説明

抗体産生非ヒト哺乳動物

本発明は、免疫グロブリン軽鎖がヒト、ヒト様またはヒト化である、免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸を含むトランスジェニック非ヒト動物を提供する。この核酸は、DNAの再構成および/または体細胞超突然変異に対する耐性を該核酸にもたらす手段を備えている。一実施形態において、この核酸は、成熟B細胞に発生する細胞において発生の特定の段階期間にある細胞における所望の分子の発現のための発現カセットを含む。本発明は、該トランスジェニック非ヒト動物から免疫グロブリンを作製する方法をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体またはそれらの誘導体を産生できる非ヒト動物の作製および使用に関し、これらは少なくとも部分的に外因性核酸(トランス遺伝子)から発現する。このようなトランスジェニック動物作製のためのトランス遺伝子およびこのような異種抗体の作製方法; このようなトランスジェニック動物作製のための方法およびベクターを開示する。
【背景技術】
【0002】
B細胞は、特異的抗体の産生による液性免疫を仲介する。抗体(Ab)の基本的構造サブユニットは、免疫グロブリン(Ig)分子である。Ig分子は、2つの同一な重(H)ポリペプチド鎖および2つの同一な軽(L)ポリペプチド鎖の複合体からなる。アミノ酸配列において変化する個々のH鎖およびL鎖のアミノ末端は可変(V)領域と呼ばれる領域である。H鎖およびL鎖の残りの部分はアミノ酸配列が比較的一定であり、定常(C)領域と呼ばれる。Ig分子において、H鎖およびL鎖のV領域(VHおよびVL)は近接し、潜在的抗原結合部位を形成する。H鎖およびL鎖のV領域をコードする遺伝子は、B細胞前駆体(pre-B)の分化中に生殖細胞系列DNAのセグメントから体細胞的に集合する: H鎖にはV、DおよびJ遺伝子セグメントおよびL鎖にはVおよびJ遺伝子セグメント。IgのV領域内は、相互作用して、抗原認識部位を形成するアミノ酸配列の可変性が最も大きい3つの領域があり、それらは、それゆえ相補性決定領域(CDR)と称される。
【0003】
V遺伝子セグメントは、CDR1およびCDR2を含むV領域ドメインのバルクをコードする。CDR1およびCDR2の多様性は、多数の異なる生殖細胞系列コードVセグメント中の配列異質性に由来する。CDR3は、H鎖のV、DおよびJ遺伝子セグメントならびにL鎖のVおよびJセグメントの連結によって、ならびにこれらのセグメントが組み合わされるヌクレオチド配列の異質性を生み出す機序によって形成される配列によってコードされる。さらなる多様性は、さまざまなH鎖およびL鎖のV領域のペアリングに由来し得る。一括して、これらの過程により、生殖細胞系列の遺伝子セグメントによりコードされる抗体の初期レパートリーがもたらされ、新しく形成されたB細胞により発現される。
【0004】
抗体多様性のさらなる供給源は、Ig遺伝子セグメントの組換えにより生じる多様性に加えて課される。B細胞は、それらが発現する抗体V領域に突然変異、体細胞超突然変異と呼ばれる過程を導入できる。したがって、動物がはじめて抗原に遭遇したとき、抗原は、折りよく抗原に結合するVドメインを有する抗体を有する特異的B細胞に結合する。この一次応答は、このB細胞を活性化し、同種抗体を分泌し続けうる。この活性化B細胞は、それらの再構成された抗体遺伝子セグメントに対する体細胞変異過程を標的とすることができ、したがって、一次応答抗体の変異体を作り出す娘細胞を産生することができる。選択過程は、抗原の親和性が改善された抗体を作り出す、それらの変異体B細胞の子孫を増幅する。B細胞において、体細胞超突然変異は、再構成されたVHおよびVL遺伝子の双方を含む制限されたゲノム領域を標的とする。したがって、体細胞変異は、親和性の成熟-高親和性抗体の産生および選択を可能にする。したがって、体細胞変異は高親和性抗体の作製にとって重要である。
【0005】
抗体の優れた特異性および高親和性ならびにモノクロナール抗体(mAb)の作製を可能にするハイブリドーマ技術の発見は、ヒト疾患用の治療を標的とするそれらの利用に関する大きな期待を生み出した。MAbは単一B細胞およびその子孫により産生されるので、MAbは同一である。MAbは、所望の抗原を用いて免疫化されたマウス由来の脾臓細胞と、骨髄腫細胞とを融合し、不死化ハイブリドーマを作製することによって作られる。ヒトにおいてmAbのインビボ応用の開発に直面する主な障害の1つは、非ヒトIgの内在性の免疫原性である。患者は、マウスmAbの治療用量に対してマウスIg配列(Human Anti Mouse Antibodies; HAMA)に対して抗体を作ることによって応答し、急性毒性を引き起こし、それらの生体内分布を変更し、クリアランスを加速し、したがってその後の投与の有効性を減少する(Mirickら、(2004) Q. Nucl. Med. Mol. Imaging 48、251〜257頁)。
【0006】
HAMAの産生を回避するために、ヒトに用いる場合、免疫原性が減少したmAbを作製する試みにおいて、抗体のヒト化方法が開発されている。これらの企ては、mAbにおいてヒトアミノ酸配列の含有量が増加するが、一方親の非ヒト抗体の特異性および親和性を保有することを目的とする、さまざまな組換えDNAに基づく取り組みをもたらした。ヒト化は、マウスmAb中のIg C領域を、ヒトC領域に置き換えた、マウス-ヒトキメラmAbの構築をもって始まった(Morrison, S. L.ら、(1984)。Proc. Natl. Acad. Sci. USA.、81、6851〜5頁)。キメラmAbは60〜70%のヒトアミノ酸配列を含有し、ヒトに注射した場合、それらのマウス対応物より免疫原性が大幅に低いが、ヒト抗キメラ抗体応答は依然として観察される(Hwang, W. Y.ら、(2005)。Methods、36、3〜10頁)。
【0007】
マウスmAbのさらなるヒト化の試みにおいて、CDRグラフティングが開発された。CDRグラフティングにおいて、マウス抗体は、ヒトIg分子のVLおよびVHのフレームワーク上のそれらのCDRをグラフティングすることによってヒト化されるが、一方特異性および親和性にとって必須であるとみなされる、それらのマウスフレームワーク残基を保有する(Jones, P.T.ら、(1986)。Nature、321、522頁)。全体として、CDR-グラフト抗体は、80%を超えるヒトアミノ酸配列からなる(Queen, C.ら、(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 86、10029頁; Carter, P.ら、(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 89、4285頁)。これらの努力にもかかわらず、CDR-グラフトヒト化抗体は、グラフトV領域に対する抗体応答を引き起こすことが示された(Hwang, W. Y.ら、(2005)。Methods、36、3頁)。
【0008】
CDRグラフティングに続いて、リサーフェシング(resurfacing)(Padlan, E. A.ら、(1991)。Mol. Immunol.、28、489頁)、超ヒト化(Tan, P., D. A.ら、(2002) J. Immunol.、169、1119頁)、ヒトストリング内容最適化(human string content optimization)(Lazar, G. A.ら、(2007)。Mol. Immunol.、44、1986頁)およびヒューマニアリング(humaneering)などのさまざまなパラダイムに基づくヒト化方法が、治療mAbにおける非ヒト配列の含有量をさらに減らす試みにおいて開発されている(Almagro, J. C.ら、(2008)。Frontiers in Bioscience 13、1619頁)。CDRグラフティングの試みにおけるように、これらの方法は、ヒト化過程の最終製品の免疫原性への影響を上げるために、抗体構造の分析ならびに非ヒトおよびヒトAmbの配列比較に頼っている。キメラ抗体およびヒト化抗体の免疫原性を比較した場合、可変領域のヒト化は、さらに免疫原性を減少するように思われる(Hwang, W. Y.ら、(2005)。Methods、36、3〜10頁)。
【0009】
脱免疫化は、キメラ抗体またはマウス抗体の免疫原性を減少させるために開発された別の取り組みである。脱免疫化は、対象となる抗体のT細胞線状エピトープの、バイオインフォマティクスを使用した同定およびその後の、ヒトに対する部位特異的変異原性配列または非免疫原性配列によるそれらの置き換えを含む(WO09852976A1)。脱免疫化抗体は、それらのキメラ対応物と比較して、霊長類において免疫原性の減少を示したが、結合親和性のいくらかの損失が観察された(Jain, M.ら、(2007)。Trends in Biotechnol. 25、307頁)。
【0010】
ファージディスプレイ技術の開発は、ヒト治療用の免疫原性が低いmAbを得る試みにおいてヒト化の取り組みを補い、拡大した。ファージディスプレイにおいて、ヒト抗体のVHおよびVL領域の大型コレクション(「ライブラリ」)は、繊維状バクテリオファージ粒子の表面に発現する。これらのライブラリから、抗原との結合相互作用を介して稀有なファージが選択される; 可溶性抗体断片は感染細菌から発現され、選択された抗体の結合親和性は突然変異により改善される(Winter, G.ら、(1994)。Annu. Rev. Immunol. 12、433頁)。この方法は、免疫選択を模倣し、多くの異なる結合特異性を有する抗体が、この取り組みを使用して単離されている(Hoogenboom, H. R.ら、(2005)。Nat. Biotechnol.、23、1105頁)。H鎖およびL鎖のV領域のさまざまな供給源を使用して、非免疫ドナーまたは免疫ドナーから単離されたH鎖およびL鎖のV領域を含むファージディスプレイライブラリが構築されている。さらに、ファージディスプレイライブラリは、さらなる多様性を創造するために人工的にランダム化された合成CDR領域を含有するV領域から構築されている。多くの場合、ファージディスプレイライブラリから得られた抗体は、インビトロで親和性成熟に供され、高親和性抗体が得られる(Hoogenboom, H. R.ら、(2005)。Nat. Biotechnol.、23、1105頁)。
【0011】
マウス抗体の不在下でヒト抗体を産生するトランスジェニックマウス系統の作製はヒトへの応用のための特異的および高親和性ヒトmAbの作製のための別の技術基盤を提供した。これらのトランスジェニック動物において、内因性マウス抗体の機構は不活性化され、ヒトIg遺伝子座により置き換えられ、マウスにおいてヒト液性免疫系が実質的に再生される(Jakobovits, A.ら、(2007)。Nat. Biotechnol. 25、1134頁。Lonberg, N. (2005)。Nat. Biotechnol. 23、1117頁)。遺伝子セグメントの組換えによるB細胞の開発およびIgの多様性は、これらのマウスにおいて正確に再生され、ヒトIgを発現するマウスB細胞の多様なレパートリーをもたらす。これらのマウスを抗原を用いて免疫化することによって、これらのトランスジェニック動物が、重鎖および軽鎖の双方のV領域において体細胞突然変異を積み重ね、高親和性ヒトmAbの広い多様性を得たことをさらに実証した(Lonberg, N. (2005)。Nat. Biotechnol. 23、1117頁)。
【0012】
ファージディスプレイライブラリまたはトランスジェニックマウスに由来するような「完全ヒト」mAbが、ヒト化mAbより免疫原性が低いのかどうかという疑問は、完全な免疫原性データは、わずか2種のヒトmAbに関して利用できるのみなので、未だ答えを得ることができない。ファージディスプレイされたヒトライブラリから開発された抗腫瘍壊死因子mAbは、ヒト化抗体の抗抗体応答の発生率の上端である、親の12%の抗体応答を誘導する(Hwang, W. Y.ら、(2005)。Methods、36、3〜10頁)。
【0013】
トランスジェニックの取り組みにより作製された、最初に登録されたヒトmAbの免疫原性の評価により、mAb治療により、治療されたがん患者のおよそ5.5%において抗体の産生が得られたことが実証された(Jakobovits, A.ら、(2007). Nat. Biotechnol. 25, 1134., Lofgren, J. A.ら、(2007)。J. Immunol. 178、7467頁)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO09852976A1
【特許文献2】EP04690251
【特許文献3】EP 01439234
【特許文献4】WO04106375
【特許文献5】WO05068622
【特許文献6】EP 1439234
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Mirickら、(2004) Q. Nucl. Med. Mol. Imaging 48、251〜257頁
【非特許文献2】Morrison, S. L.ら、(1984)。Proc. Natl. Acad. Sci. USA.、81、6851〜5頁
【非特許文献3】Hwang, W. Y.ら、(2005)。Methods、36、3〜10頁
【非特許文献4】Jones, P.T.ら、(1986)。Nature、321、522頁
【非特許文献5】Queen, C.ら、(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 86、10029頁
【非特許文献6】Carter, P.ら、(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 89、4285頁
【非特許文献7】Padlan, E. A.ら、(1991)。Mol. Immunol.、28、489頁
【非特許文献8】Tan, P., D. A.ら、(2002) J. Immunol.、169、1119頁
【非特許文献9】Lazar, G. A.ら、(2007)。Mol. Immunol.、44、1986頁
【非特許文献10】Almagro, J. C.ら、(2008)。Frontiers in Bioscience 13、1619頁
【非特許文献11】Jain, M.ら、(2007)。Trends in Biotechnol. 25、307頁
【非特許文献12】Winter, G.ら、(1994)。Annu. Rev. Immunol. 12、433頁
【非特許文献13】Hoogenboom, H. R.ら、(2005)。Nat. Biotechnol.、23、1105頁
【非特許文献14】Jakobovits, A.ら、(2007)。Nat. Biotechnol. 25、1134頁。
【非特許文献15】Lonberg, N. (2005)。Nat. Biotechnol. 23、1117頁
【非特許文献16】Lofgren, J. A.ら、(2007)。J. Immunol. 178、7467頁
【非特許文献17】Wunderlich F. T. (2004)、「Generation of inducible Cre systems for conditional gene inactivation in mice」、Inauguraldissertation zur Erlangung des Doktorgrades der Mathematisch-Naturwissenschaftlichen Fakultat der Universitat zu Koln; http://deposit.ddb.de/cgi-bin/dokserv?idn=97557230x&dok_var=d1&dok_ext=pdf&filename=97557230x.pdf.
【非特許文献18】de Wildtら、1999. J. Mol. Biol. 285(3): 895頁
【非特許文献19】Ewertら、2003. J. Mol. Biol. 325(3): 531頁
【非特許文献20】Odegard, V. H.ら、(2006)。Nat. Rev. Immunol. 6、573頁
【非特許文献21】Inlay, M.ら、(2002)。Nat. Immunol. 3、463頁
【非特許文献22】Meyer, K. B.ら、(1990) Nucleic Acids Res. 18(19): 5609〜15頁
【非特許文献23】Kwaksら、(2006) Trends Biotechnol. 24(3)、137〜142頁
【非特許文献24】Rajewskyら、(1996) J. Clin. Invest. 98, 600〜603頁
【非特許文献25】Gascanら、1991、J. Exp. Med. 173: 747〜750頁
【非特許文献26】Shvartsら、2002。Genes Dev 16: 681〜686頁
【非特許文献27】Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第3版Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(2001)
【非特許文献28】Rabquer, B.J.、Smithson, S.L.、Shriner, A.K.およびWesterink, M.A.J
【非特許文献29】Ignatovich, O.、Tomlinson, I.M.、Popov, A.V.、Bruggemann, M.およびWinter, G. J. Mol. Biol. 294 (2), 457〜465頁(1999)
【非特許文献30】Antibodies Phage Display: Methods and Protocols(編者: Philippa M. O'Brien、Robert Aitken)
【非特許文献31】Thiebeら、1999。European Journal of Immunology 29: 2072〜2081頁
【非特許文献32】Kramerら、2003。Nucleic Acids Res. 31(11): e59
【非特許文献33】Seiblerら、Nucleic Acids Res. 2003 Feb 15; 31(4): e12
【非特許文献34】Egganら、PNAS 98、6209〜6214頁
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【非特許文献36】Seibler J、Zevnik B、Kuter-Luks B、Andreas S、Kern H、Hennek T、Rode A、Heimann C、Faust N、Kauselmann G、Schoor M、Jaenisch R、Rajewsky K、Kuhn R、Schwenk F. Nucleic Acids Res. 2003 Feb 15; 31(4): e12
【非特許文献37】Meyerら、1996、Int. Immunol., 8: 1561頁
【非特許文献38】Bradyら、2006、JIM、315: 61頁
【非特許文献39】de Kruifら、2009、J. Mol. Biol.、387: 548頁
【非特許文献40】Middendorpら、(2002) J. Immunol、168: 2695頁
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【非特許文献42】Desmetら、Nature 1992、356: 539〜542頁
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【非特許文献46】Taylorら、(1992)、Nucleic Acids Res 20: 6287〜95頁
【非特許文献47】Lonbergら、(1994)、Nature 368: 856〜9頁
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【非特許文献50】Antibody Phage Display: Methods and Protocols、2002、編者: Philippa M. O'Brien、Robert Aitken、Humana Press、Totowa、New Jersey、USA
【非特許文献51】Throsby, M. 2006、J Virol 80: 6982〜92頁)
【非特許文献52】Naokoら、2007、Can. Res. 67: 817〜875頁
【非特許文献53】Min-Soo Kimら、(2007) JMB 374: 1374〜1388頁
【非特許文献54】Padlan, E. A.ら、(1991). Mol. Immunol.、28、489頁
【非特許文献55】Tan, P., D. A.ら、(2002) J. Immunol.、169、1119頁
【非特許文献56】Lazar, G. A.ら、(2007)、Mol. Immunol.、44、1986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、それらの標的に特異的であるが、免疫原性がより低い抗体を作製するための方法および手段の必要性が依然として残されている。本発明によれば、免疫原性の低減は、そのB細胞系統において、少なくとも免疫グロブリン軽鎖または重鎖をコードする核酸を含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供することによって、少なくとも部分的に達成され、配列をコードする重鎖または軽鎖は、DNAの再構成および/または体細胞超突然変異に対する耐性を該核酸にもたらす手段が備わっており、このような非ヒト動物は、好ましくはげっ歯動物、より具体的にはマウスである。この核酸は、好ましくはヒト、ヒト様またはヒト化免疫グロブリン鎖をコードする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
明細書の残りにおいて、マウスを、非ヒト哺乳動物の例として通常使用する。トランスジェニック非ヒト哺乳動物宿主は抗原に対する免疫応答を開始でき、この応答により霊長類、特にヒトの可変領域を有する抗体が産生される。さまざまなトランスジェニック宿主、特に、マウス、ウサギ、ヒツジ、トリ(avine)、ブタ、ウマ、イヌ、ネコなどを用いることができる。マウスは、抗体産生のための不死化用Bリンパ球の産生に使用されてきた。マウスは扱いやすく、多数を繁殖させることができ、広範囲に及ぶ免疫レパートリーを有することが公知であるため、普通マウスが動物として選択される。したがって以下の考察において、考察はマウスについて言及しており、しかし他の動物、特に非霊長類哺乳動物は、同じ手順に従って容易にマウスと置き換えることができると理解するべきである。
【0018】
再構成および超突然変異を防ぐ理由は、この手法において、非免疫原性ポリペプチドは、このポリペプチド鎖が依然として非免疫原性のままであると思われる、予備知識により選択されているからである。したがって、得られた免疫グロブリン鎖の少なくとも1つは免疫原性がより低い。得られた抗体は、(普通は)軽鎖および重鎖の双方を有することが必要である。したがって、非免疫原性鎖は、他の鎖とペアリング可能でなくてはならない。他の鎖は、内因性鎖、外因性鎖または双方のハイブリッドであってよい。ヒト治療のために、非免疫原性鎖は可能な限りヒトに近くあるべきである。
【0019】
免疫グロブリン鎖(または複数の鎖)をコードする遺伝子に、DNAの再構成および/または突然変異に対する耐性をもたらす手段は、当然のことながら前記再構成および/または突然変異に関与するすべての遺伝要素を除去することである。それらの欠点は、2種の鎖の可変性を除外削除することである一方で、本発明は、1種の鎖(好ましくは重鎖)において可変性を保有し、他方の鎖(好ましくは軽鎖)の再構成-突然変異を阻害および/または防止することが好ましい。
【0020】
今までのところ特徴付けられている再構成および/または超突然変異に関する要素は、免疫グロブリンに関する遺伝子座内に位置付けられている。したがって、配列をコードする免疫グロブリンに、DNAの再構成および/または突然変異に対する耐性をもたらす手段は、免疫グロブリン遺伝子座の外側の遺伝子座に遺伝子を挿入することである。
【0021】
したがって本発明によれば、配列をコードする軽鎖/重鎖が、免疫グロブリン遺伝子座の外側の遺伝子座において、非ヒト哺乳動物のゲノムに組み込まれる、トランスジェニック非ヒト哺乳動物が提供される。挿入は、遺伝子サイレンシングに対して耐性である遺伝子座内が好ましい。本発明によれば、組み込みは、Rosa遺伝子座または匹敵する遺伝子座の中である。
【0022】
免疫グロブリン鎖(1種または複数種)の発現を本質的にB細胞系統の細胞に限定するのを可能にする手段、好ましくは、軽鎖コード核酸の発現を、B細胞の発生の特定段階期間に可能にする手段を用いて、Rosa遺伝子座または相当する遺伝子座に挿入できる発現カセットを提供することが好ましい。「本質的に限定された発現」という用語は、発現の大部分がB細胞系統の細胞中であるが、B細胞中の発現レベルと比較して低レベルの発現が、他の細胞において可能であることを示す。好ましい実施形態において、「本質的に限定された発現」という用語は、発現が独占的にB細胞系統の細胞中に存在することを示す。このような手段は、通常および好ましくは、B細胞(発生段階)特異的プロモーター、例えばCD19、CD20、μHC(すべてV遺伝子)、VpreB1、VpreB2、VpreB3、λ5、Igα、Igβ、κLC(全遺伝子)、λLC(全遺伝子)、BSAP(Pax5)を含む。このようなプロモーターが、DNAの再構成および/または突然変異に耐性の鎖の発現を対象とすることは十分に可能であるが、それらは比較的弱い。強力なプロモーターは、B細胞受容体(Ig H鎖およびL鎖に結合した膜により構成される)の適切な表面発現を確実にし、対立遺伝子排除を介して内因性鎖(存在する場合)の発現およびペアリングと競合する必要が通常あると思われる。しかし、このようなプロモーターは普通組織特異的ではない。組織特異性を得るために、Cre/loxなどを用いる間接系が好ましい。所望の鎖は、Creタンパク質の作用により除去され得る要素により阻害される、強力なプロモーターの制御下にあり、所望の遺伝子をコードする免疫グロブリンの活性化をもたらす。この系は、Wunderlich F. T. (2004)、「Generation of inducible Cre systems for conditional gene inactivation in mice」、Inauguraldissertation zur Erlangung des Doktorgrades der Mathematisch-Naturwissenschaftlichen Fakultat der Universitat zu Koln; http://deposit.ddb.de/cgi-bin/dokserv?idn=97557230x&dok_var=d1&dok_ext=pdf&filename=97557230x.pdf.に詳細に記載されている。
【0023】
再構成および超突然変異に対して耐性である手法で作製される免疫グロブリン鎖は、非ヒト哺乳動物によりコードされる異なる重鎖とペアリングできる軽鎖であることが好ましい。この軽鎖は全抗体において同じ(および免疫原性がより低い)であると思われるが、重鎖において、再構成および超突然変異を介して特異性の多様性が保有される。その場合、軽鎖をコードする内因性遺伝子座の少なくとも1つをサイレンシングすることが好ましいと思われるが、対立遺伝子排除によりこのことが不必要にもたらされ得る。
【0024】
この実施形態によれば、内因性κ(K)軽鎖遺伝子座は機能的にサイレンシングされることが好ましい。
【0025】
しかしさらに他の理由によって内因性κ軽鎖遺伝子座がサイレンシングされた場合、耐性軽鎖がκ軽鎖、好ましくは生殖細胞系列様配列を有する軽鎖であることが好ましい。本発明によれば、このような軽鎖は免疫原性が低下した抗体をもたらすと思われる。ヒトIGKV1-39(O12)は、ヒトレパートリーにおいて非常に頻繁に観察されるので、好ましい生殖細胞系列配列はヒトIGKV1-39(O12)に基づき(de Wildtら、1999. J. Mol. Biol. 285(3): 895頁)、優れた熱力学的安定性、収率および溶解度(Ewertら、2003. J. Mol. Biol. 325(3): 531頁)を有する。
【0026】
以下に、本発明に従って非ヒト動物を提供できる、発現カセットのより具体的な実施形態を示す。これは免疫グロブリンに関して通常有利であるが、対象となる他の遺伝子もまた企図される。
【0027】
したがって、本発明は具体的な実施形態において、軽鎖コード核酸が5'-3'方向に、:B細胞特異的プロモーター、リーダー、再構成ヒトV遺伝子、場合によりMoEκiエンハンサー、定常領域(κ)および場合により(切断型)MoEκ3'エンハンサーを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供する。Neubergerは、κ定常領域の下流に位置する新規なB細胞特異的エンハンサーを特定し、試験した(EP004690251)。808bpのエンハンサーの除去により発現が強力に減少するので、このエンハンサーがκ遺伝子の発現においてきわめて重大な役割を果たすことが示されている。3'κエンハンサーの欠失もまた、体細胞超突然変異(SHM)のレベルを強力に低下させる。トランスジェニックおよび細胞発現の研究において、3'κエンハンサーの減少、突然変異または欠失は、発現レベルを低下させるだけでなく、体細胞超突然変異のレベルも減少させることが明らかになっている。現在、3'κエンハンサーがSHM過程、発現制御または双方に関与するかどうかは判定できない(Odegard, V. H.ら、(2006)。Nat. Rev. Immunol. 6、573頁; Inlay, M.ら、(2002)。Nat. Immunol. 3、463頁を再考されたい)。
【0028】
3'κエンハンサーの組換え変異体を使用する詳細な発現研究は、50ヌクレオチドの領域が発現を駆動するために十分であることを示した。しかし、適切な発現のためには、145ヌクレオチドの縮小した配列が好ましい(EP04690251; Meyer, K. B.ら、(1990) Nucleic Acids Res. 18(19): 5609〜15頁)。
【0029】
したがって、本発明は一態様において、発生の特定の段階において成熟B細胞に発生する細胞中の所望のタンパク性分子の発現のための発現カセットである、非ヒト動物ゲノムに挿入するための核酸を提供し、前記カセットは、宿主細胞への導入後に所望のタンパク性分子の発現がサイレンシングされることを防止するための手段および所望のタンパク性分子の発現を宿主細胞の所望の発生段階に時期を合わせる手段を含む。
【0030】
発現カセットは、宿主細胞のゲノムへの導入手段が備えられた核酸、例えば、ゲノム中の特定部位において相同組換えが可能な配列として定義される。普通、この核酸はDNAであり、通常二本鎖である。通常、発現カセットはベクター中の細胞に提供され、細胞のゲノムに輸送される。この発現カセットは、宿主細胞中の遺伝子の発現に必要な全要素をさらに含むが、特定の実施形態において、このような要素のいくつかは導入される第2の核酸に存在してもよく、それによってこれらの要素はトランスに作用する。宿主細胞における発現に必要な要素は、プロモーター、エンハンサーおよび他の制御要素を含む。それらの要素だけが宿主細胞から提供されず、必要である。
【0031】
本発明によれば、対象となる遺伝子の発現が宿主細胞のゲノムにおいて、特に、発現が必要である発生段階においてサイレンシングされないことが重要である。このことは、さまざまな手段、例えば内因性遺伝子座への挿入または核酸要素を有するカセットの提供により実施できる(Kwaksら、(2006) Trends Biotechnol. 24(3)、137〜142頁; これは参照により本明細書に組み込まれる)。発現カセットが、宿主細胞においてサイレンシングされない遺伝子座に挿入されることが好ましい(EP 01439234; これは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0032】
サイレンシングを防止するための前記手段は、安定化抗抑制(STabilizing Anti-Repression)配列(STAR(登録商標)配列)およびマトリックス付着領域(Matrix Attachment Regions)(MAR)を含む。STAR配列は、遺伝子の転写にシスで影響を与える能力を含む核酸配列である。通常、必ずではないが、STAR配列はそれだけでは機能性タンパク質要素をコードしない。一実施形態において、1種のSTAR要素が使用される。しかし、複数のSTAR要素が使用されることが好ましい。特に好ましい実施形態において、本発明による発現カセットは2種のSTAR配列; 免疫グロブリン遺伝子のコード配列の5'側に1種のSTAR配列および免疫グロブリン遺伝子のコード配列の3'側に1種のSTAR配列を備える。MARは、DNA/クロマチンの核マトリックスへの固定に関与するDNA配列であり、それらは、哺乳動物および植物種の双方において記載されている。MARは、ユークロマチンの開始および維持を容易にする多くの特徴を保有する。MARは、トランス遺伝子の発現を増加させ、位置効果を限定できる。
【0033】
本発明によれば、カセットからの発現が、細胞、特に発生B細胞、より特別にはトランスジェニック非ヒト動物、特にマウス中のB細胞、の発生における特定の期間においてだけ起こることが重要である。この特定の場合において、発生期間はカセット(通常軽鎖または重鎖様ポリペプチド)からの遺伝子の発現が、細胞の正常な分化および/または成熟を実質的に干渉せず、適用可能な場合、産生されたポリペプチド鎖とその対応物のペアリングが可能なように選択される。
【0034】
本発明によれば、一実施形態において、このことは本発明による核酸を提供することによって達成でき、発現の時期を合わせる前記手段は、活性が、発生の特定の段階に本質的に限定されるプロモーターである。例えば免役化後、成熟および/または分化している発生B細胞において、対象となる遺伝子が免疫グロブリンのポリペプチド鎖の1つである場合、その発現が前記成熟および/または分化により(有意に)干渉されてはならず、得られたポリペプチドがその対応物とペアリングできるように時期を合わせる必要がある。したがって、本発明は、本発明による核酸を提供し、前記特定の段階は、成熟B細胞への発生の特定の段階にある前記細胞による、軽鎖分子の発現開始の直前または同時の段階から始まる。
【0035】
このことは、前記適切な期間においてのみ活性であるプロモーターを選択することによって達成できる。このようなプロモーターは、CD19プロモーター、Igαプロモーター、Igβプロモーター、μhc(全遺伝子)プロモーター、Vkプロモーターまたはそれらの類似体または相同体であってよい。
【0036】
本発明の具体的実施形態において、上記のようなプロモーターは、対象となる遺伝子の発現を直接駆動しない。その遺伝子の発現を駆動する代わりに、産物が、対象となる遺伝子の発現をトランスで活性化する。このような活性化遺伝子は、いわゆるCreリコンビナーゼまたはCre-様タンパク質をコードする遺伝子であってよい。対象となる遺伝子のための発現カセットは、例えば対象となる遺伝子の発現を阻害する配列を備えていてもよい。前記配列は、Creリコンビナーゼの作用により除去でき、所望のプロモーター(発生の適切な段階において活性)の制御下にある。この実施形態において、発現カセットのセットが必要である。
【0037】
したがって、本発明は、発現カセットである核酸セットを提供し、1つの核酸は宿主細胞の発生の所望の段階において活性なプロモーターの制御下でCre様タンパク質をコードする発現カセットを含み、第2の核酸は、Cre様タンパク質の作用により活性化され得る構成的プロモーターの制御下で、所望のタンパク性分子をコードする配列を含む。前記活性化は、loxP部位に隣接する終止配列の除去により達成されることが好ましい。Cre/lox系はRajewskyら、(1996) J. Clin. Invest. 98, 600〜603頁、に詳細に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。このような系は、Wunderlich F. T. (2004)、「Generation of inducible Cre systems for conditional gene inactivation in mice」、Inauguraldissertation zur Erlangung des Doktorgrades der Mathematisch-Naturwissenschaftlichen Fakultat der Universitat zu Koln; http://deposit. ddb. de/cgi-bin/dokserv?idn=9755 7230x&dok_var=dl&dok_ext=pdf&filename=9755723 Ox.pdにおいて再考され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
本発明は、本発明による発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物をさらに提供し、所望のタンパク性分子は免疫グロブリンのポリペプチド鎖である。好ましいポリペプチド鎖は軽鎖である。より好ましいポリペプチドは、生殖細胞系列または生殖細胞系列様の軽鎖である。最も好ましいポリペプチドはO12であり、好ましくは再構成された生殖細胞系列κ軽鎖IGKV1-39*01/ IGKJ1*01(IMGTデータベース、http://www.imgt.orgに従って命名)である。
【0039】
ポリペプチド鎖は、B細胞親和性成熟の過程においてIg上で正常に動作するなどの、任意の配列改変の再構成および/または排除が本質的にできなくなることがさらに好ましい。したがって、本発明は、本発明による発現カセットを備えたトランスジェニック非ヒト動物を提供し、前記再構成および/または配列改変は、例えばMoEκiエンハンサーなどの、体細胞超突然変異に少なくとも部分的に関与する要素の不在により防止される。
【0040】
本発明による好ましい発現カセットは、サイレンシング防止のための手段を含む。一実施形態において、サイレンシング防止のための前記手段は、サイレンシングに対して耐性である宿主細胞のゲノム中の遺伝子座への挿入手段である。挿入のための前記手段は、好ましくはサイレンシングに対して耐性である前記部位への相同組換え手段である。非ヒト動物がマウスである場合、好ましい遺伝子座はRosa遺伝子座である。
【0041】
本発明によるさらに好ましい発現カセットは、5'-3'方向に: Vκプロモーター、マウスリーダー、ヒトV遺伝子、場合によりMoEκiエンハンサー、ラット定常領域(Cκ)および場合により(切断型)MoEκ3'エンハンサーを含む。
【0042】
本発明によるその上さらに好ましい発現カセットは、5'-3'方向に: Vκプロモーター、ヒトリーダー、ヒトV遺伝子、場合によりMoEκiエンハンサー、ラット定常領域(Cκ)および場合により(切断型)MoEκ3'エンハンサーを含む。
【0043】
当然のことながら、本発明の最終目的はヒト治療に使用される抗体の作製である。したがって、本発明は、本発明による非ヒト哺乳動物を、抗体応答が誘導されるような抗原に曝露するステップおよび抗原に特異的な抗体を単離するステップを含む、所望の抗体の作製方法を提供する。
【0044】
代替の実施形態において、本発明は、本発明による非ヒト哺乳動物を、抗体応答が誘導されるような抗原に曝露するステップおよびこのような抗体を産生する細胞を単離するステップ、前記細胞を培養し、場合により不死化し、前記抗体を収集するステップを含む所望の抗体の作製方法を提供する。
【0045】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明による非ヒト哺乳動物を、抗体応答が誘導されるような抗原に曝露するステップおよびこのような抗体の少なくとも一部をコードする核酸を単離するステップ、前記核酸あるいはそれらのコピーまたは誘導体を発現カセットに挿入するステップおよび前記抗体を宿主細胞において発現するステップを含む所望の抗体の作製方法を提供する。
【0046】
トランスジェニックマウスから抗体を作製する方法は当業者に公知である。これらの抗体をコードする核酸が本発明によるマウスに由来している、1種の細胞から抗体の混合物を作製する方法は特に好ましい。
【0047】
これらのいわゆるoligoclonicsはWO04106375およびWO05068622に開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
本発明は、好ましくは、生殖細胞系列配置内またはその近くのヒト免疫グロブリン軽鎖可変(VL)領域および好ましくは、抗原駆動性の親和性成熟の過程において体細胞変異を蓄積できる、マウス免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域を用いて、特異的かつ高親和性のハイブリッドマウス-ヒト抗体を産生できるトランスジェニック非ヒト哺乳動物、好ましくはマウスを提供する。このハイブリッド抗体のマウスVH領域をヒト化手順に供し、生殖細胞系列または近生殖細胞系列VL領域に基づくヒトおよびヒト化されたマウスVH領域に適用する場合、免疫原性が低下したmAbを得ることができることが想定される。
【0049】
特に、本発明において、B細胞の発生期間にかなりの割合のB細胞において、トランス遺伝子の、時宜を得た、制御された発現を提供する、シスに作用する遺伝要素の制御下で、再構成されたヒトVL領域をコードするDNA発現構築体を有するが、トランス遺伝子に対する体細胞超突然変異機構を対象とする要素が欠落したトランスジェニックマウスは、本質的に未熟なL鎖を有する、特異的かつ高親和性のマウス-ヒトハイブリッド抗体を産生できることが示された。再構成されたヒトトランス遺伝子は、多様な内因性マウス免疫グロブリンのH鎖とペアリングし、B細胞表面に発現するマウス-ヒトハイブリッド免疫グロブリンを形成でき、マウスB細胞の発生を十分容易にし、かなり大きく多様な抹消B細胞コンパートメントを得ることができることが示される。
【0050】
好ましい実施形態において、トランス遺伝子の発現構築体は、ヒトVLプロモーターの制御下で、ヒト再構成L鎖V領域のコード配列を有し、B細胞特異的発現を対象とする。さらに、この構築体は、B細胞特異的かつ誘導可能かつ高レベル発現のトランス遺伝子に関するマウス3'Ckエンハンサー配列を有する。さらに、この構築体は、トランス遺伝子、例えばイントロンエンハンサーおよび3'Cκエンハンサーに対する体細胞超突然変異機構の採用を容易にする制御要素が欠落するように設計されている。
【0051】
関連する実施形態において、再構成されたヒトVL遺伝子は、部位特異的組み込みによりマウスRosa26遺伝子座に挿入される。Rosa26遺伝子座は、「標的遺伝子組換え」の取り組みの面で、予測可能なトランス遺伝子発現パターンを有するトランスジェニック生物(マウスなど)の効率的な作製にとって有用である。
【0052】
好ましい実施形態において、多様なVH遺伝子レパートリーを有するB細胞集団の産生を確実にするために、再構成ヒトVL領域は、多くのさまざまなマウスVH遺伝子とペアリングするその能力に関して選択される。このようなVL領域を得る方法は、マウスB細胞由来の再構成VH遺伝子のレパートリーおよびヒトB細胞由来のヒト再構成生殖細胞系列VL領域のレパートリーを増幅するステップならびにそれらをファージミドディスプレイベクター内でクローン化し、細菌内にハイブリッド免疫グロブリンの多様なライブラリを調製するステップを含む。非選択性および抗原選択性のVH/VLペアのコレクションのヌクレオチド配列分析により、多数のさまざまなマウスVH遺伝子とペアリングするヒト生殖細胞系列VL遺伝子を同定した。この能力を有するヒト生殖細胞系列VL遺伝子のコレクションを記載する。
【0053】
一実施形態において、抗原を用いた免疫化に関して、B細胞は免疫応答を開始でき、高い特異性および親和性を有するハイブリッド抗体を分泌するB細胞の産生をもたらすことが示される。これらの抗体をコードするV領域は、突然変異が無いまたは非常に少ないヒトトランスジェニック軽鎖および体細胞超突然変異機構により導入された可変数の突然変異を有するマウス重鎖により特徴付けられる。
【0054】
関連する実施形態において、ハイブリドーマおよびディスプレイ技術により、トランスジェニックマウスから高親和性ハイブリッドモノクロナール抗体を得る戦略およびヒトに適用するための免疫原性が低い抗体を得るためにマウスVH領域をヒト化する手順が企図される。
【0055】
一実施形態において、本発明は、ヒト免疫グロブリンVL領域と、動物免疫グロブリンタンパク質の軽鎖定常領域(CL)との組合せをコードするDNA配列を含む免疫グロブリンL鎖のトランス遺伝子構築体を提供し、非ヒトトランスジェニック動物において組み込まれる場合、この配列は、体細胞超突然変異を受けないまたはわずかに受けたヒトVL領域を有するIg VL-CLポリペプチドを作製する転写制御配列と動作可能に連結される。Ig VLは、非ヒトトランスジェニック動物においてB細胞の発生期間に産生される再構成VH-CHポリペプチドとペアリングでき、前記VH-CHポリペプチドは刺激により体細胞超突然変異を受ける能力を保有する。CL領域は、任意の動物種のものであってよく、一般に非ヒトトランスジェニック動物のCH領域とペアリングできる。
【0056】
本発明は、VL-CLポリペプチドからなるハイブリッド抗体を産生できるトランスジェニック非ヒト動物の作製における上記のようなトランス遺伝子構築体の使用ならびにVL領域がヒト起源であり、CL、VHおよびCHが、ヒトを含む任意の動物種のものであり得るVH-CHポリペプチドをさらに含む。免疫化において、これらのトランスジェニック動物は、体細胞超突然変異されたVH遺伝子およびトランス遺伝子によりコードされる本質的に非変異のVL遺伝子によりコードされる高親和性抗体を産生できる。
【0057】
別の態様において、本発明は、内因性免疫グロブリンの軽鎖遺伝子座を機能的に破壊するステップおよび動物ゲノムに本発明のトランス遺伝子構築体を挿入するステップを含む、抗原チャレンジに応答してハイブリッド抗体を産生できるトランスジェニック非ヒト動物の作製方法を提供する。
【0058】
本発明は、ヒトVL軽鎖を有する免疫グロブリンを産生するB細胞の作製において、この方法により得ることができる動物の使用を含む。本発明の別の態様において、ヒトVLを有し、選択された抗原と結合する免疫グロブリンを産生するB細胞の作製方法であって、前記抗原を用いて上記の方法により得ることができる動物をチャレンジするステップおよび前記抗原に結合する前記動物由来のB細胞をスクリーニングするステップを含む作製方法を提供する。本発明は、この方法により得ることができるB細胞およびこのようなB細胞を不死化することによって得ることができるハイブリドーマ、例えば上記のB細胞を骨髄腫細胞と融合することによって得られるハイブリドーマをさらに含む。本発明はまた、このようなハイブリドーマを培養するステップを含む、モノクロナール抗体の作製方法を含む。その上さらなる態様において、本発明は、ハイブリドーマまたは対応するモノクロナール抗体の作製における上記のB細胞の使用を提供する。
【0059】
本発明のその上さらなる態様は、ヒトVL鎖を有し、選択された抗原と結合する免疫グロブリンの作製方法であって、前記抗原を用いて上記のように得ることができる動物をチャレンジするステップおよびそこから免疫グロブリンを得るステップを含む作製方法である。
【0060】
一戦略において、個別のステップとして、ヒト生殖細胞系列のVおよびJ遺伝子セグメントによりコードされる再構成VL領域と、好ましくはマウス以外の任意の動物種の軽鎖定常領域をマウス生殖細胞系列に導入する。トランス遺伝子DNAを、受精卵細胞または胚幹細胞の前核に導入してもよい。組み込みは、採用する特定の戦略次第でランダムであっても相同であってもよい。例えば、VLトランス遺伝子はランダムな挿入により導入でき、ゲノム中にトランス遺伝子の1つまたは複数のコピーを有するマウスが得られる。または、ヒトVLトランス遺伝子は、当分野において記載されている部位特異的組換えを使用して、特定のゲノム遺伝子座を標的にできる。
【0061】
好ましい一実施形態において、VLトランス遺伝子は、挿入されたトランス遺伝子の強力かつ予測可能な発現が可能な適切な組み込み部位である、マウスROSA26遺伝子座を標的としている(EP 1439234)。ターゲティングベクターは、遺伝子発現カセットの単一コピーの挿入を可能にし、したがって、複数コピーの構成によるトランス遺伝子の発現の調節を避けることができる。挿入部位として常染色体のRosa26遺伝子座を選択することにより、非ヒト動物における挿入トランス遺伝子の発現パターンが予測可能になる。さらに、ランダムX不活性化および/または染色体位置効果による調節が避けられる。このことはまた、任意の所与のトランス遺伝子に関する多重トランスジェニック系の作製および分析の必要性を排除する。最終的に、部位特異的組み込みのためのRosa26ターゲティングベクターは、多重遺伝子発現カセットに使用できる。したがって、2つ以上のさまざまな再構成生殖細胞系列のヒトVL領域をRosa26遺伝子座に挿入し、ハイブリッド抗体またはヒト抗体のレパートリーの多様性をさらに増加することが想定できる。
【0062】
別の実施形態において、再構成ヒトVL領域は、内因性遺伝子座を機能的に不活性にするように、マウスIgκまたはλ軽鎖遺伝子座を標的にしてもよく、あるいは再構成ヒトVL領域を含有するマウスを、機能性κもしくはλIg遺伝子座または双方が欠落したマウスと一緒に繁殖させてもよい。したがって、形質転換の使用、反復ステップまたは繁殖との組合せの使用によって、内因性宿主免疫グロブリン軽鎖の実質的不在下で、ヒトVLトランス遺伝子を有する抗体を作製できるトランスジェニック動物を得ることができる。
【0063】
一実施形態において、ヒトVLトランス遺伝子は、マウスVH領域の実質的部分とペアリングし、B細胞の表面上に発現される機能性マウス-ヒトハイブリッド抗体の多様なレパートリーを形成するその能力に関して選択される。マウスVH領域の実質的部分は、B細胞発生期間に産生されたマウスVH領域を、少なくとも0.1%、より好ましくは少なくとも1%、最も好ましくは少なくとも10%有するヒトVLペアを意味する。この特徴を有するヒトVL遺伝子の同定方法は、ヒトVL領域のレパートリーとマウスVH領域のレパートリーとのランダムなペアリング、適切な真核性発現ベクターまたは原核性発現ベクターにおけるVHおよびVL領域の同時発現ならびにマウスVH領域の実質的部分とペアリングするヒトVL領域のスクリーニングを含む。一実施形態において、ファージミドベクターを使用し、細菌細胞中または繊維状ファージの表面にマウス-ヒト抗体断片の直接発現ができ、当分野において公知の方法によって抗体断片の結合能力の分析ができる。
【0064】
別の実施形態において、ヒトVLトランス遺伝子は、ヒトVH領域の実質的部分とペアリングし、B細胞の表面上に発現されるヒト抗体の多様なレパートリーを形成するその能力に関して選択される。ヒトVH領域の実質的部分は、B細胞発生期間に産生されたヒトVH領域を、少なくとも0.1%、より好ましくは少なくとも1%、最も好ましくは少なくとも10%有するヒトVLペアを意味する。
【0065】
後の実施形態において、ヒトVLトランスジェニックマウスを、当分野において記載された、機能的に再構成された、または再構成されていないヒトH鎖免疫グロブリン遺伝子座および機能的に不活性化された内因性H鎖のIg遺伝子座を有するマウスと交配させる。3つの宿主Ig遺伝子座(重鎖、κおよびλ軽鎖)の個々の2つのコピーの機能的不活性化は、宿主がヒトIgHおよび再構成ヒトVLトランス遺伝子を含有する場合、宿主抗体または宿主ヒトキメラ抗体の産生なしに、純粋なヒト抗体分子の作製を可能にすると思われる。特定の抗原を用いた免疫化により、このような宿主系統は、マウスB細胞産生特異的ヒト抗体の産生により応答すると思われ、B細胞はその後マウス骨髄腫細胞と融合される、またはヒトモノクロナール抗体の連続した安定な産生のための任意の他の手法において不死化される。または、前記B細胞集団は、cDNAライブラリの構築によって、または当分野において公知であるヒトVH領域のためのプライマーを使用してPCR増幅によって得ることができる、VH領域の供給源として使用される。
【0066】
ヒト再構成VL遺伝子は、適切な真核性または原核性の微生物において再構築され、得られたDNA断片は、受精マウス卵細胞または胚幹細胞の前核に導入できる。VLトランス遺伝子のB細胞特異的発現を対象とするさまざまな構築体は、当分野において記載されており、以下の一般フォーマットを有する: リーダー配列およびトランス遺伝子のB細胞特異的発現を対象とする関連上流配列、ヒトVLトランス遺伝子のコード配列、トランス遺伝子のB細胞特異的かつ高レベル発現を対象とするエンハンサー配列ならびにマウス定常領域遺伝子。好ましいフォーマットにおいて、エンハンサーは、B系列細胞において高レベル発現を対象とするが、トランス遺伝子構築体において使用した場合、体細胞超突然変異を採用しないので、このエンハンサーはCκ3'エンハンサーである。
【0067】
一実施形態において、ゲノム内にトランス遺伝子の1つまたは複数のコピーを含む動物、好ましくはマウスを、単離し、安定な発現のために分析する。動物は、好ましくはB細胞において、長期にわたってトランス遺伝子の安定な発現を示すように選択される。必要であれば、好ましくは異なる染色体上に、トランス遺伝子の1つまたは複数のコピーの独立した挿入を含む異なる動物系を交配させ、動物において、好ましくはB細胞においてトランス遺伝子の発現を増加する、トランス遺伝子の1つまたは複数のコピーの異なる挿入を有する動物を得る。
【0068】
本発明は、本発明によるトランスジェニック非ヒト動物の子孫をさらに提供し、この子孫は、少なくともそのB細胞系統中に、配列にDNAの再構成および/または体細胞超突然変異に対する耐性をもたらす手段と一緒に、重鎖または軽鎖コード配列を含む。
【0069】
本発明は、本発明によるトランスジェニック非ヒト動物の子孫をさらに提供し、この子孫は、成熟B細胞に発生する細胞中に発生の特定の段階期間にある細胞における所望のタンパク性分子の発現のための発現カセットを含む。
【0070】
さらに本発明は、本発明によるトランスジェニック非ヒト動物から単離された細胞を提供し、この細胞は、配列にDNAの再構成および/または体細胞超突然変異に対する耐性をもたらす手段と一緒に、重鎖または軽鎖コード配列を含む。さらに本発明は、本発明によるトランスジェニック非ヒト動物から単離された細胞を提供し、この細胞は、成熟B細胞に発生する細胞において発生の特定の段階期間にある細胞における所望のタンパク性分子の発現のための発現カセットを含む。本発明による細胞は、好ましくは抗体産生B細胞または抗体産生B細胞内で分化または成熟できる細胞を、当業者に公知である抗体のインビトロ作製、例えば、Gascanら、1991、J. Exp. Med. 173: 747〜750頁に使用できる。本発明による細胞の不死化方法は、当分野において公知であり、例えば骨髄腫細胞との融合、エプスタイン・バー・ウィルス(Epstein Barr Virus)を用いた形質転換; シグナル伝達性転写因子(STAT)の発現、CD40およびIL4受容体のシグナル伝達を介した活性化および/またはBcl6の発現(Shvartsら、2002。Genes Dev 16: 681〜686頁)によるハイブリドーマの作製を含む。
【0071】
個別のステップにおいて、マウス内因性κおよびλ軽鎖遺伝子座は、トランスジェニックマウス中のB細胞の少なくとも過半数が、トランスジェニックヒトVL領域を含有するIg受容体を有するように、本質的に非機能性にされる。内因性マウス免疫グロブリン遺伝子座の不活性化は、マウス胚幹細胞中の相同的組換えにより適切な遺伝子座の標的となる破壊により達成される。前記標的となる破壊は、機能性内因性マウス免疫グロブリンκおよび/またはλ軽鎖が実質的に産生されないようなゲノム配列の変更を含む。「機能性内因性マウス免疫グロブリンが実質的にない」という用語は、内因性κおよび/またはλ軽鎖遺伝子座、好ましくは内因性κ軽鎖遺伝子座の機能性タンパク質の発現レベルが、参照マウスにおける発現レベルの約20%、より好ましくは約10%、より好ましくは約5%、より好ましくは約2%、より好ましくは約1%に減少するように、内因性κおよび/またはλ軽鎖遺伝子座が機能的にサイレンシングされることを示す。最も好ましい実施形態において、内因性κおよび/またはλ軽鎖遺伝子座の機能性タンパク質の発現レベルは0%に減少する。機能性タンパク質の発現レベルは、ウェスタンブロッティングおよびマウス重鎖とのペアリングを含む、当業者に公知の手段で決定できる。前記参照マウスは、内因性κおよび/またはλ軽鎖遺伝子座が破壊していないマウスである。前記変更は、内因性免疫グロブリン遺伝子の機能性発現に必要な遺伝子配列の突然変異および/または欠失を含む。または、前記変更は、内因性免疫グロブリン遺伝子の機能性発現が減少するような、内因性マウス免疫グロブリンκおよび/またはλ軽鎖遺伝子座への核酸の挿入を含む。一実施形態において、前記核酸は、内因性免疫グロブリン遺伝子の転写サイレンシングをもたらすサイレンシング要素を含む。さらなる実施形態において、またはさらに、前記核酸は、例えば、コード配列においてフレームシフトをもたらす、または未熟な終止コドンを含むエクソンを導入することによって、内因性免疫グロブリン遺伝子のスプライシングおよび/または翻訳を破壊する配列を含む。個々の場合において、一部は改変胚幹細胞に由来し、生殖細胞系列を介して遺伝的改変を伝達できるキメラ動物が作製される。ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するマウス系統と不活性化マウス遺伝子座を有する系統との交配は、本質的にヒト軽鎖だけを含む抗体を産生する動物をもたらす。
【0072】
相同組換えのための構築体を、当分野に置いて公知の手段により調製し、任意の望ましくない配列、例えば、原核生物配列を除去する。相同組換えのための構築体を標的細胞に導入するための任意の簡便な技術を用いることができる。これらの技術は、スフェロプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム法(calcium phosphate-mediated DNA transfer)または直接マイクロインジェクションを含む。標的細胞の形質転換または形質移入後、標的細胞を陽性マーカーおよび/または陰性マーカーの手段により、例えば、ネオマイシン耐性および/またはアシクロビルおよび/またはガンシクロビルの耐性により選択される。所望の表現型を示すそれらの細胞は、その後制限分析、電気泳動、サザン分析、PCRなどによりさらに分析される。標的遺伝子座に損傷の存在を示す断片を同定することにより、相同組換えが起こり、標的遺伝子座のコピーが不活性化される細胞が同定される。
【0073】
さらに、免疫化において、前述のトランスジェニックマウス中のマウスおよびヒトVH領域は体細胞超突然変異を受け、高親和性抗体を産生できるが、VL領域はできないことが示されている。有利なことには、生殖細胞系列VL領域によりコードされるこれらの抗体は、ヒトに適用した場合、免疫原性の低下に寄与することが予測され、凝集しにくいより安定な抗体がもたらされ、したがってヒトの治療的使用にとってより安全である。
【0074】
前述の非ヒトトランスジェニック動物または細胞に由来するMAbはすべて、同じ同一のヒトVL領域を共有する。同じ同一のVL領域を共有するmAbが単一のクローン細胞において、機能的結合部位を有する組換え抗体の混合物の産生のために同時発現できることは記載されている(WO04106375およびWO05068622を参照されたい)。したがって、本発明は、クローン細胞により産生されるmAbの混合物の基礎を構成する、特異的かつ高親和性のmAbの作製に関する基盤を提供する。
【0075】
前述の非ヒトトランスジェニック動物または細胞に由来するmAbは、細胞標的を対象とすることが好ましい。好ましい標的は、ヒト表面発現もしくは可溶性のタンパク質または炭水化物分子である。さらに好ましい標的は、細菌、ウィルスおよび他の、特にヒトの病原体の表面上で発現する、表面発現タンパク質または炭水化物分子である。
【0076】
より具体的には、好ましい標的は、限定するものではないが、インターロイキン1β(IL1β)、IL2、IL4、IL5、IL7、IL8、IL12、IL13、IL15、IL18、IL21、IL23およびケモカイン、例えばCXCケモカイン、CCケモカイン、XCL1(リンホタクチン-α)およびXCL2(リンホタクチン-β)などのCケモカイン(γケモカイン)、ならびにCX3Cケモカインを含むサイトカインおよびケモカインを含む。好ましい標的は、I型サイトカイン受容体、例えばIL-2受容体、インターフェロン受容体などのII型サイトカイン受容体、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー受容体、CD40、CD27およびCD30のための受容体を含む腫瘍壊死因子受容体ファミリー、TGFβ受容体などのセリン/スレオニンタンパク質キナーゼ受容体、CXCR1-CXCR 7などのG-タンパク質結合受容体ならびに線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)ファミリーのメンバーなどのチロシンキナーゼ受容体、erbB1(EGF-R; HER1)、erbB2(HER2)、erbB3(HER3)およびerbB4(HER4)を含むEGF受容体ファミリーのメンバー、IGF-R1およびIGF-RIIを含むインスリン受容体ファミリーのメンバー、PDGF受容体ファミリーのメンバー、c-Met(HGF-R)を含む肝細胞成長因子受容体ファミリーのメンバー、Trk受容体ファミリーのメンバー、AXL受容体ファミリーのメンバー、LTK受容体ファミリーのメンバー、TIE受容体ファミリーのメンバー、ROR受容体ファミリーのメンバー、DDR受容体ファミリーのメンバー、KLG受容体ファミリーのメンバー、RYK受容体ファミリーのメンバー、MuSK受容体ファミリーのメンバーおよび血管内皮成長因子受容体(VEGFR)ファミリーのメンバーを含むサイトカインおよびケモカインの受容体分子を、さらに含む。
【0077】
さらに好ましい標的は、腫瘍において過剰発現するまたは選択的に発現する標的、例えばVEGF、CD20、CD38、CD33、CEA、EpCAM、PSMA、CD54、Lewis Y、CD52、CD40、CD22、CD51/CD61、CD74、MUC-1、CD38、CD19、CD262(TRAIL-R2)、RANKL、CTLA4およびCD30であり; 慢性炎症に関与する標的、例えばCD25、CD11a、TNF、CD4、CD80、CD23、CD3、CD14、IFNγ、CD40L、CD50、CD122、TGFβおよびTGFαである。
【0078】
細菌、ウィルスおよび他の、特にヒトの病原体の表面上で発現する、好ましい表面発現タンパク質または炭水化物分子は、例えばヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)などのインフルエンザAおよびBウィルス(influenza A and B viruses)の表面マーカー、エボラウィルス(Ebola virus)などのフィロウィルス(filoviruses)、狂犬病、はしか、風疹、流行性耳下腺炎、1型〜4型デングウィルス(Dengue virus types 1-4)、ダニ媒介性脳炎ウィルス(tick-borne encephalitis virus)、西ナイルウィルス(West Nile virus)、日本脳炎ウィルス(Japanese encephalitis virus)および黄熱病ウィルス(Yellow fever virus)などのフラビウィルス(flaviviruses)、パラインフルエンザ(Parainfluenza)1、3などのパラミクソウィルス(Paramyxovirus)を含むパラミクソウィルス、ムンプウィルス(Mumpsvirus)およびパラインフルエンザ2、4などのルブラウィルス(Rubulavirus)、呼吸器合胞体ウィルス(Respiratory syncytial virus)などのモルビリウィルス(Morbillivirus)およびニューモウィルス(Pneumovirus)、ワクチニア、天然痘、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウィルス(Severe Acute Respiratory Syndrome (SARS) virus)を含むコロナウィルス、A、BおよびC型肝炎ウィルス(hepatitis virus)、ヒト免疫不全ウィルス(Human Immunodeficiency Virus)、サイトメガロウィルス(cytomegalovirus)、エプスタイン・バー・ウィルス(Epstein Barr virus)、単純ヘルペスウィルス(Herpes simplex virus)および水痘帯状疱疹ウィルス(Varicella zoster virus)を含むヘルペスウィルス、バルボウィルス例えばB19; レジオネラニューモフィラ(Legionella pneumophila); リステイラ・モノサイトゲス(Listeria monocytogenes); カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni): 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus): 大腸菌(E. coli)O157: H7: ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi): ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori: エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis): クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile): コレラ菌(Vibrio cholera): 腸チフス菌(Salmonella enterica Serotype Typhimurium): バルトネラ・ヘンセラ(Bartonella henselae): 化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌): ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌): 多剤耐性黄色ブドウ球菌(Multiple drug resistant S. aureus)(例えばMRSA): クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae): ボツリヌス菌(Clostridium botulinum): ビブリオ・バルニフィカ(Vibrio vulnificus): パラクラミジア・ニューモニエ(Parachlamydia pneumonia): コリネバクテリウム・アミコラツム(Corynebacterium amycolatum): クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumonia): リネゾリド耐性エンテロコッカス(Linezolid-resistant enterococci )(エンテロコッカス・フェーカリス(E. faecalis)およびエンテロコッカス・フェシウム(E. faecium): ならびに多剤耐性アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)の表面マーカーを含む。
【0079】
最も好ましい標的は、IL-6およびその受容体、IL-6Rα、gpl30と称される糖タンパク質、RSV、特に表面タンパク質F、GおよびSHならびにNおよびMなどの非構造タンパク質ならびに受容体チロシンキナーゼ、特にerbB1(EGF-R; HER1)、erbB2(HER2)、erbB3(HER3)、erbB4(HER4)、IGF-R1およびIGF-RII、c-Met(HGF-R)である。
【0080】
したがって、本発明は、クローン細胞により産生されるmAbの混合物の基礎を構成する、前述の標的に対する特異的かつ高親和性のmAbの作製に関する基盤を提供する。好ましい実施形態において、前記特異的かつ高親和性のmAbは、標的の少なくとも1つにおけるさまざまなエピトープを対象とするmAbを含む。さらに好ましい実施形態において、前記特異的かつ高親和性のmAbは、さまざまな標的、例えばerbB1(EGF-R; HER1)、erbB2(HER2)、erbB3(HER3)およびerbB4(HER4)を含むEGF-受容体ファミリーの1つまたは複数のメンバーを対象にするmAbを含む。
【0081】
定義しない限り、本発明に関連して使用される科学用語および技術用語は、普通の当業者により一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈により必要でない限り、単数形の用語は複数を含み、複数形の用語は単数を含む。全般に、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学ならびにタンパク質およびオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド化学ならびにハイブリダイゼーションに関連して利用される命名およびその技術は、周知のものであり、当分野において一般的に使用される。組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成および組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)には、標準的技術が使用される。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様書に従って、または当分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載のように実施する。前述の技術および手順は、当分野において周知の従来技術に従って、およびさまざまな通則および本明細書を通して引用および言及されるより具体的な参考文献に記載されるように実施される。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第3版Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y. (2001))を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学および医薬薬学化学に関連して利用される命名ならびにその実験手順および技術は、周知のものであり、当分野において一般的に使用される。化学合成、化学分析、医薬品調製、処方および送達ならびに患者の治療には、標準的技術を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】マウス特異的VHプライマーのアニーリング配置およびプライマーの3'末端の突出配列により導入される所要の制限部位の場所のトポロジーマップである。
【図2】PCR増幅ステップ(増幅、中間体および部位導入)の図である。マウスVH増幅プライマー(およびプライマーの混合物)の場所および名称をステップごとに示す。
【図3】MV1043ベクターのトポロジーの図である。このベクターは、ヒトまたはマウスのVH断片のクローン化に使用する。O12(IGKV1-39)は、VL遺伝子を示す。大腸菌細胞におけるこのベクターとヘルパーファージとの組合せの産物は、g3タンパク質との融合産物として、ファージ粒子の表面上にFab断片を提示するファージの産生および遺伝内容(F1 Ori)としてファージ中にベクターの存在することを可能にする。
【図4】J-セグメントの下流のマウスCκ遺伝子座のトポロジーの図である。エンハンサーおよびCκ領域の双方を示す。下方の矢印は、遺伝子座のサイレンシングのために除去された領域を示す。
【図5】マウスCλ遺伝子座のトポロジーの図である。3つすべての活性V領域(Igl-V1、V2およびV3)を示し、J-セグメント(Igl-J1、Igl-J2、Igl-J3、Igl-J4および擬似セグメントIgl-J3p)および定常領域(Igl-C1、Igl-C2、Igl-C3およびIgl-C4)を示す。遺伝子座のサイレンシングのために欠失された領域を欠失マーカーにより示す。これらの欠失は、活性V遺伝子(1、2および3)すべて、およびV2およびV3の間の遺伝子間セグメントを含む。
【図6】リーダーオープンリーディングフレーム(ORF)中にイントロンが配置されたIGKV1-39/J-Ckの構成トポロジーである。
【図7】リーダーオープンリーディングフレーム(ORF)中にイントロンが配置されたIGLV2-14/J-Ckの構成トポロジーである。
【図8】VkP-IGKV1-39/J-Ck(VkP-O12)の構成トポロジーである。このプロモーターは、IGKV1-39遺伝子を起源とし、有効な転写および翻訳のために必要な要素の前に直接位置する。(エンハンサーを含む)遺伝子間配列は、マウスに由来し、BACクローンから得られる。Cκ配列は、ラットのκ定常領域をコードする。
【図9】VkP-IGLV2-14/J-Ck(VkP-2a2)の構成トポロジーである。このプロモーターは、IGKV1-39遺伝子を起源とし、有効な転写および翻訳のために必要な要素の前に直接位置する。(エンハンサーを含む)遺伝子間配列は、マウスに由来し、BACクローンから得られる。Cκ配列は、ラットのκ定常領域をコードする。
【図10】イントロンエンハンサー領域が除去された以外は図9のVkP-IGKV1-39/J-Ckと同一である、VkP-IGKV1-39/J-Ck-Δ1(VkP-O12-del1)の構成トポロジーである。
【図11】Ck遺伝子および3'エンハンサーの間の遺伝子間領域の大きな1片が欠失している以外は図10のVkP-IGKV1-39/J-Ck-Δ1と同一である、VkP-IGKV1-39/J-Ck-Δ2(VkP-O12-del2)の構成トポロジーである。さらに、3'エンハンサーは809bpから125bpの大きさに縮小されている。
【図12−1】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−2】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−3】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−4】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−5】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−6】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−7】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−8】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−9】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−10】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−11】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−12】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−13】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−14】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−15】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−16】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−17】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−18】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−19】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−20】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−21】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図12−22】本出願において使用し、言及する配列の概要である。
【図13−1】(A)Rosa26-IgVk1-39 KI対立遺伝子の作製の図である。pCAGGS-IgVK1-39ターゲティングベクターの略図である。
【図13−2】(B)pCAGGS-IgVK1-39ターゲティングベクターのヌクレオチド配列である。
【図13−3】(B)pCAGGS-IgVK1-39ターゲティングベクターのヌクレオチド配列である。
【図13−4】(B)pCAGGS-IgVK1-39ターゲティングベクターのヌクレオチド配列である。
【図13−5】(B)pCAGGS-IgVK1-39ターゲティングベクターのヌクレオチド配列である。
【図13−6】(B)pCAGGS-IgVK1-39ターゲティングベクターのヌクレオチド配列である。
【図13−7】(B)pCAGGS-IgVK1-39ターゲティングベクターのヌクレオチド配列である。
【図13−8】(C)Rosa26-IgVk1-39 KI対立遺伝子の作製の図である。ターゲティング戦略の図である。
【図14−1】(A)pCAGGS-IgVK1-39ターゲティングベクターの挿入を含むESクローンのゲノムDNAのサザンブロット分析の図である。4種の独立したクローンのゲノムDNAを、AseIを用いて消化し、ターゲティングベクターの5'ボーダーを示す5e1を用いてプロービングする。すべてのクローンは、5'末端にターゲティングベクターの正確な挿入を含む。(B)pCAGGS-IgVK1-39ターゲティングベクターの挿入を含むESクローンのゲノムDNAのサザンブロット分析の図である。4種の独立したクローンのゲノムDNAを、Msclを用いて消化し、ターゲティングベクターの3'ボーダーを示す3e1を用いてプロービングする。すべてのクローンは、3'末端にターゲティングベクターの正確な挿入を含む。
【図14−2】(C)pCAGGS-IgVK1-39ターゲティングベクターの挿入を含むESクローンのゲノムDNAのサザンブロット分析の図である。4種の独立したクローンのゲノムDNAを、BamHIを用いて消化し、ターゲティングベクターの5'ボーダーを示す内部Neoプローブを用いてプロービングする。すべてのクローンは、ターゲティングベクターの正確な単一の挿入を含む。
【図15−1】(A)Rosa26- IgVl2-14 KI対立遺伝子の作製の図である。pCAGGS-IgVL2-14ターゲティングベクターの略図である。
【図15−2】(B)Rosa26- IgVl2-14 KI対立遺伝子の作製の図である。再構成生殖細胞系列IGLV2-14/J Vλ領域(IGLV2-14/J-Ck)に基づくCAGGS発現インサートを含有する、pCAGGS-IgVL2-14ターゲティングベクターのヌクレオチド配列である。
【図15−3】(B)再構成生殖細胞系列IGLV2-14/J Vλ領域(IGLV2-14/J-Ck)に基づくCAGGS発現インサートを含有する、pCAGGS-IgVL2-14ターゲティングベクターのヌクレオチド配列である。
【図15−4】(B)再構成生殖細胞系列IGLV2-14/J Vλ領域(IGLV2-14/J-Ck)に基づくCAGGS発現インサートを含有する、pCAGGS-IgVL2-14ターゲティングベクターのヌクレオチド配列である。
【図15−5】(B)再構成生殖細胞系列IGLV2-14/J Vλ領域(IGLV2-14/J-Ck)に基づくCAGGS発現インサートを含有する、pCAGGS-IgVL2-14ターゲティングベクターのヌクレオチド配列である。
【図15−6】(B)再構成生殖細胞系列IGLV2-14/J Vλ領域(IGLV2-14/J-Ck)に基づくCAGGS発現インサートを含有する、pCAGGS-IgVL2-14ターゲティングベクターのヌクレオチド配列である。
【図15−7】(B)再構成生殖細胞系列IGLV2-14/J Vλ領域(IGLV2-14/J-Ck)に基づくCAGGS発現インサートを含有する、pCAGGS-IgVL2-14ターゲティングベクターのヌクレオチド配列である。
【図15−8】(C)Rosa26- IgVl2-14 KI対立遺伝子の作製の図である。ターゲティング戦略の図である。
【図16−1】(A)IGKV1-39の残基1〜107のEpibase(登録商標)プロファイルの図である。DRB1アロタイプの結合強度を表す図である。図中の値は、解離定数(Kd)を表し、0.01μM〜0.1μM(非常に強力なバインダーはプロットから外れる)の範囲において対数尺度でプロットされる。中程度の結合ペプチドに関しては、定性的値のみを示し、弱いバインダーおよび非バインダーは示さなかった。値を、標的配列中のペプチドの最初の残基に関してプロットする(ペプチドそれ自体は別の9残基により伸張する)。重要なことには、個々のペプチドに関して、最も強力な結合受容体だけを示す: 低親和性の交差反応性アロタイプは、このプロットにおいて可視化できない。最も強力な結合受容体は、その血清型名で示す。最終的に、任意の生殖細胞系列のフィルター処理ペプチドをこのエピトープマップに明るい色でプロットした(この場合、非自己エピトープは発見されなかった)。
【図16−2】(B)各十量体ペプチドのHLA結合の乱雑性を示す図である(Y軸: X軸に示した表示の残基から始まり個々のペプチド中の重要なエピトープを認識するHLAアロタイプの数)。乱雑性は、ペプチドが重要なバインダーである合計47のうちからのアロタイプの数として測定する。白いカラムは自己ペプチドおよび黒いカラム(ここには存在しない)は非自己ペプチドを指す。
【図16−3】(C)IGKV1-39の残基1〜107のEpibase(登録商標)プロファイルの図である。DRB3/4/5、DQおよびDPアロタイプの結合強度を表す図である。図中の値は、解離定数(Kd)を表し、0.01μM〜0.1μM(非常に強力なバインダーはプロットから外れる)の範囲において対数尺度でプロットされる。中程度の結合ペプチドに関しては、定性的値のみを示し、弱いバインダーおよび非バインダーは示さなかった。値を、標的配列中のペプチドの最初の残基に関してプロットする(ペプチドそれ自体は別の9残基により伸張する)。重要なことには、個々のペプチドに関して、最も強力な結合受容体だけを示す: 低親和性の交差反応性アロタイプは、このプロットにおいて可視化できない。最も強力な結合受容体は、その血清型名で示す。最終的に、任意の生殖細胞系列のフィルター処理ペプチドをこのエピトープマップに明るい色でプロットした(この場合、非自己エピトープは発見されなかった)。
【図17】15-merフォーマットにおいて血清型IGKV1-39の配列中に予測されるペプチドバインダーの存在を示す、IGKV1-39のエピトープマップの図である。個々の15-merは、図の上端に示したように番号付けされる。対応する15-merの全配列は、Table 7(表7)に記載する。黒い四角は、左に記載の血清型に関する15-mer中の、1つまたは複数の重要な自己エピトープの存在を示す。重要なエピトープは、強力または中程度のDRB1バインダーおよび強力なDRB3/4/5またはDPもしくはDQバインダーとして操作上定義される。
【図18−1】(A)Igκ遺伝子座の構成的ノックアウト(KO)の図である。ターゲティング戦略。
【図18−2】(B)Igκ遺伝子座の構成的ノックアウト(KO)の図である。pIgκターゲティングベクターの略図である。
【図19−1】(A)Igλ遺伝子座の構成的KOの図である。ターゲティング戦略の第1ステップ。
【図19−2】(B)Igλ遺伝子座の構成的KOの図である。ターゲティング戦略の第2ステップ。
【図20−1】(A)ターゲティングベクター、pVkP-O12(VkP-IGKV1-39/J-Ck)の略図である。
【図20−2】(B)ターゲティングベクター、pVkP-O12-del1(VkP-IGKV1-39/J-Ck-Δ1)の略図である。
【図20−3】(C)ターゲティングベクター、pVkP-O12-de12(VkP-IGKV1-39/J-Ck-Δ2)の略図である。
【図21−1】(A)標的遺伝子組換えによって、RMCEを使用して、トランス遺伝子、VkP-O12(VkP-IGKV1-39/J-Ck)をRosa26遺伝子座に挿入するためのターゲティング戦略の図である。
【図21−2】(B)標的遺伝子組換えによって、RMCEを使用して、トランス遺伝子、VkP-O12-del1(VkP-IGKV1-39/J-Ck-Δ1)をRosa26遺伝子座に挿入するためのターゲティング戦略の図である。
【図21−3】(C)標的遺伝子組換えによって、RMCEを使用して、トランス遺伝子、VkP-O12-de12(VkPIGKV1-39/J-Ck-Δ2)をRosa26遺伝子座に挿入するためのターゲティング戦略の図である。
【図22】MV1057ベクターのトポロジーの図である。表示のスタッファー断片とVH断片との置き換えにより、O12(IGKV1-39)VL遺伝子を含有する軽鎖を有する抗体IgG1作製のための、真核細胞に形質移入できる発現ベクターが得られる。
【図23】脾臓の非B細胞集団において、トランスジェニックヒトVk1軽鎖の発現が欠落した図である。
【図24】脾臓の全B細胞集団において、トランスジェニックヒトVk1軽鎖が発現した図である。
【図25】腹腔のB1細胞において、トランスジェニックヒトVk1軽鎖が発現した図である。
【図26−1】(A)トランスジェニックヒトVk1軽鎖がプロB細胞およびプレB細胞において発現しないが、未熟および骨髄において再循環する集団B細胞において発現する図である。骨髄細胞のゲーティングの図である。
【図26−2】(B)トランスジェニックヒトVk1軽鎖がプロB細胞およびプレB細胞において発現しないが、未熟および骨髄において再循環する集団B細胞において発現する図である。1種のWT対照から並べたトランス遺伝子発現のヒストグラムである。
【図27】トランスジェニックヒトVk1軽鎖が、血中循環B細胞において、内因性軽鎖およびIgMの発現と直接相関する図である。
【0083】
(実施例)
(実施例1)
ヒト軽鎖V遺伝子クローン
本実施例は、2種のヒト軽鎖V遺伝子、1種の遺伝子はκ型および1種の遺伝子はλ型の選択の背景にある論理的証拠を説明し、軽鎖発現トランスジェニックマウスに関する概念の証明として使用される。De Wildtら、1999(de Wildtら、(1999) J. Mol. Biol. 285(3): 895頁)は、末梢IgG陽性B細胞におけるヒト軽鎖の発現を分析した。これらのデータに基づき、IGKV1-39(O12)およびIGLV2-14(2a2)はB細胞レパートリーにおいて十分提示されていたので、IGKV1-39(O12)およびIGLV2-14(2a2)を軽鎖として選択した。軽鎖のJ-セグメント配列は、IGKV1-39はGenBank ABA26122で(Rabquer, B.J.、Smithson, S.L.、Shriner, A.K.およびWesterink, M.A.J.)およびIGLV2-14はGenBank AAF20450(Ignatovich, O.、Tomlinson, I.M.、Popov, A.V.、Bruggemann, M.およびWinter, G. J. Mol. Biol. 294 (2), 457〜465頁(1999))で表される配列に基づき選択されている。
【0084】
全フレームワークセグメントは、生殖細胞系列のアミノ酸配列に変換され、潜在的臨床応用において最も免疫原性の低い候補を提供する。
【0085】
(実施例2)
ヒトIGKV1-39遺伝子セグメントとペアリングし、機能性抗体結合部位を形成するマウス重鎖V遺伝子の獲得
本実施例は、単一の再構成ヒト生殖細胞系列IGKV1-39/J領域とペアリングできるマウス重鎖V遺伝子の同定を記載する。破傷風トキソイドを用いて免疫化されたマウスに由来する脾臓のVHレパートリーを、単一のヒトIGKV1-39-Cκ軽鎖を用いてファージディスプレイFabベクター内にクローン化し、破傷風トキソイドに対するパニングに供した。1ラウンドのパニング後に得られたクローンを、それらの結合特異性に関して分析した。破傷風トキソイド特異的Fab断片をコードするマウスVH遺伝子を、配列分析に供し、唯一のクローンを同定し、VH、DHおよびJHの利用を指定した。
【0086】
本明細書に記載の多くのプロトコルは、ファージディスプレイライブラリの構築のための標準的プロトコルおよび対象となる抗原との結合に関するファージのパニングであり、Antibodies Phage Display: Methods and Protocols(編者: Philippa M. O'Brien、Robert Aitken)に記載されている。
【0087】
免疫化
BALB/cマウスに、破傷風トキソイドを用いた免疫化を1回行い、6週間後に、破傷風トキソイドを用いて追加免疫した。
【0088】
脾細胞の単離
脾臓細胞懸濁液の調製。解剖後、脾臓を、PBSを用いて洗浄し、20mlのPBSを含む60mmペトリ皿に移した。20mlのPBSを含む、キャップをした注射器およびG20の針を使用して、脾臓を繰り返し洗い流した。洗い流した細胞を、PBSを用いて洗浄後、20mlのPBSを使用して、細胞を慎重に懸濁液にし、5分間ベンチに放置し、脾細胞を、デブリおよび細胞クラスターから分離した。脾細胞懸濁液をFicoll-Paque(商標)PLUSを満たしたチューブの上端に移し、リンパ球の単離のために製造業者(Amersham Biosciences)の手順に従って処理した。
【0089】
RNAの単離およびcDNAの合成
リンパ球の単離およびペレット化の後で、細胞を全RNAの単離のために、添付の製造業者のプロトコルに従ってTRIzol LS Reagent(Invitrogen)に懸濁し、1マイクログラムのRNA、Superscript III RTとdT20との組合せを使用して、製造業者の手順(Invitrogen)に従って逆転写反応に供した。
【0090】
cDNAのPCR増幅
cDNAを、15 VHファミリーに属するおよそ110のさまざまなマウスV遺伝子の増幅を可能にするプライマーの組合せを使用して、PCR反応において増幅した(Table 1(表1); RefSeq NG_005838; Thiebeら、1999。European Journal of Immunology 29: 2072〜2081頁)。第1ラウンドにおいて、V遺伝子の5'末端およびJ領域の3'末端に結合するプライマーの組合せを使用した。第2ラウンドにおいて、MJH-Rev2プライマーを用いて作製されたPCR産物を、3'領域に改変を導入し、産物の有効なクローン化を可能にするために増幅した。増幅の最終ラウンドにおいて、全PCR産物を、5'末端にSfil制限部位および3'末端にBstEII制限部位を導入するプライマーを使用して増幅した(図1および2、ならびにTable 1(表1)を参照されたい)。
【0091】
第1ラウンドPCRの反応条件: 1反応当たり全25種のフォワードプライマー(MVH1からMVH25、Table 1(表1)および図2)と、1種のリバースプライマー(MJH-Rev1、MJH-Rev2、MJH-Rev3またはMJH-Rev4; Table 1(表1)および図2を参照されたい)を組み合わせる、4つの異なる反応。50マイクロリットルのPCR容量は、2マイクロリットルのcDNA(RT反応から)、10マイクロリットルの5* PhusionポリメラーゼHF緩衝液、40nMの個々の25フォワードプライマー(全濃度が1マイクロモル)、1マイクロモルのリバースプライマー、1マイクロリットルの10mM dNTPストック、1.25単位のPhusionポリメラーゼおよび滅菌MQ水で構成される。熱サイクルプログラムはタッチダウンプログラムからなる: 98℃で30秒間を1サイクル、98℃で10秒間、58℃からサイクルごとに0.2℃下げて10秒、72℃ 20秒を30サイクルおよび72℃で3分間を1サイクル。第2ラウンドのPCRプログラムは、MJH-Rev2プライマーを含有する第1PCRの産物のためだけに設定した: ExtMVH-1またはExtMVH-2プライマーのどちらかと(Table 1(表1)および図2)リバースプライマーExtMJH-Rev2int(Table 1(表1)および図2)を組み合わせる、2つの異なる反応。50マイクロリットルのPCR容量は、50ngのPCR産物(第1のPCRラウンドから)、10マイクロリットルの5* PhusionポリメラーゼHF緩衝液、500nMの各フォワードプライマー、1マイクロモルのリバースプライマー、1マイクロリットルの10mM dNTPストック、1.25単位のPhusionポリメラーゼおよび滅菌MQ水で構成される。熱サイクルプログラムは、タッチダウンプログラム、その後の定型の増幅ステップからなる; 98℃で30秒間を1サイクル、98℃で10秒間、65℃からサイクルごとに1.5℃下げて10秒、72℃20秒を10サイクル、98℃で10秒、55℃で10秒、72℃で20秒を10サイクルおよび72℃で3分間を1サイクル。第3ラウンドのPCRプログラムは、図2に記載のように設定した。50マイクロリットルのPCR容量は、50ngのPCR産物(早期PCRラウンドから、図2)、10マイクロリットルの5* PhusionポリメラーゼHF緩衝液、1マイクロモルのフォワードプライマー(Table 1(表1)および図2)、1マイクロモルのリバースプライマー、1マイクロリットルの10mM dNTPストック、1.25単位のPhusionポリメラーゼおよび滅菌MQ水から構成される。このプログラムは、タッチダウンプログラム、その後の定型の増幅ステップからなる: 98℃で30秒を1サイクル、98℃で10秒間、65℃からサイクルごとに1.5℃下げて10秒、72℃で20秒間を10サイクル、98℃で10秒、55℃で10秒、72℃で20秒を10サイクルおよび72℃で3分間を1サイクル。PCR増幅後、全PCR産物を、Qiaex IIを使用して製造業者のプロトコルに従ってゲル精製した。
【0092】
制限酵素消化
精製した産物を、BstEIIおよびSfiIを用いて、2ステップで消化した。まず、1マイクログラムのDNAを、10マイクロリットルの10* NEB緩衝液3(New England Biolabs)、1マイクロリットルの100*BSA、12.5単位のBstEIIおよび滅菌水からなる、100マイクロリットル反応液中で、ストーブにおいて60℃で6時間消化した。この産物を、Qiagen社によるQiaquick PCR Purificationキットを使用して、取り扱い説明書に従って精製し、40マイクロリットルの水に溶出した。次に、全産物をSfiIを用いて、10マイクロリットルの10* NEB緩衝液2(New England Biolabs)、1マイクロリットルの100*BSA、12.5単位のSfiIおよび滅菌水からなる、100マイクロリットルの反応液中で、ストーブにおいて50℃で12時間消化した。消化された断片を、20cmの1.5%アガロースTBE+臭化エチジウムゲル上で、80Vにおけるゲル分離後、Qiaquick Gel Extractionキットにより精製した。100マイクログラムのアクセプターベクター(MV1043、図3および12)を、50単位のEco91Iを用いて、標準条件下で600マイクロリットル(Tango緩衝液)中で消化し、次に、0.9%のアガロースゲル上で精製した。規定条件下で400単位のSfilを用いて、500マイクロリットル中で12時間の第2の消化ステップ後、100単位のBsrGIを50℃で3時間加えた。
【0093】
連結
個々のPCR産物を、以下のスキームに従って個別に連結した: 70ngの消化PCR産物、300ngの消化アクセプターベクター、100単位のT4リガーゼ(NEB)、1*リガーゼ緩衝液30マイクロリットル中で、12℃において16時間。連結反応液をフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出液を用い、その後製造業者のプロトコルに従って、グリコーゲン沈降(Sigma-Aldrich #G1767)によって精製し、最終的に25マイクロリットルの滅菌水に溶解した。
【0094】
形質転換およびライブラリの保存
精製連結産物を、1200マイクロリットルのTG1エレクトロコンピテント細菌(Stratagene #200123)/連結バッチを使用して、エレクトロポレーションによって形質転換し、4%グルコース含有LBカルベニシリンプレート上に播種した。ライブラリを、50ml LBカルベニシリン中の細菌を掻き取ることによって収集した。2000gで、4℃において20分間遠心分離した後、細菌のペレットを、氷水上で2mlの氷冷2*TY/30%グリセロールに慎重に再懸濁し、ドライアイス/エタノール上で凍結後-80℃において保存した。
【0095】
ライブラリの増幅
ライブラリを、Kramerら、2003(Kramerら、2003。Nucleic Acids Res. 31(11): e59)により記載された手順に従って、ヘルパーファージ株としてVCSM13(Stratagene)を使用し、成長させ、収集した。
【0096】
コーティングしたイムノチューブ(immunotubes)におけるファージの選択
破傷風トキソイドを、2μg/mlの濃度でPBSに溶解し、MaxiSorp Nunc-Immuno Tube(Nunc 444474)に4℃において一晩コーティングした。コーティング溶液を廃棄後、このチューブを、PBS(ブロッキング緩衝液)中2%のスキムミルク(ELK)を用いて、RTにおいて1時間ブロッキングした。平行して、0.5mlのファージライブラリを、1mlのブロッキング緩衝液と混合し、室温において20分間インキュベートした。ファージをブロッキング後、ファージ溶液を破傷風トキソイドコーティングチューブに加え、ゆっくりと回転する基盤上で、RTにおいて2時間インキュベートし、結合させた。次に、チューブをPBS/0.05% Tween-20を用いて10回洗浄し、その後、1mlの50mMグリシン-HCl、pH2.2と一緒に、RTにおいて10分間、回転盤上でインキュベートすることによってファージを溶出し、次いで、0.5mlの1M Tris-HCl、pH7.5を用いて収集した溶出液を直接中和した。
【0097】
ファージクローンの収集
O.D. 0.4の5mlのXL1-Blue MRF(Stratagene)培養液を、収集したファージ溶液に加え、振とうせずに37℃において30分間インキュベートし、ファージを感染させた。細菌を、カルベニシリン/テトラサイクリン、4%グルコース2*TYプレート上に播種し、37℃において一晩成長させた。
【0098】
ファージの作製
ファージを、Kramerら、2003(Kramerら、2003。Nucleic Acids Res. 31(11): e59)により記載されたように、ヘルパーファージ株としてVCSM13を使用して成長させ、処理した。
【0099】
ファージのELISA
ELISAプレートを、PBS中2マイクログラム/mlの濃度の100マイクロリットルの破傷風トキソイド/ウェルを用いて、4℃において一晩コーティングした。PBS中2マイクログラム/mlの濃度の100マイクロリットルのチログロブリンを用いてコーティングしたプレートを、陰性対照として使用した。ウェルを空にして、ペーパータオルで軽く拭くことによって乾かし、PBS-4%スキムミルク(ELK)で完全に満たし、室温で1時間インキュベートし、ウェルをブロックした。ブロッキング溶液を廃棄後、50μlのブロッキング溶液と予備混合したファージのミニプレップを加え、RTにおいて1時間インキュベートした。次に、PBS-0.05% Tween-20を用いた5回の洗浄ステップにより、未結合のファージを取り除いた。結合したファージを、ウェルを100マイクロリットルの抗M13-HRP抗体コンジュゲート(ブロッキング緩衝液で1/5000に希釈)と一緒に、室温において1時間インキュベートすることによって検出した。遊離の抗体を、上記のような洗浄ステップを繰り返すことによって取り除き、その後、発色が可視化するまでTMB基質とインキュベートした。反応を、100マイクロリットルの2M H2SO4 /ウェルを加えることによって停止させ、ELISAリーダーで発光波長450nmにおいて分析した(Table 2(表2))。数字が大きいほど、シグナルが強い、したがってファージ-Fab複合体の特異的結合の発生が高いことを示す。
【0100】
配列決定
バックグラウンドシグナルの少なくとも3倍のシグナルを示すクローン(Table 2(表2))を繁殖させ、DNAミニプレップ手順に使用し(Qiagen miniPrepの取り扱い説明書を参照されたい)、ヌクレオチド配列分析に供した。配列決定を、Big Dye 1.1キットに添付の取り扱い説明書(Applied Biosystems)に従って、ヒトIgG1重鎖のCH1領域の5'配列(FabディスプレイベクターMV1043中に存在する、図3および12)を認識するリバースプライマー(CH1_Rev1、Table 1(表1))を使用して実施した。28種の破傷風トキソイド結合クローンのマウスVH配列を、Table 3(表3)に表した。結果は、選択されたマウスVH遺伝子が、異なる遺伝子ファミリーに属し、これらの遺伝子ファミリー由来の異なる個々のメンバーは、再構成ヒトIGKV1-39/J VH領域とペアリングして機能性破傷風トキソイド特異的抗体結合部位を形成できることを示す。配列分析により、マウスVH領域はDHおよびJHの遺伝子セグメントの多様性を利用すると結論付けた。
【0101】
(実施例3)
マウスκ軽鎖遺伝子座の配列決定
本実施例は、マウス内因性κ軽鎖遺伝子座のサイレンシングについて記載する。内因性κ遺伝子座を、ES細胞において相同組換えにより改変し、次いでマウス胚中への遺伝子組換えES細胞を導入し、遺伝的に適合された子孫を得た。
【0102】
3'CKエンハンサーの3'で終了する配列と融合した、J5遺伝子セグメントの下流338bpまでのJ領域を含む部分からなる、アセンブリヌクレオチド配列を含有するベクターを、ES細胞における相同組換えに使用した。アセンブリ配列は、JK領域の3'から3'CKエンハンサーのすぐ3'に及ぶゲノムDNA断片の欠失に使用する。この手順の結果として、CK定常遺伝子、3'エンハンサーおよび一部の遺伝子間領域が取り除かれる(図4および18を参照されたい)。
【0103】
ターゲティングベクターの構築
欠失セグメントに融合した3'および5'末端に4.5〜8kbの隣接アームを受容したベクターを、ES細胞系における標的相同組換えに使用した。双方のアームは、最大の相同性を確実にするPCR手段により得た。ターゲティング戦略は、構成的KO対立遺伝子の作製を可能にする。Igkイントロンエンハンサー、Igk定常領域およびIgk3'エンハンサーを包含するマウスゲノム配列を、PuroRカセットと置き換え、PuroRカセットはF3部位に隣接し、Jk要素の下流に挿入される。選択マーカーのFlp仲介除去は、構成的KO対立遺伝子をもたらす。Igk MiEk-Igk C-Igk 3'Eゲノム領域(およそ10kb)と、F3-Puroカセット(およそ3kb)の置き換えは、相同組換えの効率を減少すると思われた。したがって、相同性のアームを伸長し、より多くのES細胞コロニーを、相同組換えクローンを同定するために形質移入した後で分析した。
【0104】
κ断片を欠失したES細胞の作製
遺伝子組換えES細胞の作製を、本質的に記載のように(Seiblerら、Nucleic Acid Res. 2003 Feb 15: 31(4): e12)実施した。さらに、詳細な説明に関して実施例14を参照されたい。
【0105】
四倍体胚補完法によるESマウスの作製
遺伝子組換えES細胞を使用した、四倍体胚補完法によるESマウスの作製を、本質的に記載のように実施した(Egganら、PNAS 98、6209〜6214頁; Seibler ら、Nucleic Acids Res. 2003 Feb 15: 31(4): e12; Hoganら、「Summary of mouse development. Manipulating the Mouse Embryo、(1994) Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor NY.」、253〜289頁。))。
【0106】
(実施例4)
マウスλ軽鎖遺伝子座のサイレンシング
本実施例は、マウス内因性λ軽鎖遺伝子座のサイレンシングを記載する。内因性λ遺伝子座を、ES細胞において相同組換えにより改変し、次いでマウス胚中へ遺伝子組換えES細胞を導入し、遺伝的に適合された子孫を得た。
【0107】
全機能性λV領域を一緒に含有するマウスλ遺伝子座の2つの領域を欠失させた。
【0108】
欠失に基づく相同組換えの標的となる第1の領域は、IGLV2遺伝子セグメントの出発部位の408bp上流に配置され、IGLV3遺伝子セグメントの215bp下流で終了し、これらのIGLV遺伝子セグメントの間の遺伝子間配列の広がりを含む領域である。欠失に供される第2の領域は、IGLV1遺伝子セグメントの上流392bpから下流171bpまでにおよぶ断片からなるIGLV1遺伝子セグメントを含む。これらの2つの欠失ステップの結論として、全機能性Vλ遺伝子セグメントの欠失により、遺伝子座が機能的に不活性になる(図5および19)。
【0109】
ターゲティングベクターの構築
欠失セグメントに融合した、3'および5'末端に3〜9.6kbの隣接アームを受容したベクターを、ES細胞系における標的相同組換えに使用した。双方のアームは、最大の相同性を確実にするPCR手段により得た。第1のステップにおいて、Igl V2-V3領域を包含するマウスゲノム配列を、F3部位に隣接するPuroRカセットと置き換え、これにより、選択マーカーのFlp-仲介除去後、構成的KO対立遺伝子がもたらされる(図19Aを参照されたい)。第2のステップにおいて、Igl V1領域を包含するマウスゲノム配列を、すでにIgl V2〜V3領域が欠失しているES細胞クローンにおいて、Neoカセットと置き換えた(図19Bを参照されたい)。選択マーカー(NeoR)は、FRT部位に隣接した。選択マーカーのFlp-仲介除去後に、構成的KO対立遺伝子を得た。
【0110】
λ断片を欠失したES細胞の作製
遺伝子組換えES細胞の作製を、記載のように本質的に実施した(Seibler J、Zevnik B、Kuter-Luks B、Andreas S、Kern H、Hennek T、Rode A、Heimann C、Faust N、Kauselmann G、Schoor M、Jaenisch R、Rajewsky K、Kuhn R、Schwenk F. Nucleic Acids Res. 2003 Feb 15: 31(4): e12)。さらに、詳細な説明に関して実施例14を参照されたい。同じ染色体上で起こる双方のターゲティング事象を示すために、一部の二重標的クローンを、pCMV C31ΔCpGのインビトロの欠失のために選択した。このクローンを、20% FCS(PAN)および1200u/mL Leukemia Inhibitory Factor(Millipore ESG 1107)を含有するDMEM High Glucose培地中にマウス胚性線維芽細胞を含む有糸分裂を不活性化したフィーダーレイヤーにおいて、耐性菌選択圧の下で伸長した。各クローンからの1×107細胞を、20μgの環状pCMV C31ΔCpGを用いて240Vおよび500μFにおいてエレクトロポレーションし、各々4つの10cmの皿に播種した。エレクトロポレーションの2〜3日後、細胞を収集し、PCRにより分析した。使用したプライマーは:
2005_5: CCCTTTCCAATCTTTATGGG
2005_7: AGGTGGATTGGTGTCTTTTTCTC
2005_9: GTCATGTCGGCGACCCTACGCC
であった。PCR反応を、5μlのPCR Buffer 10x(Invitrogen)、2μlのMgCl2(50mM)、1μlのdNTPs(10mM)、1μlの第1プライマー(5μM)、1μlの第2プライマー(5μM)、0.4μlのTaq(5U/ul、Invitrogen)、37.6μlのH2Oおよび2μlのDNAを含む混合物において実施した。使用したプログラムは、95℃で5分: その後95℃で30秒: 60℃で30秒: 72℃で1分を35サイクル: その後72℃で10分であった。
【0111】
四倍体胚補完法によるESマウスの作製。
遺伝子組換えES細胞を使用した四倍体胚補完法によるマウスの作製を、本質的に記載のように実施した(Egganら、PNAS 98、6209〜6214頁; Seibler J、Zevnik B, Kuter-Luks B、Andreas S、Kern H、Hennek T、Rode A、HeimannC、Faust N、Kauselmann G、Schoor M、Jaenisch R、Rajewsky K、Kuhn R、Schwenk F. Nucleic Acids Res. 2003 Feb 15: 31(4): e12; Hoganら、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor NY.)、253〜289頁)。
【0112】
(実施例5)
再構成ヒト生殖細胞系列IGKV1-39/J-Ck遺伝子(IGKV1-39/J-Ck)に基づく、CAGGS発現インサートの構築
本実施例は、再構成ヒト生殖細胞系列IGKV1-39/J領域を組み込んだCAGGS発現カセットの構築を記載する。このインサート発現カセットはクローン化部位、Kozak配列、イントロンを含有するリーダー配列、再構成IGKV1-39領域のオープンリーディングフレーム、対立遺伝子a由来のラットCK定常領域および翻訳終止配列を包含する(IGKV1-39/J-Ck: 図6)。第1の構築体は、天然発生配列からなり、分析されており、内部TATA-ボックス、ポリアデニル化シグナル、カイ部位(chi-sites)、リボソーム侵入部位、富ATまたは富GC配列ストレッチ、ARE、INSおよびCRSの配列要素、反復配列、RNA二次構造、(潜在性)スプライスドナーおよびアクセプター部位ならびにスプライス分岐点(GeneArt GmbH)などの、シスに作用する望ましくない要素を除去することによって最適化される。さらに、オープンリーディングフレーム領域におけるコドンの使用は、マウスにおける発現を最適化する。イントロン配列は不変であり、したがって、ヒトIGKV1-39リーダーイントロンのコード部分と同一の配列を表す。
【0113】
発現カセットの5'末端にNotI部位を導入し、3'部位にNheI部位を導入した。双方の部位を、CAGGS発現モジュールにおいてクローン化に使用する。GeneArtにより使用される方法に従った遺伝子アセンブリ後、NotI-NheIを用いてインサートを消化し、CAGGSプロモーター、LoxP部位に隣接するストッパー配列(「floxed」)、ポリアデニル化シグナル配列および5'および3'末端において、マウスES細胞系のRosa26遺伝子座への相同組換えを容易にする配列を含有する発現モジュール内にクローン化する。プロモーターおよび/またはcDNA断片をPCRにより増幅し、配列決定および/または送達プラスミドから直接、表示の特徴を有するRMCE交換ベクター中にクローン化することによって確認される。最終ターゲティングベクターpCAGGS-IgVK1-39の略図および確認配列を、図13Aおよび13Bに示す。ターゲティング戦略を図13Cに表す。
【0114】
(実施例6)
再構成生殖細胞系列IGLV2-14/J Vλ領域(IGLV2-14/J-Ck)に基づくCAGGS発現インサート
本実施例は、再構成生殖細胞系列IGLV2-14/J Vλ領域を組み込んだ、発現カセットの配列および挿入を記載する。このインサートは、クローン化部位、Kozak配列、イントロンを含有するリーダー配列、再構成IGLV2-14/J領域のオープンリーディングフレーム、対立遺伝子a由来のラットCK定常領域および翻訳終止配列を包含する(IGLV2-14/J-Ck: 図7)。第1の構築体は、天然発生配列からなり、分析されており、内部TATA-ボックス、ポリアデニル化シグナル、カイ部位(chi-sites)、リボソーム侵入部位、富ATまたは富GC配列ストレッチ、ARE、INSおよびCRSの配列要素、反復配列、RNA二次構造、(潜在性)スプライスドナーおよびアクセプター部位ならびにスプライス分岐点(GeneArt GmbH)などの、シスに作用する望ましくない要素を除去することによって最適化される。さらに、オープンリーディングフレーム領域におけるコドンの使用は、マウスにおける発現を最適化する。イントロン配列は不変であり、したがって、ヒトIGKV1-39リーダーイントロン同一の配列を表す。
【0115】
発現カセットの5'末端にNotI部位を導入し、3'部位にNheI部位を導入した。双方の部位を、TaconicArtemisにより記載のように、CAGGS発現モジュールにおいてクローン化に使用する。GeneArtにより使用される方法に従った遺伝子アセンブリ後、NotI-NheIを用いてインサートを消化し、CAGGSプロモーター、LoxP部位に隣接するストッパー配列(「floxed」)、ポリアデニル化シグナル配列および5'および3'末端において、マウスES細胞系のRosa26遺伝子座への相同組換えを容易にする配列を含有する発現モジュール内にクローン化する。最終ROSA26 RMCEターゲティングベクターを構築するために、プロモーターおよび/またはcDNA断片をPCRにより増幅した。増幅産物を、配列決定および/または送達プラスミドから直接、表示の特徴を有するRMCE交換ベクター中にクローン化することによって確認した。最終ターゲティングベクターpCAGGS-IgVL2-14の略図および確認配列を、図15Aおよび15Bに示す。ターゲティング戦略を図15Cに表す。
【0116】
(実施例7)
HEK293細胞系におけるIGKV1-39/J-Ckの発現(pSELECTIGKV1-39/J-Ck)
本実施例は、実施例5に記載のIGKV1-39/J-Ck構築体が、HEK293細胞においてIGKV1-39/J-CkのL鎖の発現および欠失が可能であることの検証方法を記載する。IGKV1-39/Jインサート(図6)を、5'末端において、NotI部位をSalI部位に交換することによって改変した。この変更は、産物の、発現カセットプラスミドpSELECT-hygro(InvivoGen)におけるクローン化に必要である。CAGGS発現インサートIGKV1-39/J-CkおよびpSELECT-hygroをSalIおよびNheIを用いて消化し、連結し、標準技術を使用するコンピテントXL1-Blue細胞の形質転換に使用した。コロニーを採取し、Qiagen Midi-prepカラムを使用し、製造業者の手順に従ってDNAを精製した。0817676_pSELECT_0815426と称する得られた軽鎖(LC)発現ベクターを、製造業者のプロトコルに従って、HEK293細胞にFugene6(Roche)を形質移入するために使用した。上清を、IGKV1-39/J-Ck軽鎖の存在に関して、ELISAおよび抗ラットCk抗体(Beckton Dickinson #550336および553871)および当分野において使用されるプロトコルを使用するウェスタンブロットによりスクリーニングした。
【0117】
抗破傷風トキソイド(TT) IgG MG1494のVHを、制限部位SfiIおよびBstEIIを使用して、IgG発現ベクターMV1056内にクローン化した。得られたクローンを、配列検証した。HEK293T細胞に、Table 4(表4)に示した5種の異なるベクターの組合せを形質移入した(ベクター0817678_pSELECT_0815427の詳細に関しては実施例8を参照されたい)。上清を収集し、IgG濃度を決定した(Table 4(表4)を参照されたい)。軽鎖のみを含有する上清AおよびBに関して、期待どおりIgGは検出できなかった(検出抗体は、IgGのFc部分を認識した)。上清CおよびDにおけるIgG濃度は、陽性対照である上清EのIgG濃度と同程度であり、軽鎖構築体の的確な発現を示した。
【0118】
TTへの結合をELISAにより分析し、陰性対照抗原としてヘモグロビンを使用して、作製抗体の機能性を確認した。軽鎖のみを含有する上清AおよびBに関して、期待どおりTT特異的結合は検出できなかった。上清CおよびDに関するTT特異的結合は、少なくとも陽性対照の上清Eと同様であり、軽鎖構築体の的確な発現および重鎖との機能性アセンブリが確認された。抗体は、抗ヒトIgG二次抗体を使用した場合だけでなく、抗ラットCκ軽鎖二次抗体を使用した場合も検出された。この結果は、抗ラットCκ抗体(BD Pharmingen #553871, clone MRK-1)がpSELECTベクターにより発現する軽鎖を認識することを確認する。
【0119】
上清を、非還元SDS-PAGEおよびウェスタンブロットにより分析した(非掲載)。抗ヒトIgG重鎖抗体を使用する検出は、軽鎖のみを含有する上清AおよびBに関して、期待どおりバンドを示さなかった。上清CおよびDに関する結果は、陽性対照の上清Eと同様であり、バンドは、期待どおり無傷IgGのための170kDのマーカーに近い。さらに分子量がより小さいバンドが、上清C、DおよびEに関して同様に観察され、これらは分解産物、(部分的)還元により得られるIgG断片および/または検出抗体の非特異的結合による無関係のタンパク質バンドを表すと思われる。
【0120】
抗ラットCκ軽鎖抗体を使用する検出は、上清AおよびBに関して、軽鎖のみに関して期待されるように、26kDのマーカーに近いバンドを示した。このバンドは、Bと比較してAに関してより強く、遊離のIGKV1-39軽鎖がより多く発現でき、および/または遊離のIGLV2-14軽鎖より安定であることを示している。発現したIgGはヒトCκ軽鎖を含有するので、期待通り対照の上清Eに関してバンドは検出されなかった。上清CおよびDに関して、期待されたバンドが170kDのマーカーの近くに観察され、より分子量が小さいバンドもまた観察されたが抗ヒトIgG抗体を使用した上記より範囲が狭かった。
【0121】
結論として、軽鎖発現構築体と抗破傷風トキソイド(TT) IgG MG1494の重鎖を組み合わせる形質移入は、pSELECTκおよびλ軽鎖構築体双方に関する陽性対照構築体と同様のIgGの産生をもたらす。双方のIgGの産生は、TT ELISAにおいて、対照IgGより多くの、または同様のELISAシグナルを生じた。SDS-PAGEおよびウェスタンブロット分析により、無傷のIgGの存在が確認された。被検抗ラットCκ抗体は、ELISAおよびウェスタンブロットの双方において有効に働く。軽鎖構築体を形質移入した細胞に由来する培養液の上清は、検出可能なIgGの産生だけでなく、検出可能なTT特異的結合ももたらさず、一方、遊離の軽鎖はウェスタンブロットにおいて検出された。
【0122】
(実施例8)
HEK293細胞系におけるIGLV2-14/J-Ckの発現(pSELECT-IGLV2-14/J-Ck)
本実施例は、実施例6に記載のIGLV2-14/J構築体が、HEK293細胞においてIGLV2-14/J-CkのL鎖の発現および検出が可能であることの検証方法を記載する。IGLV2-14/J-Ckインサート(図7)を、5'末端において、NotI部位をSalI部位に変更することによって改変した。この変化は、産物を発現カセットプラスミドのpSELECT-hygro(InvivoGen)内にクローン化するために必要である。CAGGS発現インサートIGLV2-14/J-CkおよびpSELECT-hygroを、SalIおよびNheIで消化し、連結し、標準的技術を使用してコンピテントXL1-Blue細胞を形質転換するために使用した。コロニーを採取し、DNAを、Qiagen Midi-prepカラムを使用して、製造業者の手順に従って精製した。0817678_pSELECT_0815427と称する得られた軽鎖(LC)発現ベクターを使用して、製造業者のプロトコルに従って、HEK293細胞にFugene6(Roche)を形質移入した上清を、IGLV2-14/J-Ck軽鎖の存在に関して、ELISAおよび抗ラットCk抗体(Becton Dickinson #550336および553871)を用いるウェスタンブロットによりスクリーニングした。詳細および結果に関しては、実施例7を参照されたい。
【0123】
(実施例9)
IGKV1-39/JインサートおよびマウスCK遺伝子座に由来する多重エンハンサー要素を含有する、VKプロモーター駆動性発現構築体(VkP-IGKV1-39/J-Ck; VkP-O12)の構築
本実施例は、IGKV1-39 VKプロモーター領域に基づく、再構成ヒトIGKV1-39 VK領域の、B細胞特異的かつ発生/分化段階特異的な発現を可能にする関連要素、イントロンを含有するリーダー、生殖細胞系列V遺伝子、CDR3、IGKJセグメント、JkおよびCKの間に配置されたマウス遺伝子間領域、ラットCk対立遺伝子のオープンリーディングフレームおよびマウスCK遺伝子の3'末端から3'CKエンハンサーのちょうど3'で終わるマウス遺伝子間断片を含有する発現カセットの構築を記載する。
【0124】
実施例5に記載の、最適化されたリーダーのオープンリーディングフレーム、IGKV1-39再構成遺伝子およびラットCK対立遺伝子を、発現カセットの構築に使用した。VKプロモーター領域は、遺伝子合成手順(GeneArt、GmbH)により得られ、遺伝子の500bpおよびATG(開始部位)の間のヒトIGKV1-39領域の配列とほぼ同一である。天然配列との唯一のずれは、翻訳を促進するための、ATG(開始)部位におけるGCCACCATGG Kozak配列の導入である。マウスBACクローン(TaconicArtemis)由来のゲノム断片を、個別の要素の導入のための基盤として使用する。この断片は、JK5領域の3'に直接配置されるイントロンドナー部位から始まり、3'CKエンハンサーのちょうど3'で終了するマウスVK遺伝子座配列と同一であり、およそ12.5kbに及ぶ。
【0125】
この最終構築体は、5'から3'末端に以下の要素を含有する: ヒトゲノムIGKV1-39プロモーター(500bp)、Kozak配列、ヒトIGKV1-39リーダー・パート1(最適化)、ヒトIGKV1-39リーダーイントロン、ヒトIGKV1-39リーダー・パート2(最適化)、ヒトIGKV1-39生殖細胞系列遺伝子(最適化)、ヒトJ-領域(最適化)、イントロンエンハンサー要素を含むマウス遺伝子間領域、ラット(Rattus norvegicus)κ定常領域(最適化)および3'κエンハンサーを含むマウス遺伝子間領域。この発現カセットの要素を図8に示し、VkP-IGKV1-39/J-Ck(VkP-O12)と命名する。pVkP-O12ベクターおよびターゲティング戦略の概要を、図20Aおよび21Aに表す。このベクターを、標準手順に従って、ES細胞に導入した(実施例14を参照されたい)。
【0126】
(実施例10)
IGLV2-14/Jクローンおよび複数のCK遺伝子座由来のエンハンサー要素を含有する、VKプロモーター駆動性発現構築体(VkP-IGLVL2-14/J-Ck; VkP-2a2)の構築。
本実施例は、IGKV1-39遺伝子およびJ-領域が唯一のV-J領域を含む最適化ヒトIGLV2-14生殖細胞系列遺伝子(VkP-IGLV2-14/J-Ck; VkP-2a2: 図9)で置き換えられた以外は、実施例9に記載の同じ構築体を記載する。
【0127】
(実施例11)
CKイントロンエンハンサー要素が欠落したIGKV1-39クローンを含有する、VKプロモーター駆動発現構築体(VkP-IGKV1-39/J-Ck-Δ1; VkP-O12-del1)の構築
実施例9に記載の構築体を、標準PCR改変およびDNAクローン化方法論(GeneArt、GmBH)により、ヒトJ領域およびラットCK領域間の遺伝子間領域に配置されたCKイントロンエンハンサー要素を除去することにより改変した。得られた発現カセットを図10に示し、VkP-IGKV1-39/J-Ck-Δ1(VkP-O12-del1)と名付けた。
【0128】
pVkP-O12-del1ベクターおよびターゲティング戦略の概要を、図20Bおよび21Bに表した。ベクターを、標準的手順に従ってES細胞に導入した(実施例14を参照されたい)。
【0129】
(実施例12)
CKイントロンエンハンサー要素および切断型3'CKエンハンサー要素が欠落したIGKV1-39クローンを含有する、VKプロモーター駆動性発現構築体(VkP-IGKV1-39/J-Ck-Δ2; VkP-O12-del2)の構築
実施例11に記載の構築体を、潜在的阻害要素を除去するために、3'CKエンハンサー要素を切断し、ラットCk遺伝子の遺伝子間領域の3'部分を欠失することによって改変した。これは、標準的方法を使用して、EcoRV部位(ラットCk遺伝子の3'に配置)および3'エンハンサーに存在するNcoI部位間の遺伝子間配列(5993bp)を除去し、3'エンハンサーBstXI部位および3'エンハンサーのBstXI部位の3'間の配列(474bp)をさらに除去することによって達成された。得られた発現カセットを図11に示し、VkP-IGKV1-39/J-Ck-Δ2(VkP-O12-del2)と名付けた。
【0130】
pVkP-O12-del2ベクターおよびターゲティング戦略の概要を図20Cおよび21Cに表した。このベクターを、標準手順に従って、ES細胞に導入した(実施例14を参照されたい)。
【0131】
(実施例13)
細胞系におけるVk構築体の発現
実施例9〜12に記載の構築体を、骨髄腫細胞系MPC11(ATCC CCL167)、B細胞リンパ腫WEHI231(ATCC CRL-1702)、T細胞リンパ腫EL4(ATCC TIB-39)およびHEK293(ATCC CRL1573)において軽鎖タンパク質を産生するそれらの能力に関して試験した。構築体中のエンハンサー要素およびプロモーター要素は、B細胞系において発現可能であるが、他の組織由来の細胞系においては発現できなかった。精製され、線形化されたDNAを使用した細胞系の形質移入後、Fugene6(Roche)細胞を一時的発現のために培養する。細胞および上清を収集し、SDS-PAGE分析、その後特異的抗ラットC-κ抗体を使用するウェスタンブロットに供した。上清を、抗ラットCK抗体(Beckton Dickinson #550336)を使用して、ELISAで、分泌L鎖に関して分析した。
【0132】
(実施例14)
トランスジェニックES系の作製
実施例3、4、5、6、9、10、11および12に記載の全構築体を使用して、相同組換えの手段により、個別の安定なトランスジェニックES系を作製した。相同組換えを介したトランスジェニックES系の作製方法は、当分野において公知である(例えば、Egganら、PNAS 98, 6209〜6214頁; Seibler J、Zevnik B、Kuter-Luks B、Andreas S、Kern H、Hennek T、Rode A、HeimannC、Faust N、Kauselmann G、Schoor M、Jaenisch R、Rajewsky K、Kuhn R、Schwenk F. Nucleic Acids Res. 2003 Feb 15: 31(4): e12; Hoganら。(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor NY.)、253〜289頁)。
【0133】
実施例5〜6および実施例9〜12に記載の全構築体に関して、RMCE ES細胞系(マウス系統129S6B6F1-Gt(ROSA)26Sortm1OArte由来)を、15% FBS(PAN 1302-P220821)を含有するDMEM High Glucose培地中にマウス胚性線維芽細胞(MEF)を含む有糸分裂を不活性化したフィーダーレイヤーにおいて成長させた。白血病抑制因子(Chemicon ESG 1107)を、900U/mLの濃度で培地に加えた。操作のために、2×105ES細胞を、3.5cmの皿の2mlの培地上に播種した。形質移入の直前に、2mlの新鮮な培地を細胞に加えた。3ulのFugene6 Reagent(Roche: カタログ番号1 814 443)を、100ulの血清非含有培地(OptiMEM I with Glutamax I; Invitrogen: カタログ番号51985-035)と混合し、5分間インキュベートした。100ulのFugene/OptiMEM溶液を、2ugの環状ベクターおよび2ugのCAGGS-Flpに加え、20分間インキュベートした。形質移入複合体を、細胞に滴下して加え、混合した。翌日、新鮮な培地を細胞に加えた。2日目以降、培地を、250ug/mL G418(Geneticin; Invitrogen: カタログ番号10131-019)含有培地に、毎日取り替えた。形質移入の7日後、単一のクローンを単離し、伸長し、標準的手順に従って、サザンブロティングにより分子分析した。
【0134】
個々の構築体に関して単一クローンのゲノムDNAの制限酵素消化による多重クローンの分析、その後の5'プローブ、3'プローブおよび内部プローブを用いたハイブリダイゼーションにより、Rosa26遺伝子座において、的確な場所に、的確な、単一の挿入を含むクローンがもたらされた。実施例を図14に提供する。
【0135】
(実施例15)
トランスジェニックマウス系統の作製
実施例14に記載の、作製し、それらの改変に関して検証した全ES細胞系を使用して、四倍体組換えの手段により、安定なトランスジェニックマウスを作製した。この方法は、当分野において公知である。一般的に、ホルモンの投与後、過剰排卵のBalb/c雌を、Balb/cの雄と交配した。胚盤胞を、dpc 3.5で子宮から単離した。マイクロインジェクションのために、胚盤胞を、鉱油下の15% FCS含有DMEMの液滴中に置いた。フラットチップの、内径12〜15マイクロメーターの圧作動型マイクロインジェクションピペットを使用して、10〜15の標的C57BL/6 N.tac ES細胞を個々の胚盤胞に注入した。回収後、注入後の胚盤胞を個々の、性交後2.5日、偽妊娠NMRI雌の子宮角に移した。キメラ現象を、ES細胞対Balb/c宿主(黒色/白色)の毛色の寄与により、キメラ(G0)により測定した。高度のキメラマウスを、C57BL/6系統の雌に繁殖させた。計画の必要条件に依存して、C57BL/6の交配相手は、非突然変異体(W)またはリコンビナーゼ遺伝子の存在に関する突然変異体(Flp-DeleterもしくはCre-deleterもしくはCreER誘導可能deleterまたはFlp-deleter/CreERの組合せ)である。生殖細胞系列の遺伝を、黒色の、C57BL/6系統の子孫(G1)の存在により同定した。
【0136】
例えば、ESCクローンIgVK1-39 2683 8(実施例5および14を参照されたい)を、3つの独立した実験において総数62の胚盤胞に注入した。3種の同腹子を得、子の総数は6匹であった。すべての子はキメラであった。3匹のヘテロ接合の子孫を得、さらなる交配に使用した。
【0137】
ESCクローンκ2692 A-C1O(実施例3および14を参照されたい)を、3つの独立した実験において総数54の胚盤胞に注入した。3種の同腹子を得、子の総数は11匹であり、そのうち10匹がキメラであった。8匹のヘテロ接合の子孫を得、さらなる交配に使用した。
【0138】
ESCクローンκ2692 B-Cl(実施例3および14を参照されたい)を、3つの独立した実験において総数51の胚盤胞に注入した。2種の同腹子を得、子の総数は6匹であり、そのうち4匹がキメラであった。3匹のヘテロ接合の子孫を得、さらなる交配に使用した。
【0139】
(実施例16)
繁殖
本実施例は、実施例14に記載の、得られたトランスジェニック発現カセット含有マウスおよび内因性λおよびκ遺伝子座がサイレンシングされている、ノックアウトマウスの繁殖を記載する。16番染色体上のV-λおよび7番染色体上のCD19の局在化により、標準的繁殖手順が可能である。子孫のパーセントは、両方の改変が1つの染色体上に一緒に起こるという意味の交差を示すだけなので、6番染色体上に、距離約24cMで同時局在化されたVk遺伝子座およびRosa26遺伝子座の繁殖は、スクリーニングの際に特別に注意が必要である。
4種の遺伝子座すべては、CD19-creホモ接合型またはヘテロ接合型(未記載)および改変Rosa26トランス遺伝子および他の遺伝子座のホモ接合型である単一のマウス系統において組み合わされなければならない。繁殖は標準的な繁殖技術およびそれぞれに見合ったスクリーニング技術により実施され、商業的飼業者(例えば、TaconicArtemis)により提示される。
【0140】
(実施例17)
マウスの免疫化
マウスの初回免疫化および追加免疫化を、標準的プロトコルを使用して実施する。
【0141】
CD19-HuVκ1マウス由来のB細胞におけるヒト再構成VK O12(IGKV1-39)-ラットCκ軽鎖(実施例5、14〜16を参照されたい)のトランスジェニック発現を実証するために、ならびにVHレパートリーのサイズ、VHファミリー使用の多様性および免疫化後のV(D)J組換えについてのその影響を評価するために、CD19-HuVk1トランスジェニックマウスを、破傷風毒素ワクチン(TT vaccine)を用いて免疫化し、CD19-HuVκ1マウスからランダムに選別したクローンのVH配列の多様性を、TT-免疫化wtマウスおよびCD19-Cre HuVk1陰性同腹子と比較する。免疫化マウスにおけるヒトVκ O12トランス遺伝子のSHM頻度についてのデータを得る。少なくとも40種のTT-特異的、ヒトVκ O12を含有する、クローン的に関連のないmAbの多様なコレクションは、ファージディスプレイによりCD19-HuVκ1マウスから再生される。
【0142】
このため、3匹の成体CD19-HuVκ1マウスに、標準的免疫化手順を使用して、TTワクチンをワクチン接種する。免疫化の後で、血清力価を、TT特異的ELISA(TT: Statens Serum Institute、Art. no. 2674)を使用して測定し、脾臓懸濁液を、ラットCκ特異的モノクロナール抗体を用いて染色後、FACS法による細胞選別に供し、トランスジェニックB細胞を単離した(クローンRG7/9.1; BD Pharmingen# 553901, Lot# 06548)。ラットCκ陽性B細胞由来RNAを抽出し、得られたcDNA材料をライブラリの構築およびSHM分析に使用した。
【0143】
標準的モノクロナールマウス抗ラットCκ抗体(クローンRG7/9.1; BD Pharmingen# 553901, Lot# 06548)を、トランス遺伝子発現B細胞のFACS分析に使用した(Meyerら、1996、Int. Immunol., 8: 1561頁)。クローンRG7/9.1抗体は、単一型(共通)κ鎖決定因子と反応する。この抗ラットCκ抗体(クローンRG7/9.1(BD Pharmingen# 553901, Lot# 06548)を、FACS分析および選別に関する製造業者の指示書に従って、LYNX高速コンジュゲーションキットを使用して、R-フィコエリトリン(PE)を用いて標識した。標識された抗体を、一時的形質移入HEK-293T細胞内において産生されたラットCκ含有機能性軽鎖タンパク質に対する結合に関して、フローサイトメトリによりまず試験し、非標識抗体は陽性対照として機能する。ELISAおよびウェスタンブロットによりラットCκに対する結合を示した2種の他の抗体(実施例7を参照されたい)を、同様にフローサイトメトリにより試験した。
【0144】
Fab-ファージディスプレイライブラリの構築を、C57BL/6 VH遺伝子の増幅のために設計された、最適化縮重PCRプライマーのセットを用いて実施し、最小のライブラリサイズは106クローンであり、最小挿入頻度は80%である。使用したベクターのMV1043(図3および12)は、ヒトCκ領域と融合したヒトVκO12を含有する。したがってラットCκは、ライブラリ作製過程において、ヒト対応物と交換される。
【0145】
選択前に、96のランダムに選別されたクローンのVHの配列決定を実施し、TTを用いて免疫化し、同じ手順を使用してBALB/cマウスからすでに作製された、非選択性のライブラリから得られた多様性と比較した、VHレパートリーの多様性を検証した。同じ方法で免疫化されたC57B1/6 wtマウス由来のライブラリは、同じワクチンおよび同じ遺伝的バックグラウンドを共有する、2つの予備選択されたライブラリ間の多様性の比較を可能にする。
【0146】
いくつかの独立した選択を、TTコーティングイムノチューブにおいて実施した。含みうる可変は、溶液中のビオチン化抗原を使用する選択または捕捉TTに関する選択である。第1の選択において得られたELISA陽性クローンの数および多様性に基づいて、選択の追加ラウンドに関する決定を行った。クローンは、陰性対照クローンの3倍を超えて陽性であった場合、陽性とみなされる。陽性クローンを、陰性対照抗原のパネルに対するELISAにより分析し、抗原特異性を検証する。目的は、少なくとも40種の唯一のVH領域を、唯一のCDR3配列およびVHDJH再構成に基づき同定することである。
【0147】
ラットCκ陽性の選別されたB細胞由来のcDNA材料の増幅を、ヒトリーダー配列に特異的なPCRフォワードプライマーおよびラットCκ配列に特異的なPCRリバースプライマーを用いて、マウスCκ配列と重複しない領域において、最近の研究(Bradyら、2006、JIM、315: 61頁)において報告されたように実施する。プライマーの組合せ、およびアニーリンク温度を、IGKV1-39 DNAカセット(実施例7を参照されたい)を有する0817676_pSELECT_0815426 = pSELECTベクターを形質移入した、HEK-293T細胞由来のcDNAについてまず試験した。
【0148】
増幅産物を、pJET-1ベクターにおいてクローン化し、XL1-blueの形質転換後、96のコロニーを、VκO12(IGKV1-39)生殖細胞系列の配列と直接比較することによって、VL SHMの頻度を評価するために配列決定する。ヒトTT特異的抗体についての本発明者らの研究(de Kruifら、2009、J. Mol. Biol.、387: 548頁)に記載したR/S比法は、ランダムな突然変異と、VL配列において起こる抗原駆動性突然変異との識別を可能にする。
【0149】
(実施例18)
トランスジェニックマウス系におけるB細胞集団の免疫蛍光分析。
本実施例は、一次(骨髄)および二次(脾臓、腹膜)リンパ系器官および血液中のB細胞集団を分析するための、抗体およびフローサイトメトリの使用を記載する。方法および試薬は、Middendorpら、(2002) J. Immunol、168: 2695およびMiddendorpら、(2004) J. Immunol、172: 1371頁に記載されている。骨髄における早期B細胞の発生の分析のために、細胞を、B220、CD19、CD25、IgM、IgD、マウスCκ、マウスCλおよびラットCκに特異的な抗体(Becton Dickinson)の組合せを用いて表面染色し、それらの表面にトランス遺伝子を発現するプロB細胞、プレB細胞、大型プレB細胞、早期および後期未熟B細胞および再循環B細胞集団を検出した。DAPI染色(Invitrogen)は、分析から死細胞を排除するために含まれ、FCブロック(Becton Dickinson)は、抗体と骨髄性細胞上のFc受容体との相互作用を阻害するために含まれた。末梢リンパ系器官および血液中のB細胞集団における表面トランス遺伝子発現の分析のために、細胞を、B220、CD5、CD19、CD21、CD23、IgM、IgD、マウスCκ、マウスCλおよびラットCκに特異的な抗体(Becton Dickinson)の組合せを用いて染色した。DAPI染色は、分析から死細胞を排除するために含まれ、FCブロックは、抗体と骨髄性細胞上のFc受容体との相互作用を阻害するために含まれた。さらに、トランス遺伝子発現がB細胞コンパートメントの外側の細胞型において起こる場合、CD3、CD4、CD11b、CD11cおよびNK1.1に特異的な抗体(Becton Dickinson)の組合せを、決定のために含んだ。
【0150】
C57BL6バックグラウンド(HuVkl/CD19-Cre)の、ヒトIGKV1-39/ラットCκトランス遺伝子へテロ接合およびCD19-Creトランス遺伝子へテロ接合の3匹のマウスを分析した。FACS分析の対照として、C57BL6バックグラウンドの、ヒトIGKV1-39/ラットCκトランス遺伝子野生型およびCD19-Creトランス遺伝子ヘテロ接合(CD19-Cre)の3匹の同腹子マウスならびに2匹のC57BL6/NTacマウス(Wt)を含んだ。全動物を、分析前に1週間、動物施設に慣らさせ、全マウスは6週齢の雄であった。リンパ球を、マウスの大腿骨、脾臓、腹膜腔および血液から、すでに記載されている従来技術(Middendorpら、. (2002) J. Immunol. 168: 2695頁およびMiddendorpら、(2004) J. Immunol. 172: 1371)を使用して単離した。抗体を、Table 10(表10)に示すようにあらかじめ組合せ、96ウェルプレートにおいて染色を実施した。ラット抗マウス抗体を用いた染色の前にPE標識抗ラットCκ(上記)と一緒のインキュベートを実施し、非特異的結合を避けた。細胞染色の完了後、標識細胞をBecton Dickinson LSR II FACS装置において分析し、獲得したデータを、FlowJoソフトウェア(v6.4.7)を用いて分析した。
【0151】
トランスジェニックマウスは、体重、外観および活動性が野生型マウスと同様であった。組織の摘出時に、巨視的に解剖的変化は観察されなかった。トランスジェニックと野生型マウスとの間に、骨髄(BM)および脾臓中(Table 11(表11))のB細胞の数または末梢器官中のB細胞、T細胞および骨髄性細胞の数に差は観察されなかった。さらに、さまざまなリンパ球発生経路における細胞の頻度または割合は、野生型マウスと比較してトランスジェニックマウスにおいて変化なかった。したがって、二重トランスジェニック(HuVkl/CD19-Cre)およびトランスジェニック(CD19-Cre)マウスにおいて、リンパ系細胞および最も重要にはB細胞の発生は、野生型マウスと識別不能であった。
【0152】
末梢リンパ系器官において、トランス遺伝子特異的抗体(抗ラットCκ-PE)を用いた染色は、B細胞集団中にだけ観察された。T細胞、骨髄性細胞およびNK細胞集団は、脾臓におけるトランス遺伝子の表面発現に関して、すべてが陰性であった(図23)。対照的に、pan B細胞マーカーB220およびCD19を用いて染色された細胞において、全細胞が、トランス遺伝子の細胞表面発現を示すFACSプロットにおいて、右に移行した(図24)。同様のトランス遺伝子特異的染色を、発生的に異なるB細胞集団である腹膜のCD5+ B1細胞において測定した(図25)。
【0153】
多分化前駆体から成熟B細胞へのB細胞の分化は、骨髄において起こる。骨髄から分析されたリンパ球において、最も早期のB細胞祖先のプロB細胞およびプレB細胞において、正常な軽鎖発現パターンと一致する細胞外およびトランス遺伝子発現は検出できなかった(図26)。トランス遺伝子発現は、まず、生殖細胞系列マウス軽鎖が再構成を受ける発生段階である未熟B細胞において検出可能になり、予備選択された重鎖に関して細胞表面に発現する(図26)。脾臓における染色と一致して、トランスジェニック軽鎖発現は、成熟再循環B細胞においても検出される(図26)。したがって、トランス遺伝子のCD19-Cre駆動性発現は、軽鎖発現の正常なパターンと一致する。内因性軽鎖特異的抗体を用いた染色は、トランス遺伝子特異的軽鎖抗体の染色より非常に強い。このことは、内因性軽鎖の発現レベルが高いほど、内因性軽鎖特異的抗体または両方の組合せを用いたより感受性の強い染色を示す可能性がある。重要なことには、トランスジェニック軽鎖の表面発現の強度が、血液中の循環B細胞の染色において観察されるように、内因性軽鎖およびIgM表面発現の両方と相関している(図27)。
【0154】
したがって、全体としてこの分析は、ヒトIGKV1-39/Cκトランス遺伝子の発現が、B細胞コンパートメントに制限されており、その発現の一時的制御が、全B細胞集団の正常な発生をもたらす、内因性κおよびλ軽鎖と同様であることを実証している。トランス遺伝子の発現が明らかに低いことは、内因性軽鎖遺伝子上に存在するプロモーターおよびエンハンサーと比較したプロモーターの強度により、または内因性軽鎖に、再構成重鎖とのペアリングにおける競合的有利性をもたらすトランス遺伝子発現の遅延により説明できる。このことは、B細胞の成熟として、トランス遺伝子の相対的強度が内因性軽鎖と比較して増加しているという観察と一致する。さらに、B細胞の数は正常であり、個々の表面Ig+B細胞が、内因性軽鎖およびトランスジェニック軽鎖を同時発現するという観察は、IGKV1-39可変領域が、さまざまなマウス重鎖可変領域の正常なレパートリーとペアリングできるという結論を支える。本発明者らは、この分析から、Rosa遺伝子座においてCD19-Cre活性化CAGGSプロモーターにより駆動されるIGKV1-39/ラットCκトランス遺伝子の挿入は、トランス遺伝子の時宜にかなった、B細胞特異的発現を容易にし、トランス遺伝子は、マウス重鎖の正常なレパートリーとペアリングできると結論付ける。
【0155】
(実施例19)
IGKV1-39に関するEpibase(登録商標)のT細胞エピトーププロファイル。
IGKV1-39のタンパク質配列(図12、ヒト生殖細胞系列IGKV1-39/J Protein)を、THエピトープとしても知られる、推定HLAクラスII拘束性エピトープの存在に関してスキャンした。このため、Algonomics社のEpibase(登録商標)基盤をIGKV1-39に適用した。手短に言えば、この基盤は、標的配列に由来する10merのペプチド全候補のHLA結合特異性を分析するものである(Desmetら、Nature 1992、356: 539〜542頁; Desmetら、FASEB J. 1997、11: 164〜172頁: Desmetら、Proteins 2002、48: 31〜43頁: Desmetら、Proteins 2005、58: 53〜69頁)。プロファイリングを、20種のDRB1、7種のDRB3/4/5、13種のDQおよび7種のDP、すなわち合計で47種のHLAクラスII受容体に関してアロタイプレベルで実施した(Table 5(表5)を参照されたい)。Epibase(登録商標)は、47の個々のHLAクラスII受容体についてのペプチドの結合の自由エネルギーの量的概算値ΔGbindを算出する。その後、これらのデータは、以下のようにさらに処理され:
自由エネルギーは、ΔGbind = RT ln(Kd)を介してKd値に変換された。
ペプチドは強(S)バインダー、中(M)バインダー、弱および非(N)バインダーに分類された。
以下のカットオフを適用した:
S: 強バインダー: Kd<0.1pM
M: 中バインダー: 0.1pM≦Kd<0.8pM
N: 弱および非バインダー: 0.8pM≦Kd
自己ペプチドに対応するペプチドを、個別に処理した。自己ペプチドのリストを、293種の抗体殖細胞系列配列から抜粋した。それらは、「生殖細胞系列フィルター処理」ペプチドと称される。
SおよびMペプチドを、いわゆるエピトープマップにおいて標的配列上にマッピングする; S-親和性を、定量的にプロットする: M値を定量的に表す。結果の総括として、Table 6(表6)にDRB1、DQ、DPおよびDRB3/4/5遺伝子に対応するHLAクラスII受容体グループに関する、分析したタンパク質中の強バインダーおよび中バインダーの数を掲載した。強および中親和性バインダーに関して個別に集計した。同じグループの複数のアロタイプに対するペプチド結合は、1として集計した。括弧の間の値は、生殖細胞系列フィルター処理ペプチドを指す。Table 7(表7)において、この配列を、実験研究に適切なフォーマットで示す。この配列を、12残基が重複する、連続する15merに分解する。個々の15merに関して、乱雑性(15-merが重要なバインダーを含有する、合計47のうちのアロタイプの数)および推測される血清型を掲載した。Epibase(登録商標)のプロファイルおよびエピトープマップを図16および17に示す。
【0156】
IGKV1-39は強力な非自己DRB1バインダーを含有しないことが結論付けられた。通常、他のHLA遺伝子よりもDRB1に関して有意により多くのバインダーが発見された。このことは、DRB1グループに属するアロタイプはより強力なペプチドバインダーであるという実験的証拠に一致する。DRB1アロタイプに関する中程度の力のエピトープは、集団応答に寄与することが期待され、無視することはできない。この場合もやはり、非自己DRB1バインダーは、IGKV1-39において発見されなかった。
【0157】
抗原に対して上昇した液性応答において、観察されたTH細胞の活性化/増殖は、一般的にDRB1特異性に関連して解釈される。しかし、DRB3/4/5、DQおよびDP遺伝子の寄与の可能性は無視できない。DRB1と比較してこれらの遺伝子のより低い発現レベルが示され、DRB3/4/5、DQおよびDPに関する強力なエピトープのクラスについて焦点が集まった。「重要なエピトープ」は、任意のDRB1、DRB3/4/5、DQまたはDPのアロタイプに関する強力なバインダーまたはDRB1に関する中程度のバインダーである、それらのエピトープである。IGKV1-39は、DRB3/4/5、DQまたはDPに関する、強力なまたは中程度の非自己バインダーを含有しない。
【0158】
多数のペプチドが、生殖細胞系列配列中にさらに存在する(Table 6(表6)の括弧内の値)。このようなペプチドは、HLAに非常によく結合できるが、これらは自己であると推測され、したがって、非免疫原性である。合計で6種の強力なおよび16種の中程度の生殖細胞系列フィルター処理DRB1バインダーが、IGKV1-39において発見された。フレームワーク領域1からフレームワーク領域3までが、生殖細胞系列V-セグメントのVKI 2-1-(1)O12(VBase)、a.k.a. IGKV1-39*01(IMGT)に完全に一致する。フレームワーク領域4は、生殖細胞系列J-セグメントJK1(V-base) a.k.a. IGKJ1*01(IMGT)に完全に一致する。当然のことながら、これらのセグメントは、任意の非自己エピトープを含有しない。
【0159】
(実施例20)
IGKV1-39の生産特性
熱力学的に安定で、優れた発現収率を示す治療抗体をもたらす抗体発見基盤に対する大きな需要がある。これらの特徴は、生産中および製剤を患者に注射後の製剤原料の安定性を確実にすることにおいて重要である。さらに、優れた発現収率は、薬剤の製造コスト、したがって価格決定、患者のアクセスおよび採算性に直接影響を与える。事実上、今日の臨床使用における全治療抗体は、ヒトIgG1およびκ定常領域から構成されているが、特異性をもたらすさまざまな重鎖および軽鎖可変領域は使用されていない。ヒト可変重鎖および軽鎖ドメインは、80%を超える配列分岐を有するファミリーに分割できる。生殖細胞系列構造の中のこれらのファミリーの再構成実施例を、組合せ、安定性および収率に関して比較した場合、この遺伝子ファミリーは生物物理学的特性に関して等しくないことが明らかである。特に、VH3、VH1およびVH5は重鎖の好ましい安定性を有し、Vk1およびVk3は、軽鎖の最も優れた安定性および収率を有する。さらに、体細胞超突然変異過程の一部として突然変異が導入された場合、突然変異はVH/VLのペアリングに干渉し得る。さまざまな比率の突然変異がさまざまな軽鎖遺伝子を有することの固定VH鎖生産特性についての効果を評価するために、6例のナイーブな健康なドナーと、免疫化ドナー由来の重鎖を結合する44TTのパネルとの組合せから軽鎖(κおよびλ)のFabファージディスプレイライブラリを構築した。1ラウンドの選択後、TT結合Fabクローンを単離した。これらのいくつかは、さまざまな軽鎖を組み合わせたTTクローンPG1433と同じVH遺伝子を共有した。Fab軽鎖断片をκ発現ベクター内に再クローン化し、PG1433の重鎖をコードするDNAと組合せ、293の細胞内に形質移入し、特定のIgGの産生をELISAにより測定した。Table 8(表8)に実証したように、PG1433 VHをさまざまな軽鎖と組み合わせて含有する選択クローンは、PG1433 VHとIGKV1-39との組合せにおいて、5から10倍低いタンパク質発現を有した。コード領域内にアミノ酸の突然変異を含有するすべての軽鎖は、VHのペアリングを破壊させ、生産安定性を減少させる恐れがあることに留意されたい。したがって、望まれない免疫原性の可能性の減少に加えて、突然変異を含まない軽鎖IGKV1-39の使用が、特異性に寄与するさまざまなVH遺伝子の生産安定性および収率の改善に寄与することが期待される。実際、すべてがIGKV1-39とペアリングしたさまざまなVH遺伝子の形質移入により作製された安定なクローンは、広範囲に継代でき、Table 9(表9)に示す堅固な生産特性を未だ保有している。
【0160】
(実施例21)
完全ヒトVHおよびVL領域を発現するマウスの作製
本発明よるトランスジェニックマウスを、すでにヒトVH遺伝子座を含有するマウスと交配させる。ヒトVH遺伝子座を含む適切なマウスの例は、Taylorら、(1992)、Nucleic Acids Res 20: 6287〜95頁; Lonbergら、(1994)、Nature 368: 856〜9頁: Greenら、(1994)、Nat Genet 7: 13〜21頁; Dechiaraら、(2009)、Methods Mol Biol 530: 311〜24頁に開示されている。
【0161】
少なくともIGKV1-39トランス遺伝子およびヒトVH遺伝子座にヘテロ接合であるマウスの交配および選択後、選択されたマウスを、標的を用いて免疫化する。VH遺伝子を、上記のように収集した。この方法は、VH遺伝子がすでに完全にヒトであり、したがってヒト化が必要ないという有利性を有する。
【0162】
(実施例22)
関節リウマチなどの慢性炎症性疾患の治療のための、ヒトIL6を標的とする抗体の単離、特徴づけ、Oligoclonicsのフォーマット化および生産
ヒト組換えIL6を用いて免疫化したトランスジェニックマウス由来の脾臓VHレパートリーを、単一のヒトIGKV1-39-Cκ軽鎖(マウストランス遺伝子と同一)を有するファージディスプレイFabベクター中にクローン化し、免疫原であるヒトIL6に対するパニングに供した。パニングの2から4ラウンド後に得られたクローンを、それらの結合特異性に関して分析した。IL6-特異的Fab断片をコードするVH遺伝子を配列分析に供し、唯一のクローンを同定し、VH、DHおよびJHの利用を決定する。Fab断片をIgG1分子として再フォーマットし、一時的に発現させた。その後、唯一のクローンを結合アッセイにおける非競合に基づいてグループ化し、親和性および機能性分析に供する。次いで、最も強力な抗IL6 IgG1 mAbを、OligoclonicsフォーマットにさまざまなVH領域を含む、2、3、4または5種の重鎖の組合せとして、1種のIGKV1-39-Cベースのκ軽鎖と一緒に発現させ、IL-6との複合体の形成に関してインビトロで試験する。さらに、Oligoclonicsを、マウス由来ヒトIL-6のクリアランスに関してインビボで試験した。最も強力なクリアランス活性を有するOligoclonicsを選択し、マウスVH遺伝子を従来の方法に従ってヒト化した。ヒト化IgG1を哺乳動物細胞系に形質移入し、安定なクローンを作製する。最適なサブクローンを、マスターセルバンクの作製および臨床試験材料の作製のために選択する。
【0163】
本明細書に記載の多くのプロトコルは、ファージディスプレイライブラリの構築および対象となる抗原に結合するファージのパニングのための標準的プロトコルであり、例えば、Antibody Phage Display: Methods and Protocols、2002、編者: Philippa M. O'Brien、Robert Aitken、Humana Press、Totowa、New Jersey、USAに記載されている。
【0164】
免疫化
トランスジェニックマウスは、製造業者の指示書に従って、アジュバントSigma titerMaxを使用して、ヒトIL6により、2週間ごとに3回の免疫化を受ける。
【0165】
RNAの単離およびcDNAの合成
最終免疫化の3日後、マウスから脾臓およびリンパ節を摘出し、70ミクロンのフィルターを介してPBS pH 7.4を含有するチューブ内に通し、単一細胞懸濁液を作製する。リンパ細胞の洗浄およびペレット化後、製造業者のプロトコルに従って全RNAの単離のために、細胞をTRIzol LS Reagent(Invitrogen)に懸濁し、1マイクログラムのRNA、Superscript III RTとdT20の組合せを使用して、製造業者の手順(Invitrogen)に従って、逆転写反応に供する。
【0166】
Fabファージディスプレイライブラリの作製を、実施例2に記載のように実施する。
【0167】
コーティングしたイムノチューブにおけるファージの選択
ヒト組換えIL6を、5μg/mlの濃度でPBSに溶解し、MaxiSorp Nunc-Immuno Tube(Nunc 444474)に4℃において一晩コーティングする。コーティング溶液を廃棄後、チューブをPBS(ブロッキング緩衝液)中2%のスキムミルク(ELK)を用いて、室温(RT)において1時間ブロックする。平行して、0.5mlのファージライブラリを、1mlのブロッキング緩衝液と混合し、室温において20分間インキュベートする。ファージをブロッキング後、ファージ溶液を、IL6コーティングチューブに加え、ゆっくりと回転する基盤上で、RTにおいて2時間インキュベートし、結合させた。次に、チューブを、PBS/0.05% Tween-20を用いて10回洗浄し、その後、1mlの50mMグリシン-HCl、pH2.2と一緒に、RTにおいて10分間、回転盤上でインキュベートすることによってファージを溶出し、次いで、0.5mlの1M Tris-HCl、pH7.5を用いて収集した溶出液を直接中和した。
【0168】
ファージクローンの収集
O.D. 0.4の5mlのXL1-Blue MRF(Stratagene)培養液を、収集したファージ溶液に加え、振とうせずに37℃において30分間インキュベートし、ファージを感染させた。細菌を、カルベニシリン/テトラサイクリン、4%グルコース2*TYプレート上に播種し、37℃において一晩成長させた。
【0169】
ファージの作製
ファージを、Kramerら、2003(Kramerら、2003。Nucleic Acids Res. 31(11): e59)により記載されたように、ヘルパーファージ株としてVCSM13を使用して成長させ、処理した。
【0170】
ファージのELISA
ELISAプレートを、PBS中2.5マイクログラム/mlの濃度の100マイクロリットルのヒト組換えIL6/ウェルを用いて、4℃において一晩コーティングする。PBS中2マイクログラム/mlの濃度の100マイクロリットルのチログロブリンを用いてコーティングしたプレートを、陰性対照として使用する。ウェルを空にして、ペーパータオルで軽く拭くことによって乾かし、PBS-4%スキムミルク(ELK)で完全に満たし、室温で1時間インキュベートし、ウェルをブロックする。ブロッキング溶液を廃棄後、50μlのブロッキング溶液と予備混合したファージのミニプレップを加え、RTにおいて1時間インキュベートする。次に、PBS-0.05% Tween-20を用いた5回の洗浄ステップにより、未結合のファージを取り除く。結合したファージを、ウェルを100マイクロリットルの抗M13-HRP抗体コンジュゲート(ブロッキング緩衝液で1/5000に希釈)と一緒に、室温において1時間インキュベートすることによって検出する。遊離の抗体を、上記のような洗浄ステップを繰り返すことによって取り除き、その後、発色が可視化するまでTMB基質とインキュベートする。反応を、100マイクロリットルの2M H2SO4 /ウェルを加えることによって停止させ、ELISAリーダーで発光波長450nmにおいて分析する。
【0171】
配列決定
バックグラウンドシグナルの少なくとも3倍のシグナルを示すクローンを繁殖させ、DNAミニプレップ手順(Qiagen miniPrepの取り扱い説明書を参照されたい)に使用し、ヌクレオチド配列分析に供した。配列決定を、Big Dye 1.1キットに添付の取り扱い説明書(Applied Biosystems)に従って、ヒトIgG1重鎖のCH1領域の5'配列(FabディスプレイベクターMV1043中に存在する、図3および12)を認識するリバースプライマー(CH1_Rev1、Table 1(表1))を使用して実施した。マウスVH領域の配列を、DHおよびJH遺伝子セグメントの多様性に関して分析した。
【0172】
キメラIgG1の構築および発現
ベクターMV1057(図12および22)を、トランス遺伝子(IGKV1-39)L鎖の断片を、ヒトIgG1およびκ定常領域を含有するベクターpcDNA3000Neo(Crucell、Leiden、The Netherlands)の誘導体内にクローン化することによって作製した。VH領域をMV1057内にクローン化し、全構築体に関するヌクレオチド配列を、標準的技術に従って検証する。得られた構築体を、HEK293T細胞中に一時的に発現させ、キメラIgG1を含有する上清を得、前記の標準的手順を使用して精製する(Throsby, M. 2006、J Virol 80: 6982〜92頁)。
【0173】
IgG1の結合分析および競合分析
IgG1抗体を、上記のようなIL6コーティングプレートおよび抗ヒトIgGペルオキシダーゼコンジュゲートを使用して、ELISAにおいて滴定する。エピトープ認識に基づくグループ抗体に対する競合ELISAを、IL6コーティングプレート上で、Fabファージと、IgG1またはIL6に対する市販の抗体(例えば、Abcamカタログ番号ab9324)とを一緒にインキュベートすることによって実施し、その後、抗M13ペルオキシダーゼコンジュゲートを使用して結合Fabファージを検出する。
【0174】
IgG1の親和性測定
IL6に対する抗体の親和性を、Octet(ForteBio)についての定量的動態プロトコルを用いて決定した。抗体を、抗ヒトIgG Fc Captureバイオセンサー上に捕捉し、遊離のIL6に曝露し、個々の抗体のKdを算出するのにふさわしいソフトウェアを使用して分析する。
【0175】
IL6抗体の機能性活性
選択された抗体の、IL6とIL6受容体(IL6R)との結合を阻害する能力を試験するために、ELISAベースのアッセイを使用する。さまざまな濃度の抗体を、Naokoら、2007、Can. Res. 67: 817〜875頁に記載のように、固定濃度(10ng/ml)のビオチン化IL6と混合する。IL6-抗体免疫複合体を、固定化IL6Rに加える。ビオチン化IL6とIL6Rとの結合を、ホースラッディシュペルオキシダーゼ-標識ストレプトアビジンを用いて検出する。ELISAシグナルの減少が、阻害の測定結果である。IL6とIL6Rとの結合阻害の陽性対照として、抗IL6R抗体(Abcamカタログ番号ab34351: クローンB-R6)または抗IL6抗体(Abcamカタログ番号ab9324)のどちらかを使用する。選択された抗IL6抗体のインビトロのブロッキング活性を、IL6依存性細胞系7TD1を使用して、増殖アッセイにおいて測定する。簡潔にいうと、細胞を、さまざまな濃度のヒトIL6と一緒に、抗IL6抗体を伴って、または伴わないでインキュベートする。IL6の利用可能な量が、増殖の程度を決定する。したがって、加えた抗体がIL6の結合をブロックした場合、増殖の読み出しは、非結合抗体対照と比較して減少する。増殖を、BrdU増殖キット(Rocheカタログ番号11444611001)を使用する、製造業者の指示書に従った、5-ブロモ-2'-デオキシウリジン(BrdU)の、DNAへの取り込みによって測定する。
【0176】
抗IL6 Oligoclonicsの作製
最も強力な抗IL6抗体を、個々のエピトープグループから選択する。これらの抗体を発現する発現構築体を、さまざまな比率の3つの非競合グループにおいてHEK293T細胞内に形質移入する(1:1:1; 3:1:1; 1:3:1; 1:1:3; 3:3:1; 1:3:3; 3:1:3; 10:1:1; 1:10:1; 1:1:10; 10:10:1; 1:10:10; 10:1:10; 3:10:1; 10:3:1; 1:10:3; 3:1:10; 10:1:3; 1:3:10)。上清を含有する抗体を、上記のように収集し、精製し、特徴付けた。
【0177】
抗IL6 Oligoclonicsの複合体形成およびインビボクリアランス
抗IL6 Oligoclonicsの、免疫複合体形成能力を測定するため、およびこれらの複合体を分析するために、Size Exclusion Chromatography(SEC)を、Min-Soo Kimら、(2007) JMB 374: 1374〜1388頁)により開示された取り組みに従って使用し、さまざまな抗体とTNFαとで形成される免疫複合体を特徴付ける。さまざまなモル比の抗IL6 OligoclonicsをヒトIL6と混合し、4℃または25℃において20時間インキュベートする。混合物を、サイズ排除カラムに適合されたHPLC系において分析し、さまざまな溶出時間を、分子量基準を使用して分子量と相関させる。
【0178】
IL6と複合体を形成する抗体の能力は、インビボで循環からサイトカインを迅速にクリアにする能力と相関する。これは、マウス由来の放射標識IL6のクリアランスを測定することによって確認される。簡潔にいうと、雌の6〜8週齢のBalb/cマウスを得、実験の18時間前に動物にさまざまな用量の精製抗IL6 Oligoclonicsを、側尾静脈を介して静脈注射(IV)する。0日目に、マウスに、50マイクロリットルの放射標識IL-6(1×10E7cpm/mL)を、同じ条件下でIV注射する。血液サンプル(およそ50マイクロリットル)を、数回の時間間隔で採取し、4℃で保存する。このサンプルを、4000×gにおいて5分間遠心分離し、血清の放射活性を決定する。全薬物動態実験を、個々の処理に関して3匹の動物に同時に実施する。
【0179】
抗IL6 Oligoclonicの安定なクローンの作製および前臨床開発
リード抗IL6 Oligoclonicを、上で決定したインビトロおよびインビボの有効性に基づき選択する。マウスVH遺伝子を、標準的方法に従ってヒト化し、上記の発現ベクターにおいて、完全ヒトIGKV1-39軽鎖と組み合わせる。ヒト化方法の例は、リサーフェシング(Padlan, E. A.ら、(1991). Mol. Immunol.、28、489頁)、超ヒト化(Tan, P., D. A.ら、(2002) J. Immunol.、169、1119頁)およびヒトストリング内容最適化(Lazar, G. A.ら、(2007)、Mol. Immunol.、44、1986)などのパラダイムに基づく方法を含む。この3種の構築体を、所定の最適比(上記)で、選択圧G418下において標準的方法に従ってPER. C6細胞内に形質移入する。安定な、高生産性抗IL6 Oligoclonicクローンを選択し、作業用の条件付マスターセルバンクを作製する。
【0180】
【表1A】

【0181】
【表1B】

【0182】
【表2A】

【0183】
【表2B】

【0184】
【表3A】

【0185】
【表3B】

【0186】
【表4】

【0187】
【表5】

【0188】
【表6】

【0189】
【表7】

【0190】
【表8】

【0191】
【表9】

【0192】
【表10】

【0193】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともそのB細胞系統において、少なくとも免疫グロブリン軽鎖または重鎖をコードする核酸を含み、重鎖または軽鎖コード配列が、DNAの再構成および/または体細胞超突然変異に対する耐性を該核酸にもたらす手段を備えた、トランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項2】
げっ歯類、好ましくはマウスである、請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項3】
軽鎖/重鎖コード配列が、非ヒト哺乳動物のゲノムに組み込まれる、請求項1または2に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項4】
組み込みが、サイレンシングに対して耐性である遺伝子座内である、請求項3に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項5】
組み込みがRosa遺伝子座内である、請求項4に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項6】
軽鎖コード核酸が、前記核酸の発現を本質的にB細胞系統の細胞に限定するのを可能にする手段を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項7】
軽鎖コード核酸が、軽鎖コード核酸の発現を、主にB細胞の発生の特定段階期間に可能にする手段を備える、請求項6に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項8】
前記手段が、CD19、CD20、μHC、VプレB1、VプレB2、VプレB3、λ5、Igα、Igβ、κLC、λLCおよびBSAP(Pax5)の群から選択されるプロモーターを含む、請求項7に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項9】
前記手段がcre-lox系などを含む、請求項7または8に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項10】
軽鎖コード配列が、非ヒト哺乳動物によりコードされる少なくとも2種の異なる重鎖とペアリングできる軽鎖をコードする、請求項1から9のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項11】
内因性軽鎖をコードする内因性遺伝子座の少なくとも1つが、機能的にサイレンシングされる、請求項1から10のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項12】
内因性κ軽鎖遺伝子座が機能的にサイレンシングされる、請求項1から11のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項13】
軽鎖コード配列の配列がヒトVκ配列である、請求項1から12のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項14】
軽鎖コード配列が生殖細胞系列様配列である、請求項13に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項15】
軽鎖コード配列が生殖細胞系列配列である、請求項14に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項16】
生殖細胞系列配列がO12に基づく、請求項15に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項17】
軽鎖コード核酸が5'-3'方向に、: vκプロモーター、ヒトリーダー、ヒトV遺伝子、場合によりMoEκiエンハンサー、ラット定常領域(κ)および場合により(切断型)MoEκ3'エンハンサーを含む、請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項18】
成熟B細胞へ発生する細胞において、発生の特定段階期間の細胞における所望のタンパク性分子の発現のための発現カセットを備えるトランスジェニック非ヒト動物であって、前記カセットが、
宿主細胞への導入後、所望のタンパク性分子の発現のサイレンシングを防止するための手段および
所望のタンパク性分子の発現を宿主細胞の所望の発生段階に時期を合わせるための手段
を含む、トランスジェニック非ヒト動物。
【請求項19】
前記発現の時期を合わせる手段が、活性が本質的に発生の特定の段階に限定されるプロモーターである、請求項18に記載の、発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項20】
前記特定の段階が、成熟B細胞への発生の特定の段階にある前記細胞による、軽鎖分子の発現開始の直前または同時の段階から始まる、請求項18または19に規定される発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項21】
前記プロモーターが、CD19プロモーター、Igαプロモーター、Igβプロモーター、μhcプロモーター、vkプロモーターまたはそれらの類似体および/または相同体からなる群から選択される、請求項19または20に記載の、発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項22】
前記プロモーターが、cre様タンパク質の発現を駆動する、請求項19から21のいずれか一項に記載の、発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項23】
所望のタンパク性分子をコードする配列が、前記cre様タンパク質の作用により活性化される、請求項22に記載の、発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項24】
発現カセットである核酸セットを備えており、1つの核酸が請求項22に規定される発現カセットを含み、第2の核酸が、cre様タンパク質の作用により活性化され得る構成的プロモーターの制御下で、所望のタンパク性分子をコードする配列を含む、トランスジェニック非ヒト動物。
【請求項25】
前記活性化が、「終止」の除去により達成される、請求項23または24に記載の、発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項26】
前記所望のタンパク性分子が免疫グロブリンのポリペプチド鎖である、請求項18から25のいずれか一項に記載の、発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項27】
前記ポリペプチド鎖が軽鎖である、請求項26に記載の、発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項28】
前記ポリペプチド鎖をコードする配列が本質的に再構成不能にされている、請求項27に記載の、発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項29】
前記軽鎖が生殖細胞系列様軽鎖である、請求項27または28に記載の、発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項30】
前記生殖細胞系列様軽鎖がO12である、請求項29に記載の、発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項31】
前記再構成が、MoEκiエンハンサーなどの、体細胞超突然変異に少なくとも部分的に関与する要素の不在により防止される、請求項28から30に記載の、発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項32】
前記サイレンシングを防止する手段が、サイレンシングに対して耐性である宿主細胞のゲノム中の遺伝子座への挿入手段である、請求項18から31のいずれか一項に記載の、発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項33】
前記挿入手段が、サイレンシングに対して耐性である前記部位への相同組換え手段である、請求項32に記載の、発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項34】
前記遺伝子座がRosa遺伝子座である、請求項32または33に記載の、発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項35】
5'-3'方向に: vκプロモーター、ヒトリーダー、ヒトV遺伝子、場合によりMoEκiエンハンサー、ラット定常領域(κ)および場合により(切断型)MoEκ3'エンハンサーを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の、発現カセットを備えているトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項36】
請求項1から35のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物を、抗体応答が誘導されるような抗原に暴露するステップおよび抗原に特異的な抗体を単離するステップを含む、所望の抗体の作製方法。
【請求項37】
請求項1から36のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物を、抗体応答が誘導されるような抗原に曝露するステップおよびこのような抗体を産生する細胞を単離するステップ、前記細胞を培養し、場合により不死化し、前記抗体を収集するステップを含む、所望の抗体の作製方法。
【請求項38】
請求項1から37のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物を、抗体応答が誘導されるような抗原に曝露するステップおよびこのような抗体の少なくとも一部をコードする核酸を単離するステップ、前記核酸またはそれらのコピーもしくは誘導体を発現カセットに挿入するステップおよび前記抗体を宿主細胞において発現するステップを含む、所望の抗体の作製方法。
【請求項39】
請求項1から17のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト動物の子孫であって、少なくともそのB細胞系統中に、配列にDNAの再構成および/または体細胞超突然変異に対する耐性をもたらす手段と一緒に、重鎖または軽鎖コード配列を含む子孫。
【請求項40】
請求項18から35のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト動物の子孫であって、成熟B細胞に発生する細胞において発生の特定の段階期間にある細胞における所望のタンパク性分子の発現のための発現カセットを含む子孫。
【請求項41】
請求項1から17のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト動物から単離された細胞であって、配列にDNAの再構成および/または体細胞超突然変異に対する耐性をもたらす手段と一緒に、重鎖または軽鎖コード配列を含む細胞。
【請求項42】
請求項18から35のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト動物から単離された細胞であって、成熟B細胞に発生する細胞において発生の特定の段階期間にある細胞における所望のタンパク性分子の発現のための発現カセットを含む細胞。

【図1】
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【図2】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図13−4】
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【図13−5】
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【図13−6】
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【図13−7】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15−2】
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【図15−3】
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【図15−4】
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【図15−5】
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【図15−6】
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【図15−7】
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【図17】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図12−5】
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【図12−6】
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【図12−7】
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【図12−8】
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【図12−9】
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【図12−10】
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【図12−11】
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【図12−12】
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【図12−13】
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【図12−14】
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【図12−15】
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【図12−16】
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【図12−17】
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【図12−18】
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【図12−19】
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【図12−20】
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【図12−21】
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【図12−22】
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【図13−1】
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【図13−8】
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【図15−1】
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【図15−8】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図16−3】
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【図18−1】
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【図18−2】
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【図19−1】
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【図19−2】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【図20−3】
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【図21−1】
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【図21−2】
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【図21−3】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26−1】
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【図26−2】
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【図27】
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【公表番号】特表2011−525808(P2011−525808A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516168(P2011−516168)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050381
【国際公開番号】WO2009/157771
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(510340757)
【Fターム(参考)】