払拭用品
【課題】小さく圧縮した状態で保管し、必要なときに膨張し、濡れた状態で使用可能な払拭用品を提供する。
【解決手段】小さく圧縮したシート材12を収納するパック11は、熱可塑性プラスチックフィルムを用いて、パック周縁13に強接着部14を形成し通常圧力では破断しないパック構造を具備するとともに、パック周縁13の強接着部14から内方へ延び出した、強接着部から成る破断力誘導部15を具備し、上記破断力誘導部15同士又は破断力誘導部15とパック周縁13との間に、上記強接着部14よりも弱い弱接着部16を形成して圧力で破断可能な分離帯17を設け、パック内部を2室に分離し、破断力誘導部15を設けた方の1室18にシート材12に含浸させる液体22を充填し、他の1室19に液体22の含浸により膨張し、おしぼりやタオル等として使用可能な形状及び大きさとなるシート材12を配置する。
【解決手段】小さく圧縮したシート材12を収納するパック11は、熱可塑性プラスチックフィルムを用いて、パック周縁13に強接着部14を形成し通常圧力では破断しないパック構造を具備するとともに、パック周縁13の強接着部14から内方へ延び出した、強接着部から成る破断力誘導部15を具備し、上記破断力誘導部15同士又は破断力誘導部15とパック周縁13との間に、上記強接着部14よりも弱い弱接着部16を形成して圧力で破断可能な分離帯17を設け、パック内部を2室に分離し、破断力誘導部15を設けた方の1室18にシート材12に含浸させる液体22を充填し、他の1室19に液体22の含浸により膨張し、おしぼりやタオル等として使用可能な形状及び大きさとなるシート材12を配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡げるとおしぼりやタオル等として使用可能な形状及び大きさとなるシート材を小さく圧縮してパックに収納し、濡れた状態で使用することができるようにした払拭用品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
おしぼりや濡れナプキンないしは濡れタオル等は、様々な呼び名で呼ばれるが、手や顔等の身体各部、その他を拭くという共通の目的で使用される商品があり、これらは払拭用品としては同類のものと考えられる。これらのものは、定形に切断した不織布に水分を含浸させ、かつ、プラスチックフィルム製の袋に1個ずつ包装したものや、或いは、定寸ごとにミシン目などを設けて連続的に形成し、これを容器の口から引き出せるように充填したものなどがある。こうした払拭用品は直ぐに使用できる状態にあり、大きく、嵩のある包装形態になっているので、携帯性に問題がある。また、不織布等の素材が、長時間水分と接触している状態にあることから、使用期限の問題や、変質の可能性もある。
【0003】
一方、特開平11−139463号は、半ば乾燥状態のティッシュと水性液が充填された小袋とを外袋内に収容し、マイクロ波加熱時の内圧上昇により破袋して、熱く蒸れた状態にすることができる発明を開示している。このため前期の問題を有することに加えて、マイクロ波による加熱ができない場合には使用することができず、設備もない出先では使用することができないという問題を有する。また、実用新案登録第3072960号は、乾燥おしぼり体を折りたたみ、その中に、水または消毒液を充填した個装液袋を収納し、使用時におしぼり体をその外部から絞り込んで袋内の水または消毒液を破砕し、おしぼり体にしみ込ませることができる考案を開示している。しかしこれでは、乾燥おしぼり体は折りたたんだ状態にしか小さくならず、また、おしぼり体内に収納されている個装液袋からどの程度水または液がしみ込んだのかが分かりにくく、個装液袋を取り除く手間もかかるという問題がある。
【0004】
そこで本発明者は、小さく圧縮したシート材と液体を分離して1袋のパックに封入し、使用時に液体をシート材に供給して膨張させ、取り出してそのまま使用することができるという、携帯性に優れた払拭用品を開発した。この払拭用品は、必要なときに濡れた状態にして使用することができるので、例えば老人の介護などに便利に使用することができ、また、屋外での行動中に汚れを拭くことなどにも使用することができる。さらに加熱装置や氷等がなくても、暖ためて、或いは冷たくして使用することができるので、夏季には清涼感が得られる一方、冬季には暖温感を得ることもできるという特徴を有している。これを使用するには、パックの内部を2分している分離帯を破断させ、一方の部分の液体を他方の部分のシート材に含浸させて、圧縮しているシート材を膨らませれば良い。しかし、上記の分離帯は一様な太さのものから成り、それがパックを横断しているので、うまく破断させることが難しいという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−139463号
【特許文献2】実用新案登録第3072960号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に着目してなされたものであり、その課題は、パック内部が破断可能な分離帯によって分離されている構造を有する払拭用品において、分離帯を的確、かつ、比較的容易に破断させ、2分されていて一方の部分にある液体を他方の部分のシート材に含浸させ、膨張させるようにすることである。また、本発明の他の課題は、道具や補助具を一切必要とせずに、濡れた状態で使用可能な、払拭用品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明は、拡げるとおしぼりやタオル等として使用可能な形状及び大きさとなるシート材を小さく圧縮してパックに収納した払拭用品として、
シート材を収納するパックは、熱可塑性プラスチックフィルムを用いて、パック周縁に強接着部を形成することにより圧力では破断しないパック構造を具備するとともに、パック周縁の強接着部から内方へ向って延び出した、破断力誘導部を具備し、上記破断力誘導部又は破断力誘導部側とパック周縁側との間に、上記強接着部よりも弱い弱接着部を形成することにより圧力で破断可能な分離帯を設けて、パック内部を少なくとも2室に分離するものとし、破断力誘導部を設けた方の1室に分離帯の破断によりシート材に含浸させて膨張させる液体を充填し、他の1室に液体の含浸により膨張し、おしぼりやタオル等として使用可能な形状及び大きさとなるものを圧縮したシート材を配置した構成を有するものとするという手段を講じたものである。
【0008】
本発明に係る払拭用品は、前述したように、おしぼりや濡れナプキンないしは濡れタオル等は、様々な呼び名で呼ばれるものと同類の物品を総称するものと考えて良く、手や顔等の身体各部、その他を拭くという共通の目的で使用することを予定している。本発明に係る払拭用品を構成するシート材には、液体の含浸により膨張し、拡げると手拭き等として使用可能な形状及び大きさとなるように圧縮したものを使用する。シート材は、使用前の状態では小さく圧縮された状態にあり、使用時に液体を含浸させると膨張し、これを拡げることで原型に復元し、濡れた払拭用品となる。即ち、手拭き等として使用可能な形状及び大きさとなる。復元時の用途としては、おしぼりやハンカチ、或いはタオルの類が考えられるが、これらに限定されるものでもない。
【0009】
この小さく圧縮されたシート材は、合成樹脂又は天然樹脂から成る繊維を材料とする織布又は不織布を使用し、これをほぼ定寸に切断し、圧縮成型手段により、例えば直径1〜数センチ、高さ0.5〜数センチのコイン型に成型したものを使用する。勿論サイコロのような角型や、ガムのような粒状ないし板状に整形したものであっても良く、大きさも上記寸法に制限されない。このようにしてシート材を小さく圧縮したものは、乾燥状態において小さく圧縮された状態を維持するので、携帯性を損なわない。
【0010】
前記のシート材を小さく圧縮したものは、パックに収納した状態で扱われ、使用時に、液体が封入されているパックの一室を例えば打撃して圧力を加えることにより、液体を他室に供給し、シート材に含浸させることによりパック内において膨張させ、その後にパックから取り出して使用する。本発明では、そのために分離帯によりパック内部を少なくとも2室に分離した構造とする。シート材を小さく圧縮したものは上記パックの2室の内の一室に配置し、分離帯の破断によりそのものに含浸させて膨らませ、シート材とするために、液体を上記パックの2室の内の他室に配置する。すなわち分離帯は、2室を分離する手段であるとともに、圧力を加えると破断して2室を通じるようにする手段でもある。このようなパックに該当する典型的な容器は、扁平な袋が良い。
【0011】
分離帯は、パックの中間部分の全幅に渡って設けても良いし、また、一部分にだけ設けても良い。すなわち、分離帯は、強接着部とともに設けることができ、また弱接着部だけで設けることも可能である。また、分離帯は、例えば打撃により圧力を加えて破断可能な構造部分として形成する。従って、破断しないパック構造とは、例えば分離帯が破断する程度の圧力によっては破断しない構造という意味となる。
【0012】
弱接着の分離帯を設けるためには、パックに用いた熱可塑性プラスチック同士の接着よりも弱い接着力で接着する異種の熱可塑性プラスチックを、パックを構成している熱可塑性プラスチックフィルム間に介在させて、接着する方法がある(請求項2記載の発明)。また、同種の熱可塑性プラスチック同士を、強接着部分よりも低温で接着する方法も適用可能である。
【0013】
これに対し、単なる帯状の分離帯では、うまく破断させることが難しいという問題が明かになっているので、本発明では、所定以上の圧力を加えて2室を通じるべく上記分離帯に破断力を集中させるために、以下に説明する改良を加えてこれを解決するものとした。その手段の一つとして上記の袋状構造を有するパックに、熱可塑性プラスチックフィルムを用い、周縁を強接着することにより破断しないパック構造を具備するとともに、パック周縁の強接着部から内方へ向って延び出した破断力誘導部を具備する。破断力誘導部は、強接着部に設けても良いし弱接着部に設けても良い。さらに、パック周縁の左右両方から内方へ向って伸びだす形態を取っても良いし、また、パック周縁の左右どちらか一方から内方へ向って伸びだす形態を取っても良い。
【0014】
破断力誘導部は、パックの内部を完全にではないがほぼ2分している部分であるということができる。破断力誘導部は、分離帯という破断容易部に外力を誘導することによって破断力の分散を避け、破断力が集中するようにする手段である。これにより、2室の一方に充填されている液体を、他方に配置されているシート材を小さく圧縮したものに、確実に供給することができるようになる。
【0015】
上記の破断力誘導部は、様々な形態変化を取ることができるが、基本的には、破断力誘導部は、パック周縁の強接着部から内方へ向って延び出した構成を取るものである。そして破断力誘導部は、パック周縁の強接着部から内方へ向って延び出し、かつ、破断容易部に向って傾斜した傾斜部を有していることが望まれる(請求項3記載の発明)。つまりパックに加えられた外力を分離帯に誘導することができるものが、本発明の傾斜部に該当する。従って、本発明における傾斜部は、必ずしも直線状の傾斜であることも要しない。例えば、彎曲した部分も傾斜であり、また、階段状になった部分も、本発明における傾斜に該当する。
【0016】
破断力誘導部は、パック周縁の強接着部から内方へ向って延び出したものであるが、パック左右両方から内方へ伸び出す形態でも良いし、また、左右どちらか一方から内方へ向かって伸び出す形態でも良い。図1、図2等に示すものは、破断容易部を中心として、その左右に傾斜部が位置したほぼ対称な構造を有している(請求項4記載の発明)。しかし図9、図10等に示されているものは、破断容易部の片側にだけ傾斜部が位置している。傾斜部の先端に位置する破断容易部の幅は、任意に決めることができる。破断容易部の弱接着力が一定である場合、幅が狭い程、外力が集中されるので破断も容易になり、弱接着力が弱ければ、一定の幅以上の広さが要求されることもある。
【0017】
このように構成された本考案に係る払拭用品では、液体の含浸により膨張したシート材を加熱する加熱手段をパックに併設し、シート材を暖めて使用するという構成を併用することができる。加熱手段としては、使い捨てカイロないしは使い切りタイプの懐炉などと呼ばれる、鉄粉の酸化作用を利用したカイロを使用するのが、価格、安全性、使い易さなどから最も望ましい。また、液体の含浸により膨張したシート材を冷却する冷却手段をパックに併設し、シート材を冷やして使用することも可能である。冷却手段としては、冷却パック、氷点何々などと呼ばれる、化学物質を充填した保冷具を使用するのが、やはり価格、安全性、使い易さなどから最も望ましい。さらに、本発明に使用する液体は、各種の水ないし、消毒や清涼用の成分を含有させた水溶液、或いは非水溶液その他あらゆる液体を使用可能である。それらの液体が着色されているか色を帯びている場合には、着色から含浸状態が分かる。また、逆説的であるが、パック内の液体を使わなくてもシート材を膨張させることは可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、パック内部が破断可能な分離帯によって2分されている構造を有する払拭用品において、破断力誘導部を形成するとともに、上記破断力誘導部の先端部分に、分離帯から成る破断容易部を配置しているので、分離帯を的確、かつ、比較的容易に破断させることができ、2分されていて一方の部分にある液体を他方の部分のシート材に含浸させ、膨張させることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、パックの液体が封入されている一室を例えば打撃することにより、確実に分離帯を破断させることができるので、道具や補助具を一切必要とせずに、濡れた状態で使用可能な、払拭用品を提供することができる。かくして、本発明によれば、必要なときに濡れた状態の払拭用品を使用することができるという効果を奏する。また、本発明では、シート材が小さく圧縮された状態にあるにも拘らずパックに収納され、液体の含浸により膨張するまで取り出されることはないので、小さく圧縮されたものを誤飲する事故を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図示の実施形態を参照し、本発明の払拭用品10について、より詳細に説明する。図1は、本発明に係る払拭用品10の一例を示しており、このものは熱可塑性プラスチックを使用し、その4周縁を強接着して、長方形状を有する扁平な袋状構造のパック11を形成したものである。
【0020】
符号12は、拡げると手拭き等として使用可能な形状及び大きさとなるようにシート材を小さく圧縮成型したものを示す。シート材を小さく圧縮成型したもの12は、合成樹脂又は天然樹脂から成る繊維を材料とする織布又は不織布を使用し、これに銀、亜鉛などの抗菌性を有する極微細金属粉末を分散したもので、原シートを定寸に切断し、圧縮成型手段により、例えば直径2.5センチ、高さ2センチ程度の大きさに成型したものである。このシート材を小さく圧縮成型したもの12は、目的、用途に応じて上記以外の大きさ、形状に形成されたものを使用することができる。
【0021】
図示の例では、パック11に適した熱可塑性プラスチックとして、破断しないパック構造を備えるために、フィルムを張り合わせて2重にしたものを使用し、万が一にもパック11の液漏れを生じないように図っている。図示のパック11は、周縁13を強接着することにより形成するとともに、中間部分においてパック周縁の強接着部14から内方へ向って延び出した、上記とほぼ同様に強接着部14から成る破断力誘導部15を具備している。また、上記破断力誘導部同士の間に、強接着部14よりも弱い弱接着部16を形成することにより、打撃で破断可能な分離帯17を設けて、パック内部を最小限の2室18、19に分離している。
【0022】
図1に代表される実施形態において、パック11は、熱可塑性プラスチックであるポリエステルフィルムを使用して形成しており、そのパック11には、周縁の左右両側から内方へ向って延び出した強接着部14から成る左右対称形状の破断力誘導部15、15が形成されている。上記の破断力誘導部15、15には、液体を充填した1室18の側に、パック中央へ向って傾斜した傾斜部20、20を設けている。上記の傾斜部20は、直線状の急傾斜を構成しており、その先端部間において、比較的広く設定されている分離帯17の幅が決定されている。
【0023】
図示の例では、パック11に用いた熱可塑性プラスチック同士の接着よりも弱い接着力で接着する、異種の熱可塑性プラスチック21、21として、ナイロンフィルムを、パック11を構成している熱可塑性プラスチックフィルム間に介在させた上、任意の幅で接着し、分離帯17を形成している(図3参照)。熱可塑性プラスチックフィルム21、21を接着させることは、すなわち分離帯17を形成することであり、接着幅は接着力を左右するが、狭くもまた広くも任意の接着幅に設定することができる。なお、異種の熱可塑性プラスチック(ナイロンフィルム)21、21とパック11に用いた熱可塑性プラスチック(ポリエステルフィルム)との接着は、強接着14となる。
【0024】
そして、パック11の2室の内の一室19にシート材を小さく圧縮したもの12を配置し、分離帯17の破断により、上記のもの12に含浸させて膨らませるに足る分量の液体22を、上記パックの2室の内の他室18に配置する。この液体22には、水、又は水を主体とする水溶液、ないしは消毒液などの特別の用途を有する成分から成る液を使用することができる。その場合、液体22がパックの構成材料や、分離帯の構成材料などとの関係において安定な成分であることは当然必要なことである。
【0025】
このように構成された本発明に係る払拭用品10を使用するには、図1において、液体22が封入されている方の一室18を、例えば拳によって打撃する。この打撃力がパック11に加えられると、打撃に伴う圧力は、非圧縮性流体である液体22を、破断力誘導部15の傾斜部20に沿って分離帯17に誘導するので、その結果、集中する圧力に分離帯17が耐え切れなくなり、やがて破断を生じる。分離帯17が破断すると、液体22が一室18から破断部23を通過して他室19へ流入し、シート材を小さく圧縮したもの12を浸し、これを膨張させることになる(図2参照)。
【0026】
封入されている液体22が、シート材を小さく圧縮したもの12を完全に膨張させることで吸収され、パック11の内部に残存しない状態になったなら、封を切って取り出すことができる。そこで、パック11を切り口24から開き、濡れて膨張したもの12′を取り出し、図4に示すように拡げて、そのまま使用することができる。
【0027】
破断力誘導部15は、図5以下に示すように、様々な形態変化を取ることができる。基本的には、破断力誘導部は、パック周縁の強接着部から内方へ向って延び出した構成を取るものである。図5の例は、図1に示したのとおなじものであるが、開口幅の広い破断部23となる分離帯17を有する例1であり、これに対して図6の例2は、図1、図5と同様の破断力誘導部15、傾斜部20を有するが、全部が弱接着部16から成る開口幅の狭いほぼV字形の分離帯17を有する例である。図6の例2は狭い開口幅の破断部23′を持つ。このような場合、圧力集中も一段と強くなることがあるので、破断力誘導部15、15の先端の破断部23′の厚みを増し、破断性を抑制することができる。
【0028】
図7の例は、一定幅の破断力誘導部25、25を有し、その内方に傾斜部26、26を急傾斜に設け、かつ、その先端に幅広い破断部27を形成し得る分離帯17を有する例3である。これに対する図8の例は、図7の例と同様に設けた全部が弱接着部16から成る一定幅の破断力誘導部25、25の先端に、開口幅の狭い破断部27′を形成し、分離帯17とした例4である。これらの例では、パック中央部で一挙に圧力が高まるようになるが、破断部を設けるのは中央部とは限らない。
【0029】
図9の例は、緩い傾斜部28によって内側が規定されている破断力誘導部29、29を有しており、その先端部とパック周縁との間に、中程度の幅の破断部30を形成し得る分離帯17を有する例5である。図10の例は、緩い傾斜部28によって内側が規定されている破断力誘導部29、29を片側に有し、他方の側に設けられている強接着部31との間に、中程度の幅の破断部30を形成し得る分離帯17を有する例6である。
【0030】
図11の例は、図7の例と同様に一定幅の破断力誘導部25、25を有し、その中央部に、傾斜部32として彎曲した部分を持ち、かつ、幅広い破断部33を形成し得る分離帯17を有するものとした例7である。そして、図12の例は、傾斜部32として彎曲した部分を持つが、その位置を一定幅の破断力誘導部25の先端部とパック周縁との間にして非対称の配置とした例8である。
【0031】
これまで説明した本発明に係る払拭用品10には、既に説明したように、加熱手段や、冷却手段を併用することができる。その場合、加熱手段を揉み発熱状態にして濡れた払拭用品10に接触させることにより暖め、或いは冷却手段を打圧し冷却状態にして濡れた払拭用品10に接触させることにより冷やして使用する。加熱手段としては、使い捨てカイロないしは使い切りタイプのカイロなどと呼ばれる、鉄粉の酸化作用を利用したカイロを使用する。また、加熱手段に変えて払拭用品10を冷却する冷却手段をパック11に併設し、冷やして使用する手段の一例としては、冷却パック、氷点何々などと呼ばれる、化学物質を充填した保冷具(例えば、株式会社サンケイ商事製造に係る瞬間冷却パック「冷えっ子」)を使用することができる。なお、加熱手段と反応補助剤は例えば鉄粉と塩水、冷却手段と反応補助剤は例えば硝安と尿素の組み合わせなどである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る払拭用品は、手や顔などを拭くための払拭用品としての用途以外に、スポーツ時の汗拭きとして、老人介護の際の身体の払拭用などとして、さらには医療現場における清浄用などの用途に利用できる可能性がある。また、事故現場のように、清潔性を期待しにくい場合にも、必要十分な衛生状態を保って措置をするためにも有用である。さらに、シート材を顔面に貼り付ける形状に形成し、化粧用のパック材としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る払拭用品の実施形態の例1を示す斜視図。
【図2】同上の物の使用状態を示す斜視図。
【図3】本発明に係る払拭用品の要部断面を示すもので、Aは図1のIIIA−IIIA線断面図、Bは図2のIIIB−IIIB線断面図。
【図4】本発明に係る払拭用品の使用状態を示す説明図。
【図5】本発明におけるパックの実施形態の例1を示す正面図。
【図6】本発明におけるパックの実施形態の例2を示す正面図。
【図7】本発明におけるパックの実施形態の例3を示す正面図。
【図8】本発明におけるパックの実施形態の例4を示す正面図。
【図9】本発明におけるパックの実施形態の例5を示す正面図。
【図10】本発明におけるパックの実施形態の例6を示す正面図。
【図11】本発明におけるパックの実施形態の例7を示す正面図。
【図12】本発明におけるパックの実施形態の例8を示す正面図。
【符号の説明】
【0034】
10 払拭用品
11 パック
12 シート材を小さく圧縮整形したもの
13 周縁
14、31 強接着部
15、25、29 破断力誘導部
16 弱接着部
17 分離帯
18、19 室
20、26、28、32 傾斜部
21 熱可塑性プラスチックフィルム
22 液体
23、23′、27、27′、30、33 破断部
24 切り口
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡げるとおしぼりやタオル等として使用可能な形状及び大きさとなるシート材を小さく圧縮してパックに収納し、濡れた状態で使用することができるようにした払拭用品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
おしぼりや濡れナプキンないしは濡れタオル等は、様々な呼び名で呼ばれるが、手や顔等の身体各部、その他を拭くという共通の目的で使用される商品があり、これらは払拭用品としては同類のものと考えられる。これらのものは、定形に切断した不織布に水分を含浸させ、かつ、プラスチックフィルム製の袋に1個ずつ包装したものや、或いは、定寸ごとにミシン目などを設けて連続的に形成し、これを容器の口から引き出せるように充填したものなどがある。こうした払拭用品は直ぐに使用できる状態にあり、大きく、嵩のある包装形態になっているので、携帯性に問題がある。また、不織布等の素材が、長時間水分と接触している状態にあることから、使用期限の問題や、変質の可能性もある。
【0003】
一方、特開平11−139463号は、半ば乾燥状態のティッシュと水性液が充填された小袋とを外袋内に収容し、マイクロ波加熱時の内圧上昇により破袋して、熱く蒸れた状態にすることができる発明を開示している。このため前期の問題を有することに加えて、マイクロ波による加熱ができない場合には使用することができず、設備もない出先では使用することができないという問題を有する。また、実用新案登録第3072960号は、乾燥おしぼり体を折りたたみ、その中に、水または消毒液を充填した個装液袋を収納し、使用時におしぼり体をその外部から絞り込んで袋内の水または消毒液を破砕し、おしぼり体にしみ込ませることができる考案を開示している。しかしこれでは、乾燥おしぼり体は折りたたんだ状態にしか小さくならず、また、おしぼり体内に収納されている個装液袋からどの程度水または液がしみ込んだのかが分かりにくく、個装液袋を取り除く手間もかかるという問題がある。
【0004】
そこで本発明者は、小さく圧縮したシート材と液体を分離して1袋のパックに封入し、使用時に液体をシート材に供給して膨張させ、取り出してそのまま使用することができるという、携帯性に優れた払拭用品を開発した。この払拭用品は、必要なときに濡れた状態にして使用することができるので、例えば老人の介護などに便利に使用することができ、また、屋外での行動中に汚れを拭くことなどにも使用することができる。さらに加熱装置や氷等がなくても、暖ためて、或いは冷たくして使用することができるので、夏季には清涼感が得られる一方、冬季には暖温感を得ることもできるという特徴を有している。これを使用するには、パックの内部を2分している分離帯を破断させ、一方の部分の液体を他方の部分のシート材に含浸させて、圧縮しているシート材を膨らませれば良い。しかし、上記の分離帯は一様な太さのものから成り、それがパックを横断しているので、うまく破断させることが難しいという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−139463号
【特許文献2】実用新案登録第3072960号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に着目してなされたものであり、その課題は、パック内部が破断可能な分離帯によって分離されている構造を有する払拭用品において、分離帯を的確、かつ、比較的容易に破断させ、2分されていて一方の部分にある液体を他方の部分のシート材に含浸させ、膨張させるようにすることである。また、本発明の他の課題は、道具や補助具を一切必要とせずに、濡れた状態で使用可能な、払拭用品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明は、拡げるとおしぼりやタオル等として使用可能な形状及び大きさとなるシート材を小さく圧縮してパックに収納した払拭用品として、
シート材を収納するパックは、熱可塑性プラスチックフィルムを用いて、パック周縁に強接着部を形成することにより圧力では破断しないパック構造を具備するとともに、パック周縁の強接着部から内方へ向って延び出した、破断力誘導部を具備し、上記破断力誘導部又は破断力誘導部側とパック周縁側との間に、上記強接着部よりも弱い弱接着部を形成することにより圧力で破断可能な分離帯を設けて、パック内部を少なくとも2室に分離するものとし、破断力誘導部を設けた方の1室に分離帯の破断によりシート材に含浸させて膨張させる液体を充填し、他の1室に液体の含浸により膨張し、おしぼりやタオル等として使用可能な形状及び大きさとなるものを圧縮したシート材を配置した構成を有するものとするという手段を講じたものである。
【0008】
本発明に係る払拭用品は、前述したように、おしぼりや濡れナプキンないしは濡れタオル等は、様々な呼び名で呼ばれるものと同類の物品を総称するものと考えて良く、手や顔等の身体各部、その他を拭くという共通の目的で使用することを予定している。本発明に係る払拭用品を構成するシート材には、液体の含浸により膨張し、拡げると手拭き等として使用可能な形状及び大きさとなるように圧縮したものを使用する。シート材は、使用前の状態では小さく圧縮された状態にあり、使用時に液体を含浸させると膨張し、これを拡げることで原型に復元し、濡れた払拭用品となる。即ち、手拭き等として使用可能な形状及び大きさとなる。復元時の用途としては、おしぼりやハンカチ、或いはタオルの類が考えられるが、これらに限定されるものでもない。
【0009】
この小さく圧縮されたシート材は、合成樹脂又は天然樹脂から成る繊維を材料とする織布又は不織布を使用し、これをほぼ定寸に切断し、圧縮成型手段により、例えば直径1〜数センチ、高さ0.5〜数センチのコイン型に成型したものを使用する。勿論サイコロのような角型や、ガムのような粒状ないし板状に整形したものであっても良く、大きさも上記寸法に制限されない。このようにしてシート材を小さく圧縮したものは、乾燥状態において小さく圧縮された状態を維持するので、携帯性を損なわない。
【0010】
前記のシート材を小さく圧縮したものは、パックに収納した状態で扱われ、使用時に、液体が封入されているパックの一室を例えば打撃して圧力を加えることにより、液体を他室に供給し、シート材に含浸させることによりパック内において膨張させ、その後にパックから取り出して使用する。本発明では、そのために分離帯によりパック内部を少なくとも2室に分離した構造とする。シート材を小さく圧縮したものは上記パックの2室の内の一室に配置し、分離帯の破断によりそのものに含浸させて膨らませ、シート材とするために、液体を上記パックの2室の内の他室に配置する。すなわち分離帯は、2室を分離する手段であるとともに、圧力を加えると破断して2室を通じるようにする手段でもある。このようなパックに該当する典型的な容器は、扁平な袋が良い。
【0011】
分離帯は、パックの中間部分の全幅に渡って設けても良いし、また、一部分にだけ設けても良い。すなわち、分離帯は、強接着部とともに設けることができ、また弱接着部だけで設けることも可能である。また、分離帯は、例えば打撃により圧力を加えて破断可能な構造部分として形成する。従って、破断しないパック構造とは、例えば分離帯が破断する程度の圧力によっては破断しない構造という意味となる。
【0012】
弱接着の分離帯を設けるためには、パックに用いた熱可塑性プラスチック同士の接着よりも弱い接着力で接着する異種の熱可塑性プラスチックを、パックを構成している熱可塑性プラスチックフィルム間に介在させて、接着する方法がある(請求項2記載の発明)。また、同種の熱可塑性プラスチック同士を、強接着部分よりも低温で接着する方法も適用可能である。
【0013】
これに対し、単なる帯状の分離帯では、うまく破断させることが難しいという問題が明かになっているので、本発明では、所定以上の圧力を加えて2室を通じるべく上記分離帯に破断力を集中させるために、以下に説明する改良を加えてこれを解決するものとした。その手段の一つとして上記の袋状構造を有するパックに、熱可塑性プラスチックフィルムを用い、周縁を強接着することにより破断しないパック構造を具備するとともに、パック周縁の強接着部から内方へ向って延び出した破断力誘導部を具備する。破断力誘導部は、強接着部に設けても良いし弱接着部に設けても良い。さらに、パック周縁の左右両方から内方へ向って伸びだす形態を取っても良いし、また、パック周縁の左右どちらか一方から内方へ向って伸びだす形態を取っても良い。
【0014】
破断力誘導部は、パックの内部を完全にではないがほぼ2分している部分であるということができる。破断力誘導部は、分離帯という破断容易部に外力を誘導することによって破断力の分散を避け、破断力が集中するようにする手段である。これにより、2室の一方に充填されている液体を、他方に配置されているシート材を小さく圧縮したものに、確実に供給することができるようになる。
【0015】
上記の破断力誘導部は、様々な形態変化を取ることができるが、基本的には、破断力誘導部は、パック周縁の強接着部から内方へ向って延び出した構成を取るものである。そして破断力誘導部は、パック周縁の強接着部から内方へ向って延び出し、かつ、破断容易部に向って傾斜した傾斜部を有していることが望まれる(請求項3記載の発明)。つまりパックに加えられた外力を分離帯に誘導することができるものが、本発明の傾斜部に該当する。従って、本発明における傾斜部は、必ずしも直線状の傾斜であることも要しない。例えば、彎曲した部分も傾斜であり、また、階段状になった部分も、本発明における傾斜に該当する。
【0016】
破断力誘導部は、パック周縁の強接着部から内方へ向って延び出したものであるが、パック左右両方から内方へ伸び出す形態でも良いし、また、左右どちらか一方から内方へ向かって伸び出す形態でも良い。図1、図2等に示すものは、破断容易部を中心として、その左右に傾斜部が位置したほぼ対称な構造を有している(請求項4記載の発明)。しかし図9、図10等に示されているものは、破断容易部の片側にだけ傾斜部が位置している。傾斜部の先端に位置する破断容易部の幅は、任意に決めることができる。破断容易部の弱接着力が一定である場合、幅が狭い程、外力が集中されるので破断も容易になり、弱接着力が弱ければ、一定の幅以上の広さが要求されることもある。
【0017】
このように構成された本考案に係る払拭用品では、液体の含浸により膨張したシート材を加熱する加熱手段をパックに併設し、シート材を暖めて使用するという構成を併用することができる。加熱手段としては、使い捨てカイロないしは使い切りタイプの懐炉などと呼ばれる、鉄粉の酸化作用を利用したカイロを使用するのが、価格、安全性、使い易さなどから最も望ましい。また、液体の含浸により膨張したシート材を冷却する冷却手段をパックに併設し、シート材を冷やして使用することも可能である。冷却手段としては、冷却パック、氷点何々などと呼ばれる、化学物質を充填した保冷具を使用するのが、やはり価格、安全性、使い易さなどから最も望ましい。さらに、本発明に使用する液体は、各種の水ないし、消毒や清涼用の成分を含有させた水溶液、或いは非水溶液その他あらゆる液体を使用可能である。それらの液体が着色されているか色を帯びている場合には、着色から含浸状態が分かる。また、逆説的であるが、パック内の液体を使わなくてもシート材を膨張させることは可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、パック内部が破断可能な分離帯によって2分されている構造を有する払拭用品において、破断力誘導部を形成するとともに、上記破断力誘導部の先端部分に、分離帯から成る破断容易部を配置しているので、分離帯を的確、かつ、比較的容易に破断させることができ、2分されていて一方の部分にある液体を他方の部分のシート材に含浸させ、膨張させることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、パックの液体が封入されている一室を例えば打撃することにより、確実に分離帯を破断させることができるので、道具や補助具を一切必要とせずに、濡れた状態で使用可能な、払拭用品を提供することができる。かくして、本発明によれば、必要なときに濡れた状態の払拭用品を使用することができるという効果を奏する。また、本発明では、シート材が小さく圧縮された状態にあるにも拘らずパックに収納され、液体の含浸により膨張するまで取り出されることはないので、小さく圧縮されたものを誤飲する事故を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図示の実施形態を参照し、本発明の払拭用品10について、より詳細に説明する。図1は、本発明に係る払拭用品10の一例を示しており、このものは熱可塑性プラスチックを使用し、その4周縁を強接着して、長方形状を有する扁平な袋状構造のパック11を形成したものである。
【0020】
符号12は、拡げると手拭き等として使用可能な形状及び大きさとなるようにシート材を小さく圧縮成型したものを示す。シート材を小さく圧縮成型したもの12は、合成樹脂又は天然樹脂から成る繊維を材料とする織布又は不織布を使用し、これに銀、亜鉛などの抗菌性を有する極微細金属粉末を分散したもので、原シートを定寸に切断し、圧縮成型手段により、例えば直径2.5センチ、高さ2センチ程度の大きさに成型したものである。このシート材を小さく圧縮成型したもの12は、目的、用途に応じて上記以外の大きさ、形状に形成されたものを使用することができる。
【0021】
図示の例では、パック11に適した熱可塑性プラスチックとして、破断しないパック構造を備えるために、フィルムを張り合わせて2重にしたものを使用し、万が一にもパック11の液漏れを生じないように図っている。図示のパック11は、周縁13を強接着することにより形成するとともに、中間部分においてパック周縁の強接着部14から内方へ向って延び出した、上記とほぼ同様に強接着部14から成る破断力誘導部15を具備している。また、上記破断力誘導部同士の間に、強接着部14よりも弱い弱接着部16を形成することにより、打撃で破断可能な分離帯17を設けて、パック内部を最小限の2室18、19に分離している。
【0022】
図1に代表される実施形態において、パック11は、熱可塑性プラスチックであるポリエステルフィルムを使用して形成しており、そのパック11には、周縁の左右両側から内方へ向って延び出した強接着部14から成る左右対称形状の破断力誘導部15、15が形成されている。上記の破断力誘導部15、15には、液体を充填した1室18の側に、パック中央へ向って傾斜した傾斜部20、20を設けている。上記の傾斜部20は、直線状の急傾斜を構成しており、その先端部間において、比較的広く設定されている分離帯17の幅が決定されている。
【0023】
図示の例では、パック11に用いた熱可塑性プラスチック同士の接着よりも弱い接着力で接着する、異種の熱可塑性プラスチック21、21として、ナイロンフィルムを、パック11を構成している熱可塑性プラスチックフィルム間に介在させた上、任意の幅で接着し、分離帯17を形成している(図3参照)。熱可塑性プラスチックフィルム21、21を接着させることは、すなわち分離帯17を形成することであり、接着幅は接着力を左右するが、狭くもまた広くも任意の接着幅に設定することができる。なお、異種の熱可塑性プラスチック(ナイロンフィルム)21、21とパック11に用いた熱可塑性プラスチック(ポリエステルフィルム)との接着は、強接着14となる。
【0024】
そして、パック11の2室の内の一室19にシート材を小さく圧縮したもの12を配置し、分離帯17の破断により、上記のもの12に含浸させて膨らませるに足る分量の液体22を、上記パックの2室の内の他室18に配置する。この液体22には、水、又は水を主体とする水溶液、ないしは消毒液などの特別の用途を有する成分から成る液を使用することができる。その場合、液体22がパックの構成材料や、分離帯の構成材料などとの関係において安定な成分であることは当然必要なことである。
【0025】
このように構成された本発明に係る払拭用品10を使用するには、図1において、液体22が封入されている方の一室18を、例えば拳によって打撃する。この打撃力がパック11に加えられると、打撃に伴う圧力は、非圧縮性流体である液体22を、破断力誘導部15の傾斜部20に沿って分離帯17に誘導するので、その結果、集中する圧力に分離帯17が耐え切れなくなり、やがて破断を生じる。分離帯17が破断すると、液体22が一室18から破断部23を通過して他室19へ流入し、シート材を小さく圧縮したもの12を浸し、これを膨張させることになる(図2参照)。
【0026】
封入されている液体22が、シート材を小さく圧縮したもの12を完全に膨張させることで吸収され、パック11の内部に残存しない状態になったなら、封を切って取り出すことができる。そこで、パック11を切り口24から開き、濡れて膨張したもの12′を取り出し、図4に示すように拡げて、そのまま使用することができる。
【0027】
破断力誘導部15は、図5以下に示すように、様々な形態変化を取ることができる。基本的には、破断力誘導部は、パック周縁の強接着部から内方へ向って延び出した構成を取るものである。図5の例は、図1に示したのとおなじものであるが、開口幅の広い破断部23となる分離帯17を有する例1であり、これに対して図6の例2は、図1、図5と同様の破断力誘導部15、傾斜部20を有するが、全部が弱接着部16から成る開口幅の狭いほぼV字形の分離帯17を有する例である。図6の例2は狭い開口幅の破断部23′を持つ。このような場合、圧力集中も一段と強くなることがあるので、破断力誘導部15、15の先端の破断部23′の厚みを増し、破断性を抑制することができる。
【0028】
図7の例は、一定幅の破断力誘導部25、25を有し、その内方に傾斜部26、26を急傾斜に設け、かつ、その先端に幅広い破断部27を形成し得る分離帯17を有する例3である。これに対する図8の例は、図7の例と同様に設けた全部が弱接着部16から成る一定幅の破断力誘導部25、25の先端に、開口幅の狭い破断部27′を形成し、分離帯17とした例4である。これらの例では、パック中央部で一挙に圧力が高まるようになるが、破断部を設けるのは中央部とは限らない。
【0029】
図9の例は、緩い傾斜部28によって内側が規定されている破断力誘導部29、29を有しており、その先端部とパック周縁との間に、中程度の幅の破断部30を形成し得る分離帯17を有する例5である。図10の例は、緩い傾斜部28によって内側が規定されている破断力誘導部29、29を片側に有し、他方の側に設けられている強接着部31との間に、中程度の幅の破断部30を形成し得る分離帯17を有する例6である。
【0030】
図11の例は、図7の例と同様に一定幅の破断力誘導部25、25を有し、その中央部に、傾斜部32として彎曲した部分を持ち、かつ、幅広い破断部33を形成し得る分離帯17を有するものとした例7である。そして、図12の例は、傾斜部32として彎曲した部分を持つが、その位置を一定幅の破断力誘導部25の先端部とパック周縁との間にして非対称の配置とした例8である。
【0031】
これまで説明した本発明に係る払拭用品10には、既に説明したように、加熱手段や、冷却手段を併用することができる。その場合、加熱手段を揉み発熱状態にして濡れた払拭用品10に接触させることにより暖め、或いは冷却手段を打圧し冷却状態にして濡れた払拭用品10に接触させることにより冷やして使用する。加熱手段としては、使い捨てカイロないしは使い切りタイプのカイロなどと呼ばれる、鉄粉の酸化作用を利用したカイロを使用する。また、加熱手段に変えて払拭用品10を冷却する冷却手段をパック11に併設し、冷やして使用する手段の一例としては、冷却パック、氷点何々などと呼ばれる、化学物質を充填した保冷具(例えば、株式会社サンケイ商事製造に係る瞬間冷却パック「冷えっ子」)を使用することができる。なお、加熱手段と反応補助剤は例えば鉄粉と塩水、冷却手段と反応補助剤は例えば硝安と尿素の組み合わせなどである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る払拭用品は、手や顔などを拭くための払拭用品としての用途以外に、スポーツ時の汗拭きとして、老人介護の際の身体の払拭用などとして、さらには医療現場における清浄用などの用途に利用できる可能性がある。また、事故現場のように、清潔性を期待しにくい場合にも、必要十分な衛生状態を保って措置をするためにも有用である。さらに、シート材を顔面に貼り付ける形状に形成し、化粧用のパック材としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る払拭用品の実施形態の例1を示す斜視図。
【図2】同上の物の使用状態を示す斜視図。
【図3】本発明に係る払拭用品の要部断面を示すもので、Aは図1のIIIA−IIIA線断面図、Bは図2のIIIB−IIIB線断面図。
【図4】本発明に係る払拭用品の使用状態を示す説明図。
【図5】本発明におけるパックの実施形態の例1を示す正面図。
【図6】本発明におけるパックの実施形態の例2を示す正面図。
【図7】本発明におけるパックの実施形態の例3を示す正面図。
【図8】本発明におけるパックの実施形態の例4を示す正面図。
【図9】本発明におけるパックの実施形態の例5を示す正面図。
【図10】本発明におけるパックの実施形態の例6を示す正面図。
【図11】本発明におけるパックの実施形態の例7を示す正面図。
【図12】本発明におけるパックの実施形態の例8を示す正面図。
【符号の説明】
【0034】
10 払拭用品
11 パック
12 シート材を小さく圧縮整形したもの
13 周縁
14、31 強接着部
15、25、29 破断力誘導部
16 弱接着部
17 分離帯
18、19 室
20、26、28、32 傾斜部
21 熱可塑性プラスチックフィルム
22 液体
23、23′、27、27′、30、33 破断部
24 切り口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡げるとおしぼりやタオル等として使用可能な形状及び大きさとなるシート材を小さく圧縮してパックに収納した払拭用品であって、
シート材を収納するパックは、熱可塑性プラスチックフィルムを用いて、パック周縁に強接着部を形成することにより圧力では破断しないパック構造を具備するとともに、パック周縁の強接着部から内方へ向って延び出した破断力誘導部を具備し、上記破断力誘導部又は破断力誘導部とパック周縁との間に、上記強接着部よりも弱い弱接着部を形成することにより圧力で破断可能な分離帯を設けて、パック内部を少なくとも2室に分離するものとし、破断力誘導部を設けた方の1室に分離帯の破断によりシート材に含浸させて膨張させる液体を充填し、他の1室に液体の含浸により膨張し、おしぼりやタオル等として使用可能な形状及び大きさとなるものを圧縮したシート材を配置した構成を有する払拭用品。
【請求項2】
パックは、弱接着の分離帯を設けるために、パックに用いた熱可塑性プラスチック同士の接着よりも弱い接着力で接着する異種又は同種の熱可塑性プラスチックを、パックを構成している熱可塑性プラスチックフィルム間に介在させて接着した、扁平な構成を有している請求項1記載の払拭用品。
【請求項3】
破断力誘導部は、パック周縁の強接着部から内方の分離帯へ向って延び出し、かつ、破断容易部に向って傾斜した傾斜部を有している請求項1記載の払拭用品。
【請求項4】
破断力誘導部は、破断容易部を中心として、その左右に傾斜部が位置したほぼ対称な構造を有している請求項1記載の払拭用品。
【請求項1】
拡げるとおしぼりやタオル等として使用可能な形状及び大きさとなるシート材を小さく圧縮してパックに収納した払拭用品であって、
シート材を収納するパックは、熱可塑性プラスチックフィルムを用いて、パック周縁に強接着部を形成することにより圧力では破断しないパック構造を具備するとともに、パック周縁の強接着部から内方へ向って延び出した破断力誘導部を具備し、上記破断力誘導部又は破断力誘導部とパック周縁との間に、上記強接着部よりも弱い弱接着部を形成することにより圧力で破断可能な分離帯を設けて、パック内部を少なくとも2室に分離するものとし、破断力誘導部を設けた方の1室に分離帯の破断によりシート材に含浸させて膨張させる液体を充填し、他の1室に液体の含浸により膨張し、おしぼりやタオル等として使用可能な形状及び大きさとなるものを圧縮したシート材を配置した構成を有する払拭用品。
【請求項2】
パックは、弱接着の分離帯を設けるために、パックに用いた熱可塑性プラスチック同士の接着よりも弱い接着力で接着する異種又は同種の熱可塑性プラスチックを、パックを構成している熱可塑性プラスチックフィルム間に介在させて接着した、扁平な構成を有している請求項1記載の払拭用品。
【請求項3】
破断力誘導部は、パック周縁の強接着部から内方の分離帯へ向って延び出し、かつ、破断容易部に向って傾斜した傾斜部を有している請求項1記載の払拭用品。
【請求項4】
破断力誘導部は、破断容易部を中心として、その左右に傾斜部が位置したほぼ対称な構造を有している請求項1記載の払拭用品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−280078(P2008−280078A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127126(P2007−127126)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(394022277)株式会社スリーケイ (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(394022277)株式会社スリーケイ (6)
【Fターム(参考)】
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