説明

打撃工具

【課題】 打撃工具の作業効率を向上する上で有効な技術を提供する。
【解決手段】 本発明の打撃工具101は、モータ111と、モータ111の回転出力を直線運動に変換する第1の運動変換機構113と、第1の運動変換機構113によって駆動されることで直線運動を行う第1の打撃機構117と、モータ111の回転出力を直線運動に変換する第2の運動変換機構115と、第2の運動変換機構115によって駆動されることで直線運動を行う第2の打撃機構119と、第1および第2の打撃機構117,119によって交互に打撃動作される先端工具部材163と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ビットが長軸方向に打撃動作することで所定の加工作業を行う打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
モータによって駆動される工具ビットが長軸方向に打撃動作することで所定の加工作業を行う打撃工具としての電動ハンマは、広く一般に知られている。このような電動ハンマは、例えば特開2005−335046号公報(特許文献1)に開示されている。公報に記載の電動ハンマは、モータの回転出力をクランク機構によってピストンの直線運動に変換し、当該ピストンの直線運動により変動する空気室内の空気バネを介して打撃子が直線運動して工具ビットに打撃を与える構成である。
【0003】
上記構成の打撃工具において、作業効率をアップさせるには、モータの回転数を上げて工具ビットを高速で駆動することが必要になるが、モータによって駆動されるクランク機構あるいは打撃機構等の工具ビットの駆動に用いられる機械動作部については、例えばモータの回転速度に対する追従性の面で限界がある。このようなことから、モータ回転数を上げることでは対応できず、この点でなお改良の余地がある。
【特許文献1】特開2005−335046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる点に鑑み、打撃工具の作業効率を向上する上で有効な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。
請求項1に記載の発明に係る打撃工具は、モータと、第1の運動変換機構と、第1の打撃機構と、第2の運動変換機構と、第2の打撃機構と、先端工具部材とを有する。第1の運動変換機構は、モータの回転出力を直線運動に変換する構成とされ、第1の打撃機構は、第1の運動変換機構によって駆動されることで直線運動を行う構成とされる。第2の運動変換機構は、モータの回転出力を直線運動に変換する構成とされ、第2の打撃機構は、第2の運動変換機構によって駆動されることで直線運動を行う構成とされる。そして先端工具部材は、第1および第2の打撃機構によって交互に打撃されて直線動作し、被加工材に所定の加工作業を行う構成とされる。本発明における「打撃工具」としては、典型的には、先端工具部材が長軸方向に直線状の打撃動作のみを行うことによって被加工材にハンマ作業を遂行する電動ハンマ、あるいは先端工具部材が長軸方向の打撃動作と長軸方向周りの回転動作とを行うことで被加工材にハンマドリル作業を遂行する電動ハンマドリルがこれに該当する。
【0006】
また本発明における「第1の運動変換機構」および「第2の運動変換機構」は、典型的には、モータの回転出力をクランク機構によってピストンの直線運動に変換する機構がこれに該当するが、これに限らず、モータによって回転される回転体の回転動作を揺動部材の揺動運動に変換後、この揺動部材の揺動運動をピストンの直線運動に変換する機構、あるいはモータによって回転される斜板を利用してピストンの直線運動に変換する機構等を好適に包含する。ここで「利用して」とは、斜板に対してピストンを当該斜板の周方向に相対移動可能に係合させる構成をいう。また本発明における「第1の打撃機構」および「第2の打撃機構」は、典型的には、ピストンの直線状の直線運動による空気室の空気圧の変動によって直線運動を行なう打撃子、さらには当該打撃子の直線運動を先端工具部材に伝達する中間子を有する構成とされるが、中間子を有しない構成を好適に包含する。
また本発明において、「第1および第2の運動変換機構」は、少なくとも2つの運動変換機構を有するという意味であり、第1および第2の運動変換機構に加えて第3の運動変換機構、更には第4の運動変換機構を有する態様を好適に包含する。同様に「第1および第2の打撃機構」は、少なくとも2つの打撃機構を有するという意味であり、第1および第2の打撃機構に加えて第3の打撃機構、更には第4の打撃機構を有する態様を好適に包含する。また本発明における「先端工具部材」は、単一の工具ビットによって構成される態様、あるいは複数の工具ビットによって構成される態様のいずれをも好適に包含する。その場合において、単一の工具ビットを複数の打撃機構によって打撃する態様、複数の工具ビットを当該複数の工具ビットと同数の打撃機構によって打撃する態様、複数の工具ビットを当該複数の工具ビットよりも多数の打撃機構によって打撃する態様、複数の工具ビットを当該複数の工具ビットよりも少数の打撃機構によって打撃する態様のいずれをも好適に包含する。
【0007】
本発明によれば、モータによって駆動される第1の運動変換機構および第1の打撃機構と、モータによって駆動される第2の運動変換機構および第2の打撃機構とによって、先端工具部材を交互に打撃し、所定の加工作業を行うことができる。このため、単一の運動変換機構および打撃機構によって先端工具部材を駆動する構成の従来の打撃工具に比べて、モータの回転数を同一に設定したとき、先端工具部材を二倍以上の打撃数で打撃することが可能となり、作業効率が向上する。また見方を変えれば、単位時間当たりの先端工具部材の打撃数を従来と同程度に設定したときは、モータの回転速度およびモータによって駆動される運動変換機構および打撃機構の駆動速度の低速化が可能となり、作業効率を低下することなく摺動部位の摩耗を軽減して耐久性を向上することができる。
【0008】
(請求項2に記載の発明)
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の打撃工具において、先端工具部材として、第1の打撃機構によって打撃される第1の工具ビットと、第2の打撃機構によって打撃される第2の工具ビットとを備える構成とされる。請求項2に記載の発明においては、従来の打撃工具に比べて、モータの回転数を同一に設定したときの、被加工材に対する第1の工具ビットと第2の工具ビットとによるトータルでの打撃動作数が二倍以上となるため、作業効率が向上する。他方、第1の工具ビットと第2の工具ビットとによるトータルでの打撃動作数を従来と同程度に設定したときには、モータ、運動変換機構および打撃機構を低速で駆動することが可能となり、作業効率を低下することなく摺動部位の摩耗を軽減して耐久性を向上することができる。また本発明によれば、第1と第2の工具ビットを用いて加工作業を行う構成のため、工具ビットが1本の場合に比べて同時に広範囲を加工することができる。
【0009】
(請求項3に記載の発明)
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の打撃工具における第1の打撃機構と第2の打撃機構とは、互いに対向状に直線運動を行うように構成されている。本発明においては、第1の打撃機構と第2の打撃機構が対向状に直線運動を行う構成としたので、一方の打撃機構が先端工具部材を打撃する際、当該一方の打撃機構に対して他方の打撃機構が対向状に直線動作することで、いわばカウンタウェイトとして機能し、これにより加工作業時に生ずる先端工具部材長軸方向の振動が合理的に低減されることになり、打撃工具の低振動化に有効となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、打撃工具の作業効率を向上する上で有効な技術が提供されることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態につき、図1〜図3を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態は、打撃工具の一例として電動ハンマを用いて説明する。図1は本実施の形態に係る電動ハンマの全体構成を示す側断面図である。図1に示すように、本実施の形態に係る電動ハンマ101は、概括的に見て、電動ハンマ101の外郭を形成する本体部103と、当該本体部103の先端領域(図示左側)に中空状のツールホルダ161を介して着脱自在に取り付けられた単一のハンマビット163と、本体部103のハンマビット163の反対側に連接された作業者が握るハンドグリップ109とを主体として構成されている。ハンマビット163は、本発明における「先端工具部材」に対応する。なお説明の便宜上、ハンマビット163側を前、ハンドグリップ109側を後という。
【0012】
工具本体を構成する本体部103は、駆動モータ111を収容したモータハウジング105と、第1と第2の二組のクランク機構113,115、および第1と第2の二組の打撃要素117,119を収容するギアハウジング107とによって構成されている。駆動モータ111の回転出力は、第1および第2クランク機構113,115によって直線運動に適宜変換された上で、第1および第2の打撃要素117,119に伝達され、当該第1および第2打撃要素117,119を介してハンマビット163の長軸方向(図1における左右方向)への衝撃力を発生する。駆動モータ111は、本発明における「モータ」に対応する。第1クランク機構113は、本発明における「第1の運動変換機構」に対応し、第2クランク機構115は、本発明における「第2の運動変換機構」に対応する。また第1打撃要素117は、本発明における「第1の打撃機構」に対応し、第2打撃要素119は、本発明における「第2の打撃機構」に対応する。なお駆動モータ111は、ハンドグリップ109に配置されたトリガ109aの引き操作によって通電駆動される。
【0013】
図2には電動ハンマ101の主要部を拡大した状態が断面図で示され、図3には図2の断面指示線に基づく断面構造が示される。図2に示すように、第1および第2クランク機構113,115は、ギアハウジング107内に上下に並列状に配置されている。第1クランク機構113は、水平面内にて回転可能とされた第1クランク板125、第1クランク板125に回転中心からシフトして配置された第1偏心軸127、第1偏心軸127に一端が遊嵌状に連接された第1クランクアーム129、第1クランクアーム129の他端に第1連結軸131を介して相対回動可能に連結された第1駆動子としての第1ピストン133を主体に構成される。第1クランク板125は、円形に形成されるとともに、その外周面に被動ギア125aを有し、この被動ギア125aが駆動モータ111によって回転駆動される駆動ギア121と噛合い係合されている。第1ピストン133は、シリンダ151の第1ボア151a内に摺動自在に配置され、駆動モータ111が通電駆動されることに伴い当該シリンダ151の長軸方向(ハンマビット長軸方向)に直線動作を行う。
【0014】
第2クランク機構115は、水平面内にて回転可能とされた第2クランク板137、第2クランク板137に回転中心からシフトして配置された第2偏心軸139、第2偏心軸139に一端が遊嵌状に連接された第2クランクアーム141、第2クランクアーム141の他端に第2連結軸143を介して相対回動可能に取り付けられた第2駆動子としての第2ピストン145を主体に構成される。第2ピストン145は、シリンダ151の第2ボア151b内に摺動自在に配置されている。
【0015】
第1クランク板125および第2クランク板137は、その回転軸線が同一軸線となるように設定される。また第1クランク板125の回転中心からの第1偏心軸127のシフト量と、第2クランク板137の回転中心からの第2偏心軸139のシフト量は、共に等しく設定されている。そして第1偏心軸127と第2偏心軸139とは、第1クランク板125の回転方向において、概ね180度の位相差を有するように連結部材147によって連結されている。すなわち、第2クランク機構115は、駆動モータ111によって駆動される第1クランク機構113から連結部材147を介して駆動されるとともに、第2ピストン145が第1ピストン133に対してクランク角度で概ね180度の遅れをもって対向状の直線動作を行う構成とされる。
【0016】
第1および第2打撃要素117,119は、上下に並列状に配置されている。第1打撃要素117は、シリンダ151の第1ボア151a内に摺動自在に配置されてシリンダ151の長軸方向に直線動作する第1打撃子としての第1ストライカ153と、筒状のツールホルダ161内に摺動自在に配置されるとともに、第1ストライカ153の運動エネルギをハンマビット163に伝達する中間子としてのインパクトボルト157とを主体にして構成される。第1ストライカ153は、第1ピストン133の摺動動作に伴うシリンダ151の第1空気室151cの空気圧の変動、つまり空気バネを介して駆動され、インパクトボルト157に衝突(打撃)することでツールホルダ161に保持されたハンマビット163に打撃力を伝達する。すなわち、第1打撃要素117は、第1クランク機構113によって駆動される。
【0017】
また第2打撃要素119は、シリンダ151の第2ボア151b内に摺動自在に配置されてシリンダ151の長軸方向に直線動作する第2打撃子としての第2ストライカ155と、上記のインパクトボルト157とを主体にして構成される。第2ストライカ155は、第2ピストン145の摺動動作に伴うシリンダ151の第2空気室151dの空気バネを介して駆動され、インパクトボルト157に衝突(打撃)することで当該インパクトボルト157に保持されたハンマビット163に打撃力を伝達する。すなわち、第2打撃要素117は、第2クランク機構115によって駆動される。
【0018】
なおインパクトボルト157は、長軸方向後端部のうち、径方向の下部領域において第1ストライカ153の打撃動作を受け、径方向の上部領域において第2ストライカ155の打撃動作を受けることが可能な広さの被打撃面157aを有する。
【0019】
シリンダ151は、第1ピストン133および第1ストライカ153が摺動自在に配置される円形の第1ボア151aと、第2ピストン145および第2ストライカ155が摺動自在に配置される円形の第2ボア151bとを有するとともに、ギアハウジング107に長軸方向および周方向の移動が規制された状態で装着されている。なお図3にはシリンダ151の横断面構造が示される。ツールホルダ161は、ギアハウジング107の先端部に長軸方向および周方向の移動が規制された状態で装着されている。ハンマビット163は、ツールホルダ161にその長軸方向の相対移動が許容された状態で保持される。
【0020】
次に、上記のように構成される電動ハンマ101の作用について説明する。図1に示す駆動モータ111が通電駆動されると、その回転出力により、駆動ギア121が回動動作する。これに伴い駆動ギア121と噛合い係合する被動ギア123を介して第1クランク板125が回転される。すると、第1クランク板125に配置された第1偏心軸127が周回動作し、これによって第1クランクアーム129が揺動し、当該第1クランクアーム129の先端に取り付けられた第1ピストン133がシリンダ151内を直線状に摺動動作される。第1ピストン133が非圧縮側(図1および図2の右側)からハンマビット163側へ摺動動作すると、それに伴う第1空気室151c内の空気圧の変動、すなわち空気バネの作用により、第1ストライカ153はシリンダ151内を直線運動する。そして第1ストライカ153は、インパクトボルト157に衝突することで、その運動エネルギ(打撃力)をハンマビット163に伝達し、これによってハンマビット163がツールホルダ161内を摺動動作して被加工材に対するハンマ作業を遂行する。
【0021】
一方、第2クランク機構115側においては、第1クランク板125の回転に伴う第1偏心軸127の周回動作に連動して第2偏心軸139が連結部材147を介して第2クランク板137の回転中心周りを周回動作する。これにより、第2クランクアーム141が揺動動作し、第2ピストン145がシリンダ151の第2ボア151b内を摺動動作する。本実施の形態においては、第1偏心軸127と第2偏心軸139とは、クランク角度で概ね180度の位相差を有する。このため、第2ピストン145は、第1ピストン133に対し概ね180度の遅れをもってシリンダ151の第2ボア151b内を直線状に摺動動作される。そして第2ピストン145が非圧縮側からハンマビット163側へ摺動動作すると、それに伴う第2空気室151dの空気バネの作用により、第2ストライカ155がシリンダ151内を直線運動してインパクトボルト157に衝突し、その運動エネルギ(打撃力)をハンマビット163に伝達する。これによってハンマビット163がツールホルダ161内を摺動動作して被加工材に対するハンマ作業を遂行する。
【0022】
上記のように、本実施の形態によれば、単一のハンマビット163に対してクランク一回転で2回の打撃動作を行わせることができる。このため、クランク一回転で一回の打撃動作を行う従来の電動ハンマに比べて、駆動モータ111の回転数を同一に設定したときのハンマビット163の打撃数が2倍になるため、作業効率が向上する。また見方を変えれば、単位時間当たりのハンマビット163の打撃数を従来と同程度に設定したときは、駆動モータ111の回転速度および当該駆動モータ111によって駆動される第1および第2クランク機構113,115、第1および第2打撃要素117,119の駆動速度につき、それぞれ低速化が可能となる結果、作業効率を低下することなく摺動部材あるいはオーリング等の摺動部位の摩耗を軽減して耐久性を向上することができる。
【0023】
また本実施の形態では、第1ピストン133と第2ピストン145がクランク角度で概ね180度の位相差で駆動される構成としている。これにより、第1ストライカ153と第2ストライカ155が互いに対向状の直線運動を行う。このため、一方の、例えば第1ストライカ153がハンマビット163を打撃する側(前方)へと直線動作するとき、他方の例えば第2ストライカ155がハンマビット163から離れる側(後方)へと直線動作することで、いわばカウンタウェイトとして機能する。このことによって加工作業時に生ずるハンマビット長軸方向の振動が合理的に低減されることになり、電動ハンマ101の低振動化に有効となる。
【0024】
(本発明の第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態につき、図4〜図7を参照しつつ説明する。この第2の実施形態に係る電動ハンマ101は、先端工具部材として、第1ハンマビット173と第2ハンマビット175を用いる2ビットタイプとしたものであり、これに関連する構成を除いては前述した第1の実施形態と同様に構成される。したがって、第1の実施形態と同等な構成部材については、同一符号を付してその説明を省略あるいは簡略にする。第1ハンマビット173は、本発明における「第1の工具ビット」に対応し、第2ハンマビット175は、本発明における「第2の工具ビット」に対応する。
【0025】
図4には電動ハンマ101の全体構成が示され、図5には主要部の構成が示される。また図6および図7には、それぞれ図5における断面指示線に基づく断面構造が示される。図4および図5に示すように、第2の実施形態のツールホルダ171は、第1ハンマビット173装着用と第2ハンマビット175装着用の2つの筒孔を有し、ギアハウジング107の先端側(前端側)にハンマビット長軸方向および周方向の移動が規制された状態で装着される。第1ハンマビット173と第2ハンマビット175は、ツールホルダ171にその長軸方向の相対移動が許容された状態で保持される。
【0026】
第1打撃要素117は、シリンダ151の第1ボア151a内をハンマビット長軸方向に直線動作する第1打撃子としての第1ストライカ153と、ツールホルダ171内に摺動自在に配置され、第1ストライカ153の運動エネルギを第1ハンマビット173に伝達する第1中間子としての第1インパクトボルト177とを主体にして構成される。そして第1ストライカ153は、第1ピストン133の摺動動作に伴うシリンダ151の第1空気室151cの空気バネを介して駆動され、第1インパクトボルト177に衝突(打撃)することで当該ツールホルダ171に保持された第1ハンマビット173に打撃力を伝達する。第1打撃要素117は、本発明における「第1の打撃機構」に対応する。
【0027】
第2打撃要素119は、シリンダ151の第2ボア151b内をハンマビット長軸方向に直線動作する第2打撃子としての第2ストライカ155と、ツールホルダ171内に摺動自在に配置され、第2ストライカ155の運動エネルギを第2ハンマビット175に伝達する第2中間子としての第2インパクトボルト179とを主体にして構成される。そして第2ストライカ155は、第2ピストン145の摺動動作に伴うシリンダ151の第2空気室151dの空気バネを介して駆動され、第2インパクトボルト179に衝突(打撃)することで当該ツールホルダ171に保持された第2ハンマビット175に打撃力を伝達する。第2打撃要素119は、本発明における「第2の打撃機構」に対応する。
【0028】
第1打撃要素117を駆動する第1クランク機構113、および第2打撃要素119を駆動する第2クランク機構115については、前述した第1の実施形態と同様に構成されている。したがって、駆動モータ111が通電駆動されると、第1クランク機構113によって第1打撃要素117が駆動され、第2クランク機構115によって第2打撃要素119が駆動される。このため、第1ハンマビット173と第2ハンマビット175は、クランク一回転で各一回の打撃動作を行う。すなわち、第1ハンマビット173と第2ハンマビット175とによるトータルでの打撃動作数がクランク一回転で2回行われ、第1の実施形態と同様、作業効率を向上することができる。他方、第1ハンマビット173と第2ハンマビット175のトータルでの打撃動作数を従来と同程度に設定したときは、駆動モータ111の回転速度および駆動モータ111によって駆動される第1および第2クランク機構113,115、第1および第2打撃要素117,119の駆動速度につき、それぞれ低速化が可能となる結果、作業効率を低下することなく摺動部材あるいはオーリング等の摺動部位の摩耗を軽減して耐久性を向上することができる。
【0029】
また第1クランク機構113の第1ピストン133と、第2クランク機構115の第2ピストン145とは、クランク角度で180度の位相差でシリンダ151内を直線動作する構成としている。このため、第1の実施形態と同様、加工作業時に生ずるハンマビット長軸方向の振動を合理的に低減でき、電動ハンマ101の低振動化に有効となる。また本実施の形態においては、第1と第2の2本のハンマビット173,175を用いて加工作業を行う構成のため、1本の場合に比べて同時に広範囲を加工することができる。
【0030】
なお上述した実施の形態においては、駆動モータ111の回転出力をピストン133,145の直線動作に変換する手段としてクランク機構113,115を採用したが、これに限らず、例えば駆動モータ111によって回転される回転体の回転動作を揺動部材の揺動運動に変換後、この揺動部材の揺動運動をピストン133,145の直線動作に変換する機構、あるいは駆動モータ111によって回転される斜板を利用してピストン133,145の直線動作に変換する機構等を採用してもよい。また上述した実施の形態では、二組のクランク機構113,115と、二組の打撃要素117,119とを有する場合で説明したが、これらを更に増設しても構わない。
また本実施の形態は、打撃工具の一例として、電動ハンマ101を例にとって説明したが、これに限らず、ハンマビット163,173,175が長軸方向の打撃動作に加えて長軸方向周りの回転動作を行うハンマドリルに適用してもよい。
【0031】
なお本発明の趣旨に鑑み、以下の態様を構成することが可能である。
(態様1)
「請求項1に記載の打撃工具であって、
前記先端工具部材は、前記第1および第2の打撃機構によって交互に打撃されて直線動作し、被加工材に対し所定の加工作業を行う単一の工具ビットによって構成されていることを特徴とする打撃工具。」
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電動ハンマの全体構成を示す側断面図である。
【図2】電動ハンマの主要部を示す側断面図である。
【図3】図2におけるA−A線に基づく縦断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る電動ハンマの全体構成を示す側断面図である。
【図5】電動ハンマの主要部を示す側断面図である。
【図6】図5におけるB−B線に基づく断面図である。
【図7】図5におけるC−C線に基づく断面図である。
【符号の説明】
【0033】
101 電動ハンマ(打撃工具)
103 本体部
105 モータハウジング
107 ギアハウジング
109 ハンドグリップ
109a トリガ
111 駆動モータ
113 第1クランク機構(第1の運動変換機構)
115 第2クランク機構(第2の運動変換機構)
117 第1打撃要素(第1の打撃機構)
119 第2打撃要素(第2の打撃機構)
121 駆動ギア
125 第1クランク板
125a 被動ギア
127 第1偏心軸
129 第1クランクアーム
131 第1連結軸
133 第1ピストン
137 第2クランク板
139 第2偏心軸
141 第2クランクアーム
143 第2連結軸
145 第2ピストン
147 連結部材
151 シリンダ
151a 第1ボア
151b 第2ボア
151c 第1空気室
151d 第2空気室
153 第1ストライカ
155 第2ストライカ
157 インパクトボルト
157a 被打撃面
161 ツールホルダ
163 ハンマビット(先端工具部材、工具ビット)
171 ツールホルダ
173 第1ハンマビット(先端工具部材、第1の工具ビット)
175 第2ハンマビット(先端工具部材、第2の工具ビット)
177 第1インパクトボルト
179 第2インパクトボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの回転出力を直線運動に変換する第1の運動変換機構と、
前記第1の運動変換機構によって駆動されることで直線運動を行う第1の打撃機構と、
前記モータの回転出力を直線運動に変換する第2の運動変換機構と、
前記第2の運動変換機構によって駆動されることで直線運動を行う第2の打撃機構と、
前記第1および第2の打撃機構によって交互に打撃されて直線動作し、被加工材に所定の加工作業を行う先端工具部材と、を有することを特徴とする打撃工具。
【請求項2】
請求項1に記載の打撃工具であって、
前記先端工具部材として、前記第1の打撃機構によって打撃される第1の工具ビットと、前記第2の打撃機構によって打撃される第2の工具ビットとを備えることを特徴とする打撃工具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の打撃工具であって、
前記第1の打撃機構と前記第2の打撃機構とは、互いに対向状に直線運動を行うように構成されていることを特徴とする打撃工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−203388(P2007−203388A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22446(P2006−22446)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】