説明

打楽器

【課題】西洋音階と東洋音階を繰り返す手法を実現するには楽器を2種類用意するか、バイオリン属のように音程を自由に変えられる楽器を使用する方法があった。しかしながらこれらの手法は簡便でなかったり、演奏技術が難しいという課題があった。
【解決手段】本発明では西洋音階と東洋音階の両方に使用可能な複数の発音体を備え、それに加えて、西洋音階専用の発音体1体と東洋音階専用の発音体1体を備えたことを特徴とする西洋音階と東洋音階の両方が表現できることを特徴とする打楽器を提供する。この手段により上記課題は解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的な楽器演奏目的に、または脳を活性化して認知症の予防をする目的や脳関連の健康障害を有する人への音楽療法に用いられる打楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
西洋の音楽に用いられる音階(以下、西洋音階と記す)と東洋の音楽に用いられる音階(以下、東洋音階と記す)は一般的には異なるものであり、西洋音階にはそれ用に調律された楽器が用いられ、東洋音階にはそれ用に調律された楽器が用いられる。代表例として西洋音階はバッハ、モーツァルト、ベートーベンなどのクラシック音楽の楽曲があり、東洋音階には日本、中国などの伝統音楽やインドネシアのガムラン音楽などがある。また日本の中でも沖縄地方には独自の音階があることが知られている。
【0003】
一方、脳を活性化して認知症の予防をする目的や脳関連の健康障害を有する人への音楽療法を考えた場合、西洋音階と東洋音階は楽曲を聴いた印象や楽器を演奏する場合の印象が大きく異なることから脳への刺激が大きく、西洋音階と東洋音階を繰り返すことが大きな療法効果につながる可能性がある。または脳を活性化して認知症の予防をする目的にも有効である。この西洋音階と東洋音階を繰り返す手法を実現するには楽器を2種類用意するか、バイオリン属のように音程を自由に変えられる楽器を使用する方法があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
非特許文献1に示されているように「音楽療法は心身に失調や障害を持つ人々に役立つばかりではなく、今や健常者にとっても健康を促進するために活用する時代」になっている。
【非特許文献1】「新訂 高齢者の音楽療法」貫 行子著(音楽の友社刊行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背景技術の項で述べたように、西洋音階と東洋音階を繰り返す手法を実現するには楽器を2種類用意するか、バイオリン属のように音程を自由に変えられる楽器を使用する方法があった。しかしながら、楽器を2種類用意するのは簡便でなく、またバイオリン属のように音程を自由に変えられる楽器は一概に演奏技術の難易度が高く、チューニング操作の手間も考慮するとやはり簡便とは言いがたいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明では西洋音階と東洋音階の両方に使用可能な複数の発音体を備え、それに加えて、西洋音階専用の発音体1体と東洋音階専用の発音体1体を備えたことを特徴とする西洋音階と東洋音階の両方が表現できることを特徴とする打楽器を提供する。西洋音階では比較的厳格に音の周波数が決まっているが、東洋音階では概略決まっているものの、西洋音階ほど厳密ではないということに着目し、簡便な楽器で西洋音階と東洋音階の両方を表現可能とする。一例として4本の発音体で構成できれば楽器としてコンパクトにできるし、価格も安価にできるので好都合である。まず4本の発音体で西洋音階を構成し、西洋音階の和音がきれいに響くようにし、その内の一体を取り除いて東洋音階専用の発音体1体に取り替える。この手段により簡便な楽器で西洋音階と東洋音階の両方を表現可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明では上記した手段により、簡便な構成で西洋音階と東洋音階の両方を表現可能とする打楽器を実現できる。その結果、脳を活性化して認知症の予防をする目的や脳関連の健康障害を有する人への音楽療法を施術する目的に効果を発現する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態例の斜視図を示す。
【図2】本発明の実施の形態例の発音体と基台の境界部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を実施するための形態について詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態例を示す外観の斜視図である。
【実施例1】
【0010】
市販のメラミンフォーム(ワコー株式会社製、125x67x40各mm)を2個用意し、それを薄い布(麻60%+綿40%でメッシュ編み)で被覆し、図1のごとく布製の敷物の上に配置し、その上に金属の発音体を架橋させるように配置させる。なお、布製の敷物1を敷くのは、万一の発音体の落下から床面を保護するためであり、床面の種類によっては不要である。棒状(円柱状)の金属は鉄、アルミ、銅、真ちゅう、ステンレス、ニッケル、チタン、コバルトなど何でも選択可能であるが、本実施例ではステンレス2種(クロム18%、ニッケル9%、残部鉄、規格名SUS304、およびクロム17%、残部鉄、規格名SUS440C)、真ちゅう(銅60%、残部亜鉛)、チタニウム(純チタン、規格名TB340)を用いた。音程は棒状金属の材質と直径と長さにより決定される。一例として直径10mm、長さ250mmのチタニウム棒はおよそF(ヘ)の音を出す。ただし、倍音も含まれている。発音体の並び順は演奏者の好みで並べる。1例としては、図1の左からE♭(変ホ)、A♭(変イ)、F(ヘ)、C(ハ)と並べる。音程の低い順で言えば、E♭(変ホ)、F(ヘ)、A♭(変イ)、C(ハ)であるが、演奏上の都合で並び順を入れ替えている。これで西洋音階の長3度、短3度、完全4度、完全5度の関係が構築でき、響きの良好な和音やアルペジオが出せる構成となる。E♭の音は真ちゅう製で直径12mm、長さ245mm、Fの音はチタニウム製で直径10mm、長さ250mm、A♭の音はステンレス製(SUS304)で直径12mm、長さ250mm、Cの音はステンレス製(SUS440C)で直径13mm、長さ242mm、である。図2に本発明の実施の形態例の発音体と基台の境界部を示す。基台を構成するメラミンフォームが発音体の重力で変形し、自然な溝を形成し、発音体が安定に存在できる。そのため発音体を連続して叩いてもズレはない。なお図2では省略したが、発音体とメラミンフォームの間に薄い布が存在しても同様の効果で発音体は安定に存在できる。
【0011】
発音体を叩くためのばち(スティック)は金属、木、プラスティックなど幅広く使用できる。本実施例では、直径10mm、長さ165mmのポリカーボネイト製の丸棒を用いた。叩いた際の感触や音色は共に良好であった。金属棒の中央、端その他中間地点など叩く場所により音色は変化する。
【0012】
以上は西洋音階用の打楽器の構成例である。次に、これを東洋音階用の打楽器に構成する方法を例示する。右から2番目のFの音の発音体をはずし、そこにおよそ西洋音階的に言えばG(ト)−30セント位に調律された発音体を設置する。図1の右側に一体離れて図示されているのが交換用の発音体である。チタニウム合金製(アルミ6%、バナジウム4%、残部チタニウム)で直径10mm、長さ237mmの棒状発音体である。この発音体はインドネシアのガムラン音楽で使われるペログ音階の7音の内の5番目の音に合わせてある。E♭とA♭の音はそれぞれペログ音階の7音の内の3番目と6番目の音に近似しているので発音体を1体交換するという簡便な手法ながらインドネシアのガムラン音楽で使われるペログ音階に近似した音階が作り出せる。実際、この構成で打楽器を打ち鳴らすと、あたかもインドネシアのガムラン音楽を聴いているような雰囲気となった。なお本実施例ではチタニウム合金製の発音体を使用したが、純チタン製やステンレス製でも代用でき、楽器使用者の好みの音色を出す発音体を選択すればよい。またCの音はC+50セントに至るまでの高音域に調律する事により、演奏者や聴取者の好みの響きに調整することも可能である。
【符号の説明】
【0013】
1・・・敷物、2・・・基台、3・・・発音体、4・・・ばち

【特許請求の範囲】
【請求項1】
西洋音階と東洋音階の両方に使用可能な複数の発音体を備え、それに加えて、西洋音階専用の発音体1体と東洋音階専用の発音体1体を備えたことを特徴とする西洋音階と東洋音階の両方が表現できる打楽器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−271680(P2010−271680A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143713(P2009−143713)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(599135385)