説明

抗体付き手袋

【課題】接触感染経路を通じてインフルエンザウイルス等の病原体への感染や、感染の拡大を効率的に防ぐための抗体付き手袋を提供する。
【解決手段】抗体が担持された担体からなることを特徴とする抗体付き手袋である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体が担持された手袋に関し、更に詳しくは、病気、特にインフルエンザの感染及び感染の拡大を予防するための抗体付き手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型インフルエンザなど感染症の危険性に対する認識が広がりつつあり、その感染予防の重要性も高まってきている。例えば、インフルエンザの感染経路は主に飛沫感染とされているが、予防措置として、ウイルスを含む飛沫の吸引を予防するためのマスクや、喉に付着したウイルスを洗い流すためのうがいをする等の自衛措置を採る人も増えてきている。
【0003】
一方、インフルエンザの感染経路としては、飛沫などを通じてウイルスがドアノブ、手すり、つり革等に付着し、これらに手が触れることによりウイルスが手指に移り、その手で他の物体を触ることにより汚染が拡大し、無意識に目や口などを触ることにより体内にウイルスが侵入する、所謂接触感染も無視できない。この接触感染経路を遮断するために、手洗いや手袋の着用が推奨されている。しかし手洗いの場合、ウイルスが付着したものに手を触れてから、その手で他の物体や口等を触るまでの間に手洗いを行わないと意味が無く、マスクやうがいと比較すると、その効果は限定的である。手袋の場合も同様であり、例え手袋により手指へのウイルスの付着を防いだとしても、手袋をしたまま他の物体や口等を触れば、結局、接触感染経路を遮断することはできない。
また、医療機関や検疫機関等の専門機関では、患者が入れ替わるたびに手袋を取り替える等、可能な限り患者が保有する病原体を他人に感染させない配慮がなされているが、手袋を取り替える際に素手が白衣等に触れて素手に病原体等が付着し、素手で触ったものを通じて感染が拡大する恐れがある。
【0004】
一方、抗体を用いてウイルスを捕捉することにより感染経路を遮断する試み(特許文献1)も提案されている。しかしながら、これはマスクやエアーコンディショナー用のフィルターなどに適用されているだけであり、空気中に浮遊するウイルスにしか効果はなく、飛沫感染経路や空気感染経路を遮断することはできるものの、接触感染経路を遮断することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−23985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来技術の問題点を解消し、接触感染経路を通じた感染や、感染の拡大を効率的に防ぐことができる抗体付き手袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の請求項1は、抗体が担持された担体からなることを特徴とする抗体付き手袋を内容とする。
【0008】
本発明の請求項2は、抗体と結合する抗原が病原体であることを特徴とする請求項1に記載の抗体付き手袋を内容とする。
【0009】
本発明の請求項3は、病原体がウイルスであることを特徴とする請求項2に記載の抗体付き手袋を内容とする。
【0010】
本発明の請求項4は、ウイルスがインフルエンザウイルスであることを特徴とする請求項3に記載の抗体付き手袋を内容とする。
【0011】
本発明の請求項5は、担体が繊維であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の抗体付き手袋を内容とする。
【0012】
本発明の請求項6は、担体が樹脂又はゴムであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の抗体付き手袋を内容とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の抗体付き手袋は、抗体が担持された担体からなるので、この抗体に対する抗原が一度抗体と結合し捕捉されると、抗原が不活性化され、その手袋で他の物体や口等に触れても実質的に感染することはなく、従って、感染は拡大しない。またこの抗原が病原体であると、接触感染経路を遮断することができ、感染及び感染の拡大が防止できる。この感染及び感染拡大の防止効果は病原体がウイルス、特にインフルエンザウイルスの場合に顕著である。
【0014】
担体が樹脂又はゴムであり、この樹脂又はゴムで手袋を形成する場合は、抗原が手袋内に侵入するのが阻止されるとともに、抗体に捕捉され不活性化される。また、抗体に捕捉された抗原が手指に直接付着することがないので、使用済みの手袋を外し、又は新しい手袋と付け替えることにより、感染を防ぐことができる。
また、抗体が繊維であり、この繊維で手袋を作成した場合は、同じく抗原は抗体に捕捉され不活性化される。また、たとえ手袋内に抗原を含んだ水分が染み込んだとしても、抗原が不活性化されているので感染が防がれる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の抗体付き手袋は、抗体が担持された担体からなることを特徴とする。
【0016】
本発明において使用する抗体とは、特定の抗原と特異的に結合反応する生体物質であり、免疫グログリンとも呼ばれる。本発明においては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体のいずれでも使用することができ、その製造方法も特に限定されないが、例えば上記特許文献1(特開2009−23985号公報)や特開2008−198142号公報、WO2007/026689号再公表公報に記載された、ダチョウに抗原を注射して免疫をつけ、その卵黄や血中から抗体を回収する方法が好適に使用できる。
【0017】
抗体と結合する抗原についても特に限定されず、抗体付き手袋の使用目的に合わせて適宜定めることが出来る。例えば、食中毒を防止するために調理中に装着する手袋の場合は、食中毒菌の細胞表面のタンパク質を抗原とすればよく、また、インフルエンザの感染防止のために装着する手袋の場合は、インフルエンザウイルスの表面タンパク質を抗原とすればよい。
【0018】
本発明の抗体付き手袋は、上記のように作成した抗体を担体に担持させ、この担体を用いて手袋を作成するか、又は担体から手袋を作成してから抗体を担持させる。また、抗体を担持した担体を手袋に接着や縫着等により取り付けてもよい。
担体としては特に限定されず、通常手袋の素材とされる繊維、樹脂やゴム、レザー、紙等が例示される。また、活性炭やビーズなど、通常は手袋の素材にならない物質であっても、抗体を担持でき、手袋の素材に配合できるものも、担体として使用可能で、繊維、樹脂、ゴム等に練り込んだり、付着させることができる。
繊維としては、合成繊維、天然繊維、再生繊維の長繊維(フィラメント)または短繊維が用いられる。
天然繊維としては、例えば、綿、羊毛、絹、麻などが挙げられる。また、合成繊維としては、例えばポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、トリアセテート繊維、プロミックス繊維、ビニロン繊維、ビニリデン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリベンゾエート繊維、ポリクラール繊維、ポリエチレン繊維、ポリアラミド系繊維、ポリウレタン繊維などが挙げられる。またポリウレタンゴム、天然ゴムなどからなるゴム糸を使用することもできる。
また、樹脂又はゴムとしては、例えばポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンブロック共重合体、天然ゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴムまたは変性体が挙げられる。
これらは単独で使用してもよく、また混合して使用しても良い。更に樹脂の性質を向上させるため、加硫剤、加硫促進剤、架橋剤、安定剤、酸化防止剤、フィラー、顔料等、通常使用される配合物を使用しても良い。
【0019】
なお、抗体は水分がなく乾燥した状態では活性がないが、病原体等の生物の活動にも水分が必須であり、例えばインフルエンザウイルスの場合でも体外では飛沫に含まれた状態で存在するので、飛沫中の水分により抗体が活性化してインフルエンザウイルスと結合する。しかしながら、乾燥して水分が少なくなるにつれて抗体はインフルエンザウイルスと結合しにくくなるので、乾燥を防ぐため、抗体を担持する担体は水分を吸収し易いものが好ましい。具体的には、繊維としてはポリアミド(ナイロン)やレーヨンが好ましい。また、樹脂としては、親水基(−OH、−COOH、−SO3 H、−NHCO−)等を有する吸水性樹脂が好ましい。また、これらの親水基を有しない樹脂の場合は、これらの吸水性樹脂を併用することが好ましい。
【0020】
担体に抗体を担持する方法としては、(1)担体をγ- アミノプロピルトリエトキシシランなどを用いてシラン化した後、グルタールアルデヒドなどで担体表面にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、(2)未処理の担体を抗体の水溶液中に浸漬したり、担体に抗体を含む水溶液を噴霧器でスプレーしたりしてイオン結合により抗体を担体に担持する方法、(3)特定の官能基を有する担体にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、(4)特定の官能基を有する担体に抗体をイオン結合させる方法、(5)特定の官能基を有するポリマーで担体をコーティングしたのちにアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法等を挙げることができる。ここで、上記の特定の官能基としては、NHR基( RはH以外のメチル、エチル、プロピル、ブチルのうちいずれかのアルキル基) 、NH2 基、C6 5 NH2 基、CHO基、COOH基、OH基を挙げることができる。
【0021】
また、他の担持方法としては、担体表面の官能基を、BMPA(N- β-Maleimidopropionic acid) などを用いて他の官能基に変換した後、その官能基と抗体とを共有結合させる方法もある(BMPAではSH基がCOOH基に変換される)。
【0022】
さらに他の担持方法としては、抗体のFcの部分に選択的に結合する分子(Fcレセプター、プロテインA/Gなど)を担体表面に導入し、それに抗体のFcを結合させる方法もある。この場合、抗原を捕捉するFabが担体に対して外向きとなり、Fabへの抗原の接触確率が高くなるので、効率よく抗原を捕捉することができる。
【0023】
抗体は、リンカーを介して担体に担持されていてもよい。この場合、担体上での抗体の自由度が高くなり、抗原への接近が容易となるので、高い除去性能を得ることができる。リンカーとしては、二価以上のクロスリンク試薬を挙げることができ、具体的には、マレイミド、NHS(N-Hydroxysuccinimidyl) エステル、イミドエステル、EDC(1-Etyl-3-[3-dimetylaminopropyl]carbodiimido) 、PMPI(N-[p-Maleimidophenyl]isocyanete) があり、標的官能基(SH基、NH2 基、COOH基、OH基)に選択的なものと非選択的なものとがある。また、クロスリンク間の距離(スペーサーアーム)もクロスリンク試薬ごとに異なっており、目的の抗体に応じて0.1nm〜3.5nm程度の範囲で選択することができる。抗原を効率的に捕捉するという観点からは、リンカーとして抗体のFcに結合するものが好ましい。
【0024】
リンカーを導入する方法としては、抗体にリンカーを結合させておき、それをさらに担体に結合させる方法、担体にリンカーを結合させておき、担体上のリンカーに抗体を結合させる方法のいずれも可能である。
【0025】
上記のような、抗体が担持された担体からなる手袋を作成する方法は特に限定されず、当該担体の性質に合わせて適宜選択すればよい。
例えば、樹脂又はゴムを用いて手袋を作成する場合、公知の方法で手袋を作成してから、その手袋の表面に抗体を担持させてもよいし、樹脂又はゴムを薄いシート状にしてその片面だけに抗体を担持させ、これを手形に切り抜いて、抗体が担持された面が外側になるように2枚の手形を重ね合わせ、その端縁を、手首の部分を除いて、熱溶着等の方法で接着してもよい。
また、繊維を担体とした場合は、当該繊維を織布又は不織布にして、これを縫製して手袋を作成してもよいし、当該繊維を糸にして編み手袋にしてもよく、さらに、公知の方法で手袋を製造してから、それぞれの繊維に抗体を担持させる処理を施してもよい。
さらに、活性炭やビーズ等に抗体を担持させ、これらを接着剤等で既存の手袋の表面に貼り付けてもよいし、これらの活性炭やビーズ等を配合した樹脂を用いて手袋を形成してもよい。
【0026】
上記のような手袋は、単体で、または外側と内側とで重ねて用いることができる。例えば、本発明の抗体付き手袋を単体で着用した場合、病原菌等が付着した手すりやつり革を手でつかみ、更にその手で鞄等を持ったとしても、抗体付き手袋に付着した病原菌等は抗体により不活性化されるので、これが鞄等に移った場合でも感染せず、感染の拡大もない。
また、外側と内側とで重ねて着用した場合は、例えば、使い捨てのアウター手袋の下に着用するインナー手袋として本発明の抗体付き手袋を用いることができる。これにより、病原菌等が付着したアウター手袋を取り外してからマスク、ゴーグル及びガウン等を脱ぐ場合、それらには病原菌等が付着しているが、インナー手袋に担持された抗体が抗原に結合して不活性化するので、感染及び感染の拡大は防止される。勿論、必要に応じ、アウター手袋を抗体付き手袋としてもよく、更に、アウター手袋、インナー手袋の両方とも抗体付き手袋としてもよい。この場合、アウター手袋、インナー手袋の素材は特に制限ないが、アウター手袋は病原菌等を遮断する樹脂やゴム製とし、インナー手袋は肌触りが良く、且つ吸湿性を有する繊維製とするのが好ましい。また、上記の如きアウター手袋とインナー手袋の使用は、特に、感染の危険に曝される医療機関や検疫機関等での使用に有用である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
【0028】
ダチョウ抗インフルエンザウイルス抗体の作成:
(免疫の形成)
産卵中の雌性ダチョウに3種のHA(A/ ニューカレドニア・20/99(H1N1) 由来HA30μg、A/ 広島/52/2005(H3N2)由来HA30μg、 B/ マレーシア/2506/2004由来HA30μg)の混合液を隔週免疫した。初回はフロントの完全アジュバント、2 回目以降はフロントの不完全アジュバントを用いた。初回免疫より4週目に高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1由来リコンビナント蛋白質を追加で免疫した。
初回免疫より5週目以降の卵を採取して、その卵から卵黄を取り出した。
【0029】
(抗体の精製)
まず、上記のようにして得られた卵黄に5倍量のTBS(20mMTris−HCl、0.15M NaCl、0.5%NaN3 )と同量の10%デキストラン硫酸/TBSを加え20分攪拌した。
そして、1M CaCl2 /TBSを卵黄と同量加え攪拌し、12時間静置した。その後、15000rpmで20分遠心し上清を回収した。
次に、最終濃度40%になるように硫酸アンモニウムを加え4℃で12時間静置し、その後、15000rpmで20分遠心し、沈殿物を回収した。最後に、卵黄と同量のTBSに再懸濁し、TBSにて透析した。
この方法により90%以上の純度の抗体(IgY)の回収が可能となった。また、1個の卵黄より2〜4gの抗体を精製することができた。
なお、この抗体は15mg/mlになるように濃度調整して、下記の実施例において抗体原液として利用した。
【0030】
実施例1
(手袋の編成)
編み糸として、KBセーレン(株)製「ベリーマ(登録商標)」(ポリエステル75%:ナイロン25%の複合糸)のウーリー加工糸165デシテックス(150デニール)単糸1本を用いて、(株)島精機製作所製の手袋編機N−SFG18ゲージ(機械サイズ=L2)にて手袋を作成した。
編み機の度目は2.4〜2.6を使用し、編み立て全長(中指先から裾部間での長さ)は約250〜260mm、手袋の質量は約7.2g/枚となった。また、手首部はずり上がりを防止するため、ポリウレタンカバー糸を3コースに1回挿入した。
編成後の手袋は専用の治具で裏返し、裾部はほつれ防止のためミシンにてオーバーロック加工を施した。
【0031】
(洗浄及び乾燥)
編みあがった手袋を10枚、80〜85℃に加温した2リットルの水道水中に投入し、そのまま10分間攪拌した。その後,手袋を取り出して常温の水道水2リットル中に投入して、そのまま3分間攪拌した。その後、家庭用洗濯機を用いて5分間脱水した。
脱水後、手袋の1.2倍の大きさの手型(平型)に手袋を被せ、パーフェクトオーブン(設定温度100℃)にて10分間乾燥し、その後取り出して手型を外し、その後、乾燥後の手袋をメタノールで殺菌した。
【0032】
(抗体の担持)
上記、抗体原液を5000倍に薄めた希釈液を2リットル作成し、その中に上記した洗浄、乾燥後の手袋を投入した。手袋は投入して30秒後に取り出し、絞り率200%で絞った後、80℃で10分間乾燥させた。
乾燥後、手袋表面の抗体の濃度をエライザにより測定し検量すると、60ng/cm2 (手袋の生地1cm2 当りの抗体の量)であった。
【0033】
実施例2〜5、比較例1
ウーリーポリエステルを50Dで編んだスムース生地(重量:98g/m2 )を用いて手袋を縫製したほかは実施例1と同様に手袋を作成し、洗浄、乾燥させた。
この手袋をそれぞれ、抗体原液の5000倍希釈液(実施例2)、同1000倍希釈液(実施例3)、同500倍希釈液(実施例4)、同100倍希釈液(実施例5)、水道水(比較例1)に浸漬した他は実施例1における抗体の担持方法と同様に処理した。
なお、手袋表面の抗体の濃度は、それぞれ60ng/cm2 (実施例2)、300ng/cm2 (実施例3)、600ng/cm2 (実施例4)、3000ng/cm2 (実施例5)、0ng/cm2 (比較例1)であった。
【0034】
実施例6〜9、比較例2
ウーリーナイロンを40Dで編んだ天竺生地(重量:83.4g/m2 )を用いて手袋を縫製したほかは実施例1と同様に原手を作成し、洗浄、乾燥させた。
この手袋をそれぞれ、抗体原液の5000倍希釈液(実施例6)、同1000倍希釈液(実施例7)、同500倍希釈液(実施例8)、同100倍希釈液(実施例9)、水道水(比較例2)に浸漬し、絞り率が235%である他は実施例1における抗体の担持方法と同様に処理した。
なお、手袋表面の抗体の濃度は、それぞれ60ng/cm2 (実施例6)、300ng/cm2 (実施例7)、600ng/cm2 (実施例8)、3000ng/cm2 (実施例9)、0ng/cm2 (比較例2)であった。
【0035】
上記実施例1〜9及び比較例1〜2で得られた手袋について、下記の方法でウイルスの中和(不活性化)テストを行った。
(1)実施例1〜9、比較例1〜2の手袋から、それぞれ5cm×5cm(25cm2 )に裁断しサンプルとする。
(2)サンプルにウイルス液(インフルエンザウイルスH1N1)を1mL滴下し、サンプル全体に染み込ませる。
(3)10分間室温で静置する。
(4)細胞培養用無血清培地(DMEM)1mLにて洗浄し、その洗浄液を回収する。
(5)回収液を細胞培養用プレートにて培養していたMDCK細胞に感染させる。
(6)3日間培養を行い、感染の有無を測定し評価を行う。
【0036】
上記テストの結果、抗体を担持した実施例1〜9のサンプルでは、CPE(cytopathic effect:細胞変性効果)の発現が認められず、ウイルス感染がないことが確認された。
一方、抗体を担持していない比較例1〜2のサンプルでは、CPEの発現が認められ、ウイルス感染が確認された。
尚、細胞に感染させた7日後においても同様のテストを行ったが、上記と同じ結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
叙上のとおり、本発明の抗体付き手袋は、抗体が担持された担体からなるので、当該手袋にインフルエンザウイルス等の抗原が付着した場合、抗原は抗体により不活性化される。従って、その手袋で他の物質に触っても抗原は手袋から外れないので感染は予防され、また感染の拡大も防止される。従って、本発明の抗体付き手袋によれば、抗原を選択することにより、例えば食中毒の防止や、インフルエンザの感染や感染の拡大が防止され、その有用性は頗る大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体が担持された担体からなることを特徴とする抗体付き手袋。
【請求項2】
抗体と結合する抗原が病原体であることを特徴とする請求項1に記載の抗体付き手袋。
【請求項3】
病原体がウイルスであることを特徴とする請求項2に記載の抗体付き手袋。
【請求項4】
ウイルスがインフルエンザウイルスであることを特徴とする請求項3に記載の抗体付き手袋。
【請求項5】
担体が繊維であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の抗体付き手袋。
【請求項6】
担体が樹脂又はゴムであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の抗体付き手袋。

【公開番号】特開2011−21299(P2011−21299A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168603(P2009−168603)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(591161900)ショーワグローブ株式会社 (39)
【出願人】(508198535)オーストリッチファーマ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】