説明

抗菌処理方法

【課題】
抗菌処理を行う対象物が限定されず、抗菌処理に掛る時間やコストを節約することが可能な抗菌処理方法を提供すること。
【解決手段】
バチルススパリカス(Bacillus sphaericus)微生物菌、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)微生物菌、またはバチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)微生物菌を、60度〜150度で高温処理した家畜糞と混合した粉体を有する抗菌剤を用いた抗菌処理方法において、抗菌処理対象物と該抗菌剤とを非接触状態とし、該対象物で被対象菌の成長を抑制することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、抗菌剤を用いた抗菌処理方法であり、特に、抗菌処理対象物に対して抗菌剤を非接触状態として抗菌処理を行うことを特徴とする抗菌処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種の抗菌剤が市販提供されている。本出願人に係る発明者は、特許文献1に示すように、カビ付着防止剤及び脱臭剤に使用可能な微生物菌として、バチルススパリカス(Bacillus sphaericus)微生物菌、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)微生物菌、またはバチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)微生物菌を見出し、しかもこれらの微生物菌は、土壌、海水、淡水性堆積物中、食物などから容易に入手することができ、培養することも可能である。そしてこれらの微生物菌に高温処理した家畜糞とを混合した粉体を使用することで、安価なカビ付着防止剤や脱臭剤を提供できることを示した。
【特許文献1】特許公報第3590019号
【0003】
従来の抗菌剤は、抗菌作用を発現させたい対象物に抗菌剤を接触させる方法により、抗菌処理が行われていた。具体的な接触方法としては、対象物に抗菌剤を組み込む、あるいは抗菌剤を塗付又は噴霧する方法が知られている。
しかしながら、このような直接接触させる方法は、抗菌処理を行う対象物が限定される上、処理に時間が掛かり、コスト的にも大きな負担となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、上述した問題を解消し、抗菌処理を行う対象物が限定されず、抗菌処理に掛る時間やコストを節約することが可能な抗菌処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、バチルススパリカス(Bacillus sphaericus)微生物菌、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)微生物菌、またはバチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)微生物菌を、60度〜150度で高温処理した家畜糞と混合した粉体を有する抗菌剤を用いた抗菌処理方法において、抗菌処理対象物と該抗菌剤とを非接触状態とし、該対象物で被対象菌の成長を抑制することを特徴とする。
なお、本発明の抗菌処理方法は、抗菌作用のみに限らず、使用する抗菌剤が非接触状態で殺菌作用を有する場合も含むものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の抗菌処理方法において、該被対象菌は、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)NBRC4459,クラドスポリウム・スファエロスペルムン(Cladosporium sphaerospermum)NBRC4460,アルテナリア・アルテナタ(Alternaria alternata)NBRC31188,カルブラリア・ルナタ(Curvularia lunata)NBRC100182,サナテフォルス・ククメリス(Thanatephorus cucumeris)のうち、少なくとも一種類の菌を含むことを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の抗菌処理方法において、前記家畜糞は、牛糞、豚糞、又は鶏糞であることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の抗菌処理方法において、該抗菌剤は、該粉体自体、該粉体に水分を添加した液体、又は該液体を吸水ゲル化剤、ゼラチン、又は寒天の少なくとも一つに吸収させたもののいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本発明が使用する微生物菌が、バチルススパリカス(Bacillus sphaericus)微生物菌、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)微生物菌、またはバチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)微生物菌であるため、菌自体の安全性が十分に確認されている。このため、本発明に係る抗菌処理方法に使用する抗菌剤は、生産時又は使用時において全く無公害で環境や人体に有害な影響を与えることがない。また、微生物菌の栄養源として、60度〜150度で高温処理した家畜糞を使用しているため、原材料が極めて安価に入手可能であり、しかも家畜糞の処理は、悪臭や河川の汚染など環境問題ともなっていることから、家畜糞の有効利用としては極めて有益なものである。
【0010】
さらに、これらの微生物菌と高温処理した家畜糞とを混合した粉体は、それ自体が抗菌作用を有するだけでなく、水を添加した液体、さらには吸水ゲル化剤等に吸水させたゲル状態においても抗菌作用を有するため、極めて多様な状態で使用することが可能となる。
また、本発明に使用する抗菌剤は、微生物菌を栄養源と一体化して保持しているため、長時間に渡り微生物菌が活動でき、抗菌効果の持続性を高めることが可能となる。
【0011】
特に、本発明に使用する抗菌剤は、抗菌処理対象物と非接触状態で、該対象物における被対象菌の成長を抑制することが可能である。したがって、抗菌剤を対象物に付着させる必要が無いため、抗菌処理を行う対象物が限定されない。また、抗菌剤を塗付や噴霧等により対象物に付着させる必要が無いため、抗菌処理に掛る時間やコストも節約することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の抗菌処理方法に使用される抗菌剤は、バチルススパリカス(Bacillus sphaericus)微生物菌、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)微生物菌、またはバチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)微生物菌を、60度〜150度で高温処理した家畜糞と混合した粉体、又は60度〜150度で高温処理した家畜糞と混合した粉体に、水分を添加して液体にし、あるいは該液体を吸水ゲル化剤並びにゼラチン、寒天に吸収させて得られることを特徴とする。
【0013】
本発明に使用される抗菌剤に含ませる微生物菌は、バチルススパリカス(Bacillus sphaericus)微生物菌、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)微生物菌、またはバチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)微生物菌であり、これらの微生物菌は公知の物であり、土壌、海水、淡水性堆積物中、食物などから容易に培養することができる。しかもこれらの微生物菌は、環境や人体に安全なものであり、これらを使用する抗菌剤も、極めて安全性の高い製品として提供することが可能となる。
【0014】
本発明に用いる家畜糞は、牛糞、豚糞、又は鶏糞が好ましく、その他、馬糞をはじめ多様な家畜の糞も必要に応じて用いることが可能である。家畜糞の中には雑菌が多く含まれており、これらの菌の影響を除去するため、60度〜150度で5時間に渡り高温処理を行う。高温処理された家畜糞は乾燥し、固形状となっており、固形状の家畜糞を粉砕し、粉体化したものに本発明の微生物菌を混合する。
【0015】
本発明によれば、上記微生物菌に高温処理した家畜糞を混合することで得られる粉体は、それ自体でも抗菌作用を有するものであるが、より好ましくは、該粉体に水分を加える事により、抗菌効果をより高めることが可能となる。
【0016】
また、本発明によれば、上記粉体を液体にし、さらに吸水ゲル化剤並びにゼラチン、寒天に入れることで、ゲル状態の抗菌剤を得ることができる。
このように、本発明の抗菌処理方法に使用される抗菌剤は、粉体、液体、又はゲル状態など多様な形態を選択することが可能であるため、極めて利用範囲の広い抗菌剤を提供することが可能となる。
【0017】
特に、本発明者らは鋭意研究を行った結果、本発明に使用する抗菌剤が、抗菌処理対象物と非接触状態で、該対象物における被対象菌の成長を抑制することが可能であることを見出した。そして、この非接触による抗菌作用により、抗菌剤を対象物に付着させる必要が無くなり、抗菌処理を行う対象物が限定されないという、優れた効果を奏する抗菌処理方法が実現できる。しかも、抗菌剤を塗付や噴霧等により対象物に付着させる必要が無いため、抗菌処理に掛る時間やコストも節約することが可能となり、極めて利便性の高い抗菌処理方法を提供することができる。
【0018】
本発明に使用する抗菌剤が非接触による抗菌作用を発揮する被対象菌としては、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)NBRC4459,クラドスポリウム・スファエロスペルムン(Cladosporium sphaerospermum)NBRC4460,アルテナリア・アルテナタ(Alternaria alternata)NBRC31188,カルブラリア・ルナタ(Curvularia lunata)NBRC100182,サナテフォルス・ククメリス(Thanatephorus cucumeris)などが挙げられる。
【実施例1】
【0019】
抗菌剤として、株式会社ビッグバイオが提供するBB菌(登録商標)を含むカビ取り剤(商品名:カビとれ〜る)形状の違いから「BB菌(A)」,「BB菌(B)」の2種類を用意した。試験した抗菌剤の主な特性は、表1のとおりである。これらの抗菌剤の中には、バチルススパリカス(Bacillus sphaericus)微生物菌、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)微生物菌、バチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)微生物菌のいずれかが含まれていることは確認されている。
【0020】
【表1】

【0021】
以下の試験では、被対象菌として、表2に示す各種菌を使用した。
【0022】
【表2】

【0023】
(基礎試験)
表3に示す各培地を使用して試験を行った。各培地に対するBB菌(A)及び(B)のコロニー形成数及び全生細菌数を表4に、また、コロニー形成率を表5に示す。
【0024】
【表3】

【0025】
【表4】

【0026】
【表5】

【0027】
(長期保存試験)
表6に示すように、微生物資材であるBB菌(A)及び(B)における保存中の菌数の変化を測定した。この図1により、BB菌(A)及び(B)は、乾燥状態のまま常温保管した場合、5ヶ月経過しても菌数に変化が無く、5ヶ月の長期保管が可能であることが理解される。なお、表中の*はEB蛍光染色法で測定,*はCFDA蛍光染色法で測定,*はNA培地に塗抹接種後30℃で14日間インキュベートした。また、試験体は、2006年7月18日に到着し、それ以降常温で保存した。
【0028】
【表6】

【0029】
(小規模空間における抗菌活性試験)
2つのシャーレの各々に被対象菌と抗菌剤とを別々に入れ、2つのシャーレを互いに対向するよう重ね合わせ、小規模の空間における、非接触による抗菌効果を測定した。
小規模空間における抗菌活性試験は、次の手順で行った。
(1)菌液調整
細菌に対しては、L字管中で対数増殖後期まで振とう培養した後、細菌の新鮮培養液(Nutrient broth, 30℃)200μLを滅菌生理食塩水1.8 mLに懸濁させた。
また、糸状菌および酵母菌では、Potate dextrose agar[PDA]培地で30℃,1週間培養した後、胞子を0.01%SDS添加滅菌生理食塩水0.5 mLに懸濁させた。
(2)塗抹
菌懸濁液100 μLを各2連で塗抹接種した。シャーレ内の各培地は、細菌にはNA培地を使用し、糸状菌および酵母菌にはPDA培地を使用した。
(3)充填・接種
シャーレ内のNA培地に微生物資材であるBB菌(A)及び(B)を各1.5 gを敷き詰めた。なお、資材が細菌株の場合はNB培地中で対数増殖後期まで振とう培養後、0.2 mLをNA培地上に接種し、30℃で1〜2日間インキュベートした。
【0030】
(4)培養
上記(2)及び(3)で作成した2つのシャーレを互いに内側が向かい合うように重ね合わせ(上記(3)のシャーレが下側となる)、シャーレの接触部分をサージカルテープで貼り合わせた。
その後、30℃でインキュベートした。培養期間は、細菌および酵母菌は3日間とし、糸状菌は7日間とした。
(5)判定
対照区と比較し、明らかに発育抑制が見られた場合には、抑制効果ありと判定した。表7に小規模空間における抗菌活性試験の結果を示す。発育抑制が認められた場合には+で、認められない場合を−で表記した。
【0031】
【表7】

【0032】
表7より、被対象菌である、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)NBRC4459,クラドスポリウム・スファエロスペルムン(Cladosporium sphaerospermum)NBRC4460,アルテナリア・アルテナタ(Alternaria alternata)NBRC31188,カルブラリア・ルナタ(Curvularia lunata)NBRC100182,フサリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)NBRC30701,サナテフォルス・ククメリス(Thanatephorus cucumeris)については、BB菌(A)又は(B)による非接触の抗菌効果が認められている。
【0033】
(中規模空間における抗菌活性試験)
次に、2つのシャーレの各々に被対象菌と抗菌剤とを別々に入れ、容積1.3Lのプラスチック製密閉容器内に、2つのシャーレを横並びに配置し、非接触による抗菌効果を測定した。
中規模空間における抗菌活性試験は、次の手順で行った。
(1)菌液調整
細菌に対しては、L字管中で対数増殖後期まで振とう培養した後、細菌の新鮮培養液(Nutrient broth, 30℃)200μLを滅菌生理食塩水1.8 mLに懸濁させた。
また、糸状菌および酵母菌では、Potate dextrose agar[PDA]培地で30℃,1週間培養した後、胞子を0.01%SDS添加滅菌生理食塩水0.5 mLに懸濁させた。
さらに、両者について、約1000 cells or spores/mLに調整した菌懸濁液を作製した。なお、菌数又は胞子数の測定は、細菌については直接計数法で、糸状菌及び酵母菌についてはヘマチトメーターにて行った。
(2)塗抹
菌懸濁液100 μLを各3連で塗抹接種した。シャーレ内の各培地は、細菌にはNA培地を使用し、糸状菌および酵母菌にはPDA培地を使用した。
(3)充填・接種
シャーレ内のNA培地に微生物資材であるBB菌(A)及び(B)を各1.5 gを敷き詰めた。
【0034】
(4)培養
上記(2)及び(3)で作成した2つのシャーレを、1.3Lのプラスチック製容器内に入れ、密閉した。その後、30℃でインキュベートした。培養期間は、細菌および酵母菌は3日間とし、糸状菌は7日間とした。
(5)判定
被対象菌のシャーレ内のコロニー数の平均値を計測し、対照区のコロニー数から試験区のコロニー数を引いた値を、対照区のコロニー数で除した値を、発育抑制度として百分率で示した。表8に中規模空間における抗菌活性試験の結果を示す。
【0035】
【表8】

【0036】
表8より、被対象菌である、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)NBRC4459,クラドスポリウム・スファエロスペルムン(Cladosporium sphaerospermum)NBRC4460,アルテナリア・アルテナタ(Alternaria alternata)NBRC31188,サナテフォルス・ククメリス(Thanatephorus cucumeris)については、BB菌(A)又は(B)による非接触の抗菌効果が認められている。
【0037】
(大規模空間における抗菌活性試験)
次に、各々のシャーレに被対象菌と抗菌剤とを別々に入れ、容積10Lのプラスチック製密閉容器内に、2つのシャーレを横並びに配置し、非接触による抗菌効果を測定した。
大規模空間における抗菌活性試験は、上述した中規模空間における抗菌活性試験と同様であり、ただし、一つのプラスチック容器内には、抗菌剤を入れたシャーレを1つと、被対象菌を入れたシャーレを5つ配置した。
なお、被対象菌は、クラドスポリウム・スファエロスペルムン(Cladosporium sphaerospermum)NBRC4460のみとした。
【0038】
発育抑制度を表9に示す。ただし、処理区Aでは、微生物資材であるBB菌を入れたものを、上述したように供試したが、処理区Bでは、微生物資材をNA培地上にて30℃で1週間培養し供試した。
【0039】
【表9】

【0040】
表9より、被対象菌は、クラドスポリウム・スファエロスペルムン(Cladosporium sphaerospermum)NBRC4460については、10L容器の空間においてもBB菌(A)又は(B)による非接触の抗菌効果が認められている。ただし、BB菌(b)については、微生物資材をNA培地上にて30℃で1週間培養し供試した場合には、非接触の抗菌効果が認められなかった。
【0041】
(抗菌剤に対する滅菌処理の影響)
抗菌剤に滅菌処理を施した場合に、非接触による抗菌作用の変化を測定した。滅菌処理は、BB菌(A)及び(B)を、120℃でオートクレーブして試験に供した。
試験は、小規模空間(対向する2つのシャーレ)で行った。また、使用した被対象菌は、クラドスポリウム・スファエロスペルムン(Cladosporium sphaerospermum)NBRC4460である。
試験結果を表10に示す。
【0042】
【表10】

【0043】
表10より、滅菌処理した抗菌剤では、非接触による抗菌作用が発現していないことが理解される。
【0044】
(非接触による殺菌効果)
次に、非接触による殺菌効果について調査した。
試験方法は次のとおりである。
(1)糸状菌前培養
糸状菌株をマスタープレートから釣菌し、PDAスラントに塗抹後、30℃で1週間以上培養した。
(2)胞子液作製
01%SDS添加生理食塩水500μLをスラント内の被験菌に注入し、パスツールピペットピペッティングし、小試験管に移した。
(3)菌数調整
ヘマチトメーターで胞子数測定後、0.01%SDS添加生理食塩水で103 spores/mLとなるよう希釈した。
(4)接種
調整した胞子液100μLをPDA培地に接種した。
(5)インキュベート
上記(4)を30℃で1週間インキュベートした。
【0045】
(6)資材処理
微生物資材(BB菌(A)及び(B))1.5 gを充填したNA培地シャーレの蓋を取った状態で、上記(5)のシャーレと向かい合わせにし(上記(5)のシャーレが上側となる)、サージカルテープで貼り合わせ、30℃で1週間インキュベートした。菌液の場合はNB培地中で対数増殖後期まで振とう培養後、200μLをNA培地上に接種後、30℃で1〜2日間インキュベートした。
(7)接種・インキュベート
上記(6)の被対象菌が接種されたシャーレから、被験菌を白金耳で取り出し、別のPDA培地に10点スポット接種した。そして、30℃で1週間インキュベートした。
(8)判定
発育がみられたスポット数を計測し、次式で殺菌効率を求めた。
殺菌効率(%)=(1−発育が見られたコロニー数/10)×100
評価結果を表11に示す。
【0046】
【表11】

【0047】
表11より、被対象菌である、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)NBRC4459,クラドスポリウム・スファエロスペルムン(Cladosporium sphaerospermum)NBRC4460,アルテナリア・アルテナタ(Alternaria alternata)NBRC31188,カルブラリア・ルナタ(Curvularia lunata)NBRC100182については、非接触による殺菌効果が認められる。
なお、微生物資材の培地を素寒天とした場合には、被対象菌であるクラドスポリウム・クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)NBRC4459に対しても、殺菌効果が認められなかった。
したがって、非接触による殺菌作用についても、抗菌作用と同様に、作用効果を発揮するためには、BB菌などの微生物資材に養分を供給することが不可欠であると判断される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、抗菌処理を行う対象物が限定されず、抗菌処理に掛る時間やコストを節約することが可能な抗菌処理方法を提供することが可能である。
しかも、本発明に使用される抗菌剤は、安全性の高い微生物菌を使用しながら、製造コストを抑制し、生産時又は使用時において全く無公害で環境や人体に影響を与えず、使用時においても持続性があり、さらには効率的に非接触状態にて抗菌及び滅菌作用を発揮することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルススパリカス(Bacillus sphaericus)微生物菌、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)微生物菌、またはバチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)微生物菌を、60度〜150度で高温処理した家畜糞と混合した粉体を有する抗菌剤を用いた抗菌処理方法において、抗菌処理対象物と該抗菌剤とを非接触状態とし、該対象物で被対象菌の成長を抑制することを特徴とする抗菌処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の抗菌処理方法において、該被対象菌は、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)NBRC4459,クラドスポリウム・スファエロスペルムン(Cladosporium sphaerospermum)NBRC4460,アルテナリア・アルテナタ(Alternaria alternata)NBRC31188,カルブラリア・ルナタ(Curvularia lunata)NBRC100182,サナテフォルス・ククメリス(Thanatephorus cucumeris)のうち、少なくとも一種類の菌を含むことを特徴とする抗菌処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の抗菌処理方法において、前記家畜糞は、牛糞、豚糞、又は鶏糞であることを特徴とする抗菌処理方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の抗菌処理方法において、該抗菌剤は、該粉体自体、該粉体に水分を添加した液体、又は該液体を吸水ゲル化剤、ゼラチン、又は寒天の少なくとも一つに吸収させたもののいずれかであることを特徴とする抗菌処理方法。

【公開番号】特開2008−201750(P2008−201750A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41525(P2007−41525)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(303048341)株式会社ビッグバイオ (10)
【Fターム(参考)】