説明

打放しコンクリート等の多彩模様を塗装形成する工法

【課題】コンクリート面や内外装ボード面に打放しコンクリート模様及び磁器タイル模様やレンガ模様を容易にかつ短期間に施工することができ、重厚で自然な色調や優雅で多彩な模様を装飾する塗装形成工法を提供すること。
【解決手段】各種エマルション系塗料やNAD型塗料及び溶剤型塗料を通常使用される粘性度である、下地より淡白な色を塗装用ローラーで下塗りをし、まだ乾かない状態に、同種の粘性塗料を凸凹のある立方体合成スポンジやローラー型合成スポンジで、下地色より濃い色にて、多彩なまだら模様付けをし、まだ乾かない状態に、前記下塗り塗料材を薄く、塗装用ローラーで重ねて塗装する。まだ乾かない状態に模様付けをするので、工期の短縮が大いに可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は打放しコンクリート面及び内外装ボード面に打放しコンクリートの自然な模様及び優雅で深みのある磁器タイル模様やレンガ模様を意匠として、現地で装飾を施す塗装工法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の打放しコンクリート仕上げに発現される模様はコンクリートの配調合、打設時の時期、時間及びコンクリートの打ち込み状況とその過程、コンクリートの養生期間及び型枠の色素を含んだ水、又はコンクリートの生地補修方法により、出来上がったコンクリートの模様は一つとして同じ模様が顕現することはない。打放しコンクリート仕上げは前記の諸条件により、粗細なまだら模様を呈し、その自然な意匠性の高い色調が建築物に重厚な価値観と存在感を与える為、広く一般に重宝されてきた。
【0003】
しかしながら、コンクリートの素地の一部に発現する欠損や変色又は経年変化による汚損、風化汚染が、粗細なまだら模様を阻害してしまう。又打放しコンクリート仕上げはコンクリートのセメント類、石灰等の無機物質の成分を含む為、酸性雨や紫外線に脆弱であり、その影響を受けやすいので美粧な模様が滅失してしまう。
【0004】
この阻害された状態や滅失した状態を再生すべく、これまでは顔料や染料を調色した、調合ポリマーセメントモルタルにて補修着色をした後、クリヤーな撥水剤を塗布するか、又はコンクリート素地にセメントモルタルにて、コテ塗り後浸透性の防水をコンクリート全面に塗布、塗りつぶし、完全乾燥後に耐久性、耐候性の高い、フッ素樹脂やシリコン樹脂等のクリヤー塗料を塗布して、該阻害部の表面を色付けをして、隠蔽する工法が採られている。
【0005】
しかしながら、その素地補修跡がコンクリート下地と馴染まなかったり、塗装色付け跡が強調しすぎて、いずれも手を加えた状況が良く判る状態であった。
【0006】
又、従来外壁の塗り替えを塗工する場合は、複数色で多彩な模様を表現するには手間や塗工時間が掛かる為、壁全面を単色で塗りつぶして、塗装する工法が多用されている。
【特許文献1】特開平3―43559号公報
【特許文献2】特開平8―68213号公報
【特許文献3】特開平10―110514号公報
【特許文献4】特開平13―70876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、モルタル系を使用する方法は湿潤な材料を使用するので、乾燥した後の色調を判別しにくく、その調色には高度な技術を必要とする。補修着色する方法は乾燥した下地色に模様を色付けして、更に乾燥後クリヤー塗料を塗工するが、耐久性や耐候性の防水保護機能を要求するあまり、塗膜の色むらや模様色の濃淡状況を増幅させるため、周辺の打放しコンクリート仕上げ色と不調和が発生し模様色が顕現されてしまう。
【0008】
又各塗装工程毎に乾燥期間を設けるので、仕上げ塗装終了までに掛かる時間や日数を多く必要とするという問題点がある。
本発明はこのような課題を解決する為になされたもので、自然で重厚な且つ美粧な打放しコンクリート模様及び磁器タイル模様やレンガ模様の塗膜を形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、従来公知の方法である、セメントモルタルや調合ポリマーセメントモルタルにて、打放しコンクリートの欠損部やジャンカ及びコールドジョイント等を下地補修して、コテなどでコンクリート面と平らに削り押さえた後、十分に乾燥させ、建築シーラー又はプライマーを塗布する。
【0010】
シーラー又はプライマーを塗布後、下塗り塗装を行う。下塗り塗装に使用する塗料は希釈し過ぎない通常使用される粘性度の各種エマルション系塗料が適性である。前記適正な種類の塗料にて既存コンクリート色の近似色に調色した塗料をコンクリート全面に塗装用刷毛ローラーにて下塗りし、まだ乾かない塗装面に、下塗り塗料より濃い色の通常使用される模様用塗料を凸凹のある立方体合成スポンジにて、叩くように模様を付けたり、又は凸凹のある合成スポンジローラーにて部分的に転がすように模様を塗工した後、まだ乾かないうちに、下塗り用塗料を薄塗り積装して上塗り塗装を施す。ここまでの塗装が完全に乾燥後、耐候性・耐防水性を高めるために、艶消しのクリヤー塗料を塗工する。
【0011】
又、磁器タイル模様を形状している外装材のタイル目地部を含む全面を塗装用ローラーにて下塗りし、まだ乾かない塗装面に下塗り塗料より濃い色の模様用塗料を前記立方体型やローラー型の合成スポンジにて、模様付けをする。この時点で模様色は数種類の違う色を同時に塗工することが可能である。模様塗りを塗工した後、まだ乾かないうちに、上塗り塗料を薄層する。前記工程が乾燥後、クリヤー塗料を表装する。
【発明の効果】
【0012】
模様付け塗料が、まだ乾かない下塗り塗料と上塗り塗料との中間層に位置することになり、更に前記塗料は希釈し過ぎない通常使用される粘性の塗料であり、この3層の塗料をその場で調色する状態を呈することにより、模様付け塗料である粗細なまだら模様の、その輪郭を強調することなく、至極自然で重厚かつ美粧なコンクリート模様や磁器タイル模様やレンガ模様を形成することができ、意匠的に優れた装飾を施すことができる。又、各塗装工程をまだ乾かないうちに作業を進めるので施工期間を非常に短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の打放しコンクリート模様を装飾する塗装形成工法の実施の形態を説明する。コンクリート躯体の欠損やジャンカ及びコールドジョイント等の下地補修、並びに汚損、経年変化、変色に対する下地処理に関しては、公知慣例の技術であり、本発明の実施の形態としては次工程より説明する。
【0014】
下地補修、下地処理が終了し、十分に乾燥を行った後、コンクリート下地との付着性を強化するため、及び白華防止としての建築用シーラー及び濡れ色防止としてのプライマーを刷毛、ローラー、エアレススプレーにて被処理面の全面に塗布し、乾燥させる。指触乾燥確認後、下塗りを実施する。
【0015】
下塗り塗料は、前記適性な各種塗装に使用される中塗り用塗料材である着
色塗料材を使用する。その下塗り塗料色は基準となるコンクリート色よりも淡色のグレー系に調色しておくが、既存コンクリート色の最も多面なコンクリート色に近似させるため、現地再調色が望ましい。
【0016】
下塗り塗料はコンクリートの阻害部を隠蔽するだけでなく、防水機能を有したコンクリート保護を行うと同時に、特にコンクリート下地色に近似した着色を施すことに、大いに利点がある。又、この下塗り材は紫外線や外部環境に汚染されない為にも、耐久性、耐候性に優れた塗料であることが求められる。前記に適正なコンクリート用の塗料としては、アクリル樹脂エマルション塗料、ウレタン樹脂エマルション塗料、シリコン樹脂エマルション塗料、フッ素樹脂エマルション塗料、非水エマルション型塗料のアクリル樹脂NAD形塗料、ウレタン樹脂NAD形塗料、シリコン樹脂NAD形塗料、フッ素樹脂NAD形塗料、又溶剤型塗料のアクリル樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、シリコン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料のいずれかが適性である。又、外装材である窯業系サイディングの場合も前記塗料に準ずる。塗装素材が木製・鉄製・亜鉛めっき鋼板製の場合は前記塗料の他にアルキド樹脂系塗料が適性である。ケイ酸カルシュウム板、木製合板、プラスターボード系の内装材であれば、アクリル樹脂エマルション系塗料、合成樹脂エマルション系塗料が適性である。
【0017】
下塗り塗装は通常使用される粘性の塗料材とし、塗装刷毛ローラーにて
色むら、色透けがないように被着色面、全面に塗布する。使用した塗装刷毛ローラーは、それ以上、下塗り塗料材を付け足さないように、一時仮置きする。次にこの下塗り塗装がまだ乾かない状態にまだら模様を塗工する。
【0018】
中塗りとしてのまだら模様塗りに使用する形成具は凸凹のある合成スポンジを使用する。模様塗りに使用する塗料の標準塗布量は0.12〜0.18(Kg/m/回)と、通常建築塗装に使用される粘性度であり、凸部に塗料を適量含浸させることができるので、合成スポンジが模様付け形成具に最適である。立方体を成す合成スポンジと円柱型合成スポンジの2種類の形成具を使用して、粗い模様や細かい模様や連続した模様を塗工する。立方体合成スポンジの大きさは横15cm、縦10cm、高さ5cm程度で、円柱型合成スポンジの大きさは直径7cm、長さ12cm程度が適当である。この合成スポンジの凸凹は縦横に整列しているものではなく、任意になるように加工した物を使用する。又、凸凹合成スポンジローラーも同様に不均等な型を使用する。形成具を含浸させる容器は底の平らな箱状を使用して、合成スポンジに含浸させる塗料を随時確認できる器とする。
【0019】
次に凸凹合成スポンジに下塗り塗料色よりも濃いグレー色の調合色である、まだら模様塗料を含浸させ、下塗りしてある、まだ乾かない被着色面に叩くように模様付けを行う。加えて凸凹合成スポンジローラーにて、部分的に陰影を着けるように転がし模様付けを塗装する。模様が単調にならないように、複数回積装を繰り返すことにより自然に類似したコンクリート模様を装飾することができる。
【0020】
次に模様付け塗料がまだ乾かないうちに、先に使用した、下塗り塗料材を含浸させ過ぎない状態にある、該塗装刷毛ローラーをゆっくりと同じ一方向に薄層になるよう、上塗り塗工する。
【0021】
更に耐久性・耐候性を強化する為に、前記上塗り塗装が乾燥した後、表層
全面に艶消しクリヤー塗料を塗布して、透明造膜で塗装面を保護する。艶消しクリヤー塗料を使用するのは、打放しコンクリート仕上げ面は時間が経つにつれて、表面の光輝が消失していくが、塗装した面はそのまま艶が残り、周辺と合致せず、違和感を生じてしまう。その違和感を解消する為に艶消しクリヤー塗料を塗工する。
【0022】
以上がコンクリート模様を装飾する塗装形成工法であるが、同様に外装サ
イディング板、ケイ酸カルシュウム板や内装プラスターボード板等や、木部、鉄部、亜鉛めっき鋼板部にも、従来公知の下地処理を施工後、該模様付け用の色の違う数種類の塗装を装飾することが可能であり、該塗装形成工法は内外装の意匠としての打放しコンクリート模様及び優雅で深みのある多彩な磁器タイル模様やレンガ模様を造膜塗装することができる。
【0023】
又、該コンクリート模様の塗装形成工法は下塗り塗装を省いて、乾燥したシーラー又はプライマー面に模様塗りを塗工した、まだ乾かない塗装面に、下塗り用塗料を全面に薄層塗装して上塗り塗工する方法も同様の効果が得られるが、全面下塗り塗装した工法が耐久性、耐候性の効果が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存コンクリート面に、下塗り塗料として、耐候性、耐防水性のある塗料で、かつコンクリート面色に近似調色した淡色の前記塗料を、又通常に使用される粘性度の前記塗料を、既存コンクリート全面に塗布する。この塗料が、まだ乾かない状態に、下塗り塗料色より濃い色の同種粘性の塗料にて、模様付けをして、更に、まだ乾かない状態に、前記下塗り塗料を薄い層に上塗りすることを特徴とする、打放しコンクリート等の多彩模様を塗装形成する工法。
【請求項2】
下塗り塗料、模様付け塗料、上塗り塗料が各樹脂エマルション塗料・各樹脂NAD形塗料・各樹脂溶剤型塗料を成分とすることを特徴とする請求項1記載の打放しコンクリート等の多彩模様を塗装形成する工法。
【請求項3】
内外装ボード類の平滑面や、外装サイディング材の磁器タイル形状型のような凸凹面にも塗装可能なことを特徴とする請求項1記載の打放しコンクリート等の多彩模様を塗装形成する工法。

【公開番号】特開2008−266911(P2008−266911A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108313(P2007−108313)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(507125620)
【出願人】(303042785)
【Fターム(参考)】