説明

抗CD30vc−PAB−MMAE抗体−薬物コンジュゲートのウィークリー投与計画

【課題】CD30発現血液癌の治療方法を提供する。
【解決手段】この方法は、それを必要とする被験者に、約0.8mg/kg〜1.8mg/kgの週用量の式(I)を有する抗体−薬物コンジュゲート化合物又は製薬上許容されるその塩を投与することを含んでなり、


式中、
mAbは、抗CD30抗体であり、
Sは、抗体の硫黄原子であり、
Aは、ストレッチャー単位であり、
pは、約3から約5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、CD30発現血液癌の治療方法に関し、この方法は、その治療を必要とする被験者に、週用量が約0.8mg/kg〜約1.8mg/kgの抗CD30vc−PAB−MMAE抗体−薬物コンジュゲートを投与することを含んでなる。
【背景技術】
【0002】
ホジキンリンパ腫(HL)は、悪性のホジキンリードスタンバーグ(HRS)細胞の存在により組織病理学的に定義されるリンパ系組織の腫瘍である。HRS細胞上に発現される特徴的な表面抗原はCD30である。米国及びカナダでは、毎年およそ8,000の新たなHL症例が診断されている。過去半世紀にわたって、HLにおける化学療法及び放射線療法の併用の進歩により、結果的に持続的寛解率は、およそ70%に達している。しかしながら、これらの併用療法は、二次性悪性腫瘍、心疾患、及び不妊症を含め、患者にかなりの疾病率をもたらす。さらに、HL患者のおよそ30%は、初期治療に対して効果がないか、再発するであろう。救援化学療法及び自家幹細胞移植(ASCT)は、これらの患者の第2の選択肢であるが、いずれもかなりの疾病率及び制限された長期の疾病管理を伴う。ASCT後に再発する患者又は救援療法に不適応な患者は、予後が非常に良くない。これまでのところ、これらの患者にとって、十分に許容される効果的な治療法の選択肢が不足している。このように、HL及び他のCD30発現癌を患っている患者のいまだ満たされない医学的ニーズが未だ存在する。本発明は、このようなニーズに対処するものである。
【発明の概要】
【0003】
A.はじめに
本発明は、とりわけ、CD30発現血液癌の治療方法を提供する。本発明者らは、抗CD30抗体−薬物コンジュゲートcAC10−(MC−vc−PAB−MMAE)を、約0.8mg/kg〜約1.2mg/kg用量で用いるウィークリー治療計画が、驚くほど有効な治療計画であることを見出した。この治療計画によれば、例えば、短期間で多くの客観的奏効があらわれ、また、頻繁な投薬にもかかわらず、許容できる耐薬プロファイルを有するようになる。このように実質的な用量の抗体−薬物コンジュゲートをかかる頻繁な間隔で投与することができ、その結果高い奏効率と許容できる毒性プロファイルとが得られることは驚くべき知見である。第I相試験では、治療から8週間以内に多くの完全寛解が観察された。このウィークリー投与計画では、短期間で高い奏効率がもたらされることが観察されている。高奏効率であることはまた、癌治療に対して併用療法ではなく、単剤療法として送達される薬物にとって驚くべくことである。したがって、本発明の方法では、とりわけ、被験者に対して、抗CD30vc−PAB−MMAE抗体−薬物コンジュゲートを投与するウィークリー投与計画が提供される。ある実施形態では、このウィークリー投与計画は、他の投与計画と比較して(例えば、3週間毎の投与計画と比較して)、被験者の治療に対する奏効率を高める。ある実施形態において、本投与計画は、治療サイクルにわたる抗体−薬物コンジュゲートの総量が、他の投与計画と比較して、このウィークリー投与計画では多いかもしれないという事実にもかかわらず、他の投与計画と比較して(例えば、3週間毎の投与計画と比較して)、被験者が有害事象(用量制限毒性を含む)を蒙る確率を高めない。本発明はまた、とりわけ、ウィークリー投与計画後の維持療法も提供する。
【0004】
限定するためではなく、開示を明確にするために、本発明の詳細な説明を以下のサブセクションに分けて記載する。
【0005】
B.概要
本発明は、とりわけ、cAC10−MC−vc−PAB−MMAE抗体−薬物コンジュゲート(Sanderson et al.,Clinical Cancer Research 2005,11:843−852。この文献は参照によりその全体が全ての目的で本明細書に組み込まれる)の毎週投与が、許容できる耐薬プロファイルとともに、驚くほど高い奏効率をもたらすことを見出したことに基づくものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】抗体−薬物コンジュゲートの代表的な投与スケジュール。1サイクルを28日間として、4週のうち3週は抗体−薬物コンジュゲートを週1回投与する。
【図2】抗体−薬物コンジュゲートの代表的な投与スケジュール。4週のうち3週は抗体−薬物コンジュゲートを週1回投与する。被験者に検出可能な癌の兆候がないということを示す評価が出ると、投与を3〜6週間で1回に減らす。
【発明を実施するための形態】
【0007】
C.定義及び略語
特に他で定義しない限り、本明細書中で用いる全ての技術・科学用語は、記載されている方法及び組成物に関係する技術分野の当業者が一般に理解している意味と同じ意味を有する。本明細書では、以下の用語及び語句は、特に他で規定されなければ、それらに帰因する意味を有する。
【0008】
「阻害する」又は「の阻害」という用語は、測定可能な量で減少させること、又は完全に妨げることを意味する。
【0009】
本明細書中で用いる移行句「から本質的になる」とは、請求項の範囲を特定の活性薬剤又はステップ(工程)、並びにその特定の活性薬剤の性質に実質的に影響を及ぼさない追加の活性薬剤及びステップ(工程)に限定するものである。
【0010】
本明細書中で用いる「薬剤」という用語は、成分、化合物、又は分子的実体を意味し、例えば、医薬化合物、治療用化合物、又は薬理的化合物を含む。薬剤は、天然物でも合成物でもよく、また、それらの組合せでもよい。
【0011】
「抗癌剤」は、治療計画の一環として、単独で又は他の薬剤との併用で、癌細胞に対して細胞傷害効果又は細胞静止効果を及ぼす薬剤のことである。「抗癌剤」は、被験者における癌の進行を遅らせるか、停止させるか、又は逆転させることができる。例えば、抗癌剤は、腫瘍の成長を阻害したり、腫瘍の成長を止めたり、及び/又はすでに存在する腫瘍の退行を引き起こすことが可能な薬剤である。癌を有する被験者に対して投与して、例えば、炎症、痛み、体重減少、及び全身倦怠感を含む、癌それ自体ではないが癌と関係する症状を治療する、抗炎症薬又は他の薬剤は、抗癌剤とはみなされない。
【0012】
細胞に対する薬剤の効果に関して、「細胞傷害効果」とは、細胞を死滅させることを意味する。「細胞静止効果」とは、細胞増殖の抑制を意味する。「細胞傷害剤」は、細胞に対する細胞傷害効果又は細胞静止効果を有し、それにより細胞集団内の細胞を、それぞれ枯渇させる、又はその増殖を抑制する薬剤を指す。
【0013】
CD30発現細胞に対する抗CD30抗体−薬物コンジュゲートの効果との関連で、「枯渇させる」という用語は、CD30発現細胞の減少又は除去を指す。
【0014】
本明細書中で用いる「治療」又は「治療する」という用語は、被験者におけるCD30発現疾患の進行を遅らせるか、停止させるか、又は逆転させることを指す。
【0015】
「特異的結合」及び「特異的に結合する」という用語は、抗CD30−抗体が高度に選択的に、その対応標的であるCD30と反応し、多くの他の抗原とは反応しないことを意味する。典型的には、抗CD30抗体は、少なくとも約1×10−7M、好ましくは1×10−8M〜1×10−9M、1×10−10M、1×10−11M、又は1×10−12Mの親和性で結合する。
【0016】
「モノクローナル抗体」という用語は、それが生産される方法ではなく、単一の細胞クローン(任意の真核又は原核細胞クローンを含む)又はファージクローンから誘導された抗体を指す。したがって、本明細書中で用いる「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術によって生産された抗体に限定されない。
【0017】
2つ以上の核酸配列又はポリペプチド配列との関連において、「同一の」又は「同一性%」という用語は、最大の一致が得られるように比較しアライメントした場合に、同じである2つ以上の配列若しくは部分配列、又は同じヌクレオチド若しくはアミノ酸残基を特定の割合で含むつ以上の配列若しくは部分配列を指す。同一性%を決定するためには、配列は、最適な比較目的のためにアライメントされる(例えば、第2のアミノ酸配列又は核酸配列との最適なアライメントのため、第1のアミノ酸配列又は核酸配列の配列中に、ギャップを導入することができる)。その後、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。第1の配列内の位置が、第2の配列内の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められる場合、これらの分子は、その位置で同一である。2つの配列間での同一性%は、配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一位置の数/位置の総数(例えば、重複する位置)×100)。ある実施形態では、2つの配列は、同じ長さである。
【0018】
2つの核酸又はポリペプチドとの関連において、「実質的に同一の」という用語は、少なくとも70%又は少なくとも75%の同一性;より典型的には少なくとも80%又は少なくとも85%の同一性;さらに典型的には少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の同一性を有する(例えば、以下に述べる方法のうちの1つを用いて決定される)、2つ以上の配列又は部分配列を指す。
【0019】
2つの配列間の同一性%の決定は、数学的アルゴリズムを用いてなされ得る。2つの配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul,1993,Proc.Natl. Acad.Sci.USA 90:5873−5877に記載のように改良した、Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad. Sci.USA 87:2264−2268に記載のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、Altschul, et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410に記載のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれる。BLASTヌクレオチド検索は、対象のタンパク質をコードする核酸と相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム(スコア=100、ワード長=12)を用いて実施され得る。BLASTタンパク質検索は、対象のタンパク質と相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)を用いて実施され得る。比較目的のためにギャップを導入したアライメントを得るには、Altschul et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389−3402に記載されているように、Gapped BLASTを利用することができる。あるいは、分子の遠縁関係を検出する反復検索を行なうために、PSI−Blastを用いることができる(同文献)。BLAST、Gapped BLAST、及びPSI−Blastプログラムを利用する場合、各プログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメーターを用いることができる。配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの他の好ましい非限定的な例は、Myers and Miller,CABIOS(1989)に記載のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列の比較のために、ALIGNプログラムを利用する場合、PAM120加重残基表、12のギャップ長ペナルティー、及び4のギャップペナルティーを用いることができる。配列分析のためのさらなるアルゴリズムは、当該技術分野において知られており、Torellis and Robotti,1994,Comput.Appl.Biosci.10:3−5に記載のADVANCE 及びADAM、並びにPearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444−8に記載のFASTAを含む。FASTA内で、ktupは、検索の感度及び速度を設定する制御オプションである。ktup=2の場合、比較されている2つの配列の類似領域は、アライメントされた残基の対を探すことによって見出され、ktup=1の場合、単一のアライメントされたアミノ酸が調べられる。タンパク質配列の場合には、ktupを2又は1に設定し、DNA配列の場合には、ktupを1〜6に設定することができる。ktupが特定されない場合のデフォルトは、タンパク質については2であり、DNAについては6である。
【0020】
あるいは、タンパク質配列アライメントは、Higgins et al.,1996,Methods Enzymol.266:383−402に記載されているように、CLUSTAL W アルゴリズムを用いて行なわれてもよい。
【0021】
本明細書中で用いる用語「製薬上許容される」は、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴うことなく、ヒト及び動物の組織との接触に適し、妥当な利益/危険比がつりあっている化合物、物質、組成物、及び/又は剤形を指す。用語「製薬上適合性の成分」は、抗体−薬物コンジュゲートとともに投与される、製薬上許容される希釈剤、補助剤、賦形剤、又は媒体を指す。
【0022】
略語「MMAE」は、モノメチルオーリスタチンEを指す。
【0023】
略語「vc」及び「val−cit」は、ジペプチドバリン−シトルリンを指す。
【0024】
略語「PAB」は、自壊型スペーサーを指す:
【化1】

【0025】
略語「MC」は、ストレッチャーマレイミドカプロイルを指す:
【化2】

【0026】
「cAC10−MC−vc−PAB−MMAE」は、MC−vc−PABリンカーを介して薬物MMAEに結合しているキメラのAC10抗体を指す。
【0027】
「抗CD30vc−PAB−MMAE抗体−薬物コンジュゲート」は、式(I)に示すように、ジペプチドバリンシトルリン及び自壊型スペーサーPABを含むリンカーを介して薬物MMAEに結合している抗CD30抗体を指す。
【0028】
抗体−薬物コンジュゲートの投与に関して語句「単回週用量」は、1週間に1回の薬物の投与を指す。それに対して、1週間の期間中の「分割送達用量」は、1週間に1回より多くの薬物の投与を指す。
【0029】
本明細書中で用いる「製薬上許容される塩」は、親化合物がその酸性塩又は塩基性塩を作製することによって修飾されている開示化合物の誘導体を指す。製薬上許容される塩の例は、アミン等の塩基性残基の無機又は有機酸塩、カルボン酸等の酸性残基のアルカリ又は有機塩等を含むが、これらに限定されない。製薬上許容される塩は従来の無毒性塩、すなわち、例えば、無毒性無機酸又は有機酸から形成される親化合物の第四級アンモニウム塩を含む。例えば、そのような従来の無毒性塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等の無機酸に由来するもの、及び酢酸、プロピオン酸、琥珀酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸等の有機酸から調製される塩を含む。これらの生理学上許容される塩は、例えば、水性アルコールに過剰な酸と共に遊離アミン塩基を溶解したり、又は水酸化物等のアルカリ金属塩基若しくはアミンで遊離カルボン酸を中和したりする、当該技術分野において知られている方法によって調製される。
【0030】
特に断りのない限り、用語「アルキル」は、約1〜約20の炭素原子(及びその中の炭素原子の範囲及び特定の数の全ての組合せ及び副組合せ)、好ましくは約1〜約8の炭素原子を有する飽和直鎖状又は分岐炭化水素を指す。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−2−ブチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、3−メチル−2−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−1−ブチル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3−メチル−3−ペンチル、2−メチル−3−ペンチル、2,3−ジメチル−2−ブチル、及び3,3−ジメチル−2−ブチルである。
【0031】
アルキル基は、単独で又は他の基の一部分としてのいずれにせよ、任意に、ハロゲン、−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−アリール、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)、−NHC(O)R’、−SR’、−SOR’、−S(O)R’、−S(O)R’、−OH、=O、−N、−NH、−NH(R’)、−N(R’)、及び−CNを含むが、これらに限定されない1つ以上の基、好ましくは1〜3の基(及びハロゲンから選択される任意のさらなる置換基)で置換され得る。ここで、各R’は、独立に、−H、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、又は−アリールから選択され、上記の−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−アリール、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、及び−C〜Cアルキニル基は、任意に、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、ハロゲン、−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−アリール、−C(O)R’’、−OC(O)R’’、−C(O)OR’’、−C(O)NH、−C(O)NHR’’、−C(O)N(R’’)、−NHC(O)R’’、−SR’’、−SOR’’、−S(O)R’’、−S(O)R’’、−OH、−N、−NH、−NH(R’’)、−N(R’’)、及び−CNを含むが、これらに限定されない1つ以上の基でさらに置換され得る。ここで、各R’’は、独立に、−H、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、又は−アリールから選択される。
【0032】
特に断りのない限り、用語「アルケニル」及び「アルキニル」は、約2〜約20の炭素原子(及びその中の炭素原子の範囲及び特定の数の全ての組合せ及び副組合せ)、好ましくは約2〜約8の炭素原子を有する直鎖状及び分岐炭素鎖を指す。アルケニル鎖は、鎖中に少なくとも1つの二重結合を有し、アルキニル鎖は、鎖中に少なくとも1つの三重結合を有する。アルケニル基の例は、エチレン又はビニル、アリル、−1−ブテニル、−2−ブテニル、−イソブチレニル、−1−ペンテニル、−2−ペンテニル、−3−メチル−1−ブテニル、−2−メチル−2−ブテニル、及び−2,3−ジメチル−2−ブテニルを含むが、これらに限定されない。アルキニル基の例は、アセチレン、プロパルギル、アセチレニル、プロピニル、−1−ブチニル、−2−ブチニル、−1−ペンチニル、−2−ペンチニル、及び−3−メチル−1−ブチニルを含むが、これらに限定されない。
【0033】
アルケニル基及びアルキニル基は、単独で又は他の基の一部分としてのいずれにせよ、任意に、ハロゲン、−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−アリール、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)、−NHC(O)R’、−SR’、−SOR’、−S(O)R’、−S(O)R’、−OH、=O、−N、−NH、−NH(R’)、−N(R’)、及び−CNを含むが、これらに限定されない1つ以上の基、好ましくは1〜3の基(及びハロゲンから選択される任意のさらなる置換基)で置換され得る。ここで、各R’は、独立に、−H、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、又は−アリールから選択され、上記の−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−アリール、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、及び−C〜Cアルキニル基は、任意に、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、ハロゲン、−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−アリール、−C(O)R’’、−OC(O)R’’、−C(O)OR’’、−C(O)NH、−C(O)NHR’’、−C(O)N(R’’)、−NHC(O)R’’、−SR’’、−SOR’’、−S(O)R’’、−S(O)R’’、−OH、−N、−NH、−NH(R’’)、−N(R’’)、及び−CNを含むが、これらに限定されない1つ以上の置換基でさらに置換され得る。ここで、各R’’は、独立に、−H、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、又は−アリールから選択される。
【0034】
特に断りのない限り、用語「アルキレン」は、約1〜約20の炭素原子(及びその中の炭素原子の範囲及び特定の数の全ての組合せ及び副組合せ)、好ましくは約1〜約8の炭素原子を有し、かつ、親アルカンの同じ又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去することによって誘導される2つの1価ラジカル中心を有する飽和分岐又は直鎖状鎖炭化水素基を指す。典型的なアルキレンは、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デカレン、1,4−シクロヘキシレン等を含むが、これらに限定されない。アルキレン基は、単独で又は他の基の一部分としてのいずれにせよ、任意に、ハロゲン、−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−アリール、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)、−NHC(O)R’、−SR’、−SOR’、−S(O)R’、−S(O)R’、−OH、=O、−N、−NH、−NH(R’)、−N(R’)、及び−CNを含むが、これらに限定されない1つ以上の基、好ましくは1〜3の基(及びハロゲンから選択される任意のさらなる置換基)で置換され得る。ここで、各R’は、独立に、−H、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、又は−アリールから選択され、上記の−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−アリール、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、及び−C〜Cアルキニル基は、任意に、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、ハロゲン、−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−アリール、−C(O)R’’、−OC(O)R’’、−C(O)OR’’、−C(O)NH、−C(O)NHR’’、−C(O)N(R’’)、−NHC(O)R’’、−SR’’、−SOR’’、−S(O)R’’、−S(O)R’’、−OH、−N、−NH、−NH(R’’)、−N(R’’)、及び−CNを含むが、これらに限定されない1つ以上の置換基でさらに置換され得る。ここで、各R’’は、独立に、−H、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、又は−アリールから選択される。
【0035】
特に断りのない限り、用語「アルケニレン」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する、任意に置換されているアルキレン基を指す。例示的なアルケニレン基は、例えばエテニレン(−CH=CH−)及びプロぺニレン(−CH=CHCH−)を含む。
【0036】
特に断りのない限り、用語「アルキニレン」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する、任意に置換されているアルキレン基を指す。例示的なアルキニレン基は、例えばアセチレン(−C≡C−)、プロパルギル(−CHC≡C−)、及び4−ペンチニル(−CHCHCHC≡CH−)を含む。
【0037】
特に断りのない限り、用語「アリール」は、親芳香族環系の単一の炭素原子からの1つの水素原子の除去によって誘導される6〜20の炭素原子(及びその中の炭素原子の範囲及び特定の数の全ての組み合わせ及び部分的な組み合わせ)の1価芳香族炭化水素基を指す。一部のアリール基は、「Ar」として例示的な構造で示される。典型的なアリール基は、ベンゼン、置換ベンゼン、フェニル、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル等に由来する基を含むが、これらに限定されない。
【0038】
アリール基は、単独で又は他の基の一部分としてのいずれにせよ、任意に、ハロゲン、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−アリール、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)、−NHC(O)R’、−SR’、−SOR’、−S(O)R’、−S(O)R’、−OH、−NO、−N、−NH、−NH(R’)、−N(R’)、及び−CNを含むが、これらに限定されない1つ以上の、好ましくは1〜5の、さらに1〜2の基で置換され得る。ここで、各R’は、独立に、−H、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、又は−アリールから選択され、上記の−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、及びアリール基は、任意に、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、ハロゲン、−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−アリール、−C(O)R’’、−OC(O)R’’、−C(O)OR’’、−C(O)NH、−C(O)NHR’’、−C(O)N(R’’)、−NHC(O)R’’、−SR’’、−SOR’’、−S(O)R’’、−S(O)R’’、−OH、−N、−NH、−NH(R’’)、−N(R’’)、及び−CNを含むが、これらに限定されない1つ以上の置換基でさらに置換され得る。ここで、各R’’は、独立に、−H、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、又は−アリールから選択される。
【0039】
特に断りのない限り、用語「アリーレン」は、二価であり(つまり、親芳香族環系の同じ又は2つの異なる炭素原子からの2つの水素原子の除去によって誘導され)、代表的なアリール基としてのフェニルの場合以下の構造に示されるように、オルト、メタ、又はパラ構造であり得る任意に置換されているアリール基を指す:
【化3】

【0040】
典型的な「−(C〜Cアルキレン)アリール」、「−(C〜Cアルケニレン)アリール」、及び「−(C〜Cアルキニレン)アリール」基は、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、2−フェニルエテン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、2−ナフチルエテン−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタン−1−イル等を含むが、これらに限定されない。
【0041】
特に断りのない限り、用語「複素環」は、3〜14の環原子(環員とも呼ばれる)を有し、少なくとも1つの環における少なくとも1つの環原子がN、O、P、又はSから選択されるヘテロ原子である単環式、二環式、又は多環式環系を指す(ヘテロ原子の範囲及び炭素原子の特定の数の全ての組合せ及び副組合せを含む)。複素環は、N、O、P、又はSから独立に選択される1〜4の環へテロ原子を有し得る。複素環中の1つ以上のN、C、又はS原子は、酸化され得る。単環式複素環は、好ましくは3〜7の環員を有し(例えば、2〜6の炭素原子及びN、O、P、又はSから独立に選択される1〜3のヘテロ原子)、二環式複素環は、好ましくは5〜10の環員を有する(例えば、4〜9の炭素原子及びN、O、P、又はSから独立に選択される1〜3のヘテロ原子)。ヘテロ原子を含む環は、芳香族又は非芳香族であってもよい。特に断りのない限り、複素環は、いずれかのヘテロ原子又は炭素原子でペンダント基に結合し、その結果安定した構造をとる。
【0042】
複素環は、Paquette,“Principles of Modern Heterocyclic Chemistry”(W.A. Benjamin,New York,1968),特に1、3、4、6、7、及び9章;“The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A series of Monographs”(John Wiley & Sons,New York,1950 to present),特にVolumes 13、14、16、19、及び28;及びJ.Am.Chem.Soc.82:5566(1960)に記載されている。
【0043】
特に断りのない限り、用語「ヘテロシクロ」は、二価である(つまり、親複素環式環系の同じ又は2つの異なる炭素原子からの2つの水素原子の除去によって誘導される)、任意に置換されている上記定義の複素環基を指す。
【0044】
「複素環」基の例は、例示であり限定されるものではないが、ピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドリル、インドレニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ピペリジニル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、2−ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、ビス−テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ビス−テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル、2H−ピロリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、1H−インダゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4H−カルバゾリル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、オキシンドリル、ベンズオキサゾリニル、及びイサチノイルを含む。好ましい「複素環」基は、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、ベンゾピラゾリル、クマリニル、イソキノリニル、ピロリル、チオフェニル、フラニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、キノリニル、ピリミジニル、ピリジニル、ピリドニル、ピラジニル、ピリダジニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、及びテトラゾリルを含むが、これらに限定されない。
【0045】
複素環基は、単独で又は他の基の一部分としてのいずれにせよ、任意に、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、ハロゲン、−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−アリール、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)、−NHC(O)R’、−SR’、−SOR’、−S(O)R’、−S(O)R’、−OH、−N、−NH、−NH(R’)、−N(R’)、及び−CNを含むが、これらに限定されない1つ以上の基、好ましくは1〜2の基で置換し得る。ここで、各R’は、独立に、−H、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、又は−アリールから選択され、上記の−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、及び−アリール基は、任意に、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、ハロゲン、−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−アリール、−C(O)R’’、−OC(O)R’’、−C(O)OR’’、−C(O)NH、−C(O)NHR’’、−C(O)N(R’’)、−NHC(O)R’’、−SR’’、−SOR’’、−S(O)R’’、−S(O)R’’、−OH、−N、−NH、−NH(R’’)、−N(R’’)、及び−CNを含むが、これらに限定されない1つ以上の置換基でさらに置換され得る。ここで、各R’’は、独立に、−H、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、又はアリールから選択される。
【0046】
特に断りのない限り、用語「炭素環」は、3〜14の環原子(及びその中の炭素原子の範囲及び特定の数の全ての組合せ及び副組合せ)を有する、飽和又は不飽和非芳香族単環式、二環式、又は多環式環系を指し、環原子は全て炭素原子である。単環式炭素環は、好ましくは3〜6の環原子、さらに好ましくは5又は6の環原子を有する。二環式炭素環は、好ましくは、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]、又は[6,6]系として配置された7〜12の環原子又はビシクロ[5,6]又は[6,6]系として配置された9又は10の環原子を有する。用語「炭素環」は、例えば、アリール環に融合された単環式炭素環(例えば、ベンゼン環に融合された単環式炭素環)を含む。炭素環は、好ましくは3〜8の炭素環原子を有する。
【0047】
炭素環基は、単独で又は他の基の一部分としてのいずれにせよ、任意に、例えば、ハロゲン、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−アリール、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)NH、−C(O)NHR’、−C(O)N(R’)、−NHC(O)R’、−SR’、−SOR’、−S(O)R’、−S(O)R’、−OH、=O、−N、−NH、−NH(R’)、−N(R’)、及び−CNを含むが、これらに限定されない1つ以上の基、好ましくは1〜2の基(及びハロゲンから選択される任意のさらなる置換基)で置換され得る。ここで、各R’は、独立に、−H、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、又は−アリールから選択され、上記の−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、及び−アリール基は、任意に、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、ハロゲン、−O−(C〜Cアルキル)、−O−(C〜Cアルケニル)、−O−(C〜Cアルキニル)、−アリール、−C(O)R’’、−OC(O)R’’、−C(O)OR’’、−C(O)NH、−C(O)NHR’’、−C(O)N(R’’)、−NHC(O)R’’、−SR’’、−SOR’’、−S(O)R’’、−S(O)R’’、−OH、−N、−NH、−NH(R’’)、−N(R’’)、及び−CNを含むが、これらに限定されない1つ以上の置換基でさらに置換し得る。ここで、各R’’は、独立に、−H、−C〜Cアルキル、−C〜Cアルケニル、−C〜Cアルキニル、又はアリールから選択される。
【0048】
単環式炭素環置換基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペンタ−1−エニル、1−シクロペンタ−2−エニル、1−シクロペンタ−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキサ−1−エニル、1−シクロヘキサ−2−エニル、1−シクロヘキサ−3−エニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、−1,3−シクロヘキサジエニル、−1,4−シクロヘキサジエニル、−1,3−シクロヘプタジエニル、−1,3,5−シクロヘプタトリエニル、及びシクロオクタジエニルを含む。
【0049】
「カルボシクロ」は、単独で使用される又は他の基の一部分として使用されるにせよ、二価である(つまり、親炭素環式環系の同じ又は2つの異なる炭素原子からの2つの水素原子の除去によって誘導される)、任意に置換されている上記定義の炭素環基を指す。
【0050】
文脈によって特に断りのない限り、ハイフン(−)は、ペンダント分子への結合点を示す。したがって、用語「(C〜Cアルキレン)アリール」又は「−C〜Cアルキレン(アリール)」は、アルキレン基が、アルキレン基の炭素原子のうちのいずれかでペンダント分子に結合しており、アルキレン基の1つの炭素原子に結合した水素原子のうちの1つが本明細書にて定義されるアリール基と交換されている本明細書にて定義されるC〜Cアルキレン基を指す。
【0051】
特定の基が「置換されている」場合、その基は、前記置換基のリストから独立に選択される1つ以上の置換基、好ましくは1〜5の置換基、より好ましくは1〜3の置換基、最も好ましくは1〜2の置換基を有し得る。置換されている基は、そのように示される。
【0052】
分子中の特定の位置の任意の置換基又は可変のものの定義は、その分子における他のその定義から独立していることが意図される。本発明の化合物上の置換基及び置換パターンは、化学的に安定しており、当該技術において知られている技術及び本明細書において述べられる方法によって容易に合成され得る化合物を提供するように、当業者によって選択され得ることが理解される。
【0053】
D.投与計画
本発明は、とりわけ、CD30発現血液癌の治療のための投与計画を提供する。この投与計画は、本明細書に記載のとおり、体重あたり約0.8mg/kg〜約1.8mg/kg、0.8mg/kg〜約1.6mg/kg、0.8mg/kg〜約1.4mg/kg、0.8mg/kg〜約1.2mg/kg、又はより好ましくは約0.8mg/kg〜約1.0mg/kgの週用量の抗体−薬物コンジュゲートを、少なくとも3週間(例えば、21日間)の期間で投与することを含む。週用量は、単回週用量(週に1回)として、あるいは分割送達(例えば、週に2回以上)により投与され得る。
【0054】
ある実施形態では、抗体−薬物コンジュゲートの週用量は、体重あたり約0.8mg/kgである。ある実施形態では、抗体−薬物コンジュゲートの週用量は、約0.9mg/kgである。ある実施形態では、抗体−薬物コンジュゲートの週用量は、約1.0mg/kgである。ある実施形態では、抗体−薬物コンジュゲートの週用量は、約1.1mg/kgである。ある実施形態では、抗体−薬物コンジュゲートの週用量は、約1.2mg/kgである。ある実施形態では、抗体−薬物コンジュゲートの週用量は、約1.3mg/kgである。ある実施形態では、抗体−薬物コンジュゲートの週用量は、約1.4mg/kgである。ある実施形態では、抗体−薬物コンジュゲートの週用量は、約1.5mg/kgである。ある実施形態では、抗体−薬物コンジュゲートの週用量は、約1.6mg/kgである。ある実施形態では、抗体−薬物コンジュゲートの週用量は、約1.7mg/kgである。ある実施形態では、抗体−薬物コンジュゲートの週用量は、約1.8mg/kgである。ある実施形態では、抗体−薬物コンジュゲートの週用量は、被験者の体重あたり、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、又は1.8mg/kgである。
【0055】
ある実施形態では、週用量を、少なくとも1回の3週間(例えば21日)の治療サイクルの間、分割送達として、又は単回週用量として投与する。ある実施形態では、この週用量を、21日間の治療サイクルの1日目、8日目、及び15日目に、単回週用量として投与する。好ましくは、この週用量を、分割送達として、又は単回週用量として、2回以上の21日間治療サイクル、より好ましくは、3回以上、4回以上、5回、又は6回以上の治療サイクルにわたって投与する。ある実施形態では、この週用量を、3回以下、4回以下、5回以下、又は6回以下の治療サイクルにわたって投与する。好ましくは、治療サイクル間に休止期間をとる。例えば、ある好ましい実施形態では、投与計画は、抗体−薬物コンジュゲートの総週用量が、各治療サイクル間に1週間の休息期間を有する2回以上の治療サイクル(例えば、8週間の間に6回の単回週用量)を通して、体重あたり約0.8mg/kg〜約1.8mg/kg、0.8mg/kg〜約1.6mg/kg、0.8mg/kg〜約1.4mg/kg、0.8mg/kg〜約1.2mg/kg、又は0.8mg/kg〜約1.0mg/kgである。ある実施形態では、治療サイクルは、21日より長い。この週用量を、単回週用量として(週に1回)として、あるいは分割送達(例えば、週に2回以上)により投与してもよい。
【0056】
治療サイクルを、治療サイクル間に1週間の休息期間を有する3週間の治療サイクルであると言う代わりに、4週間の治療サイクルにおいて4週のうち3週は抗体−薬物コンジュゲートを送達する4週間(28日間)治療サイクルであると言うこともできる。したがって、ある実施形態では、この週用量を、4週間の治療サイクルにおいて4週のうち3週、分割送達として、又は単回週用量として毎週投与する。ある実施形態では、この週用量を、28日間の治療サイクルの1日目、8日目、及び15日目に、単回週用量として投与する。好ましくは、この週用量を、分割送達として、又は単回週用量として、2回以上の4週間治療サイクル、より好ましくは、3回以上、4回以上、5回以上、又は6回以上の4週間治療サイクル(例えば、2、3、4、5、又は6回の連続治療サイクル)にわたって投与する。ある実施形態では、この週用量を、3回以下、4回以下、5回以下、又は6回以下の治療サイクルにわたって投与する。例えば、ある好ましい実施形態では、投与計画は、抗体−薬物コンジュゲートの総週用量が、分割送達として、又は単回週用量として、4週のうち3週投与する、2回以上の4週間治療サイクル(例えば、8週間に6回の単回週用量)を通して、体重あたり約0.8mg/kg〜約1.8mg/kg、0.8mg/kg〜約1.6mg/kg、0.8mg/kg〜約1.4mg/kg、0.8mg/kg〜約1.2mg/kg、又は0.8mg/kg〜約1.0mg/kgである。ある好ましい実施形態では、投与計画は、抗体−薬物コンジュゲートの総週用量が、分割送達として、又は単回週用量として、4週のうち3週投与する、1、2、3、4、又は5回の4週間治療サイクル(例えば、8週間に6回の単回週用量、12週間に9回の単回毎週投与、16週間に12回の単回週用量)を通して、体重あたり約0.8mg/kg〜約1.8mg/kg、0.8mg/kg〜約1.6mg/kg、0.8mg/kg〜約1.4mg/kg、0.8mg/kg〜約1.2mg/kg、又は0.8mg/kg〜約1.0mg/kgである。
【0057】
1回以上の治療サイクルの後に、又はその間に(例えば、第2の治療サイクルの21〜28日の間に)、被験者が治療スケジュールを継続すべきであるか判断するために、被験者を評価(例えば、臨床検査又は診断検査を通して)することができる。例えば、1回以上の28日間の治療サイクル(例えば、1、2、3、4、5、又は6回の28日間の治療サイクル)の後に、又はその間に、被験者を評価(例えば、臨床検査又は診断検査)することができる。評価によって、被験者は、治療を中止するか、追加の治療サイクルによる治療を継続するか、又は維持療法を開始する。もし、被験者が治療を継続する場合、1回以上の追加の治療サイクルの後に、被験者をさらに評価することができる。各一連の評価によって、被験者は、治療を中止するか、追加の治療サイクルによる治療を継続するか、又は維持療法を開始する。
【0058】
本発明は、被験者が検出可能な癌を有していないことを示す評価の後に、例えば、CD30発現癌が陰性であるという診断検査(例えば、診断検査では被験者において少しも癌を検出することができない)の後に、被験者がウィークリー治療サイクル(例えば、4週間の治療サイクル)を継続する実施形態を包含する。例えば、ある実施形態では、被験者は、このような評価の後、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12回、又はそれ以上の治療サイクルにわたって、毎週治療サイクルを継続する。ある実施形態では、被験者は、少なくとも2回以上で、3回以下、4回以下、5回以下、又は6回以下の治療サイクルにわたって、毎週治療サイクルを継続する。癌の存在及び重症度を決定するために用いられる診断検査の一例は、ポジトロン放出断層撮影(PET)である。
【0059】
ある実施形態では、被験者に、1回以上、好ましくは2回以上の治療サイクル(例えば、4週間の治療サイクル)の後に(例えば、1、2、3、4、5、又は6回後に)維持療法を開始する。ある実施形態では、被験者が検出可能な癌をほとんど、又は全く有していないことを示す評価の後に、例えば、被験者が完全奏効を有していたことを示す評価の後に、被験者に、維持療法を開始する。本明細書において、維持療法とは、抗体−薬物コンジュゲートを用いるが、短縮した投与スケジュールで、同じ用量か異なる用量で投与する治療を指す。維持療法の間、抗体−薬物コンジュゲートを、好ましくは2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、又は8週間毎に1回投与する。これらの維持療法サイクルの後、維持療法を継続すべきか、正規の治療を続けるべき、又は治療を中止するべきか判断するために、被験者をさらに評価(例えば、臨床検査又は診断検査を通して)することができる。ある実施形態では、維持療法は、3週間〜6週間毎に1回である。維持療法の間に投与される抗体−薬物コンジュゲートの用量は、1回分が、例えば、体重あたり約0.3mg/kg〜約2.0mg/kg、好ましくは約0.6mg/kg〜約1.8mg/kg、好ましくは約1.2mg/kg〜約2.0mg/kg、より好ましくは約1mg/kg〜約1.8mg/kgの範囲であることができ、典型的な用量は1.8mg/kgである。
【0060】
ある実施形態では、体重あたり約0.8mg/kg〜約1.8mg/kg、より好ましくは約0.8mg/kg〜約1.2mg/kgの抗体−薬物コンジュゲートの用量での毎週投与の結果及び評価の後に、被験者に、体重あたり約0.3mg/kg〜約2mg/kg、好ましくは約0.6mg/kg〜約1.8mg/kg、好ましくは約1.2mg/kg〜約2.0mg/kg、より好ましくは約1mg/kg〜約1.8mg/kg、望ましくは約1.8mg/kgの用量で3〜6週間毎に1回、抗体−薬物コンジュゲートの投与を含む維持療法を開始する。ある実施形態では、毎週治療(例えば、1、2、3、4、又は5回の治療サイクルにわたる)の結果の後に、被験者は、体重あたり約0.4mg/kg〜約2mg/kg、約1.2mg/kg〜約2.0mg/kg、又は約1mg/kg〜約1.8mg/kg、望ましくは約1.8mg/kgの用量で、抗体−薬物コンジュゲートの3週間毎に1回の投与スケジュール(例えば、3週間の維持療法サイクルの1日目に治療)を開始する。
【0061】
したがって、本発明は、被験者が、被験者の体重あたり約0.8mg/kg〜約1.8mg/kg、約0.8mg/kg〜約1.6mg/kg、約0.8mg/kg〜約1.4mg/kg、約0.8mg/kg〜約1.2mg/kg、又は約0.8mg/kg〜約1.0mg/kgの抗体−薬物コンジュゲートの総週用量を、分割送達として、又は単回週用量として、1、2、3、4、5、又は6回の28日間治療サイクルの間、4週のうち3週投与された後、2回以上の維持療法サイクルの間、体重あたり約0.4mg/kg〜約2mg/kg、約1.2mg/kg〜約2.0mg/kg、又は約1.0mg/kg〜約1.8mg/kg用量で、抗体−薬物コンジュゲートを3〜6週間毎、好ましくは3週間毎に投与される実施形態を包含する。ある実施形態では、毎週投与サイクルは、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回以上の治療サイクルであり、3週間毎の投与スケジュールは、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回以上の維持療法サイクルである。ある実施形態では、毎週投与サイクルは、2、3、4、5、又は6回以下の治療サイクルである。
【0062】
本発明は、被験者が、被験者の体重あたり約0.8mg/kg〜約1.2mg/kgの抗体−薬物コンジュゲートの総週用量を、分割送達として、又は単回週用量として、1、2、3、4、5、又は6回の28日間治療サイクルの間、4週のうち3週(例えば、28日間の治療サイクルの1日目、8日目、及び15日目)投与された後、2回以上の維持療法サイクルの間、体重あたり約1.8mg/kgの用量の抗体−薬物コンジュゲートを、3〜6週間毎、好ましくは3週間毎(例えば、2回以上の3週間の維持療法サイクルの間、3週間毎に、体重あたり約1.8mg/kg用量)に投与される実施形態を包含する。
【0063】
本発明は、本発明の方法により治療される被験者が、本発明の抗CD30−vc−PAB−MMAE抗体−薬物コンジュゲートであるが、本ウィークリー投与計画以外のスケジュール(例えば、1回以上の3週間治療サイクルにわたって、3週間毎に、体重あたり約1.8mg/kgの抗体−薬物コンジュゲートを投与)で治療を受けていて、1、2、3、4、5、又は6回以下の治療サイクルの間本明細書に記載のウィークリー投与計画に切り替えられる実施形態を包含する。このウィークリー投与計画の後に、患者に、本明細書に記載のとおり、任意に維持療法を開始してもよい。
【0064】
本発明はまた、抗体−薬物コンジュゲートによる治療の後、維持治療の開始前に、被験者が幹細胞移植を受ける実施形態を包含する。したがって、ある実施形態では、2回以上の治療サイクルの後(例えば、1、2、3、4、5、又は6回の治療サイクルの後)であって、かつ、被験者が幹細胞移植を受けるのに適することを示す評価の後に、被験者は幹細胞移植を受ける。移植の後に、被験者に、維持療法を開始してもよい。維持療法は、移植の後であって、かつ、検出可能な癌の再発前に、開始する。
【0065】
抗体−薬物コンジュゲートは、好ましくは単剤療法として投与される。「単剤療法」という用語は、抗体−薬物コンジュゲートが治療サイクル中に被験者に投与する唯一の抗癌剤であることを意味する。しかし、他の治療薬を被験者に投与してもよい。例えば、癌それ自体ではないが、例えば、炎症、痛み、体重減少、及び全身倦怠感を含む癌と関係する症状を治療するために被験者に投与される抗炎症薬又は他の薬剤を、単剤療法の期間中に投与してもよい。本発明の方法により治療される被験者は、抗体−薬物コンジュゲートの投与前に、抗癌剤による前治療を終えているのが好ましい。ある実施形態では、被験者は、抗体−薬物コンジュゲートによる治療よりも少なくとも1週間(好ましくは2、3、4、5、6、7、又は8週間)前までに、抗癌剤による前治療を終えている。被験者はまた、抗体−薬物コンジュゲートによる第1の治療サイクルの終了後少なくとも2週間(好ましくは、少なくとも3、4、5、6、7、又は8週間)、好ましくは抗体−薬物コンジュゲートの最終投与後少なくとも2週間(好ましくは、少なくとも3、4、5、6、7、又は8週間)、いかなる追加の抗癌剤による治療もされないことが好ましい。
【0066】
E.被験者
本発明の方法は、CD30発現血液癌の治療のために被験者に抗CD30vc−PAB−MMAE抗体−薬物コンジュゲートを投与することを包含する。被験者への抗体−薬物コンジュゲートの投与及びCD30発現癌細胞への抗CD30抗体の結合の後、抗体−薬物コンジュゲートは細胞内に取り込まれ、薬物が放出される。
【0067】
CD30発現血液癌は、CD30抗原を発現する血液癌を指す。CD30抗原は、リンパ腫及び白血病の腫瘍細胞にて多量に発現される。ホジキンリンパ腫、未分化の大細胞型リンパ腫、及び/又は、急性又はリンパ腫様型の成人T細胞白血病は、本発明の方法により治療され得るCD30発現血液癌の例である。
【0068】
本発明の方法により治療される被験者は、CD30発現血液癌と診断された者か、CD30発現血液癌を有している疑いがある者である。診断は、例えば、リンパ節生検を含む、当該技術分野で知られた方法により行なうことができる。例えば、ホジキンリンパ腫であると診断された後、被験者は、公知の分類スキームの1つを用いて疾患のステージに従って分類され得る。Cotswolds病期分類スキームは、そのような分類スキームの1つである。本発明の方法は、進行期疾患の被験者を含む、任意のステージの疾患に分類された被験者の治療に用いられ得る。
【0069】
本発明の方法は、新たに診断されて、これまでにCD30発現血液癌の治療を受けたことがない被験者を治療することを包含する。
【0070】
本発明の方法は、難治性の、及び/又は、再発性のCD30発現血液癌の被験者を治療するために用いられ得る。
【0071】
難治性のCD30発現血液癌の被験者は、先の抗癌治療に応答しない被験者であり、すなわち、その被験者は、治療にもかかわらず疾患の進行を抑制できない被験者である。
【0072】
再発性のCD30発現血液癌の被験者は、ある時点で疾患の先の抗癌治療に奏効を示したが、奏効後に疾患が再発したか、さらに進行した被験者である。
【0073】
本発明の方法は、例えば、CD30発現血液癌について、初回化学療法の投与計画で、及び/又は、救援療法の投与計画で、及び/又は、実験的な治療で、以前に治療されたことがある被験者を治療することを包含する。ホジキンリンパ腫の初回化学療法の投与計画は、例えば、ABVD療法(Bonadonna and Santoro,Cancer Treat Rev 1982;9:21−35)、BEACOPP療法(Diehl et al.,N Engl J Med 2003;348:2386−2395)、投与量を増量したBEACOPP療法(Diehl et al.,N Engl J Med 2003;348:2386−2395)、MOPP療法(Devita et al.,Ann Inter Med 1970:73:881−895)、及びStanford V療法(Horning et al.,J Clin Oncol 2000;18:972−980)を含む。救援化学療法の投与計画及び実験的な投与計画は、例えば、ESHAP療法(Aparicio et al.,Ann Ocol 1999;10:593−595)、改良されたStanford V療法(Aviles et al.,Med Oncol 2001;18:261−267)、GDP療法(Baetz et al.,Ann Oncol 2003;14:1762−1767)、Mini−Beam療法(Colwill et al.,J Clin Oncol 1995;13:396−402,Fernandez−Jimenez et al.,Haematologica 1999;84:1007−1011)、MIME療法(Enblad et al.,Eur J Haematol 1998;60:166−171)、MINE療法(Ferme et al.,Ann Oncol 1995;6:543−549)、IEE療法(Jackson et al.,Leuk Lymphoma 2000;37:561−570)、DHAP療法(Josting et al.,Ann Oncol 2002;13:1628−1635)、ICE療法(Moskowitz et al.,Semin Oncol 2004;31(suppl):54−59)、IIVP療法(Oyan et al.,Biol Blood Marrow Transplant 2005;11:688−697)、IVE療法(Proctor et al.,Eur J Haematol 2001;64(suppl):28−32)、VIP療法(Ribrag et al.,Bome Marrow Transplant 1998;21:969−974)、ASHAP療法(Rodriguez et al.,Blood 1999;93:3632−3636)、Dexa−BEAM療法(Schmitz et al.,Lancet 2002;359:2065−2071)、CEP療法(Szanto et al.,Oncology 1991;48:456−458)、CN30P療法(Walewski et al.,Med Oncol.2000;17:195−202)、MVC療法(Wiernik et al.,Cancer J Sci Am 1998;4:254−260)、及びゲムシタビン療法(Savage et al.,Annals of Oncology 2000;11:595−597)を含む。
【0074】
本発明の方法はまた、以前に幹細胞移植を受けたことがある被験者を治療することを包含する。ある実施形態では。この方法は、CD30発現血液癌の治療のために幹細胞移植を受け、治療の時点で、検出可能な癌の前兆がない被験者を治療することを包含する。本発明の方法はまた、以前に幹細胞移植を受けたことがあるが、再発した被験者を治療することを包含する。
【0075】
F.抗CD30抗体
本発明の組成物及び方法での使用に適している抗CD30抗体は、CD30抗原と特異的に結合する任意の抗体を含む。
【0076】
ある実施形態では、本発明の抗CD30抗体は、CD30と免疫特異的に結合するだけでなく、HLにおける悪性細胞等の癌細胞に対して細胞静止効果及び/又は細胞傷害効果を及ぼすこともできる。このようなある実施形態では、細胞静止効果又は細胞傷害効果は、補体非依存性であり、(i)細胞静止剤又は細胞傷害剤への結合、及び(ii)エフェクター細胞がない場合にも実現され得る。例えば、このようなある実施形態では、細胞静止効果又は細胞傷害効果は、抗体エフェクター機能の結果ではなく、例えば、シグナル伝達活性の結果である。
【0077】
本発明の抗CD30抗体は、好ましくはモノクローナルであり、例えば、キメラ(例えば、ヒト定常領域とマウス可変領域を有する)、ヒト化、又はヒト抗体を含み得る。免疫グロブリン分子は、IgGタイプであり、免疫グロブリン分子のいずれのサブクラス(例えば、IgG1,IgG2,IgG3,IgG4)であってもよいし、その変異体であってもよい。免疫グロブリン分子は、好ましくはIgG1である。
【0078】
本発明の抗体は、当該技術分野において知られている任意の適切な方法によって生産され得る。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、及びファージディスプレイ技術、又はこれらの組合せの使用を含む、当該技術分野において知られている多種多様の技術を用いて調製され得る。例えば、モノクローナル抗体は、当該技術分野において知られており、また、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.,1988);Hammerling,et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981)(上記文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)等で教示されているものを含む、ハイブリドーマ技術を用いて生産され得る。
【0079】
当該技術分野において知られている組換え発現技術等のタンパク質合成法を、本発明の抗CD30抗体を生産するために使用してもよい。
【0080】
一度、CD30結合タンパク質が同定されると、必要に応じて、CD30発現癌性細胞に対する細胞静止効果及び/又は細胞傷害効果を引き起こすその能力(単独での、又は多量体を形成するか、二量化ドメイン若しくは多量化ドメインに融合したときの能力)を、例えばL428,L450,HLLM2、又はKM−H2といったCD30発現癌細胞株の培養物とタンパク質とを接触させることにより測定することができる。培養条件は、最も好ましくは、約0.33cmの培養面積に対して約5,000個の細胞であり、接触時間はおよそ72時間である。その際、72時間のうち最後の8時間は、培養物を0.5μCiのH−チミジンにさらし、培養物の細胞へのH−チミジンの取り込みを測定する。培養物の細胞が、同一条件で培養したがタンパク質に接触させなかった同一細胞株の細胞と比較して、減少したH−チミジンの取り込みを有する場合には、そのタンパク質は、細胞株に対して細胞静止効果又は細胞傷害効果を有する。この他にも多くの細胞毒性分析法が当業者に知られている。本発明の方法では、これらのいずれを用いてもよい。
【0081】
典型的な抗CD30抗体は、ヒト化又はキメラのAC10又はHeFi−1抗体を含むが、これらに限定されない。マウスAC10は、ATCC寄託番号PTA−6679にて寄託されている。
【0082】
典型的な抗CD30抗体は、マウスHeFi−1の1つ以上(1,2,3,4,5,又は6)のCDR(配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号28、配列番号30、又は配列番号32)又はマウスAC10(配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16)を含む。ある実施形態では、抗CD30抗体は、マウスHeFi−1(配列番号18又は配列番号26)又はマウスAC10(配列番号2又は配列番号10)の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含む。各配列番号に対応するAC10又はHeFi−1の領域を示す表を以下に示す。
【表1】

【0083】
特定の実施形態において、本発明は、(a)配列番号4、6、若しくは8を含むか、又は、配列番号4、6、若しくは8に示したアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含む3つのCDRと、(b)マウスモノクローナル抗体AC10のフレームワーク領域のセットとは異なる4つのフレームワーク領域のセットとを含む重鎖可変領域を含む抗体を包含し、この抗体はCD30と免疫特異的に結合する。
【0084】
特定の実施形態において、本発明は、(a)配列番号20、22、若しくは24を含むか、又は、配列番号20、22、若しくは24に示したアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含む3つのCDRと、(b)マウスモノクローナル抗体HeFi−1のフレームワーク領域のセットとは異なる4つのフレームワーク領域のセットとを含む重鎖可変領域を含む抗体を包含し、この抗体はCD30と免疫特異的に結合する。
【0085】
特定の実施形態において、本発明は、(a)配列番号12、14、若しくは16を含むか、又は、配列番号12、14、若しくは16に示したアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含む3つのCDRと、(b)マウスモノクローナル抗体AC10のフレームワーク領域のセットとは異なる4つのフレームワーク領域のセットとを含む軽鎖可変領域を含む抗体を包含し、この抗体はCD30と免疫特異的に結合する。
【0086】
特定の実施形態において、本発明は、(a)配列番号28、30、若しくは32を含むか、又は、配列番号28、30、若しくは32に示したアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含む3つのCDRと、(b)マウスモノクローナル抗体HeFi−1のフレームワーク領域のセットとは異なる4つのフレームワーク領域のセットとを含む軽鎖可変領域を含む抗体を包含し、この抗体はCD30と免疫特異的に結合する。
【0087】
ある実施形態において、抗CD30抗体は、γ1定常領域(例えば、huCγl,SwissProt受託番号P01857。参照することによりそのまま本明細書に組み込まれる)及びヒトκ定常領域(例えば、huCκ,PID G185945。参照することによりそのまま本明細書に組み込まれる)を含む。
【0088】
本発明は、キメラのAC10抗体が、配列番号2に示した重鎖可変領域、配列番号10に示した軽鎖可変領域、配列番号33(又は配列番号33のアミノ酸1から329)に示したヒトγ1定常領域、及び配列番号34に示したヒトκ定常領域を含む実施形態を包含する。
【0089】
さらに、抗体は、それらの一次構造の観点からも記載又は特定され得る。ある実施形態では、抗CD30抗体の可変領域は、マウスのAC10又はHeFi−1の可変領域に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一性(当該技術分野において知られ、本明細書に記載した方法を用いて計算)を有する。
【0090】
典型的な抗CD30抗体は、AC10及びHeFi−1の機能性誘導体又は類似体を含む。これに関連して、本明細書中で用いる「機能性」という用語は、AC10及びHeFi−1の機能性誘導体又は類似体がCD30に特異的に結合し得ることを指す。
【0091】
本発明で用いるための抗体は、競合的結合を測定するための当該技術分野で知られた任意の方法で測定したとき、マウスのAC10又はHeFi−1のCD30への結合を競合的に阻害する抗体を含む。例えば、その抗体は、AC10又はHeFi−1のCD30に対する結合を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%さえも阻害することができる。
【0092】
G.抗体−薬物コンジュゲート
本明細書に記載された方法は、vc−PABリンカーを介してMMAEに共有結合している抗CD30抗体を含んでなる抗体−薬物コンジュゲートの使用を包含する。抗体−薬物コンジュゲートは、医薬組成物として被験者に投与される。
【0093】
本発明の抗体−薬物コンジュゲートは 、下記式(I):
【化4】

又は製薬上許容されるその塩を有し;
ここで、
mAbは、抗CD30抗体であり、
Sは、抗体の硫黄原子であり、
Aは、ストレッチャー単位であり、
pは、約3から約5である。
【0094】
薬物負荷は、医薬組成物中の抗体あたりの薬物分子の平均数pで表される。例えば、pが約4の場合、医薬組成物中に存在する全ての抗体を考慮したその平均薬物負荷は約4である。pは、約3〜約5までの幅があり、より好ましくは約3.6〜約4.4であり、さらにより好ましくは約3.8〜約4.2である。pは、約3、約4、又は約5であり得る。コンジュゲート反応で調製される抗体あたりの薬物の平均数は、質量分析、ELISAアッセイ及びHPLC等の慣用手段により特性解析され得る。pに関する抗体−薬物コンジュゲートの定量的な分布を測定することもできる。場合によっては、pが一定数の均一な抗体−薬物コンジュゲートを他の薬物負荷を有する抗体−薬物コンジュゲートから分離し、精製し、特性解析することを、例えば逆相HPLC又は電気泳動等の手段により行なってもよい。
【0095】
ストレッチャー単位(A)は、抗体単位を、その抗体のスルフヒドリル基を介してバリン−シトルリンアミノ酸単位に結合し得る。例えば、スルフヒドリル基は、抗CD30抗体の鎖間ジスルフィド結合の還元により生成され得る。例えば、ストレッチャー単位は、抗体の鎖間ジスルフィド結合の還元から生成される硫黄原子を介して抗体に結合され得る。ある実施形態では、ストレッチャー単位は、抗体の鎖間ジスルフィド結合の還元から生成される硫黄原子を介するのみで抗体に結合される。ある実施形態では、スルフヒドリル基は、抗CD30抗体のリジン部分のアミノ基を、2−イミノチオラン(Traut試薬)又は他のスルフヒドリル生成試薬と反応させることにより生成され得る。ある実施形態では、抗CD30抗体は、組換え抗体であり、1つ以上のリジンを含むように工学的に処理される。他の実施形態では、組換え抗CD30抗体は、追加のスルフヒドリル基、例えば追加のシステインを含むように工学処理される。
【0096】
MMAEの合成及び構造は、米国特許第6,884,869号に記載されており、この公報は参照によりその全体か全ての目的で本明細書に組み込まれる。典型的なストレッチャー単位の合成及び構造、並びに抗体−薬物コンジュゲートの作製方法は、例えば、米国特許出願公開第2006−0074008号及び米国特許出願公開第2009−0010945号に記載され、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0097】
代表的なストレッチャー単位は、式IIIa及びIIIbの角括弧内に示され、ここで、L−、−W−、−Y−、−D、w及びyは、上記にて定義したとおりであり、R17は、−C〜C10アルキレン−、−C〜C10アルケニレン−、−C〜C10アルキニレン−、−カルボシクロ−、−O−(C〜Cアルキレン)−、O−(C〜Cアルケニレン)−、−O−(C〜Cアルキニレン)−、−アリーレン−、−C〜C10アルキレン−アリーレン−、−C〜C10アルケニレン−アリーレン、−C〜C10アルキニレン−アリーレン、−アリーレン−C〜C10アルキレン−、−アリーレン−C〜C10アルケニレン−、−アリーレン−C〜C10アルキニレン−、−C〜C10アルキレン−(カルボシクロ)−、−C〜C10アルケニレン−(カルボシクロ)−、−C〜C10アルキニレン−(カルボシクロ)−、−(カルボシクロ)−C〜C10アルキレン−、−(カルボシクロ)−C〜C10アルケニレン−、−(カルボシクロ)−C〜C10アルキニレン、−ヘテロシクロ−、−C〜C10アルキレン−(ヘテロシクロ)−、−C〜C10アルケニレン−(ヘテロシクロ)−、−C〜C10アルキニレン−(ヘテロシクロ)−、−(ヘテロシクロ)−C〜C10アルキレン−、−(ヘテロシクロ)−C〜C10アルケニレン−、−(ヘテロシクロ)−C〜C10アルキニレン−、−(CHCHO)−、又は−(CHCHO)−CH−から選択され、rは、1〜10の範囲の整数であり、ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリール、炭素環、カルボシクロ、ヘテロシクロ、アリーレン基は、単独であるか他の基の一部であるかを問わず、任意に置換される。
【化5】

【0098】
ストレッチャー単位の具体例は、式IIIaにおいてR17が−(CH−であるものである:
【化6】

【0099】
ストレッチャー単位の別の具体例は、式IIIaにおいてR17が-(CHCHO)−CH−であり、rが2であるものである:
【化7】

【0100】
ストレッチャー単位の具体例は、式IIIaにおいてR17がアリーレン−又はアリーレン−C〜C10アルキレン−であるものである。ある実施形態では、アリール基は、フェニル基である。
【0101】
ストレッチャー単位のさらに別の具体例は、式IIIbにおいてR17が−(CH−であるものである。
【化8】

【0102】
ストレッチャー単位を抗体単位に結合することができる1つの方法は、抗体単位の硫黄原子とストレッチャー単位の硫黄原子との間のジスルフィド結合を介するものである。ある実施形態では、硫黄原子は、抗体の内部システイン残基のものである。別の実施形態では、硫黄原子は、抗体内に工学的に導入されたシステイン残基のものである。
【0103】
代表的なストレッチャー単位は、式IVの角括弧内に示され、ここで、R17は、上記にて定義したとおりである。
【化9】

【0104】
本出願全体を通して、下記式のS部分は、特に文脈によって示されない限り、抗体の硫黄原子を指す。
【化10】

【0105】
本発明の特に好ましい実施形態では、次に示すように、ストレッチャーが式IIIaであり、抗体−薬物コンジュゲートがMC−vc−PAB−MMAE抗体−薬物コンジュゲートであり、ここで、pは、約3から約5であり、好ましくは3.8から4.2である。S部分は、抗体の硫黄原子を指す。
【化11】

【0106】
特に好ましい実施形態では、抗体は、キメラのAC10抗体又はヒト化AC10抗体である。特に好ましい実施形態では、S部分は、抗体の鎖間ジスルフィド結合の還元によって生成される。
【0107】
H.医薬組成物及び製剤
様々な送達システムを抗体−薬物コンジュゲートの投与に用いることができる。本発明のある好ましい実施形態では、抗体−薬物コンジュゲート化合物の投与は、静脈内投与による。ある実施形態では、投与は、2時間の静脈内投与による。
【0108】
抗体−薬物コンジュゲート化合物は、1つ以上の製薬上適合し得る成分を含む医薬組成物として投与され得る。例えば、医薬組成物は、1つ以上の製薬上許容される担体、水性担体等(例えば、滅菌液)を典型的に含む。医薬組成物が静脈内投与される場合、水は、より典型的な担体である。
【0109】
所望により、この組成物は、例えば、生理食塩水、緩衝液、塩類、非イオン性界面活性剤、及び/又は糖類も含み得る。適切な医薬担体の例は、E.W.Martinによる“Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。処方は、投与方法に対応する。
【0110】
例えば、本発明は、治療上有効な量の抗体−薬物コンジュゲート、緩衝剤、任意に抗凍結剤、任意に増量剤、任意に塩、及び任意に界面活性剤を含む医薬組成物を提供する。追加の剤を組成物に加えてもよい。単一の剤が多様な機能を果たし得る。例えば、トレハロース等の糖は、抗凍結剤及び増量剤の両方の機能を果たすことができる。任意の適切な製薬上許容される緩衝剤、界面活性剤、抗凍結剤、及び増量剤を、本発明にしたがって使用してもよい。
【0111】
本発明では、CD30発現癌の治療方法の提供に加えて、凍結乾燥又は他のタンパク質保存方法を経た薬物コンジュゲート製剤と、凍結乾燥を経ていない抗体−薬物製剤とを含む抗体−薬物コンジュゲート製剤を提供する。
【0112】
ある実施形態では、抗体−薬物コンジュゲート製剤は、(i)約1〜25mg/ml、好ましくは約3〜約10mg/mlの抗体−薬物コンジュゲート(例えば、式Iの抗体−薬物コンジュゲート又は製薬上許容されるその塩)、(ii)クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、若しくはヒスチジン緩衝液、又はそれらの組合せ、好ましくはクエン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、ヒスチジン緩衝液、ヒスチジン塩酸塩緩衝液、又はそれらの組合せから選択される、約5〜50mM、好ましくは約10mM〜約25mMの緩衝液、(iii)約3%〜約10%のスクロース、若しくはトレハロース、又はこれらの組合せ、(iv)任意に、ポリソルベート20、若しくはポリソルベート80、又はこれらの組合せから選択される、約0.05〜2mg/mlの界面活性剤、及び(v)水を含み、組成物のpHが約5.3〜約7、好ましくは約6.6である。
【0113】
ある実施形態では、抗体−薬物コンジュゲート製剤は、(i)約1〜25mg/ml、好ましくは約3〜約10mg/ml、さらにより好ましくは約5mg/mlの抗体−薬物コンジュゲート(ii)クエン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、ヒスチジン緩衝液、ヒスチジン塩酸塩緩衝液、又はそれらの組合せから選択される、約10mM〜約25mMの緩衝液、(iii)約3%〜約7%のトレハロース、若しくはスクロース、又はこれらの組合せ、任意に(iv)ポリソルベート20又はポリソルベート80から選択される、約0.05〜約1mg/mlの界面活性剤、及び(v)水を含み、組成物のpHが約5.3〜約7、好ましくは約6.6である。
【0114】
ある実施形態では、抗体−薬物コンジュゲート製剤は、(i)約5mg/mlの抗体−薬物コンジュゲート、(ii)クエン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、ヒスチジン緩衝液、ヒスチジン塩酸塩緩衝液、又はそれらの組合せから選択される、約10mM〜約25mMの緩衝液、(iii)約3%〜約7%のトレハロース、任意に(iv)ポリソルベート20又はポリソルベート80から選択される、約0.05〜約1mg/mlの界面活性剤、及び(v)水を含み、組成物のpHが約5.3〜約7、好ましくは約6.6である。
【0115】
例えば、抗体−薬物コンジュゲート製剤は、(i)約5mg/mlの抗体−薬物コンジュゲート、(ii)約20mMのクエン酸ナトリウム緩衝液、(iii)約6%〜約7%のトレハロース(約70mg/ml)、(iv)ポリソルベート20又はポリソルベート80(好ましくは、ポリソルベート80)から選択される、約0.1〜約0.3mg/mlの界面活性剤、及び(v)水を含む(又は本質的にからなる)ことができ、組成物のpHが約5.3〜約7、好ましくは約6.6である。
【0116】
上記製剤はいずれも、液状又は凍結状で保存されてもよいし、任意に保存処理されてもよい。ある実施形態では、上記製剤は凍結乾燥製剤であり、すなわち、上記製剤は凍結乾燥される。ある実施形態では、上記製剤は、保存処理、例えば凍結乾燥された後、水等の適当な液体でもどされる。凍結乾燥と言うのは、組成物が真空下で凍結乾燥されたことを意味する。凍結乾燥は、一般的に、溶質が溶媒から分離されるように、特定の製剤を凍結することにより成し遂げられる。溶媒は、その後、昇華(すなわち、第1の乾燥)により除去され、次に、脱着(すなわち、第2の乾燥)により除去される。
【0117】
ある実施形態では、本発明の凍結乾燥製剤は、抗体−薬物コンジュゲート、緩衝剤、任意に抗凍結剤、任意に増量剤、任意に塩、及び任意に界面活性剤、及び追加の剤を含み、水でもどされた場合、組成物のpHが、約5.3〜7である。ある実施形態では、本発明の凍結乾燥製剤は、水でもどされた場合、(i)約1〜25mg/ml、好ましくは約3〜約10mg/mlの抗体−薬物コンジュゲート(例えば、式Iの抗体−薬物コンジュゲート又は製薬上許容されるその塩)、(ii)クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、若しくはヒスチジン緩衝液、又はそれらの組合せ、好ましくはクエン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、ヒスチジン緩衝液、ヒスチジン塩酸塩緩衝液、又はそれらの組合せから選択される、約5〜50mM、好ましくは約10mM〜約25mMの緩衝液、(iii)約3%〜約10%のスクロース、若しくはトレハロース、又はこれらの組合せ、及び(iv)任意に、ポリソルベート20、若しくはポリソルベート80、又はこれらの組合せから選択される、約0.05〜2mg/mlの界面活性剤を含み、組成物のpHが約5.3〜約7、好ましくは約6.6である。
【0118】
ある実施形態では、本発明の凍結乾燥製剤は、水でもどされた場合、(i)約1〜25mg/ml、好ましくは約3〜約10mg/ml、さらにより好ましくは約5mg/mlの抗体−薬物コンジュゲート、(ii)クエン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、ヒスチジン緩衝液、ヒスチジン塩酸塩緩衝液、又はそれらの組合せから選択される、約10mM〜約25mMの緩衝液、(iii)約3%〜約7%のトレハロース、若しくはスクロース、又はこれらの組合せ、及び、任意に(iv)ポリソルベート20又はポリソルベート80から選択される、約0.05〜約1mg/mlの界面活性剤を含み、組成物のpHが約5.3〜約7、好ましくは約6.6である。
【0119】
ある実施形態では、本発明の凍結乾燥製剤は、水でもどされた場合、(i)約5mg/mlの本発明の抗体−薬物コンジュゲート、(ii)クエン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、ヒスチジン緩衝液、ヒスチジン塩酸塩緩衝液、又はそれらの組合せから選択される、約10mM〜約25mMの緩衝液、(iii)約3%〜約7%のトレハロース、任意に(iv)ポリソルベート20又はポリソルベート80から選択される、約0.05〜約1mg/mlの界面活性剤を含み、組成物のpHが約5.3〜約7、好ましくは約6.6である。
【0120】
ある実施形態では、本発明の凍結乾燥製剤は、水でもどされた場合、(i)約5mg/mlの本発明の抗体−薬物コンジュゲート、(ii)約20mMのクエン酸ナトリウム緩衝液、(iii)約6%〜約7%のトレハロース(約70mg/ml)、(iv)ポリソルベート20又はポリソルベート80(好ましくは、ポリソルベート80)から選択される、約0.1〜約0.3mg/mlの界面活性剤を含み(又は本質的にからなり)、組成物のpHが約5.3〜約7、好ましくは約6.6である。
【0121】
本発明の製剤は、本明細書に記載の方法又は病気を治療するための他の方法で使用され得る。抗体−薬物コンジュゲート製剤を、さらに被験者に投与する前に希釈してもよい。ある実施形態では、製剤を被験者に投与する前に、生理食塩水で希釈し、IVバッグ又はIVシリンジに保管してもよい。したがって、ある実施形態では、被験者のCD30発現血液癌を治療する方法は、式(I)を有する抗体−薬物コンジュゲートを含む医薬組成物の週用量を必要としている被験者に投与することを含む。ここで、抗体−薬物コンジュゲートの投薬量は、被験者の体重1kgにつき約0.8mg〜約1.8mgである。そして、医薬組成物は、少なくとも3週間投与される。そして、被験者への投与前に、抗体−薬物コンジュゲートは、(i)約1〜25mg/ml、好ましくは約3〜約10mg/mlの抗体−薬物コンジュゲート(ii)クエン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、ヒスチジン緩衝液、ヒスチジン塩酸塩緩衝液、又はそれらの組合せから選択される、約5〜50mM、好ましくは約10mM〜約25mMの緩衝液、(iii)約3%〜約10%のスクロース、若しくはトレハロース、又はこれらの組合せ、(iv)任意に、ポリソルベート20、若しくはポリソルベート80、又はこれらの組合せから選択される、約0.05〜2mg/mlの界面活性剤、及び(v)水を含み、組成物のpHが約5.3〜約7、好ましくは約6.6である製剤中に存在していた。
【0122】
典型的な実施形態では、医薬組成物は、通常の手順に従って、ヒトへの静脈内投与に適した医薬組成物として製剤化される。一般的に、静脈内投与用組成物は、無菌の等張水性緩衝液中に溶解した液剤である。必要に応じて、医薬組成物は、可溶化剤と、注射部位の痛みを軽減するための局所麻酔薬、例えば、リグノカインを含んでもよい。通常、各種成分は、別々に供給されるか、又は、例えば、活性薬剤の量を表示するアンプル又はサシェのような密封容器に入れた凍結乾燥粉剤又は水を含まない濃縮液剤として、単位剤形として一緒に混合された状態で供給される。医薬組成物を点滴により投与する必要がある場合には、例えば、医薬品グレードの無菌の水又は生理食塩水を含む点滴ボトルとして調合することができる。医薬組成物を注射により投与する場合には、例えば、投与前に各種成分を混合できるように無菌の注射用水又は生理食塩水のアンプルを提供することができる。
本発明はまた、CD30発現血液癌の治療のためのキットも提供する。キットは、抗体−薬物コンジュゲートが入った容器を含む。このようなキットは、当業者にとって容易に明らかであるように、必要に応じて、1つ以上の様々な慣用の医薬キット成分、例えば、1つ以上の製薬上許容される担体を含む容器、追加の容器等をさらに含んでいてもよい。投与すべき成分の量、投与についてのガイドライン、及び/又は各種成分の混合についてのガイドラインを示す印刷された使用説明書を、挿入物又はラベルとして、キットに含めてもよい。
【0123】
本発明は、本明細書に記載した具体的な実施形態によって範囲が限定されるものではない。本明細書に記載したものに加えて、本発明の様々な変更が、前記の説明及び添付の図面から当業者には明らかであろう。そのような変更は、特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0124】
上記にて引用した全ての刊行物及び特許文献は、それぞれが個々に示されるかのように同程度に、あらゆる目的のために参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。
【0125】
本発明は、以下の実施例でさらに説明されるが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0126】
多施設第1相臨床試験の毎週投与の用量増加研究は、難冶性HL、若しくは再発性HL、又は浸透性ALCLの患者にて実施された。cAC10−MC−vc−PAB−MMAE抗体−薬物コンジュゲートを、毎週0.4〜1.4mg/kg投与(2時間かけてIV注入)した。標準的な疾患の患者又は2回の21日間サイクル(6用量)後改善された患者は、抗体−薬物コンジュゲートによる治療を継続するのに適していた。この毎週投与の研究デザインを、図1に提示した。
【0127】
結果:患者34人の年齢中央値は34歳であった(年齢幅13〜82歳)。患者は、平均5回前治療を受けていた。62%が自家幹細胞移植(SCT)を受けていた。1.4mg/kgで最大耐量(MTD)を超えた。SGN−35(AUC)への曝露は、用量レベルに応じて増加した。より高用量の投与で複数の完全寛解(CR)が観察された(表);1mg/kg用量での奏効時間は、およそ8週間であった。
【表2】

【表3】

【0128】
cAC10−MC−vc−PAB−MMAE抗体−薬物コンジュゲートは、34人の治療患者において全般的に良好に許容された。グレード5の有害事象はなかった。グレード4の有害事象は、好中球減少症(1被験者)及び高血糖症(1被験者)であった。グレード3の有害事象は、好中球減少症(3被験者)、下痢(1被験者)、感覚障害(1被験者)、嘔吐(1被験者)、及び白血球減少症(1被験者)であった。グレード2以下の有害事象は、吐き気(9被験者)、倦怠感(8被験者)、末梢神経障害(6被験者)、好中球減少症(2被験者)、めまい(4被験者)、高血糖症(3被験者)、及び感覚障害(3被験者)であった。用量制限毒性は、1.4mg/kgであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者におけるCD30発現血液癌の治療方法であって、前記方法は、それを必要とする被験者に、週用量の式(I)を有する抗体−薬物コンジュゲート又は製薬上許容されるその塩と、製薬上許容される担体と、を含む医薬組成物を投与することを含んでなり、
【化1】

式中、
mAbは、抗CD30抗体であり、
Sは、抗体の硫黄原子であり、
Aは、ストレッチャー単位であり、
pは、約3から約5であり、
ここで、前記抗体−薬物コンジュゲートの投与量は、被験者の体重1kgあたり約0.8mg/kg〜約1.2mg/kgであり、前記医薬組成物は、単剤療法として少なくとも3週間投与される、上記方法。
【請求項2】
前記CD30発現血液癌は、ホジキンリンパ腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CD30発現血液癌は、未分化大細胞型リンパ腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記週用量は、約0.8mg/kg〜約1.0mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記週用量は、約0.8mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記週用量は、約1mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記週用量は、約1.2mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記週用量は、単回週用量である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記医薬組成物を、各治療サイクル間に1週間の休息期間を有する21日間の治療サイクルで、少なくとも2回投与する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記医薬組成物を、少なくとも1回の28日間の治療サイクルの間4週のうち3週連続して投与する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記医薬組成物を、少なくとも2回の28日間の治療サイクルの間4週のうち3週連続して投与する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
少なくとも2回の28日間の治療サイクル後、請求項1に記載の医薬組成物を維持療法として投与することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記維持療法は、被験者が検出可能な癌を有していないことを示す評価後に開始される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記維持療法は、請求項1に記載の医薬組成物を3〜6週毎に1回投与することを含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記維持療法のための抗体−薬物コンジュゲートの投与量は、体重1kgあたり約1mg/kg〜約1.8mg/kgである、請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記被験者は、再発性又は難治性のCD30発現血液癌を有する、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記抗体−薬物コンジュゲートは、下記式:
【化2】

又は製薬上許容されるその塩である、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
pが、約4である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
Sが、抗体のシステイン残基の硫黄原子である、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記抗CD30抗体が、キメラAC10抗体であるか、又はマウスAC10抗体との結合を競合する、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記抗CD30抗体が、キメラAC10抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
CD30発現血液癌治療用薬剤の製造のための抗体−薬物コンジュゲートの使用であって、前記抗体−薬物コンジュゲートは、少なくとも21日間、被験者の体重1kgあたり約0.8mg/kg〜約1.2mg/kgの週用量で投与され、式(I)を有するか:
【化3】

又は製薬上許容されるその塩であり、
式中、
mAbは、抗CD30抗体単位であり、
Sは、抗体の硫黄原子であり、
Aは、ストレッチャー単位であり、
pは、約3から約5である。
【請求項23】
被験者におけるCD30発現血液癌の治療方法であって、それを必要とする被験者に、週用量の式(I)を有する抗体−薬物コンジュゲート又は製薬上許容されるその塩と、製薬上許容される担体と、を含む医薬組成物を投与することから本質的に成り、
【化4】

式中、
mAbは、抗CD30抗体単位であり、
Sは、抗体の硫黄原子であり、
Aは、ストレッチャー単位であり、
pは、約3から約5であり、
ここで、前記抗体−薬物コンジュゲートの投与量は、被験者の体重1kgあたり約0.8mg/kg〜約1.2mg/kgであり、前記医薬組成物は、単剤療法として少なくとも3週間投与されるものである、上記方法。
【請求項24】
(i)約1〜25mg/mlの請求項1に記載の抗体−薬物コンジュゲート、(ii)クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、若しくはヒスチジン緩衝液、又はそれらの組合せから選択される、約5〜50mMの緩衝液、(iii)約3%〜約10%のスクロース、若しくはトレハロース、又はこれらの組合せ、(iv)任意に、ポリソルベート20、若しくはポリソルベート80、又はこれらの組合せから選択される、約0.05〜2mg/mlの界面活性剤、及び(v)水を含んでなり、pHが約5.3〜約7である、医薬組成物。
【請求項25】
(i)約1〜25mg/mlの請求項1に記載の抗体−薬物コンジュゲート、(ii)クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、若しくはヒスチジン緩衝液、又はそれらの組合せから選択される、約5〜50mMの緩衝液、(iii)約3%〜約10%のスクロース、若しくはトレハロース、又はこれらの組合せ、(iv)任意に、ポリソルベート20、若しくはポリソルベート80、又はこれらの組合せから選択される、約0.05〜2mg/mlの界面活性剤、及び(v)水から本質的に成り、pHが約5.3〜約7である、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−514651(P2012−514651A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545458(P2011−545458)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/020504
【国際公開番号】WO2010/081004
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(503188759)シアトル ジェネティクス,インコーポレーテッド (11)
【Fターム(参考)】