後、この手袋をコーティング層形成材料に少なくとも掌領域を浸漬させた後、引き上げ、加熱加硫させてコーティング層形成材料を固化させ、コーティング層5を形成する工程である。
【0060】
上記、コーティング層形成工程で用いる凝固剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、短時間で凝固効果が得られる点で硝酸カルシウムが好ましい。また、上記凝固剤の溶媒としては、例えばメタノール又は水等が挙げられる。
【0061】
凝固剤の濃度としては、例えば凝固剤として硝酸カルシウムを、また溶媒としてメタノールを用いた場合、0.1質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.15質量%以上0.45質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上0.4質量%以下がさらに好ましい。凝固剤の濃度が上記下限値を下回ると、コーティング層形成材料の凝固能力が低下して第二基布3の内面にまでコーティング層5が含浸する恐れがあり、一方、凝固剤の濃度が上記上限値を超えると、コーティング層5が厚くなりすぎて作業性の低い手袋となったり、第一基布2の内側にまでコーティング層形成材料が含浸せずに、第一基布2の表面でのみコーティング層5が形成され、第一基布2と第二基布3とが接着されないおそれがある。
【0062】
上記方法によれば、上記利点を有する当該手袋1を製造することができる。
【0063】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態の手袋11について、図3を参酌しつつ以下に説明する。図3の手袋11は、第一基布2、第二基布3及びコーティング層12を有している。この第一基布2及び第二基布3は上記手袋1と同様であるため同一番号を用いて説明を省略する。
【0064】
コーティング層12は、形成材料、形成手段等は上記手袋1と同様であるが、第二基布3への含浸程度が異なる。具体的には、第一基布2の裏面まで含侵するとともに、第二基布3の凸状部であるパイル4の中途部分まで含侵され、そのパイル長Lの略半分以上がコーティング層12に埋設している。このようにパイル長Lの半分以上がコーティング層12の中に埋設していることによって、第一基布2と第二基布3とが強固に連結される。また、パイル4のパイル長Lの半分以上がコーティング層12の中に埋設していることにより、パイル4のループ形状内(ループ形状に囲堯される部位)に中空部6が形成されやすい。つまり、パイル4の先端部から含侵されたコーティング層12が、ループ同士の間(ループ形状の外側)には含侵されやすいもののループ形状内には含浸され難く、このため上記のようにループ形状内に中空部6が形成されやすいものと推測される。そして、このようにループ形状内に中空部6を有すると、この中空部6によって当該手袋11のクッション性、断熱性及び柔軟性がより向上する。
【0065】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態の手袋21について、図4を参酌しつつ以下に説明する。図4の手袋21は、第一基布2、第二基布3及びコーティング層22を有している。この第一基布2及び第二基布3は上記手袋1と同様であるため同一番号を用いて説明を省略する。
【0066】
コーティング層22は、形成材料、形成手段等は上記手袋1及び手袋11と同様であるが、第二基布3への含浸程度が異なる。具体的には、上記コーティング層22は、第一基布2の裏面まで含侵するとともに、凸状部であるパイル4のループ形状の外部では根元まで含侵し、パイル全体がコーティング層32に埋設している。一方パイル4のループ形状の内部では、上記コーティング層22がパイル長Lの略半分以上の位置まで含浸しつつ、中空部6が存在している。これにより、第一基布2と第二基布3とがより強固に連結されると同時に、当該手袋21の柔軟性、断熱性及びクッション性がより向上する。
【0067】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態の手袋31について、図5を参酌しつつ以下に説明する。図5の手袋31は、第一基布2、第二基布32及びコーティング層34を有している。この第一基布2は上記手袋1と同様であるため同一番号を用いて説明を省略する。
【0068】
図6の手袋31の凸状部は、上述の実施形態とは異なり先端がループを構成しないカットタイプのパイル33によって構成されている。このように、凸状部がカットタイプのパイル33によって構成されることにより、第二基布32の全体にわたって中空部6が略均等に形成される。そのため、第一基布2と第二基布32とが強固に連結されると同時に、当該手袋31がより優れた柔軟性、断熱性及びクッション性を有することができる。
【0069】
[その他の実施形態]
尚、本発明は上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。 上記各実施形態において、上記第二基布は、上述のように第一基布側へ突出する凸状部を有するとともに、第一基布側と反対側(内側)へ突出する凸状部をさらに有していてもよい。このように、第二基布が両方向に突出する凸状部を有することによって当該手袋の断熱性、柔軟性及びクッション性をさらに向上させ、着用感を向上させることができる。また、第二基布の凸状部としては、表面部、連結部、裏面部からなる三次元立体編物で、表面部が網目構造となっているもの(例えばフュージョン(登録商標)(旭化成せんい株式会社製)、キュービックアイ(登録商標)(株式会社ユニチカテクノス製)、3Dファブリックス(住江織物株式会社製)等)等を用いることもできる。また、上記第一実施形態において、凸状部である複数のパイルは、第二基布を構成する繊維と同一の繊維から形成されているが、上記パイルは第二基布を構成する繊維と異なる繊維から形成されていてもよい。
【0070】
また、当該手袋は、上記コーティング層の外側に複数の突起部を有していてもよい。この複数の突起部は、コーティング層の全面にわたって形成されていても良いし、指部分のみに形成されていても、間接部分を除いて形成されていてもよい。このように、上記コーティング層の外側に複数の突起部を有することにより当該手袋のグリップ性を更に向上させることができる。また、上記実施形態では、コーティング層が甲領域の中央部には形成されない所謂背抜き状に設けられているが、袖部や甲部領域などにコーティング層が形成されるものも、本願発明の意図する範囲内である。
【0071】
上記各実施形態においては、第一基布の存在領域(第一基布を構成する糸の存在領域及びこの糸の間の空間部)の全体にわたってコーティング層が含浸されているものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図6に示すようにコーティング層が第一基布の存在領域の一部分に含浸され、第一基布の存在領域の他の部分に中空部が形成されているものも本発明の意図する範囲内である。つまり、この図6に示す手袋はコーティング層内に中空部が形成され、この中空部は第一基布の存在領域に形成されている。より具体的に説明すると、図6の第一基布は疎状態と密状態とに糸が配された編物から構成され、糸の密状態の箇所にはコーティング層が含浸され、糸の密状態の間に配される糸の疎状態の箇所に上記中空部が形成されている。なお、この中空部は第二基布側に延設されている。
【実施例】
【0072】
以下、実施例によって当該発明をさらに具体的に説明するが、当該発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
[実施例1]
10ゲージのパイル編機(型式SPG(株式会社島精機製))により作製したパイル編み手袋(パイル長さ:2mm)を、パイル地が表面となるように立体的な金属製手形に被せ、その上から、13ゲージの編機(型式N−SFG(株式会社島精機製))により作製した繊維性手袋を被せた。なお、上記繊維性手袋が第一基布を有する外側手袋に、パイル編み手袋が第二基布を有する内側手袋にそれぞれ該当する。
【0074】
この手形を80℃に加温した後、凝固剤として0.3質量%硝酸カルシウム/メタノール(99.9%)に浸漬し、引き上げた後、下記表1に示す配合量にて調製したゴム又は樹脂組成物に浸漬し、引き上げた。この浸漬作業は、手袋本体の掌領域がゴム又は樹脂組成物に浸漬され、掌領域の裏面の甲領域はできるだけ浸漬されないよう行った。ゴム又は樹脂組成物の粘度は1500cpsとなるよう調整した。その後、加熱加硫(130℃、40分間)を行い、ゴム又は樹脂組成物を固化させ、手形から手袋を離型して実施例1のクッション性を有する手袋を作製した。なお、図3の顕微鏡写真は、実施例1のクッション性を有する手袋の断面である。
【0075】
【表1】

【0076】
[実施例2]
第一基布の外表面全体が覆われるようにゴム又は樹脂組成物を浸漬した以外は実施例1と同様にして手袋を得た。
【0077】
[実施例3]
コーティング層形成材料に表2に記載のゴム又は樹脂組成物を使用した以外は実施例1と同様にして手袋を得た。
【0078】
【表2】

【0079】
[実施例4]
第二基布に厚さ2mmのフュージョン(登録商標)(旭化成せんい株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして手袋を得た。
【0080】
[実施例5]
第一基布に18ゲージの編機(型式N−SFG(株式会社島精機製))により作製した繊維性手袋を使用した以外は実施例1と同様にして手袋を得た。
【0081】
[比較例1]
比較例1は、パイル編み手袋を有さず、繊維性手袋に上記実施例1と同様のコーティング層を形成したものである。比較例1として、ショーワグローブ株式会社製の商品名「NBR GRIP」を用いた。
【0082】
[比較例2]
比較例2は、内側がフリース加工された繊維製手袋に上記実施例1と同様のコーティング層を形成したものである。比較例2として、ショーワグローブ株式会社製の商品名「NBR 水産フリース(軽防寒)」を用いた。
【0083】
[比較例3]
比較例3は、外側手袋として13ゲージ横編機で作製した綿繊維製手袋の表面に塩化ビニルを被覆した手袋を用い、内側手袋として7ゲージパイル編機で作製した繊維製手袋を用い、これらを重ねて得られた手袋である。上記内側手袋は片面にパイルを有しており、このパイルの表面は起毛処理され、この起毛処理されたパイルが上記外側手袋とは反対側に配設されて使用者の手と接触するように、上記外側手袋と重ねられている。比較例3として、ショーワグローブ株式会社製の商品名「PVC防寒」を用いた。
【0084】
(断熱性及び柔軟性試験)
実施例1〜5及び比較例1〜3の手袋について、手袋の断熱性及び柔軟性について比較試験を行った。断熱性の測定方法は、10名の被験者に、120℃に加熱した陶器棒を握ってもらい熱さに耐えきれずに手を離すまでの時間を測定して、その平均値を算出した。結果を下記の表3に示す。
【0085】
また、柔軟性の測定方法は、10名の被験者が実施例1〜5及び比較例1〜3の手袋を装着し、柔軟性に関して下記の評価点基準に基づいて評価した。次いで、各評価点の平均点を算出した。
【0086】
(柔軟性の評価点基準)
3点:柔軟性がある
2点:どちらともいえない
1点:柔軟性がない
【0087】
(結果)
上記評価の結果を下記表3に示す。
【0088】
【表3】

【0089】
上記試験の結果、上記表3に示すように、実施例1〜5の手袋は断熱性に優れ、熱いものを把持する場合において好適に用いることができるとともに、手袋として十分な柔軟性を有していることがわかる。
【0090】
(クッション性試験)
上記実施例1〜5、比較例1〜3の手袋を用いてクッション性の試験を行った。測定方法は、ゴムボール(直径28mm、クツワ株式会社製)を1mの高さから鉄板(厚さ8mm)上に自然落下させ、その跳ね返り率を測定した。なお、各サンプルにおけるN数は10である。具体的には、実施例1〜5及び比較例1〜3の手袋の掌部分から5cm×5cmの小片を切り出し、この切り出した小片を上記ステンレス板に固定して、小片部分でゴムボールを跳ね返らせた。結果を以下の表4に示す。ここで、比較例4とは、ステンレス板の表面に直接ゴムボールを自然落下させたときの跳ね返り率の測定結果である。
【0091】
【表4】

【0092】
この測定の結果、上記表4に示すように、実施例1〜5の手袋は優れたクッション性を示し、ゴムボールの衝突の際の衝撃を吸収して作業者の手に伝わる衝撃を和らげていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上のように、本発明の柔軟性、断熱性、クッション性及びグリップ性等に優れる手袋は、例えば工場等において作業者が着用したり、運搬作業に際して作業者が着用したり、ドライブに際してドライバーが着用したり、さらにはスポーツに際してプレーヤーが着用する等、種々の目的で用いることができる。
【符号の説明】
【0094】
1 手袋
2 第一基布
3 第二基布
4 凸状部
5 コーティング層
6 中空部
11 手袋
12 コーティング層
21 手袋
22 コーティング層
31 手袋
32 第二基布
33 凸状部
34 コーティング層
41 手袋
42 コーティング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造を有する手袋であって、
少なくとも掌領域の一部が、
第一基布と、
この第一基布に重畳された第二基布と、
上記第一基布の第二基布側と反対側の面へのゴム又は樹脂組成物の被覆により得られるコーティング層とを備え、
上記第二基布が、第一基布側に突出する複数の凸状部を有し、
上記コーティング層が、少なくとも上記凸状部の先端部まで含浸されていることを特徴とする手袋。
【請求項2】
上記第一基布が外側に配設され、第二基布が内側に配設される請求項1に記載の手袋。
【請求項3】
上記コーティング層中に第二基布の凸状部全体が実質的に埋設されている請求項1又は請求項2に記載の手袋。
【請求項4】
上記凸状部がループパイルである請求項1、請求項2又は請求項3に記載の手袋。
【請求項5】
上記ループパイルのループ形状内に中空部を有する請求項4に記載の手袋。
【請求項6】
上記第二基布のゲージが5ゲージ以上15ゲージ以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の手袋。
【請求項7】
上記第二基布のパイル密度が25本/inch以上400本/inch以下である請求項4、請求項5又は請求項6に記載の手袋。
【請求項8】
第二基布のパイル長が0.1mm以上5mm以下である請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の手袋。
【請求項9】
上記コーティング層を構成する材料が主成分としてジエン系ゴムを含む請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の手袋。
【請求項10】
少なくとも掌領域の一部で外側に向けて突出する複数の凸状部を有する第二基布を備える内側手袋と、第一基布を備える外側手袋とをそれぞれ形成する繊維性手袋形成工程と、
内側手袋の外側に外側手袋を重畳する手袋重畳工程と、
外側手袋の外面のうち少なくとも掌領域の一部へゴム又は樹脂組成物を被覆してコーティング層を形成するコーティング層形成工程と
を有し、
上記コーティング層形成工程において、上記コーティング層を少なくとも上記凸状部の先端部まで含侵させる手袋の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−67879(P2013−67879A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206010(P2011−206010)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(591161900)ショーワグローブ株式会社 (39)
【Fターム(参考)】