説明

手袋

【課題】製造工程数を削減することができる手袋を提供する。
【解決手段】手袋本体11に、親指が挿入される親指部12と人差し指が挿入される人差し指部13と中指が挿入される中指部14と薬指が挿入される薬指部15と小指が挿入される小指部16を設ける。各指部12〜16の第一関節部21〜25の部位に、挿入された指の先端部を出し入れ可能な各出入穴41〜45を、各指部12の周面51〜55に設ける。各出入穴41〜45を、挿入した指の側部が位置する各指部12〜16の周面51〜55に設け、各出入穴41〜45を、指部12〜16の長さ方向に延在する縦長のスリット状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手にはめて使用する手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寒い日に外出する際には、手袋が用いられてた(例えば、特許文献1)。
【0003】
この手袋の手袋本体には、手の指がそれぞれ挿入される筒状の指部と、親指用の指部より延出した指先を覆う為の小袋部と、親指用の指部を除いた総ての指部を覆う為の大袋部とが設けられている。
【0004】
前記各袋部は、その開口縁部が前記手袋本体に縫着されており、各袋部を前記縫着部で折り返すことによって、前記各指部の先端から指の先端部を露出した状態を形成できるように構成されている。
【0005】
また、前記各袋部を手袋本体の先端側へ延出するとともに、各指が挿入された指部を対応した袋部に挿入することによって、各袋部から露出した指を前記各袋部で覆った状態を形成できるように構成されている。
【特許文献1】実開昭61−191419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような手袋にあっては、露出した指先を覆う為の前記各袋部を手袋本体に縫製しなければならず、製造工数が増加するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、製造工程数を削減することができる手袋を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の手袋にあっては、手の指が挿入されるサック状の指部が手袋本体に設けられた手袋において、前記指部の少なくとも一つに、挿入された指の先端部を出し入れ可能な出入穴を当該指部の周面に設けた。
【0009】
すなわち、前記出入穴が設けられた指部において、挿入された指の先端部を前記出入穴から出した状態と、前記指部に収容した状態とが形成される。
【0010】
また、請求項2の手袋においては、前記指部に指を挿入した状態で当該指の側部が位置する前記周面の部位に前記出入穴を設けた。
【0011】
すなわち、前記指部に指を挿入した状態で指を曲げた場合、前記指部において、指の背側が伸長する一方、指に腹側の部位が縮小する。しかし、指の側部側の部位では、その変化が小さい。
【0012】
そして、使用時に伸縮変化の少ない指の側部側の部位に、前記出入穴が設けられている。このため、指を曲げたり握持した際の前記出入穴の開口面積の拡大が防止される。
【0013】
さらに、請求項3の手袋では、前記出入穴を、前記指部の長さ方向に延在する縦長に形成した。
【0014】
これにより、縦長の前記出入穴から指先を出すことができる。
【0015】
そして、前記指部を編み物で構成する場合、筒状の指部は、その周方向に編んで形成することとなる。このとき、前記出入穴は縦穴で構成されている。このため、長さ方向に延在する前記出入穴は、網工程において形成することができる。
【0016】
また、前記指部内で指を曲げた際には、前記出入穴を横穴にした場合と比較して、出入穴の開きを抑えることができる。
【0017】
加えて、請求項4の手袋にあっては、前記出入穴をスリット状に形成した。
【0018】
すなわち、前記出入穴はスリット状に形成されており、前記出入穴を円形等に形成した場合と比較して、指の露出面積が抑えられる。
【0019】
また、請求項5の手袋では、前記指部に指を挿入した状態で当該指の第一関節が位置する前記周面の部位に前記出入穴を設けた。
【0020】
すなわち、前記出入穴は、前記指部に指を挿入した状態で当該指の第一関節が位置する前記周面の部位に設けられている。
【0021】
このため、第一関節より先端側の指先の出し入れが容易に行われる。また、前記出入穴から指先を出した状態で、指先を使う作業を可能にしつつ、指の露出度が最小限に抑えられる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明の請求項1の手袋にあっては、前記出入穴が設けられた指部において、挿入された指の先端部を前記出入穴から出すことで、指先を露出した露出状態を形成することができる。これにより、手作業を容易に行うことができる。
【0023】
また、前記出入穴内へ指先をしまうことによって、露出した指先を覆う為の袋部を手袋本体に設けること無く、指先を被覆した被覆状態を形成することができ、これにより指先の保温効果や外傷防止効果を得ることができる。
【0024】
したがって、手袋本体に、露出した指先を覆う為の袋部を設けなければならなかった従来と比較して、部品点数を減少させることができるとともに、手袋本体への袋部の縫製工程が不要となり、製造工数を削減することができる。これにより、製造コストを下げることができる。
【0025】
また、請求項2の手袋においては、使用時に伸縮変化の少ない指の側部側の部位に、前記出入穴が設けられている。
【0026】
このため、指の腹部や背部に設けた場合と比較して、指を曲げ伸ばししたり握持した際の前記出入穴の開口面積の増大を防止することができる。これにより、指を曲げる度に出入穴が開口する場合と比較して、保温効果を高めることができる。
【0027】
さらに、請求項3の手袋では、前記出入穴を、前記指部の長さ方向に延在する縦長に形成することによって、横長に形成する場合と比較して、指を曲げ伸ばしした際の開口面積の増大を防止することができ保温効果を高めることができるとともに、前記出入穴からの指先の出し入れが容易となる。
【0028】
そして、前記指部を編み物で構成する場合には、その網工程において長さ方向に延在する前記出入穴を形成することができる。このため、サック状の指部を形成した後に、前記出入穴を開設する場合と比較して、後工程が不要となり、生産性が向上する。
【0029】
さらに、前記指部内で指を曲げた際には、前記出入穴を横穴で構成した場合と比較して、出入穴の不用意な開きを抑制することができ、保温効果を高めることができる。
【0030】
加えて、請求項4の手袋にあっては、前記出入穴をスリット状に形成したため、当該出入穴を円形等に形成した場合と比較して、指の露出面積を抑えることができる。
【0031】
また、請求項5の手袋では、前記出入穴が前記指部に指を挿入した状態で当該指の第一関節が位置する前記周面の部位に設けられている。
【0032】
このため、第一関節より先端側の指先の出し入れを容易に行うことができる。
【0033】
そして、前記出入穴から指先を出した状態で、指先を使う作業を可能にしつつ、指の露出を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかる手袋1を示す図であり、該手袋1は、手を寒さや外傷から防ぐものである。
【0035】
この手袋1は、図1に示すように、全体が毛糸が編まれてなる通気性素材で形成されており、装着時に手の平を覆う手袋本体11からは、親指が挿入されるサック状の親指部12と、人差し指が挿入されるサック状の人差し指部13と、中指が挿入されるサック状の中指部14と、薬指が挿入されるサック状の薬指部15と、小指が挿入されるサック状の小指部16とが先端側へ向けて延出している。
【0036】
この図1には、前記親指部12に親指を挿入した状態で当該親指の第一関節が位置する部位に第一関節部21が破線で示されている。また、前記人差し指部13と前記中指部14と前記薬指部15と前記小指部16には、それぞれ挿入された指の第一関節が位置する部位に第一関節部22〜25が破線で示されており、各指の第2関節が位置する部位に第二関節部31〜34が破線で示されている。
【0037】
前記親指部12に挿入された親指の第一関節が位置する前記第一関節部21の部位には、挿入された親指の先端部を出し入れ可能な親指用出入穴41が、当該親指部12の周面51に設けられており、前記人差し指部13に挿入された人差し指の第一関節が位置する前記第一関節部22の部位には、挿入された人差し指の先端部を出し入れ可能な人差し指用出入穴42が、当該人差し指部13の周面52に設けられている。
【0038】
また、前記中指部14に挿入された中指の第一関節が位置する前記第一関節部23の部位には、挿入された中指の先端部を出し入れ可能な中指用出入穴43が、当該中指部14の周面53に設けられており、前記薬指部15に挿入された薬指の第一関節が位置する前記第一関節部24の部位には、挿入された薬指の先端部を出し入れ可能な薬指用出入穴44が、当該薬指部15の周面54に設けられている。
【0039】
そして、前記小指部16に挿入された小指の第一関節が位置する前記第一関節部25の部位には、挿入された小指の先端部を出し入れ可能な小指用出入穴45が、当該小指部16の周面55に設けられている。
【0040】
前記各出入穴41〜45は、対応する指部12〜16に指を挿入した状態で当該指の側部が位置する前記各周面51〜55の部位に設けられており、前記各出入穴41〜45は、隣接した指部12〜16側の側面に設けられている。すなわち、前記親指用出入穴41は、前記人差し指部13側の側面に設けられており、前記人差し指用出入穴42は、前記中指部14側の側面に設けられている。また、前記中指用出入穴43は、前記薬指部15側の側面に設けられており、前記薬指用出入穴44は、前記小指部16側の側面に設けられている。さらに、前記小指出入穴45は、前記薬指部15側の側面に設けられている。
【0041】
そして、前記各出入穴41〜45は、開設された指部12〜16の長さ方向に延在する縦長に形成されており、各出入穴41〜45は、スリット状に形成されている。これら各出入穴41〜45は、各指部12〜16の第一関節部21〜25の部位に設けられており、各出入穴41〜45の長さ寸法は、配置された第一関節部21〜25から上方へ約1cm、下方へ約1cm延出する長さに設定されている。これにより、前記各出入穴41〜45は、各指部12〜16の伸縮を利用して広げた際に、挿入された各指の先端部を出し入れできる大きさに設定されている。
【0042】
以上の構成にかかる本実施の形態において、前記各出入穴41〜45が設けられた各指部12〜16にて挿入された各指の先端部を前記各出入穴41〜45から出すことで、指先を露出した露出状態を形成することができる。これにより、細かな手作業を容易に行うことができる。
【0043】
また、前記各出入穴41〜45内へ指先をしまうことによって、露出した指先を覆う為の袋部を手袋本体に設けること無く、指先を被覆した被覆状態を形成することができる。これにより、指先の保温効果や外傷防止効果を得ることができる。
【0044】
したがって、手袋本体に、露出した指先を覆う為の袋部を設けなければならなかった従来と比較して、部品点数を減少させることができるとともに、手袋本体11への袋部の縫製工程が不要となり、製造工数を削減することができる。これにより、製造コストを下げることができる。
【0045】
ここで、前記各指部12〜16に指を挿入した状態で指を曲げた場合、前記各指部12〜16において、指の背側が伸長する一方、指に腹側の部位が縮小する。しかし、指の側部側の部位では、その変化が小さい。
【0046】
そして、本実施の形態では、使用時に伸縮変化の少ない指の側部側の部位に、前記各出入穴41〜45が設けられている。このため、指を曲げ伸ばししたり握持した際の前記各出入穴41〜45の開口面積の拡大を防止することができる。これにより、指を曲げる度に出入穴が大きく開口する場合と比較して、保温効果を高めることができる。
【0047】
さらに、前記各出入穴41〜45を、前記各指部12〜16の長さ方向に延在する縦長に形成することによって、前記各出入穴41〜45からの指先の出し入れが容易となる。
【0048】
ここで、前記各指部12〜16を編み物で構成した本実施の形態の場合、筒状の各指部12〜16を、その周方向に編んで形成することとなる。このとき、前記各出入穴41〜45は縦穴で構成されている。このため、この長さ方向に延在する前記各出入穴41〜45を、網工程において形成することができる。
【0049】
したがって、サック状の各指部12〜16を形成した後に、前記各出入穴41〜45を開設する場合と比較して、後工程が不要となり、生産性が向上する。
【0050】
また、前記各指部12〜16内で指を曲げた際には、前記各出入穴41〜45を横穴で構成する場合と比較して、各出入穴41〜45の不用意な開きを抑制することができ、保温効果を高めることができる。
【0051】
さらに、前記各出入穴41〜45をスリット状に形成したため、当該出入穴41〜45を円形等に形成した場合と比較して、指の露出面積を抑えることができる。
【0052】
そして、前記各出入穴41〜45は、前記各指部12〜16に指を挿入した状態で当該指の第一関節が位置する前記周面51〜55の部位に設けられている。
【0053】
このため、第一関節より先端側の指先の出し入れを容易に行うことができる。
【0054】
また、前記各出入穴41〜45から指先を出した状態において、指先を使う作業を可能にしつつ、指の露出を最小限に抑えることができる。
【0055】
なお、本実施の形態においては、各指が挿入される前記各指部12〜16のそれぞれに前記各出入穴41〜45を設けた場合に付いて説明したが、これに限定されるものではなく、前記出入穴は、前記各指部12〜16の少なくとも一つに設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 手袋
11 手袋本体
12 親指部
13 人差し指部
14 中指部
15 薬指部
16 小指部
21 第一関節部(親指)
22 第一関節部(人差し指)
23 第一関節部(中指)
24 第一関節部(薬指)
25 第一関節部(小指)
41 親指用出入穴
42 人差し指用出入穴
43 中指用出入穴
44 薬指用出入穴
45 小指用出入穴
51 周面(親指)
52 周面(人差し指)
53 周面(中指)
54 周面(薬指)
55 周面(小指)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手の指が挿入されるサック状の指部が手袋本体に設けられた手袋において、
前記指部の少なくとも一つに、挿入された指の先端部を出し入れ可能な出入穴を当該指部の周面に設けたことを特徴とする手袋。
【請求項2】
前記指部に指を挿入した状態で当該指の側部が位置する前記周面の部位に前記出入穴を設けたことを特徴とする請求項1記載の手袋。
【請求項3】
前記出入穴を、前記指部の長さ方向に延在する縦長に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の手袋。
【請求項4】
前記出入穴をスリット状に形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の手袋。
【請求項5】
前記指部に指を挿入した状態で当該指の第一関節が位置する前記周面の部位に前記出入穴を設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の手袋。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−314902(P2007−314902A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143933(P2006−143933)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】