説明

抗菌組成物

【課題】貝殻カルシウム粒子が透水性バックに収納されてなる除菌消臭洗浄剤を、洗濯物と一緒に洗濯を行い、洗濯槽と洗濯物とを除菌消臭洗浄する方法が公知である。しかし、主流となっているドラム式洗濯機の洗濯メカニズムは、少ない水量で叩き洗いをし、今までの縦型回転式洗濯機にない強い機械的強度が貝殻粒子に加わる。その結果、貝殻カルシウム粒子が壊れ透水性バックから短期の間に流失し、効果が消失するという欠点があった。流失速度が洗濯機の種類に影響され難い貝殻カルシウムの製法によって流失速度を調整し、洗濯槽と洗濯物の除菌消臭洗浄効果が長期間持続し得るものを提供する。
【解決手段】ドラム式洗濯機の洗濯槽と洗濯物の除菌消臭洗浄効果を長期間持続させるため、(A)低温で焼成して得た、物理強度と消臭力が高く、壊れにくい貝殻焼成カルシウム粒子と(B)高温で焼成して得た、除菌、洗浄効果が高い貝殻焼成カルシウム粒子からなることを特徴とする除菌消臭洗浄剤を提供し課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機、特にドラム式洗濯機の除菌消臭洗浄に関する。詳しくは透水性バックに除菌・洗浄剤組成物を収納した状態で通常の洗濯時に投入し、洗濯用水、洗濯槽、洗濯物に対して除菌、消臭、洗浄効果を長期にわたって提供する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドラム式洗濯機とは水平方向の回転軸を持つドラム式洗濯槽を利用した洗濯乾燥機のことであって、日本では長らく縦型の洗濯槽を持つ洗濯機が主流であった。近年ドラム式洗濯機の普及が進み、徐々に主流となりつつある。その背景は以下のとおりである。縦型の洗濯機では、洗濯槽の底に取り付けられているパルセータと呼ばれる羽根を回転させ、それによって発生する水流で洗濯物を攪拌し洗濯を行なう「噴流式」であた。一方、ドラム式洗濯機では、洗濯槽が垂直方向に回転し、洗濯物を上に持ち上げて下に叩き落とす洗濯メカニズムである。すなわち、洗濯機の中で「叩き洗い」が行なわれていると理解される。最大の 特徴は、縦型洗濯機に比べて洗濯時に使用する水が少量ですむという利点でる。縦型洗濯機では、洗濯物全てにしっかり浸るだけの水を張って洗濯しなければならないが、ドラム式洗濯機では、ドラム内で洗濯物を回転する「叩き洗い」効果があるため、低限の水だけで洗濯が行なえる。現在市販されている洗濯機では、洗濯容量9kgの場合、縦型の全自動洗濯機では1回の洗濯で約140Lの水が使われるが、ドラム式洗濯機では約80Lで済む。このほかにも、糸くずが出にくい、シワがよりにくいという特徴がある。貝殻カルシウムを透水性バックに収納したものを通常の洗濯時に投入して使用した場合、ドラム式洗濯機では叩き洗いというこれまでにない物理作用を受ける結果、洗濯とともに、貝殻が粉々になり、微細粉末となってバックから流失し、除菌、消臭、洗浄効果が長期持続しないという新たな問題が生じている。
【0003】
洗濯機のカビ発生問題は、洗濯槽の外側にもうひとつ水槽があって、そこに付着したせっ
けんカスにカビの胞子が付着し、カビが黒く成長して洗濯物に付着することが原因と考え
られる。洗濯槽の穴位置や水流の工夫でカビが発生しにくくする対策が講じられているが、解決していない現状である。
【0004】
従来、除菌対策としては、薬剤系除菌剤を利用する除菌方法が知られているがこれらの方法はいずれも取り扱いが難しく、皮膚アレルギーやシックハウス症候群、化学物質過敏症などを引き起こす可能性があり、注意が必要であった。すなわち、薬剤の安全性(皮膚刺激性や皮膚アレルギー性など)に問題があった。既存の多くの抗菌剤は、薬効成分を溶出により放出することによって菌の発育を阻止あるいは死滅させるものであるため、時間とともにその薬効がなくなり、使えなくなってしまうという欠点があった。従来、水に抗菌性を与える場合、塩素系薬剤として、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸、トリクロロイソシアヌル酸等を使用する方法が知られていた。これらの方法では残効性がなく、処理後の菌汚染に弱く処理を繰り返す必要があった。アルコールを使用する方法は揮発性のため残効性がなく引火性があり危険であった。フェノール系薬剤を使用する方法では毒性があり刺激臭が大きく安全上の問題があった。4級アンモニウム塩例えば塩化ベンザルコニウムを使用する方法では、日常的に使われる家庭洗剤の主成分である陰イオン界面活性剤と反応して失効する。強酸性水を使用する方法では、適用範囲がされる限定されるという改善の余地が残されていた。また、洗浄効果を併せ持つものがなかった。
【0005】
洗濯機を使い続けることによって、洗濯槽裏面に付着したせっけんカスに雑菌やカビが繁殖し洗濯物へと移行し汚れや臭気を生じだけでなく、洗濯物を部屋干しする際、イヤなにおいが部屋に充満することが問題となっていた。この様な状況に鑑み、洗濯洗剤に除菌剤を配合してなる、部屋干しニオイ対策と称する、洗濯洗剤が上市されているが、上記の緒問題を解決していない現状である。この原因は洗濯洗剤に配合されている除菌剤が洗濯と同時に洗い流されるため、洗濯槽裏面に繁殖した雑菌やカビを防ぐことができないためと考えられる。対策として、1〜2か月に一回、定期的に使用する、塩素系等の強力な、薬剤を使用した洗濯槽専用クリーナーが市販されている。この方法は水を洗濯槽に満たし、洗濯槽専用クリーナーを入れ、かき混ぜ、長時間放置した後、さらに水洗い・すすぎ運転を数回繰り返さなければならなかった。この方法によると、カビ処理に要する時間が長く、水や電力消費が大きい上、排水に塩素系の有害物質を含むため、河川放流では環境問題を生じ、下水処理にも負担となる。
【0006】
上記洗濯槽、洗濯物の微生物汚染対策として、前記洗濯槽クリーナーに代わる安全、簡単で河川に対する環境負荷が小さい有効な手段が求められていた。このような状況に鑑み、危険な薬剤を一切使用せずに貝殻等からなる殺菌付与成分が不織布から洗濯槽に溶解し、その洗濯水が、洗濯槽の殺菌効果を奏する技術が報告されていたが以下に述べるように問題解決に至っていないのが現状である。
【0007】
参考文献―1(特開2001−233720号公報)には、貝殻粉末と他の無機物とを焼成した殺菌賦与在をメッシュの袋に収容し、該殺菌メッシュを洗濯槽の水中に浮遊させて洗濯機を使用することによって洗濯水に殺菌性を付与する方法が記載されている。また、焼成物の平均粒子径は5ミリと記載されている。しかしながら、ドラム式洗濯機使用においては、殺菌メッシュが浮遊〜回転せず叩き洗いに供されるため貝殻粒子同士の衝撃によって細かく粉砕され、メッシュの隙間からか短期に消失するために初期の目標が達成できなかった。
【0008】
参考文献―2(特開2001−139991号公報)にはホタテ貝殻を約200μmに粉砕し、粉砕後焼成したものを混合した食品素材を除菌洗浄する技術が報告されている。しかしながら(0006)同様、ドラム式洗濯機に使用した場合、貝殻粒子同士の衝撃によって細かく粉砕され、短期に透水性バックから流失し効果が消失するという欠点があった。
【0009】
参考文献―3(特開2007−007354号公報)には貝殻焼成カルシウムとゼオライトとの混合物の粉末または粒状を使用する方法が提案されている。しかしな(0006)同様、ドラム式洗濯機に使用した場合貝殻粒子同士の衝撃によって細かく粉砕され、短期に透水性バックから流失し効果が消失するという欠点があった。そのほか、メッシュの大きさと粒子径の大きさを最適化して長期残存する報告が縷々見られるがいずれもドラム式洗濯機のたたき洗いによる機械強度に抵抗できるものではなく利用できなかった。
【0010】
その他、貝殻焼成カルシウムの脱臭・吸着・除菌に関する技術が多く報告され周知のとおりである。参考文献―4(特許公開2005−230729号公報)に、塗料に配合してホルムアルデヒドを吸着する技術、参考文献―5(特許公開2006−36740)に、歯磨き剤に配合して消臭する技術、参考文献―6(特許公開2002−220227)に、建材に添加して、建築物内に発生するホルムアルデヒド等を効率的に吸着しシックハウス症候群等が生じることを防止する技術が報告されている。このように、貝殻焼成カルシウムの脱臭・吸着・除菌効果は既に周知であるが、ドラム式洗濯機の強い物理作用に耐える貝殻焼成カルシウムの製法と組成に関する技術についてはいまだ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−233720号公報
【特許文献2】特開2001−139991号公報
【特許文献3】特開2007−007354号公報
【特許文献4】特許公開2005−230729号公報
【特許文献5】特許公開2006−36740号公報
【特許文献6】特許公開2002−220227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上述べたように、本発明はドラム式洗濯機の洗濯槽と洗濯物の除菌洗浄剤に関する緒問題に鑑みてなされたものであり、人と環境に対する安全性に優れ、高い除菌力と洗浄力が長期持続する技術の提供を目的とするものである。最近主流となりつつあるドラム式洗濯機の除菌洗浄剤として、貝殻焼成カルシウム粒子を、透水性バックに収納したものを、洗濯槽に投入した状態で通常の洗濯を行うことにより、洗濯槽と、洗濯物の除菌、消臭、洗浄効果が長期間持続し得るものを提供することを課題とする。
【0013】
洗濯機は技術革新によってパルセーターによる「噴流式」から、ドラム式洗濯機への転換が進んでおり、主流となりつつある。ドラム式洗濯機によれば洗濯容量9kgの場合、縦型の全自動洗濯機では1回の洗濯で約140Lの水が必要なのに対して、約80Lで済むという利点がある。この他、洗濯時間が短い、糸くずが出にくい、洗濯物のシワがよりにくいなどの特徴を有する。
【0014】
ドラム式洗濯機は「少ない水の存在下で叩き洗い」する物理強度が高い洗濯メカニズムため、透水性バックに収納された貝殻焼成カルシウム粒子同士の衝突が洗濯中に起こる結果、貝殻焼成カルシウム粒子が微細化され、透水性バックから短期間に流失してしまうという致命的な問題があり、透水性バックに収納された貝殻焼成カルシウム粒子は利用できなかった。
【0015】
貝殻カルシウムの流失を防止する方策として、透水性バックの開口度を密にする方法が考案されているが、洗濯水、洗濯物との接触効率が下がり、除菌・洗浄力が低下するので利用できない。また、貝殻焼成カルシウムを混練粒状化機に送り込み、適量の石膏、米糠、水あめ、水溶性高分子物質等を添加してサイジング、造粒、増径する手段が考案されているが、ドラム式洗濯機に耐える物理強度並びに有効成分(CaO)の溶出度を最適に調整することが困難なため利用できない。本発明は上記事情に鑑みて、ドラム式洗濯機の除菌洗浄剤として、通常の洗濯操作を特別な制御をせずに、洗濯機の機構をも、複雑にすることなく除菌洗浄が長期持続するものを提供する技術に関する。すなわち、貝殻焼成カルシウム粒子を、透水性バックに収納したものを、洗濯槽に投入した状態で、通常の洗濯を行うことにより、洗濯槽と洗濯物の除菌、洗浄効果が長期間持続し得るものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
250〜500°Cの温度で加熱処理した貝殻の粉末(A)と900〜1300°Cの温度で加熱した貝殻の粉末(B)とがA対Bの比が 30/70〜70/30の重量割合で混合され、かつ不織布の袋に収納されてなることを特徴とする洗濯槽及び洗濯物除菌消臭洗浄剤。本発明は縦型回転式洗濯槽の抗菌処理については、種々の方法等が検討されているが、ドラム式洗濯機の除菌洗浄剤として長期にわたる効果が持続する技術については、未だ報告されていないのが現状である。
【0017】
本発明の請求項1に係る抗菌組剤成物は、低温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質(A)と高温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質(B)とが混合されてなることを特徴としている。
【0018】
本発明の請求項1,記載の除菌、消臭、洗浄剤において、低温加熱処理温度が250〜500°C、高温加熱処理温度が900〜1300°Cの範囲である構成、250〜500°Cの温度で加熱処理した貝殻の粉末(A)と900〜1300°Cの温度で加熱処理した貝殻の粉末(B)とが30/70〜70/30の混合割合(重量比)である構成、透水性バックが不織布である構成をそれぞれ好適態様としている。
【発明の効果】
【0019】
上記課題を解決するため、請求項1では、低温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質(A)と高温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質(B)とが混合されてなることを特徴としている。即ち、本発明に係る除菌剤は、ドラム式洗濯機の叩き洗と言う強い機械衝撃によってカルシウム成分含有物質が崩壊、微細化されバックの隙間から短期に流失しないよう加熱処理条件を調節したものである。すなわち低温加熱処理されたカルシウム成分含有物質(A)はドラム式洗濯機の叩き洗に耐える貝殻本来の粘り強い物理強度と多孔質性を残している。この結果、洗濯物の乾燥工程で強力な脱臭力を長期間にわたって発揮する。一方、高温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質(B)は水と反応して水酸化カルシウムとなって、強力な「除菌力」と「アルカリ洗浄機能」を発揮する。高温焼成によって貝殻粒子はもろくなっているのでバックの隙間から流失されやすい欠点を有するが、低温加熱処理貝殻焼成カルシウム(A)と高温加熱処理貝殻焼成カルシウム(B)との混合割合を30/70〜70/30とすることによって貝殻の流失量調節のみならず、除菌、消臭、洗浄の各機能バランスを保ち、課題を解決する効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の除菌洗浄剤は、既述のように、低温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質(A)と高温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質(B)とを混合し、不織布からなる透水性バックに収納してなることを特徴としている。
【0021】
本発明で用いられる貝殻は、未焼成のものであれば特に限定されない。食用に供された後の貝殻をそのまま熱処理した後、機械的に粉砕したものや、貝殻を機械的に粉砕したものを熱処理したものが好適に用いられる。
【0022】
本発明によれば、低温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質(A)は未焼成の貝殻を250ないし500℃で加熱処理すればよい。この加熱処理により、貝殻のタンパク質などの有機物は加熱分解され、炭酸カルシウムを主成分とする無機物質のみが残存する。またこの加熱処理により、貝殻の多孔質化が進行し、洗濯物のイヤなにおいの吸着能を向上させる。
【0023】
250〜500°Cの低温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質(A)は未焼成貝殻の加熱処理温度が250℃未満では、有機物の分解と多孔質化が不十分であり、となり好ましくない。一方、加熱処理温度が500℃を超えると、炭酸カルシウムの一部が熱分解して貝殻の構造破壊が起こり、もろくなる。その結果ドラム式洗濯機の叩き洗いによって簡単に微細化されるため不都合となる。未焼成貝殻の加熱処理は20ないし90分の間で行うことが必要であり、加熱処理が20分未満では有機物の分解が不十分であり、また加熱処理が90分を超えると貝殻の成分である炭酸カルシウムの結晶が破壊されてもろくなるので利用が困難となる。また、貝殻粉粒子は粒子径が500〜3000μmに粉砕したものが好適に使用できる。機械強度が強いため特に粒子径は制限されない。
【0024】
高温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質(B)は、貝殻粒子の粘り強さには欠けるが、石灰化が進行し強いアルカリ性を示し除菌性、洗浄性に優れているため洗濯の除菌、洗浄剤として極めて好適である。高温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質は、酸化カルシウムを主成分とする。酸化カルシウムは水溶液中で水に溶解して水酸化カルシウムとなって水酸基イオンによる強いアルカリ性を示し、除菌、洗浄作用を発現する。CaO+HO→Ca(OH)2 Ca(OH)2→Ca+2OH この様にして発生した水酸基イオンが細菌の細胞膜を通して細胞内に侵入し細胞構成要素であるタンパク質を加水分解し殺菌作用を発揮する。900〜1300°Cの高温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質(B)は未焼成貝殻の加熱処理温度が900℃未満では酸化カルシウムへの石灰化が不十分なため、十分な除菌力と洗浄力が得られない。一方、1300°Cを超えると洗濯時の物理強度が著しく劣下し微細化が進むため、透水性バックから短期に流失するので利用できない。平均粒径は100ないし300μmであることが好ましい。平均粒径が300μmを超えると、貝殻粒子の物理強度が低下するため不都合である。また貝殻粉末の平均粒径が100μm未満であると、透水性バックの目詰まりが起こりやすくなるなどの不都合が生じてくる。加熱処理温度が1300℃を超えると、炭酸カルシウムが熱分解して得られる酸化カルシウム粒子の物理強度が著しく低下し、透水性バックが目詰りするため、ドラム式洗濯機の除菌洗浄剤として不都合となる。
【0025】
未焼成貝殻の加熱処理は30ないし90分の間で行うことが好適である。30分未満の場合石灰化が不十分なため除菌洗浄剤としての利用が困難となる。また、90分を超えると一層物理強度の低下を招き透水性バックの目詰まりを起こすので利用できない。
【0026】
低温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質(A)と、高温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質(B)との混合割合は重量比30/70〜70/30が好適である。低温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質(A)が少ないと目詰まりを生じ、多過ぎると抗菌力が劣る。また、高温で加熱処理されたカルシウム成分含有物質(B)が少ないと抗菌力が劣り多過ぎると目詰まりを生じ利用できない。
【0027】
本発明の加熱処理された貝殻カルシウムの原料は特に制限されるものではないが、ホタテ貝、牡蠣、サザエ、ホッキ貝、ハマグリ、アサリ、シジミ等が挙げられる。とりわけ大量に食消費される牡蠣、ホタテ貝の殻は、安価に入手できると共に、廃物の有効利用として省資源及び環境保全にも貢献できるため、好適なものとして推奨される。
【0028】
本発明によれば除菌消臭洗浄剤組成物が、不織布を使用した透水性バックに収納されていることを特徴としている。透水性バックに使用する不織布は『水を通して貝殻粒子の固形物を流さない』程度の濾過性があればよく特に制限されるものではない。不織布の素材としては、多種多様な繊維を使用することができる。天然繊維としては、綿、羊毛,麻、パルプ、絹、鉱物繊維が使用できる。化学繊維としては、レーヨン(再生繊維)、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル繊維、ビニロン、アラミド繊維などが利用可能である。具体的にはユニチカ製、エコミックス(再生ペットボトルから生まれたポリエステル長繊維不織布)、ユニチカ製、ナイエース(ナイロンスパンポンド不織布)などが好適に使用できる。
(実施例1〜5、比較例1〜6)
【0029】
以下、本発明について実施例を用いて説明するが、これらの実施例は何ら本発明を限定するものではない。貝殻焼成カルシウムの脱臭、消臭、除菌力に関する効果効能はすでに公知の技術である。したがって、実施例ではドラム式洗濯機と縦型回転式洗濯機による洗濯において貝殻焼成カルシウムの製法が及ぼす、残存率について表1から表3によって詳しく具体的に説明する。洗濯機の種類と錠剤への機械的損傷度を表1ドラム式洗濯機と縦型回転式洗濯機の相違点にまとめた。
【表1】


表2に洗濯30回後の貝殻焼成カルシウム残存率評価基準(洗濯機使用における除菌消臭洗浄剤のライフサイクルを30日として設定)を示す。
【表2】





洗濯機の種類と貝殻焼成カルシウムの製法が洗濯後の残存率に与える影響については表3のとおりであった。(実施例1〜5、比較例1〜2)
表3にドラム式洗濯乾燥機東芝TW−4000VFR−Nと縦型回転式洗濯機東芝AW−90GFを使用して洗濯した場合の貝殻焼成カルシウム組成と残存率評価を示す。
【表3】



【0030】
以下、表3の実施例について説明する。貝殻焼成カルシウムの加熱処理条件がA低温とは、ホタテ貝殻を電気炉内に装填し、内部を窒素ガスで置換し、約450℃にて30分間焼成を行い、焼成物を室温まで放冷させたものを再粉砕し、粒子径が500〜3000μとなるよう篩い分けして得たものである。また、貝殻焼成カルシウムの加熱処理条件がB高温とは、ホタテ貝殻を電気炉内に装填して内部を窒素ガスで置換し、約1050℃にて30分間の焼成を行い、焼成物を室温まで放冷させたものを再粉砕し、粒子径が100〜300μとなるよう篩い分けして得たものである。透水性バックはユニチカ製、エコミックス(再生ペットボトルから生まれたポリエステル長繊維不織布)を使用し、縦横10×8cmの透水性バックに加工した。高温ないし低温加熱処理して得た貝殻カルシウムを透水性バックに、表3に記載のとおり、それぞれの合計が30gとなるよう封入し、除菌消臭洗浄剤を作成した。ドラム式洗濯機としては、東芝製、「ドラム式洗濯乾燥機ヒートポンプエアコンハイブリッドTW−4000VFR−N」を縦型回転式洗濯機としては東芝製、全自動洗濯機型番AW−90GFを標準条件にて洗濯物9Kgを投入し運転した。使用前、10日後、20日後、30日使用後の貝殻焼成カルシウム残存量を測定し、30日後の残存率を表2の基準に準じて評価した。
【0031】
表2の実験結果から、ドラム式洗濯機においては低温Aと高温Bで加熱処理されたカルシウム成分含有物質の混合重量比が30/70〜70/30の範囲に限定される場合に限り、貝殻焼成カルシウムが長期洗濯に耐えることが明らかとなった。(実施例―1〜3)すなわち30日後の貝殻残存率評価が50%±30の範囲内、「◎」となり、ドラム式洗濯機に対する適応性が確認された。また、縦型回転式洗濯機においても支障がない。以上から、洗濯機全般への広い用途が確認された。(実施例―4〜6)一方、低温Aと高温Bで加熱処理されたカルシウム成分含有物質の混合重量比が0/100では流失量が著しく、100/0の場合は逆に目詰まりが著しくそれぞれ単独使用では利用できないことが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
500°C〜1300°Cで加熱処理した貝殻カルシウムが通気速度20〜60cm3/cm2・Secに特定された不織布に収納されてなることを特徴とする洗濯槽及び洗濯物除菌消臭洗浄剤。










【公開番号】特開2011−57781(P2011−57781A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206857(P2009−206857)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(309018870)有限会社オブジィー (5)
【出願人】(502439164)株式会社テイクネット (8)
【Fターム(参考)】