説明

投影スクリーン

【課題】劇場等に設置されている既存の投影スクリーンをそのまま利用して盗撮防止機能を有する投影スクリーンを実現する。
【解決手段】可視光の長波長端よりも長波長の赤外光を、盗撮を防止するための妨害光として利用する。スクリーン本体13上に発光装置15を直接装着する。発光装置は、基板(20)と、基板上に配置した複数の発光素子(21a〜21y)とを有する。発光素子の光放出面と対向するように、光散乱プレート(22)を配置する。光散乱プレートは、透明プレート(24)と散乱性透過膜(25)とを有する。発光素子から赤外域の妨害光が放出され、当該妨害光は散乱性透過膜を介して観客空間に入射する。この結果、観客空間に位置するビデオカメラには、画像光と共に妨害光も入射するので、ビデオカメラにより、視聴に耐えないほど劣化した映像コンテンツが撮像される。この結果、盗撮された映像コンテンツの二次流通が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン面上に投影される映像コンテンツが不正にコピーされるのを防止する盗撮防止機能を有する投影スクリーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタル技術の発達に伴い、繰り返し記録再生しても画質が劣化しないデジタル記録再生装置が普及している。また、様々な映像コンテンツが記録されたDVDやCD等の媒体が市場で流通し販売され、さらには、各種映像コンテンツがネットワークを通じて配信されている。
【0003】
デジタル記録再生では、記録再生を繰り返してもデータの劣化が発生しないため、オリジナルデータと同様な品質が保たれる。このようなデジタル記録再生技術の普及は、違法なコピーの氾濫を招く事になり、著作権の保護の観点より、大きな問題となっている。特に、映画館や劇場において新作の映像コンテンツが映写される場合、スクリーン上に投影される映像コンテンツがビデオカメラにより盗撮され、無断でコピーされて二次流通されることが多々存在する。このような事態は、新作の映像コンテンツの著作権が侵害され、著作権の保護の観点より大きな問題となっている。
【0004】
映画館や劇場で映写される映像コンテンツを盗撮から防止する技術として、画像表示態様を時間的に又は空間的に切り換える方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この盗撮防止技術では、映像コンテンツの画像表示態様をRGB表示とRGBY表示との間で時間的に又は空間的に切り換えている。このような表示態様の切り換えを行うことにより、スクリーン上に投影された映像コンテンツをビデオカメラで撮像した場合、フリッカや色むらを発生した画像が撮像され、盗撮を防止する上で有益である。
【0005】
電子透かしを利用してスクリーン上に投影される映像コンテンツの盗撮防止を図った技術も既知である(例えば、特許文献2参照)。この既知の技術では、映像コンテンツを投影する画像表示装置とは別に電子透かし情報投影装置を設け、スクリーン上に映像コンテンツに重ねて電子透かし情報が投影されている。
【0006】
違法コピーに対する盗撮防止が図られた投影スクリーンも既知である(例えば、特許文献3参照)。この既知の投影スクリーンでは、観客が感知できないほど微細な縞模様のパターンが形成されたスクリーンが用いられている。このようなスクリーン上に表示されている映像コンテンツをビデオカメラで撮像すると、コピーされたビデオ画像にはエイリアシング効果によってモアレ状の妨害模様が形成され、モアレ模様による画像劣化により盗撮が防止されている。
【特許文献1】特開2003−302960号公報
【特許文献2】特開2005−304508号公報
【特許文献3】特開2004−333562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した表示態様を切り換える方法は、盗撮画像の品質を劣化させることができ、盗撮防止の点において有益である。しかしながら、画像表示装置において、RGB画像表示とRGBY画像表示との間で切り換える必要があり、画像表示装置の構造が複雑化する欠点がある。しかも、入力したRGB信号からRGBY信号を生成しなければならず、製造コストが高価になるだけでなく、信号処理回路も複雑化する欠点がある。さらに、既存の画像表示装置をそのまま使用することができず、映画館や劇場では、新たな画像表示装置を購入しなければならない不具合も指摘されている。
【0008】
上述した特許文献2に記載の電子透かしを利用した表示装置は、可視波長域の長波長端よりも長い赤外光を用いてスクリーン上に電子透かし情報を投影しているため、スクリーン面上に表示される映像コンテンツに悪影響を与えることなく、映像コンテンツに電子透かし情報を重畳することができる。しかしながら、既存のコンテンツ投影手段に加えて、電子透かし情報出力装置及び電子透かし情報投影手段が必要であり、画像表示装置が複雑化する欠点がある。
【0009】
特許文献3に記載の投影スクリーンでは、微細な縞模様が形成された表示スクリーンが必要であり、既存の劇場や映画館に設置されているスクリーンをそのまま利用できない欠点がある。しかも、NTSCの走査線数に対応した微細なパターンをスクリーン面に形成する必要があり、スクリーンの製造自体極めて困難である。
【0010】
本発明の目的は、劇場や映画館に設置されている既存のスクリーンに大幅な加工や変更を加えることなく、違法コピーに対する盗撮防止機能が発揮される投影スクリーンを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による投影スクリーンは、プロジェクタから投影される映像コンテンツを表示する投影スクリーンであって、
白色の散乱性反射膜が形成され、映像コンテンツが表示されるスクリーン面を有するスクリーン本体と、スクリーン面上に直接装着され、盗撮防止用の赤外域の妨害光を放出する1個又は複数個の発光装置とを有し、
前記発光装置は、平面状に配置され、可視光の長波長端よりも長波長側の赤外光を放出する複数の発光素子有する発光素子アレイと、前記スクリーン面上に装着され、発光素子アレイを支持する基板と、発光素子アレイの光放出面と対向するように配置され、赤外光に対して透過性を有すると共に入射した赤外光を散乱光として出射させる光散乱プレートとを有し、
前記光散乱プレートは、光学的に透明な透明プレートと、透明プレートの表面に形成され、プロジェクタから出射した画像光に対して散乱性反射膜として機能すると共に前記発光素子から出射した赤外光に対して散乱性光透過膜として機能する白色膜とを有し、
前記発光素子アレイから出射した赤外光は、前記光散乱プレートを介して観客空間に向けて散乱光として出射することを特徴とする。
【0012】
一般的なビデオカメラは、色分解されたRGBの各カラー光を光電変換する3個の撮像素子を有している。これら撮像素子のうち赤色光を撮像する撮像素子は、650nm付近の波長域にピーク感度を有し、可視域だけでなく可視光の長波長端よりも長波長側にも感度を有している。従って、可視光の長波長側の端部波長よりも長波長側の赤外光は、視聴者には視認されないが、ビデオカメラでは感受される。そこで、本発明では、上記波長域の赤外光を盗撮防止用の妨害光として利用する。本発明では、赤外域の妨害光を投影スクリーン自身から観客空間に向けて放出するので、映像コンテンツがビデオカメラにより盗撮されても、盗撮中のビデオカメラには、スクリーン上に投影されている映像コンテンツの画像光と共に赤外光の妨害光も入射する。ビデオカメラの赤色光を撮像する撮像素子は、妨害光である赤外光に感度を有するため、スクリーン上に妨害光が投影されると、赤の輝度信号レベルが極端に増大し、撮像される映像コンテンツは赤色が極端に強い画像となり、強い色ムラを発生する。さらに、妨害光が周期的に又は不定期で映像コンテンツに重ね合わされると、色ムラに加えて強いフリッカも発生し、視聴者に対して不快なストレスを与えることになる。従って、ビデオカメラにより盗撮された映像コンテンツは、視聴者にとって視聴に耐えない不快な画像に劣化する。この結果、たとえ盗撮されても、盗撮された映像コンテンツは、市場での販売価値が喪失し、二次流通が有効に防止される。
尚、本明細書において、「赤外光」は、可視光の長波長端よりも長波長側の近赤外及び遠赤外の赤外光も含むものである。
【0013】
また、本発明では、妨害光を放出する発光装置の前面には、スクリーン面に塗布されている白色塗料膜と同一材料の白色塗料膜が形成され、プロジェクタからスクリーン面を見た場合、スクリーン面の前面にわたって同一の光学特性の表示スクリーンが形成され、表示される映像コンテンツが不鮮明になる不具合は発生しない。この白色塗料膜は、画像光に対して散乱性反射膜として機能すると共に赤外光に対して散乱性透過膜として機能する。従って、映像コンテンツを鮮明に表示できると共に、スクリーン自身から赤外域の妨害光を観客が着席する空間に向けて放出することができる。
【0014】
光源装置としては、赤外光を放出する種々の光源を用いることができる。例えば、LEDやレーザダイオードを用いることもできる。また、各発光素子は、制御手段により個別に又は間欠的に点灯制御することも可能である。この場合、スクリーン上には、時間軸上で個別に点灯する光スポットが形成されるため、ビデオカメラにより盗撮された映像コンテンツには、赤色の強いスポットが時間的及び空間的にランダムに形成され、映像コンテンツは視聴に耐えない不快な画像に劣化する。
【0015】
本発明による別の投影スクリーンは、プロジェクタから投影される映像コンテンツを表示する投影スクリーンであって、
スクリーン本体と、スクリーン本体上に装着され、盗撮防止用の赤外域の妨害光を放出する1個又は複数個の発光装置と、発光装置と対向するように配置され、プロジェクタから投影される映像コンテンツを表示するスクリーンプレートとを有し、
前記発光装置は、平面状に配置され、可視光の長波長端よりも長波長側の赤外光を放出する複数の発光素子有する発光素子アレイと、前記スクリーン本体上に直接装着され、発光素子アレイを支持する基板とを有し、
前記スクリーンプレートは、光学的に透明な透明プレートと、透明プレートの表面に形成され、プロジェクタから出射した画像光に対して散乱性反射膜として機能すると共に前記発光装置から出射した赤外光に対して散乱性光透過膜として機能する白色膜とを有し、
前記発光装置から出射した妨害光は、前記スクリーンプレートを透過し、観客空間に向けて散乱光として出射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明による投影スクリーンでは、映像コンテンツを表示するスクリーン面自身が、観客には感受されないがビデオカメラにより検知される妨害光を観客がいる空間に向けて放出する。よって、たとえビデオカメラにより映像コンテンツが盗撮されても、ビデオカメラには視聴に耐えないほど品質劣化した映像コンテンツしか撮像されない。この結果、視聴中の観客に影響を与えることなく、違法コピーを目的とする盗撮を有効に防止することができる。
さらに、本発明の盗撮防止装置は、既存の投影スクリーンに妨害光を放出する発光装置を取り付けるだけで盗撮が防止されるので、劇場や映画館に設置されている既存の投影スクリーンをそのまま用いることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
初めに、本発明のベースとなる実験内容及びその解析結果について説明する。図1は、本発明者による実験結果を説明するための図である。赤外光に対して吸収特性を有しない光学的に透明な透明プレート1を用意し、透明プレート1の表面に投影スクリーン用に用いられている市販の白色塗料膜2を形成して実験用のスクリーン3を作成した。白色塗料は、実際に劇場や映画館のスクリーンに用いられている白色塗料であり、商品名「スクリーン用シルバー」及び「スクリーン用ホワイト」の2種類の白色塗料を用いた。図1(A)に示すように、スクリーン3に向けて、市販のプロジェクタから画像光を投射して、スクリーン3上の表示される映像を観察した。スクリーン3上には鮮明な画像が表示されていることが確認された。また、スクリーン3に対する観察角度を変えて種々の角度から観察しても、鮮明な画像が観察された。スクリーン3をビデオカメラにより撮像したところ、同様な結果であった。この実験結果によれば、劇場等のスクリーンに用いられている白色塗料膜は、散乱性の反射膜として機能する。
【0018】
次に、図1(B)に示すように、同一のスクリーン3の背後に、発光素子として680nmより長波長の赤外光を放出する発光素子4(発光ダイオード)が装着されている基板5を配置し、スクリーン3に向けて赤外光を投射し、反対側からスクリーン3の状態を観察した。初めに、観察者の眼には格別な像は視認されず、白色スクリーンが観察されただけであった。一方、市販のビデオカメラ6を用いてスクリーン面を撮像したところ、スクリーン上に赤色の高輝度のスポットが明瞭に撮像された。また、ビデオカメラによる撮影角度を変えて撮像したところ、同様な赤色のスポットが撮像された。この実験結果によれば、白色塗料膜2は、赤外光に対して透過性を有している。また、種々の角度から撮像しても、同様な赤色のスポットが撮像されたことより、白色塗料膜2は、赤外光に対して散乱性を有し、入射した赤外光を散乱光として出射させる機能を有している。
【0019】
上述した実験結果によれば、透明プレート上に形成した白色塗料膜は、画像光に対して散乱性反射膜として機能し、赤外光に対しては散乱性透過膜として機能することになる。また、透明プレートと、その表面上に形成された白色塗料膜とで構成される白色プレートは、映像コンテンツを表示するスクリーンとしても機能することができる。
【0020】
図1(C)は、上述した実験結果に基づく本発明の基本概念を示す図である。光学的に透明な透明プレート1の表面上に白色塗料膜2を形成したスクリーン3又はスクリーン面を設ける。スクリーン3の背後に可視域よりも長波長の赤外光を放出する発光素子4が装着されている基板5を配置する。スクリーン3に向けて映像コンテンツを投射すると共にスクリーン3の背後から赤外光を投射する。この状態でスクリーン3を観察すると、人間の眼には、赤外光による影響を受けない鮮明な映像コンテンツが視認される。一方、ビデオカメラ6には、映像コンテンツ上に赤色の高輝度のスポットが重畳された画像が撮像される。ビデオカメラにより撮像される映像は、局所的に赤色のスポットが形成されており、品質が著しく劣化した画像となる。この結果、視聴中の観客には影響を与えることなく、盗撮が防止された投影スクリーンが実現される。
【0021】
図2は本発明による投影スクリーンを説明するための図であり、図1(A)は投影スクリーンと観客空間を示す図、同図(B)は投影スクリーンの一例を示す線図である。映像コンテンツ出力装置11から出力された映像コンテンツ情報は、例えばRGBの三原色プロジェクタで構成される画像表示装置(映写機)12に供給される。画像表示装置12からRGBの各映像光が出射し、投影スクリーン(スクリーン本体)13に向けて投影され、スクリーン本体のスクリーン面13a上にカラー画像の映像コンテンツが表示される。スクリーン面13aには、散乱性反射膜として機能する白色塗膜14が形成されている。従って、スクリーン面13aに入射したRGBの映像光は、スクリーン面の散乱性反射膜(白色塗料膜)14で反射し、散乱性の画像光として観客空間に入射する。よって、観客がビデオカメラ6を用いてスクリーン面13a上に投影される映像コンテンツを撮像すれば、スクリーン上に投影される映像コンテンツは盗撮されることになる。
【0022】
ビデオカメラによる盗撮を防止するため、本発明では、スクリーン自身が妨害光を放射し、視聴中の観客には全く影響を与えず、ビデオカメラには視聴に耐えないほど劣化した映像コンテンツが撮像されるようにする。すなわち、スクリーン上に投影される映像コンテンツがビデオカメラにより撮像されても、スクリーンから発生する妨害光により視聴に耐えない程度に品質劣化した映像コンテンツしか撮像できなければ、盗撮された映像コンテンツの経済的な価値が消滅し、盗撮が有効に防止される。本発明による投影スクリーンは、映像コンテンツを劣化させるための妨害光を発生する発光装置15a〜15cを有し、発光装置から出射した妨害光は観客空間に向けて散乱光として出射する。従って、盗撮中のビデオカメラ6には映像コンテンツの画像光と共にスクリーンから放出された妨害光も入射するため、ビデオカメラ6は視聴に耐えないほど劣化した映像コンテンツを撮像することになる。尚、スクリーン13は、劇場や映画館に設置されている既存の投影スクリーンをそのまま用いることができる。また、本例では、3台の発光装置を用いたが、1台の発光装置を用いるだけでも有効に盗撮を防止することができ、或いは多数の発光装置を用いることもできる。
【0023】
図3は、人間の眼の分光感度特性及び一般的なビデオカメラに用いられている撮像素子の分光感度特性を示すグラフである。図3において、実線はRGBの撮像素子の分光感度特性を示し、一点鎖線は人間の眼の分光感度特性を示す。人間の眼は、380nm付近に可視域の短波長側の端部が位置し、680nm付近に可視域の長波長側の端部が位置する。一方、RGBの3個の撮像素子を用いるビデオカメラの場合、一般的に、Bの撮像素子は450nm付近に最高感度を有し、Gの撮像素子は550nm付近に最高感度を有している。一方、Rの撮像素子は650nm付近に最高感度を有し、800nmを超える波長域まで感度を有している。従って、波長が680nmを超える赤外光、近赤外光及び遠赤外光は、人間の眼には感受されないが、ビデオカメラ6により検出されることになる。そこで、本発明では、可視光の長波長端よりも長波長側の赤外光を妨害光として利用する。妨害光を発生する発光装置として、多数の発光素子が平面アレイ状に配置され、面状の妨害光を放出する面発光装置を用いる。用いられる発光素子は、例えば可視光の長波長端よりも長波長側の波長光を放射するLEDやレーザダイオードを用いることができる。
【0024】
映像コンテンツが投影されているスクリーン自身が、680nmを超える長波長の赤外光を放出しても、視聴者は当該赤外光を感受しないため正常な映像コンテンツが視認され、視聴者に不具合を与えることはない。一方、盗撮用のビデオカメラの撮像素子に注目するに、赤外域の妨害光が入射してもG及びBの波長光を撮像する撮像素子に入射する光量は変化しないため、映像コンテンツに対応した輝度信号が出力される。一方、Rの波長光を光電変換する撮像素子には、映像コンテンツの画像光に加えて赤外域の多量の妨害光も入射する。このため、Rの波長光を光電変換する撮像素子から極端に高いレベルの輝度信号が出力されることになる。この結果、盗撮された映像コンテンツは、赤色成分の強い画像に変化し、カラーバランスが著しく崩れ、著しく劣化した映像となる。さらに、妨害光の強度が時間的に変化すると、盗撮された映像コンテンツは、著しいフリッカが発生し、視聴に耐えない劣化画像に変化する。この結果、たとえ盗撮されても、盗撮された映像は視聴に耐えないほど劣化しているため、二次流通するのが防止される。
【0025】
図4は、本発明による発光装置の一例を示す図であり、図3(A)は光散乱プレートを除いて示す平面図、及び同図(B)は線図的断面図である。本例では、既存のスクリーン本体13のスクリーン面13a上に発光装置15を直接装着する。スクリーン面13aには、散乱性反射膜(白色塗料膜)14が形成されており、白色塗料膜14上に発光装置を直接装着する。発光素子装置は、基板20を有し、基板20上に複数の発光素子を配置する。本例では、発光素子は、5×5個の発光素子21a〜21yをアレイ状に配列する。尚、図面上、発光素子21a〜21eについてだけ符号を付す。発光素子は、例えば可視域の長波長端である680nmよりも長波長の赤外光を放出するLEDを用いる。発光素子のアレイと対向するように、光散乱プレート22を設ける。光散乱プレート12は、スペーサ23a及び23bを介してスクリーン面13aに取り付ける。
【0026】
光散乱プレート22は、赤外光に対して透過性を有する光学的に透明な透明プレート24と、透明プレート24上に形成した散乱性透過膜25とを有する。散乱性透過膜25は、スクリーン面13a上に形成されている白色塗料膜14と同一の材料の白色塗料膜で構成する。従って、光散乱プレート22は、プロジェクタから出射した画像光に対して散乱性反射膜として機能し、発光素子21から出射した赤外光に対しては散乱性光透過膜として機能する。この結果、発光装置の観客空間と対向する前面は、プロジェクタから出射した画像光に対してスクリーン面13aと同一の光学特性を有するので、プロジェクタ側から投影スクリーンを見た場合、投影スクリーン全体が同一の光学特性を有するスクリーン面となる。よって、スクリーン面全体にわたって鮮明な映像コンテンツを表示することが可能である。
【0027】
さらに、本発明による発光装置は、複数の発光素子を基板上に平面状に配置しているので、妨害光を放出する光放出面が面状に形成され、発光エリアが比較的広い面発光装置として実現される。この結果、スクリーン面の比較的広いエリアから妨害光が放出され、良好な画像劣化作用が発揮される。また、基板上に比較的小さな出力の発光素子を多数個配置しているので、発光装置のスクリーン面からの突出量を10mm程度に抑えることが可能である。一方、プロジェクタ(映写機)からスクリーン面までの投影距離は10数mである。従って、スクリーン面上の発光装置が配置されている部位は、スクリーン全体から見た場合、プロジェクタの投影光学系の焦点深度の範囲内であり、投影される映像が局所的に不鮮明になる不具合は発生しない。さらに、発光素子を駆動するための駆動信号を供給するためのコード類は、フラットケーブルを用いて別の位置に配置した駆動電源に接続し、フラットケーブルの表面に白色塗料を塗布すれば、なんら問題が生ずることはない。フラットケーブルの厚さは、高々数mm程度であるから、スクリーン面にそって配置しても、白色塗料が塗布されていれば、表示画像になんら影響を与えることはない。
【0028】
図5は、本発明による発光装置の変形例を示す図である。基板上20に複数の発光素子21を配置し、各発光素子の光放出面に白色塗料膜25を直接形成する。発光素子に直接白色塗料膜を形成しても、発光素子から放出される赤外光は、白色塗料膜を通過することにより散乱し、発光素子から赤外光が散乱光として出射する。
【0029】
図6は、本発明による投影スクリーンの変形例を示す図である。本例では、既存の投影スクリーンをスクリーン本体30として利用する。スクリーン本体30のスクリーン面上に、発光装置31を直接装着する。発光装置31は、基板と、基板上に平面状に配置された発光素子アレイとを有する。発光装置31と対向するように、既存の投影スクリーンのスクリーン面とほぼ同一の表示面積を有する表示スクリーン32を配置する。表示スクリーン32は、透明プレート33と、透明プレート33上に形成した白色塗料膜34とを有する。表示スクリーンは、映像コンテンツが表示されるスクリーン面として機能する。画像表示装置2の投影光学系は、表示スクリーンの白色塗料膜上に焦点を結ぶように設定する。このように構成すれば、スクリーン面のほぼ全面にわって既存のスクリーン面と同一の光学特性を有する投影スクリーンが実現される。すなわち、図2及び図3に示す投影スクリーンの場合、発光装置が部分的に突出した形態となるが、本例の投影スクリーンの場合スクリーンの全面にわたってフラットな形態となり、映像コンテンツの画像性能が向上する。また、表示スクリーンの背後から赤外域の妨害光が観客空間に向けて放出されるので、盗撮防止機能も果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明者による実験及び解析結果を説明するための図である。
【図2】本発明による投影スクリーンの一例を示す線図である。
【図3】視聴者の眼の分光感度特性及びビデオカメラの分光感度特性を示すグラフである。
【図4】本発明による発光装置の一例を示す図である。
【図5】本発明による投影スクリーンの変形例を図である。
【図6】本発明による投影スクリーンの別の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 透明プレート1
2 白色塗料膜2
3 スクリーン
4 発光素子
5 基板
6 ビデオカメラ
11 映像コンテンツ出力装置
12 画像表示装置
13 スクリーン
14 白色塗料膜
15a〜15c 発光装置
20 基板
21 発光素子
22 光散乱プレート
23a,23b スペーサ
24 透明プレート
25 散乱性透過膜
30 スクリーン本体
31 発光装置
32 表示スクリーン
33 透明プレート
34 白色塗料膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクタから投影される映像コンテンツを表示する投影スクリーンであって、
白色の散乱性反射膜が形成され、映像コンテンツが表示されるスクリーン面を有するスクリーン本体と、スクリーン面上に直接装着され、盗撮防止用の赤外域の妨害光を放出する1個又は複数個の発光装置とを有し、
前記発光装置は、平面状に配置され、可視光の長波長端よりも長波長側の赤外光を放出する複数の発光素子有する発光素子アレイと、前記スクリーン面上に装着され、発光素子アレイを支持する基板と、発光素子アレイの光放出面と対向するように配置され、赤外光に対して透過性を有すると共に入射した赤外光を散乱光として出射させる光散乱プレートとを有し、
前記光散乱プレートは、光学的に透明な透明プレートと、透明プレートの表面に形成され、プロジェクタから出射した画像光に対して散乱性反射膜として機能すると共に前記発光素子から出射した赤外光に対して散乱性光透過膜として機能する白色膜とを有し、
前記発光素子アレイから出射した赤外光は、前記光散乱プレートを介して観客空間に向けて散乱光として出射することを特徴とする投影スクリーン。
【請求項2】
プロジェクタから投影される映像コンテンツを表示する投影スクリーンであって、
白色の散乱性反射膜が形成され、映像コンテンツを表示するスクリーン面を有するスクリーン本体と、スクリーン面上に装着され、盗撮防止用の赤外域の妨害光を放出する発光装置とを有し、
前記発光装置は、平面状に配置され、可視光の長波長端よりも長波長側の赤外光を放出する複数の発光素子を有する発光素子アレイと、前記スクリーン上に装着され、発光素子アレイを支持する基板とを有し、
各発光素子の光放出面には、プロジェクタから出射した画像光に対して散乱性反射膜として機能すると共に前記発光素子から出射した赤外光に対して散乱性透過膜として機能する白色膜が形成され、
前記発光装置から出射した赤外光は、前記散乱性光透過膜を介して観客空間に向けて散乱光として出射することを特徴とする投影スクリーン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の投影スクリーンにおいて、前記光散乱プレートの白色膜又は前記発光素子の光放出面上に形成した白色膜は、前記スクリーン面上に形成されている白色の散乱性反射膜と同一の材料で構成されていることを特徴とする投影スクリーン。
【請求項4】
プロジェクタから投影される映像コンテンツを表示する投影スクリーンであって、
スクリーン本体と、スクリーン本体上に装着され、盗撮防止用の赤外域の妨害光を放出する1個又は複数個の発光装置と、発光装置と対向するように配置され、プロジェクタから投影される映像コンテンツを表示するスクリーンプレートとを有し、
前記発光装置は、平面状に配置され、可視光の長波長端よりも長波長側の赤外光を放出する複数の発光素子を有する発光素子アレイと、前記スクリーン本体上に直接装着され、発光素子アレイを支持する基板とを有し、
前記スクリーンプレートは、光学的に透明な透明プレートと、透明プレートの表面に形成され、プロジェクタから出射した画像光に対して散乱性反射膜として機能すると共に前記発光装置から出射した赤外光に対して散乱性光透過膜として機能する白色膜とを有し、
前記発光装置から出射した妨害光は、前記スクリーンプレートを透過し、観客空間に向けて散乱光として出射することを特徴とする投影スクリーン。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の投影スクリーンにおいて、前記スクリーン本体として、劇場や映画館に設置されている既存の投影スクリーンが用いられることを特徴とする投影スクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−128037(P2010−128037A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300441(P2008−300441)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】