説明

打刻装置

【課題】間違った打刻を確実に検出する、打刻装置を提供する。
【解決手段】軸方向の長さが全て異なる複数の刻印ポンチ11と、複数の刻印ポンチ11を軸直方向に列設した状態で保持するポンチホルダ12と、ポンチホルダ12を駆動することで、指定された刻印ポンチ11をインパクト地点に案内する選字アクチュエータ13と、インパクト地点に案内された刻印ポンチ11を鋳片4に向けて打撃するインパクトシリンダ14とを備える。打刻の際、インパクトシリンダ14のストローク量を検出し、このストローク量に応じて実際に打撃した刻印ポンチ11を特定し、指定された刻印ポンチ11と実際に打撃した刻印ポンチ11とが一致しないときに、インパクト地点に案内した刻印ポンチ11が間違っていると診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳片に打刻する打刻装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リボルバを回転させて刻印ピンを選出し、選出した刻印ピンをインパクトシリンダで打撃することで、鋳片に打刻するものがあった(特許文献1参照)。
また、印字結果を目視する代わりに、カメラで撮像した画像データの画像認識を行い、製造ラインでのトラッキングを行うものがあった(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−314841号公報
【特許文献2】特開平3−032423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された従来技術のように、リボルバを回転させて複数の刻印ピンの中から所望の刻印ピンを選出するには、リボルバの回転位置を検出しなければならず、この検出に誤差があると、所望の刻印ピンを選出できなくなり、間違った刻印ピンで打刻してしまう可能性がある。そこで、特許文献2に記載された従来技術のように、画像認識によって印字結果を診断することが考えられるが、スケールが付着するなど、表面粗さの影がノイズとして影響し、必ずしも正確に診断できるとは限らない。
【0004】
本発明の課題は、間違った打刻を確実に検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る打刻装置は、軸方向の長さが全て異なる複数の刻印ポンチと、該複数の刻印ポンチを軸直方向に列設した状態で保持するポンチホルダと、該ポンチホルダを駆動することで、指定された前記刻印ポンチをインパクト地点に案内する駆動手段と、該駆動手段によって前記インパクト地点に案内された前記刻印ポンチを打刻対象物に向けて打撃するインパクトシリンダと、該インパクトシリンダのストローク量を検出する検出手段と、該検出手段で検出したストローク量に応じて前記駆動手段による案内異常を診断する診断手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る打刻装置は、前記診断手段は、前記インパクトシリンダが打撃した前記刻印ポンチを、前記検出手段で検出したストローク量に応じて特定し、特定した当該刻印ポンチと、指定された前記刻印ポンチとが一致しないときに、前記駆動手段による案内異常であると診断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に係る打刻装置によれば、各刻印ポンチの長さを全て異ならせたことで、夫々、インパクトシリンダで打撃するときのストローク量が異なるので、インパクトシリンダのストローク量を検出すれば、実際に打撃した刻印ポンチを特定することができる。したがって、指定された刻印ポンチと実際に打撃した刻印ポンチとが一致しないときに、インパクト地点に案内した刻印ポンチが間違っている、つまり案内異常であると診断することができ、間違った打刻を確実に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、垂直曲げ型、連続鋳造機の概略構成である。取鍋1に注入した溶鋼は、タンディッシュ2を経て水冷式の鋳型3へと流入し、ここで急冷され凝固し始めた鋳片を、ダミーバー及びピンチロールによって継続的に下方に引抜き、連続した鋳片4を成形する。鋳型3から引出した鋳片4には、スプレーノズル5によって冷却水を噴霧することで、鋳片4を中心部まで凝固させ、その冷却水は水切り装置6によって除去する。中心部まで凝固した鋳片4は、進路を垂直方向から水平方向に案内され、トーチカッタ7で切断し、その切断面に、数字、アルファベット、記号など、識別マークとなる刻印を打刻装置8で打ってから搬出される。
【0009】
図2は、打刻装置8の概略構成であり、軸方向の長さが全て異なる複数の刻印ポンチ11と、これら複数の刻印ポンチ11を軸直方向に列設した状態で保持するポンチホルダ12と、このポンチホルダ12を駆動することで、指定された刻印ポンチ11をインパクト地点に案内する選字アクチュエータ13と、インパクト地点に案内された刻印ポンチ11を鋳片4に向けて打撃するインパクトシリンダ14と、を備えている。
【0010】
刻印ポンチ11は、インパクトシリンダ14によって打撃されると、図示しないコイルばねの弾性力によって鋳片4から離間して待機位置まで後退するように構成される。選字アクチュエータ13は、ステップモータで構成される。インパクトシリンダ14は、刻印ポンチ11の尾端に対向する片側ロッド14aを有し、この片側ロッド14aを流体圧の上昇によって突出させて刻印ポンチ11を打撃し、流体圧が下降すると図示しないコイルばねの弾性力によって待機位置まで後退するように構成される。
【0011】
選字アクチュエータ13を駆動制御する選字制御装置15には、位置センサ16で検出したポンチホルダ12の現在位置が入力され、打刻すべき刻印ポンチ11が指定されたときに、その刻印ポンチ11がインパクト地点に到達するように、選字アクチュエータ13を介してポンチホルダ12の位置を制御する。
インパクトシリンダ14を駆動制御する打刻制御装置17は、指定された刻印ポンチ11がインパクト地点に案内されると、片側ロッド14aが突出するように、インパクトシリンダ14の流体圧を制御する。なお、この流体圧が所定値以上になったときに、打刻が完了したと判断し、片側ロッド14aを待機位置まで後退させる。
【0012】
異常診断装置20には、位置センサ21で検出した片側ロッド14aの現在位置が入力され、図3の異常診断処理を実行する。
ここで、異常診断処理について説明する。
先ずステップS1では、位置センサ21で検出した片側ロッド14aの現在位置に基づいて、打刻の際に、片側ロッド14aが待機位置から打刻完了位置まで移動したときのストローク量Xを算出する。
【0013】
続くステップS2では、ストローク量Xに基づいて、実際にインパクトシリンダ14で打撃した刻印ポンチ11を特定する。すなわち、各刻印ポンチ11の長さを全て異ならせたことで、刻印ポンチ11ごとにストローク量Xが異なるので、このストローク量Xに応じて、実際に打撃した刻印ポンチ11を特定する。
続くステップS3では、指定した刻印ポンチ11と、実際に打撃した刻印ポンチ11とは一致するか否かを判定する。このとき、指定した刻印ポンチ11と実際に打撃した刻印ポンチ11とが一致していれば、選字アクチュエータ13、選字制御装置15、及び位置センサ16の全てが正常に動作していると判断して、そのまま所定のメインプログラムに復帰する。一方、指定した刻印ポンチ11と実際に打撃した刻印ポンチ11とが一致しなければ、指定された刻印ポンチ11をインパクト地点に正確に案内できていない、つまり選字アクチュエータ13、選字制御装置15、及び位置センサ16の何れかの異常で、案内異常が発生したと判断してステップS4に移行する。
【0014】
ステップS4では、案内異常が発生した旨を報知してから、所定のメインプログラムに復帰する。
以上より、選字アクチュエータ13が「駆動手段」に対応し、ステップS1の処理が「検出手段」に対応し、ステップS2〜S4の処理が「診断手段」に対応している。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0015】
例えば、位置センサ16の検出に誤差があると、ポンチホルダ12を正しく駆動できなくなり、間違った刻印ポンチ11で打刻してしまう可能性がある。こうした間違った打刻は、その場で確実に検出しなければならない。
本実施形態では、各刻印ポンチ11の長さを全て異ならせたことで、夫々、インパクトシリンダ14で打撃するときのストローク量Xが異なるので、片側ロッド14aのストローク量Xを検出すれば、実際に打撃した刻印ポンチ11を特定することができる。すなわち、刻印ポンチ11の長さが短ければ、それだけ片側ロッド14aのストローク量Xが長くなり、刻印ポンチ11の長さが長ければ、ストローク量Xが短くなる。
【0016】
したがって、指定された刻印ポンチ11と実際に打撃した刻印ポンチ11とが一致していれば、指定された刻印ポンチ11がインパクト地点に正しく案内されたと診断することができる。逆に、指定された刻印ポンチ11と実際に打撃した刻印ポンチ11とが一致しないときに、インパクト地点に案内した刻印ポンチ11が間違っている、つまり案内異常であると診断することができ、間違った打刻を、その場で確実に検出できる。
【0017】
夫々の刻印ポンチ11の長さの差ΔLは、位置センサ21の分解能に応じて設定する。すなわち、位置センサ21の分解能が高ければ、それだけ長さの差ΔLを小さくでき、分解能が低ければ、長さの差ΔLを大きくする必要がある。
なお、上記の一実施形態では、ポンチホルダ12が直線運動する構造について説明しているが、これに限定されるものではなく、勿論、リボルバのように回転運動する構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】連続鋳造設備の概略構成である。
【図2】打刻装置の概略構成を示す。
【図3】異常診断処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0019】
4 鋳片
8 打刻装置
11 刻印ポンチ
12 ポンチホルダ
13 選字アクチュエータ
14 インパクトシリンダ
15 選字制御装置
16 位置センサ
17 打刻制御装置
20 異常診断装置
21 位置センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の長さが全て異なる複数の刻印ポンチと、該複数の刻印ポンチを軸直方向に列設した状態で保持するポンチホルダと、該ポンチホルダを駆動することで、指定された前記刻印ポンチをインパクト地点に案内する駆動手段と、該駆動手段によって前記インパクト地点に案内された前記刻印ポンチを打刻対象物に向けて打撃するインパクトシリンダと、該インパクトシリンダのストローク量を検出する検出手段と、該検出手段で検出したストローク量に応じて前記駆動手段による案内異常を診断する診断手段と、を備えることを特徴とする打刻装置。
【請求項2】
前記診断手段は、前記インパクトシリンダが打撃した前記刻印ポンチを、前記検出手段で検出したストローク量に応じて特定し、特定した当該刻印ポンチと、指定された前記刻印ポンチとが一致しないときに、前記駆動手段による案内異常であると診断することを特徴とする請求項1に記載の打刻装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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