説明

投げ釣り用補助具

【課題】 投げ釣り用の道糸のセッティングを簡単に行えること。
【解決手段】 この投げ釣り用補助具100では、道糸8をフック5に引っかける。フック5を係止側に回転させた状態で第一傾斜部54と本体上部53との根元が最も深くなり、この部分に道糸8が掛かる。この状態で、釣り竿7を投げると道糸8が引っ張られ、フック5が回転し上部端縁57が取付部6の底面63と干渉して30度程度の回転で止まり、道糸8がその張力で第一傾斜部54、第二傾斜部55を滑ってフック5の突出部56を乗り越える。これにより、道糸8が適切なタイミングでフリーになり、ルアーが遠心力で飛ぶ。この投げ釣り用補助具100では道糸8をフック5に掛けるだけで良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り竿に装着し、ルアーを投げる際に道糸を放すタイミングを自動で行う投げ釣り用補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投げ釣りでは、リールのベールと起こしてスプールに巻き付けた道糸をフリー状態にし、当該道糸を指で引っ掛ける。そして、釣り竿をオーバースローし、適切なタイミングで指を放す。これによりスプールから道糸が導出されるので、ルアーを遠投できる。指を放すタイミングは初心者には難しいため、特許文献1に記載されているような技術が提案されている。
【0003】
特許文献1に係る投げ釣り用補助具は、釣り竿に装着する本体に、バネによる弾性力で突き合わせた2つの球体を備え、この球体の突き合わせ部分に道糸を通して引っ掛けるようにした構造である。球体の突き合わせの力は、一方の球体がバネで支持され且つ他方の球体を押し付けるように螺合するネジによって調整される。この投げ釣り用補助具では、釣り竿をオーバースローしたとき道糸に生じる張力で球体の突き合わせ部分から道糸が外れ、当該道糸がフリーになることでルアーを投げるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−101864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の投げ釣り用補助具は、球体の間に道糸を通す構成であるため、道糸のセッティングに強い力が必要であるという問題点があった。この発明は係る問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の投げ釣り用補助具は、リールを取り付け得る釣り竿への取付部と、ネジを回転軸穴に貫通させてその先を前記取付部の座面に螺合することで回転可能に軸止すると共に、前記ネジの螺合により弾性部材で狭持され、道糸を係止する係止側端縁を有するフックと、を備えたことを特徴とする投げ釣り用補助具。
【0007】
ネジの螺合により弾性部材でフックを狭持することで当該フックの回転に必要な力を調整できる。そして、釣り竿の係止側端縁に道糸を引っ掛けて釣り竿を投げると、道糸が引っ張られ、その力でフックが回転し道糸がフックの係止から外れ、道糸がフリーになってリールから導出される。ユーザは、道糸をフックに引っかけるだけで良いので、道糸のセッティングを簡単にできる。
【0008】
また、この発明の投げ釣り用補助具は、リールを取り付け得る釣り竿への取付部を有し、ネジに中間部材、平座金を通し、ネジ先端を前記取付部の座面を貫通させると共に、道糸を係止する係止側端縁を有するフックを、弾性力を備えた座金を介在させて前記平座金と前記取付部との間に回転可能に挟んだことを特徴とする。
【0009】
フックは、弾性力を備えた波形座金のような座金を介在して、平座金と取付部との間に挟まれているので、ネジの螺合により中間部材及び平座金を介してフックに力が加わる。これによりフックの回転に要する力が調整される。また、中間部材及び平座金を通し、弾性力を備えた座金を介在させてフックを挟んでいるので、フックの回転によりネジが緩むことがない。また、ユーザは、道糸をフックに引っかけるだけで良いので、道糸のセッティングを簡単に行える。
【0010】
また、この発明の投げ釣り用補助具は、上記発明において、前記弾性力を備えた座金は波形座金であって前記フックの両側に配置介在されていることを特徴とする。
【0011】
即ち、波形座金をフックの両側に配置することで、ネジの締め具合でフックの狭持力を調整しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の投げ釣り用補助具を示す斜視図である。
【図2】図1に示した投げ釣り用補助具を示す正面図である。
【図3】図1に示した投げ釣り用補助具を示す左側面図である。
【図4】図1に示した投げ釣り用補助具を示す右側面図である。
【図5】図1に示した投げ釣り用補助具を示す背面図である。
【図6】図1に示した投げ釣り用補助具を示す上面図である。
【図7】図1に示した投げ釣り用補助具を示す底面図である。
【図8】図1に示した投げ釣り用補助具の組立図である。
【図9】投げ釣り用補助具を釣り竿に取り付けた状態を示す説明図である。
【図10】この投げ釣り用補助具の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、この発明の投げ釣り用補助具を示す斜視図である。図2は、図1に示した投げ釣り用補助具を示す正面図、図3は左側面図、図4は右側面図、図5は背面図、図6は上面図、図7は底面図である。また、図8は、図1に示した投げ釣り用補助具の組立図である。この投げ釣り用補助具100は、蝶ネジ1にスリーブ2、平座金3、波形座金4、フック5、波形座金4を順に通し、当該蝶ネジ1の先端を取付部6の座面62に螺合した構造である。取付部6は、釣り竿7の所定位置に取り付けられる。
【0014】
前記取付部6は、全体が樋状で左右に環状部61が形成された構造であり、環状部61は上向きに開いている。図8中右側になる環状部61は、バンドが通しやすいように端部近傍が外側に湾曲している。また、取付部6の下側には座面62が略垂直に突出しており、穴64には前記蝶ネジ1を螺合するネジが切られている。取付部6は、ステンレス製であり厚さが2mm、表面粗さ(Ra)は、6.3a〜0.2a、好ましくは0.8a〜0.2aである。
【0015】
波形座金4は、円環状のステンレス薄板に波形を形成した座金であり、つぶれることで弾性部材として作用する。波形座金4の内径は、蝶ネジ1が緩みばめで貫通するものとする。板厚は0.15mm〜0.3mm、好ましくは0.15mm〜0.2mm、自由高さは0.6mm〜2.5mm、好ましくは0.6mm〜1.2mmである。蝶ネジ1を螺合することで波形座金4がつぶれ、その力によりフック5の狭持力が設定される。波形座金4をフック5の両側に設けることで、フック5が波形座金4にその弾性力をもって挟まれるので、蝶ネジ1の締め具合による力調整が行いやすくなる。
【0016】
前記フック5は、勾玉に類似した形状である。フック5の上部中央付近には前記蝶ネジ1が貫通する回転軸穴51が設けられる。この回転軸穴51と蝶ネジ1とは緩みばめとなる。フック5の係止側端縁52は、道糸8を係止する部分であって、図2に示すように(上下関係を図2に基づき説明する)、回転軸穴51が設けられた上部53から斜めに形成された第一傾斜部54と、下側で更に傾斜した第二傾斜部55と、側方に略水平に突出した突出部56とから全体でフック形状を構成する。フック5の上側端縁57は直線状であり、取付部6の底面63と近接しており、これによりフック5の回転は上側端縁57が前記底面63と干渉することで阻止されるが、僅かな隙間が前記底面63との間に設けられているため、フック5は僅かに回転できる。この実施の形態では、フック5は30度回転可能となる。
【0017】
平座金3は、1mm厚のステンレス製であり、逆台形となる。長辺端縁31が上側になるよう配置される。平座金3の両側平面の表面粗さ(Ra)は、0.2a〜6.3a、好ましくは0.2a〜0.8aである。台形の長辺端縁31は取付部6の底面63と近接しており、これにより平座金3の回転は長辺端縁31が前記底面63と干渉することで阻止されるが、僅かな隙間が前記底面63との間に設けられているため、平座金3は僅かに回転する。
【0018】
前記スリーブ2は、平座金3との間に配置する中間部材であり、ステンレス製の円筒体である。その内径は前記蝶ネジ1に対して緩みばめとなる。スリーブ2の両端面21は、一端が前記平座金3に所定圧で当接し、他端が蝶ネジ1の頭の面11と当接する。スリーブ2の両端面21の表面粗さ(Ra)は、0.2a〜6.3a、好ましくは0.2a〜0.8aである。
【0019】
図9は、投げ釣り用補助具を釣り竿に取り付けた状態を示す説明図である。取付部6の環状部61により釣り竿7を挟むようにし、左右の環状部61同士をバンド9で結び付ける。投げ釣り用補助具100の取り付け位置は、リール50のスプール51の横から若干釣り竿7の先端側までとする。要するに、フック5が通常の指で道糸8を引っ掛ける場合に指と同じ位置になれば良い。前記バンド9は、面テープを備えた布やナイロンのテープとしても良いし、ゴムバンドや針金で固定しても良い。
【0020】
図10は、この投げ釣り用補助具の動作を示す説明図である。この投げ釣り用補助具100では、まず、リール50のベール52を起こしてリール50をフリーの状態にする。そして、スプール51に巻いている道糸8をフック5に引っ掛ける。これにより、投げ釣りの際に指で道糸を引っ掛けた状態と略同じ状態になる。また、図10(a)に示すように、フック5を係止側に回転させた状態で第一傾斜部54と上部53との根元が最も深くなり、この部分に道糸8が掛かる。
【0021】
この状態で、釣り竿7を投げて道糸8の先端に取り付けたルアー(図示省略)に遠心力をつける。すると道糸8が引っ張られ、図10(b)に示すように、フック5が回転し上部端縁57が取付部6の底面63と干渉して30度程度の回転で止まり、道糸8がその張力で第一傾斜部54、第二傾斜部55を滑ってフック5の突出部56を乗り越える(図10(b)では、道糸8の動きを連続的に図示する)。これにより、道糸8が適切なタイミングでフリーになり、リール50から道糸8が導出されてルアーが遠心力で飛ぶ。従来は指で道糸8を引っ掛け適切なタイミングで指を放す必要があったが、この投げ釣り用補助具100では道糸8をフック5に掛けるだけで良く、適切なタイミングで道糸8がフリーになる。
【0022】
前記フック5の回転に必要な力は、ユーザが蝶ネジ1の締め具合により調整する。蝶ネジ1をねじ込むと波形座金4の弾性力でフック5が狭持される。蝶ネジ1を強く締めると当該狭持力が大きくなってフック5の回転に必要な力は大きくなる。蝶ネジ1を緩めると当該狭持力が小さくなってフック5の回転に必要な力は小さくなる。従来の場合、球体の突き合わせ力により道糸が球体の突き合わせ力に打ち勝ってフリーになるタイミングを調整する必要があったので、突き合わせ力の微妙な加減が必要であってその調整自体が難しかったが、この投げ釣り用補助具100は、フック5の回転に必要な力を調整するものであるため、タイミングの調整が簡単に行える。
【0023】
また、フック5が回転する際、平座金3はフック5と共に少し回転するが、取付部6の底面63と干渉し停止する。フック5は平座金3及び波形座金4の回転及び滑りにより回転する。フック5は波形座金4で挟まれ且つ僅かに回転可能な状態にした平座金3及びスリーブ2により押さえて狭持されているため、フック5が回転しても、蝶ネジ1がゆるむことがない。即ち、一度設定したフック5の狭持力は、使用中も維持される。
【0024】
以上、この発明の投げ釣り用補助具100によれば、道糸8をフック5に引っ掛ける動作だけで済むので道糸8のセッティングが簡単にできる。このため、投げ釣りの初心者であっても、ルアーの遠投を簡単に行うことができる。また、指を使わないので、指に負担がかからない。
【0025】
なお、上記中間部材であるスリーブ2は、蝶ネジ1の長さによっては円形の平座金であっても良い。取付部6の釣り竿7への取り付け形態は、上記構造に限定されない。また、投げ釣り用補助具100は釣り竿7にネジ等で固定された状態でも良い。また、前記係止側端縁52は、突出部56までを滑らかな曲線で形成しても良い。また、蝶ネジ1にフック5の回転に要する力を調整しやすくするための目盛りを設けても良い。
【符号の説明】
【0026】
100 投げ釣り用補助具
1 蝶ネジ
2 スリーブ
3 平座金
4 波形座金
5 フック
6 取付部
7 釣り竿
8 道糸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リールを取り付け得る釣り竿への取付部と、
ネジを回転軸穴に貫通させてその先を前記取付部の座面に螺合することで回転可能に軸止すると共に、前記ネジの螺合により弾性部材で狭持され、道糸を係止する係止側端縁を有するフックと、
を備えたことを特徴とする投げ釣り用補助具。
【請求項2】
リールを取り付け得る釣り竿への取付部を有し、
ネジに中間部材、平座金を通し、ネジ先端を前記取付部の座面を貫通させると共に、
道糸を係止する係止側端縁を有するフックを、弾性力を備えた座金を介在させて前記平座金と前記取付部との間に回転可能に挟んだことを特徴とする投げ釣り用補助具。
【請求項3】
前記弾性力を備えた座金は波形座金であって前記フックの両側に配置介在されていることを特徴とする請求項2に記載の投げ釣り用補助具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−59301(P2013−59301A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201260(P2011−201260)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(507088462)
【Fターム(参考)】