説明

抗菌性熱転写記録媒体

【課題】本発明は、医療用の採血管、点滴パック等のラベル用途として、十分な抗菌効力を有し、画像堅牢性に優れた熱転写記録媒体を提供することを目的とする。
【解決手段】支持体上に、離型層を介して、着色剤を含む熱溶融性インク層を設けた熱転写記録媒体において、前記離型層又は熱溶融性インク層に1種類以上の有機系抗菌剤を内部に含有することを特徴とした熱転写記録媒体。前記有機系抗菌剤がイミダゾール化合物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十分な抗菌効力を有し、耐摩擦性に優れた熱転写記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱転写記録方式による印字機構は、一般に、基材(耐熱性支持体)上に直接又は剥離層を介して熱溶融性インク層を設けた熱転写記録媒体を用い、サーマルヘッドにより熱転写インクリボンを所定の印字用紙に密着させ、そして、そのサーマルヘッドが有する多数の発熱素子のうち、所要の発熱素子を発熱せしめることにより、熱転写リボンの支持体を介して発熱素子に接している熱溶融性インク部分を溶かして、印字用紙に転写せしめることにより、画像を得ようとするものである。
また、感熱転写方式によるプリンター、タイプライター、ワードプロセッサ等の印字装置が開発されており、小型装置からビジネス用途にまで広く使用されている。
【0003】
一方、繊維やプラスチック製品を中心として抗菌製品の展開が進んでおり、浴用関係、台所用品、食品関係、家電製品、事務機器、事務用品、又は医療関係など多種多様な分野に幅広く利用されている。特に、医療関係においては、院内感染が深刻な問題となっており、採血管や点滴用パックのラベルへの熱転写記録媒体の適用が期待される。また、医療機関等から排出される医療廃棄物の中には有害な2次感染源となるものも含まれているため、この処理も大きな問題となっている。
【0004】
また、プリンターで印画された熱転写記録媒体を取り扱う際、人の手指に接触するにも拘わらず十分な抗菌対策が施されておらず、熱転写記録媒体が細菌に汚染され、不衛生となる懸念があった。
これらの課題に対して、インク層に銀等の無機系抗菌剤を含有させる提案(特許文献1,2)及び剥離層に銀等の無機系抗菌剤を含有させる提案(特許文献3,4)がなされているが、抗菌剤と細菌等の微生物が直接接触しない用途の場合は、効果が期待できない。
また、十分な抗菌性が得られるように抗菌剤を多く含有させた場合、画像部の耐擦過性、耐薬品性などいわゆる画像堅牢性が劣ってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した実情を考慮してなされたものであって、医療用の採血管、点滴パック等のラベル用途として、十分な抗菌効力を有し、画像堅牢性に優れた熱転写記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は次の(1)〜(4)の発明によって解決される。
(1)支持体上に、離型層を介して、着色剤を含む熱溶融性インク層を設けた熱転写記録媒体において、前記離型層及び/又は熱溶融性インク層が1種類以上の有機系抗菌剤を含有することを特徴とした熱転写記録媒体。
(2)前記有機系抗菌剤がイミダゾール化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の熱転写記録媒体。
(3)前記有機系抗菌剤がピリジンチオールオキシドであることを特徴とする上記(1)に記載の熱転写記録媒体。
(4)前記熱溶融性インク層にポリオレフィンワックスを含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱転写記録媒体。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、医療用の採血管、点滴パック等のラベル用途として、十分な抗菌効力を有し、画像堅牢性に優れた熱転写記録媒体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明で使用される熱転写記録媒体は、厚さ3μm〜10μm程度の公知の支持体を用いることができ、支持体材料の例として挙げられるのは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロースアセテートなど、またこれらを積層させたフィルムなどである。なお、本発明では支持体の材料としてこれらに限定されない。
【0009】
本発明による熱転写記録媒体は、上記の支持体上に、ワックスを主成分とした離型層を形成する。ワックスとしては、公知のワックス、たとえば蜜ロウ、鯨ロウ、木ロウ、米ぬかロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、セラックワックスなどの天然ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エステルワックス、ポリオレフィンワックス、酸化パラフィンワックス、酸化ポリオレフィンワックス、オゾケライト、セレシン、α−オレフィン誘導体などの合成ワックス、高級脂肪酸、脂肪族エステル、脂肪族アミドなどを用いることができる。
なかでも、支持体との接着性が小さく、転写が容易であるポリオレフィンワックスが好ましい。ポリオレフィンワックスの融点は70℃以上130℃以下であることが好ましい。70℃以上であればブロッキングが起こりにくく、130℃以下であれば溶融しやすいため離型性がよくなる。
【0010】
この離型層は、印字の際、支持体と熱溶融性インク層との剥離性をよくするもので、サーマルヘッドで加熱されると熱溶融して低粘度の液体となり、加熱部分と非加熱部分の界面近傍で層が切れ易いように構成する。
また、離型層には、脱落防止、層塗工性向上等のために低粘度化剤となる樹脂を添加しても良く、この目的にはエチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−エチルアクリレート共重合体等が使用される。これらの添加は、本発明の効果に影響しない程度のごく少量であることが望ましい。
【0011】
さらに、離型層に弾力性を持たせて熱転写記録媒体と被転写体との密着性を向上させるために、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム類や公知の熱可塑性樹脂を添加してもよい。これらの添加物はワックスがもつ溶融性・離型性を阻害しない程度、すなわち離型層全体の0〜20%程度の添加が最適である。
【0012】
離型層を作製するために、これら合成炭化水素を有機溶媒で分散して離型層塗布液を作製するが、塗工後の乾燥時に溶融開始温度より高い乾燥温度とすることで、合成炭化水素が溶解した状態となり、連続性を持ち、均一な層を形成することが可能となる。不均一な層、非連続な層では、熱転写シート取り扱い時や保存時にインク層が脱落する可能性がある。なお、離型層の厚みは熱伝導の観点からは可能な限り薄い方が望ましいが、薄すぎると被転写体によっては画像の抜け(ボイド・白点)が発生したり、離型性やバリア性が発現しなかったりすることから、本発明では乾燥後の付着量は、好ましくは1.0g/m2〜4.0g/m2、より好ましくは1.2g/m2〜2.0g/m2として形成される。すなわち離型層の厚みとして好ましくは1.0μm〜4.0μm、より好ましくは1.2μm〜2.0μmである。
【0013】
また、本発明による熱転写記録媒体は、上記の離型層の上に、インク層を積層して構成されている。また、このインク層には、公知の着色剤を導入することができ、着色剤の例として、カーボンブラック、アゾ系染顔料、フタロシアニン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、キノフタロン、アニリンブラック、酸化チタン、亜鉛華、酸化クロムなど一般的に用いられている無機顔料や有機染顔料等を使用することができる。本発明は着色剤の材料をこれらに限定しないが、この中でも、カーボンブラックが特に好ましい。
【0014】
また、本発明に用いるインク層の主成分としては、前記した着色剤の他、この担持体として公知の樹脂またはワックスを用いることができる。樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、アイオノマー樹脂など公知の樹脂を使用することができる。この中で飽和ポリエステル樹脂を用いるのが特に好適である。飽和ポリエステル樹脂を担持体として用いることにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンフィルムをはじめとした多くの被転写体に転写、定着させることができる。本発明において、飽和ポリエステル樹脂とは、多価カルボン酸等の酸成分と、多価アルコール等のアルコール成分とを重縮合反応によって合成した化合物である。
【0015】
上記の酸成分としては、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸及びダイマー酸などの脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸及びデカリンジカルボン酸などの脂環族カルボン酸、並びにテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、トリメリット酸およびピロメリット酸などの芳香族カルボン酸を用いることができる。また、上記アルコール成分としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブチルグリコール、プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、オルトキシレングリコール、パラキシレングリコール、1,4-フェニレングリコール及びビスフェノールA並びにこれらのエチレンオキサイト付加物などを用いることができる。これらの酸成分とアルコール成分とを脱水縮合など公知の方法で反応させたものが使用できる。
【0016】
上記インク層におけるワックスとしては、公知のワックス、たとえば蜜ロウ、鯨ロウ、木ロウ、米ぬかロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、セラックワックスなどの天然ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エステルワックス、ポリオレフィンワックス、酸化パラフィンワックス、酸化ポリオレフィンワックス、オゾケライト、セレシン、α−オレフィン誘導体などの合成ワックス、高級脂肪酸、脂肪族エステル、脂肪族アミドなどを用いることができるが、この中で熱や溶剤に侵されにくく硬いワックスとして、ポリオレフィンワックス、酸化ポリオレフィンワックスを用いることができる。
ポリオレフィンワックスは、被転写体への定着性・高速印字性・耐摩擦性のバランスを維持できるように、融点が80℃以上130℃以下であり、インク層全量に対し1質量%から20質量%の範囲で添加することが好ましい。本発明では乾燥後の付着量は、好ましくは1.0g/m2〜4.0g/m2、より好ましくは1.2g/m2〜3.0g/m2として形成される。付着量が1.0g/m2未満の場合、耐摩擦性が悪く、4.0g/m2超の場合は、熱感度が低下してしまう。
【0017】
着色剤及びポリエステル樹脂を含むインク層では、転写体に高感度で鮮明な転写画像を得るために、前記ポリエステル樹脂のほか、さらなる画像再現性および堅牢性を持たせる目的で滑剤を導入することができる。滑剤としてはシリコーンオイル、シリカ、オルガノポリシロキサンなどの珪素化合物や、前述の公知のワックスを用いることができるが、この中で熱や溶剤に侵されにくく硬いワックスとして、ポリオレフィンワックス、酸化ポリオレフィンワックスを添加するとさらに画像の堅牢性が向上できる。
【0018】
また、アルコールやガソリンなどの溶剤に対して化学的耐性をさらに向上する目的で、インク層に第二の成分としてポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ケトン樹脂などに代表される公知の各種樹脂を添加することができる。かかる樹脂は特に耐摩擦性、耐薬品性などで優れた品質を有するものが好ましいが、従来の熱転写プリンターによって印加される熱量では不足である場合もあり、感度を阻害しない程度の添加が望ましく、例えば、かかる樹脂の添加量として、インク層全量に対して、1〜10質量%であることが好適である。
【0019】
以上のほか、感度向上や支持体からのインク層脱落防止や分散性向上等の目的で、インク層中に種々の物質(界面活性剤等や熱溶融性物質)を添加してもよいが、熱感度および耐久性を低下させない範囲の添加が望ましい。
【0020】
前記したインク層形成材料は、適当な溶媒中に分散させて或いは溶解させて作製し、好ましくはホットメルト塗工法、水性塗工法、有機溶媒を用いた、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーターなど一般的な塗工法により、溶解した塗布液を支持体上に塗布、乾燥して層を作製してもよい。
【0021】
本発明の熱転写記録媒体材料は抗菌剤を含有させることで、抗菌効力を発揮することができるが、熱転写記録媒体材料の画像堅牢性を低下させないことと抗菌効力の両立のため、有機系抗菌剤を必須成分とする必要がある。
【0022】
有機系抗菌剤は、イミダゾール系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、チアベンダゾール、グアニジン系抗菌剤、尿素系抗菌剤、アクリジン系抗菌剤、キノリン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、ホルムアルデヒド放出剤、ヨードプロパルギル誘導体、チオイソシアネート化合物、イソチアゾリノン誘導体、第4級アンモニウム塩、アルデヒド類等が挙げられ、その中でもイミダゾール系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤は画像堅牢性に優れることから好適である。
【0023】
イミダゾール系抗菌剤は、2−ベンツイミダゾールカルバミン酸メチル、1−ブチルカルバモイル−2−ベンツイミダゾールカルバミン酸メチル、6−ベンゾイル−2−ベンツイミダゾールカルバミン酸メチル、6−(2−チオフェンカルボニル)−2−ベンツイミダゾールカルバミン酸メチル等、2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾール、2−(2−クロロフェニル)−ベンツイミダゾール、2−(1−(3,5−ジメチルピラゾリル))ベンツイミダゾール、2−(2−フリル)−ベンツイミダゾール、2−チオシアノメチルチオベンツイミダゾール、1−ジメチルアミノスルフォニル−2−シアノ−4−ブロモ−6−トリフルオロメチルベンツイミダゾール等が挙げられ、2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾールが好適である。
また、ピリジン系抗菌剤として、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛が挙げられる。
また、上記抗菌剤の添加量は感熱記録材料の各層に対して夫々0.1〜3.0質量%であり、さらに好ましくは、0.3〜2.0質量%である。添加量が0.1質量%以上であれば充分に抗菌効力が発揮される。また、添加量が3.0質量%程度で抗菌効力が飽和するため、添加量は3.0質量%以下であることが経済的である。
【0024】
この成分以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他抗菌剤を添加することができる。たとえば、銀リン酸ジルコニウム、銀塩錯体、銀ゼオライト、抗菌セラミック、硅酸マグネシウム五水和物、および光触媒酸化チタン等の無機系抗菌剤を使用することができる。
【0025】
本発明による熱転写記録媒体は、さらなるバリア性付与のため、離型層とインク層の間に中間層を設けてもよく、この中間層においては本技術分野の公知の樹脂を使用することができる。ただし、中間層を付与する場合、全体のインク面の厚みが増えることになるため、サーマルヘッドによって効率的にインク層に熱が印加されるのを阻害しない範囲での適用が望ましい。
【0026】
また、支持体から見て上記の各層とは反対の面(インク層が形成されている面と反対側の面)に背面層を設けてもよい。かかる反対面には、転写時、サーマルヘッド等で画像に合わせて熱が直接印加される。本発明における背面層として、必要に応じて、高熱に耐性を持つ層(耐熱保護層)、サーマルヘッド等との摩擦に耐性を持つ層(滑性保護層)を設けることができる。また、支持体の裏面の一部がサーマルヘッドに熱融着し、これが転写画像を傷つけたり熱転写記録媒体の搬送を困難にしたりする現象(この現象をスティッキングと言う)も発生するから、これを防止する層(スティック防止層)を設けることができる。
【0027】
これらの背面層(上記の耐熱保護層、滑性保護層又はスティック防止層等)は、いずれも耐熱性高分子で形成される薄層であり、一つの層で二種以上の機能を担う層を兼用することもできる。以上に記載した背面層の形成に好適な重合体を例示すると、セルロース樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリウレタン、芳香族ポリスルホン、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール等が挙げられる。このほかタルク、シリカ、オルガノポリシロキサンなどの無機微粒子や、上述の滑剤などを添加することもできる。
【0028】
こうして得られた熱転写シートは、ホットスタンプ、ヒートロール、レーザー照射転写、シリアルサーマルヘッド、ラインサーマルヘッドなど加熱溶融によって転写層を溶融させ転写する方法により、被転写体に転写させることができる。この中で画像の鮮鋭性を持ち少ないエネルギーで高速に転写することができるラインサーマルヘッドによる転写方法が特に好ましい。
【0029】
さらに、本発明で使用される被転写体には、ポリエステルフィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリアミドフィルム、ポリスチレンフィルム、合成紙、耐洗紙などの一般的に用いられているフィルムのほか、軽量コート紙、キャストコート紙、アート紙など一般的に用いられている紙、PVC・PET・厚紙などの厚みがあるカード、ナイロン・ポリエステル・綿・不織布に代表される布帛など、さらに前述のフィルムを積層したもの、前述のフィルムにマット処理やコロナ処理、金属蒸着など表面処理をしたものも含め被転写体については公知のものが使用できる。これらの中、高速で画像を形成することができ、耐摩擦性を発現できるものとしてポリエチレンテレフタレートを基材としたフィルムが特に好適である。
【実施例】
【0030】
以下に本発明の実施例および比較例を具体的に記載する。部は特に示さない限り質量部である。また、本発明は以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
まず、シリコーン変性アクリル樹脂の5%トルエン溶液からなる背面層塗布液を4.5μm厚のポリエステルフィルム(支持体)上に塗布し、90℃で10秒乾燥して背面層を設けた。
背面層とは逆の支持体上に下記組成からなる離型性形成用塗布液をワイヤーバーにて塗工し、50℃で10秒間乾燥し、乾燥付着量約1.5g/m2の離型層を設け、その上に下記組成からなるインク層形成用塗布液を離型層と同様に塗布し、60℃で10秒間乾燥して、乾燥付着量約1.5g/m2のインク層を設け、本発明の熱転写記録媒体を作製した。
【0031】
<離型層形成用塗布液の組成>
[A液]
ポリエチレンワックス(融点100℃) 9部
エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂 1部
2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾール 0.01部
トルエン 90部
【0032】
<インク層形成用塗布液の組成>
[B液]
カーボンブラック 5部
アクリル樹脂(東亞合成社製 アロンA−104) 15部
メチルエチルケトン(MEK) 80部
【0033】
(実施例2)
実施例1の離型層形成用塗布液[A液]中の2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾールの添加量を0.1部とした以外は実施例1と同様の方法で塗布しインク層を設けた。
【0034】
(実施例3)
実施例1の離型層形成用塗布液[A液]中の2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾールの添加量を0.3部とした以外は実施例1と同様の方法で塗布しインク層を設けた。
【0035】
(実施例4)
実施例1の離型層形成用塗布液[A液]中の2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾールを2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウムとした以外は実施例1と同様の方法で塗布しインク層を設けた。
【0036】
(実施例5)
離型層形成用塗布液[A液]を下記[C液]とした以外は実施例2と同様の方法で塗布しインク層を設けた。
【0037】
[C液]
ポリエチレンワックス(融点100℃) 9部
エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂 1部
2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾール 0.05部
2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム 0.05部
トルエン 90部
【0038】
(実施例6)
離型層形成用塗布液[A液]を下記[D液]とし、インク層形成用塗布液[B液]を下記[E液]とした以外は実施例1と同様の方法で塗布した。
[D液]
ポリエチレンワックス(融点100℃) 9部
エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂 1部
トルエン 90部
[E液]
カーボンブラック 5部
アクリル樹脂(東亞合成社製 アロンA−104) 15部
2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾール 0.2部
メチルエチルケトン(MEK) 80部
【0039】
(実施例7)
インク層形成用塗布液[E液]中の2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾールを2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウムとした以外は実施例6と同様の方法で塗布した。
【0040】
(実施例8)
離型層形成用塗布液[A液]を下記[F液]とし、インク層形成用塗布液[B液]を下記[G液]とした以外は実施例1と同様の方法で塗布した。
[F液]
ポリエチレンワックス(融点100℃) 9部
エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂 1部
2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾール 0.05部
トルエン 90部
[G液]
カーボンブラック 5部
アクリル樹脂(東亞合成社製 アロンA−104) 15部
2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾール 0.1部
メチルエチルケトン(MEK) 80部
【0041】
(実施例9)
インク層形成用塗布液[E液]を下記[H液]とした以外は実施例6と同様に塗布した。
[H液]
カーボンブラック 5部
アクリル樹脂(東亞合成社製 アロンA−104) 12部
ポリエチレンワックス(融点125℃) 3部
2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾール 0.2部
メチルエチルケトン(MEK) 80部
【0042】
(実施例10)
実施例9の2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾールを2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウムとした以外は実施例9と同様に塗布した。
【0043】
(実施例11)
実施例9の2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾールを2−メルカプトベンツチアゾールナトリウムとした以外は実施例9と同様に塗布した。
【0044】
(比較例1)
実施例1の離型層形成用塗布液[A液]から2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾールを除いた以外は実施例1と同様に塗布した。
【0045】
(比較例2)
実施例1の離型層形成用塗布液[A液]を下記[I液]とした以外は実施例1と同様に塗布した。
[I液]
ポリエチレンワックス(融点105℃) 9部
エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂 1部
酸化亜鉛 0.1部
トルエン 90部
【0046】
(比較例3)
実施例9の2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾールを酸化亜鉛とした以外は実施例9と同様に塗布した。
【0047】
各実施例及び比較例の離型層形成用塗布液及びインク層形成用塗布液の組成をまとめたものを下記〔表1〕にあらわす。
【0048】
【表1】

【0049】
以上のようにして作製した実施例1〜11及び比較例1〜3の熱転写記録媒体を、被転写体としての白色ポリエステルフィルム(リンテック製LVIPシリーズ)に、熱転写プリンター(ライン型薄膜サーマルヘッド・Zebra社製Z140Xi・ドット密度12本/mm)を用い、印字速度を76mm/秒、5mm角ゴシック体の漢字・数字および巾3mmの太線の印字を行った。
【0050】
<画像堅牢性試験>
芯の出ていないシャープペンシルの先端で画像を荷重40グラム重で、印字面に対し40°の角度で擦り、画像が欠けるまでの回数を評価し、画像堅牢性(耐摩擦性)の判定を行った。判定基準は下記〔表2〕に示すとおりである。
結果を下記〔表3〕にまとめた。
【0051】
<抗菌効力試験>
JIS Z 2801の抗菌試験方法に基づき、実施例及び比較例で得られた熱転写記録媒体を1辺5cmの正方形に切り取り、試験片とした。Escherichia coli(エスケリチィア コリ)を1.5×106個に調整し、試験片へ滴下し、ポリエチレンフィルムを密着させ、37℃で保存し、24時間後の生菌数を測定し、次の式により、抗菌活性値を算出した。判定基準は下記〔表2〕に示すとおりである。
【0052】
R={log(B/A)−log(C/A)}=log(B/C)
R:抗菌活性値、
A:無加工試験片の接種直後の生菌数の平均値(個)、
B:無加工試験片の24時間後の生菌数の平均値(個)、
C:抗菌加工試験片の24時間後の生菌数の平均値(個)。
なお、測定箇所は印字面とした。
結果を下記〔表3〕にまとめた。
【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開平9−95058号公報
【特許文献2】特開平9−95059号公報
【特許文献3】特開平8−187931号公報
【特許文献4】特開平9−86056号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、離型層を介して、着色剤を含む熱溶融性インク層を設けた熱転写記録媒体において、前記離型層及び/又は熱溶融性インク層が1種類以上の有機系抗菌剤を含有することを特徴とした熱転写記録媒体。
【請求項2】
前記有機系抗菌剤がイミダゾール化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写記録媒体。
【請求項3】
前記有機系抗菌剤がピリジンチオールオキシドであることを特徴とする請求項1に記載の熱転写記録媒体。
【請求項4】
前記熱溶融性インク層にポリオレフィンワックスを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写記録媒体。

【公開番号】特開2011−11358(P2011−11358A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155082(P2009−155082)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】