説明

抗癌組成物および抗感染疾患組成物ならびにこれらを使用する方法

【課題】本発明は一般的に癌の治療に関する。より詳しくは、本発明は有効な抗癌剤としての非病原性ウイルスの使用を課題とする。
【解決手段】上記課題は非病原性ウイルスの投与を介した対象における癌を治療および/または予防するための方法および組成物を提供することによって解決された。本発明はまた非病原性ウイルスの投与を介した対象における感染性疾患を治療および/または予防するための方法および組成物を提供する。本発明は非病原性ウイルスおよび末梢血単核細胞(PBMC)を含む組成物を提供する。本発明は更に少なくとも2つの異なる方法により不活性化された非病原性ウイルスを含む組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に癌の治療に関する。より詳しくは、本発明は有効な抗癌剤としての非病原性ウイルスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
略語の表
A549:ヒト肺上皮腫瘍細胞系統
AcNPV:Autographa californica核多角体病ウイルス
BMDC:骨髄由来樹状細胞
BV422:CCL21発現組み換えバキュロウイルス
BV762:Raf発現組み換えバキュロウイルス
CCL21:C−Cモチーフリガンド21ケモカイン;二次リンパ球様組織ケモカイン
CD86:樹状細胞成熟に関するマーカー
CR:完全応答
CTL:細胞毒性T溶解
DC:樹状細胞
FACS:蛍光活性化細胞ソーティング
GM−CSF:顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子
GV:顆粒症ウイルス
HIV:ヒト免疫不全ウイルス
i.t.:腫瘍内
mCCL21:マウスCCL21
MHC:主要組織適合性複合体
MHCII:MHCクラスII
MLA−DR:MHCクラスI抗原
MOI:感染の多重度
NPV:核多角体病ウイルス
PBMC:末梢血単核細胞
PFU:プラーク形成単位
qd:Quaque Die(毎日投与)
rhCCL21:組み換えヒトCCL21
s.c.:皮下
Sf(Sf9):Spodoptera frugiperda
Tn(Tn5):Trichoplusia ni
UV:紫外線
VLP:ウイルス様粒子。
【0003】
(背景技術)
免疫応答のモジュレーションは重要な抗癌の手法となっている。癌ワクチンおよび免疫療法の設計における多大な研究は腫瘍細胞中に選択的に存在する抗原の発見に着目している。独特の腫瘍の免疫原性は腫瘍特異的抗原または腫瘍特異的抗原を発現する遺伝子を含むワクチンを使用した腫瘍特異的免疫応答の誘導を可能にしている。ワクチン接種の方法は抗原提示細胞を修飾して腫瘍関連抗原を提示する適合的細胞方法を含んでいた。癌治療のための別の免疫学的手法はサイトカインおよびケモカインの投与を包含し、これは、アジュバントとして、または免疫エフェクター細胞の増大と収集の能力に基づいた抗癌治療法として治療能力を有する。例えば非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4参照。
【0004】
上記した進歩にもかかわらず、免疫学的方法の成功は、(1)治療が特定の癌の型に限定される腫瘍特異的抗原性、(2)腫瘍細胞による抗原提示の乏しさ、および(3)免疫サーベイランスを回避するために免疫抑制因子を生産する腫瘍細胞の能力により、限界があった。即ち効果的で広範に適用可能な癌治療法の必要性が当該分野においてなお存在している。この必要性を満足するために、本発明は癌の治療および予防のための新しい免疫刺激方法を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Homey et al.,(2002)Nat Rev Immunol 2:175−84
【非特許文献2】Parmiani et al.,(2002)J Natl Cancer Inst 94:805−18
【非特許文献3】Bronte (2001)Curr Gene Ther 1:53−100
【非特許文献4】Fehniger et al.,(2002)Cytokine Growth Factor Rev 13:169−83
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は動物において免疫応答を誘導する効力を有する不活性の非病原性のウイルスを含む組成物のある量を動物に投与することを含む動物における免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0007】
本発明は細胞において細胞死を誘発する効力を有する細胞に対する非病原性ウイルスのある量を含む組成物を投与することを含む細胞における細胞死を誘発する方法を提供する。
【0008】
更にまた、本発明は動物においてCTL応答を生じさせる効力を有する動物に対する非病原性ウイルスのある量を含む組成物を投与することを含み、該非病原性ウイルスが昆虫特異的ウイルスである動物におけるCTL応答を生じさせる方法を提供する。
【0009】
本発明は動物において腫瘍の生育を抑制する効力を有する非病原性昆虫特異的ウイルスを含む組成物のある量を動物に投与することを含む動物における腫瘍の生育を抑制する方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、癌を軽減する効力を有する非病原性ウイルスを含む組成物のある量を動物に投与することを含む動物における癌の軽減をもたらす方法を提供する。
【0011】
本発明は更に、動物において癌の転移を抑制する効力を有する非病原性ウイルスを含む組成物のある量を動物に投与することを含む動物における癌の転移を抑制する方法を提供する。
【0012】
本発明は動物に対する非病原性ウイルスを含む組成物を投与することを含む動物における癌の再攻撃に対する耐性を付与する方法を提供する。
【0013】
更にまた、本発明は動物に対する非病原性ウイルスを含む組成物を投与することを含む動物における非新生物性の増殖性障害を抑制する方法を提供する。
【0014】
本発明はまた、動物において過形成を抑制する効力を有する非病原性ウイルスを含む組成物のある量を動物に投与することを含む動物における過形成または化生を抑制する方法を提供する。
【0015】
本発明は個体における癌の症状1種以上を抑制する効力を有する非病原性ウイルスを含む組成物のある量を個体に投与することを含む癌の症状1種以上を抑制することを必要とする個体における上記抑制の方法を提供する。
【0016】
更にまた、本発明は感染性疾患から動物を保護する効力を有する不活性の非病原性ウイルスを含む組成物のある量を動物に投与することを含む感染性疾患から動物を保護する方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、動物において感染性疾患を抑制する効力を有する非病原性ウイルスを含む組成物のある量を動物に投与することを含む動物における感染性疾患を抑制する方法を提供する。
【0018】
本発明は細胞集団における細胞死を誘発する効力を有する該細胞集団の一部に対する非病原性ウイルスのある量を含む組成物を接触させることを含む細胞集団における細胞死を誘発する方法を提供する。
【0019】
本発明は、以下の工程、即ち、非病原性ウイルスを不活性化すること、ここで非病原性ウイルスは約5〜10μg/mlの濃度で非病原性ウイルスにトリオキサレンを添加し、そして、非病原性ウイルスに約15分間約365nmにおいて約6WでUVを照射することにより不活性化すること、不活性化非病原性ウイルスを医薬組成物に製剤すること、および、医薬組成物を疾患の治療の必要な対象に投与すること、を含む対象における治療の方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、以下の工程、即ち、化合物を腫瘍細胞および末梢血液単核細胞に接触させること;および、該腫瘍細胞の細胞死を測定することを含む、化合物のインビボの抗腫瘍活性を予測する方法を提供する。接触した腫瘍細胞の細胞死を誘発する化合物はインビボで活性であると予測される。
【0021】
更にまた、本発明は個体において癌を予防する効力を有する非病原性ウイルスを含む組成物のある量を個体に投与することを含む個体における癌を予防する方法を提供する。
【0022】
更にまた、本発明は非病原性ウイルスおよび末梢血単核細胞(PBMC)を含む組成物を提供する。
【0023】
本発明は更に少なくとも2つの異なる方法により不活性化された非病原性ウイルスを含む組成物を提供する。
【0024】
本発明は更に非病原性ウイルス、ただし非病原性ウイルスが遺伝子的不活性化、化学不活性化、光化学的不活性化、UV光不活性化、熱不活性化または放射線不活性化よりなる群から選択される2つ以上を用いて不活性化されているもの、およびPBMC少なくとも1つを含む医薬組成物を提供する。
【0025】
本発明はまた非病原性ウイルスを含む抗癌または抗感染性疾患組成物の製造プロセスを提供する。プロセスは、活性ウイルスを不活性化する効力を有する第1の不活性化剤にウイルスを曝露すること、活性ウイルスを不活性化する効力を有する第2の不活性化剤にウイルスを曝露すること、ウイルスを薬学的に許容される担体または賦形剤1つ以上と組み合わせること、および、ウイルスの不活性をインビトロ試験において確認することを含む。
【0026】
本発明はまた、不活性化非病原性ウイルスおよび少なくとも1つの抗原、ただし抗原は不活性化非病原性ウイルスとは異なるもの、および、少なくとも1つのアジュバントを含む医薬組成物を提供する。
【0027】
更にまた、本発明はアジュバント組成物を含む免疫刺激組成物を提供する。アジュバント組成物は不活性化非病原性ウイルスおよび少なくとも1つの抗原を含む。抗原はアジュバント組成物とは異なり、そして更に、免疫刺激組成物は抗原への免疫応答を増大させることができる。
【0028】
本明細書に開示した方法はヒト対象の治療を指向しているが、それらは治療を必要とする如何なる哺乳類の治療にも使用できる。一部の実施形態においては治療または予防できる癌および非新生物性の障害には、例えば肺、乳房、および皮膚のものが包含される。一部の実施形態においては、治療または予防できる感染性疾患にはウイルス感染が包含される。
【0029】
本発明はまた本明細書に開示する抗癌方法に従って使用される非病原性ウイルスは生存ウイルス、不活性化ウイルス、ウイルス粒子、ビロソーム、ウイルス様粒子、ウイルス閉鎖体またはウイルス成分を含むことができる。一部の実施形態においては、ウイルス成分は、例えばペプチド、蛋白、核酸、脂質、炭水化物およびその組み合わせを含む。一部の実施形態においては、ウイルス成分はgp64である。
【0030】
一部の実施形態においては、非病原性ウイルスは昆虫特異的ウイルスである。一部の実施形態においては昆虫特異的ウイルスはバキュロウイルス科のファミリーのウイルスである。例えば、本発明の非病原性ウイルスは核多角体病ウイルスまたは顆粒症ウイルスを含むことができる。一部の実施形態においては、非病原性ウイルスはAutographa
californica核多角体病ウイルスである。
【0031】
一部の実施形態においては腫瘍の治療のためには非病原性ウイルスおよび場合により抗原および/またはアジュバントを腫瘍内および/または腫瘍周囲に哺乳類対象に投与する。一部の実施形態においては、非新生物性増殖性障害の治療のためには、非病原性ウイルスおよび任意の抗原および/またはアジュバントを患部内および/または幹部周囲に哺乳類対象に投与する。治療方法は非病原性ウイルスを場合により他の抗癌剤と組み合わせて複数回投与することを包含する。
【0032】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
動物における免疫応答を誘導する方法であって、該動物において免疫応答を誘導するために有効な不活性の非病原性ウイルスを含む組成物のある量を該動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目2)
前記非病原性ウイルスは昆虫特異的ウイルスである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記昆虫特異的ウイルスがバキュロウイルス科のファミリーのウイルスである、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記組成物を腫瘍内、腫瘍周囲、患部内、患部周囲またはこれらの組み合わせにより投与する、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記不活性の非病原性ウイルスは、ウイルス粒子またはウイルス成分を含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記ウイルス成分は、gp64である、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記免疫応答は、感染性疾患に対する保護である、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記免疫応答は、癌に対する保護である、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記免疫応答は、T細胞の記憶応答を誘導する、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記免疫応答は、樹状細胞の成熟を促進する、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記感染性疾患は、ウイルス、カビまたは細菌である、項目7に記載の方法。
(項目12)
細胞における細胞死を誘導する方法であって、該細胞における細胞死を誘発するために有効な該細胞に対する非病原性ウイルスのある量を含む組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目13)
前記非病原性ウイルスは、昆虫特異的ウイルスである、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記非病原性ウイルスを含む組成物は、約500,000PFU当量未満または約500,000PFU等量未満の濃度でインビトロ試験において接触細胞の約50%超において細胞死を誘発する効力を有する、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記昆虫特異的ウイルスは、バキュロウイルス科のファミリーのウイルスである、項目13に記載の方法。
(項目16)
前記バキュロウイルス科のファミリーのウイルスは、顆粒症ウイルスまたは核多角体病ウイルスである、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記核多角体病ウイルスは、Autographa californica核多角体病ウイルスである、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記細胞は、癌細胞である項目12に記載の方法。
(項目19)
前記癌は、肺癌、乳癌、前立腺癌、結腸癌、胃癌、膵臓癌、腎臓癌または皮膚癌である、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記非病原性ウイルスは、不活性化ウイルス、ウイルス粒子、ビロソーム、ウイルス様粒子、ウイルス閉鎖体またはウイルス成分である、項目12に記載の方法。
(項目21)
前記ウイルス成分は、少なくとも2種のウイルス成分であり、該ウイルス成分は、ペプチド、蛋白、核酸、脂質または炭水化物からなる群より選択される、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記非病原性ウイルスは、非病原性ウイルスの膜蛋白を含む、項目12に記載の方法。
(項目23)
前記膜蛋白は、gp64である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記非病原性ウイルスは、不活性化ウイルスである、項目12に記載の方法。
(項目25)
前記活性化は、化学不活性化、UV光不活性化、放射線不活性化または遺伝子的不活性化である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記不活性化は、ソラレン不活性化、UV光不活性化またはその組み合わせである、項目24記に載の方法。
(項目27)
前記非病原性ウイルスを含む組成物は、本質的にバキュロウイルス科のファミリーのウイルスからなる、項目12に記載の方法。
(項目28)
前記組成物を別の薬剤と共同投与し、該薬剤が化学療法剤、抗癌剤、ワクチンまたはその組み合わせである、項目12に記載の方法。
(項目29)
前記組成物を第2の組成物と共に投与し、該第2の組成物は、抗原およびアジュバントを含む、項目12に記載の方法。
(項目30)
前記組成物および薬剤または該組成物および第2の組成物は、同時に共同投与される、項目28または29に記載の方法。
(項目31)
動物におけるCTL応答を生じさせる方法であって、該動物においてCTL応答を生じさせる効力を有する該動物に対する非病原性ウイルスのある量を含む組成物を投与する工程を包含し、ここで該非病原性ウイルスは、昆虫特異的ウイルスである、方法。
(項目32)
前記非病原性ウイルスを含む組成物は、約500,000PFU当量未満または約500,000PFU等量未満の濃度でインビトロ試験において接触細胞の約50%超においてCTL応答を生じさせる効力を有する、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記動物はヒトである、項目31に記載の方法。
(項目34)
前記昆虫特異的ウイルスは、バキュロウイルス科のファミリーのウイルスである、項目13に記載の方法。
(項目35)
動物における腫瘍の生育を抑制する方法であって、該動物において腫瘍の生育を抑制する効力を有する非病原性昆虫特異的ウイルスを含む組成物のある量を該動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目36)
前記非病原性ウイルスを含む組成物は、約500,000PFU当量未満または約500,000PFU等量未満の濃度でインビトロ試験において接触細胞の約50%超において細胞生育を抑制する効力を有する、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記インビトロ試験は、軟質寒天中の細胞生育である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記組成物を腫瘍内および/または腫瘍周囲に投与する、項目35に記載の方法。
(項目39)
前記動物は哺乳類である、項目35に記載の方法。
(項目40)
前記哺乳類は、ヒトまたはマウスである、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記組成物を多用量において投与する、項目35に記載の方法。
(項目42)
前記非病原性ウイルスは、不活性化ウイルス、ウイルス粒子、ビロソーム、ウイルス様粒子、ウイルス閉鎖体またはウイルス成分である、項目35に記載の方法。
(項目43)
前記ウイルス成分は、少なくとも2種のウイルス蛋白を含む、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記少なくとも2種のウイルス蛋白は、gp64を含む、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記ウイルス成分は、gp64である、項目42に記載の方法。
(項目46)
前記ウイルス成分は、核酸、脂質または炭水化物のうちの1種以上を含む、項目42に記載の方法。
(項目47)
前記非病原性ウイルスは、不活性化ウイルスである、項目35に記載の方法。
(項目48)
前記不活性は、熱不活性化、化学不活性化またはUV光不活性化である、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記不活性化は、ソラレン不活性化、UV光不活性化またはその組み合わせである、項目47に記載の方法。
(項目50)
動物における癌の治療方法であって、該動物において癌の症状を軽減する効力を有する非病原性ウイルスを含む組成物のある量を該動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目51)
前記非病原性ウイルスを含む組成物は、約500,000PFU当量未満または約500,000PFU等量未満の濃度でインビトロ試験において接触細胞の約50%超において細胞生育を防止する効力を有する、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記非病原性ウイルスは、昆虫特異的ウイルスである、項目50に記載の方法。
(項目53)
前記昆虫特異的ウイルスは、バキュロウイルス科のファミリーのウイルスである、項目52に記載の方法。
(項目54)
動物において癌の転移を抑制する効力を有する非病原性ウイルスを含む組成物のある量を該動物に投与することを含む該動物における癌の転移を抑制する方法。
(項目55)
前記非病原性ウイルスを含む組成物は、約500,000PFU当量未満または約500,000PFU等量未満の濃度でインビトロ試験において接触細胞の約50%超において細胞生育を防止する効力を有する、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記非病原性ウイルスは、昆虫特異的ウイルスである、項目54に記載の方法。
(項目57)
前記昆虫特異的ウイルスは、バキュロウイルス科のファミリーのウイルスである、項目56に記載の方法。
(項目58)
動物における癌の再攻撃に対して耐性を付与する方法であって、該動物において癌の再攻撃を抑制する効力を有する非病原性ウイルスを含む組成物を該動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目59)
前記非病原性ウイルスは、昆虫特異的ウイルスである、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記昆虫特異的ウイルスは、バキュロウイルス科のファミリーのウイルスである、項目59に記載の方法。
(項目61)
前記哺乳類は、ヒトまたはマウスである、項目58に記載の方法。
(項目62)
動物における非新生物増殖障害を抑制する方法であって、該動物において非新生物障害を抑制する効力を有する非病原性ウイルスを含む組成物のある量を該動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目63)
前記組成物を患部内、患部周囲またはこれらの組み合わせにより投与する、項目62に記載の方法。
(項目64)
前記動物は哺乳類である、項目62に記載の方法。
(項目65)
前記動物はヒトである、項目64に記載の方法。
(項目66)
動物における過形成を抑制する方法であって、該動物において過形成を抑制する効力を有する非病原性ウイルスを含む組成物のある量を該動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目67)
前記非病原性ウイルスは昆虫特異的ウイルスである、項目66に記載の方法。
(項目68)
前記昆虫特異的ウイルスは、バキュロウイルス科のファミリーのウイルスである、項目66に記載の方法。
(項目69)
前記動物は、ヒトまたはマウスである、項目66に記載の方法。
(項目70)
前記組成物を腫瘍内、腫瘍周囲、患部内、患部周囲またはこれらの組み合わせにより投与する、項目66に記載の方法。
(項目71)
動物における化生を抑制する方法であって、該動物において化生を抑制する効力を有する非病原性ウイルスを含む組成物のある量を該動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目72)
前記非病原性ウイルスは、昆虫特異的ウイルスである、項目71に記載の方法。
(項目73)
前記昆虫特異的ウイルスは、バキュロウイルス科のファミリーのウイルスである、項目72に記載の方法。
(項目74)
前記動物は、ヒトまたはマウスである、項目71に記載の方法。
(項目75)
前記組成物を腫瘍内、腫瘍周囲、患部内、患部周囲またはこれらの組み合わせにより投与する、項目71に記載の方法。
(項目76)
癌の症状1種以上を抑制することを必要とする個体における癌の症状1種以上を抑制する方法であって、該個体における癌の症状1種以上を抑制する効力を有する非病原性ウイルスのある量を含む組成物のある量を該個体に投与する工程を包含する、方法。
(項目77)
前記非病原性ウイルスは、昆虫特異的ウイルスである、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記昆虫特異的ウイルスは、バキュロウイルス科のファミリーのウイルスである、項目76に記載の方法。
(項目79)
前記組成物を腫瘍内、腫瘍周囲、患部内、患部周囲またはこれらの組み合わせにより投与する、項目76に記載の方法。
(項目80)
前記非病原性ウイルスは、不活性化ウイルス、ウイルス粒子またはウイルス成分を含む、項目76に記載の方法。
(項目81)
前記ウイルス成分は、gp64である、項目80に記載の方法。
(項目82)
前記癌の症状1種以上は、腫瘍生育、異常細胞生育、転移、血管形成、細胞死または細胞侵襲性である、項目76に記載の方法。
(項目83)
前記癌の症状1種以上は、体重減少、出血、呼吸困難、骨折、脆弱化された免疫系または疲労である、項目76に記載の方法。
(項目84)
感染性疾患から動物を保護する方法であって、該感染性疾患から該動物を保護する効力を有する不活性の非病原性ウイルスを含む組成物のある量を該動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目85)
前記非病原性ウイルスは、昆虫特異的ウイルスである、項目84に記載の方法。
(項目86)
前記昆虫特異的ウイルスは、バキュロウイルス科のファミリーのウイルスである、項目85に記載の方法。
(項目87)
前記バキュロウイルス科のファミリーのウイルスは、顆粒症ウイルスまたは核多角体病ウイルスである、項目86に記載の方法。
(項目88)
前記核多角体病ウイルスは、Autographa californica核多角体病ウイルスである、項目87に記載の方法。
(項目89)
前記活性化は、遺伝子的不活性化、化学不活性化、光化学的不活性化、UV光不活性化、熱不活性化または放射線不活性化である、項目84に記載の方法。
(項目90)
前記遺伝子的不活性化は、温度感受性突然変異である、項目89に記載の方法。
(項目91)
細胞集団において細胞死を誘発する方法であって、該細胞集団において細胞死を誘発する効力を有する該細胞集団の一部に対する非病原性ウイルスのある量を含む組成物を接触させる工程を包含する、方法。
(項目92)
前記非病原性ウイルスは、昆虫特異的ウイルスである、項目91に記載の方法。
(項目93)
前記細胞集団の一部は、該集団の約30%以下である、項目91に記載の方法。
(項目94)
前記細胞集団の一部は、該集団の約20%以下である、項目91に記載の方法。
(項目95)
前記昆虫特異的ウイルスは、バキュロウイルス科のファミリーのウイルスである、項目92に記載の方法。
(項目96)
前記バキュロウイルス科のファミリーのウイルスは、顆粒症ウイルスまたは核多角体病ウイルスである、項目95に記載の方法。
(項目97)
前記核多角体病ウイルスは、Autographa californica核多角体病ウイルスである、項目96に記載の方法。
(項目98)
前記非病原性ウイルスは、不活性化ウイルス、ウイルス粒子、ビロソーム、ウイルス様粒子、ウイルス閉鎖体またはウイルス成分である、項目91に記載の方法。
(項目99)
前記細胞集団は、末梢血細胞、腫瘍細胞、NK細胞またはマクロファージを含む、項目91に記載の方法。
(項目100)
下記工程:
(a)非病原性ウイルスを不活性化する工程であって、ここで該非病原性ウイルスは、約5〜10μg/mlの濃度で非病原性ウイルスにトリオキサレンを添加し、そして、該非病原性ウイルスに約15分間約365nmにおいて約6WでUVを照射することにより不活性化する、工程;
(b)該不活性化非病原性ウイルスを医薬組成物に製剤する工程;および、
(c)該医薬組成物を疾患の治療の必要な対象に投与する工程;
を含む、その必要がある対象における疾患を処置する方法。
(項目101)
前記昆虫特異的ウイルスは、バキュロウイルス科のファミリーのウイルスである、項目100に記載の方法。
(項目102)
前記疾患は、癌または感染性疾患である、項目100に記載の方法。
(項目103)
下記工程:
a)化合物を腫瘍細胞および末梢血液単核細胞に接触させる工程;および、
b)該腫瘍細胞の細胞死を測定する工程;
を包含し、
ここで該接触した腫瘍細胞の細胞死を誘発する化合物は、インビボで活性であると予測される、
化合物のインビボの抗腫瘍活性を予測する方法。
(項目104)
前記化合物は、不活性化ウイルス、ウイルス粒子、ビロソーム、ウイルス様粒子、ウイルス閉鎖体またはウイルス成分である、項目103に記載の方法。
(項目105)
前記化合物は、バキュロウイルス科のファミリーから誘導される、項目103に記載の方法。
(項目106)
前記化合物は、昆虫特異的ウイルスである、項目103に記載の方法。
(項目107)
前記腫瘍細胞は、A549細胞、3LL−HM細胞、4T1細胞、MT901細胞、MAT BIII細胞、B16黒色腫細胞またはMG−63細胞である、項目103に記載の方法。
(項目108)
動物における感染性疾患を抑制する方法であって、動物において感染性疾患を抑制する効力を有する非病原性ウイルスを含む組成物のある量を該動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目109)
前記非病原性ウイルスは、昆虫特異的ウイルスである、項目108に記載の方法。
(項目110)
前記昆虫特異的ウイルスは、バキュロウイルス科のファミリーのウイルスである、項目109に記載の方法。
(項目111)
前記バキュロウイルス科のファミリーのウイルスは、顆粒症ウイルスまたは核多角体病ウイルスである、項目110に記載の方法。
(項目112)
前記核多角体病ウイルスは、Autographa californica核多角体病ウイルスである、項目111に記載の方法。
(項目113)
前記非病原性ウイルスは、不活性化ウイルス、ウイルス粒子、ビロソーム、ウイルス様粒子、ウイルス閉鎖体またはウイルス成分である、項目108に記載の方法。
(項目114)
非病原性ウイルスおよび薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
(項目115)
前記非病原性ウイルスは、不活性ウイルスである、項目114に記載の医薬組成物。
(項目116)
前記非病原性ウイルスは、昆虫特異的ウイルスである、項目114に記載の医薬組成物。
(項目117)
前記昆虫特異的ウイルスは、バキュロウイルス科のファミリーのウイルスである、項目116に記載の医薬組成物。
(項目118)
前記バキュロウイルス科のファミリーのウイルスは、顆粒症ウイルスまたは核多角体病ウイルスである、項目117に記載の医薬組成物。
(項目119)
前記核多角体病ウイルスは、Autographa californica核多角体病ウイルスである、項目118に記載の医薬組成物。
(項目120)
前記非病原性ウイルスは、不活性ウイルスである、項目114に記載の医薬組成物。
(項目121)
前記不活性化は、遺伝子的不活性化、化学不活性化、光化学的不活性化、UV光不活性化、熱不活性化または放射線不活性化の1種以上である、項目120に記載の医薬組成物。
(項目122)
前記不活性化は、遺伝子的不活性化、化学不活性化、光化学的不活性化、UV光不活性化、熱不活性化または放射線不活性化の少なくとも1つである、項目121に記載の医薬組成物。
(項目123)
前記遺伝子的不活性化は、熱感受性突然変異である、項目121に記載の医薬組成物。
(項目124)
少なくとも2つの異なる方法により不活性化された非病原性ウイルスを含む、医薬組成物。
(項目125)
前記ウイルスは、少なくとも3つの異なる方法で不活性化されている、項目124に記載の医薬組成物。
(項目126)
非病原性ウイルスおよび担体を含み、該担体がリポソーム、ウイルス様粒子、ビロソームまたは蛋白デリバリーベヒクルである、医薬組成物。
(項目127)
前記ウイルスは不活性である、項目126に記載の医薬組成物。
(項目128)
前記不活性化は、遺伝子的不活性化、化学不活性化、光化学的不活性化、UV光不活性化、熱不活性化または放射線不活性化からなる群から選択される少なくとも2つの異なる方法である、項目124に記載の医薬組成物。
(項目129)
前記不活性化は、遺伝子的不活性化、化学不活性化、光化学的不活性化、UV光不活性化、熱不活性化または放射線不活性化からなる群から選択される少なくとも3つの異なる方法である、項目125に記載の医薬組成物。
(項目130)
非病原性ウイルスおよび少なくとも1つのPBMCを含む医薬組成物であって、該非病原性ウイルスは、遺伝子的不活性化、化学不活性化、光化学的不活性化、UV光不活性化、熱不活性化または放射線不活性化からなる群から選択される2つ以上を用いて不活性化されている、医薬組成物。
(項目131)
癌細胞少なくとも1つを更に含む、項目130に記載の医薬組成物。
(項目132)
非病原性ウイルスを含む抗癌または抗感染性疾患組成物の製造プロセスであって、該方法が下記工程:
(a)活性ウイルスを不活性化する効力を有する第1の不活性化剤にウイルスを曝露すること;
(b)活性ウイルスを不活性化する効力を有する第2の不活性化剤に該ウイルスを曝露すること;
(c)該ウイルスを薬学的に許容される担体または賦形剤1つ以上と組み合わせること;および、
(d)該ウイルスの不活性をインビトロ試験において確認すること;
を含む、プロセス。
(項目133)
安全性、薬効または毒性の1つ以上の分析のための該抗癌組成物の任意の部分を収集することを更に含む項目132記載のプロセス。
(項目134)
該第1の不活性化剤が遺伝子的不活性化、化学不活性化、光化学的不活性化、UV光不活性化、熱不活性化または放射線不活性化である項目133記載のプロセス。
(項目135)
該第2の不活性化剤が遺伝子的不活性化、化学不活性化、光化学的不活性化、UV光不活性化、熱不活性化または放射線不活性化であるが、ただし第1の不活性化剤が第2の不活性化剤と同じではない項目133記載のプロセス。
(項目136)
該抗癌または抗感染性疾患組成物の該任意の部分の安全性、薬効または毒性の1つ以上を第2の抗癌組成物の安全性、薬効または毒性の歴史的データと比較することを更に含む項目133記載のプロセス。
(項目137)
ウイルスの不活性をプラーク形成試験により確認する項目132記載のプロセス。
(項目138)
該プラーク形成試験がSf9細胞を用いて行われる項目137記載のプロセス。
(項目139)
EMを用いて非病原性ウイルスを計数することを更に含む項目132記載のプロセス。
(項目140)
該ウイルスの不活性の確認を(a)および(b)の各々の後に行う項目132記載のプロセス。
(項目141)
該抗癌または抗感染性疾患組成物の販売の前に該比較の結果をコンパイルする必要がある項目136記載のプロセス。
(項目142)
該非病原性ウイルスが医薬組成物として製剤される項目1、12、31、35、50、54、58、62、66、71、76、84、91または108の何れか1項に記載の方法。
(項目143)
不活性化非病原性ウイルスおよび抗原少なくとも1つ、ただし抗原は不活性化非病原性ウイルスとは異なるもの、および、アジュバント少なくとも1つを含む医薬組成物。
(項目144)
アジュバント組成物を含む免疫刺激組成物であって、該アジュバント組成物は不活性化非病原性ウイルス、抗原少なくとも1つを含み、該抗原はアジュバント組成物とは異なり、そして更に該免疫刺激組成物は抗原に対する免疫応答を増強することができる上記組成物。
(項目145)
該不活性化非病原性ウイルスがウイルス粒子、ビロソーム、ウイルス様粒子、ウイルス閉鎖体またはウイルス成分を含む項目144記載の免疫刺激組成物。
(項目146)
該癌細胞が上皮癌細胞である項目18記載の方法。
(項目147)
非病原性ウイルスおよび末梢血単核細胞(PBMC)を含む医薬組成物。
(項目148)
項目147の医薬組成物を癌の治療の必要な個体に投与することを含む該治療方法。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は肺癌の3LLマウスモデルにおいてバキュロウイルス発現CCL21が腫瘍生育を抑制し完全な腫瘍の減衰を誘導することを示す折れ線グラフである。実施例2に示すとおり、CCL21の投与には記載した濃度におけるCCL21の腫瘍内注射6回が含まれる。注射あたりの用量を増大させると腫瘍の抑制および完全応答の頻度も増大した。一元ANOVA分析を第24日に収集したデータを用いて実施した。アルブミン対投与群、p<0.001;25μgmCCL21対6μg/AlbmCCL21、P<0.01;25μgmCCL21対25μgrhCCL21、P>0.05.mCCL21、マウスCCL21;rhCCL21、組み換えヒトCCL21;B Gold、バキュロウイルスから発現された組み換えマウスCCL21を比較対照ロット(Gold標準)として使用;Alb、アルブミン;qd、Quaque Die(毎日投与)、CR、完全応答とする。
【図2】図2は実施例3に記載したバキュロウイルス発現CCL21の投与後の乳癌の4T1マウスモデルにおける腫瘍成育の抑制を示す折れ線グラフである。rhCCL21は組み換えヒトCCL21;qdは、Quaque Die(毎日投与)である。
【図3】図3は実施例6に示すバキュロウイルス発現CCL21の投与後の自発的4T1肺転移の抑制を示す棒グラフである。黒は腫瘍の外科的切除を受けていない動物;斜線はCCL21の最終投与の1日後に腫瘍を外科的に切除した動物(Surg)である。
【図4】図4は実施例5に示すとおり、バキュロウイルス発現CCL21の投与が腫瘍の再攻撃に対する耐性を付与することを示す折れ線グラフである。慨すれば、4T1腫瘍をBalb/cマウスにおいて樹立し、そして宿主マウスのサブセットにバキュロウイルス発現CCL21を腫瘍内投与により投与した。CCL21の最終投与の1日後、腫瘍を外科的に切除した。腫瘍切除の1日後、マウスの元の腫瘍とは逆側に4T1細胞を皮下注射することにより再攻撃した。Naiveは以前に腫瘍を保有したことがなくCCL21投与を受けたことがないマウスであり;Alb+Surg+Re−chlgは4T1腫瘍を以前に保有したことがありアルブミン投与を受けているマウス;hCCL21+Surg+Re−chlgは以前に4T1腫瘍を保有したことがありCCL21投与を受けているマウスである。Alb+Surg+Re−chlg群においては、10匹中1匹のマウスが腫瘍の成育に対して完全な耐性を示した。hCCL21+Surg+Re−chgにおいては、10匹中6匹のマウスが腫瘍成育への完全な耐性を示した。
【図5】図5A〜5Bは腫瘍再攻撃に対するバキュロウイルス誘導耐性を示す。3LL腫瘍モデルにおいて、バキュロウイルス誘導CCL21で良好に治療できた動物は長期間にわたり同じ腫瘍による再攻撃に対して耐性である。図5Aはバキュロウイルス誘導マウス組み換えCCL21の投与後に腫瘍の完全な減衰を示し(例えば図1参照)、そしてバキュロウイルス誘導CCL21の最終投与の後60、70および80日において同じ腫瘍で逆側の腹部を再攻撃した動物を用いた実験を総括したものである。動物は少なくとも70日間再攻撃に耐性であった。図5BはバキュロウイルスCCL21投与終了および完全な減衰の誘導の後30日後に接種(「腫瘍ブースト」)され、そしてバキュロウイルス誘導CCL21の最終投与後80、120、160および200日に同じ腫瘍で逆側の腹部を再攻撃した動物を用いた実験を総括したものである。これらの結果は腫瘍ブーストを用いることにより少なくとも200日まで腫瘍再攻撃への耐性を延長できることを示している。
【図6】図6は酵母またはE.coliにおいて生産されたCCL21が肺癌の3LL腫瘍モデルにおける腫瘍の減衰をもたらさないことを示す折れ線グラフである。hCCL21−B(HBPG1)はバキュロウイルスロット番号HBPG1において発現された組み換えヒトCCL21;hCCL21−B1/2(HBPG1)はバキュロウイルスロット番号HBPG1において発現された組み換えヒトCCL21をhCCL21(HBPG1)」の濃度の二分の一に希釈したものであり;hCCL21−Bconc(HBPG1)は濃縮された(10mg/ml)溶液から誘導されたバキュロウイルスロット番号HBPG1において発現された組み換えヒトCCL21;hCCL21−Y(HYPG4)は酵母ロット番号HYPG4において発現された組み換えヒトCCL21;hCCL21−E(HEDS4)はE.coliロット番号HEDS4において発現された組み換えヒトCCL21;qd、Quaque Die(毎日投与)である。hCCL21−BまたはhCCL21−B新規を投与されたマウスと比較した場合のアルブミン投与マウスにおける腫瘍生育の抑制、p<0.01;hCCL21−BconcまたはhCCL21−B1/2を投与されたマウスにおける腫瘍生育の抑制、P<0.05。
【図7】図7はインビボでは不活性であるバキュロウイルス発現CCL21調製物のインビトロの化学走性活性を示す折れ線グラフである。化学走性試験は本質的にPCT国際出願WO00/38706号に記載の通り実施することができる。インビボ活性は実施例2〜6に記載の通り試験した。HBDS2.pはバキュロウイルスロット番号HBDS2.pから誘導された組み換えヒトCCL21であり;MBDS2.cはバキュロウイルスロット番号MBDS2.cから誘導された組み換えマウスCCL21であり;HBPG1はバキュロウイルスロット番号HBPG1から誘導された組み換えヒトCCL21であり;HBPG1+HBDS2.vpはビニルピリジンを投与された等モル比のHBDS2と混合されたHBPG1であり;HYPG4は酵母ロット番号HYPG4から誘導された組み換えヒトCCL21であり;HEDS4はE.coliロット番号HEDS4から誘導された組み換えヒトCCL21である。
【図8】図8は記載した試料を用いて調製し、そして次に抗gp64抗体を用いてプローブしたウエスタンブロットを示す。レーン1は精製されたバキュロウイルス;レーン2は未感染のTn5細胞培養物からえたコンディショニングされた培地;レーン3は野生型バキュロウイルスに感染させたTn5細胞からえたコンディショニングされた培地;レーン4は組み換えヒトCCL21をコードするBV422に感染させたTn5細胞培養物からえたコンディショニングされた培地;レーン5は感染させていないTn5細胞ペレット;レーン6は野生型バキュロウイルスに感染させたTn5培養物からえた細胞ペレット;レーン7はBV422に感染させたTn5培養物からえた細胞ペレット;レーン8は50kDa超の夾雑物を除去した後の濾液であるバキュロウイルスロット番号HBPG1から誘導したヒト組み換えCCL21;レーン9は50kDa超の夾雑物を含有するレーン8における試料の残存物(蛋白5μg);レーン10は50kDa超の夾雑物を含有するレーン8における試料の残存物(蛋白10μg);レーン11は未濾過の組み換えヒトバキュロウイルス誘導CCL21ロット番号HBPG1の5μg;レーン12は未濾過の組み換えヒトバキュロウイルス誘導CCL21ロット番号HBPDS4の5μg;レーン13は未濾過の組み換えヒトバキュロウイルス誘導CCL21ロット番号HBMC1の5μg;レーン14は未濾過の組み換えヒトバキュロウイルス誘導CCL21ロット番号HBDS1の5μgである。
【図9】図9は調製物から高分子量の夾雑物を除去するための濾過によりバキュロウイルス発現CCL21の抗腫瘍活性が除去されることを示す折れ線グラフである。精製されたバキュロウイルス、CCL21調製物の夾雑物(図8)はバキュロウイルス発現CCL21調製物と同様に効果的に腫瘍生育を抑制する。
【図10A】図10Aは実施例8に示すとおり、記載した組成物に曝露した場合のインビトロの腫瘍細胞のPBMC媒介毒性を示す折れ線グラフである。細胞ペレット試料は上澄み試料よりも大きい細胞毒性応答を誘導した。CCL21発現バキュロウイルスまたは対照バキュロウイルスBV762の何れかを感染させた細胞は顕著な細胞毒性を示した。GAMは細胞培養によりコンディショニングされていない生育試験培地(対照);BV422はCCL21発現バキュロウイルス;BV762はRaf発現バキュロウイルスである。
【図10B】図10Bは実施例8に記載するとおり、0.2μmのフィルターを通した濾過の後の記載した組成物に曝露した場合のインビトロの腫瘍細胞のPBMC媒介毒性を示す折れ線グラフである。濾過による高分子量の物質の除去により細胞毒性は顕著に低下した。細胞ペレット試料は残存する軽度〜中等度の細胞毒性を示していた。
【図11A】図11Aは記載した刺激物質に応答したCD86およびMHCIIの樹状細胞発現における変化を示す棒グラフである。マウス骨髄誘導樹状細胞を調製し、実施例9に記載するとおり分析した。HIVgag蛋白を発現するワクシニアウイルス(VLP)を陽性対照として使用した。VLPと同様、生存バキュロウイルスもCD86およびMHCIIの発現を誘導し、DC成熟を示していた。黒はCD86の発現;灰色はMHCIIの発現を示す。
【図11B】図11Bは記載した刺激物質に応答したCD86およびMHCIIの樹状細胞発現における変化を示す棒グラフである。ヒト単球誘導樹状細胞を調製し、実施例9に記載するとおり分析した。HIVgag蛋白を発現するワクシニアウイルス(p55VLP)を陽性対照として使用した。p55VLPと同様、生存バキュロウイルスもDC成熟を誘導した。黒はCD86の発現;灰色はHLA−DRの発現を示す。
【図12】図12は実施例10に記載したとおり実施したクロム放出試験の結果を示す。HIVgag蛋白を発現するワクシニアウイルス(VLP)を陽性対照として使用した。VLPと同様、生存バキュロウイルスも細胞毒性T細胞溶解を誘導する強力なアジュバントとして作用する。
【図13】図13は実施例8に示すとおり、記載した組成物に曝露した場合のインビトロの腫瘍細胞のPBMC媒介毒性を示す。
【図14】図14はインビボの抗腫瘍活性とのPBMC細胞毒性試験の相関性を示す。
【図15】図15は抗gp64モノクローナル抗体によるバキュロウイルス腫瘍細胞殺傷のブロックを示す。実施例13参照。
【図16】図16は不活性化されたバキュロウイルスにより誘導されたインビトロのPBMC誘導腫瘍細胞殺傷を示す。実施例14参照。
【図17】図17は腫瘍細胞がバキュロウイルスに対する第1の標的であることを示す。実施例15参照。
【図18】図18はバキュロウイルスを用いた肺癌の動物モデルにおける腫瘍生育の抑制を示す。実施例16参照。
【図19】図19はインビボおよびインビトロの病原性ウイルス攻撃からのバキュロウイルス誘導保護を示す。水疱性口内炎ウイルス(VSV)を用いてインビトロおよびインビボで細胞を攻撃した。実施例17参照。
【図20】図20はバイスタンダー効果を示す。最大殺傷効果はバキュロウイルスに腫瘍細胞の集団の僅か20%しか暴露しなかった場合でも達成される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
(A1.非病原性ウイルスの抗腫瘍活性)
がん治療の免疫学的方法は治療剤としてのケモカインの使用を含む。ケモカインはその機能が(a)リンパ球の遊走および活性化を媒介すること;(2)血管形成を調節すること;および(c)免疫のホメオスタシスおよび二次的リンパ様臓器構造を維持すること、を含む相同性蛋白のファミリーである。Baggiolini et al.,(1997)Annu Rev Immunol 15:675−705;Jung&Littman(1999)Curr Opin Immunol 11:319−25;Homey et al.(2002)Nat Rev Immunol 2:175−84を参照できる。
【0035】
実施例1〜6に記載の通り二次リンパ様組織ケモカイン(本明細書においては「CCL21」と称する;当該分野ではSLC、Exodus−2および6C−カインとしても知られている)を用いる癌免疫療法の開発の過程において、本発明者等は以外にも非病原性ウイルスが強力な抗腫瘍剤であることを発見した。実施例7を参照できる。
【0036】
即ち、本発明は特に、対象への非病原性ウイルスの投与を介した、癌の生育の抑制、癌の転移の抑制および癌の耐性を含む抗癌療法の必要な対象の治療方法を提供する。本明細書に開示した癌の免疫療法は腫瘍特異的抗原の発見に依存していない点に意義がある。むしろ、非病原性ウイルスの投与が広範に適用され、複数の腫瘍型において効果的である。実施例2〜6を参照できる。
【0037】
特定の作用機序に限定されることは意図しないが、本発明者等は非病原性ウイルスの抗癌活性は少なくとも部分的にはその免疫刺激特性に起因すると考える。例えば、バキュロウイルスはインビボおよびインビトロの両方で樹状細胞の成熟および細胞溶解性T細胞(CTL)の応答を活性化する。実施例9〜10を参照できる。また、Gronowski
et al.,(1999)J Virol.73:9944−51も参照できる。
【0038】
本明細書において有効な抗腫瘍組成物を説明する際に使用するは「ウイルス」という用語は、生存ウイルス、不活性化ウイルス、ウイルス粒子、ウイルス閉鎖体、ビロソーム、ウイルス様粒子、ウイルス成分およびこれらの組み合わせを包含する。
【0039】
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)は一般的に場合によりリン脂質と組み合わせてまたは共に製剤される非病原性ウイルスに由来する蛋白1種以上を含む。一部の実施形態においては、ビロソームおよびVLPは非複製性であり、ネイティブのウイルスゲノムを全く含まない。ウイルス蛋白は組み換えにより作成するか、または全ウイルスから単離してよい。VLPは更にWO03/024480、WO03/024481、Niikura et al.,(Chimeric Recombinant Hepatitis E Virus−Like Partices as an Oral Vaccine Vehicle Presenting Foreign Epitopes“
Virology(2002)293:273−280);Lenz et al.,(Papillomarivus−Like Particles Induce Acute Acrivation of Dendritic Cells,Journal of Immunology(2001)5246−5355);Pinto,et
al.,(Cellular Immune Responses to Human
Papillomavirus (HPV)−16 L1 Healthy Volunteers Immunized with Recombinant HPV−16
L1 Virus−Like Particles”,Journal of Infectious Diseases (2003)188:327−338);Gerber et al.,(Human Papillomavirus Virus−Like Particles Are Efficient Oral Immunogens when Coadministered with Escherichia coli Heat−Labile Enterotoxin Mutant R192G or CpG),Journal of Virology(2001)75(10):4752−4760に記載されている。ビロソームは更に例えばGluck et al.,(New Technology Platforms in the Development of Vaccines for the Future,Vaccine(2002)20:B10−B16)に記載されている。
【0040】
「生存ウイルス」という用語はその感染性がネイティブのウイルスと同様または同一であるウイルスを指す。特に生存ウイルスはそのネイティブの宿主細胞に感染できる。
【0041】
「不活性化されたウイルス」という用語は後に記載するとおり、ネイティブの宿主細胞中で複製できないウイルスを指す。例えば哺乳類宿主細胞中で複製できない非病原性ウイルスは同様に、不活性化されればそのネイティブの宿主細胞中で複製できない。不活性化されたウイルスは生存ウイルスの投与に関わる安全性の問題点を最小限にするために使用できる。「不活性化剤」とはウイルスを不活性化するために使用する薬剤である。
【0042】
「ウイルス粒子」という用語は、構成されるか、またはそのネイティブな形態から修飾され、これによって天然の宿主細胞中では複製できないウイルスを指す。ウイルス粒子を調製する方法は当該分野で知られている。ウイルス様粒子の構造および機能的な一体性は電子顕微鏡観察、免疫原性分析および標準的なプラーク試験により評価することができる。例えばHamakubo et al.,WO02/06305は摘出バキュロウイルス様粒子の発生を論じている。
【0043】
米国特許5,750,383号はマーカーレスキュー系を用いたバキュロウイルス粒子の調製方法を開示している。方法は遺伝子的に修飾されたバキュロウイルスを用い、これはウイルス複製に必須の遺伝子(例えばgp64)を欠いており、そして遺伝子的不全を補う細胞において増殖する。
【0044】
「ウイルス閉鎖体」という用語はウイルスコード蛋白性結晶内に包埋された複数のウイルス粒子を含む構造を指す。蛋白結晶が溶解すると、複数のウイルス粒子は放出され、各ウイルス粒子はその後、宿主細胞に感染できるようになる。
【0045】
ウイルスおよび特にバキュロウイルスの生産は、当該分野でよく知られた手法を用いて達成される。クローニングされた細胞系統をインビトロの培地中に準備し、ウイルスを接種し、そしてウイルスの製造が可能となるために十分な時間および有効な条件下にインキュベートする。培養条件、例えば細胞密度、感染の多重性、時間、温度、培地等は重要ではなく当業者の知るとおり容易に決定することができる。
【0046】
バキュロウイルス生産の代表的な方法は例えば実施例1に記載するとおりであり、これはSpodoptera frugiperda(Sf)を使用する。別の代表的な宿主細胞および増幅方法は米国特許5,405,770号(Heliothis subflexa細胞系統)および6,379,958(Spodoptera frugiperda細胞系統、これは進歩したバキュロウイルス生産を示す)に記載されている。
【0047】
インキュベーションの後、このようにして生産されたウイルス剤を当該分野で知られた手法、例えばポリエチレングリコール(PEG)沈殿、超遠心分離およびクロマトグラフィー精製、例えばイオン交換樹脂の使用、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーまたはこれらの組み合わせにより回収する。米国特許出願2002/0015945(クロマトグラフィー精製);米国特許6,194,192(硫酸化フコース含有多糖類へのウイルス吸着)を参照できる。
【0048】
「ウイルス成分」という用語は本明細書においては、非病原性ウイルスから誘導され、そして親の生存ウイルスの抗腫瘍および/または抗感染性疾患活性を保持している分子を指す。一部の実施形態においては、ウイルス成分は由来もとの親生存ウイルスの示す応答と比較してその程度および特異性が同様である抗腫瘍活性を有する。「ウイルス成分」という用語はウイルスの何れかの生物学的成分、例えば蛋白、ペプチド、核酸、脂質、炭水化物、ウイルスの何れかの他の生物活性分子およびこれらの組み合わせの1種以上を包含する。一部の実施形態においては、ウイルス成分はgp64である。
【0049】
例えばウイルス成分はウイルスカプシド蛋白またはウイルス核蛋白コアのDNA関連蛋白を含むことができる。代表的なバキュロウイルスカプシド蛋白はPearson et
al.,(1988)Virology 167:407−13;Summers &
Smith(1978)Virology 84:390−402;Thiem & Miller (1989)J Virol 63:2008−18;Vialard & Richardson(1993)J Virol 67:5859−66に記載されている。代表的なバキュロウイルスDNA関連蛋白はTweeten et al.,(1980)J Virol 33:866−876;Wilson et al.(1987)J Virol 61:661−6;Rohrmann (1992)J Gen Virol 73(Pt4):749−61に記載されている。
【0050】
ウイルス成分はまたウイルス閉鎖体内に存在する蛋白および炭水化物、例えば閉鎖体マトリックスおよび成熟した閉鎖体に存在する腎杯外層を含むことができる。代表的なバキュロウイルス閉鎖体蛋白は多角体および腎杯を包含する。
【0051】
非病原性ウイルスが強力な抗腫瘍活性および/または抗感染性疾患活性を有することを示す本明細書の開示を参考にすれば、当業者は容易に、親生存ウイルスの抗腫瘍活性および/または抗感染性疾患活性を再現するウイルス成分を発見、精製または別途調製および投与することができると考えられる。例えば1つの方法として、米国特許6,001,806号はバキュロウイルス感染昆虫細胞を分画し、そして次に溶出画分を試験に用いることにより親生存ウイルスにより以前に認識されていた抗ウイルス活性を模倣する糖蛋白を発見する生化学的方法を開示している。
【0052】
更にまた、ウイルス蛋白および核酸は当該分野で知られた組み換え方法を用いて容易に調製され、そして抗癌および/または抗感染性疾患の活性に関して同様に試験することができる。例えばウイルス核酸のクローニング、合成、改変、変異原性付与またはその組み合わせを行うことができる。核酸を単離するために使用されている標準的な組み換えDNAおよび分子クローニング手法は例えばSambrook et al.,(eds.)(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York;Silhavy et al.,(1984)Experiments with Gene Fusion.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York;Glover & Hames(1995)DNA Cloning:A Practical Approach,2nd ed.,IRL Press,Oxford University Press,Oxford/New York;Ausubel (ed.)(1995)Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.Wiley,New Yorkに記載されている。組み換えにより作成されたポリペプチドもまた当業者の知る種々の標準的方法を用いて精製し、定性することができる。例えばSchroder&Lubke(1965)The Peptide.Academic Press,New York;Schneider&Eberle(1993)Peptides,1992:Proceedings of the Twenty Second
European Peptide Symposium,September 13−19,1992,Interlaken,Switzerland.Escom.Leiden;Bodanszky(1993)Principles of Peptide Synthesis,2nd rev.ed.Springer−Verlag,Berlin;New York;Ausubel (ed)(1995)Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.Wiley,New Yorkを参照することができる。
【0053】
特にAcNPVの完全な配列が知られており(Kool and Vlak,1993)、従って、全AcNPV蛋白の系統的な分析は抗腫瘍活性に関する試験と組み合わせて組み換え発現のための知られた方法を使用しながら容易に実施することができる。
【0054】
活性なウイルス成分の発見を容易にするために、本発明は更に候補ウイルス成分をスクリーニングするために用いることができるインビトロ試験を提供する。実施例8を参照できる。試験は末梢血単核細胞(PBMC)による細胞毒性の誘導を包含する。本明細書においては、非病原性ウイルスはPBMCによる腫瘍細胞の細胞毒性を誘導でき、そして、この活性はインビボの投与により観察される抗腫瘍活性に相関している。候補ウイルス成分は例えば非病原性ウイルスの生化学的画分、精製または組み換え生産されたウイルス蛋白、精製または合成された核酸、ビロソーム、ウイルス様粒子等を包含する。
【0055】
ウイルスを説明するために本明細書において用いられる「非病原性」という用語は、ウイルスにより治療される哺乳類宿主において感染性ではないウイルスを指し、そして一部の実施形態においては、非病原性ウイルスは哺乳類宿主において感染性ではない。一部の実施形態においては、非病原性ウイルスはヒト宿主において感染性ではない。簡便のために、特段の記載が無い限り、「非病原性」ウイルス」という用語はには不活性化されたウイルス、ウイルス粒子、ウイルス閉鎖体、ビロソーム、ウイルス様粒子、ウイルス成分およびこれらの組み合わせを包含するものとする。
【0056】
「感染性」という用語は一般的に、例えば宿主細胞または生物に対して悪影響を及ぼす遺伝子の発現により、および/または宿主細胞内における複製により、宿主細胞または生物に対して悪影響を及ぼす性質を指す。この定義と合致して、非病原性とは、哺乳類細胞への侵入が宿主細胞または生物の健康状態を劣化させない場合は、それらへの侵入を除外するものではない。しかしながら、一部の実施形態においては、非病原性ウイルスは哺乳類細胞に侵入しない。
【0057】
非病原性ウイルス、例えばバキュロウイルスはまた哺乳類宿主細胞中で転写的にサイレントであることができる。即ち、一部の実施形態においては、非病原性ウイルスは、異種性遺伝子も発現されないことから、現在の遺伝子療法から特に排除されるウイルスのある型であることができる。
【0058】
非病原性ウイルスの例は昆虫特異的ウイルス、両生類特異的ウイルスおよび植物特異的ウイルスを包含する。本明細書に開示した方法において有用である代表的なウイルスは、バキュロウイルス科のファミリーのウイルス(例えば核多角体病ウイルス(NPV)、例えばAutographa californicNPVおよび顆粒症ウイルス(GV)、例えばTrichoplusia niGV)、ポリドナウイルス科(例えばイクノウイルス、例えばCampoletis sonorensisウイルスおよびブラコウイルス、例えばCotesia melanoscelaウイルス)、Ascoviruses、テトラウイルス科およびノダウイルス科(例えばノダウイルス、例えばNodamuraウイルスおよびFlock Houseウイルス)を包含する。本発明において有用な多くの非病原性ウイルスは昆虫において発見されている。Fields et al.,eds(1996)Virology,Lippincott−Rave Publishers,Philadelphia,Pennsylvaniaを参照することができる。
【0059】
「感染性疾患」という用語はその宿主において悪影響を与える物体(例えばウイルス、カビまたは細菌)を指す。一部の実施形態においては物体はヒト宿主に対して悪影響を与える。「抗感染性疾患」治療とは、感染性疾患および/またはその疾患を誘発する物体を妨害、弱体化または根絶する治療を指す。
【0060】
感染性疾患の例は、HIV、西ナイルウイルス、A、B、C型肝炎、水痘、結核、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、呼吸器シンシチウムウイルス(RSV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、SARS、インフルエンザ、エボラ、ウイルス性髄膜炎、ヘルペス、炭疽病、ライム病およびE.coli等を包含する。
【0061】
一部の実施形態においては、非病原性ウイルスはバキュロウイルスを含む。後述する実施例で示す通り、本発明はバキュロウイルスが腫瘍生育の強力な抑制剤であり、完全な腫瘍の減衰を促進できることを示す。本発明は更に実施例5〜6において記載する通り、バキュロウイルスを用いて腫瘍転移を抑制し、そして、腫瘍の再攻撃に対する耐性を増強することができることを示す。
【0062】
本明細書においては「腫瘍の再攻撃」という用語は自らの癌または腫瘍が治療され除去され、そして次いで新しい腫瘍に曝露される動物を指す。上記において提示した定義に従えば、「バキュロウイルス」という用語はバキュロウイルス粒子およびバキュロウイルス成分を包含する。
【0063】
バキュロウイルスの宿主特異性は十分研究されている。バキュロウイルスは鱗翅目の30種超に感染することがわかっているが、他の昆虫細胞または検討されている35を超える哺乳類細胞系統において複製する能力を有するとは考えられていない。Tjia et
al.(1983)Virology 125:107−17;Volkman &Goldsmith(1983)Appl Environ Microbiol 45:1085−1093;Mcntosh&Shamy(1980)Intervirology 13:331−41参照。しかしながらバキュロウイルスは哺乳類細胞に侵入し、ウイルスDNAは宿主細胞の核内に検出されえる。Groner et al.,(1984)Intervirology 21:203−9;Tjia et al.,(1983)Virology 125:107−17;Volkman&Goldsmith(1983)Appl Environ Microbiol 45:1085−93参照。
【0064】
「非病原性」という用語は更にそのネイティブな形態で病原性であり、そして修飾されて非病原性とされているウイルスも包含する。このような修飾は遺伝子的修飾(例えばバキュロウイルスgp64遺伝子に関して上記したウイルスの複製に必須な遺伝子の破壊;および/または宿主生物種において転写的に不活性とするためのウイルスプロモーターの破壊)を包含する。例えば、バキュロウイルスの生物種特異的な病原性は部分的には鱗翅目以外の生物種においてバキュロウイルスプロモーターがサイレントであるためである。異種性プロモーターをバキュロウイルスのゲノムに挿入した場合、修飾されたウイルスは非鱗翅目細胞系統、例えば種々の哺乳類細胞系統において遺伝子発現が可能となる。Boyce&Bucher(1996)Proc Natl Acad Sci USA93:2348−52;Carbonell et al.,(1985)J Virol
56:153−60;Carbonell & Miller (1987)Appl
Environ Microbiol 53:1412−7;Hofmann et al.,(1995)Proc Natl Acad Sci USA92:10099−103参照。哺乳類細胞で当初は活性であるウイルスプロモーターを同様に逆の結果となるように修飾し、これにより哺乳類種においてはもはや病原性とならないようにする。塩基対の変更、欠失または小規模の挿入を行うための部位特異的突然変異誘発の方法は当該分野で知られており、例えば上記した参考文献に記載されている。
【0065】
非病原性であると予測される修飾されたウイルス並びに未修飾のウイルスはウイルスの感染性および複製を測定するための当該分野で知られた方法を用いて非病原性について容易に試験できる。代表的な方法は例えばTjia et al.(1983)Virology 125:107−17;Volkman &Goldsmith(1983)Appl Environ Microbiol 45:1085−93;Mclntosh&Shamy(1980)Intervirology 13:331−41;および米国特許6,248,514等に記載されている。
【0066】
本発明はまた抗癌活性および/または抗感染性疾患活性および/またはアジュバント活性を有する非病原性ウイルス、例えば生存ウイルス、不活性ウイルス、ウイルス粒子、ビロソーム、VLP、ウイルス閉鎖体およびウイルス成分を提供する。更にまた、本明細書に記載した治療方法において有用な非病原性ウイルスの選択方法を提供する。
【0067】
抗癌活性を有する非病原性ウイルスを選択するためには、候補となる非病原性ウイルスは、実施例8に記載する腫瘍の細胞溶解のインビトロおよびインビボの試験、および/または例えば実施例に記載する抗癌活性のインビボまたはインビボのモデルを用いて試験することができる。一部の実施形態においては、インビトロ試験を初期スクリーニングに用い、次にインビトロで活性であるウイルスを該当動物モデルにおいて後に試験することにより抗癌活性を評価することができる。
【0068】
アジュバント活性を有する非病原性ウイルスを選択するためには、候補となる非病原性ウイルスの抗原の免疫原性を増強する能力を試験することができる。免疫原性は例えばT細胞媒介応答を検出することにより測定できる。T細胞応答を測定するための代表的方法にはインビトロ細胞毒性試験またはインビボの遅延型過敏性試験が包含される。一部の実施形態においては例えば非病原性ウイルスと組み合わせたCCL21はPBMCによる腫瘍細胞のインビトロ細胞毒性を誘導し、そしてこの活性はインビボの投与の際の抗腫瘍活性に相関する。他の抗原をCCL21の代替としてもよい。免疫原性はまた対象の血清中の抗原特異的抗体の検出により、および/または抗血清または抗原に特異的な免疫細胞の保護作用の明示により試験することもできる。一部の実施形態においては、非病原性ウイルスは少なくとも約2倍、約5倍、約10倍、約25倍または約100倍まで抗原の免疫原性を増強する。
【0069】
一部の実施形態においては、非病原性ウイルスは後に記載するとおり不活性化される。抗癌性を示す非病原性ウイルスを種々の不活性化方法の何れか1つに付すことによりウイルスがそのネイティブの宿主細胞に感染できないようにすることができる。本明細書に記載した試験を用いて当業者はウイルスの抗癌活性を温存する不活性化方法を選択することができる。一部の実施形態においては、不活性化方法はウイルスの宿主細胞への進入を可能とし、そしてウイルスゲノムの転写および/または複製を妨害する。一部の実施形態においては、ウイルスが細胞内へは進入できるが正常な転写および/または複製は行えないようにこれを遺伝子的に修飾することができる。
【0070】
(A2.非病原性ウイルスの抗炎症性疾患活性)
感染性疾患を治療するための現在の方法は有害または望ましくない副作用を誘発する医薬の使用を包含する。更にまたワクチン接種を含む多くの有効な治療法は僅か単一の感染性実体またはそれに緊密に関連する実体に対してのみ特異的である。本発明者等は意外にも非病原性ウイルスが感染性疾患に強力に対抗できることを発見した。実施例17を参照できる。
【0071】
抗感染性疾患活性を有する非病原性ウイルスを発見するためには、候補となる非病原性ウイルスを当業者のよく知る感染性疾患のインビトロまたはインビボの試験法を用いて試験することができる。例えば、結核に関しては、ウサギTBモデルまたはインビトロのマクロファージモデルを用いて抗感染性疾患活性を試験してよい。Abe et al.,(Journal of Immunology,2003,171:1133−1139)は感染性疾患に対抗する活性について化合物を試験するために適する他の試験法を記載している。
【0072】
一部の実施形態においては、インビトロの試験を初期スクリーニングとして用い、次にインビトロで活性であるウイルスを該当する動物モデルでその後試験することにより抗感染性疾患活性を試験することができる。
【0073】
即ち、本発明は特に、非病原性ウイルスの対象への投与を介した抗感染性疾患療法の必要な対象の治療方法を提供する。本明細書に記載した抗感染性疾患活性を有する非病原性ウイルスは感染性実体に特異的な抗原の発見に依存していないと考えられる。むしろ、非病原性ウイルスの投与は広範に適用可能である。
【0074】
特定の作用機序に限定されることは意図しないが、本発明者等は非病原性ウイルスの抗感染性疾患活性は少なくとも部分的にはその免疫刺激特性に起因すると考える。例えば、バキュロウイルスはインビボおよびインビトロの両方で樹状細胞の成熟および細胞溶解性T細胞(CTL)の応答を活性化する。実施例9〜10を参照できる。
【0075】
本発明は対象への非病原性ウイルスの投与を介した癌保有哺乳類対象の治療方法を提供する。開示した方法は例えば癌の生育の抑制、例えば完全な癌の減衰のため、癌の転移の抑制のため、および、癌の耐性の促進のために有用である。
【0076】
本発明は対象への非病原性ウイルスの投与を介した感染性疾患1つ以上を有する対象の治療方法を提供する。開示した方法は例えばウイルスの複製の抑制、カビの増殖の抑制において有用である。
【0077】
「癌の生育」という用語は、一般的に、より進行した形態への癌内部の変化を示す多くの指標の何れか1つを指す。癌の生育の抑制の尺度となる指標には、例えば、癌細胞の生存性の低下、腫瘍の体積または形態の減少(例えばコンピューター断層撮影(CT)、超音波撮影または他の画像化方法により測定される)、遅延した腫瘍の生育、腫瘍の血管系の破壊、遅延過敏症皮膚試験の進歩した性能、細胞溶解性Tリンパ球の活性の増大、および、腫瘍特異的抗原の濃度の低下が包含される。
【0078】
「遅延した腫瘍生育」という用語は腫瘍が特定の量だけ生育するために必要な時間の長さが減少することを指す。例えば、治療は測定の初日(第0日)と比較して3倍の体積に腫瘍が増大するために必要な時間、または、1cmに成長するために必要な時間を遅延することができる。
【0079】
「癌の耐性」という用語は癌の生育、特に既に保有している癌の生育に抵抗する対象の能力が向上していることを指す。或は、「癌の耐性」という用語は対象における癌の生育の傾向が低下することを指す。癌耐性は後に記載するとおり順応型免疫応答の誘導に関連している。
【0080】
「対象」という用語は、本明細書においては、何れかの哺乳類動物種を包含する。一部の実施形態においては、本発明の方法はヒト並びに絶滅の危機に瀕しているために重要である、経済的に重要である、および/またはヒトにとって社会的に重要である哺乳類における癌および/または感染性疾患の治療を意図する。
【0081】
「癌」という用語は一般的に原発および転移腫瘍を含む腫瘍を指す。一部の実施形態においては腫瘍は固形腫瘍である。「腫瘍」という用語は対象における何れかの組織の固形腫瘍および癌腫を包含し、例えば、乳房、結腸、直腸、肺、口腔陰頭部、下咽頭、食道、胃、膵臓、肝臓、胆嚢、胆管、小腸、尿管、例えば腎臓、膀胱および尿路上皮、女性器管、例えば頚部、子宮、卵巣(例えば絨毛癌および妊娠栄養膜疾患)、男性器管、例えば前立腺、精嚢、抗癌および生殖細胞腫瘍、内分泌線、例えば甲状腺、副腎および下垂体、皮膚(例えば血管腫および黒色腫)、骨および軟組織、血管(例えばカポジ肉腫)、脳、神経、眼および髄膜(例えば星状細胞腫、神経膠腫、神経膠芽細胞腫、網膜芽細胞腫、神経腫、神経芽細胞腫、神経鞘腫および髄膜腫)が挙げられる。
【0082】
「腫瘍」という用語はまた造血系の悪性疾患から生じる固形腫瘍、例えば白血病、例えば緑色腫、プラズマ細胞腫、真菌症のプラークおよび腫瘍および皮膚T細胞リンパ腫/白血病、多発性骨髄腫およびリンパ腫、例えばホジキンおよび非ホジキンリンパ腫を包含する。
【0083】
「癌」という用語は本明細書においては、非新生物性の増殖性障害も包含するものとする。即ち、本発明の方法は過形成、化生、またはとりわけ形成異常(このような異常な生育状態についてはRobbins & Angell(1976)Basic Pathology,2nd Ed.,pp.68−79,W.B.Saunders Co.,Philadelphia,Pennsylvaniaを参照できる)の治療および予防を意図している。
【0084】
過形成は構造または機能の大きな改変を伴わない組織または臓器における細胞数の増大を含む制御された細胞の増殖の形態である。1つの非限定的な例として子宮内膜過形成は子宮内膜癌に進行する場合が多い。化生は成熟または完全に分化した細胞の1つの型が成熟細胞の別の型と置き換わる制御された細胞の成育の形態である。化生は上皮細胞または結合組織細胞中に起こる場合がある。非定型の化生は幾分無秩序な化生性の上皮を含む。形成異常は癌の前駆型である場合が多く、そして上皮に主に検出され;これは非新生物性の細胞生育の最も無秩序な形態であり、個々の細胞の均一性および細胞の構造的方向性の消失を含む。形成異常の細胞は異常に大きく、強く染色される核を有する場合が多く、多形態性を示す。形成異常は慢性の刺激または炎症が存在する箇所に特徴的に生じ、そして頚部、気道、口腔および胆嚢に発見される場合が多い。前新生物性の患部は新生物に進行する場合が有るが、それらは長期間安定に残存するか、または、特に刺激物質が除去されたり、または患部がその宿主による免疫攻撃に屈服する場合には、退行する場合もある。
【0085】
即ち、本明細書に記載するような対象への非病原性ウイルスの投与は本来の抗癌免疫応答または適応性の癌特異的免疫応答をもたらすことができる。「免疫系」という用語は抗原分子を含む細胞、例えば腫瘍、病原体および自己反応性の細胞に対抗して防御を行う、非特異的および特異的な分類を含む全ての細胞、組織、系、構造および過程を包含する。即ち、免疫応答は本来の免疫応答、適応性の免疫応答またはその組み合わせを含む。
【0086】
「本来の免疫系」という用語は貪食細胞、例えば好中球、単球、組織マクロファージ、クプファー細胞、肺胞マクロファージ、樹状細胞および小グリア細胞を包含する。本来の免疫系は非特異的な免疫応答を媒介する。本来の免疫系は適応性の免疫系の応答の開始および方向付けにおいて重要な役割を果たしている。例えばJaneway(1989)Cold Spring Harb Symp Quant Biol 54:1−13;Romagnani(1992)Immunol Today 13:379−381;Fearon & Locksley (1996)Science 272:50−53;Fearon(1997)Nature 388:323−324を参照できる。本来の応答は例えば樹状細胞の成熟、マクロファージの活性化、サイトカインまたはケモカインの分泌、および/またはNFKBシグナリングの活性化を包含する。
【0087】
「適応性免疫系」という用語は、宿主内に特異的な免疫を付与する細胞および組織を指す。これらの細胞に含まれるものはナチュラルキラー(NK)細胞およびリンパ球(例えばB細胞リンパ球およびT細胞リンパ球)である。「適応性免疫系」という用語はまた抗体生産細胞および抗体生産細胞に生産された抗体を包含する。
【0088】
「適応性免疫応答」という用語は抗原に対する特異的な応答を指し、後に定義する通り、体液性免疫応答(例えば抗原特異的抗体の生産)および細胞媒介免疫応答(例えばリンパ球増殖)を包含する。適応性免疫応答は更に全身免疫および体液性免疫を含む。
【0089】
「細胞媒介免疫」および「細胞媒介免疫応答」という用語は、犠牲細胞に近接した場合にT細胞リンパ球によりもたらされる防御のようなリンパ球によりもたらされる免疫学的防御を指す。細胞媒介免疫応答はまたリンパ球増殖を含む。「リンパ球増殖」を測定する場合は、特定の抗原に応答してリンパ球が増殖する能力を測定する。リンパ球の増殖とはB細胞、Tヘルパー細胞またはCTL細胞の増殖を指すものとする。
【0090】
「CTL応答」という用語は本明細書においては特定の抗原を発現する細胞を溶解して殺傷する抗原特異的細胞の能力を指す。本明細書に記載するとおり、標準的な当該分野で知られたCTL試験を行ってCTL活性を測定する。
【0091】
「全身免疫応答」という用語は本明細書においては免疫系のBリンパ球のような細胞が発生するリンパ節、脾臓または腸に関連するリンパ様組織における免疫応答を指す。例えば、全身免疫応答は血清免疫グロブリン(IgG)の生産を含む。更にまた全身免疫応答は血流中を循環している抗原特異的抗体および脾臓およびリンパ節のような全身性のコンパートメント中のリンパ様組織中の抗原特異的細胞を指す。
【0092】
「体液性免疫」または「体液性免疫応答」という用語は抗原の刺激に応答して抗体分子が分泌される後天性の免疫の形態を指す。
【0093】
適応性免疫応答を説明する場合の「癌特異的」という用語は、本明細書においては応答が対象に以前から存在する癌を特異的に指向している場合の対象における細胞媒介または体液性の免疫応答を指す。本来および適応性の免疫応答に独特の免疫細胞型が関与するとすれば、本来の免疫応答をもたらすための方法は適応性の免疫応答ももたらすとは考えにくい。一部の実施形態においては、対象への非病原性ウイルスの投与は本来の免疫応答と適応性免疫応答の両方をもたらす。
【0094】
一部の実施形態においては、非病原性ウイルスの投与のための本明細書に記載した方法は他の癌治療法1つ以上と組み合わせることができる。例えば、腫瘍または異常な細胞の増殖は非病原性ウイルスの投与の前後に外科的に除去することができる。同様に本発明の非病原性ウイルスは別の薬剤、例えば抗血管形成剤、化学療法剤および/または別の免疫調節剤と共同投与するか共同製剤することができる。非病原性ウイルスと組み合わせて使用できる代表的な薬剤は限定はされないが、例えばメトキシトレキセート、タモキシフェン、ネランドロン、ニルタミド、アドリアマイシン、5−フルオロウラシル(5FU)、サイトカイン例えばインターフェロンアルファ(IFN−α)、インターフェロンガンマ(IFN−γ)、インターロイキン2(IL2)、インターロイキン4(IL4)、インターロイキン6(IL6)および腫瘍壊死因子(TNF)である。感染性疾患は更に抗ウイルス剤、抗生物質または抗カビ剤を投与することにより治療することもできる。
【0095】
本発明はまたヒトを含む哺乳類対象における細胞傷害性T細胞媒介応答を誘発するために有用な方法および組成物に関する。一部の実施形態においては、本発明は細胞傷害性T細胞媒介応答を誘導するための非病原性ウイルスの使用に関する。即ち本発明は、非病原性ウイルスおよび抗原を含む抗原製剤の製造方法を提供する。「抗原」という用語はT細胞またはB細胞の受容体と相互作用することによりリンパ球を活性化(陽性または陰性に)する物質を指す。陽性の活性化は免疫応答性をもたらし、陰性の活性化は免疫耐容性をもたらす。抗原は蛋白、炭水化物、脂質、核酸またはその組み合わせを含むことができる。抗原は異種性(例えば宿主対象中に典型的には存在しない抗原)または自系の抗原(自己抗原)を含むことができる。
【0096】
更にまた治療および/または予防薬としての開示された抗原製剤の使用のための方法も提供される。例えばこのような抗原製剤は、CTL応答が重要である疾患の治療のため、例えばHIV感染またはインフルエンザの治療において、哺乳類対象に投与でき;また、細菌感染症、寄生虫感染症等の治療または予防における使用にも拡張できる。
【0097】
一部の実施形態においては、本発明は癌の症状1つ以上の抑制が必要な個体における該抑制の方法を提供する。方法は個体に対し、個体における癌の症状の1つ以上を抑制する効力を有する非病原性ウイルスを含む組成物のある量を投与することを含む。
【0098】
癌の症状は当該分野でよく知られており、生理学的および身体的な徴候の両方を含む。生理学的な徴候には例えば腫瘍の生育、異常な細胞生育、転移、血管形成、細胞死または細胞の侵襲性が包含される。身体的な徴候には例えば体重減少、出血、呼吸困難、骨折、脆弱化された免疫系または疲労が包含される。
【0099】
本明細書に記載する対象への非病原性ウイルスの投与はまた抗感染性疾患免疫応答をもたらすことができる。上記した通り、免疫応答は本来の免疫応答、適応性の免疫応答またはこれらの組み合わせを含む。
【0100】
本発明はまた非病原性ウイルスを含む組成物の有効量を動物に投与することを含む感染性疾患から動物を保護する方法を提供する。一部の実施形態においては非病原性ウイルスは何れかの方法により、または、本明細書に記載した方法により不活性化される。後に記載する実施例に基づけば、不活性の非病原性ウイルスの投与は感染性実体(例えばウイルス、カビまたは細菌)に対抗して保護をもたらしたことが観察された。一部の実施形態においては非病原性ウイルスは昆虫特異的ウイルス(例えばバキュロウイルスファミリー)である。非病原性ウイルスはまた他のワクチン、抗ウイルス剤、抗カビ剤、抗細菌剤またはこれらの組み合わせと共に共同投与することもできる。
【0101】
(C.治療組成物および方法)
本発明は更に、医薬組成物およびそれを使用する方法も提供する。本発明の非病原性ウイルスは安全で有効な抗腫瘍および/または抗感染性疾患および/またはアジュバント活性のために、本明細書に記載するとおり製造し、製剤される。
【0102】
本発明はまた感染性疾患および/または癌の治療および予防のために使用できる組成物を提供する。一部の実施形態においては、組成物は非病原性ウイルスおよび末梢血単核細胞(PBMC)を含む。一部の実施形態においては、PBMCは非病原性ウイルスとエクスビボで接触した動物または個体から単離し、次に混合物または複合物として、動物または個体に再投与される。一部の実施形態においては、PBMCは治療すべき、または、本発明の組成物を投与すべき動物または個体とはことなるものから単離する。
【0103】
一部の実施形態においては、組成物は非病原性ウイルスおよび腫瘍細胞少なくとも1つを含む。腫瘍細胞は個体または動物に対して自系であるか同種異系であることができる。
【0104】
一部の実施形態においては、組成物は非病原性ウイルス、腫瘍少なくとも1つおよびPBMC少なくとも1つを含む。一部の実施形態においては、非病原性ウイルスは不活性ウイルスである。
【0105】
(C1.ウイルス不活性化)
一部の実施形態においては、本発明の方法において使用される、生存する非病原性ウイルスは対象への投与の前に不活性化される。非病原性ウイルスは上記において定義したとおり、哺乳類宿主内で複製することができない。ウイルスをそのネイティブの宿主細胞において非複製性とする不活性化は別の安全性対策として実施できる。
【0106】
ウイルス不活性化は何れかの適当な手段、例えばウイルス外皮の脂質または蛋白の成分の破壊、ウイルスが標的細胞を認識できなくなるような修飾、ウイルス核酸の破壊、および/またはウイルスを複製不可能とすることにより達成することができる。ウイルス不活性化の代表的な方法は、例えば界面活性剤(例えばTriton−X100(登録商標))処理、第2エチレンイミン(BEI)によるアルキル化、光化学不活性化、UV光不活性化、放射線照射、物理的破壊(例えば超音波処理、電子線)、遺伝子的不活性化およびこれらの組み合わせを包含する。Rueda et al.(2000)Vaccine 19:726−34およびHenzler&Kaiser(1998)Nat Biotechnol 16:1077−9を参照できる。一部の実施形態においては、不活性化はウイルスの抗原性および/または活性を大きく低下させない。ウイルスの不活性はウイルスの感染性を測定する標準的な方法を用いて試験する。
【0107】
本明細書においては「遺伝子的不活性化」とはウイルスの核酸(例えば遺伝子)の操作を指す。操作は例えば遺伝子の1つ以上の欠失、遺伝子少なくとも1つの突然変異、温度感受性突然変異体の作成、遺伝子の不活性化等を包含する。温度感受性突然変異体はある温度では許容性を示すが他の温度では拘束性(例えばウイルス複製を抑制する)を示す突然変異体である。バキュロウイルスの場合は、これをもちいることにより増殖または調製のための室温(例えば約25℃)においてはウイルスを生育可能とし、より高い内部温度の動物に投与されればウイルスを不活性化することができる。一部の実施形態においては、温度感受性突然変異体は約16〜28℃、約20〜28℃、約25〜28℃または約27℃の範囲の温度では許容性とする。一部の実施形態においては、温度感受性突然変異体の拘束性温度は約35〜45℃、約32〜40℃、約35〜38℃、約37℃である。一部の実施形態においては、拘束性温度は約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃または約37℃より高温の何れかの温度である。一部の実施形態においては、温度感受性突然変異体は動物または個体の内部では不活性である。一部の実施形態においては、温度感受性突然変異体は拘束性温度において野生型のウイルスと比較して100%低活性、約90%低活性、約80%低活性、約70%低活性、約60%低活性、約50%低活性、約40%低活性、約30%低活性、約20%低活性または約10%低活性である。
【0108】
温度感受性突然変異体は他の温度と比較してある温度においてウイルスの活性を低下させる何れかの突然変異された遺伝子を有する。突然変異される遺伝子または蛋白の例は、グアニリルトランスフェラーゼ、RNAトリホスファターゼ、ATPアーゼ、蛋白キナーゼ(例えばPK−1)等を包含する。温度感受性突然変異体は例は、例えばJin et
al.,Journal of Virology(1998),Vol.72,pp.10011−10019,McLachlin et al.,Virology(1998),Vol.246,pp.379−391に記載されており、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
ウイルスが不活性化のために十分な熱処理を耐えうることができれば、低温殺菌法が不活性化のための単純な方法である。一部の実施形態においては、加熱はウイルス蛋白の損傷を最小限にするために最低限十分な時間行う。場合により、ウイルスの損傷は安定化剤およびクエン酸ナトリウム、サッカロースおよび/またはグリシンを使用することにより最小限にできる。
【0110】
或は、化学的不活性化、例えば低いpH値における穏やかなペプシン処理または界面活性剤への曝露を用いて脂質2層を破壊することができ、従ってこれらは、バキュロウイルスを含むエンベロープを有するウイルスの不活性のために用いることができる。米国特許4,820,805号および4,764,369号を参照できる。アジリジン第2エチレンイミンは蛋白ではなく核酸の求核基(nucleophylic group)と選択的に相互作用することによりウイルスを不活性化する強力なアルキル化剤である。
【0111】
本発明の一部の実施形態においては、ウイルスの不活性化は光化学的反応を介して行う。この方法によれば、放射線増感性化学物質を非病原性ウイルスの脂質懸濁液に付加し、混合物をUV光またはイオン化(γまたはX線)の照射に曝露する。
【0112】
ソラレンおよびその誘導体およびソラレンに類似した線状3環性の構造を有する化合物は光増感を起こすことができる。ソラレンは2官能性の光反応性分子であり、長波長紫外線存在下で核酸と共有結合を形成する。ソラレン分子はDNA二重らせんとインターカレーションを起こし、次に光反応を起こしてDNAの個々の鎖と架橋する。Hwang et al.(1996)Biochem Biophys Res Commun 219:191−7を参照できる。架橋によりDNAは複製や転写ができなくなる。市販のソラレン化合物には8−メトキシソラレン(メトキサレン)および4,5’,8トリメチルソラレン(トリオキサレン)が包含される。ソラレンを用いた光化学不活性化のために最も有効な波長は320nm〜380nmの範囲であり、最大の効果は33mm〜360nmである。Pathak,M(1974),Sunlight and Man,eds.,Pathak,M & Fitzpatrick,T,University of
Tokyo Press,Tokyoを参照できる。
【0113】
別の光増感剤はハロゲン化ソラレン、アンゲリシン、ケリンおよびクマリンを包含し、これらは各々、ハロゲン置換基および水溶性部分、例えば第4アンモニウムイオンまたはホスホニウムイオンを有する。ソラレン分子上でハロゲン原子、特に臭素原子で置換されていることは、臭素の疎水性のため、DNAへの増感剤の結合定数を増加させる。一部の実施形態においては、臭素化増感剤を活性化するためには光量子わずか1個のみしか必要ではないが、非臭素化ソラレンを用いてDNAの架橋を起こすには光量子2個が必要であることから、臭素化光増感剤が使用されている。例えば米国特許5,418,130号を参照できる。
【0114】
光化学不活性化のための代表的方法は実施例11に記載するとおりであり、これはトリオキサレンおよび長波長UV照射の組み合わせを使用している。例えばWeightman&Banks(1999)J Virol Methods 81:179−82およびCotten et al.(1992)Proc Natl Acad Sci USA 89:6094−8を参照できる。
【0115】
ウイルスの抗原特性を温存するためには、生存ウイルスのソラレン不活性化を非酸化性の雰囲気内で実施することができる。酸素および他の酸化性の物質種を不活性化培地から排除することにより、UV光の照射を介した抗原の分解は大部分が防止される。米国特許5,106,619号を参照できる。同様に、抗酸化剤/消光剤を用いることにより短波長のUV光への曝露により発生するフリーラジカルおよび他の反応性酸素種を最低限にでき、これにより蛋白の損傷を最小限にできる。例えばMarx et al.,(1996)のPhotochem Photobiol 63:541−6を参照できる。
【0116】
本発明の一部の実施形態においては、ウイルス不活性化はウイルス遺伝子の修飾を含み、これによりウイルスの複製が損なわれるか不可能となる。例えばウイルスを遺伝子的に修飾してウイルスの必須の遺伝子内に温度感受性突然変異1つ以上が含まれるようにする。ウイルスは許容性温度(例えば25℃)でSf9またはTn5培養物中で生産および生育させる。ウイルスを投与中の哺乳類対象内に導入する場合、温度は非許容性(例えば37℃)とすることにより、温度感受性の遺伝子は僅かしか発現されないか、または、得られる遺伝子産物は損なわれた機能しか有さなくなり、ウイルスは作用不能となる。
【0117】
発生することができる代表的な温度感受性突然変異はウイルス感染に必要な遺伝子を包含する。例えばPKIP、即ちウイルスコード蛋白キナーゼと相互作用する蛋白をコードする遺伝子における、そして、ウイルス後期遺伝子転写のレギュレーターにおける温度感受性突然変異である。非許容性温度においては、このような突然変異を有するウイルスはウイルス感染において欠陥を示す。例えばMcLachlin et al.(1998)Virology 246:379およびPartington et al.,(1990)Virology 175:91を参照できる。
【0118】
ウイルス不活性化はネイティブの宿主細胞における複製能力の消失を明らかにすることにより試験できる。試料の感染性は標準的なプラーク試験を用いて明らかにできる。特定のウイルスの感染性を明らかにするための適当な方法が未知である場合、不活性化の試験は同様の生物物理学的および構造的な性質を有するモデルウイルスの不活性化を明らかにすることに依存することができる。Henzler&Kaiser(1998)Nat Biotechnol 16:1077−9を参考にできる。ウイルスを完全に不活性とするためには本発明において使用する不活性化方法は不活性化刺激物質への逐次的曝露を包含する。
【0119】
(C.2.担体)
本明細書に記載したとおり、非病原性ウイルスは生存ウイルス、不活性化ウイルス、ウイルス粒子、ウイルス閉鎖体またはウイルス成分またはこれらの組み合わせを含むことができる。非病原性ウイルスの対象における癌細胞へのデリバリーを促進するために、対象において抗癌および/または抗感染性疾患応答をもたらすために投与される組成物は(a)有効量の非病原性ウイルス、および(b)薬学的に許容される担体を含む。適宜、2種以上の担体を共に使用できる。
【0120】
本明細書においては、「担体」という用語はウイルス、ウイルス様粒子、ウイルス成分、ウイルス蛋白を細胞の原形質膜に、またはそれを経由して輸送するために使用できる化合物または化合物群を指す。
【0121】
非病原性ウイルスまたはウイルス成分のデリバリーのための代表的な担体は例えばリポソーム、ナノスフェア(Manome et al.,1994;Saltzman and Fung,1997)、グリコサミノグリカン(例えば米国特許6,106,866)、脂肪酸(例えば米国特許5,994,392)、脂肪エマルジョン(例えば米国特許5,651,991)、脂質および脂質誘導体(例えば米国特許5,786,387)、コラーゲン(例えば米国特許5,922,356)、多糖類およびその誘導体(例えば米国特許5,688,931)、ナノ懸濁液(例えば米国特許5,858,410)、重合体ミセルまたはコンジュゲート(例えば米国特許4,551,482、5,714,166、5,510,103、5,490,840および5,855,900)およびポリソーム(例えば米国特許5,922,545)を包含する。
【0122】
ウイルス成分のデリバリーのためには、担体は更に遺伝子療法ベクター、例えばウイルスベクターまたはプラスミドベクターを含むことができる。遺伝子発現のための適当なウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、レトロウイルス、シュードタイプレトロウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスおよびSemilikiフォレストウイルスを包含する。担体はまた、例えばウイルス様粒子、蛋白デリバリーベヒクル、例えばPro−Ject(Pierce Biotechnology,Inc.)およびProfect(Targeting Systems)およびChariot(商標)(Active Motif)等を包含する。
【0123】
担体は治療の必要のある部位への非病原性ウイルスの持続的な生体利用性を可能にするように選択できる。「持続的な生体利用性」という用語は、担体からの非病原性ウイルスの長時間の放出、非病原性ウイルスの代謝安定性、非病原性ウイルスを含む組成物の全身輸送、および、非病原性ウイルスの効果的な投与を含むが、これらに限定されない要因を包含する。
【0124】
持続的な生体利用性のための代表的な組成物は例えば重合体マトリックス、例えば膨潤性および生体分解性の重合体マトリックス(米国特許6,335,035;6,312,713;6,296,842;6,287,587;6,267,981;6,262,127;および6,221,958)、重合体コーティング微粒子(米国特許6,120,787および6,090,925)、ポリオール:油懸濁液(米国特許6,245,740)、多孔性粒子(米国特許6,238,705)、ラテックス/ワックスコーティング顆粒(米国特許6,238,704)、キトサンマイクロカプセルおよび微小球エマルジョン(米国特許6,190,700)を包含する。
【0125】
(C.3.製剤、用量および投与)
対象への本発明の組成物の投与のための適当な製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、殺菌剤、抗細菌抗カビ剤(例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサル)、製剤が意図するレシピエントの体液と等張となるための溶質(例えば糖類、塩類およびポリアルコール)、懸濁剤および濃厚化剤を含有できる水性および非水性の滅菌注射用溶液を包含する。製剤は単位用量または多用量の容器、例えば密封されたアンプルおよびバイアル中に提供することができ、そして、凍結状態で、または、使用直前に滅菌液体担体を添加することを必要とするのみの凍結乾燥状態で保存することができる。
【0126】
宿主への注射のために適する組成物は、滅菌された水溶液または分散液および滅菌された注射用溶液または分散液の調製のための滅菌粉末を包含する。注射用組成物はシリンジを介した投与が容易に行われる程度にまで液体でなければならない。適当な溶媒は水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)およびこれらの混合物を包含する。流動性は例えばレシチンのようなコーティングの使用および/または粒径の最小化により維持することができる。
【0127】
本発明の非病原性ウイルスは腫瘍内、腫瘍周囲、全身、非経腸(例えば静脈内注射、筋肉内注射、動脈内注射および注入法)、経口、経皮(局所)、鼻内(吸入)および粘膜内で対象に投与できる。デリバリー方法は担体またはベクターの種類、組成物の治療効果、標的領域の位置および治療すべき状態のような検討事項に基づいて選択する。
【0128】
本明細書においては「蛋白デリバリーベヒクル」という用語は細胞膜への、またはこれを経由する蛋白の輸送を促進する物質を指す。
【0129】
一部の実施形態においては、非病原性ウイルスは腫瘍内または腫瘍周囲部位に直接注射することにより投与する。「腫瘍周囲部位」という用語は、腫瘍の外縁部から約15cm未満、腫瘍の外縁部から約10cm未満、腫瘍の外縁部から約5cm未満、腫瘍の外縁部から約1cm未満または腫瘍の外縁部から約0.1cm未満の部位を指す。本発明の非病原性ウイルスは腫瘍および/または腫瘍周囲部位の1つ以上にデリバリーすることができる。一部の実施形態においては、本発明の非病原性ウイルスは腫瘍内および/または腫瘍周囲の複数の部位に投与する。
【0130】
癌が非新生物性の生育である一部の実施形態においては、非病原性ウイルスは患部または患部周囲部位に投与する。「患部周囲部位」という用語は、非新生物性の生育の外縁部から約15cm未満、非新生物性の生育の外縁部から約10cm未満、非新生物性の生育の外縁部から約5cm未満、非新生物性の生育の外縁部から約1cm未満または非新生物性の生育の外縁部から約0.1cm未満の部位を指す。本発明の非病原性ウイルスは患部および/または患部周囲部位の1つ以上にデリバリーすることができる。一部の実施形態においては、本発明の非病原性ウイルスは非新生物性の生育の内部および/または非新生物性の生育の周囲の複数の部位に投与する。
【0131】
組成物を用いて感染性疾患を治療する一部の実施形態においては、非病原性ウイルスは全身投与される。一部の実施形態においては、非病原性ウイルスは罹患領域に局所的に投与する。
【0132】
本発明では対象に非病原性ウイルスの有効量を投与する。「有効量」という用語は本明細書においては抗癌活性、例えば抗腫瘍活性および/または抗非新生物性生育活性をもたらすのに十分な非病原性ウイルスの量を記載するために使用する。本明細書に記載するとおり、代表的な抗癌活性は例えば癌細胞の細胞溶解、癌成育の抑制、癌転移および/または癌耐性の抑制を包含する。一部の実施形態においては、「有効量」とは癌生育の抑制、転移の抑制、癌耐性の抑制、細胞溶解の誘導、細胞死の誘導等においてインビトロの試験で有効である治療薬の量を指す。一部の実施形態においては、「有効量」は少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍または少なくとも100倍、癌生育を抑制、転移を抑制、癌耐性を抑制、細胞溶解を誘導、細胞死を誘導またはこれらを組み合わせを行う。
【0133】
「有効量」という用語は本明細書においては抗感染性疾患活性をもたらすために十分な非病原性ウイルスの量を記載するために使用する。一部の実施形態においては、「有効量」は対照と比較してウイルスの複製を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍または少なくとも100倍抑制する。
【0134】
本発明の治療組成物中の活性成分の実際の用量水準は特定の対象に関する所望の治療応答を達成するために有効な組成物の量を投与できるように変動することができる。投与の用法はまた所望の活性をもたらすために必要に応じて変動できる。単回注射または複数回注射を用いることができる。選択された用量水準および用法は種々の要因、例えば治療組成物の活性、製剤、投与経路、他の薬剤または治療との組み合わせ、治療すべき疾患または障害、および、治療すべき対象の身体状態および医療上の履歴により決定される。有効量または用量の決定および調節、並びに、そのような調節をいつどのように行うかの検討は医療分野の当業者の知るとおりである。
【0135】
非病原性ウイルスの用量は種々の方法により計算できる。生存非病原性ウイルスの場合は、用量はプラーク形成単位として計算できる。プラークを形成しない不活性の非病原性ウイルスの場合は、個体に投与されるウイルスの量はPFU等量の単位で計測できる。本明細書においては、「PFU等量」という用語は非病原性ウイルスの量を指す。PFU等量はウイルス1PFUを不活性化した後に得られるウイルスの量として定義される。
【0136】
投与するべきウイルスの量を決定する別の方法は試料中に存在するウイルス粒子の数に基づく。粒子は何れかの方法、例えば電子顕微鏡により計数できる。非病原性ウイルス、例えば不活性化ウイルスはまたインビトロ試験において有効な量から推定された量を用いて投与することもできる。インビトロ試験は抗癌または抗感染性疾患活性を測定するための当該分野で知られた何れかの試験、例えば細胞毒性、細胞死、細胞が軟質寒天中で成育する能力等を測定する試験である。一部の実施形態においては、用量は対照と比較して細胞毒性または細胞死を少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%増大させる量である。一部の実施形態においては、用量は対照と比較して細胞が軟質寒天中で成育する能力を少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%低下させるウイルスの量である。
【0137】
製剤、用量および投与の用法に関する上記以外の指針は、Berkow et al.(1997)The Merck Manual of Medical Information,Home ed.Merck Research Laboratories,Whitehouse Station,New Jersey;Goodman et al.,(1996)Goodman&Gilman’s the Pharmacological Basis of Therapeutics,9th ed.McGraw−Hill Health Professions Division,New York;Ebadi(1998)CRC Desk Reference of
Clinical Pharmacology.CRC Press,Boca Raton,Florida;Katzung(2001)Basic & Clinical Pharmacology,8th ed.Lange Medical Books/McGraw−Hill Medical Pub.Division,New York;Remington et al.(1975)Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th ed.Mack Pub.Co.,Easton,Pennsylvania;Speight et al.(1997)Avery’s Drug Treatment: A Guide to the Properties,Choice,Therapeutic Use and Economic Value of Drugs in Disease Management,4th ed.Adis International,Auckland/Philadelphia,Pennsylvaniaを参照できる。
【0138】
一部の実施形態においては、「有効量」を決定するために組成物をインビトロまたはインビボで試験する。例えば細胞死を誘発するための本明細書に記載した方法においては、適当な試験は、例えばインビトロ細胞生存性試験、例えばTUNEL試験または他の蛍光系の試験、例えばCell−Titer Blue(Promega Corp);DNAフラグメント化をモニタリングする試験;およびチトクロームC放出試験、軟質寒天生育試験、接触抑制試験、および、ヌードマウスにおける腫瘍生育;試験動物に腫瘍を注射し、本発明の組成物の投与後に癌の減衰をモニタリングすることを含む試験、およびトランスジェニックマウスが腫瘍を有し、癌の減衰をモニタリングするトランスジェニックマウス試験;本明細書に開示したインビボ試験;マトリゲル障壁のような障壁を経由した細胞の移動を測定するインビトロの方法(例えばCancer Res.2003 Aug 1:63(15):4632−40;Am J Chin Med.2003;31(2):235−46参照);Yang等の報告したインビトロ侵襲性およびインビボ転移の試験(Cancer Res.61,5284−5288,July 1,2001)を包含する。
【0139】
非病原性ウイルスを含む本発明の組成物は更に、医薬組成物の有効性を増強するために使用してよいアジュバントを1つ以上を含んでよい。このようなアジュバントは例えば、(1)アルミニウム塩(明礬)、例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等;(2)水中油エマルジョン製剤(ムラミルペプチド(後述)または細菌細胞壁成分のような他の特定の免疫刺激剤の存在下または非存在下)、例えば(a)MF59(国際特許出願WO90/14837)、組成:5%スクワラン、0.5%Twee
n80および0.5%Span85(場合により種々の量のMTP−PE(後述)を含有するが必須ではない)、110Y型マイクロ流動化装置(Microfluidics,Newton Mass)のようなマイクロ流動化装置を用いてサブミクロン粒子に製剤したもの、(b)SAF、組成:10%スクワラン、0.4%Tween80、5%プルロニックブロック重合体L121およびthr−MDP(後述)、サブミクロンエマルジョンまでマイクロ流動化するか、または、回転混合してより大きい粒径のエマルジョンとしたもの、および(c)Ribi(商標)、アジュバント系(RAS)(Ribi Immunochem,Hamilton,Mont)、組成:2%スクワラン、0.2%Tween80およびモノリン脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)よりなる群から選択される1種以上の細菌細胞壁成分、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))(本発明において使用する適当なサブミクロン水中油エマルジョンについては1999年6月24日公開の国際特許出願WO99/3
0739参照)、(3)サポニンアジュバント、例えばStimulon(商標)(Cambridge Bioscience,Worcester,Mass)またはそれより発生させた粒子、例えばISCOM(免疫刺激複合体)を使用してよい;(4)完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(5)サイトカイン、例えばインターロイキン(IL−1、IL−2等)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)等;(6)細菌ADPリボシル化毒素、例えばコレラ毒素(CT)、百日咳毒素(PT)またはE.coli熱不安定性毒素(LT)、特にLT−K63(リジンが63位の野生型アミノ酸と置き換えられているもの)LT−R72(アルギニンが72位の野生型アミノ酸と置き換えられているもの)、CT−S109)セリンが109位の野生型アミノ酸と置き換えられているもの)、CpGファミリー分子から誘導したアジュバント、CpGジヌクレオチドおよびCpGモチーフを有する合成オリゴヌクレオチド(例えばKrieg et al.,Nature,374:546(1995)、Davis et al.,J.Immunol.,160:870−876(1998)参照)およびPT−K9/G129(リジンが9位の野生型アミノ酸と置き換えられており、そしてグリシンが129位で置き換えられているもの)(例えば国際特許出願WO93/13202およびWO92/19265)の解毒突然変異体;および(7)免疫刺激剤として作用し組成物の有効性を増強する他の物質を包含する。
【0140】
ムラミルペプチドには例えばN−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノツムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(ノル−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパヒトイル−sn−グリセロ−3-ヒドロキシホ
スホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)等が包含される。
【0141】
国際特許出願WO98/50071はウイルス様粒子(VLP)と共に投与される抗原
の免疫応答を増強するためのアジュバントとしてのVLPの使用を記載している。S.Clair等は体液性および細胞性の応答を増強するための蛋白結晶の使用を記載している(St.Clair,N.et al.,Applied Biol.Sci.,96:9469−9474,1999)。
【0142】
当業者には自明である通り、本発明の開示を検討することにより非病原性ウイルスの投与に関わる治療法を多様に実施することにより抗癌応答および/または抗感染性疾患応答
をもたらすことができる。
【0143】
慣例に従い、物質の数は1つ以上でありえる。「約」という表現は本明細書においては、測定可能な数値を指す場合、例えば腫瘍周囲または患部周囲の距離の場合は、特定の量からの±20%または±10%、±5%、±1%または±0.1%の変動を包含するものとし、そのような変動は開示した方法を行ったり、その他本発明を実施する場合に適切である。いくつかの実施形態において、「約」は、特定の量から±10%の変動を含むことを意味される。
【0144】
(D1.インビボ活性の予測)
インビボの抗腫瘍活性を予測することは困難で信頼性の低い場合が多い。本発明はインビボの抗腫瘍活性を予測するための方法を提供する。一部の実施形態においては、方法は腫瘍細胞および末梢血単核細胞に化合物を接触させること、および、腫瘍細胞の細胞死を測定することを含む。一部の実施形態においては、化合物は非病原性ウイルスまたは非病原性昆虫特異的ウイルスである。例えばアポトーシス、壊死、細胞生存性等の測定を含む何れかの方法を用いて細胞死を測定できる。使用できる腫瘍細胞は例えば、肺癌細胞(例えばA549細胞、3LL−HM細胞)、乳癌細胞(例えば4T1細胞;MT901細胞;MAT BIII細胞)、前立腺癌細胞、結腸癌細胞、皮膚癌細胞(例えばB16黒色種細胞)、膵臓癌細胞、肝癌細胞、脳癌細胞、骨癌細胞(例えばMG−63細胞)、胃癌細胞、または食道癌細胞等である。
【0145】
(E1.放出試験)
医薬品の一般への販売に先立って、政府機関、例えば食品医薬品局(FDA)はその当局または他の政府機関により許可された医薬品中に含有されていたものと同様の成分を医薬品が含むことを確認するためにこのような医薬品に対して厳重な品質管理を行うことを要求する場合が多い。このような品質管理は販売試験、即ち規制ガイドラインに医薬品が合致することを確認する試験を用いて行われることが多い。
【0146】
本発明は販売のための抗癌組成物および抗感染性疾患組成物の製造のためのプロセスを提供する。一部の実施形態においては、組成物は非病原性ウイルス1つ以上を含む。一部の実施形態においては、非病原性ウイルスはAutographa californica核多角体病ウイルスである。一部の実施形態においては、非病原性ウイルスは不活性化ウイルス、ウイルス粒子、ビロソーム、ウイルス様粒子、ウイルス閉鎖体またはウイルス成分を含む。一部の実施形態においては、プロセスは組成物の安全性、毒性および薬効が所定のガイドラインに合致していることを確認するために組成物に対して販売試験を実施することを含む。
【0147】
抗癌および抗感染性疾患組成物を製造するためのプロセスは、活性ウイルスを不活性化する効力を有する第1の不活性化剤に組成物を曝露すること、活性ウイルスを不活性化する効力を有する第2の不活性化剤に組成物を曝露すること、組成物を薬学的に許容される担体または賦形剤1つ以上と組み合わせること、および、不活性化ウイルス、ウイルス粒子、ビロソーム、ウイルス様粒子、ウイルス閉鎖体またはウイルス成分の不活性をインビトロ試験において確認することを含む。一部の実施形態においては、該ウイルス、ウイルス粒子、ビロソーム、ウイルス様粒子、ウイルス閉鎖体またはウイルス成分の不活性の確認は不活性化工程の各々の後に実施する。
【0148】
一部の実施形態においては、プロセスは更に安全性、薬効または毒性の1つ以上の分析のための組成物の任意の部分を収集することを更に含む。一部の実施形態においては、任意の部分の安全性および/または薬効および/または薬効を第2の抗癌または抗感染性疾患組成物の安全性および/または薬効および/または薬効と比較する。比較データは販売の前の検討のために作成される。
【0149】
一部の実施形態においては、不活性化されたウイルス、ウイルス粒子、ビロソーム、ウイルス様粒子、ウイルス閉鎖体またはウイルス成分の不活性はプラーク形成試験により確認する。一部の実施形態においては、プラーク形成試験はSf9細胞を用いて行う。一部の実施形態においては、プロセスは更に、不活性化されたウイルス、ウイルス粒子、ビロソーム、ウイルス様粒子、ウイルス閉鎖体またはウイルス成分を計数することを含む。計数は当業者の知る何れかの方法により実施してよい。一部の実施形態においては、計数はEMを用いて実施する。
【0150】
以下の実施例は本発明を説明することを意図しており、本発明に如何なる制限も行わない。本発明の精神および範囲内における修飾は当業者の知るとおりである。
【実施例】
【0151】
(実施例1.組み換えバキュロウイルスの調製)
ヒトCCL21をコードする完全長配列(ゲンバンクアクセッション番号NM002989)をバキュロウイルス転移ベクターpVL1392(Pharmingen,San
Diego,Calfornia)にクローニングし、そして、入手元の推奨する方法を用いてBACULOGOLD(登録商標)WTゲノムDNA(Pharmingen,San Diego,Calfornia)と同時トランスフェクトした。この操作法により得られた組み換えバキュロウイルスをSf9昆虫細胞上のプラーク精製によりサブクローニングし、ヒトCCL21を発現する数種の単離体を得た。クローンを元のウイルスと比較した場合の例外的な発現特性があるものを選択した。このバキュロウイルス単離体の増幅を低多重度の感染(MOI)において実施し、高力価少継代の蛋白生産用保存株を得た。ヒトCCL21を発現するバキュロウイルスはBV422と命名した。追加の組み換えバキュロウイルスも同様に作成した。例えば細胞内Raf蛋白を発現するバキュロウイルスを作成し、BV762と命名した。
【0152】
蛋白の生産および発芽したバキュロウイルスの生産では、48時間2〜10の感染多重度(MOI)において蛋白非含有培地中で懸濁Trichoplusia ni(Tn5)細胞の感染を行った。組み換え発現CCL21を含有しているBV422の培養上澄みを遠心分離により採取し、濾過して透明化し、そして、カラム精製用に調製した。
【0153】
(実施例2.肺癌の動物モデルにおける腫瘍生育の抑制)
9〜11週齢のC57BL/6マウスを最低7日間馴化させた後に腫瘍細胞を接種した。マウスには右脇腹皮下に2x10個の早期継代(10継代未満)の3LL−HM腫瘍細胞を接種した。腫瘍の大きさは週当たり2回計測した。腫瘍が50〜100mmに達した時点(典型的には腫瘍接種後7日間)で、マウスを無作為に群分けした。バキュロウイルス発現CCL21は腫瘍保有マウスに対し腫瘍内投与した。用量および投与の用法は腫瘍の抑制を最適化するために変動させた。何れかの群の腫瘍体積が3000mm(典型的には対照群のマウスにおける接種の33〜35日後)に達した時点で、マウスを屠殺した。
【0154】
図1に示すとおり、バキュロウイルス発現CCL21の腫瘍内投与により3LL腫瘍の生育遅延が起こった。CCL21の用量は腫瘍生育の完全な抑制が達成されるように最適化した。比較的高用量で2または3回注射する投与方法は、比較的低用量で6回注射する投与方法と比較して同様の薬効を示した。一部の腫瘍抑制は単回用量を用いた場合にも観察された。
【0155】
(実施例3.乳癌の動物モデルにおける腫瘍生育の抑制)
9〜11週齢のBalb/cマウスを最低7日間馴化させた後に腫瘍細胞を接種した。マウスには右脇腹皮下に2x10個の4T1細胞を接種した。腫瘍の大きさは週当たり2回計測した。腫瘍が50〜100mmに達した時点(典型的には腫瘍接種後7日間)で、マウスを無作為に群分けした。バキュロウイルスは腫瘍保有マウスに対し腫瘍内投与した。用量は最適有効用量を決定するために変動させた。何れかの群の腫瘍体積が3000mm(典型的には対照群のマウスにおける接種の33〜35日後)に達した時点で、マウスを屠殺した。図2に示すとおり、CCL21の腫瘍内投与により4T1腫瘍の生育遅延が起こった。
【0156】
(実施例4.黒色腫モデルにおける腫瘍生育抑制)
マウス黒色腫細胞系統B16−BL6を用いて6〜8週齢のピンク皮膚雌性BDF−1マウス(Charles River Laboratories,Boston,Massachusetts)において皮下腫瘍を樹立する。皮膚腫瘍を作成するために、培地0.2ml中の106B16−BL6細胞を第0日に6〜8週齢の雌性BDF−1マウスの上背部領域に注射する。細胞の生存性は細胞注射の前後にトリパンブルー排除を用いて試験する。注射前に死滅した細胞の数は典型的には細胞の総数の10%以下である。第6日までに、腫瘍は典型的には直径5〜10mmとなる。
【0157】
バキュロウイルス発現CCL21を実施例1に記載の通り調製する。バキュロウイルスを第3および4日に各腫瘍から約3mm離れた部位に皮下投与する。腫瘍体積は3週間毎日測定する。腫瘍体積が4000mmに達した時点でマウスを屠殺する。
【0158】
(実施例5.腫瘍再攻撃への耐性)
上記した通り腫瘍を保有するマウスを作成してバキュロウイルスを投与した。完全な腫瘍の減衰を示したマウスまたは完全な腫瘍の減衰を示さなかったマウスは、その腫瘍をバキュロウイルス最終投与の2日後に外科的に摘出し、腫瘍再攻撃に付した。マウスを200μlのケタミン/キシラジン混合物(リン酸緩衝化食塩水中10倍希釈した4:1ケタ
ミン:キシラジン)の腹腔内投与により麻酔し、腫瘍を摘出し、創傷をホチキスで閉鎖した。腫瘍摘出の1〜4日後、元の腫瘍の部位以外の部位において2x10個の4T1細胞を皮下投与することによりマウスを再攻撃した。再攻撃腫瘍体積を週当たり2回計測した。完全な腫瘍減衰を示したマウスでは、マウスを均等に2群に再分割した。1つの群は同じ腫瘍細胞で腹部の逆側をマウス当り1x10個で再攻撃した。もう1つの群は異なる同系の腫瘍細胞(B16F10)で左側の腹部をマウス当り1x10個で攻撃した。再攻撃部位における腫瘍の生育をモニタリングした。バキュロウイルスを投与したマウスは3LL−HM腫瘍細胞による再攻撃に耐性を示すことができたが、異なる同系の腫瘍細胞に対しては耐性ではなかった。
【0159】
(実施例6.腫瘍転移の抑制)
実施例3に記載したとおり腫瘍保有マウスを作成し、バキュロウイルスを投与した。対照群が肺転移による重度の症状を呈した場合にはマウスを屠殺した。典型的な指標は呼吸困難、脂性の体毛および体重減少とした。肺を採取し、Buoin溶液中に保存した。肺の転移の存在を測定した。図3はバキュロウイルス発現CCL21が腫瘍の転移を有意に抑制したことを示している。
【0160】
(実施例7.バキュロウイルスの抗腫瘍活性)
実施例2〜3および5〜6において記載したバキュロウイルス発現hCCL21の抗腫瘍活性はCCL21よりはむしろバキュロウイルスに起因している。図6に示すとおり、バキュロウイルス発現CCL21の濾過調製物は3LL腫瘍モデルにおいて腫瘍の減衰を起こすのには不十分であった。何れの所定の試料におけるCCL21の濃度も濾過により変化していなかった。全てではないが一部のバキュロウイルス発現CCL21調製物は同様に非効果的であった。
【0161】
インビボで観察された変動性とは対照的に、全てのCCL21調製物はインビトロのリンパ球の化学走性を誘導するのに十分であった。表1および図7を参照できる。これらの結果は、バキュロウイルス発現CCL21中の高分子量の夾雑物質が頑健な抗腫瘍活性のために必要であるが、CCL21誘導インビトロ化学走性には必要ではなかったことを示唆している。
【0162】
【表1】

バキュロウイルスは実施例1に記載したとおり調製したバキュロウイルス発現CCL21の夾雑物であることがわかった。バキュロウイルス発現CCL21を用いてウエスタンブロットを作成し、これをバキュロウイルス蛋白gp64を特異的に認識する抗体でプローブした。図8に示すとおり、gp64はバキュロウイルス発現CCL21調製物中に検出された。更に、抗腫瘍活性を示したバキュロウイルス発現CCL21のロットは生存ウイルス力価が比較的高く、不活性のロットは生存ウイルス力価が比較的低値であった(表2)。
【0163】
【表2】

図9はCCL21非存在下、および、夾雑物含有CCL21調製物に匹敵する力価における精製された生存バキュロウイルスの腫瘍内注射により、バキュロウイルス夾雑CCL21調製物と同様の有効性で腫瘍が抑制されることを示している。
【0164】
(実施例8.バキュロウイルス誘導インビトロ細胞毒性)
バキュロウイルスを実施例1に記載の通り調製した。未感染のSf9細胞を対照として使用した。遠心分離後、上澄みおよび細胞ペレットの両方を回収した。細胞毒性試験を実施するために、試料を生育培地中1:11に稀釈し初期ウイルス力価5x10pfu/mlとした。
【0165】
A549ヒト上皮肺細胞を96穴組織培養プレートに3連で播種し、バキュロウイルス感染または未感染のSf9細胞に由来する上澄みまたは細胞の連続希釈物を接種した。24時間後、培地を除去し、細胞を新しい培地で十分洗浄した。細胞の生存性はクリスタルバイオレット染色により24〜48時間後に測定し、分光光度計で定量した。
【0166】
図10Aに示す通り、細胞ペレット試料は上澄み試料よりも大きい細胞毒性応答を誘導した。未感染の細胞から採取した上澄みは細胞毒性を誘導しなかった。図10Bによれば、細胞毒性応答はバキュロウイルス発現上澄みを0.2μmフィルターで濾過(夾雑バキュロウイルスを除去するため)した場合には有意に低下し、これはインビボの応答の消失と同様であった。開示したインビトロの細胞毒性はインビボの抗癌活性を予測するために使用できる。図13も参照できる。
【0167】
(実施例9.バキュロウイルスによる樹状細胞成熟の活性化)
野生型バキュロウイルスを樹状細胞(DC)の培養物に添加したところ、活性化マーカーの細胞表面発現が増大したことにより明らかな通り、成熟が誘導された。図11Aおよび11Bに示す通り、バキュロウイルスはマウス骨髄由来DCおよびヒト単球由来DCを活性化する。
【0168】
マウスDCは定法に従って骨髄から調製した。慨すれば、骨髄を雌性6〜8週齢のBalb/cまたはC57Bl/6マウス(Charles River Laboratories,Holister,California)から単離し、10%細胞培養等級ジメチルスルホキシド(DMSO)を添加した熱不活性化ウシ胎児血清中、2x10個/mlの濃度で凍結(−80℃)した。凍結した細胞を小分けにしたものを急速に解凍し、洗浄してDMSOを除去した。細胞を200U/mlネズミGM−CSF(PreproTech,Rocky Hill,New Jersey)を含有する20ml配合RPMI培地(Sigma−Aldrich,St.Louis,Missouri)20mlの入った150mmの懸濁液培養ディッシュ中に入れた。培養第3日に、細胞に再度、ネズミGM−CSFを添加し、第5日に培養容量の半分を遠心分離してGM−CSFを含有する新鮮培地に交換した。BMDCは穏やかにピペッティングすることにより採取した。
【0169】
バキュロウイルスおよび他の対照物質を第6日に培地に添加した。。細胞を更に18時間インキュベートした後に細胞または上澄みを分析した。BMDCはFACSにより細胞表面マーカーに関して分析し、そして、CD11c、CD11b、H−2Kd、I−Ad(低)、CD80(低)およびCD86(低)を含むDC未成熟のマーカーの検出により、刺激物質添加の前の第6日に非成熟を特性化した。種々の刺激物と共に一夜インキュベートした後、細胞を洗浄し、抗CD11cおよび抗CD86または抗I−A抗体を用いて二重染色し、次にフローサイトメトリーで分析した。細胞は生存CD11c+集団でゲーティングした。刺激はGM−CSFのみを投与された染色細胞のMFIで割った平均蛍光強度(MFI)として表示する。図11AはDC活性化マーカーCD86およびMHCクラスII(抗I−A抗体を用いて検出)の発現がバキュロウイルスに応答して増大したことを示している。CD80およびCD40の濃度はバキュロウイルスに応答して同様に上昇した。
【0170】
抗CD14抗体コーティング磁気ビーズ(Miltenyi Biotec,Auburn,California)を用いることにより健常ボランティアの軟膜から精製した末梢血単球からヒトDCを誘導した。未成熟のDCはインターロイキン−4およびGM−CSF(各々1000U/ml;PreproTech,Rocky Hill,New
Jerseyより入手)と共に3〜4日間培養した後に採取した。培養物はFACS(Pharmingen,San Diego,California)によれば通常は>90%CD1a陽性であった。DC活性化マーカーのFACS分析は生存CD1a+細胞上のゲーティングにより試験した。図11BはバキュロウイルスがCD86およびHLA−DR++の上昇した濃度を誘導したことを示している。
【0171】
(実施例10.バキュロウイルスによるインビボCTL誘導の活性化)
バキュロウイルスおよび可溶性蛋白抗原(HIVp24)によるマウスの免疫化により頑健な抗原特異的CTL応答が誘導された。免疫化されたマウスの脾臓を第3回目の免疫化の2週間後に採取した。脾臓5個が各試料中に含まれるように個々の脾臓をあわせた。免疫化マウスの脾細胞をウェルあたり5x10個の密度で24ウェルのディッシュ中で培養した。これらの細胞のうち、1x10個の細胞を(1)合成p7gペプチド、即ちHIV−1SF2p24gagのアミノ酸199〜208に相当するH−2Kd制限CTLエピトープ;および(2)pGagbペプチド、即ちHIV−1SF2p55gagのアミノ酸390〜398に相当するH−2Db制限CTLエピトープで感作した。ペプチドは37℃で1時間10μMの濃度で使用した。次に脾細胞を洗浄し、残りの4x10個の未投与細胞と共に培養した。脾細胞は、脾細胞培地として:RPMI1640およびα−Mem(1:1)(10%熱不活性化ウシ胎児血清(Hyclone,Logan,Utah:30分間56℃水浴中で不活性化)、100U/mlペニシリン、10μg/mlストレプトマイシン、10ml/Lの100mMピルビン酸ナトリウムおよび50μM 2−メルカプトエタノールを添加した)(RPMI1640(Sigma−Aldrich,St.Louis,Missouri)は、100mM L−グルタミン(Giboco,Grand Island,New York)を補充され、α−MemはL−グルタミン、デオキシリボヌクレオシドまたはリボヌクレオシドを補充された最小必須培地Alpha Medium)の2ml中で塊状培養物として刺激した。更に、5%ラットT−StimIL2(ラットT−Stim:Collaborative Biomedical Products,Bedford,Massachusetts)をIL2原料として使用し、細胞を培養する直前に培地に添加した。
【0172】
6〜7日の刺激期間の後、脾細胞を採取し、クロム放出試験におけるエフェクターとして使用した。約1x10個のSV/BalbまたはMC57標的細胞を50μCiの51Crを含有する培地200μl中、そして、1μMの濃度の正しいペプチドp7gまたは陰性対照としてのミスマッチ細胞標的対と共に、60分間インキュベートし、そして洗浄した。エフェクター細胞を4時間96穴の丸型またはV底の組織培養プレート中培地200μl中種々のエフェクター対標的細胞の比で5x10個の標的細胞と共に培養した。2連のウェルの分当りの平均計数値を用いてパーセント特異的放出を計算した。図12はバキュロウイルスが細胞溶解性T細胞応答を誘導したことを示している。
【0173】
(実施例11.バキュロウイルスの光化学的不活性化)
Trichoplusia ni(Tn)細胞の懸濁培養物2リットルにバキュロウイルスを感染させる。28℃で3日間インキュベートした後、感染細胞懸濁液を採取し、10分間800xgで遠心分離することにより透明化した。採取した培地中のバキュロウイルスの力価は、例えばKing&Possee(1992)The Baculovirus Expression System:A Laboratory Mannual,Chapman&Hall,Londonに記載の通り、Spodoptera frugiperda(Sf)細胞中のプラーク試験により測定した。
【0174】
トリオキサレンの保存溶液をジメチルスルホキシド(DMSO)中0.2mg/mlの濃度で調製する。トリオキサレンは約5〜10μg/mlの濃度で感染細胞懸濁液に添加し、そして穏やかに振とうすることにより細胞懸濁液内部に分散させる。次に細胞懸濁液をシームレスのステンレストレー(例えば深さ約1cm)に注ぎ込み、そして回転プラットホーム上に置く。長波長(365nm、6W)のUVランプを液面から1cmの距離でトレイの真上に置く。UV照明への曝露は約15分間またはウイルスの不活性化のために十分な時間行う。
【0175】
ウイルスの不活性化を試験するために、トリオキサレン/UV不活性化試料を昆虫細胞
に対して力価測定する。例えば、少量を細胞懸濁液から採取し、連続稀釈し、Sf9細胞培養物に接種する。培地は接種後約16時間で交換することによりDMSO誘導細胞毒性を最小限にする。接種後7日に培養物を顕微鏡観察することにより細胞の病態を調べ、そして陰性であれば2回更に継代してウイルスの不活性化を確認する。培養物はまた細胞毒性を発見するために検査する。
【0176】
(実施例12.インビトロ試験によるインビボ抗腫瘍薬効の予測)
CCL21の種々のロットを共に以下に記載する細胞毒性試験およびインビボマウス腫瘍モデルにおいて試験した。細胞毒性活性係数は以下に記載するとおりである。活性および不活性のロットはインビボ実験の終了時に腫瘍サイズを分析することにより求めた。
【0177】
(誘導PBMC細胞毒性試験)
誘導PBMC細胞毒性試験は付着標的細胞系統(A549またはMG−63細胞)に対抗するサイトカイン(IL−2またはβ−IFN)またはバキュロウイルス(BV)のような特定の活性化物質により誘導されるPBMCの細胞毒性(細胞増殖抑制)応答を測定するものであり、そして、エフェクター細胞(PBMC)と標的細胞の共同培養法を用いる。インキュベーション期間の後、標的細胞の生存性をアラマーブルー染色により定量する。試験に使用した成分は以下の通りである。
生育培地(GM):(イーグルMEM、添加物:イーグル塩および2.2g/L重炭酸ナトリウム、ウシ胎児血清(FBS)、L−グルタミン、ペニシリンおよびストレプトマイシン):
MEM:500ml
FBS:50ml
L−グルタミン(200mM):5ml
ペニシリン(10,000U/ml)/ストレプトマイシン(10,000μg/ml)/混合物:5ml
生育/試験培地(GAM):(pH指示薬非含有RPMI1640、ウシ胎児血清(FBS),L−グルタミン):
RPMI1640:500ml
FBS:50ml
L−グルタミン(200mM):5ml
PBMC調製培地:(pH指示薬非含有RPMI1640、0.5%BSA画分V):
RPMI1640:500ml
BSA(7.5%BSA溶液):37ml
STV溶液:(食塩水A、トリプシン、ベルセーン(NaEDTA)):
NaCl:8.00g
KCl:0.40g
D−グルコース:1.00g
NaHCO:0.58g
トリプシン1:250:0.50g
NaEDTA:0.20g
0.5%フェノールレッド:0.9ml
ガラス蒸留水:1.0Lとする量
リン酸塩緩衝食塩水:(PBS、カルシウム非含有およびマグネシウム非含有)
KCl:0.2g
NaCl:8.0g
KHPO:0.2g
NaHPO:1.14g
ガラス蒸留水:1.0Lとする量

アラマーブルー染色培地
10%アラマーブルー(バイオソース インターナショナル)添加RPMI1640。
【0178】
(A549細胞)
A549ヒト肺癌細胞をATCCから76継代で入手した(ATCC CCL185)。細胞を増殖させ、保存株を低継代で凍結保存した。A549細胞のマスター保存株は凍結し、液体窒素中に保存した。
【0179】
(A549作業培養)
A549細胞は付着単層として成育し、継代のためにはトリプシン溶液で脱着させなければならない。培地は各T−175フラスコから除去した。単層を10〜15mlのPBSで2回洗浄した。3〜5mlのSTVを各フラスコに添加した。次に各フラスコを3〜4分間、または細胞が脱着し始めるまでインキュベートした。フラスコを穏やかにたたいて細胞を脱着させた。生育培地5mlを各フラスコに添加し、細胞を穏やかにピペットで磨砕して単細胞懸濁液を調製した。細胞を新しい生育培地の入った50ml容の遠沈管に移し、穏やかに混合した。細胞混合物の種々の比率(1:5、1:10または1:20、それぞれ2、3および4日培養用)を37℃に加温された新しい生育培地40±/−5mlの入ったT175培養フラスコに分注した。
【0180】
(MG−63細胞)
MG−63ヒト骨肉腫細胞系統はATCCから入手した(ATCC CRL−1427)。MG−63のマスター保存株は液体窒素中に凍結保存した。
【0181】
(MG−63作業培養)
作業ストック培養は3または4日おきに分割した。コンフルエントの単層を3日おきに1:6に、4日おきに1:8に分割した。
【0182】
( 継代操作法)
MG−63細胞は付着単層として成育し、継代のためにはトリプシン溶液で脱着させなければならない。培地は各T−175フラスコから吸引し、単層を10〜15mlのPBSで2回洗浄した。4±0.1mlのSTVを各フラスコに添加し、次に、フラスコを細胞が脱着するまで3〜5分間37℃±2℃、5±1%COでインキュベートした。フラスコを穏やかにたたいて細胞を脱着させた。
【0183】
細胞をSTV中ピペッティング処理により均一な懸濁液とし、次に新しい生育培地の入った50mlの遠沈管に移し、穏やかに混合した。細胞混合物の比率(1:6または1:8)を37℃に加温された新しい生育培地40±/−5mlの入った培養フラスコに分注した。
【0184】
(PBMC細胞)
PBMCは同意を得たドナーから得た。
【0185】
(PMBC誘導細胞毒性試験のためのA549またはMG−63細胞の調製)
培地をA549またはMG−63作業培養用のT−175フラスコから採取した。単層を10〜15mlのPBSで2回洗浄した。3〜5mlのSTVを各フラスコに添加し、次に各フラスコを5分間、または細胞が脱着し始めるまでインキュベートした。フラスコを穏やかにたたいて細胞を脱着させた。生育培地5mlを各フラスコに添加し、細胞を穏やかにピペットで磨砕して単細胞懸濁液を調製した。細胞を50ml容の三角試験管に移し、更に生育培地25mlを添加した。試験管を反転させて細胞を混合し、細胞濃縮物を得た。細胞密度は細胞濃縮物として測定した。慨すれば、細胞懸濁液の1:3希釈物をZ1モデルのコールターカウンターを用いて計数した。A549細胞については、カウンターの下の閾値を8ミクロンに設定し、MG−63については8ミクロンとした。
【0186】
A549細胞については、細胞を生育試験培地中50,000個/mlにまで濃縮した。MG−63細胞については、細胞を生育試験培地中65,000個/mlにまで濃縮した。必要とされる細胞の総数は必要な培地の総容量に播種密度をかけることにより計算した。必要とされる細胞濃縮物の容量(C)は必要な細胞総数を濃縮物の細胞密度で割ることにより計算した。必要とされる別の生育/試験培地の容量(GAM)は必要とされる培地の容量から細胞濃縮物の容量を差し引くことにより計算した。PBMC誘導細胞毒性試験のために使用される標的細胞の適切な播種密度は(C)と(GAM)を組み合わせることにより求めた。
【0187】
細胞懸濁液を使い捨て三角フラスコまたは組織培養ガラス器具中に調製した。細胞を15分以内に試験プレートに添加した。懸濁液(A549細胞では5000個/ウェルおよびMG−63細胞では6500個/ウェル)100μlを各ウェルに添加した。プレートを湿潤化37℃±2℃、±0.5%COインキュベーター中で18〜24時間蓋をしてインキュベートした。
【0188】
(初期試料調製および移行プレート中の連続希釈)
(初期スクリーニング試験)
PBMC細胞毒性の誘導物質を検出する機会を向上させるために、試料をまず比較的高濃度に調製した。試料濃度は試料の活性に応じてその後の試験では低下させた。
【0189】
低濃度CCL21試料:
CCL21の低蛋白濃度試料(3000μg/ml未満)をPBS(カルシウムおよびマグネシウム非含有)で400〜600μg/mlに希釈した。FBSおよびL−グルタミンを添加することにより試料を10%FBSおよび1%−L−グルタミン含有とした。試料をそのまま96穴プレートの第1のウェルにロードした(240μl容量)。1:2連続希釈を96穴移行プレート中で10%FBSおよび1%L−グルタミン含有PBS中に行った。
【0190】
高濃度(蛋白、活性、細胞またはウイルスの濃度)で開始した試料は低濃度蛋白試料に関して記載したとおり調製するか、または、直接生育/試験培地中に調製した。試料をそのまま96穴プレートの第1のウェルにロードした(240μl容量)。1:2連続希釈を96穴移行プレート中で生育試験培地中に行った。
【0191】
(バキュロウイルス試料)
BV試料を生育/試験培地(GAM)中で1:2〜1:10に稀釈し、そしてGAM中に上記したとおり連続希釈した。
【0192】
(β−IFNまたはIL−2)
β−IFNまたはIL−2の最終バイアル試料を適切な希釈剤(食塩水または注射用水)中に希釈再調製した。希釈再調製したβ−IFNは0.25mg/ml=13.9μM、希釈再調製したIL−2は1.1mg/ml=64.7μMであった。各サイトカインの200,000IU/mlの作業保存溶液は更に生育試験培地(GAM)で希釈することにより作成した。β−IFNのロットIFN−01−001をGAMで1:35.75に希釈した。IL−2ロットMLAPM006をGAMで1:91.75に希釈した。その後の試験濃度への希釈はGAMを使用した。IL−2は試験用には2000IU/mlに稀釈し、β−IFNは試験用には2000IU/mlに希釈した。
【0193】
(高濃度CCL21試料)
濃度が3mg/mlより高値のCCL21試料はGAMで200〜600μg/mlの試験濃度まで希釈した。
【0194】
(標的細胞(試験)プレートへの試料希釈物の移行)
希釈プレートの内容物を試験(細胞)プレートに移行させた。最終試料濃度は元の希釈プレートのであった。プレートからプレートへの移行のプログラムのプロペットを移行に用いた。試験プレートはPBMCを準備しながらインキュベートした。
【0195】
(標的細胞に対する試験試料の直接の細胞毒性に関する毒性対照プレート)
2個の同一の移行(希釈)プレートを樹立し、2細胞プレートに培地を移行させた。プレート1にはPBMC調製物50μlを添加して誘導細胞毒性測定を行った。2枚目のプレートには50μlのPBMC調製培地を添加して試験試料の直接細胞毒性を測定した。
【0196】
(ヒト末梢血からの末梢血液単核細胞(PBMC)の単離)
漂白剤の1:10希釈物(3リットル)を調製した。血液に接触した全ての試験管およびピペットを一夜漂白した。ビーカーの水気を切り、全ての物品を鋭利物品または生物学的有害物質用の容器に廃棄した。50ml試験からキャップを除去した後に血液を取り扱った(血液によるキャップの汚染を防止するため)。血液は250ml容の使い捨てポリカーボネートフラスコに添加し、等量のHBSSで希釈した。50ml容のポリスチレン試験管当りフィコールプラーク溶液約17mlを添加し、30分後に血液を添加した。血液はフィコール層を撹乱することなくフィコールプラーク溶液の上面に重層させた。4mlの血液/HBSSを各3mlのフィコールプラークに対して添加した(即ち50ml容の試験管当り17mlフィコールおよび23ml血液/HBSSとした)。
【0197】
試験管を室温で30分間1800RPM(400xg)で遠心分離した(Sorval
GLC−2B遠心分離機)。可能な限り大量の上層を25ml容の血清学的ピペットを用いて吸引し、第2の層の上部約5mlを残存させた。5ml容の血清学的ピペットを用いて第1の層の残余を除去した。BおよびTリンパ球を含有する第2の層は滅菌された5ml容の血清学的ピペットを用いて収集し、新しい50ml容の試験管に入れた。収集物は添加剤を含まないRPMIの3倍容量で希釈した。得られた溶液を15〜20分間900rpm(100xg)で遠心分離した(洗浄1)。上澄みを血清学的ピペットで除去し、細胞を40mlのRPMIに再懸濁し、遠心分離を900rpmで反復した(洗浄2)。上澄みを血清学的ピペットで除去し、細胞を40mlのPBMC調製培地(0.5%BSA添加RPMI)に再懸濁した。再懸濁細胞の総容量を厳密に記録した。細胞をコールターカウンターで計数して細胞密度を求め、PBMC調製培地中の細胞濃縮物の1:5希釈物を計数に用いた。
【0198】
適切な細胞密度を得るために必要な再懸濁液の容量を求めた。細胞毒性試験のためには所望の密度は2x10個/mlであり、PBMCの凍結のためには所望の密度は10x10個/mlであった。最終再懸濁液容量は細胞密度と総容量を掛け合わせ、次にその積を最終の所望の細胞密度(2または10x10個/ml)で割ることにより計算した。
【0199】
再懸濁細胞の残余を用いて遠心分離を900rpmで反復した(洗浄3)。上澄みを除去し、最終再懸濁容量中に再懸濁した。細胞密度をコールターカウンターで確認した(PBMC調製培地中の細胞濃縮物の1:10希釈物を使用して計数した)。
【0200】
(試験用のPBMC調製物)
試験で迅速に使用するために、細胞をPBMC調製培地に再懸濁した。細胞を更にPBMC調製培地中1:2に稀釈し、最終細胞密度1x10個/mlとした。細胞を標的細胞50μl/ウェル(50000PBMC/ウェル)で試験プレートに添加した。PBMCをマルチチャンネルピペットで添加した。試験プレートは3〜4日間37℃および5%COでインキュベートした。
【0201】
(凍結のためのPBMC調製)
凍結のために細胞を90%FBS(熱不活性化)+10%DMSO中に再懸濁し、10x10個/mlの密度で凍結した。細胞を2mlの滅菌クリオチューブに分注し、−70℃の冷凍庫中でクリオ凍結コンテナ中イソプロピルアルコール中に凍結した。最終細胞密度はコールターカウンターで確認した。
【0202】
(試験のための凍結PBMCの解凍)
PBMCの凍結分を37℃の水浴中で急速に解凍した。細胞を三角遠沈管中13mlのRPMI1640中に再懸濁し、次に15〜20分間900rpm(100xg)で遠心分離した。上澄みを血清学的ピペットで除去し、細胞を13mlのPBMC調製培地中に再懸濁した(0.5%BSA添加RPMI)。細胞をコールターカウンターで計数して細胞密度を求め、PBMC調製培地中の細胞濃縮物の1:5希釈物を使用して計数した。
【0203】
次に適切な細胞密度を得るために必要とされる再懸濁液の容量を求めた。細胞毒性試験のためには所望の密度は2x10個/mlであった。最終再懸濁液容量は細胞密度と総容量を掛け合わせ、次にその積を最終の所望の細胞密度(2または10x10個/ml)で割ることにより計算した。再懸濁細胞の残余を用いて900rpmで遠心分離を反復した。上澄みを除去し、細胞を最終再懸濁容量中に再懸濁した。
【0204】
細胞密度をコールターカウンターで確認し、PBMC調製培地中の細胞濃縮物の1:10希釈物を使用して計数した。細胞を更に生育試験培地中に1:2に稀釈し、最終細胞密度1x10個/mlとした。細胞を標的細胞50μl/ウェル(50000PBMC/ウェル)で試験プレートに添加した。PBMCをマルチチャンネルピペットで添加した。試験プレートは3〜4日間37℃および5%COでインキュベートした。
【0205】

アラマーブルーを用いた試験プレートの染色
3〜4日間のインキュベーションの後、培地を試験プレートから吸引した。100μl/ウェルのアラマーブルー染色培地(0.5%BSA添加RPMI中10%アラマーブルー)を添加し、プレートを2〜3時間インキュベートした。応答は分光光度計(570nm〜630nmの吸光度)または蛍光分析(530nm励起、590nm発光)の何れかにより測定した。
【0206】
(試験活性)
試験活性はPBMC応答を示す試料ウェルで割った比較対照ウェルの応答として定義される。大部分の場合、比較対照ウェルは、通常は最高試料濃度のPBMCウェル(連続希釈の第1のウェル)と同様の試料濃度の試料に対する無PBMC対照ウェルであった。無PBMC対照プレートを使用するには不十分な試料しかなかった一部の場合においては、比較対照ウェルはPBMCの存在下または非存在下のPBS/生育培地とした。
【0207】
無PBMC対照プレートのための十分な試料が存在した場合は、活性は直接細胞毒性応答/誘導細胞毒性と等しく設定した。図14に示すとおり、インビトロのデータはインビボのデータと相関している。
【0208】
(実施例13.抗gp64モノクローナル抗体によるバキュロウイルス腫瘍細胞殺傷のブロッキング)
バキュロウイルスの出発物質(CΔ3)は抗gp64で処理した。慨すれば、1〜500μgの精製マウス抗gp64モノクローナル抗体(クローン1.3A、提供者:Dr.Donald Jarvis,U.of WY)またはIg対照をコントロールされた容中の組み換えバキュロウイルスの種々の感染単位と混合した。ウイルスへの抗体の結合は約15時間暗所で室温で行った。試料は1〜2日間冷蔵庫に保管した後にプラークまたは細胞毒性の試験に付した。試料は上記したとおり細胞毒性試験において試験した。図15を参照できる。
【0209】
(実施例14.不活性化されたバキュロウイルスによるPBMC媒介インビトロ腫瘍細胞殺傷の誘導)
バキュロウイルスの原料(CΔ3)はトリオキサレンおよびUV光による処理により不活性化した。バキュロウイルスをソラレンおよび紫外線により光不活性化した(Weightman,S.A.and Banks,M.J.Virol.Met.81:179−182(1999)。バキュロウイルスを含有する昆虫細胞培地を6穴の細胞培養プレート(Costar)に移行させた(3ml、約6E7pfu)。4,5’,8−トリメチルソラレン(トリオキサレン)の保存溶液をジメチルスルホキシド(DMSO)中2mg/mlに調製し、終濃度100μg/mlとなるように各ウェルに添加した。次にプレート上1.5cmにハンドヘルドのランプ(UVL−56型、UVP、Upland,CA)を置くことにより15分間培養ディッシュを紫外線(365nm)に曝露した。対照試料はソラレン非含有DMSO含有とし、ソラレンを含有する非照射対照も設けた。照射後、培地を10MWCO透析カートリッジ(Slidalyzer,Pierce)に移し、リン酸塩緩衝食塩水に対して透析した。全試料につきSf9細胞上のプラーク形成活性を試験した。試料を上記したとおり細胞毒性試験において試験し、結果を図16に示した。
【0210】
(実施例15.バキュロウイルスの主要標的である腫瘍細胞)
A549標的細胞の未損傷の単層に3時間バキュロウイルスを投与し、次に生育試験培地で3回洗浄した。同時に、エフェクター細胞(PBMC)もまた3時間バキュロウイルスを投与し、3回洗浄した。バキュロウイルス投与および未投与の標的およびエフェクター細胞を以下の通りの組み合わせ、即ち、1)未投与標的細胞のみ;2)未投与標的細胞およびエフェクター細胞;3)バキュロウイルス投与標的細胞および未投与PBMC;および4)未投与標的細胞およびバキュロウイルス投与PBMCとした。
【0211】
4日間のインキュベーションの後、標的細胞の生存性をSOPに記載の通り測定した。アラマーブルー蛍光により測定した細胞の生存性の尺度は群当り16ウェルの平均とした(実験は96穴フォーマットで実施した)。結果を図17に示す。
【0212】
(実施例16.バキュロウイルスを用いた肺癌の動物モデルにおける腫瘍生育の抑制)
8〜10週齢のC57BL/6マウスを最低7日間馴化させた後、腫瘍細胞を接種した。マウスには右脇腹皮下に2x10個の早期継代(10継代未満)の3LL−HM腫瘍細胞を接種した。腫瘍の大きさは週当たり2回計測した。腫瘍が50〜100mmに達した時点(典型的には腫瘍接種後7日間)で、マウスを無作為に群分けし、同日、バキュロウイルスの第1回目の用量を腫瘍内投与した。投与予定はqdx6日間とした。マウスは以下の4群、即ち、1)アルブミン陰性対象25μg/投薬(0.5mg/ml);2)生存ウイルス陽性対照(力価約1x10/ml);3)生存ウイルス陰性対象(力価約800/ml);および4)不活性化ウイルス(力価約800/ml)に割り付けた。腫瘍は4週間まで毎週2回測定した。腫瘍容が2500mmに達するか、または以下の症状のいずれかが観察された場合には、マウスを屠殺した。症状は体重減少が20%超、腫瘍潰瘍領域が腫瘍面積の30%超または腫瘍面積の30%未満であるが開口部を有する場合、出血または漏出、重度の呼吸困難、または瀕死状態とした。
【0213】
図18に示すとおり、バキュロウイルスの腫瘍内投与は3LL腫瘍の生育遅延をもたらした。
【0214】
(実施例17.バキュロウイルスを用いたインビトロおよびインビボの感染性実体からの保護)
生存バキュロウイルスはネズミおよびヒトの細胞系統からインターフェロン(IFN)を誘導し、そして脳心筋炎ウイルス感染からのマウスのインビボ保護を誘導することがわかっている。しかしながら、例えばUVによりバキュロウイルスの不活性化は感染性およびIFN誘導活性の両方を排除する(Gronowski et al.,J Virology,Dec.1999,p.9944−9951 Vol.73,No.12)。
【0215】
感染性実体に対するバキュロウイルスの作用を検討するために、細胞を水疱性口内炎ウイルス(VSV)を用いてインビトロおよびインビボで攻撃した。図19に示すとおり、Sf9およびバキュロウイルスまたはSf9およびバキュロウイルス培地を投与した細胞または培地はインビトロのVSVに対抗して最大の保護をもたらした。図19に示すとおり、不活性化されたバキュロウイルスは病原性のウイルスの攻撃からのインビボおよびインビトロの保護をもたらす。
【0216】
(実施例18.バイスタンダー作用)
腫瘍細胞の抑制が直接的であるのみかどうか(即ち、各細胞が非病原性ウイルスにより特異的にターゲティングされなければならないか)を調べるために、感染腫瘍細胞および非感染腫瘍細胞を種々の比率で混合した。
【0217】
A549またはMG−63細胞系統またはPBMCを3〜5時間バキュロウイルスの活性化用量に曝露した。バキュロウイルスへの曝露の後、過剰または非結合のウイルスを応答細胞から洗浄除去した。次に洗浄したBV投与細胞を種々の比率で非投与応答細胞と混合した。PBMCについては、BV投与および非投与の細胞の混合物を非投与A549またはMG−63標的細胞に添加した。同様にBV投与のA549またはMG−63標的細胞の混合物も非投与PBMCに添加した。非BV投与細胞はBV投与細胞と物理的に同様の取り扱いをした。
【0218】
PBMCにはBVのみを投与し、細胞はCOインキュベーター中で振とうしながら懸濁液中に維持した。細胞を遠心分離により洗浄し、傾斜し、そして再懸濁(3回)した後、非投与PBMCと混合した。A549およびMG−63の標的細胞に2方法でBVを投与した。未損傷の単層にBVを投与した後その状態で新鮮生育培地で穏やかに洗浄し、次に非投与標的細胞を試験プレートに添加するか、またはPBMCについて記載した通り濁液中で行う。
【0219】
バキュロウイルスがA549およびMG−63標的細胞から長時間にわたり除去され、その後、PBMCを添加する場合は、細胞毒性試験において細胞毒性応答に急速な消失が起こる。バキュロウイルス除去後20時間までに、細胞毒性応答はA549の場合は完全に消失し、そしてMG−63細胞の場合は大部分が消失する(データ示さず)。
【0220】
バキュロウイルス投与標的細胞単層をそのまま洗浄し、次に非投与細胞と混合し、即座にPBMCを添加することにより、A549およびMG−63標的細胞の双方にバイスタンダー作用が生じる。
【0221】
懸濁液中のPBMCまたはA549細胞のBV投与、その後の遠心分離洗浄(3サイクルの遠心分離、傾瀉、再懸濁)により、細胞毒性応答は効果的に排除された。
【0222】
MG−63細胞のBV投与および遠心分離洗浄はMG−63標的細胞による細胞毒性応答の除去においては有効性は低値であった。
【0223】
振とうしながら懸濁液中でBVをPBMCに投与し、その後遠心分離洗浄を行うことは、MG−63標的細胞に対する細胞毒性応答の有意な非特異的(0%BV投与細胞のウェル)刺激をもたらすが、A549細胞ではこれとは異なると考えられた。
【0224】
図20からわかる通り、総細胞容量が20%感染細胞および80%非感染細胞である場合、細胞死は最大応答で観察された。従って、非感染細胞はバイスタンダー作用により知られるものにより殺傷された(即ち標的細胞の近接部に存在することは非標的(感染)細胞の細胞死を促進する)。
【0225】
(参考文献)
以下に記載する参考文献並びに明細書中で引用した参考文献はそれらが補足、説明、背景提示または方法、手法および/またはそこで使用される組成物の教示を行う範囲におい
て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0226】
【表3−1】

【0227】
【表3−2】

【0228】
【表3−3】

【0229】
【表3−4】

【0230】
【表3−5】

【0231】
【表3−6】

【0232】
【表3−7】

本発明の種々の詳細な項目は本発明の範囲から外れることなく変更できる。更にまた、以上の記述は説明を目的とするのみであり、添付する請求項に定義される本発明を限定する目的はない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫応答を誘導する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−120970(P2010−120970A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39427(P2010−39427)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【分割の表示】特願2004−542074(P2004−542074)の分割
【原出願日】平成15年10月1日(2003.10.1)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】