説明

抗菌性高分子及びその製造方法、並びに抗菌性高分子を使用した抗菌材及びその製造方法

【目的】 本発明は、優れた微生物吸着性能と抗菌性能とを有し、水に不溶若しくは難溶でありながら、溶剤には可溶である抗菌性高分子及びその製造方法、並びに抗菌性高分子を使用した抗菌材及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【構成】一般式
【化1】


(ただし、式中Rは水素原子またはC1 〜C3 のアルキル基、Xはハロゲン原子、Yは水素原子、C1 〜C3 のアルキル基、ベンジル基、エーテル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基またはアリール基)で表されるビニル系共重合体からなる抗菌性高分子及びその製造方法、並びに抗菌性高分子を使用した抗菌材及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は優れた微生物吸着性能と抗菌性能とを有し、水に不溶若しくは難溶でありながら、溶剤には可溶である抗菌性高分子及びその製造方法、並びに抗菌性高分子を使用した抗菌材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、微生物吸着性能を有する高分子としては、本出願人が特開平3−47536号において提案した微生物吸着樹脂がある。この微生物吸着樹脂は、一般式
【化5】


(ただし、式中R1 はベンジル基、C4 〜C16のアルキル基、またはペンタフルオロフェニルメチル基、R2 は水素原子またはC1 〜C3 のアルキル基、Xはハロゲン原子、Yは水素原子、C1 〜C3 のアルキル基、ベンジル基、エーテル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基またはアリール基)で表されるビニル系共重合体からなるものである。
【0003】また、特開平3−174419号では、上記微生物吸着樹脂を用い、この樹脂を多孔質体に付着してなる微生物吸着材を提案している。
【0004】これら特開平3−47536号や特開平3−174419号において提案した微生物吸着樹脂は、優れた微生物吸着性能を有し、水に不溶または難溶でありながらも、溶剤には可溶であるという特異な性質を有しているので、不織布などの多孔質体に付着加工して、単位重量当りの付着面積を高め、高い微生物吸着性能を持つ微生物吸着材を得ることができるという利点を有していた。また、この微生物吸着樹脂は微生物を生きたままで吸着することができるので、バイオリアクターやバイオセンサーなどの分野にきわめて有効であった。
【0005】上記特開平3−174419号に示された微生物吸着材を用いて吸着した微生物を取り除くためには、微生物吸着材を水またはエアーで洗浄することで、吸着材上の微生物を微生物吸着材の系外に取り出すか、あるいは特開平4−9304号に示されたような微生物吸着材に殺菌剤を付着させておき、吸着された微生物を殺菌剤の作用で殺菌するかの手段を講ずる必要があった。
【0006】ところが、微生物吸着材を水またはエアーで洗浄することで、吸着材上の微生物を微生物吸着材の系外に取り出す方法の場合、手間がかかる上、吸着材上の微生物を完全に除去することができないという不具合があった。また、特開平4−9304号の微生物吸着樹脂とともに殺菌剤を付着させた微生物吸着材にあっては、吸着材上で微生物を吸着し、これを殺菌できるという利点を有してはいるものの、その製造には殺菌剤の付着加工を微生物吸着材の製造工程とは別に行わなければならなかった。また、殺菌剤の付着加工では、微生物吸着樹脂の付着部分と殺菌剤の付着部分とを一致させることは難しく、微生物吸着性能を発揮する部分と微生物を殺菌する部分とが離れてしまい、微生物の吸着、殺菌効果が得られないというケースも生じていた。
【0007】本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、優れた微生物吸着性能と抗菌性能とを有し、水に不溶若しくは難溶でありながら、溶剤には可溶である抗菌性高分子及びその製造方法、並びに抗菌性高分子を使用した抗菌材及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用】上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、一般式
【化6】


(ただし、式中Rは水素原子またはC1 〜C3 のアルキル基、Xはハロゲン原子、Yは水素原子、C1 〜C3 のアルキル基、ベンジル基、エーテル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基またはアリール基)で表されるビニル系共重合体(以下単にビニル系共重合体という)からなる抗菌性高分子をその要旨とした。
【0009】請求項2記載の発明は、一般式中のn:mの割合が10:90〜90:10であることを特徴とする抗菌性高分子をその要旨とした。
【0010】請求項3記載の発明は、ビニルピリジンモノマーとモノビニルモノマーとを用いて共重合した後、ピリジン基をハロゲン化水素酸によって4級化することを特徴とする抗菌性高分子の製造方法をその要旨とした。
【0011】請求項4記載の発明は、ビニル系共重合体からなる抗菌性高分子が基材に付着していることを特徴とする抗菌材をその要旨とした。
【0012】請求項5記載の発明は、抗菌性高分子が多孔質基材に付着していることを特徴とする抗菌材をその要旨とした。
【0013】請求項6記載の発明は、抗菌性高分子が不織布に付着していることを特徴とする抗菌材をその要旨とした。
【0014】請求項7記載の発明は、抗菌性高分子を溶剤溶液の形態で基材に付与し、乾燥することを特徴とする抗菌材の製造方法をその要旨とした。
【0015】請求項8記載の発明は、抗菌性高分子を分散液の形態で基材に付与し、乾燥することを特徴とする抗菌材の製造方法をその要旨とした。
【0016】本発明の抗菌性高分子は、4−ビニルピリジンとモノビニルモノマーとを共重合した後、塩酸、臭化水素酸などのハロゲン化水素酸を作用させて得られるビニル系共重合体からなるものである。このビニル系共重合体は、従来より知られた橋かけポリビニルピリジニウムハライド(特公昭62−41641号公報に記載)と同様の優れた微生物吸着性能を有し、しかも優れた抗菌性能を有している。このため、抗菌剤と併用することなく、効率よく微生物を吸着し、殺菌することができる。また、このビニル系共重合体はランダム共重合体またはブロック共重合体である。
【0017】共重合に使用するモノビニルモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテンなどのモノオレフィン、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、脂肪族ビニルエステル、アクリロニトリル及びこれらの誘導体などがあるが、これに限らず、種々のものが単独又は組合せて使用できる。ただし、親水性の高い官能基を有するモノビニルモノマーを使用すると、得られる共重合体が重合度によっては水溶性となるので望ましくない。
【0018】この4−ビニルピリジンとモノビニルモノマ−との比率、すなわち、n:mの割合は、使用されるモノビニルモノマーの種類や、重合度によっても異なるが、大略10:90〜90:10、より好ましくは10:90〜50:50の範囲にあるのが望ましい。というのは、この範囲よりも4−ビニルピリジンの割合が少ないと十分な微生物吸着性能及び抗菌性能が得られず、水不溶性が高くなり、この範囲よりも多いと得られるビニル系共重合体の微生物吸着性能及び抗菌性能は高くなるが、水溶性が高くなるからである。また、上記ビニル系共重合体の重合度は少なくとも300以上であることが望ましく、これより重合度が低いと、得られる共重合体は水溶性が高いものとなる。
【0019】モノビニルモノマーと4−ビニルピリジンとの共重合体は、塩酸、臭化水素酸などのハロゲン化水素酸と反応させることにより、共重合体におけるピリジン基を4級化し、次式で表わされるピリジニウム基を形成する。
【0020】
【化7】


このピリジニウム基が主体となって微生物を吸着する働きをしているものと考えられる。この機構は明らかではないが、このピリジニウム基は正に帯電しており、一般に微生物の細胞表面は負に帯電していることから、静電気的な相互作用が一つの重要な因子であると推定される。また、抗菌性高分子における抗菌性能も同じくビニル系共重合体のピリジニウム基が要因となっているものと考えられる。その理由は、一般にカチオンは微生物の生育に悪影響を及ぼすことは知られており、このカチオンの力が強いピリジニウム基の影響を受けて微生物が死滅しあるいは増殖が抑制されているものと思われる。
【0021】この抗菌性高分子は、水に不溶又は難溶であり、溶剤には可溶であるので、これを溶剤溶液または分散液の形態で基材に付与し、乾燥することで抗菌材を得ることができる。この場合、当該抗菌性高分子をビーズ状、ブロック状、板状に成形し、高分子自体を微生物吸着性能を備えた抗菌材として使用するのに比べて、高分子の作用面積を飛躍的に拡大することができ、高い微生物吸着性能及び抗菌性能を有する抗菌材を得ることができる。
【0022】次に、上記抗菌性高分子を使用した抗菌材について説明する。この抗菌材は、上記の如く抗菌性高分子を溶剤溶液または分散液の形態で基材に付与し、乾燥することで得ることができる。抗菌性高分子を溶剤溶液の形態で付与するとは、当該抗菌性高分子を構成するビニル系共重合体が水に対して実質的に不溶又は難溶であって、ジメチルホルムアミド(DMF)などの溶剤には可溶であるという性質を利用し、上記抗菌性高分子を溶剤に溶かして溶液とし、この溶液を含浸、コーティング等の手段で基材に付与することをいう。また、抗菌性高分子を分散液の形態で付与するとは、水に不溶又は難溶のビニル系共重合体よりなる抗菌性高分子を水、アルコールなどの液中に分散させて抗菌性高分子分散液を作製し、この分散液を含浸、コーティング等の手段で基材に付与することをいう。このように抗菌性高分子を基材に付与し、これを乾燥することで、溶剤又は分散媒が除去され、基材にビニル系共重合体からなる抗菌性高分子が薄くしかも均一に付着した抗菌材を得ることができるのである。
【0023】抗菌性高分子を付着させる基材としては、不織布、織物、編物、紙、発泡体、セラミックス焼結体などの多孔質体や、有機、無機、あるいは金属の粒子状物、ハニカム、多段板などの構造物が使用できる。この内、多孔質体は表面積が大きいので、その分だけ多くの抗菌性高分子を付着させることができ、高い微生物吸着性能及び抗菌性能を有する抗菌材を得ることができる点で好ましい。中でも不織布は3次元構造を持ち、表面積が大きく、圧力損失が低いという点で望ましい。加えて抗菌性高分子を有機溶剤に溶解させて付与する場合には、当該抗菌性高分子を不織布の構成繊維表面に薄く、均一に付着させることができ、抗菌性高分子の単位重量当りの表面積を飛躍的に拡大させ、当該抗菌性高分子の作用面積が大きくなり、より高い微生物吸着性能及び抗菌性能を備えた抗菌材を得ることができる。また、不織布を基材とした場合には、微生物を大量に吸着したときでも不織布の密度をコントロールすることで、空隙を確保し、目詰まりの生じない構造とすることができる。
【0024】基材への抗菌性高分子の付着量としては特に限定されないが、付着量が基材に対し0.01〜30wt%の範囲のものが微生物吸着性能及び抗菌性能が高く、かつ経済的である。30wt%を越える多量の抗菌性高分子を付着した場合には、抗菌性高分子の使用量が増す割には効果は上がらず、不経済となる。
【0025】尚、本発明における微生物とは、細菌、かび類、藻類、ウイルス等をいう。
【0026】
【実施例】以下、本発明を実施例に従って詳細に説明する。
実施例減圧蒸留した4−ビニルピリジンとスチレンのモノマーを用い、4−ビニルピリジンとスチレンとを、4−ビニルピリジン/スチレン=1/2.75モルの割合で混合し、これにラジカル重合開始剤としてアゾビス−イソブチロニトリル(AIBN)をAIBN/(4−ビニルピリジン+スチレン)=0.2モル%加え、更にアルコールを加えて4−ビニルピリジン+スチレン=54重量%のアルコール溶液として、窒素雰囲気下、80℃、6時間共重合した後、AIBNと等モルのヒドロキノン重合禁止剤を加えて重合を停止させた。
【0027】次いで、この共重合体溶液に4−ビニルピリジン/塩酸=1/1モルの比率で市販の36%塩酸水溶液を加え、80℃、6時間の条件下で4級化処理した。得られたビニル系共重合体をその濃度が25重量%となるまでアルコール希釈し、これを12倍量の水に入れ、共重合体濃度が2重量%の牛乳色のサスペンション液を作製した。
【0028】このサスペンション液に塩酸/共重合体=0.78g/gの比率で5〜12%塩酸水溶液を加え、共重合体を浮上させた。下層薄黄色透明液を除き、薄黄色の共重合体を5分間水洗し、白色固体を得た。これを80℃で真空乾燥して、収率41%の極薄黄色固体のビニル系共重合体を得た。
【0029】比較例スチレンと4−ビニルピリジンモノマーの混合液に等量の5%水酸化ナトリウム水溶液を加えて分別した褐色上層液に、更に等量の水を加えて分別し、得た褐色上層液の4−ビニルピリジン/スチレンモノマーを用い、4−ビニルピリジンとスチレンとを、4−ビニルピリジン/スチレン=1/2.75モルの割合で混合し、これにラジカル重合開始剤としてAIBNをAIBN/(4−ビニルピリジン+スチレン)=0.2モル%加え、更にアルコールを加えて4−ビニルピリジン+スチレン=54重量%のアルコール溶液として、窒素雰囲気下、80℃、6時間共重合した後、AIBNと等モルのヒドロキノン重合禁止剤を加えて重合を停止させた。
【0030】次いで、この共重合体溶液に4−ビニルピリジン/塩化ベンジル酸=1/1.2モルの比率で塩化ベンジルを加え、80℃、6時間の条件下で4級化処理した。得られたビニル系共重合体をその濃度が20重量%となるまでアルコール希釈し、これを7倍量の水に入れ、サスペンション液を作製した。
【0031】このサスペンション液に塩酸/共重合体=0.56g/gの比率で5〜12%塩酸水溶液を加え、共重合体を沈降させた。上澄み液を除き、共重合体を水洗し、80℃で真空乾燥して、収率57%の薄黄色固体の共重合体を得た。
【0032】実施例のビニル系共重合体(1)及び比較例の共重合体(2)について、アルコール溶解性、DMF溶解性、水溶性、分解温度、除菌率を測定した。この結果を表1に示す。尚、表1中の分解温度はTG−DTA測定により求めた。同じく表1の除菌率A(%)は、共重合体濃度が1重量%のアルコール溶液が含浸されたレーヨン不織布(WE、RX−9450)を用い、これを大腸菌液と2時間接触させ、生存菌数計測法により求めた数値である。同じく表1の除菌率B(%)は、接触時間を4時間とした場合の生存菌数計測法により求めた数値である。また、表1の比較例の水溶性は100g水中の溶解度(室温、27日間)=0.031g、実施例の水溶性は100g水中の溶解度(室温、27日間)=1.048gであった。(以下余白)
【0033】
【表1】


【0034】抗菌性試験1次に、上記実施例及び比較例の共重合体、並びにこれら共重合体を付着させた不織布について抗菌性試験を行った。約7×108 セル/モルの大腸菌液を0.2ミリリットル、3.85重量%SCD寒天平板培地に移植し、30℃にて1日培養した。また、0.85重量%生理食塩水に1重量%量又は15重量%量の実施例の共重合体を入れ、同じく比較例の共重合体についても各々1重量%量又は15重量%量ずつ入れ、1日攪拌した後、膨潤した共重合体を前記寒天培地上に移し、30℃にて培養した。目視により1日後、13日後のサンプルの変化を観察し、抗菌性の有無を調べた。この結果を表2に示す。
【0035】同じく上記実施例及び比較例の共重合体を用い、これらにアルコールを加えて共重合体濃度が1重量%または15重量%のアルコール溶液とし、これをレーヨン不織布(RX−9450、WE)に含浸し乾燥した後、この白色不織布を前記寒天培地上に載せ、抗菌性の有無を調べた。この結果を表2に示す。(以下余白)
【0036】
【表2】


【0037】表2から、比較例の共重合体又は不織布の接触面は変色したのであるが、この現象が菌の繁殖によるものなのか、溶菌現象によるものかの判断はできなかった。一方、1日後の実施例の共重合体又は不織布の接触面、並びに13日後の不織布は変色していないことから菌の繁殖が無いことが考えられ、実施例の共重合体が抗菌性を有していると考えられる。また、13日後の実施例の共重合体に変色が生じたが、これは共重合体の溶出量が極微量であるのに対して、菌の数が多すぎて、抗菌性能の限界を超えた為なのか、溶菌現象が起きたのかは不明であった。
【0038】抗菌性試験2上記抗菌性試験で用いたサンプルを使用し、滅菌済み白金耳で実施例及び比較例の各共重合体または不織布、及びこれらと接触した寒天の表面を軽く拭き、SCD寒天培地に移植し、30℃で1日または3日培養した後、大腸菌の繁殖の有無を観察し、抗菌性の有無を調べた。その結果を表3に示す。
【0039】
【表3】


目視による大腸菌の増殖の有無により抗菌性の有無を判別。
増殖なし:−、増殖あり:+(コロニー数が数十個)
【0040】表3から、比較例の共重合体には抗菌性が認められなかったのに対し、実施例の共重合体では抗菌性を有することが示唆される。
【0041】
【発明の効果】上記構成を備えたことにより、請求項1記載の抗菌性高分子にあっては、優れた微生物吸着性能と抗菌性能とを有しているので、殺菌剤を併用する必要がなく、効率よく微生物を吸着し、かつ殺菌することができる。
【0042】また、この抗菌性高分子は水に不溶または難溶であるので、水系で使用しても、被処理液中に溶出することがなく、人や環境に悪影響を及ぼすことがなく安全である。また、この抗菌性高分子にあっては、溶剤には可溶であるので、これを溶剤溶液あるいは分散液の形態で基材に付与することができ、高い微生物吸着性能及び抗菌性能を有する抗菌材を得ることができる。
【0043】請求項2記載の抗菌性高分子は、分子中のビニルピリジンモノマーとモノビニルモノマーの割合が10:90〜90:10であることから、水不溶性であり、かつ十分な微生物吸着性能及び抗菌性能を確保できる。
【0044】請求項3記載の抗菌性高分子の製造方法は、共重合体のピリジン基をハロゲン化水素酸によって4級化することで、優れた微生物吸着性能と抗菌性能とを有する抗菌性高分子を得ることができ、高分子の製造過程に抗菌性能を持たせるための特別の工程を設ける必要が無い。
【0045】請求項4記載の抗菌材にあっては、抗菌性高分子が基材に付着してなるので、抗菌性高分子をビーズ状、ブロック状、板状に成形し、高分子自体を抗菌材として使用するのに比べて、高分子の作用面積が大きく、高い微生物吸着性能及び抗菌性能を有する。
【0046】請求項5記載の抗菌材にあっては、抗菌性高分子が表面積の大きな多孔質基材に付着しているので、基材に付着する抗菌性高分子の作用面積も多くなり、より高い微生物吸着性能及び抗菌性能を有する。
【0047】請求項6記載の抗菌材にあっては、3次元構造を持ち、表面積が大きく、圧力損失が低い不織布を基材として用いているので、抗菌性高分子の単位重量当りの作用面積は飛躍的に大きくなり、一層高い微生物吸着性能及び抗菌性能を有することになる。
【0048】請求項7記載の抗菌材の製造方法にあっては、抗菌性高分子を溶剤溶液の形態で基材に付与し乾燥するので、抗菌性高分子は薄く均一に基材に付与されることになり、より高い微生物吸着性能及び抗菌性能を有する抗菌材を得ることができる。
【0049】請求項8記載の抗菌材の製造方法にあっては、抗菌性高分子を分散液の形態で基材に付与し乾燥するので、抗菌性高分子は薄く均一に基材に付与されることになり、より高い微生物吸着性能及び抗菌性能を有する抗菌材を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】一般式
【化1】


(ただし、式中Rは水素原子またはC1 〜C3 のアルキル基、Xはハロゲン原子、Yは水素原子、C1 〜C3 のアルキル基、ベンジル基、エーテル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基またはアリール基)で表されるビニル系共重合体からなる抗菌性高分子。
【請求項2】 一般式中のn:mの割合が10:90〜90:10であることを特徴とする請求項1記載の抗菌性高分子。
【請求項3】 ビニルピリジンモノマーとモノビニルモノマーとを用いて共重合した後、ピリジン基をハロゲン化水素酸によって4級化することを特徴とする抗菌性高分子の製造方法。
【請求項4】一般式
【化2】


(ただし、式中Rは水素原子またはC1 〜C3 のアルキル基、Xはハロゲン原子、Yは水素原子、C1 〜C3 のアルキル基、ベンジル基、エーテル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基またはアリール基)で表されるビニル系共重合体からなる抗菌性高分子が基材に付着していることを特徴とする抗菌材。
【請求項5】 前記抗菌性高分子が多孔質基材に付着していることを特徴とする請求項4記載の抗菌材。
【請求項6】 前記抗菌性高分子が不織布に付着していることを特徴とする請求項4記載の抗菌材。
【請求項7】
【化3】


(ただし、式中Rは水素原子またはC1 〜C3 のアルキル基、Xはハロゲン原子、Yは水素原子、C1 〜C3 のアルキル基、ベンジル基、エーテル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基またはアリール基)で表されるビニル系共重合体からなる抗菌性高分子を溶剤溶液の形態で基材に付与し、乾燥することを特徴とする抗菌材の製造方法。
【請求項8】
【化4】


(ただし、式中Rは水素原子またはC1 〜C3 のアルキル基、Xはハロゲン原子、Yは水素原子、C1 〜C3 のアルキル基、ベンジル基、エーテル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基またはアリール基)で表されるビニル系共重合体からなる抗菌性高分子を分散液の形態で基材に付与し、乾燥することを特徴とする抗菌材の製造方法。