説明

手袋収納ケース

【課題】手袋引き出し時や、引き出し後も含め、外部からの埃等の侵入を防止することができ、引き出し時の手袋の破損も防止でき、従来の開封時のケースの破損も未然に回避でき、ケースの強度も維持でき、外観のデザイン性も向上させることができる手袋収納ケースを提供せんとする。
【解決手段】複数枚の手袋Gが積層した状態で収納される箱型のケース本体2と、該ケース本体2にヒンジ部30を介して回動可能に支持される板状の蓋体3とよりなり、上板25に手袋Gを上から一枚づつ引き出すための手袋取出口としての開口部10を開設し、前記蓋体3を上板25の上に重なった閉姿勢において開口部10を覆うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の手袋を収納し、一枚づつ取り出すことができる手袋収納ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の手袋収納ケースとしては、従来から、複数枚の手袋が積層した状態で収納される板紙等からなる箱型のケースであって、その上面にミシン目の切り取り線で囲まれた取り出し部が設けられ、該ミシン目に沿って取り出し部の板片を除去・開封して、開口した当該取り出し部から内部の手袋を一枚づつ取り出すことができるものが提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、このような従来の手袋収納ケースでは、一度、取り出し部の板片を除去して開封すると、当該取り出し部が開口した状態となり、外部の埃などの異物が容易に内部に侵入し、収納している手袋の汚れの原因となる。特に、手袋を使用する頻度が少ない場合には、次に引き出される最上段の手袋の上に多くの埃がたまってしまう。また、ミシン目に沿って取り出し部の板片を除去する際、当該ミシン目から出た紙屑が内部に入ってしまい、収納している手袋の汚れの原因になる。
【0004】
また、開封後の取り出し部の開口部の内縁が、全周にわたってミシン目の切り離し後に残るギザ状となり、これが手袋引き出し時に手袋に接触し、手袋が破損する原因となる。特に、近年薄肉化の傾向にある合成ゴム製の薄肉手袋などは、このようなギザ状の内縁部に接触するだけで破れの原因になりやすい。また、同じく開封後の取り出し部のギザ状の内縁に手袋が接触することで、当該ギザ状が破断して紙屑となり、取り出し部の開口から内部に侵入して手袋の汚れの原因になる。
【0005】
更に、取り出し部の板片をミシン目に沿って綺麗に切り取るには、相当慎重になる必要がある。とくに取り出し部は上板の中央に設けられ、板中央部は板自体が撓むことから、ミシン目に沿って綺麗に全周切断するのは難しく、作業が煩わしいと同時に、一部失敗して裂け目などができると、開封後のケースの強度低下、破損の原因にもなる。また、手袋収納ケースは工場や店舗、或いは配送中に上下に複数積み上げて管理、展示等される場面が多いが、上板にミシン目で囲まれた取り出し部が存在すると上板自体の強度が低下して撓みが生じやすく積み上げ時に不安定化するとともに、上側に積むケース底面の角部が下側のケースの取り出し部のミシン目に当たって使用前にミシン目が破断してしまうという虞もある。
【0006】
また、手袋商品の展示ケースとしても機能する手袋収納ケースの外面には、商品説明の表示を含めて絵柄等の綺麗なデザイン性を有する印刷が為されるが、従来のケースでは消費者にアピールする点で重要な上板の外面にミシン目が出てしまい、外観のデザイン性を損なう原因にもなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】登録実用新案第3038443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、手袋引き出し時や、引き出し後も含め、外部からの埃等の侵入を防止することができ、引き出し時の手袋の破損も防止でき、従来の開封時のケースの破損も未然に回避でき、ケースの強度も維持でき、外観のデザイン性も向上させることができる手袋収納ケースを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述の課題解決のために、複数枚の手袋が積層した状態で収納され、上板に手袋を引き出すための開口部が設けられた箱型のケース本体と、前記ケース本体にヒンジ部を介して回動可能に支持され、前記上板の上に重なった閉姿勢において前記開口部を覆う板状の蓋体とよりなることを特徴とする手袋収納ケースを構成した(請求項1)。
【0010】
ここで、前記蓋体を、前記ケース本体の上板又は側板に連続して一体的に形成するとともに、その境界となる上板又は側板の端辺部を前記ヒンジ部として、前記上板の上側に折り曲げ可能に構成したものが好ましい(請求項2)。
【0011】
また、前記蓋体が、前記ケース本体の上板とほぼ同一形状の蓋板と、該蓋板の前記ヒンジ部と反対側の先端部に延設され、内面方向に屈曲して前記ケース本体の側板に形成されたスリットに係止される係止板とよりなるものが好ましい(請求項3)。
【0012】
更に、前記ヒンジ部に沿って、前記蓋体を前記ケース本体から切り離すための切り取り案内溝を設けてなるものが好ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る手袋収納ケースによれば、あらかじめケース上板に手袋取り出し部として開口が設けられているので、従来のようなミシン目に沿った煩わしい切り取り作業が不要であり、ケースの破損も未然に防ぐことができるととともに、当該開口部を塞ぐための蓋体が回動可能に設けられていることから、手袋を引き出した後、この蓋体で開口を閉じることで外部からの埃や異物の侵入を防止することができる。また、開口部には従来のようなミシン目の切り離し後に残るギザ状も存在しないため、引き出し時の手袋の破損も生じず、近年の合成ゴム製の薄肉手袋にも十分対応できるケースを提供できる。更に、開口部を隠す蓋体が存在するため、強度アップと同時に、該蓋体の外面を印刷面として利用することで、外観のデザイン、商品としての見栄えを大幅に改善することができ、ミシン目に制限されることなく表示や絵柄などの美麗なデザインで消費者に商品をアピールできる。
【0014】
請求項2に係る手袋収納ケースによれば、蓋体を、ケース本体の上板又は側板に連続して一体的に形成するとともに、その境界となる上板又は側板の端辺部を前記ヒンジ部として、前記上板の上側に折り曲げ可能に構成したので、接着テープなどのヒンジ部材を別途用いることなく簡易な構造で蓋体を構成でき、製造コストを抑えることができるとともに、外観の面でもケース本体に蓋体が一体化した優れたデザインとなる。
【0015】
請求項3に係る手袋収納ケースによれば、蓋体が、ケース本体の上板とほぼ同一形状の蓋板と、該蓋板の前記ヒンジ部と反対側の先端部に延設され、内面方向に屈曲して前記ケース本体の側板に形成されたスリットに係止される係止板とよりなるので、前記広い面積の蓋板及び側板にまで回り込む係止板の存在により、蓋体を閉じた状態において開口部からの埃や異物の侵入をより確実に防止できるとともにケース全体の上面の強度も向上し、ミシン目も存在しないことから複数のケースを上下に積み重ねても容易に破損しないものとすることができる。
【0016】
請求項4に係る手袋収納ケースによれば、ヒンジ部に沿って蓋体をケース本体から切り離すための切り取り案内溝を設けてなるので、使用頻度が多い場合などに蓋体を切り離して蓋体を開閉することなく、手袋の引き出し作業を容易に行なうことができる。このような使用頻度が高い場合、埃が侵入しても手袋に溜まってしまうこともなく、問題は少なく、作業の容易化の効果が勝ることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の代表的実施形態に係る手袋収納ケースの蓋体を開いた状態を示す斜視図。
【図2】同じく手袋収納ケースの組み立て前の展開状態を示す説明図。
【図3】同じく手袋収納ケースの断面図。
【図4】同じく手袋収納ケースの蓋体を閉じた状態を示す斜視図。
【図5】同じく手袋収納ケースの蓋体を切り離した状態を示す斜視図。
【図6】同じく手袋収納ケースを上からみた平面図。
【図7】(a)は同じく手袋収納ケースを前からみた正面図、(b)は同じく後ろからみた背面図。
【図8】同じく手袋収納ケースを右横からみた右側面図。
【図9】同じく手袋収納ケースを底からみた底面図。
【図10】同じく手袋収納ケースの変形例の展開状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る手袋収納ケースを示す斜視図であり、図1〜9は代表的実施形態を示し、図中符号1は手袋収納ケース、2はケース本体、3は蓋体、Gは手袋をそれぞれ示している。
【0020】
本発明の手袋収納ケース1は、図1、図3及び図6〜図9に示すように、複数枚の手袋Gが積層した状態で収納される箱型のケース本体2と、該ケース本体2にヒンジ部30を介して回動可能に支持される板状の蓋体3とよりなり、前記上板25に、手袋Gを上から一枚づつ引き出すための手袋取出口としての開口部10が開設され、前記蓋体3が上板25の上に重なった閉姿勢において、図4に示すように開口部10を覆うように構成されたものであり、従来のケースに形成されていたミシン目を省略し、手袋引き出し時の破損を回避しつつ、開口部10を閉じる蓋体3を設けて外部からの埃や異物の侵入を防止し、強度面や外観面も向上した手袋収納ケースである。
【0021】
ケース本体2の形状は、本例では直方体形状とされているが、これに限定されず、例えば円柱形状や楕円柱形状、長円柱形状、多角柱形状など種々の形状に構成することが可能である。この場合、蓋体3もこれに合わせて形成すれば良い。ケース本体2の大きさ(寸法)についても、内部に収納する手袋のサイズに応じて適宜設定される。本例では、ケース全体を紙製、特に強度のある厚紙が用いられ、そのなかでも板紙が用いられているが、段ボール紙などで構成することも好ましい。また、紙製以外に合成樹脂シートからなるものや、紙と樹脂の複合シートよりなるものも好ましく、更に木製や金属板その他の素材から構成することも可能である。また、ケース本体と蓋体とを別の素材で構成しても勿論よい。
【0022】
手袋取出口としての開口部10の形状は、本例では長円形状としているが、引き出し時に縁部で手袋や手に負担が掛からない形状であれば、その他の形状も勿論可能である。また、開口部10の大きさ(寸法)についても、内部に収納する手袋のサイズに応じて、一枚づつ上から引き出しやすい寸法に適宜設定される。この開口部10は、ケース本体2の組み立て前の展開状態で予め上板25に打ち抜き等により形成されている。尚、本例では、上板25の略中央の位置に形成されているが、隅部に形成することも可能である。上板25の強度を維持するためには、本例のように略中央の位置に設け、隅部、特に端辺には至らない開口とすることが好ましい実施例である。
【0023】
収納される手袋としては、特に合成ゴム製の薄肉の手袋にも好適だが、特に限定されるものではなく、種々の手袋の収納ケースとして利用できる。本例では、各手袋を折り畳まずにそのまま積み重ねた状態で収納されているが、一枚一枚の手袋を折り畳んだ状態にしてそれを積み重ねて収納したものでもよい。また、このように積み重ねた手袋を直接ケース内に収納するのではなく、上側に取り出し口を有する合成樹脂製などの内袋に収納し、該内袋をケース内に収納するようにしてもよい。
【0024】
ケース本体2は、底板20と、その周囲の前後左右から上方に延びる4枚の側板(前板21、左板23、右板24、後板22)と、上板25を備えている。図2は、板紙を裁断後、ケースに組み立てる前の状態の展開図であり、上板25の糊代片25aを後板22の上端部に接着して筒状に構成した後、左右の側板を組み付けて箱状に構成される。左右の側板(左板23、右板24)は、内部の手袋が飛び出さないように強固な壁を構成するべく、二重、三重の板片が設けられている。具体的には、底板20の左右にそれぞれ内側板23A,24Aが設けられるとともに、前板21と後板22の左右にそれぞれ折込み片23a,24aと23b,24bが設けられ、更に、上板25の左右にそれぞれ外側板(左板23、右板24)が設けられている。
【0025】
そして、上記接着により筒状に形成したケースに対し、まず折込み片23a,24aと23b,24bを内側に直角に折り曲げた後、その外側に重なるように内側板23A,24Aを折り曲げ、先端の差込み片24cを上板25の側端辺と前記各折込み片の上辺との隙間に挿入して係合したうえ、更にその外側に重なるように左板23、右板24を折り曲げ、先端の突片23d、24dを予め底板20と差込み片23c、24cとの境界辺に形成されたスリット27、28に挿入して係合することで側壁が完成し、ケース本体2の組み立てが完了する。このように左板23、右板24の内側に更に内側板を設けることで強固な側壁が接着作業を行うことなく実現できる。尚、このような側壁を形成する前に予め手袋Gの積層体が収納される。
【0026】
また、図2に示すように、ケース本体2の後板22の上端辺に連続して蓋体3が一体的に形成されており、上記のとおりケース本体2を組み立てた後、その境界となる後板22の上端辺を前記ヒンジ部30として、上板25の上側に折り曲げ可能に構成されている。尚、図10の変形例に示すように、蓋体3を上板25の上端辺に連続して一体的に形成することも好ましい。更に、ケース本体2と蓋体3を別体構成した後、接着テープその他の接合部材で回転可能に接合し、該接合部をヒンジ部としてもよい。
【0027】
蓋体3は、本例ではケース本体2の上板25とほぼ同一形状の蓋板31と、該蓋板31の前記ヒンジ部30と反対側の先端部に延設され、内面方向に屈曲して前記ケース本体2の前板21に形成されたスリット26に係止される係止板32とより構成され、図4に示すように係止板32の先端の突片32aが前記スリット26に挿入されることで係止される。これにより、蓋板31が上板25の上に重なって開口部10を覆う閉姿勢が安定保持され、埃等の侵入を確実に防止するとともに上板25が完全に隠れるので外観デザインの点でも優れたものとなり、更にはケース上面の強度が増し、複数のケースを積み重ねても安定した姿勢を保持する。
【0028】
尚、蓋体3については、係止板32を省略し、蓋板31の端辺に突片のみ設け、該突片を上板25と前板21との隣接辺に形成するスリットに係止させるように構成することも好ましい例である。また、蓋板31を上板25よりも小さく、開口部10は完全に覆うがその周囲の上板25が一部露出するように構成することも可能である。すなわち最低限開口部10を覆うものであれば、上板25の一部を覆うものでもよい。
【0029】
ヒンジ部30には、該ヒンジ部に沿って蓋体3をケース本体2から切り離すための切り取り案内溝33が設けられている。具体的には、貫通した溝が断続的に形成されたミシン目状の案内溝が形成されている。そして、手袋を頻繁に使うユーザは、図5に示すように、当該案内溝に沿って蓋体3を切り離して上板25の開口部10が常時開放された状態として、蓋体3の開閉をすることなく手袋の頻繁な引き出しをスムーズに行うことが可能である。また、貫通した断続溝とするのではなく、連続した凹条にして切り取り容易な薄肉線を形成したものでもよい。
【0030】
本例では、前記ミシン目状の切り取り案内溝33が、同時に蓋体3を回転容易に支持するヒンジ部30として機能している。勿論、切り取り案内溝と平行に別にヒンジ部30を設けることも好ましい。ヒンジ部30については、ミシン目状の断続溝とする代わりに、単なる折り癖や上記した凹条よりなる薄肉線としてもよい。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 手袋収納ケース
2 ケース本体
3 蓋体
10 開口部
20 底板
21 前板
22 後板
23 左板
23A 内側板
23a,23b 折込み片
23c 差込み片
23d 突片
24 右板
24A 内側板
24a,24b 折込み片
24c 差込み片
25 上板
25a 糊代片
26 スリット
27 スリット
30 ヒンジ部
31 蓋板
32 係止板
32a 突片
33 切り取り案内溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の手袋が積層した状態で収納され、上板に手袋を引き出すための開口部が設けられた箱型のケース本体と、
前記ケース本体にヒンジ部を介して回動可能に支持され、前記上板の上に重なった閉姿勢において前記開口部を覆う板状の蓋体と、
よりなることを特徴とする手袋収納ケース。
【請求項2】
前記蓋体を、前記ケース本体の上板又は側板に連続して一体的に形成するとともに、その境界となる上板又は側板の端辺部を前記ヒンジ部として、前記上板の上側に折り曲げ可能に構成した請求項1記載の手袋収納ケース。
【請求項3】
前記蓋体が、前記ケース本体の上板とほぼ同一形状の蓋板と、該蓋板の前記ヒンジ部と反対側の先端部に延設され、内面方向に屈曲して前記ケース本体の側板に形成されたスリットに係止される係止板とよりなる請求項1又は2記載の手袋収納ケース。
【請求項4】
前記ヒンジ部に沿って、前記蓋体を前記ケース本体から切り離すための切り取り案内溝を設けてなる請求項1〜3の何れか1項に記載の手袋収納ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−162257(P2011−162257A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30476(P2010−30476)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(591161900)ショーワグローブ株式会社 (39)