説明

打楽器、特にドラム又はティンパニー

本発明は一つの共鳴体(3)を持つ打楽器(1)、特にドラム(2)またはティンパニーに関しており、その長さは一つの調節装置(5)を手段として変えることが可能である。本発明によれば、この調節装置(5)は一つの折りたたみ幌(6)であって、ここでは共鳴体(3)の少なくとも一部分が折りたたみ幌(6)として形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特許請求項1の概念による打楽器、特にドラム又はティンパニーに関する。
【背景技術】
【0002】
WO 00/10158によると、振動膜を簡単に均等に張ることを可能にするドラムが知られている。この目的の為に、その共鳴体はその周辺を囲むノッチを持ち、これを覆って共鳴体の端部から振動膜がかぶせられ張り紐によって支えられている。この張り紐は通常はノッチの一つにかかっている。
【0003】
JP 7-77978 Aによると、ドラムがスタンドの異なる高さに調節可能なように支持される打楽器が知られている。US 6 211 448 B1は、軸方向に互いに分離することができる第一と第二のボディー部分を持つ打楽器セットのバスドラムを開示している。こうすることによって、持ち運びの目的で少なくとも小さい方のドラムをバスドラムの中に収納することが可能である。GB 2 193 593 Aには異なる大きさと音の高低を持つ二つのドラムヘッドが開示されており、ここでは一方の或いは両方のドラムヘッドの音の高低が複数の張り装置によって変化できるようになっている。足ペダルを使って該当するドラムの音の高低を変化させるように張り装置を作用することが出来る。
【0004】
特許請求項1の概念に適応した打楽器はUS 4 060 019によって知られている。この調整可能なドラムは二つの円筒形のボディー半部分を含んでおり、これらは望遠鏡のように互いに入りこんで配置されている。これによって円筒形のボディー半部分づつは軸方向に互いに相対して位置をずらすことが出来る。ボディー半部分のそれぞれは、その円周に渡って配置され複数の軸方向に互いに間隔を置いた穿孔がある。互いにずれたボディー半部分のそれぞれの穿孔が一緒に同列に並べば、両ボディー半部分の所望の相対位置は留めネジ又はボルトで固定することが出来る。ドラムの全長即ち全高はこれによって段階的に変化され調整される。
【0005】
【特許文献1】WO 00/10158
【特許文献2】JP 7-77978 A
【特許文献3】US 6 211 448 B1
【特許文献4】GB 2 193 593 A
【特許文献5】US 4 060 019
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、より簡単に変えることが可能な、序文に述べたような打楽器を創造することの課題を根拠としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明によれば特許請求項1の特徴を持つ打楽器によって解決することが出来る。
【発明の効果】
【0008】
有利となる応用例は本申請中の対象に含まれる。
【0009】
本打楽器は一つの共鳴体を持ち、その長さは調節装置を手段として変化させることが可能であり、ここで、本発明によれば、この調節装置は一つの折りたたみ幌である。このような調節装置はまず第一に音の高低を無段階に調整できるという利点がある。このような折りたたみ幌を持つチューブ構造は、そのつど畳んだり引き伸ばしたり出来るので、特に取り扱いが簡単である。これによって、非常に興味深い音響変化を達成することが出来る。同時に、U-形の形成体を組み立てることも可能になり、空間的な状況又は演奏家の特別な要求に容易に適応させることが出来る。
【0010】
有利となる応用例によれば、共鳴体の少なくとも一部分が折りたたみ幌として形成されている。これは共鳴体の本質的な部分が折りたたみ幌であるまで拡張出来る。これによって、折りたたみ幌は一方では打楽器例えばドラム又はティンパニの共鳴体を形成するという課題、他方では同時に調節装置の役割を演じて簡単な様態で共鳴体の長さを変化させることを可能にするという課題を二重効果の意味で持っている。このような折りたたみ幌は例えば市販で手にはいる柔軟性の通気管である。これは通常は合成物質皮からできており、ワイアで補強されている。この限りにおいて、折りたたみ幌は簡単に手に入り、本発明による打楽器の為にわざわざ製造する必要がない。
【0011】
有利なことに、この折りたたみ幌は全ての方向に曲げることが可能である。このことはさらに、この打楽器がすでにその場所的な配列からして完全に演奏家の要求と出演場の場所的な実状に従って配置することができるのに役立っている。従って打楽器の両端は同じ方向又は異なった方向に向いて、一演奏家又は複数の演奏家の目的に合った位置に配置できる。
【0012】
本発明の別の応用例によると、この折りたたみ幌は螺旋状折りたたみ幌である。このような折りたたみ幌は螺旋形のワイアを手段として補強されており、実際上例えば換気技術の分野では容易に入手できる。
【0013】
本発明の特に優先的な応用例によると、共鳴体の両端は上張りが備えられており、この折りたたみ幌はその共鳴体の両端が同一平面にあるように調整されている。こうすることによって、例えば両方の鼓動面が上方に向いており、従って打楽器演奏者は同一ドラムに二つの上張りを持ち、これによって二面の鼓動面を使うことが出来る。この応用例では一人がドラムの両側で演奏できるか、或いは二人が同時に一つのドラムでそれぞれが一つの鼓動面で演奏できる。これによって、本発明による打楽器の応用性が更に向上させられている。
【0014】
有利であるのは、共鳴体の各端部が硬直なケトルリングを持ち、その折りたたみ幌がそれぞれの端部に、好ましくはそれぞれのケトルリングに固定されている。この応用例ではアコーデオンに類似した柔軟性の共鳴体の組み立てをも又行うことが出来る。
【0015】
更に、この折りたたみ幌は好ましくはその両方の外端部にそれぞれひとつづつの透明な合成物質で出来た固定リングを持っている。このような固定リングは前述のケトルリングの領域に簡単に固定させられる。このような合成物質リングは従って簡単に例えば無色のナイロン紐によって下部ドラムリングとも呼ばれる下部ケトルリングに結びつけることが出来るし、或いは金属製のアングルで固定できる。別のケトルリングすなわち別のドラムリングの固定も同様に行われる。
【0016】
有利なことに、調節可能な装置がこの共鳴体の選定された長さの固定の為に備えられている。これは本発明による打楽器がその調整され且つ演奏家によって所望された長さを維持するのに役立つ。もちろん、演奏家がそれを望むのであれば共鳴体の長さを演奏中に変化させることも可能である。
【0017】
本発明の特に優先的な実施例によれば、その固定装置は一つのスタンドを持ち、そこに少なくとも上部のケトルリングが取り外せるように固定されている。この応用例では、下部のケトルリングもまたスタンドに固定させられる。固定は調整可能なスライドブッシュによって行われる。
【0018】
本発明の別の応用例によれば、その固定装置は少なくとも一つの、好ましくは複数の、下部ケトルリングに留め金で固定できるベルトを持っている。この応用例では通常単にその上部のケトルリングがスタンドに支持され、下部のケトルリングは留め金で固定できるベルトによって、折りたたみ幌の長さを調整するように、上部のケトルリングに固定されている。ベルトを手段としたこのような固定は、その折りたたみ幌が固定装置なしで長さが変わるような際に特に必要である。従って、固定装置なしでは、共鳴体の長さがたえず増すような事態が起こり、演奏の際には望ましくない。
【0019】
本発明品の実施例は次に図面を持って詳しく説明されており、ここでは、全ての記述乃至図面に示された特徴はそれ自身またはその任意の組み合わせを含めて、申請または再出願の要約とは無関係に、前述の発明の対象を構成している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
打楽器1、特にドラム2又はティンパニーは一つの共鳴体3を持ち、その長さ4(図4参照)は調節装置5によって変えることが出来る。本発明によれば、この調節装置5は折りたたみ幌6である。
【0021】
図1と図4に示唆したように、共鳴体3の少なくとも一部分、図1と図4ではこれが本質的な部分、が折りたたみ幌6として形成されている。折りたたみ幌6は柔軟性で、全ての方向に曲げることが可能である。本発明の特に優先的な実施例によれば、この折りたたみ幌は螺旋状折りたたみ幌、すなわち螺旋状に巻かれたワイアを持つ折りたたみ幌である。例えば図1と図4に示した別の実施例によれば、補強ワイア7がアコーデオンのように複数の平行または広範囲に渡って平行して向き合って置かれた金属リングによって組み立てられている。
【0022】
更に図1と図4に示唆したように、共鳴体3の両端部8,9は上張り10,11が備えられている。図1では折りたたみ幌6は共鳴体3の両端部8,9が同一平面12に置かれるように調整してある。図4に示した実施例では、両端部8,9の平面13,14が互いに平行に向き合ってかつ離れて配置されている。
【0023】
更に特に図1と図4から察知できるように、共鳴体3の各端部8,9は硬直なケトルリング15,16を持っている。これ通常は上張り10,11の調整に役立つ。ケトルリング15,16は普通のやり方で組み立てられており、従ってここでは詳細に説明を加えない。折りたたみ幌6はそれぞれの端部8,9に好ましくはぞれぞれのケトルリング15,16に接してまたはそれぞれの領域に固定されている。更に、折りたたみ幌6はその両方の外端部8,9でそれぞれ固定リング17,18を持っている。固定リング17,18は本発明の特に優先的な実施例によれば透明な合成物質から出来ている。この固定リングはアクリルリングであってよく、例えば無色のナイロン紐(ここでは明示していない)で下部或いは上部のドラムリングとも呼ばれるケトルリングに結び付けられか又は金属アングル19で固定される。後者は図1の左側の部分で簡単に概略的に示唆されている。
【0024】
螺旋状折りたたみ幌のもとでは補強ワイア7が前述の固定リング17,18を交差しなければならないことは明白である(図1と図4では明示していない)。
【0025】
別のドラム2は図2と図3に形成されている。この実施例では、ドラム2は望遠鏡のように組み立てられている。図2と3に示したように、ここではそれぞれ三つの断片部分20がずり込めるように互いの中に動かせる。断片部分20の縁には組み立ての際に例えばスライドプロフィルリング21がはめ込まれ、これは位置をずらす際に断片部分20の境界としても又役立つ。
【0026】
図2に示した実施例では最下部と最上部の断片部分20がほぼ同じ直径を持っているのに対し、中間の断片部分20の直径は外側の断片部分のそれと比較して小さくなっている。図3に示した実施例では断片部分20の直径は上から下に向かって小さくされており、最上部の断片部分20は最大直径を持ち最下部の断片部分20は最小直径を持っている。
【0027】
更に本発明の打楽器1は共鳴体3の長さを選んで固定する為の調節可能な装置22を持っている。図5に示したように固定装置22は一つのスタンド23を持っており、そこに少なくとも上部ケトルリング15が取り外しできるように固定されている。図5に示唆してあるように、更に下部ケトルリング16もまたスタンドに取り外しできるように、すなわちずらせるように固定することも出来る。下部ケトルリングの固定には、図5に概略的に示唆してあるように、例えば固定可能なスリーブまたはスライドブッシュ24がある。
【0028】
本発明の別の、同様に図5に示唆してあるような実施例によれば、その固定装置22は少なくとも一つの、好ましくは複数の、下部ケトルリング16に留め金で固定できるベルト25を持っている。図5では明快にする為に単に二つのベルトが表示されている。ベルト25の外端部は調節可能なフック形の部品26を持っている。
【0029】
折りたたみ幌6によって、打楽器すなわちドラム2またはティンパニーのいわゆるケトルボリュームを無段階に調整乃至は変化させることが可能である。これによって、ドラムの高さの変化乃至は長さの変化が起こる。これに加えてまた、折りたたみ幌を曲げることが可能である。前述したように、折りたたみ幌6は好ましくは透明の合成物質膜で出来ており、ワイア、通常は螺旋状のワイア、で補強されている。
【0030】
このようにして、打楽器1の共鳴体を所望の長さにすることが可能であり、これによってドラムの所望の共鳴振動数及び音色を決めることが可能である。同様に、そのつどドラムの共鳴振動数及び音色を折りたたみ幌を変えることによって変化させることも可能である。折りたたみ幌の調節は皮張りまたはメンブラン張りとも呼ばれる上張りの張りを変えるよりずっと簡単である。
【0031】
後者は比較的複雑な方法でのみかえることが出来る、ここではメンブランは約4から6のサイドネジに均等に張られる。この張り渡しは非常に入念に均等に行われなければならない。
【0032】
本発明による打楽器の融通性は、演奏家がこれまでよりずっと多彩な音質変化の可能性を持ち、複数の大きさの異なるドラムを持ち運ばなくても良いので、明らかに改良されている。前述して図1に示したように、唯一つのドラムに二つの鼓動面を持つことが可能である。本発明のドラムは場所をとらずに収容または積み込むことが出来、折りたたみ幌は一つに圧縮され乃至は折りたためる。これによって特に運搬の際には便利である。折りたたみ幌を多様な形にすることが可能である。同様に鼓動面を多様な角度にすることが可能である。一つ或いは複数の鼓動面を斜めに置くこともまた可能である。通常はドラム及びティンパニーは慣例として木材、金属或いは合成物質で出来た硬直な共鳴体を持っている。当発明ではこの共鳴体が柔軟性で高さを調整できる折りたたみ幌で置き換えられており、任意に高音と低音の広帯域幅を得られるようになっている。ドラムの共鳴体を大きできる本発明の可能性は一方で音量を高め、他方で残響時間が良くなるように作用している。
【0033】
本発明による調節可能な共鳴体のおかげで、該当するドラムの基底音を継続的に変化させることが出来る。本発明による打楽器は必ずしも円形状でなくて良い。応用に適した他の形をとることも出来る。本発明をいわゆるバスドラムの領域で応用する際は、すでに前述で示唆したように、U-形を形成して組み立てることが出来るので、二つ目のバスドラムペダルで装備すればダブルバスドラムセットが容易に使用できる。
【0034】
このように、容易に変化させることが可能で、特に柔軟性に富み且つ可変性の打楽器が創作されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】最初の実施例による打楽器すなわちドラムの概略正面図。
【図2】別のドラムの概略正面図。
【図3】また別のドラムの概略正面図。
【図4】図1に示した打楽器の概略正面図であり、畳み合わせた状態を示す。
【図5】固定装置に固定した打楽器の概略正面図。
【符号の説明】
【0036】
1 打楽器
2 ドラム
3 共鳴体
4 長さ
5 調整装置
6 折りたたみ幌
7 補強ワイア
8 共鳴体3の端部
9 共鳴体3の他方の端部
10 上張り
11 上張り
12 端部8、9の平面
13 端部8の平面
14 端部9の平面
15 ケトルリング
16 ケトルリング
17 固定リング
18 固定リング
19 金属アングル
20 三遍のドラム部分
21 スライドプロフィルリング
22 固定装置
23 スタンド
24 スリーブ又はスライドブッシュ
25 ベルト
26 フック形の部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの共鳴体(3)を有する打楽器、特にドラム(2)又はティンパニーにして、その長さ(4)が調節装置(5)を手段として変化させることが可能であり、この調節装置(5)が折りたたみ幌(6)であることを特徴とする打楽器。
【請求項2】
請求項1による打楽器にして、その共鳴体(3)の少なくとも一部分が折りたたみ幌(6)として形成されていることを特徴とする打楽器。
【請求項3】
請求項1又は2による打楽器にして、その折りたたみ幌(6)が全ての方向に曲がることが可能であることを特徴とする打楽器。
【請求項4】
上述請求項の一つによる打楽器にして、その折りたたみ幌(6)が螺旋状折りたたみ幌であることを特徴とする打楽器。
【請求項5】
上述請求項の一つによる打楽器にして、その共鳴体(3)の両端(8,9)が上張り(10,11)を備え、その折りたたみ幌(6)はその共鳴体(3)の両端(8,9)が同一平面(12)に位置するように形成されていることを特徴とする打楽器。
【請求項6】
上述請求項の一つによる打楽器にして、その共鳴体(3)の両端(8,9)が硬直なケトルリング(15,16)を有して、その折りたたみ幌(6)がそれぞれの端部(8,9)、好ましくはそれぞれのケトルリング(15,16)に固定されていることを特徴とする打楽器。
【請求項7】
請求項6による打楽器にして、その折たたみ幌(6)が更にその両方の外端部(8,9)にそれぞれ一つづつの、好ましくは透明な合成物質で出来た合成物質リング(17,18)を有していることを特徴とする打楽器。
【請求項8】
上述請求項の一つによる打楽器にして、一つの調節可能である装置(22)がその共鳴体(3)の選択された長さ(4)の固定の為に備えられていることを特徴とする打楽器。
【請求項9】
請求項8の打楽器にして、その固定装置(22)が一つのスタンド(23)を有し、そこに少なくとも上部ケトルリング(15)が取り外しできるように固定されていることを特徴とする打楽器。
【請求項10】
請求項8又は9による打楽器にして、その固定装置(22)が少なくとも一つの、好ましくは複数の、下部ケトルリング(16)に留め金で固定することが可能なベルト(25)を有していることを特徴とする打楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−522505(P2007−522505A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552448(P2006−552448)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000085
【国際公開番号】WO2005/078699
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(506261338)