説明

抗菌性に優れたフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤ

【要 約】
【課 題】 フェライト系ステンレス鋼あるいは低合金鋼,炭素鋼を溶接するにあたって、溶接金属に抗菌性および耐食性を付与できるフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤを提供する。
【解決手段】 C:0.0010〜0.150 質量%,Si:0.20〜1.0 質量%,Mn:0.20〜2.5 質量%,P: 0.010〜0.030 質量%,S: 0.00010〜0.020 質量%,Al: 0.00050〜0.30質量%,Cr:10〜30質量%,N: 0.005〜0.40質量%,Ag: 0.010〜1.0 質量%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有するフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライト系ステンレス鋼材あるいは低合金鋼材,炭素鋼材の各種鋼材を溶接するにあたって、病原性細菌の繁殖を抑制する効果(以下、抗菌性という)を溶接金属に付与する溶接ワイヤに関するものである。
【0002】
本発明のフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤは、フェライト系ステンレス鋼材の溶接金属に耐食性のみならず抗菌性が要求される分野(たとえば厨房,医療,食品加工,土中埋蔵管,貯水槽,温水器,各種配管等)に適用できる。また本発明のフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤを用いて、低合金鋼材や炭素鋼材の肉盛り溶接を行なうと、耐食性を兼ね備えた抗菌性クラッド材として使用できる。
【背景技術】
【0003】
Agは大腸菌やサルモネラ菌に代表される病原性細菌の繁殖を抑制し、病原性細菌に起因する食中毒を防止する効果があることは従来から知られている。病原性細菌の繁殖を抑制する効果(すなわち抗菌性)は、Agイオンが病原性細菌にダメージを与えるためであるとされており、また同じく抗菌性を持つCuイオンに比べて、Agイオンの方が顕著な効果を発揮することが明らかになっている。そこでステンレス鋼の内部および/または表面にAgを析出させることによって、一般的なステンレス鋼が有する耐食性に加えて、抗菌性を持たせる技術が種々提案されている。
【0004】
たとえば特許文献1や特許文献2には、Agを0.0005〜0.30質量%含有するステンレス鋼板が開示されている。これらのステンレス鋼板は優れた耐食性と抗菌性を有するが、ステンレス鋼製品を製造する過程でこれらのステンレス鋼板を溶接すると、その溶接部で抗菌性の低下が生じる。何故なら、従来のステンレス鋼溶接ワイヤは溶接金属の耐食性を母材(すなわちステンレス鋼板)と同等に維持できる成分設計になっているが、溶接金属の抗菌性については考慮されていないので、母材と同等の抗菌性を溶接金属に付与することは不可能である。
【特許文献1】特開平11-12692号公報
【特許文献2】特開平11-158585 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような問題を解消し、フェライト系ステンレス鋼材あるいは低合金鋼材,炭素鋼材を溶接するにあたって、溶接金属に抗菌性および耐食性を付与できるフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、抗菌性と耐食性に優れた溶接金属を得るためのフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤを開発するべく、抗菌性に優れかつ人体に対する安全性の高いAgを活用する技術について鋭意研究を重ねた。その結果、フェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤの成分を好適な範囲に規定し、かつAgを配合することによって、溶接金属の耐食性を高めるとともに、溶接金属の表層でAgが濃化することが分かった。
【0007】
Agが溶接金属の表層で濃化すれば、溶接金属の抗菌性を確保することができる。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0008】
すなわち本発明は、C:0.0010〜0.150 質量%,Si:0.20〜1.0 質量%,Mn:0.20〜2.5 質量%,P: 0.010〜0.030 質量%,S: 0.00010〜0.020 質量%,Al: 0.00050〜0.30質量%,Cr:10〜30質量%,N: 0.005〜0.40質量%,Ag: 0.010〜1.0 質量%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有するフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤである。
【0009】
本発明のフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤは、前記した組成に加えて、Mo:0.01〜6.0 質量%,Cu:0.01〜2.5 質量%およびW:0.01〜0.30質量%のうちの1種または2種以上を含有することが好ましい。さらにNb:0.01〜2.0 質量%,Ti:0.01〜1.0 質量%,Zr: 0.001〜1.0 質量%,Ta:0.01〜2.0 質量%およびB:0.0001〜0.0050質量%のうちの1種または2種以上を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抗菌性に優れたフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤ(以下、抗菌性溶接ワイヤという)を用いて、抗菌性を有するフェライト系ステンレス鋼材を溶接すれば、母材のフェライト系ステンレス鋼材と同等の抗菌性と耐食性を溶接金属に付与できる。
【0011】
また本発明の抗菌性溶接ワイヤを用いて、低合金鋼材,炭素鋼材あるいは抗菌性を付与していない通常のフェライト系ステンレス鋼材の肉盛り溶接を行なうことによって、抗菌性と耐食性を兼ね備えたクラッド材として使用できる。
【0012】
さらにフェライト系ステンレス鋼管,低合金鋼管,炭素鋼管をそれぞれ溶接して連結した配管を構築する際に本発明の抗菌性溶接ワイヤを用いると、抗菌性を有する溶接金属からなる溶接継手を形成できるので、溶接金属の切削研磨を必要とせず、溶接のままの状態で微生物の付着を抑制できる。従来のステンレス鋼溶接ワイヤを用いて配管を構築する場合、配管内を流れる流体が溶接金属のマクロ的な凹凸によって滞留して、流体中を浮遊する微生物が溶接金属に容易に付着し繁殖していた。そこで従来は、微生物の付着を防止するために、溶接金属(特に配管の内側)を切削研磨して平滑な面に仕上げる必要があった。これに対して本発明の抗菌性溶接ワイヤを用いると、溶接金属のマクロ的な凹凸は存在するものの、溶接金属が抗菌性を有する故に微生物の付着繁殖を抑制できるのである。
【0013】
以上に説明した通り、本発明の抗菌性溶接ワイヤは、多大かつ顕著な効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
一般に溶接ワイヤは、ソリッドワイヤとフラックスコアドワイヤに大別される。ソリッドワイヤは、炭素鋼製の素線やステンレス鋼製の素線からなる溶接ワイヤであり、素線の表面にめっきを施したり、あるいは潤滑剤を塗布したものもある。フラックスコアドワイヤは、炭素鋼製の外殻やステンレス鋼製の外殻の内側に溶接用フラックスを充填した溶接ワイヤである。
【0015】
本発明の抗菌性に優れたフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤ(すなわち抗菌性溶接ワイヤ)は、ソリッドワイヤとフラックスコアドワイヤに大別される溶接ワイヤのうち、ソリッドワイヤを対象とする。
【0016】
本発明の抗菌性溶接ワイヤの成分を限定した理由について説明する。
【0017】
C:0.0010〜0.150 質量%
Cは、固溶体強化型元素であり、溶接金属の強度を高めるためには0.0010質量%以上含有する必要がある。しかし 0.150質量%を超えて含有すると、後述するCrと結合して溶接金属中にCr炭化物を生成し、耐食性が低下する。したがって、Cは0.0010〜0.150 質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0018】
Si:0.20〜1.0 質量%
Siは、耐酸化性を高めるので、溶接金属の耐食性を向上するのに有効な元素である。また溶融メタルの流動性を向上させる効果も有するので、Siを添加することによって平滑なビード形状が得られ、溶接作業性の改善に有効である。この効果を発揮するためには0.20質量%以上含有する必要がある。しかし、 1.0質量%を超えて含有すると、溶接金属の高温割れ感受性を高める(すなわち高温割れが生じ易くなる)ばかりでなく、抗菌性溶接ワイヤの冷間加工性の低下に起因して伸線加工の生産性が低下する。したがって、Siは0.20〜1.0 質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0019】
Mn:0.20〜2.5 質量%
Mnは、脱酸作用と脱硫作用があり、溶接割れの原因となるSを固定して、溶接金属の高温割れ感受性を低下させる(すなわち高温割れが生じ難くなる)効果を有する。この効果を発揮するためには0.20質量%以上含有する必要がある。しかし、 2.5質量%を超えて含有すると、溶融メタルの流動性が悪化し、溶接作業性が低下する。しかも抗菌性溶接ワイヤの冷間加工性の低下に起因して伸線加工の生産性が低下する。したがって、Mnは0.20〜2.5 質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0020】
P: 0.010〜0.030 質量%
Pは、溶接金属の高温割れ感受性を高める元素であるから可能な限り低減する必要がある。P含有量が 0.030質量%を超えると高温割れ感受性が著しく上昇するので、 0.030質量%以下とした。しかし、Pを 0.010質量%未満に低減するためには、抗菌性溶接ワイヤの素材となるフェライト系ステンレス鋼の溶製段階で多大な精錬時間を要するので、精錬能率の低下,精錬コストの上昇を招く。したがって、Pは 0.010〜0.030 質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0021】
S: 0.00010〜0.020 質量%
Sは、溶接金属の結晶粒界に偏析し易く、粒界脆化を促進させて高温割れ感受性を高める元素である。また、抗菌性溶接ワイヤ製造時の冷間加工性を低下させるので、伸線加工の生産性が低下する。そのため、Sは可能な限り低減する必要がある。しかし、S含有量を 0.00010質量%未満に低減するためには、抗菌性溶接ワイヤの素材となるフェライト系ステンレス鋼の溶製段階で多大な精錬時間を要するので、精錬能率の低下,精錬コストの上昇を招く。一方、Sが 0.020質量%を超えると高温割れ感受性が著しく上昇する。したがって、Sは 0.00010〜0.020 質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0022】
Al: 0.00050〜0.30質量%
Alは、脱酸に有効な元素であるので、 0.00050質量%以上必要とするが、過剰な添加はアルミナ系介在物を増加させ、表面疵を多発させるとともに加工性を低下させるため0.30質量%以下に限定した。したがって、Alは 0.00050〜0.30質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0023】
Cr:10〜30質量%
Crは、溶接金属の耐食性を維持するために必須の元素であり、10質量%未満では十分な耐食性が得られない。一方、30質量%を超えると、溶接金属に金属間化合物が生じ易くなり、靭性が低下する。また、抗菌性溶接ワイヤの冷間加工性を低下させるので、伸線加工の生産性が低下する。したがって、Crは10〜30質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0024】
N: 0.005〜0.40質量%
Nは、Cと同様に、固溶体強化型元素であり、溶接金属の強度を高めるために有効な元素である。その効果を得るためには 0.005質量%以上含有する必要がある。しかし、0.40質量%を超えて含有すると、溶接金属中にNによるブローホールが発生する。したがって、Nは 0.005〜0.40質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0025】
Ag: 0.010〜1.0 質量%
Agは、本発明で最も重要な元素である。抗菌性溶接ワイヤにAgを添加することによって、溶接金属の表面にAgの濃化領域が形成され、病原性細菌の繁殖を抑制し、溶接金属の抗菌性を高めることができる。ただしAgは酸化され易い元素であるから、溶接による酸化消耗を考慮すると、Ag含有量が 0.010質量%未満では十分な抗菌性が得られない。一方、 1.0質量%を超えて含有すると、溶接金属の高温割れが発生し易くなる。また、高価なAgを 1.0質量%を超えて過剰に添加しても、抗菌性の一層の向上は期待できず、経済性の観点から好ましくない。したがって、Agは 0.010〜1.0 質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0026】
さらに本発明では、上記した組成に加えて、抗菌性溶接ワイヤがMo,Cu,W,Nb,Ti,Zr,Ta,Bを含有することが好ましい。
【0027】
Mo:0.01〜6.0 %質量,Cu:0.01〜2.5 質量%およびW:0.01〜0.30質量%のうちの1種または2種以上
Mo,Cu,Wは、いずれも0.01質量%以上添加することによって耐応力腐食割れ性,耐孔食性を高めることができる。さらに、これらの効果に加えて、Cuは、Agとともに、抗菌性を高める効果も有する。Wは、Agとの複合効果によって抗菌性を一層高める効果のみならず、固溶体強化型元素として溶接金属の強度を高める効果も有する。しかしMo,Cu,Wを過剰に添加すると、溶接金属の機械的性質が劣化する。すなわちMoが 6.0質量%を超えると、溶接金属に金属間化合物が生じ易くなり、耐食性や靭性が低下する。Cuが 2.5質量%を超えると、溶接金属の高温割れが生じ易くなる。Wが0.30質量%を超えると、抗菌性溶接ワイヤの冷間加工性を低下させるので、伸線加工の生産性が低下する。したがってMo,Cu,Wを添加する場合は、Mo:0.01〜6.0 %質量,Cu:0.01〜2.5 質量%,W:0.01〜0.30質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
【0028】
Nb:0.01〜2.0 %質量,Ti:0.01〜1.0 質量%,Zr: 0.001〜1.0 質量%,Ta:0.01〜2.0 質量%およびB:0.0001〜0.0050質量%のうちの1種または2種以上
Nb,Ti,Zr,Taは、いずれもCとの親和力が強く優先的に炭化物を生成させるので、溶接金属におけるCr炭化物の粒界析出を抑制し、耐粒界腐食性を高める効果を有する。Bは、フェライト系ステンレス鋼の結晶粒界を強化し、抗菌性溶接ワイヤの熱間加工性を高める効果を有する。これらの効果は、Nb:0.01質量%以上,Ti:0.01質量%以上,Zr: 0.001質量%以上,Ta:0.01質量%以上,B:0.0001質量%以上添加することによって発揮される。しかしNbが 2.0質量%を超えると、溶接金属の高温割れ感受性が上昇する。Tiが 1.0質量%を超えると、溶融メタルの流動性が低下し、溶接作業性が悪化する。Zrが 1.0質量%を超えると、溶融メタルの流動性が低下し、溶接作業性が悪化する。Taが 2.0質量%を超えると、溶接金属の高温割れ感受性が上昇する。Bが0.0050質量%を超えると、溶接金属の高温割れ感受性が上昇する。したがってNb,Ti,Zr,Ta,Bを添加する場合は、Nb:0.01〜2.0 %質量,Ti:0.01〜1.0 質量%,Zr: 0.001〜1.0 質量%,Ta:0.01〜2.0 質量%,B:0.0001〜0.0050質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
【0029】
上記した抗菌性溶接ワイヤの成分以外は、Feおよび不可避的不純物である。フェライト系ステンレス鋼を溶製する段階や抗菌性溶接ワイヤを製造する段階で不可避的に混入する不純物は、可能な限り低減することが好ましい。
【0030】
なお、本発明の抗菌性溶接ワイヤを用いて溶接を行なう際には、抗菌性溶接ワイヤ中のAgが溶接によって酸化消耗するのを抑制するために、不活性ガスをシールドガスとして用いたTIG溶接またはMIG溶接を採用するのが好ましい。
【実施例】
【0031】
Agを含有するフェライト系ステンレス鋼を溶製し、さらに熱間加工と冷間加工を施して、直径1.2mm のフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤ(すなわち抗菌性溶接ワイヤ)を製造した。得られた抗菌性溶接ワイヤの成分は表1,表2に示す通りである。表1に示した試料番号1〜26は、成分が本発明の範囲を満足する例であり、これを発明例とする。表2に示した試料番号27〜42は、成分が本発明の範囲を外れる例であり、これを比較例とする。すなわち試料番号27はP含有量が本発明の範囲を外れる例,試料番号28〜31,33,34,37,38,42はP含有量とAg含有量が本発明の範囲を外れる例,試料番号32,35,36,39,41はAg含有量が本発明の範囲を外れる例,試料番号40はC含有量とP含有量とAg含有量が本発明の範囲を外れる例である。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
これらの抗菌性溶接ワイヤを用いて、SUS430鋼板1(厚さ12mm,幅100mm ,長さ150mm )に3層肉盛り溶接を行なった。溶接条件は表3に示す通りである。
【0035】
【表3】

【0036】
次いで、図1に示すように、溶着金属の中央部表面において抗菌性試験をJIS規格Z2801 に準拠して実施した。抗菌性の評価は、抗菌製品技術協会がJIS規格Z2801 に準拠して制定したフィルム密着法を用いて行なった。フィルム密着法の手順は下記の通りである。
(1) 純度99.5%のエタノールを含有する脱脂綿等で、25cm2 の試験片を洗浄・脱脂する。
(2) 大腸菌を1/500 NB溶液に分散して、大腸菌の個数を2×106 〜6×106cfu/mlに調整する。
(3) 上記の (2)の菌液を 0.5ml/2.5cm2の割合で試験片(各々3枚)に接種する。
(4) 溶着金属2の表面に被覆フィルム3を被せて密着させ、温度を35±1℃,相対湿度(RH)を90%以上の条件で24時間保存する。
(5) 接種した試験菌を洗い出す。
(6) 寒天培養法(温度:35±1℃,時間:40〜48hr)により生菌数を測定する。
(7) 減菌率を算出する。
【0037】
なお、NB溶液とは、ブイオン培地(NB)を滅菌精製水で500倍に希釈したものである。また、ブイオン培地とは、肉エキス 5.0g,塩化ナトリウム 5.0g,ペプトン10.0g,精製水1000ml,pH 7.0±0.2 のものを指す。
【0038】
減菌率は下記の式で算出される値である。式中の対照の菌数とは、滅菌シャーレにて抗菌試験を行なった後の生菌数であり、9.30×107cfu/mlであった。試験後の菌数とは、測定した生菌数を指す。
【0039】
減菌率(%)= 100×(対照の菌数−試験後の菌数)/対照の菌数
このようにして求めた減菌率を表1,表2に併せて示す。発明例は、表1に示す通り、全て減菌率が99.9%であった。ところが比較例は、表2に示す通り、32.0%以下であった。したがって本発明の抗菌性溶接ワイヤを用いて溶接を行なうことによって、優れた抗菌性を有する溶接金属が得られることが確かめられた。
【0040】
しかも本発明の抗菌性溶接ワイヤは、表1に示す通り、通常のフェライト系ステンレス
鋼と同等の成分を有するので、優れた耐食性を有する溶接金属が得られるのは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】抗菌性試験に使用したSUS430鋼板と溶着金属を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1 SUS430鋼板
2 溶着金属
3 被覆フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C:0.0010〜0.150 質量%、Si:0.20〜1.0 質量%、Mn:0.20〜2.5 質量%、P: 0.010〜0.030 質量%、S: 0.00010〜0.020 質量%、Al: 0.00050〜0.30質量%、Cr:10〜30質量%、N: 0.005〜0.40質量%、Ag: 0.010〜1.0 質量%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤ。
【請求項2】
前記組成に加えて、Mo:0.01〜6.0 質量%、Cu:0.01〜2.5 質量%およびW:0.01〜0.30質量%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤ。
【請求項3】
前記組成に加えて、Nb:0.01〜2.0 質量%、Ti:0.01〜1.0 質量%、Zr: 0.001〜1.0 質量%、Ta:0.01〜2.0 質量%およびB:0.0001〜0.0050質量%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤ。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−95581(P2006−95581A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286749(P2004−286749)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000227962)日本ウエルディング・ロッド株式会社 (11)