説明

打撃工具

【課題】高い出力トルクを維持しつつ、打撃工具の大型化を抑制できる技術を提供する。
【解決手段】着脱可能に保持されたハンマビット119を駆動するハンマドリル100が構成される。当該ハンマドリル100は、モータ軸111を備えたアウタロータ型の駆動モータ110と、駆動モータ110の出力回転速度を変える変速装置と、駆動モータ110に駆動され、ハンマビット119を所定方向に直線往復移動させる打撃要素140と、を有している。そして、変速装置によって変速された駆動モータ110の回転出力を介してハンマビット119を駆動する構成である。これにより、同等程度のサイズのインナロータ型の駆動モータに比べて、駆動モータ110の出力を大きくすることができるため、大きな出力を必要とするハンマドリル100の大型化を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウタロータ型のモータを有する打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006−181646号公報には、動力断続用のクラッチ機構を有する電動式ハンマドリルが記載されている。この電動式ハンマドリルには、インナロータ型のモータが用いられており、モータの駆動により先端工具を駆動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−181646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、打撃工具は大きな力で被加工材を加工する必要があるため、モータの出力トルクは高い方が好ましい。しかしながら、インナロータ型のモータを用いて高いトルクを得るためには、大型のモータを用いる必要がある。モータが大型化すると、打撃工具自体が大きくなってしまう。そこで、本発明は、上記に鑑み、高い出力トルクを維持しつつ、打撃工具の大型化を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る作業工具の好ましい形態によれば、着脱可能に保持された先端工具を駆動する打撃工具が構成される。当該打撃工具は、駆動軸を備えたアウタロータ型のモータと、モータの出力回転速度を変える変速装置と、モータに駆動され、先端工具を所定方向に直線往復移動させる打撃機構と、を有している。そして、変速装置によって変速されたモータの回転出力を介して先端工具を駆動する。
【0006】
本発明によれば、アウタロータ型のモータを用いることにより、同等程度のサイズのインナロータ型のモータを用いる場合に比べて、モータの出力トルクを大きくすることができる。これにより、打撃工具を大きくすることなく、打撃能力を高めることができる。
【0007】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、変速装置は、モータの回転出力を伝達する駆動ベルトを有する。
【0008】
本形態によれば、駆動ベルトを用いることにより、歯車同士でモータの回転出力を伝達する場合に比べて、回転出力を伝達する際に発生する音が小さくすることができる。
【0009】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、打撃機構は、駆動ベルトを介して駆動される構成である。
【0010】
本形態によれば、打撃機構に伝達されるモータの出力回転速度を駆動ベルトを介して変速することにより、大きなトルクを発生させる必要がある打撃工具に対してより効果的に回転出力を伝達する際に発生する音を小さくすることができる。
【0011】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、駆動軸と一体に回転可能な第1ギアと、先端工具を回転駆動可能に保持するホルダと、ホルダと一体に回転する第2ギアと、を有している。そして、第1ギアと第2ギアは互いに噛合して回転し、駆動軸は、ホルダに駆動上直結してホルダを回転させる。
【0012】
本形態によれば、モータの回転出力が駆動上直結してホルダに伝達されるため、回転速度を減速させてホルダに伝達する中間的な伝達要素が不要となる。そのため、打撃工具を小型化することができる。
【0013】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、駆動軸と第1ギアの間に設けられたトルクリミッタを有している。そして、トルクリミッタは、所定トルク以上のトルクが作用したときに、駆動軸と第1ギアとの一体回転を不能にする。
【0014】
本形態によれば、トルクリミッタを有していることで、先端工具が被加工材に噛み込んで回転不能となった場合であっても、モータの回転出力がホルダに伝達されることを規制することができ、これによりモータが焼き付くことを抑制することができる。
【0015】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、駆動ベルトは、駆動軸と一体に回転するよう構成されている。また、トルクリミッタは、駆動ベルトと第1ギアの間に設けられており、所定トルク以上のトルクが作用したときに、駆動軸と駆動ベルトが一体に回転する状態において駆動軸と第1ギアとの一体回転を不能にする。
【0016】
本形態によれば、所定トルク以上のトルクが作用したときに、駆動軸と駆動ベルトが一体に回転する状態においてトルクリミッタが駆動軸と第1ギアとの一体回転を不能にするため、駆動軸と一体に回転する駆動ベルトに対して、トルクリミッタ作動時の負荷を低減することができる。
【0017】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、駆動軸とホルダの長軸方向が交差するよう配置されている。
【0018】
本形態によれば、駆動軸とホルダの長軸方向が交差することで、打撃工具を構成する各要素を効率的に配置することができる。これにより、打撃工具の大型化を抑制することができる。
【0019】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、駆動軸とホルダの長軸方向が交差し、先端工具と打撃機構とモータが同軸上に配置されている。
【0020】
本形態によれば、先端工具と打撃機構とモータが同軸上に配置されているため、打撃工具において、駆動軸が延在する方向の大型化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高い出力トルクを維持しつつ、打撃工具の大型化を抑制することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るハンマドリルの全体構成を示す側断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】本発明の変形例に係るハンマドリルの全体構成を示す側断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態につき、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態は、打撃工具として、ハンマドリルに本発明を適用した例である。図1に示すように、本実施形態に係るハンマドリル100は、概括的に見て、ハンマドリル100の外郭を形成する工具本体としての本体部101を主体として構成される。本体部101の先端領域(図1左側)には、ハンマビット119が筒状のツールホルダ159を介して着脱自在に取り付けられる。ハンマビット119は、ツールホルダ159に対し軸方向には相対移動可能とされ、周方向には一体回転するように装着される。本体部101の先端領域の反対側には、作業者が握るハンドグリップ107が連接されている。ハンマビット119は、本発明における「先端工具」に対応する実施構成例である。なお、説明の便宜上、ハンマドリル100のハンマビット119側を前方、ハンドグリップ側を後方という。
【0024】
本体部101は、駆動モータ110を収容したモータハウジング103と、運動変換機構120、打撃要素140及び動力伝達機構150を収容したギアハウジング105とによって構成されている。
【0025】
駆動モータ110は、モータ軸111とロータ112とステータ113を主体として構成されている。ロータ112は、ステータ113の外側に配置されている。このように構成された駆動モータ110は、モータ軸111とロータ112とが一体に回転する、いわゆるアウタロータ型のモータである。この駆動モータ110が、本発明における「モータ」に対応し、モータ軸111が、本発明における「駆動軸」に対応する実施構成例である。
【0026】
駆動モータ110は、その回転軸線(モータ軸111の回転軸線)が本体部101の長軸方向(ハンマビット119の長軸方向)と概ね直交する縦方向(図1の上下方向)となるように配置されている。駆動モータ110のトルクは、運動変換機構120によって直線運動に適宜変換された上で打撃要素140に伝達され、当該打撃要素140を介してハンマビット119の長軸方向への衝撃力を発生する。
【0027】
また、駆動モータ110のトルクは、動力伝達機構150とツールホルダ159を介してハンマビット119に伝達され、当該ハンマビット119が周方向に回転動作される。駆動モータ110は、ハンドグリップ107に配置されたトリガ107aの引き操作によって通電駆動される。
【0028】
図2に示すように、運動変換機構120は、駆動側プーリ121、ベルト122、被動側プーリ123、およびクランク機構を主体として構成される。駆動側プーリ121は、駆動モータ110のモータ軸111に連接し、モータ軸111と一体に回転する。ベルト122は、ゴムなどのエラストマで形成されており、駆動側プーリ121と一体に回転する。また、ベルト122は、駆動側プーリ121と被動側プーリ123を接続する。これにより、モータ軸111の回転出力は、駆動側プーリ121、およびベルト122を介して被動側プーリ123に伝達される。このベルト122が、本発明における「駆動ベルト」に対応する実施構成例である。また、駆動側プーリ121、ベルト122、被動側プーリ123を合わせた構成が、本発明における「変速装置」に対応する実施構成例である。
【0029】
クランク機構は、被動側プーリ123と一体回転するクランク軸125、当該クランク軸125の軸線からずれた位置に設けられた偏心軸127、ピストン131、当該ピストン131と偏心軸127を連接する連接ロッド129等で構成される。クランク軸125は、軸受を介してギアハウジング105に回転自在に支持されている。ピストン131は、打撃要素を駆動する駆動子として備えられ、シリンダ141内をハンマビット119の長軸方向と同方向に摺動可能とされる。駆動モータ110のモータ軸111とクランク軸125は、互いに平行にかつ横並びに配置される。また、駆動モータ110とシリンダ141は、長軸線が互いに直交するように配置される。シリンダ141は、ギアハウジング105に固定状に支持されている。
【0030】
打撃要素140は、シリンダ141内に摺動自在に配置された打撃子としてのストライカ143と、ツールホルダ159内に摺動自在に配置されるとともに、ストライカ143の運動エネルギをハンマビット119に伝達する中間子としてのインパクトボルト145とを主体として構成される。シリンダ141は、ツールホルダ159の後方に配置されるとともに、ピストン131及びストライカ143によって仕切られる空気室141aを形成している。ストライカ143は、ピストン131の摺動動作に伴う空気室141aの圧力変動(空気バネ)を介して駆動され、インパクトボルト145に衝突(打撃)し、当該インパクトボルト145を介してハンマビット119に打撃力を伝達する。この打撃要素140が、本発明における「打撃機構」に対応する実施構成例である。
【0031】
動力伝達機構150は、小ベベルギア155、大ベベルギア157、ツールホルダ159、及び機械式トルクリミッター167を主体として構成され、駆動モータ110のトルクをハンマビット119に伝達する。ツールホルダ159は、略円筒状の筒状部材であり、ギアハウジング105によってハンマビット119の長軸周りに回転自在に保持される。小べベルギア155は、駆動モータ110のモータ軸111の先端領域に配置され、モータ軸111と一体に回転可能に構成されている。大べベルギア157は、小ベベルギア155に噛み合い係合し、ツールホルダ159と一体に回転するよう構成されている。大べベルギア157のギア歯数は、小べベルギア155のギア歯数よりも多く、大べベルギア157と小べベルギア155の噛合により、駆動モータ110の出力回転速度が減速されるよう構成されている。この小べベルギア155、大べベルギア157、ツールホルダ159がそれぞれ、本発明における「第1ギア」、「第2ギア」、「ホルダ」に対応し、小べベルギア155と大べベルギア157が噛合する構成が、本発明における「変速装置」に対応する実施構成例である。
【0032】
機械式トルクリミッター167は、ハンマビット119にかかる過負荷に対する安全装置として備えられ、ハンマビット119に設計値(以下、最大伝達トルク値ともいう)を超える過大なトルクが作用したとき、ハンマビット119へのトルク伝達を遮断する。
【0033】
機械式トルクリミッター167は、モータ軸111と同軸上に、小べベルギア155と駆動側プーリ121の間に設けられており、駆動側プーリ121に係合して一体回転する被動側部材168と、駆動側プーリ121と被動側部材168の間に設けられたスプリング169を主体として構成される。モータ軸111に作用するトルク値(ハンマビット119に作用するトルク値に相当する)が、スプリング169の付勢力によって予め定まる最大伝達トルク値以下であれば、駆動側プーリ121と被動側部材168間でトルク伝達する。これにより、小べベルギア155がモータ軸111と一体に回転する。すなわち、駆動側プーリ121、ベルト122、小べベルギア155は、モータ軸111と一体に回転する。
【0034】
一方、モータ軸111に作用するトルク値が最大伝達トルク値を超えたときには、駆動側プーリ121と被動側部材169間でのトルク伝達を遮断するよう構成されている。これにより、小べベルギア155がモータ軸111と一体回転不能となる。すなわち、駆動側プーリ121、ベルト122は、モータ軸111と一体に回転している状態で、小べベルギア155は、モータ軸111と一体回転不能となる。この機械式トルクリミッター167が、本発明における「トルクリミッタ」に対応する実施構成例である。
【0035】
動力伝達機構150において、駆動モータ110の回転出力は、モータ軸111上に形成された小ベベルギア155から当該小ベベルギア155に噛み合い係合する大ベベルギア157、そして当該大ベベルギア157と結合された最終出力軸としてのツールホルダ159を介してハンマビット119へと伝達されるように構成されている。
【0036】
上記のように構成されたハンマドリル100は、トリガ107aが操作されると駆動モータ110に通電し駆動される。駆動モータ110の回転出力は、運動変換機構120に伝達され、ピストン131がシリンダ141に沿って直線状に摺動動作される。これにより、空気室141a内の空気の圧力変化、すなわち空気バネの作用によりストライカ143がシリンダ141内を直線運動する。ストライカ143は、インパクトボルト145に衝突することで、その運動エネルギをハンマビット119に伝達する。
【0037】
一方、駆動モータ110の回転出力は、動力伝達機構150に伝達される。これにより、ツールホルダ159が回転駆動され、ツールホルダ159と共にハンマビット119が一体に回転される。このようにして、ハンマビット119が軸方向のハンマ動作と周方向のドリル動作を行い、被加工材にハンマドリル作業を遂行する。
【0038】
なお、本実施の形態に係るハンマドリル100は、上述したハンマビット119にハンマ動作とドリル動作とを行わせるハンマドリルモードでの作業態様のほか、ハンマビット119にドリル動作のみを行わせるドリルモードでの作業態様、あるいはハンマビット119にハンマ動作のみを行わせるハンマモードでの作業態様に切り替えることが可能とされている。モードの切替機構については、便宜上その説明を省略する。
【0039】
以上のハンマドリル100は、ドリル作業を行わせる作業態様において、ハンマビット119が被加工材に噛み込んで回転不能となった場合に、機械式トルクリミッター167が回転出力の伝達を遮断するよう構成されている。このとき、機械式トルクリミッター167は、モータ軸111と駆動側プーリ121およびベルト122が一体に回転している状態で、モータ軸111と小べベルギア155との一体回転を不能にしている。
【0040】
以上の本実施形態によれば、アウタロータ型の駆動モータ110を用いることにより、同等程度のサイズのインナロータ型の駆動モータに比べて、駆動モータ110の出力トルクを大きくすることができる。駆動モータ110の出力トルクを大きくする構成は、とりわけ打撃工具であるハンマドリルにおいて有用性が高い。さらに、同等程度のサイズのインナロータ型の駆動モータに比べて、駆動モータ110の出力トルクを大きくすることができるため、ハンマドリル100を大きくすることなく、ハンマドリル100の打撃能力を高めることができる。また、アウタロータ型の駆動モータ110を用いることにより、インナロータ型の駆動モータに比べて、駆動モータ110を小型化することも可能である。すなわち、ハンマドリル110を小型化することも可能である。
【0041】
また、本実施形態によれば、ゴムなどのエラストマからなるベルト122を介して駆動モータ110の出力を伝達しているため、歯車を噛合させて駆動モータ110の出力を伝達する場合に比べて、出力を伝達する際に発生する音を低減することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、ハンマビット119が被加工材に噛み込んで回転不能となった場合に、機械式トルクリミッター167がトルク伝達を遮断することにより、回転し続けている駆動モータ110が焼き付くことを抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、機械式トルクリミッター167は、モータ軸111とベルト122が一体に回転している状態で、モータ軸111と小べベルギア155との一体回転を不能にしている。そのため、ハンマビット119が被加工材に噛み込んで回転不能となった場合は、機械式トルクリミッター167がトルク伝達を遮断し、モータ軸111と駆動側プーリ121は回転し続けるが、小べベルギア155が回転を停止する。一方で、ハンマビット119が被加工材に噛み込んで回転不能となった場合であっても、駆動側プーリ121と被動側プーリ123はそれぞれ、ハンマビット119が被加工材に噛み込む前と同じ速度比で回転し続けているため、ベルト122に不要不急の負荷が作用することを抑制できる。
【0044】
また、機械式トルクリミッター167が、モータ軸111上に配置されていることでもベルト122に不要不急の負荷が作用することを抑制している。すなわち、モータ軸111からベルト122を介して駆動する被駆動部材側に機械式トルクリミッター167が設けられている場合には、機械式トルクリミッター167がトルク伝達を遮断する際に、被動側プーリ123に不要不急のトルクが作用して、ハンマビット119が被加工材に噛み込む前に比べて、駆動側プーリ121と被動側プーリ123の速度比が変化する。これにより、ベルト122に不要不急の負荷が作用する。しかしながら、本実施形態においては、機械式トルクリミッター167がモータ軸111上に配置されていることにより、駆動側プーリ121と被動側プーリ123はそれぞれ、ハンマビット119が被加工材に噛み込む前と同じ速度比で回転し続けているため、ベルト122に不要不急の負荷が作用することを抑制できる。
【0045】
さらに、モータ軸111をツールホルダ159に駆動上直結することにより、駆動モータ110をハンマドリル100のより前方側に配置することができる。これにより、被加工材を加工する際のハンマドリル100の重心を被加工材に近づけることができ、ユーザが被加工材に対して安定して加工を行うことができる。
【0046】
以上の本実施形態では、駆動モータ110のモータ軸111と小べベルギア155が同軸上で一体回転し、モータ軸111とは別に運動変換機構120のクランク軸125が設けられていたが、これには限られない。例えば、モータ軸111とクランク軸125が同軸上で一体回転し、小べベルギア155はモータ軸111と別体に設けられた中間軸と一体回転するよう構成されていてもよい。この場合には、モータ軸111の出力は、ベルト122を介して中間軸に伝達され、小べベルギア155が回転される。
【0047】
また、以上の本実施形態では、機械式トルクリミッター167は、小べベルギア155と駆動側プーリ121の間にモータ軸111に同軸上に設けられていたが、これには限られない。例えば、機械式トルクリミッター167は、駆動側プーリ121の小べベルギア155と反対側に設けられていてもよい。また、モータ軸111とツールホルダ159との間であれば、機械式トルクリミッター167は、モータ軸111と別体の上述した中間軸に設けられていてもよく、また、ツールホルダ159と大べベルギア157の間に設けられていてもよい。
【0048】
次に、本実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同じ構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0049】
図3、図4に示すように、変形例は、打撃工具として、電動ハンマに本発明を適用した例である。電動ハンマ200は、上記実施形態に対して動力伝達機構150を有さない点が相違する。すなわち、電動ハンマ200は、駆動モータ110、運動変換機構120、および打撃要素140を主体として構成されており、ハンマ動作のみを行い、ドリル動作を行わない構成である。アウタロータ型の駆動モータ110の回転出力が運動変換機構120を介して打撃要素140に伝達されることで、駆動モータ110がハンマビット119を駆動しハンマ動作を行う。そのため、駆動モータ110は、運動変換機構120にのみ接続されている。すなわち、モータ軸111にベルト122が取り付けられており、モータ軸111の回転出力を運動変換機構120の被動側プーリ123に伝達している。
【0050】
駆動モータ110のモータ軸111と運動変換機構120のクランク軸125は、互いに平行にかつ横並びに配置されている。また、運動変換機構120の連接ロッド129は、クランク軸125に対して交差し、ハンマビット119の長軸方向(ツールホルダ159の長軸方向)の軸線上に配置されている。さらに、打撃要素140のストライカ143、インパクトボルト145もハンマビット119の長軸方向の軸線上に配置されている。これにより、モータ軸111とツールホルダ159の長軸方向が交差し、ハンマビット119と打撃要素140と駆動モータ110が同軸上に配置される。また、ハンドグリップ107も同軸上に配置されている。
【0051】
以上の変形例の構成によれば、アウタロータ型の駆動モータ110を用いることにより、同等程度のサイズのインナロータ型の駆動モータに比べて、駆動モータ110の出力を大きくすることができる。駆動モータ110の出力を大きくする構成は、とりわけ打撃工具である電動ハンマにおいて有用性が高い。さらに同等程度のサイズのインナロータ型の駆動モータに比べて、駆動モータ110の出力を大きくすることができるため、電動ハンマ200を大きくすることなく、電動ドリル200の打撃能力を高めることができる。また、アウタロータ型の駆動モータ110を用いることにより、駆動モータ110を小型化することも可能である。すなわち、電動ハンマ200を小型化することも可能である。
【0052】
また、変形例によれば、ゴムなどのエラストマからなるベルト122を介して駆動モータ110の出力を伝達しているため、歯車を噛合させて駆動モータ110の出力を伝達する場合に比べて、出力を伝達する際に発生する音を低減することができる。
【0053】
また、変形例によれば、モータ軸111とツールホルダ159の長軸方向が交差し、ハンマビット119と打撃要素140と駆動モータ110が同軸上に配置されているため、モータ軸111が延在する方向に電動ハンマ200が大型化することを抑制できる。さらに、ハンマビット119と打撃要素140と駆動モータ110が同軸上に配置されているため、電動ハンマ200の重心をハンマビット119の長軸近傍に設定することができる。これにより、被加工材を加工する際に、ユーザが同軸上に配置されたハンドグリップ107に作用させた力がモーメントに変換されることを抑制でき、ユーザが効率よくハンマビット119に力を伝達できる。
【0054】
以上においては、ベルト122は、ゴムなどのエラストマで形成されていたが、これには限られず、皮革や布、あるいはエラストマと繊維などからなる複合素材のものを用いてもよい。
【0055】
また、以上においては、モータ軸111とツールホルダ159の長軸方向が交差する構成について説明したが、これには限られず、モータ軸111とツールホルダ159が平行に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
100 ハンマドリル(打撃工具)
101 本体部
107 ハンドグリップ
110 駆動モータ(モータ)
111 モータ軸(駆動軸)
112 ロータ
113 ステータ
119 ハンマビット(先端工具)
120 運動変換機構
121 駆動側プーリ
122 ベルト(駆動ベルト)
123 被動側プーリ
125 クランク軸
127 偏心軸
129 連接ロッド
131 ピストン
140 打撃要素(打撃機構)
141 シリンダ
141a 空気室
143 ストライカ
145 インパクトボルト
150 動力伝達機構
155 小ベベルギア(第1ギア)
157 大ベベルギア(第2ギア)
159 ツールホルダ
167 機械式トルクリミッター(トルクリミッタ)
168 被動側部材
169 スプリング
200 電動ハンマ(打撃工具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱可能に保持された先端工具を駆動する打撃工具であって、
駆動軸を備えたアウタロータ型のモータと、
前記モータの出力回転速度を変える変速装置と、
前記モータに駆動され、前記先端工具を所定方向に直線往復移動させる打撃機構と、を有し、
前記変速装置によって変速された前記モータの回転出力を介して前記先端工具を駆動することを特徴とする打撃工具。
【請求項2】
請求項1に記載の打撃工具であって、
前記変速装置は、前記モータの回転出力を伝達する駆動ベルトを有することを特徴とする打撃工具。
【請求項3】
請求項2に記載の打撃工具であって、
前記打撃機構は、前記駆動ベルトを介して駆動されることを特徴とする打撃工具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の打撃工具であって、
前記駆動軸と一体に回転可能な第1ギアと、
前記先端工具を回転駆動可能に保持するホルダと、
前記ホルダと一体に回転する第2ギアと、を有し、
前記第1ギアと前記第2ギアは互いに噛合して回転し、
前記駆動軸は、前記ホルダに駆動上直結して前記ホルダを回転させることを特徴とする打撃工具。
【請求項5】
請求項4に記載の打撃工具であって、
前記駆動軸と前記ホルダの間に設けられたトルクリミッタを有し、
前記トルクリミッタは、所定トルク以上のトルクが作用したときに、前記モータの回転出力が前記ホルダに伝達されることを規制することを特徴とする打撃工具。
【請求項6】
請求項5に記載の打撃工具であって、
前記駆動ベルトは、前記駆動軸と一体に回転するよう構成されており、
前記トルクリミッタは、前記駆動ベルトと前記第1ギアの間に設けられており、前記所定トルク以上のトルクが作用したときに、前記駆動軸と前記駆動ベルトが一体に回転する状態において前記駆動軸と前記第1ギアとの一体回転を不能にすることを特徴とする打撃工具。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の打撃工具であって、
前記駆動軸と前記ホルダの長軸方向が交差するよう配置されていることを特徴とする打撃工具。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の打撃工具であって、
前記駆動軸と前記ホルダの長軸方向が交差し、
前記先端工具と前記打撃機構と前記モータが同軸上に配置されていることを特徴とする打撃工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−91117(P2013−91117A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233126(P2011−233126)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】