説明

抗ErbB2抗体を用いた治療のためのドーセージ

【課題】ErbB2の過剰発現によって特徴付けられる疾患の治療の提供。
【解決手段】ErbB2を過剰発現する癌であると推測される、又は診断されたヒト患者に抗ErbB2抗体の有効量を投与することを含み:少なくとも約5mg/kgの抗ErbB2抗体の初期投与量を患者に投与し;さらに抗体の複数回のその後の投与量を初期投与量とおよそ同量又はより少量である量で患者に投与することを含む方法。がさらに有効量の化学療法剤を投与することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ErbB2に結合する抗体の治療的有効量を疾患を有するヒト又は動物に投与することを含む、ErbB2の過剰発現により特徴付けられる疾患又は上皮細胞成長因子レセプター(EGFR)を発現する疾患の治療方法に関する。より詳細には、本発明は、ErbB2を過剰発現する、又はEGFRを発現する癌になりやすい又はその癌と診断されたヒトの患者の治療方法に関し、該治療は、抗ErbB2抗体を、静脈及び/又は皮下投与による治療の時に抗体の投与量をフロントローディングすることにより投与する。場合によっては、本発明は、抗ErbB2抗体と例えば、限定されないがタキソイドに化学療法剤との組合せを用いた、ヒト患者の癌の治療を含む。タキソイドは、パクリタキセル又はドセタキセルでありうるが、それに限定されない。本発明はさらに、抗ErbB2抗体と化学療法剤、例えばそれに限定はしないが、アントラサイクリン誘導体の組み合わせを用いたヒト患者の癌の治療を含む。場合によっては、抗ErbB2とアントラサイクリン誘導体の組み合わせを用いた治療は、心臓保護剤の有効量を用いた治療を含む。本発明はさらに、抗ErbB2抗体の低頻度投与に関する。
【0002】
(発明の背景)
成長因子及び成長因子レセプターをコードするプロトオンコジーンは、乳癌を含む、様々なヒトの悪性腫瘍の原因に重要な役割を担っていることが確認されている。表皮成長因子レセプター(EGFR)に関連した185-kdの膜貫通糖タンパク質レセプター(p185HER2)をコードするヒトErbB2遺伝子(erbB2、またher2又はc-erbB-2としても知られている)は、ヒトの乳癌の約25%〜30%で過剰発現していることが見出されている(Slamonら, Science 235:177-182[1987];Slamonら, Science 244:707-712[1989])。
【0003】
いくつかの証拠情報は、ErbB2を過剰発現する腫瘍の病原性及び臨床的病原力におけるErbB2の直接的な役割を支持している。非新生物細胞へErbB2を導入すると、その悪性形質転換を引き起こすことが示されている(Hudziakら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7159-7163[1987];DiFioreら, Science 237:78-182[1987])。HER2を発現するトランスジェニックマウスには、乳房腫瘍が発生することが見出されている(Guyら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10578-10582[1992])。
【0004】
ヒトerbB2タンパク質産物に対する抗体とerbB2遺伝子(neu)のラット等価物によりコードされたタンパク質が記述されている。Drebinら, Cell 41:695-706(1985)は、ラットneu遺伝子産物に対するIgG2aモノクローナル抗体に言及している。7.16.4と呼ばれるこの抗体は、B104-1-1細胞(neuプロトオンコジーンを形質移入したNIH-3T3細胞)における細胞表面p185発現のダウンモジュレーションを引き起こし、これらの細胞のコロニー形成を阻害する。Drebinら, PNAS(USA)83:9129-9133(1986)では、7.16.4抗体が、ヌードマウスに移植されたneu形質転換NIH-3T3細胞並びにラット神経芽腫細胞(neuオンコジーンが最初に単離されたものからのもの)の腫瘍形成成長を阻害することが示されている。Drebinら, Oncogene 2:387-394(1988)では、ラットneu遺伝子産物に対する抗体パネルの生産が検討されている。全ての抗体は、軟質寒天に懸濁したneu形質転換細胞の成長に対して細胞分裂停止効果を発揮することが見出されている。IgM、IgG2a及びIgG2bアイソタイプの抗体は、補体の存在下でneu形質転換細胞の有意なインビトロ溶解を媒介し得たが、いずれの抗体もneu形質転換細胞の高レベルの抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介することはできなかった。Derbinら, Oncogene 2:273-277(1988)は、p185分子上の2つの異なる領域と反応性のある抗体混合物が、ヌードマウス中に移植されたneu形質転換NIH-3T3細胞に相乗的な抗腫瘍効果を生じることを報告している。抗neu抗体の生物学的効果は、Myersら, Meth. Enzym. 198:277-290(1991)においてレビューされている。また、1994年10月13日に公開された国際公開第94/22478号もまた参照のこと。
【0005】
Hudziakら, Mol. Cell. Biol. 9(3):1165-1172(1989)には、ヒトの乳房腫瘍株化細胞SKBR3を使用して特徴付けられた抗ErbB2抗体パネルの産生が記載されている。抗体への暴露に続いてSKRB3細胞の相対的細胞増殖が、72時間後の単層のクリスタルバイオレット染色により測定された。このアッセイを使用して、4D5と呼ばれる抗体により最大の阻害度が得られ、これは細胞増殖を56%阻害した。7C2と7F3を含むパネルの他の抗体は、このアッセイにおいてより少ない度合いで細胞増殖を低減した。Hudziakらは、SKBR3細胞は培地からの抗体の除去に続いて、ほぼ通常の速度で成長を再開したので、SKBR3細胞に対する4D5抗体の効果は細胞障害というよりも細胞分裂停止であると結論付けている。さらに、抗体4D5は、TNF-αの細胞障害効果に対し、p185erbB2過剰発現乳房腫瘍株化細胞を感作させることが見出されている。また、1989年7月27日に公開されたWO89/06692を参照のこと。Hudziakらにより検討された抗ErbB2抗体は、Fendlyら,Cancer Research 50:1550-1558(1990);Kottsら,In Vitro 26(3):59A(1990);Sarupら,Growth Regulation 1:72-82(1991);Shepardら,J. Clin. Immunol. 11(3):117-127(1991);Kumarら, Mol. Cell. Biol. 11(2):979-986(1991);Lewisら, Cancer Immunol. Immunother. 37:255-263(1993);Pietrasら, Oncogene 9:1829-1838(1994);Vitettaら, Cancer Research 54:5301-5309(1994);Sliwkowskiら, J. Biol. Chem. 269(20):14661-14665(1994);Scottら, J. Biol. Chem. 266:14300-5(1991);及びD'souzaら, Proc. Natl. Acad. Sci. 91:7202-7206(1994)においてもさらに特徴付けられている。
【0006】
Tagliabueら, Int. J. Cancer 47:933-937(1991)には、ErbB2を過剰発現する肺腺癌株化細胞(Calu-3)に対するその応答性によって選択された2つの抗体について記載されている。MGR3と呼ばれる抗体の一つは内部移行し、ErbB2のリン酸化を誘発し、インビトロでの腫瘍細胞成長を阻害することが見出されている。
【0007】
McKenzieら,Oncogene 4:543-548(1989)は、TA1と命名された抗体を含む、様々なエピトープ特異性を持つ抗ErbB2抗体のパネルを産生した。このTA1抗体はErbB2の加速度的エンドサイトーシスを誘発することが見出されている(Maierら, Cancer Res. 51:5361-5369[1991])。Bacusら, Molecular Carcinogenesis 3:350-362(1990)では、TA1抗体が乳癌株化細胞AU-565(erbB2遺伝子を過剰発現する)とMCF-7(過剰発現しない)の成熟を誘発することが報告されている。これらの細胞における成長の阻害と成熟表現型の獲得には、細胞表面におけるErbB2レセプターレベルの減少と、細胞質内におけるレベルの一時的増加が伴うことが見出されている。
【0008】
Stancovskiら, PNAS(USA)88:8691-8695(1991)は、抗ErbB2抗体のパネルを産生し、それらをヌードマウスの腹腔内注入し、erbB2遺伝子の過剰発現により形質転換したマウス繊維芽細胞の腫瘍成長に対するそれらの効果を評価した。4つの抗体では、種々のレベルの腫瘍阻害が検出されたが、抗体の一つ(N28)は、一貫して腫瘍の成長を刺激した。モノクローナル抗体N28は、ErbB2レセプターの有意なリン酸化を誘発するのに対し、他の4つの抗体は、一般的にリン酸化誘発活性が低いか、もしくはないことが示された。また、SKBR3細胞の増殖に対する抗ErbB2抗体の影響も評価された。このSKBR3細胞増殖アッセイにおいて、2つの抗体(N12とN29)は、対照に対して、細胞増殖の減少を引き起した。抗体媒介性の細胞依存性細胞障害活性(ADCC)と補体依存性細胞障害活性(CDC)を介したインビトロでの細胞溶解を誘発する種々の抗体の能力を評価して、この論文の著者は、抗体の阻害機能が顕著にはCDC又はADCCに帰するものではないと結論づけた。
【0009】
Bacusら, Cancer Research 52:2580-2589(1992)は、先の段落のStancovskiら及びBacusら(1990)に記載されている抗体をさらに特徴付けた。Stancovskiらの腹腔内研究を拡大して、ヒトErbB2を過剰発現するマウス繊維芽細胞を有するヌードマウスに静脈注射した後の抗体の影響を評価した。彼らのより早い研究において知見されているように、N28は腫瘍成長を加速するのに対し、N12とN29はErbB2発現細胞の成長を有意に阻害した。また、N24抗体では、部分的な腫瘍阻害も観察された。さらに、Bacusらは、ヒト乳癌株化細胞AU-565及びMDA-MB453(ErbB2を過剰発現する)並びにMCF-7(低レベルのレセプターを含む)における成熟表現型を促進するための抗体の能力を試験した。Bacusらは、インビボでの腫瘍阻害と細胞分化との間に相関関係があることを見出した;腫瘍刺激性抗体N28は分化に何ら影響せず、N12、N29及びN24抗体の腫瘍阻害作用はそれらが誘発した分化の程度と相関関係があった。
【0010】
Xuら,Int. J. Cancer 53:401-408(1993)では、エピトープ結合特異性に対する抗ErbB2抗体のパネル、並びに(個々の抗体又は組合せたものにより)SKBR3細胞の足場非依存性及び足場依存性成長を阻害し、細胞表面ErbB2を変調し、リガンド刺激足場非依存性成長を阻害する能力について評価した。また、1994年1月6日公開のWO94/00136及び抗ErbB2抗体の組合せに関連したKasprzykら, Cancer Research 52:2771-2776(1992)を参照のこと。他の抗ErbB2抗体は、Hancockら, Cancer Res. 51:4575-4580(1991);Shawverら, Cancer Res. 54:1367-1373(1994);Arteagaら, Cancer Res. 54:3758-3765(1994);及びHarwerthら, J. Biol. Chem. 267:15160-15167(1992)において検討されている。
【0011】
組換えヒト化抗ErbB2モノクローナル抗体(rhuMAb HER2又はハーセプチン(HERCEPTIN(登録商標))、またはハーセプチン抗ErbB2抗体と称されるマウス抗ErbB2抗体4D5のヒト化体)は、広範な抗癌治療を前に受けたErbB2過剰発現転移性乳癌を持つ患者において臨床的に活性であった(Baselgaら, J. Clin. Oncol. 14:737-744[1996])。推奨されるハーセプチン(登録商標)の初期注入量としては、90分注入として4mg/kgが投与される。推奨される各週の維持投与量は2mg/kgであり、初期注入量が上手く許容されれば、30分注入として投与できる。
【0012】
ErbB2過剰発現は、特に腋窩リンパ節に関与する原疾患を有する患者における、乏しい予後のプレディクターであると一般的に考えられており(Slamonら, [1987]及び[1989], 前掲;Ravdin及びChamness, Gene 159:19-27[1995];及びHynesとStern, Biochim Biophys Acta 1198:165-184[1994])、CMF(シクロホスファミド、メトトレキセート及びフルオロウラシル)及びアントラサイクリン(Baselgaら, Oncology 11(3 Suppl 1):43-48[1997])を含む、ホルモン治療法及び化学療法に対する感受性及び/又は耐性に関連している。しかしながら、ErbB2過剰発現が乏しい予後に関連しているにもかかわらず、タキサンでの治療に臨床的に反応するHER2陽性患者の見込みは、HER2陰性患者の3倍を越えていた(同上)。rhuMab HER2は、高レベルのHER2を発現するBT-474ヒト乳腺癌細胞を注射したヌードマウスにおける乳癌異種移植片に対するパクリタキセル(タキソール(登録商標))とドキソルビシンの活性を高めることが示されている(Baselgaら, Breast Cancer, Proceeding of ASCO, vol.13, Abstract 53[1994])。
【0013】
(発明の概要)
本発明は、抗ErbB2抗体の初期投与量の投与に続く等量又は少量の抗体(より多量のフロントローディング)によるトラフ血清濃度の効果的な標的の早期達成が、従来の治療より有効であるという発見に関する。トラフ血清濃度の効果的な標的は4週間以下、好ましくは3週間以下、より好ましくは2週間以下、もっとも好ましくは1日以下を含む1週間以下で到達する。標的血清濃度は、その後、残りの治療計画の間、又は疾患症状の抑制が達成されるまで、等量又は少量の維持量投与により維持される。
さらに本発明は、抗ErbB2抗体の有効量を皮下に投与することを含む、ErbB2レセプターの過剰発現により特徴付けられる疾患であると推測される又は診断されたヒト患者の治療の方法に関する。好ましくは、初期投与量並びにその後の維持量は、皮下に投与される。場合によっては、抗ErbB2抗体に対する患者の耐性は知られていないので、抗体に対する患者の耐性が許容されるのであれば、初期投与量が静脈内注入により投与され、続いて維持量を皮下投与する。
【0014】
本発明によれば、治療方法は約4mg/kgよりも多い、好ましくは5mg/kgよりも多い抗ErbB2抗体の初期投与量を投与することを含む。最大の初期投与量は又はその後の投与量は、50mg/kgを越えない投与量、好ましくは40mg/kgを越えない投与量、より好ましくは30mg/kgを超えない投与量である。投与は、静脈内又は皮下投与、好ましくは静脈内注入又はボーラス注射、より好ましくは皮下ボーラス注射による。初期投与量は、4週間以下で、好ましくは3週間以下で、より好ましくは2週間以下で、もっとも好ましくは1日以下を含む1週間以下で標的トラフ血清濃度に達するのに十分な量の薬剤の、一又は複数回の投与でありうる。
本発明によれば、初期投与量の後、効果的な標的レベルでの、又はそれ以前での抗体のトラフ血清濃度を維持するのに十分に近い間隔で、等量の又は少量の抗体のその後の投与量が続く。好ましくは、初期投与量又はその後の投与量は、50mg/kgを越えない投与量であり、それぞれの該その後の投与量のは少なくとも0.01mg/kgである。好ましくは、投与される薬剤の量は、投与サイクルの間隔が少なくとも1週間あるような標的トラフ血清濃度を維持するのに十分な量である。好ましくは、トラフ血清濃度は、治療の間で2500μg/mlを越えず、0.01μg/mlを下回らない。本発明のフロントローディング薬剤治療方法は、標的血清薬剤濃度が治療の早期に達することにより効果を増大させるという利点を有する。本発明による維持量の皮下投与は、患者と医療専門家にとって便利にさせ、薬剤治療の時間と費用を減少させる利点を有する。好ましくは、初期投与量(又は一連の初期投与量の最終投与量)は、4週間以下、好ましくは3週間以下、より好ましくは2週間以下、最も好ましくは1週間以下、第1のその後の投与量の時から間隔がある。
【0015】
本発明の実施態様では、抗ErbB2抗体の初期投与量は、静脈内又は皮下投与、例えば静脈内注入又は皮下ボーラス注射により送達され、6mg/kg、8mg/kg、又は12mg/kgである。その後の維持量は、静脈内注入、静脈内ボーラス注射、皮下注入、又は皮下ボーラス注射により週に一度送達され、2mg/kgである。初期又は維持量の送達方法の選択は、体への抗体の投与に耐える動物またはヒト患者の能力に従って成される。抗体が上手く許容される場合、注入の回数は減る。この実施態様に開示される送達方法の選択は、本発明により考慮される全ての薬剤送達治療方法が用いられる。
他の実施態様において、本発明は、抗ErbB2抗体の12mg/mlの初期投与量に続く、3週に1度の6mg/kgのその後の維持量を含む。
また他の実施態様では、本発明は、抗ErbB2抗体の8mg/mlの初期投与量に続く、3週に1度の6mg/kgのその後の維持量を含む。
他の実施態様において、本発明は、抗ErbB2抗体の8mg/mlの初期投与量に続く、1週に1度の8mg/kg又は2から3週毎に1度の8mg/kgのその後の維持量を含む。
【0016】
他の実施態様では、本発明は、それぞれ1、2及び3日目に少なくとも1mg/kg、好ましくは4mg/kgの抗ErbB2抗体の初期投与量に続いて、3週間に一度の6mg/kgのその後の維持量を含む。
他の実施態様では、本発明は、4mg/kgの抗ErbB2抗体の初期投与に続く、週に2回の2mg/kgのその後の維持量を含み、ここで、維持量は3日間隔である。
また更なる実施態様では、本発明は抗ErbB2抗体の送達が週に2-3回、3週間であるサイクルを含む。本発明の一実施態様では、それぞれの投与量は、ヒト患者に対して約25mg/kg以下、好ましくは約10mg/kg以下である。この3週間のサイクルは、好ましくは疾患症状の抑制を達成するための必要性に応じて繰り返される。
他の実施態様では、本発明は、抗ErbB2抗体の送達を5日間毎日行なう投与量のサイクルを含む。本発明によれば、サイクルは好ましくは疾患症状の抑制を達成するための必要性に応じて繰り返される。
【0017】
疾患は、好ましくはErbB2レセプターの過剰発現に特徴付けられる良性又は悪性の腫瘍、例えば乳癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、大腸癌、結腸直腸癌、子宮体癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、及び様々なタイプの頭部及び頸部の癌である。本発明の方法は、さらにアントラサイクリン、例えばドキソルビシン又はエピルビシン以外の化学療法剤の投与を含みうる。好ましくは、化学療法剤は、タキソイド、例えばTAXOL(登録商標)(パクリタキセル)又はTAXOL(登録商標)誘導体である。
好ましい抗ErbB2抗体は、ErbB2レセプターの細胞外ドメインに結合し、好ましくは、ErbB2細胞外ドメイン配列内のエピトープ4D5又は3H4に結合する。より好ましくは抗体は、抗体4D5、最も好ましくはヒト化形態である。他の好ましいErbB2-結合抗体は、これに限らないが、好ましくはヒト化形態の7C2、7F3、及び2C4を含む。
本発明の方法は、特にErbB2レセプターの過剰発現により特徴付けられる乳癌又は卵巣癌の治療に適している。
【0018】
本出願はまた、抗ErbB2抗体の低頻度投与量を含む治療の方法を提供する。特に本発明は、ヒト患者における癌(例えば、ErbB2レセプターの過剰発現に特徴付けられる癌)の治療の方法であって、抗ErbB2抗体の第1の投与量に続いて、抗体の少なくとも一のその後の投与量を患者に投与することを含み、該第1の投与量及びその後の投与量が少なくとも2週間(例えば約2週間から約2ヶ月)、場合によっては、少なくとも3週間(例えば約3週間から約6週間)それぞの間隔を取る方法を提供する。例えば、抗体は約3週間毎に、約2から20回、例えば約6回投与されうる。第1の投与量及びその後の投与量は、それぞれ約2mg/kgから約16mg/kg;例えば約4mg/kgから約12mg/kg;場合によっては6mg/kgから約12mg/kgでありうる。一般に、抗体の二又はそれ以上のその後の投与(例えば、約2から約10のその後の投与量)は、好ましくは互いに少なくとも約2週間(例えば約2週間から約2ヶ月、場合によっては少なくとも3週間(例えば約3週から6週)の間隔がおかれる。2又はそれ以上のその後の投与量は、それぞれ約2mg/kgから約16mg/kg;又は4mg/kgから約12mg/kg;又は約6mg/kgから12mg/kgでありうる。本発明は、さらに容器、抗ErbB2抗体を含む容器内の組成物、及びこのような方法により抗体を投与することを説明するパッケージ挿入物を含む製造品を提供する。
【0019】
現在示されている投与プロトコルは、抗上皮細胞成長因子レセプター(EGFR)、抗ErbB3及び抗ErbB4抗体の様な他の抗ErbB抗体に用いられうる。従って、本発明は、抗ErbB抗体のヒト患者に対する有効量を投与することを含み、ヒト患者の癌の治療方法であって、少なくとも約5mg/kgの抗ErbB抗体の初期投与量を投与すること;およそ初期投与量と等しい又はそれより少ない投与量で複数回の抗体のその後の投与量を投与することを方法を提供する。あるいは、またさらに本発明は、抗ErbB抗体の第1の投与量に続いて、該抗体の少なくとも一のその後の投与量を患者に投与することを含むヒト患者の癌の治療方法に係り、ここで第1の投与量とその後の投与量は互いに少なくとも2週間間隔をおかれる。さらに本発明は、容器、抗ErbB抗体を含む容器内の組成物、及びこのような方法により抗体を投与しうることを説明したパッケージ挿入物を含む製造品を提供する。
他の実施態様では、本発明は、容器、抗ErbB2抗体を含む容器内の組成物、場合によっては該組成物がErbB2レセプターの過剰発現により特徴付けられる症状の治療に使用することができることを示した容器上の又は一体となったラベル、及び組成物と組み合わせてのアントラサイクリン型化学療法剤の使用を避けるという説明書を含むパッケージ挿入物を含む製造品に関する。本発明によれば、パッケージ挿入物はさらに5mg/kgの初期投与量に続いて、同量又はより少量のその後の投与量で抗ErbB2抗体を投与することを説明した説明書を含む。本発明の他の実施態様では、パッケージ挿入物はさらに、抗ErbB2抗体が投与量の少なくとも一つを、好ましくは初期投与量の前の全てのその後の投与量、最も好ましくは全ての投与量を皮下に投与されることの説明書を含む。
【0020】
更なる様態では、本発明は抗ErbB2抗体及び化学療法剤の有効量を患者に投与することを含むヒト患者のErbB2発現癌を治療する方法を提供する。本発明の一実施態様において、化学療法剤はこれに限らないが、パクリタキセル及びドセタキセルを含むタキソイドである。他の実施態様では、化学療法剤はこれに限らないが、ドキソルビシン又はエピルビシンを含むアントラサイクリン誘導体である。また本発明の他の実施態様では、抗ErbB2抗体を用いた治療及びアントラサイクリン誘導体はさらに、患者に心臓保護剤の投与を含む。また他の実施態様では、アントラサイクリン誘導体は、抗ErbB2抗体でヒトに投与されない。一又は複数の更なる化学療法剤がまた患者に投与されうる。癌は好ましくはErbB2の過剰発現に特徴付けられる。
本発明はさらに、容器、抗ErbB2抗体を含む容器内の組成物及び患者に抗ErbB2抗体組成物と化学療法剤を投与することを組成物の使用者に説明するパッケージ挿入物を含む製造品を提供する。他の実施態様では、化学療法剤はアントラサイクリン以外である、好ましくはタキソイド、例えばTAXOL(登録商標)である。また他の実施態様では、化学療法剤はこれに限らないがドキソルビシン又はエピルビシンを含むアントラサイクリンである。また他の実施態様では、化学療法剤はアントラサイクリンであり、パッケージ挿入物が心臓保護剤の投与を使用者にさらに説明するものである。
本発明の方法及び組成物は抗ErbB2抗体を含み、ヒト化抗ErbB2抗体を包含する。従って、本発明はさらにErbB2に結合する抗体を含む組成物に係り、ヒトのErbB2発現癌、例えばErbB2抗体過剰発現癌を治療するための抗体の使用に関する。本発明は、またEGFR発現癌を治療するための抗体の使用に関する。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体4D5、例えばヒト化4D5(好ましくはhuMAb4D5-8(ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体);又はモノクローナル抗体2C4、例えばヒト化2C4である。抗体は無傷の抗体(例えば無傷のIgG抗体)又は抗体断片(例えばFab、F(ab)、ダイアボディ等)でありうる。ヒト化抗ErbB2抗体2C4の可変軽鎖及び可変重鎖領域は図5A及び5Bに示される。
【0021】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
I.定義
「ErbBレセプター」は、ErbBレセプターファミリーに属するレセプタープロテインキナーゼであり、EGRF、HER2、ErbB3及びErbB4レセプター並びにTEGFR(米国特許第5,708,156号)及び今後同定されるこのファミリーの他のメンバーを含む。ErbBレセプターは一般に、ErbBリガンドと結合する細胞外ドメイン;親油性膜貫通ドメイン;保存された細胞内チロシンキナーゼドメイン;及びリン酸化されうるいくつかのチロシンキナーゼ残基を抱合するカルボキシル末端シグナル伝達ドメインを含んでなりうる。ErbBレセプターは「天然配列」ErbBレセプター又はそのアミノ酸配列変異体であってもよい。好ましくは、ErbBレセプターは天然配列ヒトErbBレセプターである。
【0022】
「ErbB1」、「上皮成長因子レセプター」及び「EGFR」という用語は、ここで、互換的に使用され、Carpenterら, Ann. Rev. Biochem. 56:881-914(1987)に開示されているような天然配列EGFRに相当し、その突然変異体(例えば、Humphreyら, PNAS(USA) 87:4207-4211(1990)に記載されているような欠失変異体EGFR)含む。erbB1は、EGFRタンパク質産物をコードする遺伝子に相当する。EGFRに結合する抗体の例は、MAb579(ATCC CRL HB8506)、MAb455(ATCC CRL HB8507)、MAb255(ATCC CRL HB8508)、MAb528(ATCC CRL HB8509)(米国特許第49,432,533号参照)、及びその変異体、例えばキメラ225(C225)及びリシェイプヒト225(H225)(WO96/40210、Imclone Systems Inc.)を含む。
「ErbB3」及び「HER3」は、例えば、米国特許第5,183,884号及び第5,480,968号、並びにKrausら, PNAS(USA) 86: 9193-9197(1989)に開示されたレセプターポリペプチドに相当し、その変異体を含む。HER3に結合する抗体の例は、米国特許第5,968,511に記載され、(Akita及びSliwkowski)、例えば8B8抗体(ATCC HB 12070)又はそのヒト化変異体である。
【0023】
ここでの用語「ErbB4」及び「HER4」は、例えば、欧州特許出願599,274;Plowmanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 1746-1750(1993);及びPlowmanら, Nature 366: 473-475(1993)に開示されたレセプターポリペプチドに相当し、例えばWO99/19488に開示されているHER4アイソフォームのような、その変異体を含む。
「HER2」、「ErbB2」、「c-Erb-B2」という用語には互換的に使用される。特にそうでないことを示さない限り、ここで使用される「ErbB2」、「c-Erb-B2」及び「HER2」という用語は、ヒトタンパク質を指し、「erbB2」、「c-erb-B2」及び「her2」はヒト遺伝子を指す。ヒトerbB2遺伝子及びErbB2タンパク質は、例えばSembaら, PNAS(USA)82:6497-6501(1985)及びYamamotoら, Nature 319:230-234(1986)(ジーンバンク受託番号 X03363)に記載されている。ErbB2は4つのドメインを有する(ドメイン1-4)。
【0024】
「エピトープ4D5」は抗体4D5(ATCC CRL 10463)が結合するErbB2の細胞外ドメイン中の領域である。このエピトープはErbB2の膜貫通領域に近接している。4D5エピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、例えばAntibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow及びDavid Lane編(1988)に記載の通常の交差ブロッキングアッセイを行うことができる。あるいは、抗体がErbB2の4D5エピトープ(すなわち、約残基529から、例えば約残基561から、約残基625までを含む領域における任意の一又は複数の残基)に結合するか否かを評価するために、エピトープマッピングを行うこともできる(図1参照)。
「エピトープ3H4」は抗体3H4が結合するErbB2の細胞外ドメイン中の領域である。このエピトープは図1に示すもので、ErbB2の細胞外ドメインのアミノ酸配列のうち、約541〜約599の残基を含む。
「エピトープ7C2/7F3」は7C2及び/又は7F3抗体(各々以下のATCCで寄託)が結合するErbB2の細胞外ドメインのN末端領域である。7C2/7F3エピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、例えばAntibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow及びDavid Lane編(1988)に記載の通常の交差ブロッキングアッセイを行うことができる。あるいは、抗体がErbB2の7C2/7F3エピトープ(すなわち、ErbB2の約残基22から約残基53までの領域における任意の一又は複数の残基;配列番号:2)に結合するか否かを確認するために、エピトープマッピングを行うこともできる。
【0025】
「細胞死を誘発」又は「細胞死を誘発可能な」という用語は、生存している細胞を生存不能とさせる抗体の能力を意味する。ここでの「細胞」とはErbB2レセプターを発現するもの、特にErbB2レセプターを過剰発現する細胞のことである。ErbB2を「過剰発現する」細胞は、同じ組織型の非癌化細胞に比べて、正常よりも顕著に高いErbB2レベルを有する。好ましくは細胞は癌細胞、例えば乳房、卵巣、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、大腸、甲状腺、膵臓又は膀胱細胞である。インビトロでは、細胞はSKBR3、BT474、Calu3、MDA-MB-453、MDA-MB-361又はSKOV3細胞でありうる。インビトロでの細胞死は、補体と免疫エフェクター細胞の非存在下で決定され、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)又は補体依存性細胞障害活性(CDC)により誘発される細胞死と区別される。よって、細胞死に対するアッセイは、熱不活性化血清(すなわち補体の不在下)を使用し、免疫エフェクター細胞の不在下で行うことができる。抗体が細胞死を誘発可能であるか否かを測定するために、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー(Mooreら, Cytotechnology 17:1-11[1995]を参照)又は7AADの取込みにより評価される膜インテグリティの損失度合いが未処理細胞と比較して評価される。好ましい細胞死誘発抗体は、「BT474細胞におけるPI取込みアッセイ」において、PIの取込みを誘発するものである。
【0026】
「アポトーシスを誘発」又は「アポトーシスを誘発可能な」という用語は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞の形成(アポトーシス体と呼ばれる)により決定されるようなプログラム細胞死を誘発する抗体の能力を意味する。細胞は、ErbB2レセプターを過剰発現するものである。好ましくは「細胞」は、腫瘍細胞、例えば乳房、卵巣、胃、子宮体、唾液腺、肺、腎臓、大腸、甲状腺、膵臓又は膀胱細胞である。インビトロでは、細胞はSKBR3、BT474、Calu3細胞、MDA-MB-453、MDA-MB-361又はSKOV3細胞でありうる。アポトーシスに伴う細胞のイベントを評価するために種々の方法が利用できる。例えば、ホスファチジルセリン(PS)転位置をアネキシン結合により測定することができ;DNA断片化は以下の実施例に開示されているようにDNAラダーリングにより評価することができ;DNA断片化に伴う細胞核/染色質凝結は低二倍体細胞の何らかの増加により評価することができる。好ましくは、「BT474細胞を使用するアネキシン結合アッセイ」において、アポトーシスを誘発する抗体は、未処理細胞の約2〜50倍、好ましくは約5〜50倍、最も好ましくは約10〜50倍のアネキシン結合を誘発するという結果を生じるものである(以下参照)。
【0027】
時として、プロアポトーシス抗体は、ErbB2/ErbB3複合体のHRG結合/活性化をブロックするものであろう(例えば7F3抗体)。他の状況では、抗体はHRGによるErbB2/ErbB3レセプター複合体の活性化を有意にはブロックしないものである(例えば7C2)。さらに、抗体は、アポトーシスを誘発しながら、S期中の細胞のパーセントの大きな低減を誘発しない7C2のようなものでありうる(例えば、コントロールに対して、これらの細胞のパーセントの約0−10%の低減だけを誘発するもの)。
関心のある抗体は、ヒトErbB2に特異的に結合するが、他のタンパク質、例えばerbB1、erbB3及び/又はerbB4遺伝子によりコードされたものと有意には交差反応を起こさない7C2のようなものである。時として、抗体は、例えばSchecterら, Nature 312:513(1984)及びDrebinら, Nature 312:545-548(1984)に記載されているように、ラットneuタンパク質と有意には交差反応しない。このような実施態様では、これらのタンパク質に対する抗体の結合度合い(例えば内在性レセプターに対する細胞表面結合性)は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析又は放射性免疫沈降(RIA)による測定では約10%未満であろう。
ここで使用される「ヘレグリン」(HRG)は、ErbB2-ErbB3及びErbB2-ErbB4タンパク質複合体を活性化するポリペプチドを意味する(すなわち、そこに結合する際に複合体のチロシン残基のリン酸化を誘発する)。この用語に包含される種々のヘレグリンポリペプチドは、例えば、Holmesら, Science, 256:1205-1210(1992);国際公開92/20798;Wenら, Mol. Cell. Biol., 14(3):1909-1919(1994);及びMarchionniら, Nature, 362:312-318(1993)に開示されている。この用語には、天然に生じたHRGポリペプチドの変異体及び/又は生物学的に活性なフラグメント、例えばそれらのEGF様ドメインフラグメント(例えばHRGβ1177−244)が含まれる。
【0028】
「ErbB2-ErbB3タンパク質複合体」と「ErbB2-ErbB4タンパク質複合体」は、それぞれ、ErbB2レセプターと、ErbB3レセプター又はErbB4レセプターの非共有結合的に結合したオリゴマーである。Sliwkowskiら, J. Biol. Chem., 269(20):14661-14665(1994)に記載されているように、これらのレセプターの両方を発現する細胞がHRGに暴露された場合に複合体が形成され、免疫沈降法により単離され、SDS-PAGEにより分析される。
「抗体」(Ab)と「免疫グロブリン」(Ig)は同じ構造的特徴を有する糖タンパク質である。抗体は特定の抗原に対して結合特異性を示すものであるが、免疫グロブリンは、抗体と抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方を含むものである。後者の種類のポリペプチドは、例えばリンパ系により低レベルで、骨髄腫により増加したレベルで産生される。
「天然抗体」及び「天然免疫グロブリン」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(V)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を、他端に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
【0029】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域又は相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つのCDRにより連結されたβシート配置を主にとる4つのFR領域をそれぞれ含んでいる。各鎖のCDRは、FRにより近接して結合せしめられ、他の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, NIH Publ. No.91-3242, Vol.I, 647-669頁[1991]を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞障害活性への抗体の関与を示す。
抗体のパパイン消化により、各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントと、その名称が容易に結晶化する能力を表す、残りの「Fc」フラグメントが産生される。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、さらに抗原を架橋させ得るF(ab')フラグメントが得られる。
【0030】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体フラグメントである。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つのCDRは相互に作用してV-V二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
またFabフラグメントは、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFabフラグメントとは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')抗体フラグメントは、間にヒンジシステインを有するFab'フラグメントの対として生産された。抗体フラグメントの他の化学結合も知られている。
【0031】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主たるクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、それらのいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4、IgA及びIgA2に分割される。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び3次元構造はよく知られている。
【0032】
「抗体」という用語は最も広義に使用され、特に無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成された多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物活性を示す限り抗体フラグメントも含む。
「抗体フラグメント」には、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合又は可変領域が含まれる。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab'、F(ab')及びFvフラグメント;ダイアボディー(diabodies);直鎖状抗体(Zapataら, Protein Eng. 8(10):1057-1062[1995]);単鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0033】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対している。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む通常の(ポリクローナル)抗体と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていないハイブリドーマ培養から合成される点で有利である。「モノクローナル」との修飾詞は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohlerら, Nature 256, 495 (1975)により開示されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは例えば組換えDNA法によって作ることができる(例えば、米国特許第4816567号参照)。また「モノクローナル抗体」は、例えばClacksonら, Nature 352:624-628(1991)、及びMarksほか, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離することもできる。
【0034】
ここで、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種由来の抗体あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同であり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体あるいは他の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りそれら抗体のフラグメントを特に含む(米国特許第4,816,567号; Morrisonほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855[1984])。
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはそれらのフラグメント(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。大部分においてヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域残基(FR)は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練し、最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる。さらなる詳細は、Jonesら, Nature 321, 522-525(1986);Reichmanら, Nature 332, 323-329(1988)及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2: 593-596(1992)を参照のこと。ヒト化抗体は、抗体の抗原結合領域が、関心のある抗原でマカクザルを免疫化することにより生産された抗体から由来するプリマタイズしたPRIMATIZED(登録商標)抗体を含む。
【0035】
「単鎖Fv」すなわち「sFv」抗体フラグメントは、抗体のV及びVドメインを含有するもので、これらのドメインはポリペプチド単鎖に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合に対する所望の構造を形成できるようにするポリペプチドリンカーをVとVドメインの間にさらに含んでいる。sFvのレビューには、例えば、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol.113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp.269-315(1994)を参照されたい。
「ダイアボディー」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを意味するもので、フラグメントは軽鎖可変ドメイン(V)に結合した重鎖可変ドメイン(V)を同じポリペプチド鎖(V-V)に含有する。同じ鎖上での二つのドメイン間の対合が許されないほど短いリンカーを使用することにより、ドメインが、他の鎖の相補的ドメインとの対合を強いられ、二つの抗原結合部位をつくりだす。ダイアボディーは、例えば、欧州特許404097;国際公開93/11161号;及びHollingerほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)にさらに詳しく記載されている。
【0036】
「単離された」抗体とは、自然環境の成分から、同定され分離され及び/又は回収されたものである。その自然環境における汚染成分は、抗体に対する診断又は治療用途と干渉する物質であり、酵素、ホルモン及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、抗体は、(1)ラウリー(Lowry)法により測定して抗体の95重量%以上、最も好ましくは99重量%以上、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに充分な程度に、あるいは(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEにより均一性が得られるまで、精製される。抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のインシトゥー抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
「サルベージレセプター結合エピトープ」という用語は、ここで使用されるときは、IgG分子のインビボでの血清半減期を増加させる原因となるIg分子(例えばIgG、IgG、IgG又はIgG)のFc領域のエピトープを意味する。
【0037】
「治療」とは、治療的処置及び予防又は防止手段の両方を意味する。治療の必要があるものには、既に羅患しているもの、並びに疾患が予防されるべきものが含まれる。
治療の目的とされる「哺乳動物」とは、ヒト、家庭又は農場用動物、及び動物園、スポーツ又はペット用動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を含む、哺乳動物に分類されるあらゆる動物を意味する。好ましくは哺乳動物はヒトである。
「疾患」は抗ErbB2抗体で治療することで恩恵を得るあらゆる症状のことである。これには、問題の疾患に哺乳動物を罹患させる素因になる病理状態を含む、慢性及び急性の疾患又は病気が含まれる。ここで治療される疾患の例は、これに限定されるものではないが、良性及び悪性の腫瘍;白血病及びリンパ悪性腫瘍;ニューロン、神経膠、星状細胞、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、ストロマ及び割腔の疾患;及び炎症、血管形成及び免疫性疾患が含まれる。
「治療的有効量」という用語は、抗増殖性効果を有する量に関して使用される。好ましくは、治療的有効量は哺乳類の疾病や疾患の治療のために有効な薬剤の量に相当する。癌の場合は、治療的有効量の薬剤は、癌細胞の数を減少させ;腫瘍の大きさを小さくし;癌細胞の周辺器官への浸潤を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の転移を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の成長をある程度阻害し;及び/又は疾患に関連する一つ或いはそれ以上の症状をある程度和らげることが可能である。ある程度、薬剤は、成長を妨げ及び/又は現存の癌細胞を殺すことが可能で、細胞分裂停止性及び/又は細胞障害性である。癌治療に対しては、効力は、例えば病状の進行時間(TTP)の評価、又は応答速度(RR)の決定及び/又は全生存を評価することにより測定される。
【0038】
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長により特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態に相当するか表すものである。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより特定な例には、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝腫瘍、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、陰門癌、甲状腺癌、肝癌及び様々な種類の頭部及び頸部の癌が含まれる。
ここで使用される「細胞障害剤」という用語は、細胞機能を阻害又は抑制するか、及び/又は細胞の崩壊を引き起こす物質を意味する。その用語は放射性アイソトープ(例えばI131、I125、Y90及びRe186)、化学療法剤、及び毒素、例えば細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒又はそれらのフラグメントを含むことを意図している。
【0039】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類、;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;ウレドーパ(uredopa);アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カリケアマイシン(calicheamicin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)などの抗生物質;メトトレキセート及び5−フルオロウラシル(5−FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似物;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、及びフロキシウリジン(floxuridine)、5−FU;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;オキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine):ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PKS(登録商標);ラゾキサン(razoxane);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2"-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカーバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);シトシンアラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、及びドキセタキセル(タキソテア(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン、カルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP−16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン(navelbine);ノバントロン(novantron);テニポシド;ダウノマイシン;カルミノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CTP-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン(capecitabine);並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働くホルモン剤、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン(raloxifene)、4(5)-イミダゾール類を阻害するアロマターゼ、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、トレミフェン(Fareston);及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)及びニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、リュープリン(leuprolide)、及びゴセレリン;及び上記のものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0040】
ここで使用される場合の「成長阻害剤」とは、インビトロ又はインビボのいずれかにおいて、細胞、特にErbB2過剰発現癌細胞の成長を阻害する化合物又は組成物を指すものである。よって、成長阻害剤とは、S期におけるErbB2過剰発現細胞のパーセンテージを有意に低減させるものである。成長阻害剤の例には、細胞分裂周期の進行をブロックする薬剤(S期以外の場所において)、例えばG1停止及びM期停止を誘発する薬剤が含まれる。伝統的なM期ブロッカーには、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール(登録商標)、及びトポIIインヒビター、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。G1を停止させるこれらの薬剤、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニソン、ダカーバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-CがS期停止に溢流する。更なる情報は、Murakamiらにより「細胞分裂周期の調節、オンコジーン、及び抗新生物薬(Cell cycle regulation, oncogene, and antineoplastic drugs)」と題された、癌の分子的基礎(The Molecular Basis of Cancer)、Mendelsohn及びIsrael編、第1章(WB Saunders;Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。また、4D5抗体(及びその機能的等価物)も、この目的のために使用することができる。
【0041】
「ドキソルビシン」はアントラサイクリン系抗生物質である。ドキソルビシンの正式な化学名は(8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキソピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオンである。
「サイトカイン」という用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。このようなサイトカインの例としては、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンを挙げることができる。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)のような糖タンパク質ホルモン、副甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH);肝臓成長因子;繊維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミュラー阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF−β等の神経成長因子;血小板成長因子;TGF-αあるいはTGF-βのような形質転換成長因子(TGF);インスリン様成長因子I及びII;エリスロポイエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロンα、β、γのようなインターフェロン;マクロファージCSF(M-CSF)のようなコロニー刺激因子(CSF);顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF)及び顆粒球CSF(G-CSF);IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、 IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、 IL-8、IL-9、IL-11、IL-12等のインターロイキン(IL);腫瘍壊死因子、例えばTNF-α又はTNF-β;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。ここで使用される場合、サイトカインなる用語は天然源由来あるいは組換え細胞培養由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物的に活性な等価物を含む。
【0042】
本出願で使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物に比べて、腫瘍細胞に対する細胞毒性が低く、より活性な親形態に、酵素的に活性化又は転換され得る製薬的に活性な物質の先駆体又は誘導体形態を意味する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, pp.375-382, 615th Meeting Belfast(1986)及びStellaら,「Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」, Directed Drug Delivery, Borchardtら,(編), pp.247-267, Humana Press(1985)を参照。 限定するものではないが、本発明のプロドラッグには、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸変性プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、βラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグが含まれる。限定するものではないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害剤の例には、前掲の化学療法剤が含まれる。
【0043】
「固相」とは、本発明の抗体がそれに付着することのできる非水性マトリクスを意味する。ここに包含する固相の例は、部分的又は全体的に、ガラス(例えば、孔調整ガラス)、多糖類(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンから形成されたものを含む。或る種の実施態様では、内容に応じて、固相はアッセイプレートのウェルを構成することができ;その他では精製カラム(例えばアフィニティクロマトグラフィーカラム)とすることもできる。また、この用語は、米国特許第4,275,149号に記載されたような、別個の粒子の不連続な固相も包含する。
「リポソーム」は、哺乳動物への薬剤(例えば、ここで開示されている抗ErbB2抗体、場合によっては化学療法薬)の送達に有用な、種々の種類の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤からなる小胞体である。リポソームの成分は、通常、生物膜の脂質配置に似た2層構造に配されている。
「パッケージ挿入物」という用語は効能、用法、用量、投与方法、禁忌及び/又はかかる治療製品の使用に関する警告についての情報を含む、治療製品の市販用パッケージに通常含まれるインストラクションを意味するために使用される。
【0044】
「血清濃度」、「血清薬剤濃度」、又は「血清ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体濃度」という用語は、薬剤を用いて治療される動物又はヒト患者の血清中の、薬剤、例えばハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の濃度を意味する。ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の血清濃度は、例えば好ましくはイムノアッセイにより決定される。好ましくは、イムノアッセイはここに開示される方法に従うELISAである。
「ピーク血清濃度」という用語は、動物又はヒト患者に薬剤を送達した後すぐの最高の血清薬剤濃度を意味し、血液システムを通して薬剤が分配された後であるが、身体による薬剤の有意な組織分配、代謝又は排泄が起こる前である。
「トラフ血清濃度」という用語は、一連の投薬において薬剤の前の投薬の送達の後で、次のその後の投薬の送達の直前の血清薬剤濃度を意味する。一般にトラフ血清濃度は、一連の薬剤投与における最少の持続した有効薬剤濃度である。また、トラフ血清濃度は、薬剤の他の投薬を治療投与計画の一部として投与すべき血清濃度を意味するので、効果的な最少血清濃度としてよく目安とされる。静脈内投与により薬が送達された場合、もっとも好ましくはトラフ血清濃度はフロントローディング初期薬剤送達の1日の内に達する。薬剤の送達が、皮下投与による場合には、ピーク血清濃度は好ましくは3日以下で達する。本発明によれば、好ましくはトラフ血清濃度は、ここで開示される薬剤送達方法の何れかを用いて、好ましくは4週間以下、好ましくは3週間以下、より好ましくは2週間以下、もっとも好ましくは1週間以下、例えば一日以下で達成される。
【0045】
「静脈内注射」は、約5分以上、好ましくは約30〜90分の時間にわたっての動物又はヒト患者の血管中への薬剤の導入を意味するが、本発明では、静脈内注入はあるいは10時間以下で行われる。
「静脈内ボーラス」又は「静脈内プッシュ」は、体が約15分以下、好ましくは5分以下で薬剤を受けるような動物又はヒトの血管中への薬剤投与を意味する。
「皮下投与」は、比較的ゆっくりと、薬剤容器からの送達が維持されることによって、動物又はヒト患者の皮膚の下に、好ましくは皮膚及び皮下組織の間のポケットに薬剤を投入することを意味する。ポケットは、皮膚を上につまんで引き上げ皮下組織から離すことにより作られる。
「皮下注射」は、比較的ゆっくりと、これに限らないが例えば30分以下又は90分以下の時間、薬剤容器からの送達が維持されることによって、動物又はヒト患者の皮膚の下に、好ましくは皮膚と皮下組織の間のポケットに薬剤を導入することを意味する。場合によっては、注入が、動物又はヒト患者の皮膚の下に差し込まれた薬剤送達ポンプの皮下挿入によって成され、ポンプは決定された時間、例えば30分、90分、又は治療投薬計画の長さにあわせた時間、定められた量の薬剤を送達する。
【0046】
「皮下ボーラス」という用語は、動物又はヒト患者の皮膚の下への薬剤投入を意味し、ボーラス薬剤送達は好ましくは約15分以下、より好ましくは5分以下、及び最も好ましくは60秒以下である。投与は、例えば皮膚をつまんで引き上げ、皮下組織から離すことによりポケットが形成される、皮膚と皮下組織の間のポケット内が好ましい。
薬剤投与に関する場合の「フロントローディング」という用語は、初期の高用量を示し、その後に間隔をおいた同量またはそれより少量の投薬が行われる。初期の高用量(単回又は複数回)は、効果的な標的血清濃度にまで動物又はヒト患者の血清薬剤濃度をより速やかに増加することを意図する。本発明によれば、フロントローディングは、動物又は患者の血清濃度が標的血清トラフ濃度に達するように、3週間以下にわたり送達される初期投薬によって成される。好ましくは、初期フロントローディング投薬又は一連の投薬は2週間以下、より好ましくは1週間以下、例えば1日以下で投与される。最も好ましくは、初期投薬は単一の投薬であり、少なくとも1週間その後の維持投薬はなく、初期投薬は1日以下で投与される。初期投薬が一連の投薬である場合、それぞれの投薬は少なくとも3時間間隔であるが、3週間以下、好ましくは2週間以下、より好ましくは1週間以下、最も好ましくは1日以下の間隔をおく。以前に抗体で治療されていない動物又は患者の、抗体薬剤、例えば抗ErbB2抗体(例えばハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体)に対する不都合な免疫反応を避けるために、静脈内注射により抗体の初期投薬を送達することが好適でありうる。本発明は、静脈内又は皮下の注入又はボーラス投与による初期及び維持量のフロントローディング薬剤送達を含む。
【0047】
抗ErbB2抗体に関する刊行物としては、次の公開特許及び公開出願を含む:1989年1月5日公開のPCT/US89/00051;1990年5月18日公開のPCT/US/90/02697;1997年7月23日公開のEU0474727;1997年7月23日公開のDE69031120;1997年10月9日公開のPCT/US97/18385;1997年10月14日公開のSA97/9185;1997年10月14日公開のUS5677171;1998年2月24日公開のUS5720937;1998年2月24日公開のUS5720954;1998年3月10日公開のUS5725856;1998年6月23日公開のUS5770195;1998年6月30日公開のUS5772997;1998年12月10日公開のPCT/SU98/2626;及び1999年3月26日公開のPCT/US/06673、特許及び出願のそれぞれは、出展明示によりその全部をここに取り込む。
【0048】
II. 抗ErbB2抗体の製造
本発明で使用される抗体を製造するための例示的な技術を以下に説明する。抗体の製造に使用されるErbB2抗原は、例えば所望のエピトープを含むErbB2の細胞外ドメイン又はそれらの一部の可溶形態のものであってよい。あるいは、抗体を産生するために、その細胞表面にErbB2を発現する細胞(例えばErbB2を過剰発現するように形質転換されたNIH-3T3細胞;又は癌腫株化細胞、例えばSKBR3細胞、Stancovskiら, PNAS(USA)88:8691-8695[1991]を参照)を使用することもできる。抗体の産生に有用な他の形態のErbB2は当業者には明らかであろう。
【0049】
(i) ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物に産生される。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに関連抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はRとRが異なったアルキル基であるRN=C=NRにより抱合させることが有用である。
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合として組換え細胞培養中で調製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
【0050】
(ii) モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。よって、「モノクローナル」との修飾詞は、別個の抗体の混合物ではなく、抗体の特性を示すものである。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記したようにして免疫し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,59-103頁[Academic Press, 1986])。
【0051】
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫株化細胞は、マウス骨髄腫系、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、サンディエゴ、カリフォルニア、USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド、USAから入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されたものである。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁[Marcel Dekker, Inc., New York, 1987])。
【0052】
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunsonほか, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が確定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁[Academic Press, 1986])。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が包含される。加えて、該ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0053】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
モノクローナル抗体をコードしているDNAは、常法を用いて(例えば、マウスの重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に分離され配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、そうしないと免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する概説論文には、Skerraら, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPlueckthum, Immunol. Revs., 130:151-188(1992)がある。
【0054】
更なる実施態様では、抗体又は抗体フラグメントは、McCaffertyら, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリから分離することができる。Clacksonら, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marksら, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の分離を記述している。続く刊行物は、鎖混合による高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産(Marksら, Bio/Technology, 10:779-783[1992])、並びに非常に大きなファージライブラリを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouseら, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266[1993])を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
DNAはまた、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を、相同的マウス配列に代えて置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrisonら, Proc.Nat.Acad.Sci.,USA,81:6851[1984])、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることで修飾できる。
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0055】
(iii) ヒト化又はヒト抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法は従来からよく知られている。好ましくは、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的には齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンターと共同研究者の方法(Jonesほか, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmannほか, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyenほか, Science, 239:1534-1536[1988])を使用して実施することができる。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的にはいくらかのCDR残基及び場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0056】
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れる(Simsほか, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothiaら, J. Mol. Biol., 196:901[1987])。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Prestaほか, J. Immunol., 151:2623[1993])。
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、CDR残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0057】
別法として、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが今は可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。Jakobovitsら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovitsら, Nature 362:255-258 (1993); Bruggermanら, Year in Immuno., 7:33 (1993)を参照されたい。ヒト抗体は、ファージディスプレーライブラリから取り出すこともできる(Hoogenboomら, J.Mol.Biol., 227:381(1991);Marksら, J.Mol.Biol. 222:581-597[1991])。
【0058】
(iv) 抗体フラグメント
抗体フラグメントを生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらのフラグメントは、無傷の抗体のタンパク分解性消化を介して誘導された(例えば、Morimotoら, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennanら, Science, 229:81[1985]を参照されたい)。しかし、これらのフラグメントは現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体フラグメントは上において検討した抗体ファージライブラリから分離することができる。別法として、Fab'-SHフラグメントは大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')フラグメントを形成することができる(Carterら, Bio/Technology 10:163-167[1992])。他のアプローチ法では、F(ab')フラグメントを組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体フラグメントの生産のための他の方法は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fvフラグメント(scFV)である。WO93/16185を参照のこと。
【0059】
(v) 二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、ErbB2タンパク質の2つの異なるエピトープに結合しうる。例えば、一方のアームがErbB2のドメイン1のエピトープ、例えば7C2/7F3エピトープに結合し、他方が異なるErbB2エピトープ、例えば4D5エピトープに結合しうる。他のこのような抗体ではEGFR、ErbB3及び/又はErbB4に対する結合部位と、ErbB2結合部位とが結合しうる。あるいは、抗ErbB2アームは、ErbB2発現細胞に細胞防御メカニズムを集中させるように、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)に対するFcレセプター、又はT細胞レセプター分子(例えばCD2又はCD3)等の白血球上のトリガー分子に結合するアームと結合しうる。また、二重特異性抗体はErbB2を発現する細胞に細胞障害剤を局在化するためにも使用されうる。これらの抗体はErbB2結合アーム及び細胞障害剤(例えば、サポリン(saporin)、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート又は放射性同位体ハプテン)と結合するアームを有する。二重特異性抗体は全長抗体又は抗体フラグメント(例えばF(ab')二重特異性抗体)として調製することができる。
【0060】
二重特異性抗体を作成する方法は当該分野において既知である。全長二重特異性抗体の伝統的な産生は二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの鎖は異なる特異性を持っている(Millsteinら, Nature, 305:537-539[1983])。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法がWO93/08829及びTrauneckerら、EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
異なったアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原−抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。免疫グロブリン重鎖の融合、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時トランスフェクトする。これにより、組立に使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす態様において、三つのポリペプチドフラグメントの相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が特に重要性を持たないときは、2または3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0061】
このアプローチ法の好適な実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
WO96/27011に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0062】
二特異性抗体とは架橋抗体や「ヘテロ抱合抗体」を含む。例えば、ヘテロ抱合体の一方の抗体がアビジンと結合し、他方はビオチンと結合していても良い。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせること(米国特許第4,676,980号)及びHIV感染の治療(WO91/00360、WO92/200373及びEP03089)等の用途が提案されてる。ヘテロ抱合抗体は適当な架橋方法によって生成できる。当技術分野においては、適切な架橋剤は周知であり、それらは複数の架橋法と共に米国特許第4,676,980号に記されている。
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science, 229:81 (1985) は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルヒド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
【0063】
最近の進歩により、大腸菌からFab'-SH断片の直接の回収が容易になり、これは科学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalabyら,J.Exp.Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')分子の製造を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役させて二重特異性抗体を形成する。従って、形成された二重特異性抗体は、ヒト乳腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を誘発すると同時に、ErbB2レセプターを過剰発現する細胞及び正常ヒトT細胞へ結合することが可能であった。
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な方法もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産された。Kostelnyら, J.Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させられた。抗体ホモダイマーはヒンジ領域で還元されてモノマーを形成し、ついで再酸化させて抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするのに十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)を結合してなる。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーを使用する他の二重特異性抗体断片製造方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。
【0064】
(vi) 所望の特性を有する抗体のスクリーニング
抗体を生産するための技術は上述した。ここで記載されている特徴を有する抗体が選択される。
細胞死を誘発する抗体を選択するために、例えばPI、トリパンブルー又は7AADの取込みにより示される膜インテグリティの損失度合いを対照と比較して求める。好ましいアッセイは「BT474細胞を使用するPI取込みアッセイ」である。このアッセイでは、BT474細胞(アメリカン・タイプ・カルチュア・コレクション[Rockville, MD])が、ダルベッコの変性イーグル培地(D-MEM);10%の熱不活性化FBS(Hyclone)と2mMのL-グルタミンを補ったハムのF-12(50:50)で培養される。(従って、アッセイは補体及び免疫エフェクター細胞の不在下で行われる)。BT474細胞を100x20mm皿に、皿当たり3x10の密度で播種し、一晩付着させたままにする。ついで培地を除去し、新しい培地を単独で、又は10μg/mlの適切なMAbを含む培地と取り替える。細胞を3日間インキュベートする。各処理に続いて、単層をPBSで洗浄し、トリプシン処理により分離する。ついで、1200rpm、5分間、4℃で細胞を遠心分離し、ペレットを3mlのCa2+結合氷冷バッファー(10mMのHepes、pH7.4、140mMのNaCl、2.5mMのCaCl)に再懸濁させ、細胞凝塊除去のために35mmのストレーナキャップ付き12x75チューブ(チューブ当たり1ml、処理グループ当り3チューブ)に等分する。サンプルをFACSCAN(商品名)フローサイトメータとFACSCONVERT(商品名)セルクエスト(CellQuest)ソフトウエア(Becton Dickinson)を使用して分析する。PI取込みにより測定されるような、統計的に有意なレベルの細胞死を誘発する抗体が選択される。
【0065】
アポトーシスを誘発する抗体を選択するためには、「BT474細胞を使用するアネキシン結合アッセイ」が利用できる。BT474細胞を培養し、先の段落において記載したように皿に播種する。ついで培地を回収し、新しい培地を単独で、又は10μg/mlの適切なMAbを含む培地と取り替える。3日間インキュベートした後、単層をPBSで洗浄し、トリプシン処理により分離する。ついで細胞を遠心分離し、Ca2+結合氷冷バッファーに再懸濁させ、細胞死アッセイに対して上述したようにチューブに等分する。ついでチューブに標識化アネキシン(例えばアネキシンV-FTIC)(1μg/ml)を入れる。サンプルをFACSCAN(商品名)フローサイトメータとFACSCONVERT(商品名)セルクエスト(CellQuest)ソフトウエア(Becton Dickinson)を使用して分析する。対照に対して、統計的に有意なレベルのアネキシン結合を誘発する抗体がアポトーシス誘発抗体として選択される。
アネキシン結合アッセイに加えて、「BT474細胞を使用するDNA染色アッセイ」が利用できる。このアッセイを行うために、先の2段落に記載したように関心のある抗体で処理されたBT474細胞を、37℃で2時間、9μg/mlのHOECHST33342(商品名)と共にインキュベートし、ついでMODFITLT(商品名)ソフトウエア(Verity Software House)を使用し、EPICS ELITE(商品名)フローサイトメータ(Coulter Corporation)で分析する。このアッセイを使用し、未処理細胞(最大100%のアポトーシス細胞)よりも2倍又はそれ以上(好ましくは3倍以上)のアポトーシス細胞のパーセンテージの変化を誘発する抗体が、プロアポトーシス抗体として選択される。
【0066】
関心のある抗体により結合したErbB2上のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするため、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Harlow及びDavid Lane編(1988)に記載されているような通常の交差ブロッキングアッセイを実施することができる。別法として、従来から公知の方法により、エピトープマッピングを実施することもできる。
細胞培養においてSKBR3細胞の成長を50-100%阻害する抗ErbB2抗体を同定するために、WO89/06692に記載されているSKBR3アッセイを実施することができる。このアッセイに従って、SKBR3細胞を10%のウシ胎児血清、グルタミン及びペニシリンストレプトマイシンを補ったDMEM及びF12培地の1:1混合物で生育させる。SKBR3細胞を35mmの細胞培養皿で20,000細胞を蒔く(2ml/35mm皿)。1皿当り2.5μg/mlの抗ErbB2抗体を追加する。6日後、未処理細胞と比べた細胞数を電子COULTER(登録商標)細胞カウンタを使用してカウントする。SKBR3細胞の成長を50-100%阻害する抗体が、上述したアポトーシス抗体と組合せるために選択される。
【0067】
(vii) エフェクター機能の設計
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、例えばガンの治療における抗体の効能を増強することが望ましい。例えば、システイン残基をFc領域に導入して、この領域における鎖間ジスルイド結合の形成を許容する。このようにして産生されたホモダイマー抗体は改善されたインターナリゼーション能力及び/又は増加した補体媒介細胞死滅及び抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を有しうる。Caronら, J.Exp.Med. 176:1191-1195 (1992)及びShopes,B. J.Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照されたい。抗腫瘍活性が高められたホモダイマー抗体は、Wolffら, Cancer Research 53:2560-2565(1993)に記載されているようなヘテロ二官能性架橋剤を使用して調製することもできる。別法として、二重Fc領域を有し、よって増強された補体溶解及びADCC能を有しうる抗体を設計することができる。Stevensonら, Anti-cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。
【0068】
(viii) 免疫コンジュゲート
また本発明はここで記載され、細胞障害剤、例えば化学療法剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物または動物由来の酵素活性毒又はそれらのフラグメント)、又は放射性アイソトープ(すなわち、放射性コンジュゲート)に抱合した抗体を含有する免疫コンジュゲートに関する。
このような免疫コンジュゲートの生成に有用な化学療法剤は上述している。使用可能な酵素活性毒及びそのフラグメントには、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性フラグメント、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。種々の放射性核種が放射性コンジュゲート抗ErbB2抗体の生成に利用できる。具体例には212Bi、131I、131In、90Y及び186Reを含む。
【0069】
抗体と細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開94/11026号を参照されたい。
他の実施態様では、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体がコンジュゲートされ得、ここで、抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄化(clearing)剤を使用し、循環から未結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0070】
(ix) 免疫リポソーム
ここで開示されている抗ErbB2抗体は、免疫リポソームとして処方することもできる。抗体を含有するリポソームは、例えばEpsteinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688(1985);Hwangら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030(1980);及び米国特許第4,485,045号及び同4,544,545号に記載されているように、当該分野において既知の方法により調製される。循環時間が増したリポソームは米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含有する脂質組成物を用いた逆相蒸発法により作製することができる。リポソームは孔径が定められたフィルターを通して押し出され、所望の直径を有するリポソームが得られる。本発明の抗体のFab'フラグメントは、ジスルフィド交換反応を介して、Martinら,J. Biol. Chem. 257:286-288(1982)に記載されているようにしてリポソームにコンジュゲートすることができる。場合によっては、化学療法剤はリポソーム内に包含される。Gabizonら, J. National Cancer Inst. 81(19)1484(1989)を参照されたい。
【0071】
(x) 抗体依存性酵素媒介性プロドラッグ治療法(ADEPT)
また、本発明の抗体は、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、WO81/01145を参照)を活性な抗癌剤に転化させるプロドラッグ活性化酵素に抗体をコンジュゲートさせることにより、ADEPTにおいて使用することができる。例えばWO88/07378及び米国特許第4,975,278号を参照されたい。
ADEPTに有用な免疫コンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞毒形態に転化するように、プロドラッグに作用し得る任意の酵素が含まれる。
限定するものではないが、この発明の方法に有用な酵素には、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに転化するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なもの;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの転化に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なノイラミニダーゼ及びβガラクトシダーゼ;βラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化させるのに有用なβラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、「アブザイム」としてもまた公知の酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤に本発明のプロドラッグを転化させるために使用することもできる(例えば、Massey, Nature 328:457-458[1987]を参照)。抗体-アブザイムコンジュゲートは、ここで記載されているようにして、腫瘍細胞個体群にアブザイムを送達するために調製することができる。
【0072】
この発明の酵素は、当該分野においてよく知られている技術、例えば上で検討したヘテロ二官能性架橋試薬を使用することにより、抗ErbB2抗体に共有的に結合させることができる。あるいは、本発明の抗体の少なくとも結合領域を本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部位に結合せしめてなる融合タンパク質を、当該技術においてよく知られている組換えDNA技術を使用して作成することができる(Neubergerら, Nature 312:604-608[1984])。
【0073】
(xi) 抗体-サルベージレセプター結合エピトープ融合
本発明のある実施態様においては、例えば腫瘍浸透性を増大させるために無傷の抗体よりも抗体フラグメントを使用することが望ましい。この場合、その血清半減期を増大させるために抗体フラグメントを改変することが望ましい。これは、例えば、抗体フラグメントにサルベージレセプター結合エピトープを導入することにより(例えば、抗体フラグメント中の適当な領域の突然変異により、あるいはついで抗体フラグメントの何れかの末端又は中央に、例えばDNA又はペプチド合成により融合されるペプチドタグ内にエピトープを導入することにより)、達成できる。
インビボでの半減期が増加したこのような抗体変異体を調製するための組織的方法は、いくつかの工程を含んでなる。第1にはIgG分子のFc領域のサルベージレセプター結合エピトープの配列及び高次構造を同定することが含まれる。ひとたびこのエピトープが同定されると、同定された結合エピトープの配列及び高次構造を含むように、関心のある抗体の配列を修飾する。配列を変異させた後、抗体変異体を検査して元の抗体よりもインビボ半減期が長くなっているかどうか調査する。検査では、抗体変異体がより長いインビボ半減期を有していなかったら、その配列をさらに改変して、同定された結合エピトープの配列及び高次構造が含まれるようにする。改変された抗体をインビボ半減期が長くなっているか否かについて検査し、このプロセスを、より長いインビボ半減期を示す分子が得られるまで続ける。
【0074】
関心のある抗体にこのようにして導入されているサルベージレセプター結合エピトープは、上述したような任意の適切なエピトープであり、その性質は、例えば修飾されている抗体のタイプに依存する。転移は、関心のある抗体がここで記載した生物学的活性を保持するようになされる。
エピトープは、好ましくは、Fcドメインの一又は二つのループからの一又は複数のアミノ酸残基が抗体フラグメントの類似位置に移される領域を構成する。更により好ましくは、Fcドメインの一又は二つのループの3又はそれ以上の残基が移される。更に好ましくは、エピトープはFc領域(例えばIgGの)のCH2ドメインから取上げられ、抗体のCH1、CH3、又はVH領域、あるいは一以上のそのような領域に移される。別法として、エピトープをFc領域のCH2ドメインから取上げ、抗体フラグメントのCL領域又はVL領域、又は両方に移す。
もっとも好ましい実施態様の一つとして、サルベージレセプター結合エピトープは、配列(5’から3’):PKNSSMISNTP(配列番号:3)を含み、場合によってはさらにHQSLGTQ(配列番号:4)、HQNLSDGK(配列番号:6)、又はVISSHLGQ(配列番号:7)からなる群から選択される配列を含み、好ましくは抗体断片はFab又はF(ab')である。他のもっとも好ましい実施態様では、サルベージレセプター結合エピトープは、配列(5’から3’):HQNLSDGK(配列番号:5)、HQNLSDGK(配列番号:6)、又はVISSHLGQ(配列番号:7)及び配列:PKNSSMISNTP(配列番号:3)を含むポリペプチドである。
【0075】
(xii)抗ErbB2抗体の精製
組換え技術を使用する場合、抗体は細胞内、細胞膜周辺腔内に生成されるか、又は培地に直接分泌され得る。抗体が細胞内に生成される場合、第1段階として、粒状屑、宿主細胞又は溶菌断片を、例えば遠心分離又は超遠心分離にかけて取り除く。培地又は溶菌物を遠心分離にかけ、粒状屑、例えば宿主細胞又は溶菌断片を取り除く。Carterら, Bio/Technology 10:163-167(1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌されるタンパク質を単離するための手順について記載している。簡単に述べると、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフロリド(PMSF)の存在下で、30分以上かけて解凍する。細胞屑は遠心分離により除去することができる。抗体が培地へ分泌されている場合、そのような発現系からの上清は、一般的には第1に市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pelliconの限外濾過ユニットを用いて濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めてタンパク質分解を阻害してもよく、抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
【0076】
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティクロマトグラフィを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィが好ましい精製技術である。アフィニティリガンドとしてのプロテインAの適合性は抗体に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmarkら, J. immunol. Meth. 62: 1-13 [1983])。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Gussら, EMBO J. 5: 16571575 [1986])。アフィニティリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他の材料も使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がC3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(登録商標)樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換膜での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム)上でのヘパリンSEPHAROSE(登録商標)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿などの他の技術も、回収される抗体に応じて利用可能である。
任意の予備精製工程に続いて、対象とする抗体と汚染物とを含む混合物に、約2.5-4.5のpHでの溶離バッファーを用いて、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーを施してもよく、好ましくは低い塩濃度(例えば、約0−0.25M塩)で実施される。
【0077】
III.血清中の抗ErbB2抗体濃度の測定
次の非限定アッセイは、これに限らないが血清、羊水、乳、臍帯血清、眼房水び硝子体液、及び眼球硝子体ゲルを含む動物の体液中の特定のrhuMAb HER2(ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体を含むヒト化抗p185HER2モノクローナル抗体)の存在を決定する、及び量を定量するのに利用される。
【0078】
rhuMAb HER2(ヒト化抗p185HER2モノクローナル抗体)のプレート結合活性アッセイ
ここに記載されるrhuMAb HER2を検定する方法は、この様な方法の例として表され、限定する意味ではない。rhuMAb HER2の標準品(Genentech, Inc.,South San Francicco, CA)、コントロール及び血清サンプルを、検定用希釈液(PBS/0.5% BSA/0.05% ポリソルベート20/0.01% チメロサール)で希釈した。標準曲線として使用できる濃度の範囲を測るために、標準rhuMAb HER2の希釈を調製した。サンプルは標準曲線内に落ちるように希釈した。
コーティングバッファーのコート抗原(0.05Mの炭酸ナトリウムバッファー中の組換えp185HER2(Genentech, Inc.))の等分したものを、マイクロタイタープレートのそれぞれのウェルに添加し、2−8℃で12−72時間インキュベートした。コーティング溶液を取り除き、それぞれのウェルを水で6回洗浄し、次いで余分な水を取り除くためにブロットした。
検定希釈液の等分物をそれぞれのウェルに加え、撹拌しながら室温で1−2時間インキュベートした。ウェルを前記段階のようにして洗浄した。
【0079】
希釈した標準物、コントロール及びサンプルの溶液を等分したものをウェルに加え、コーティング抗原に抗体を結合させるために撹拌しながら1時間室温でインキュベートした。ウェルは、前の段階のようにして水で再び洗浄した。
西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(HRP-コンジュゲート、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG Fc;Organon Tekunika カタログ#55253又は等価物)を最高基準と最低基準の間の適切な光学密度範囲を有するように検定希釈液で希釈した。HRPコンジュゲート溶液の等分物をそれぞれのウェルに加え、撹拌しながら1時間室温でインキュベートした。ウェルを前記の段階のようにして水で洗浄した。
基質溶液(PBS中12.5mlの4mM H中o-フェニレンジアミン(OPD)の5mgタブレット(シグマP6912又は等価物))の等分物を各ウェルに加え、発色するために十分な時間(約8−10分)外界温暗所でインキュベートした。反応を4.5N硫酸の等分物で停止させた。光学密度は、検出吸光度490−492nm及び基準吸光度405nmで読取られた。標準曲線のデータがプロットされ、コントロール及びサンプルの結果は標準曲線から決定される。
【0080】
IV. 医薬製剤
本発明で使用される抗体の治療用製剤は、凍結乾燥された製剤又は水性溶液の形態で、任意的な製薬上許容可能なキャリア、賦形剤又は安定剤と、所望の精製度を有する抗体とを混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, A. Osol, Ed., [1980])、調製され保管される。許容できる担体、賦形剤又は安定剤は、用いる投与量及び濃度ではレシピエントに対して無毒性であり、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンズアルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(残基数10個未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、ヒスチジン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリン等の単糖類、二糖類又は他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。好ましい凍結乾燥抗ErbB2抗体の形態は、WO97/04801に記載され、文献明示によりここに取り込む。
【0081】
ここで、製剤は、治療される特定の効能に必要な一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含有し得る。例えば、ある製剤に、血管内皮増殖因子(VEGF)、又はEGFR、ErbB2(例えばErbB2の異なるエピトープに結合する抗体)、ErbB3、ErbB4に結合する抗体をさらに提供することが望ましい。あるいは、又は加えて、組成物は細胞障害剤、サイトカイン又は成長阻害剤を含有してもよい。但し、細胞障害剤はアントラサイクリン誘導体、例えばドキソルビシン又はエピルビシン以外のものである。このような分子は、好適には、意図した目的に有効な量で組合せて存在する。
また活性成分は、例えばコアセルベーション法又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションに捕捉することができる。このような技術はRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, A. Osol編(1980)に開示されている。
インビボ投与に使用される処方では、無菌であるべきである。これは無菌用フィルター膜を通して濾過することにより簡単に達成される。
【0082】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の適切な例には、抗体を含む固体疎水性重合体の半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスはフィルム又はマイクロカプセル等の成形品の形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン−ビニルアセテートおよび乳酸−グリコール酸のようなポリマーは100日間以上にわたって分子を放出させることができるが、或るヒドロゲルはより短い期間タンパク質を放出する。被包性抗体が体内に長時間留まると、37℃で水分に暴露された結果として変性または凝集し、その結果、生物学的活性の消失が生じ、おそらく免疫原性の変化が生じることがある。関与するメカニズムに応じて安定化のために合理的な方策を工夫することができる。例えば、凝集メカニズムがチオ−ジスルフィド交換による分子内S−S結合形成であることが発見された場合は、安定化はスルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分量を制御し、適当な添加剤を使用し、特定のポリマーマトリックス組成物を開発することによって達成することができる。
【0083】
V. 抗ErbB2抗体を用いた治療
本発明によれば、抗ErbB2抗体を、ErbB2タンパク質の過剰発現及び/又は活性化により特徴付けられる種々の病状の治療に使用することが考えられている。病状又は疾患の例には、良性又は悪性の腫瘍(例えば、腎性、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、胃、卵巣、直腸結腸、前立腺、膵臓、肺、陰門、甲状腺、肝臓(hepatic)の癌腫;肉腫;神経膠芽細胞腫、及び様々な種類の頭部及び頸部の腫瘍);白血病及びリンパ悪性腫瘍;ニューロン、神経膠、星状細胞、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、ストロマ及び割腔の疾患;及び炎症、血管由来及び免疫性疾患が含まれる。
本発明の抗体は、ボーラス投与としての静脈内投与、又は一定期間にわたる連続的注入、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下の、関節内、滑膜内、クモ膜下腔内、経口、局所的に、吸入経路など、既知の方法に従ってヒトの患者に投与される。抗体の静脈内又は皮下への投与が好ましい。
【0084】
本発明における治療は、動物又はヒトの患者への抗ErbB2抗体の投与が含まれ、目的の血清濃度が達せられ、治療の間維持されるような投与量又はより少ない投与量を引き続き行うことにより、間欠的になされる。好ましくは、維持投与は、ボーラス投与により行われ、好ましくは、皮下ボーラス投与により患者及びヘルスケアの専門家にとって治療を簡便に、費用効率よく行わせる。
化学治療薬剤(アントラサイクリン(antracycline)以外の)の組合わせ投与が所望される場合、組合わせ投与には、別々の製剤又は単一の医薬製剤を使用する共投与、及びいずれかの順序による連続的な投与が含まれ、その場合、好ましくは両方(又は全ての)活性のある薬剤が、同時に生物学的活性を発揮する期間が存在する。そのような化学治療薬剤の調製及び投与スケジュールは、製造者の指示に従い、又は熟練した実行者より経験的に決定されたものとして使用される。そのような化学療法剤の調製及び投与スケジュールは、製造者による説明書に従って、あるいは熟練開業医によって経験的に決定されて利用することができる。また、そのような化学療法の調製及び投与スケジュールは、Chemotherapy Service Ed., M.C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992)中に記載されている。化学療法剤は、抗体投与の前に又は後に使用されてよく、それらを同時に投与してもよい。抗体は、タモキシフェンのような抗エストロジェン化合物、又はオナプリストン(欧州特許第616812参照)のような抗プロジェストロン化合物と、これらの分子において既知の投与量にて組合わせてもよい。
【0085】
また、EGFR,ErbB3,ErbB4,又は血管内皮成長因子(VEGF)と結合する抗体のような、他のガン関連抗原に対する抗体を投与することも望ましい。あるいは、又は付加的に、二又は複数の抗ErbB2抗体が患者に共投与されてもよい。時には、一又は複数のサイトカインを患者に投与することも有益である。抗ErbB2抗体は成長阻害薬剤と共に共投与されてもよい。例えば、成長阻害薬剤が最初に投与され、抗ErbB2抗体が続いて投与される。しかしながら、同時に投与すること、又は抗ErbB2抗体を最初に投与することを考慮してもよい。成長阻害薬剤の適切な投与量は、現在使用されているもので、成長阻害薬剤及び抗ErbB2抗体の組合わせ作用(相乗作用)のために、低い投与量であってよい。
上記療法に加え、患者は、ガン細胞の外科的な除去及び/又は放射線療法が施されてもよい。
【0086】
疾患の予防又は治療に対し、抗ErbB2抗体の適当な投与量は、治療されべき疾患のタイプ、上記にて明示されたように、疾患の重傷度及び進行度、抗体が予防的又は治療的目的のために投与されるのかどうか、以前の治療、患者の臨床歴、及び抗体に対する反応、及びに主治医の決定権に依存する。抗体は、一度に、又は一連の治療の間、適切に投与される。治療がシリーズによる治療に関する場合、初期投与量は、維持投与量により日ごと又は週ごとであるかに従う。各維持投与によって、初期投与量中の投与抗体量と比較して等抗体量か又はより少ない抗体量が投与される。
疾患のタイプ及び重傷度により、約1μg/kgから15mg/kg(例えば、0.1−20mg/kg)の抗体量が、患者への投与に対する初期候補投与量であり、例えば、一又は複数の別々の投与なのか、又は連続的な注入によるものかに依存する。典型的な日ごとの投与量は、約1μg/kgから100mg/kg又はそれ以上であり、上述した要因に依存する。数日間又はより長い期間に渡る繰り返しの投与においては、条件によるが、望ましい疾患症状の抑制が生じるまで治療が持続される。当該治療の進行は、通常の技術及びアッセイ法により容易に観察される。
【0087】
本発明によると、投薬計画には、静脈又は皮下注入により投与される6mg/kg、8mg/kg、又は12mg/kgの抗ErbB2の初期投与量が含まれ、引き続いて2mg/kgの維持投与量が、静脈注入、静脈内ボーラス注入、皮下注入、又は皮下ボーラス注入により行われる。抗体が、患者により十分に許容される場合、注入の期間を減らしてもよい。
あるいは、本発明は、12mg/kgの抗ErbB2抗体の初期投与、引き続いて6mg/kgの維持投与が3週に一度行われることを含む。
他の投与計画には、8mg/kgの抗ErbB2抗体の初期投与、引き続いての6mg/kgの維持投与が、3週に一度行われることが含まれる。
さらに他の投与計画には、8mg/kgの抗ErbB2抗体、引き続いて6mg/kgを3週に一度の初期投与が含まれる。
また別の投与計画には、8mg/kgの抗ErbB2抗体の初期投与、引き続いての8mg/kgの維持投与量が1週に一度、又は8mg/kgの維持投与量が、2〜3週ごとに一度行われることが含まれる。
他の投与計画として、4mg/kgの抗ErbB2抗体の初期投与量が1、2及び3日のそれぞれで投与され、引き続いて6mg/kgの維持投与量が3週に一度行われうる。
さらなる投与計画には、4mg/kgの抗ErbB2抗体の初期投与、引き続いて2mg/kgを1週に二度の維持投与が行われ、維持投与は3日間隔で行われることが含まれる。
あるいは、本発明には、抗ErbB2抗体の送達が3週の間、一週間ごとに2から3回行われる一サイクルの投与が含まれうる。疾患症状の抑制達成の必要に応じて、好ましくは、その3週間サイクルを繰り返す。
さらに、本発明には、5日間毎日抗ErbB2抗体の送達がなされる、周期的投与計画が含まれる。本発明によると、本周期は、疾患症状の抑制達成の必要に応じて、好ましくは、繰り返し行われる。適当な投与量に関する更なる情報は、以下の実施例にて提供されている。
【0088】
VI. 製造品
本発明の他の実施態様では、前述した疾患の治療に有用な物質を含有する製造品が提供される。製造品は容器、ラベル及びパッケージ挿入物を含んでなる。適切な容器には、例えばボトル、ガラス瓶、シリンジ等が含まれる。容器はガラス又はプラスチックのような様々な材料で形成することができる。容器は病状の治療に有効な組成物を収容しており、滅菌した出入口を有している(例えば、容器は皮下注射針により貫通可能なストッパーを具備する静脈溶液用のバック又はガラス瓶であってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は抗ErbB2抗体である。容器上の又は容器に伴うラベルには、組成物が、選択された病状の治療に使用されることが示されている。製造品は、製薬的に許容可能なバッファー、例えばリン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を収容する第2の容器をさらに具備する。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む、市販及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含んでいてもよい。 さらに、製造品は、例えば、組成物はドキソルビシン又はエピルビシンなどのアントラサイクリン(anthacycline)型の化学治療製剤と組み合わせて使用されるべきではないとの警告を含む使用説明書の包みを含んでもよい。
【0089】
材料の寄託
以下のハイブリドーマ株化細胞を、アメリカン・タイプ・カルチュア・コレクション12301 Parklawn Drive, Rockville, MD, USA(ATCC)に寄託した。
抗体名 ATCC 番号 寄託日
7C2 ATCC HB-12215 1996年10月17日
7F3 ATCC HB-12216 1996年10月17日
4D5 ATCC CRL 10463 1990年 5月24日
2C4 ATCC HB-12697 1999年4月8日
本発明のさらなる詳細を、以下の非限定的な実施例により例証する。
【0090】
(実施例)
実施例1:ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の調製と効果
材料と方法
抗ErbB2モノクローナル抗体 ErbB2の細胞外ドメインに特異的な抗ErbB2IgGκマウスモノクローナル抗体4D5を、Fendlyら, Cancer Research 5o:1550-1558(1990)及びWO89/066920に記載されているようにして生産した。簡単には、Hudziakら, Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)84:7159(1987)に記載されているようにして生産されたNIH3T3/HER2-3400細胞(約1x10ErbB2分子/細胞を発現)を25mMのEDTAを含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)で収集し、BALB/cマウスを免疫化するために使用した。0、2、5及び7週に、0.5mlのPBSに10細胞が入ったものをマウスに腹腔内注射した。32P標識化ErbB2を免疫沈降させた抗血清を有するマウスに、9及び13週に、小麦麦芽凝集素-セファロース(WGA)精製ErbB2膜抽出物を腹腔内注射した。続いて0.1mlのErbB2調製物を静脈内注射し、脾細胞をマウス骨髄腫系X63-Ag8.653と融合させた。ハイブリドーマ上清をELISA及び放射性免疫沈降により、ErbB2結合性についてスクリーニングした。アイソタイプ適合対照として、MOPC-21(IgG1)(Cappell, Durham, NC)を使用した。
【0091】
治療はマウス4D5抗体のヒト化体(ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体)を用いて実施した。ヒト化抗体を、共通ヒト免疫グロブリンIgG(IgG)のフレームワークにマウス4D5抗体の相補性決定領域を挿入して設計した(Carterら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4285-4289[1992])。得られたヒト化抗ErbB2モノクローナル抗体は、p185HER2に対し高い親和性を有し(Dillohiation定数[K]=0.1nmol/L)、インビトロ及びヒト異種移植片において、高レベルのp185HER2を含む乳癌細胞の増殖を顕著に阻害し、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を誘発し、広範な治療を前に受けたErbB2過剰発現転移性乳癌患者において、単一の薬剤として臨床的に活性であることが見出された。ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体は、培地に抗体を分泌する、大規模増殖させた遺伝子操作されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞により生産される。抗体は標準的なクロマトグラフィーと濾過方法を使用してCHO培地から精製される。この研究で使用される抗体の各ロットをアッセイし、同一性、純度及び効能、並びに滅菌性と安全性に関する食品医薬品局の要求を満たしていることを証明した。
【0092】
適格基準 患者は研究許可のために、次の基準の全てに当てはまることを満たさなくてはならなかった。
− 転移性乳癌
− ErbB2(HER2)オンコジーンの過剰発現(免疫組織化学又は蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)により測定して2+ないし3+)。[ErbB2の腫瘍発現は、先に記載されているようにして(Slamonら, [1987]及び[1989],前掲)、患者のパラフィン保存腫瘍ブロックから調製された薄片を免疫組織化学分析することにより測定することができる。使用された一次検出抗体は、治療に使用されるヒト化抗体と同一のCDRを有するマウス4D5 MAbである。腫瘍細胞の少なくとも25%がp185HER2に特徴的な膜染色を示す場合、腫瘍はErbB2を過剰発現すると考えられる]。
− 放射線撮影、身体検査又は写真により、二次元的に測定可能な病気(細胞溶解性骨病変を含む)
測定可能な病気とは、身体検査、X線(単純フィルム)、コンピュータ化断層撮影(CT)、核磁気共鳴映像(MRI)、超音波又は写真により、2つの直交直径において再現可能に測定できるあらゆる塊と定義されるものである。
骨芽細胞転移、胸膜滲出、又は腹水症は測定可能であるとはみなされなかった。測定可能な病変は最も大きな直径が少なくとも1cmあるものでなければならない。転移性の病気の評価部位の列挙及び評価部位(例えば肺)における病変の数を適切な症例記録表(CRF)に記録しなければならなかった。多くの肺又は肝臓の病変が存在した場合、その部位の最も大きい6つの障害を追随した。
− 文書による告知同意書を理解する能力とその署名
− 18才以上の女性
− 血液、腎臓、肝臓及び代謝機能の研究所評価の審査により証明される細胞障害化学療法を同時に受けるのに適切な候補者
【0093】
除外基準 以下の事項のいずれかを有する患者は研究対象から除外された:
− 以前に転移性乳癌に対する細胞障害化学療法を受けたことのあるもの
患者は、以前に転移性病気に対するホルモン療法(例えば、タモキシフェン)、又はアジュバント設定(セッティング)での細胞障害治療を受けていてもよい。
− 治療を受けたことのない悪性腫瘍が同時にあるもの
− Karnofskyスケールでのパフォーマンス状態が60%未満であるもの
− 妊娠中又は授乳中の女性;調査員が決定した有効な避妊をしていないならば、妊娠の可能性がある女性
− 左右双方に乳癌のあるもの(両方の主要な腫瘍が2+ないしは3+のHER2過剰発現を有していなければならないか、転移性部位が2+ないしは3+のHER2過剰発現を有していなければならない)
− 研究対象になる前の30日以内に、研究中又は非認可の薬剤を使用したもの
− 脳に臨床的に不安定な又は未治療の転移があるもの(例えば放射線療法を必要とするもの)
上述の基準に基づき、469人の患者を選択し、研究に受け入れた。患者の半分(化学療法により階級分けした)は無作為化され、更にハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体を受けた(以下参照)。
【0094】
投与及び投与量
抗ErbB2抗体
0日には、90分以上の時間をかけて、4mg/kgのヒト化抗ErbB2抗体(ハーセプチン(登録商標),H)を静脈投与した。7日目に開始して、患者は90分以上の時間をかけて、毎週2mg/kgの抗体(静脈内)の投与を受けた。
【0095】
化学療法
病気が進行していない場合、患者は、2つの化学療法の一つを最小6サイクル受けた:a)患者がアジュバント設定でアントラサイクリン療法を受けていなかったらシクロホスファミド及びドキソルビシン又はエピルビシン(AC)、又はb)患者がアジュバント設定で何らかのアントラサイクリン療法を受けていたらパクリタキセル(T,タキソール(登録商標))。ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の最初の投与は、いずれかの化学療法の最初のサイクルより24時間先行した。抗体の最初の投与が十分に許容された場合は、抗体の次の投与は化学療法剤投与前に直ちになされた。抗体の最初の投与が十分に許容されなかった場合は、化学療法剤投与24時間前に次の注入を継続した。治療に当たっている医師の意見で、治療により恩恵を受け続けているならば、患者は6サイクルを越えて化学療法を受け続けることが許容された。
【0096】
シクロホスファミド(600mg/m)を、最小3分間かけて静脈内に押し入れるか、又は最大2時間かけて注入して与えた。
施設内プロトコールに従い、ドキソルビシン(60mg/m)又はエピルビシン(75mg/m)を、最小3〜5分間かけて静脈内に押し入れるか、又は最大2時間かけて注入して与えた。
パクリタキセル(タキソール(登録商標))を、静脈投与により3時間以上かけて175mg/mの投与量で与えた。パクリタキセルを受けた全ての患者には、パクリタキセルの投与12及び6時間前に経口的に20mgx2のデキサメタゾン(又はその等価物);パクリタキセルの投与30分前に静脈内に50mgのジフェンヒドラミン(又はその等価物)、及びパクリタキセルの投与30分前に静脈内に300mgのジメチジン(又は他のHブロッカー)を前投与した。
【0097】
応答基準
進行性の病気
任意の測定可能な病変が25%又はそれ以上増加する客観的証拠。また、進行性の病気には新しい病変が現れた場合の例も含まれる。骨病変の場合、進行度は、単純フィルム、CT、MRIによる客観的測定において25%の増加;骨折によらない徴候となる新しい病変;又は苦痛緩和放射線治療の必要性により、定義される。
完全応答
最小4週間で、放射線撮影及び/又は視覚的に明らかな腫瘍が全て消失。皮膚及び胸壁の完全反応がバイオプシーにより確認されなければならない。
【0098】
部分的応答
最小4週間で、全ての測定可能な病変の直交直径の生成物の合計が少なくとも50%低減。新しい病変は現れないか、又はいずれの病変も大きくならない。
僅かな応答
全ての測定可能な病変の直交直径の生成物の合計が25%ないしは49%低減。新しい病変は現れないか、又はいずれの病変も大きくならない。
【0099】
安定な病気
測定可能な病変の大きさが25%を越えて変化しない。病変は現れなかった。
腫瘍の進行時間(TTP)を治療の開始から進行まで算出した。応答速度の信頼限界は単一割合に対する厳密な方法を使用して算出した(Fleiss, JL, Statistical Methods for Rates and Proportions (2版), New York, Wiley, 1981, pp13-17)。
【0100】
結果
10.5ヶ月の追跡期間中央値で病気の進行時間(月単位のTTP)と応答速度(RR)を評価した結果、全体的に重篤な有害事象(AE)を増加させることなく、ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体により化学療法効果が顕著に増強されていることが示された:
表1
ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の効果
記録数 TTP(月) RR(%) AE(%)
CRx 234 5.5 36.2 66
CRx+H 235 8.6* 62.00** 69
AC 145 6.5 42.1 71
AC+H 146 9.0 64.9 68
T 89 4.2 25.0 59
T+H 89 7.1 57.3 70
*log-rankテストでp<0.001; **Xテストでp<0.01; CRx:化学療法;
AC:アントラサイクリン/シクロホスファミド治療; H:ハーセプチン(登録商標); T:タキソール(登録商標)
【0101】
アントラサイクリンで観察されたものと同様の心筋機能不全症候群が、AC単独(3%)、T(0%)又はT+H(2%)の場合よりも、AC+T(18% グレード3/4)の組合せ治療の場合に、より一般的であることが報告されている。
これらのデータには、化学療法と抗ErbB2抗体治療を組合せると、応答速度と病気の進行度の評価により評価される、臨床的恩恵が顕著に増加することが示されている。しかしながら、ドキソルビシン又はエピルビシンによる心臓への副作用が増加するため、抗ErbB2抗体治療にアントラサイクリンを組合せて使用することは禁忌される。危険性と恩恵を考慮した結果、ハーセプチン(登録商標)とパクリタキセル(タキソール(登録商標))との組合せ治療が好ましい。
【0102】
実施例2:抗ErbB2抗体(ハーセプチン(登録商標))薬物動態学的及び薬力学的性質
ハーセプチン(登録商標)、抗ErbB2抗体は、実施例1において提供される基準に従って選択されるヒト患者へ静脈内注入することにより投与された。4mg/kg ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の初期投与量が、静脈内注入により投与され、2mg/kg ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の数週間にわたる週ごとの静脈内投与が引き続き行われる。213人の患者がこの治療計画を開始し、血清薬物濃度は、生じた疾患が急速に進行している治療打ち切り患者として選ばれた90人弱の患者において8週間にわたり得られた。治療を開始した213人の患者のうち、血清トラフ濃度データは、12週において80人の患者に、16週において77人の患者に、20週において44人の患者に、24週において51人の患者に、28週において25人の患者に、32週において23人の患者に、36週において37人の患者にて利用可能であった。
【0103】
第0週から36週のハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体トラフ血清濃度
第2週から第36週までのハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体トラフ血清濃度(μg/ml、平均値±標準偏差)が、図3にプロットされている(黒塗り丸)。急速な疾患の進行によりプログラムが中断された患者からのデータはこの解析から除外されたので、患者の数は完全に一定にした。トラフ血清濃度は、12週間を通じて増加する傾向にあり、その期間後に定常値になる傾向にあった。
【0104】
第1週から8週のハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体トラフ及びピーク値血清濃度
いくつかのハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体血清濃度データは、最初の213人の患者のうち212人に対して利用可能であった。最初のハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の注入を反映するトラフ及びピーク値の血清濃度データは、212人中195人の患者において利用可能であった。7回の注入において、トラフ血清濃度データは、212人中137人の患者において、ピーク血清濃度データは、212人中114人の患者において利用可能であった。表2は、治療の最初の8週間のトラフ及びピーク血清濃度から統計値のまとめを示す。ピークサンプルは、ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体投与の終わった直後にサンプリングされ;トラフサンプルは、引き続く投与に先立ち(即ち、1週間後)サンプリングされた。ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の血清濃度はここで開示されたように決定された。
【0105】

【0106】
表2のデータは、時間が経つにつれて、トラフ血清濃度の増加が見られたことを示唆する。研究対象とされた多くの患者の中に、トラフ濃度が第2週から第8週の間に20μg/mlを超えない18人の患者がいた。20μg/mlのハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体トラフ血清濃度は、前に行われた動物での薬理的研究及び臨床試験での調査的解析に基づくこれらの研究での名目上の目安であった。
【0107】
患者の反応状態は、ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の血清濃度に関連して評価された。本目的に対し、平均の血清濃度(トラフ及びピーク値の平均値)は様々な時間及び患者の反応状態について算出された(患者の反応状態は独立の反応評価委員会により決定された)。第2週及び第8週の間の血清濃度の増加は、非反応者よりも反応者においてより顕著のようであり、反応状態とハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の血清濃度との間に関連性が存在することを示唆するものである。第2週におけるトラフ血清濃度の統計学的解析(分散分析)と、反応状態に関連する第7週と第8週の平均値は、反応状態と第7週と8週の平均トラフとの間に高い有意な関連性を示した(p<0.001)。この結果により、反応者と非反応者におけるトラフ血清濃度(第7週と8週の平均トラフ)の間において有意な相違が存在することが示された。トラフ濃度は、反応者において60±20μg/mlであったのに対し、非反応者では44±25μg/mlであった(平均値±標準偏差)。HER2の過剰発現レベル及び転移性部位のタイプは、トラフ血清濃度における顕著な相違と関連性があった。第2週において、2+HER2過剰発現の患者は(n=40、平均値=28.8μg/ml、標準偏差=10.4)、3+HER2過剰発現の患者(n=155、平均値=24.1μg/ml、標準偏差=13.1)よりも、顕著に高いトラフ血清濃度を有していた。第7週と第8週における平均のトラフ血清濃度のこの違いは、もはや統計学的に重要ではなかった。さらに、第2週において、表層性疾患の患者(n=12、平均値=34.1μg/ml、標準偏差=12.0)は、内臓性疾患の患者(n=183、平均値=24.4μg/ml、標準偏差=12.6)に比べて顕著に高いトラフ血清濃度を示した。第7週と8週の平均トラフ濃度におけるこの違いは、顕著であった。これらのデータは、様々な疾患プロフィールを持つヒト患者に対して、第2週及び7/8週の間の平均トラフ血清濃度において増加が生じることを示す。
【0108】
次いで、同様に計画された研究であるが、ヒト乳ガン患者が、負荷投与量8mg/kgで治療され、週毎に維持投与量4mg/kgが施された。この予備的なヒトに対する研究結果は、8mg/kgの負荷:4mg/kgの週毎の維持投与計画が患者のガン容積を減少させるのに効果的であったことを示した。
本実施例において開示されたデータは、目安となる血清濃度に素早く到達させるような抗体のフロントローディングが、改善された結果に結びつき得ることを示唆する。
【0109】
実施例3:ハーセプチン(HERCEPTIN(登録商標))抗ErbB2抗体の静脈内ボーラス送達と皮下注入がマウスの腫瘍体積を効果的に減少させる
静脈注射又は皮下注射の何れかによる、ヒト化抗ErbB2抗体(HERCEPTIN(登録商標)、調製については実施例1を参照のこと)の注入又はボーラス送達の効果を検査した。本実験の目的は、皮下送達が実施可能であるかどうかと、HER2遺伝子を過剰発現する細胞株を接種した動物における転移性乳癌の治療に有用であるかどうかを問うためであった。以下に詳細を示した結果は、静脈及び皮下注入とボーラス送達が実施可能な治療方法であることを示している。
静脈ボーラス投与に対する皮下注入の関数として腫瘍体積を比較する、HER2遺伝子(BT-474細胞由来のBT-474M1、ATCC受託番号HTB-20)を自然に過剰発現するヒト乳癌細胞株を組み込んでいるヌードマウス異種移植モデルでの実験を次のようにして実施した。最初の実験では、無胸腺のヌードnu nuの7−9週齢のメスのマウスをタコニック社(Germantown, NY)から取得した。腫瘍発生を開始させるために、各マウスに、Matrigel(登録商標)に懸濁させた3x10個のBT474M1細胞を皮下接種した。腫瘍塊がおよそ100mmの体積に達したとき、動物を4組の治療グループに無作為に分類した。グループを表3に従って治療した。

【0110】
移植された腫瘍細胞の増殖を促進するために、動物を、投与開始9日前に皮下徐放性エストロゲンペレットによってエストロゲンに暴露した。その動物に治療開始8日前にBT474M1細胞を接種し、腫瘍を成長させた。ついで、その動物を表3に示したように無関連抗体E25(HER2レセプターに対して非特異的であるがモノクローナルIgGクラスのメンバーである)又は試験抗体のハーセプチン(HERCEPTIN(登録商標))抗ErbB2抗体を用いて治療した。投与量は、皮下ポンプ注入又は静脈ボーラス送達により、1μg/ml又は20μg/mlの何れかの、ハーセプチン(登録商標)の標的血清中濃度を達成するように選択した。実験グループを35日まで治療した。ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体を3マウス/グループ/時点を使用して毎週(グループ4への投与の直ぐ前)測定した。抗ErbB2抗体濃度は、標準的な技術を使用するここに開示した方法によって測定した。本実験において、腫瘍体積は、投与が始まる2日前と実験の6日から35日まで毎週2回測定し、そのデータは以下に表にする。腫瘍は3次元を測定し、体積をmmで表した。未治療のコントロール動物に対する被験動物の腫瘍体積の統計的な比較(ANOVA)によって効果を定量した。
以下の表4に示すように、示された投薬方法によるハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体を用いてのBT474M1細胞を持つマウスの治療により腫瘍の成長が有意に阻害された。全てのハーセプチン(登録商標)治療グループは、コントロールグループに対して同様の腫瘍成長阻害性を示した。用量反応は認められなかった。

上で表にされている結果は、およそ2μg/mlの血清中濃度の維持がこの実験において20μg/mlの濃度と同じく効果的であったことを示している。その結果は、皮下注入による投薬が静脈ボーラス投与と同じほど効果的であり、同様のトラフ血清濃度を達成したことを示している。また、その結果は実験した投薬レベルがこのモデルの用量反応曲線の上端にあり、皮下投与は乳癌腫瘍の治療に効果的であることをまた示している。このように、維持量の皮下投与がハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体治療法の一部として実施可能である。
【0111】
実施例4:ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の静脈内ボーラス及び皮下ボーラス送達はマウスの腫瘍体積を効果的に減少させる
皮下ボーラス送達は便利であり、患者及び医療専門家にとって費用効率がよい。この実施例に開示された実験の結果は、皮下ボーラス送達が、マウスにおける乳癌腫瘍サイズの低減において静脈ボーラス送達と同じほど効果的であったことを示している。
この実験は、静脈ボーラス及び皮下注入送達の比較に対してここで実施例3において開示したようにして構成した。徐放性エストロゲン移植片を実施例3に記載した腫瘍細胞接種の1日前に皮下的に挿入した。腫瘍細胞の接種の6日後に、最初の腫瘍測定を実施した。腫瘍細胞の接種の7日後に、コントロール抗体又はハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の最初の投与量を送達した。動物グループ、送達のタイプ、負荷量及び維持量は表4に記載する。4週間にわたって毎週1回動物に投薬した。

マウスは表4の情報に従って、実施例3に開示した方法を使用して治療した。ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の血清中濃度を、ここに記載された手順に従い標準的な方法を用いて各週の静脈維持投与の前に毎週測定した。コントロールE25抗体の血清中濃度は標準的な免疫検査法によって定量した。表6はハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体血清中濃度の経時的な増加を示している。
【0112】

表7は、表6に示された血清中抗体濃度を達成したグループ1−5に対する静脈ボーラス送達と皮下ボーラス送達の相対的な効果を示している。この実験に対して、効果は腫瘍体積の減少として測定した。腫瘍体積は毎週2回測定した。

図4A及び図4Bは腫瘍体積の経時的変化をプロットしたグラフであり、そのデータの一部は表7に見いだされる。図4Aは腫瘍体積と時間の線形プロットである。図4Bは同じデータの半対数プロットであり、試験のポイントがより明瞭に分かるようにしている。表7と図4A及び図4Bのデータは、ハーセプチン治療グループの間に用量関連反応は観察されなかったが、皮下ボーラス投与が静脈ボーラス投与と同じく効果的であり、同様のトラフ血清濃度を達成したことを示している。
【0113】
実施例5:抗ErbB2抗体の静脈内及び皮下送達のための投薬法
本発明によれば、抗ErbB2抗体(例えばハーセプチン(登録商標))の送達方法は、およそ4週かそれ以下、好ましくは3週かそれ以下、より好ましくは2週かそれ以下、最も好ましくは1週かそれ以下、例えば1日以下で目標血清中濃度を達成する薬剤の大なるフロントローディングを含む。本発明によれば、この初期投与についで、等しい又はより少量のその後の投薬によって目標血清中濃度を維持する投与が続く。本発明の方法の利点は、維持投与が頻繁でなくなるか及び/又は皮下注射によって送達されうることにあり、抗体を投与する患者と医療専門家にとって本発明の治療方法を簡便で費用効率が高いものとする。加えて、皮下維持投薬方法は、患者の化学療法が静脈注射による他の薬物の送達を必要としているときには静脈投与(例えば点滴)によって中断されうる。
次の投薬計画を試験するために、上記の実施例1に開示した基準に従ってヒト被験者が選択される。初期投与の回数は、およそ4週かそれ以下、好ましくは3週かそれ以下、より好ましくは2週かそれ以下、最も好ましくは1週かそれ以下、例えば1日以下で効果的な目標血清中濃度を達成するのに十分な一又は複数回の投与である。維持投与の回数は腫瘍体積の減少のような、疾患の徴候の抑止を達成するのに十分な一又は複数回の投与でありうる。維持投与は、初期投与(単回又は複数回)に等しいかそれより少なく、大なるフロントローディングをもたらす投薬計画によりハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体を投与するという本発明の目的と一致する。ここに開示された特定の薬物送達方法は本発明の代表例であり、限定されることを意味するものではない。
一試験では、6mg/kg、8mg/kg又は12mg/kgの初期投与量のハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体が静脈又は皮下注射によってヒト患者に送達される。好ましくは、およそ10−20μg/mlのハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の目標トラフ血清濃度が達成され(治療グループの全患者での平均)、初期投与量に等しいかそれより少ない抗ErbB2抗体のその後の投与により維持される。一方法では、目標トラフ血清濃度は少なくとも8週間の静脈又は皮下注射による2mg/kgのハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の毎週1回の送達によって達成され維持される。あるいは、これに対して又はここに開示した任意の投薬計画に対して、皮下ポンプによる皮下連続注入が、その後の維持投与量を送達するために使用される。
【0114】
他の方法では、8mg/kgの初期(フロントローディング)投与量のハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体が静脈注射(注入又はボーラス注射)又は皮下ボーラス注射によって送達される。これに、治療グループ全体について平均化された、およそ10−20μg/mlのトラフ血清濃度を維持するために3週間の間隔で6mg/kgの、静脈ボーラス注射、静脈注入、皮下注入又は皮下ボーラス注射が続く。
他の方法では、12mg/kgの初期(フロントローディング)投与量のハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体が静脈注射(注入又はボーラス注射)又は皮下ボーラス注射によって送達される。これに、およそ10−20μg/mlのトラフ血清濃度を維持するために3週間の間隔で6mg/kgの、静脈ボーラス注射、静脈注入、皮下注入又は皮下ボーラス注射が続く。
更に他の方法では、8mg/kgの初期(フロントローディング)投与量のハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体が静脈注入又はボーラス注射、あるいは好ましくは皮下ボーラス注射又は注入によって送達される。これには、およそ10−20μg/mlのハーセプチン(登録商標)抗ErbB2のトラフ血清濃度を維持するために毎週8mg/kg又は2−3週間当たり8mg/kgの投与が続く。維持量は、静脈注入又はボーラス注射、好ましくは皮下注入又はボーラス注射によって送達される。
他の方法では、フロントローディング初期投薬は一連の静脈又は皮下注射、例えば1注射当たり少なくとも1mg/kgの1、2及び3日のそれぞれに1回の注射であり(ここで合計の初期注射によって送達される抗ErbB2抗体の量は4mg/kgより多い)、ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の目標とするトラフ血清濃度(例えばおよそ10−20μg/ml)を維持するためにそれぞれ3週間隔で1回の6mg/kgの維持投与が続く。維持量は、静脈注入又はボーラス注射あるいは皮下注入又は皮下ボーラス注射によって送達される。
更に他の方法では、フロントローディングは、連続する5日のそれぞれの少なくとも1mg/kg、好ましくは4mg/kgの静脈内注入により、これに疾患の徴候の抑止を達成するのに十分な回数、このサイクルを繰り返すことが続く。初期投与量又は用量群に続いて、患者が耐容性を示すならば皮下注入又はボーラス注射により続く投与量が送達されうる。このような皮下送達は簡便であり患者と投薬する医療専門家にとって費用効率が高い。
【0115】
更に他の方法では、ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体は、3週間の間、1週当たり少なくとも2回の静脈内注入として最初に送達され、有効なトラフ血清濃度のハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体を維持するためにこのサイクルの繰り返しが続く。投与量は少なくとも4mg/kg、好ましくは少なくとも5mg/kgの抗ErbB2抗体である。維持薬剤送達は静脈内か皮下でありうる。
動物又は患者が初期投与の間と後において抗体に対して耐容性を示す場合は、続く投与量の送達は皮下でよく、よって患者及び医療専門家に対して多大な簡便性と費用効率をもたらす。
動物実験では、静脈内又は皮下注射により送達される4mg/kgを越え、好ましくは5mg/kgを越える初期投与に、およそ10−20μg/mlのトラフ血清濃度を維持するために毎週当たり2回(3日あける)の2mg/kgの皮下ボーラス注射が続く。加えて、動物又は患者が抗体に耐容性を示すことが知られている場合、初期投与量のハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体は、場合によっては、また好ましくは、皮下維持注射が続く皮下ボーラス注射によって送達可能である。
目的の血清中濃度は動物実験とヒトの治験を比較するためにここに開示されている。ここに提供される開示は、効果的な目標のトラフ血清濃度をもたらすフロントローディング送達投薬計画を選択するように使用者を導く。
ここに開示された本発明の方法は場合によっては疾患の徴候の抑制を達成するために化学療法剤(アントラサイクリン誘導体以外)と組み合わせてハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体を送達することを含む。化学療法剤はハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体と共に又は別個に、異なった投与スケジュールに従って送達できる。例えば、タキソール(TAXOL(登録商標))と共にハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体を皮下送達することが本発明に含まれる。加えて、3週毎の6mg/kgのハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の静脈内又は皮下注射が続く、8mg/kgのハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体の静脈内又は皮下注射による投与が、化学療法剤、例えばタキソイド(例えば3週毎のパクリタキセル175mg/m2)又はアントラサイクリン誘導体(例えば3週毎の60mg/m2のドキソルビシン又は75mg/m2のエピルビシン)と組み合わせてなされる。場合によっては、アントラサイクリン誘導体が投与される場合、心臓保護剤(例えば、3週毎の600mg/m2のシクロホスファミド)がまた投与される。他の併用療法では、抗ErbB2抗体は、4mg/kgを越え、好ましくは5mg/kgを越え、より好ましくは少なくとも8mg/kgを越える負荷量で投与される。負荷量には少なくとも毎週2mg/kg、好ましくは3週毎に6mg/kgの維持量が続く。併用療法は抗ErbB2抗体での治療の間のタキソイドの投与を含む。本発明の一実施態様では、タキソイドはパクリタキセルであり、70−100mg/m/週の用量で投与される。本発明の他の実施態様によれば、タキソイドはドセタキセルであり、30−70mg/m/週の用量で投与される。
【0116】
実施例6:パクリタキセルと組み合わせて3週毎に静脈内投与されたハーセプチン(登録商標)
現在、ハーセプチン(登録商標)の推奨投与量は毎週1回で2mg/kgである。患者にはパクリタキセル(3週毎に175mg/m)と共に、毎週ではなく3週毎にハーセプチン(登録商標)が投与される。提案された治療法のシミュレーションは、血清中濃度が過去のハーセプチン(登録商標)IV臨床試験の目標トラフ血清濃度の範囲(10−20mcg/ml)で、17mcg/mlとなることを示唆している。最初の12人の患者のPKパラメータを評価した後、暴露が不十分であると感じられたら、残りの12人の患者に対して投与量を3週毎に8mg/kgまで増加させる。
試験対象患者基準
1)18歳以上の女性
2)組織学的に確認されたErbB2過剰発現転移性乳癌
3)転移性疾患と新たに診断された患者
4)70%以上のカルノフスキー評価指標(Karnofsky performance status)を持つこと
5)患者は権利を毀損されずに、いかなる時にでも実験を中止する権利を有しているという理解をもって、あらゆる実験の特定のスクリーニング手順の前に文書による告知同意を行うこと
【0117】
試験除外基準
1)妊娠中又は授乳中の女性
2)(1)外科的に不妊でないか(2)経口避妊、子宮内器具又は殺精子ゼリーと共に避妊遮断法のような十分な避妊手段を使用していない出産の可能性のある女性
3)CNS転移の臨床又は放射線的証拠
4)あらゆる重大な心臓病の病歴
5)LVEF≦50%
6)あらゆる治療環境で以前にタキサンでの治療を受けていないこと。
7)次の異常な血液学的基準値の何れか:
−9g/dl未満のHb
−3.0x10/l未満のWBC
−1.5x10/l未満の顆粒球
−100x10/l未満の血小板
8)次の異常な基準肝機能試験の何れか:
−1.5xULN(正常な上限)を越える血清中ビリルビン
−2.5xULN(肝臓又は骨転移ならば4.0xULNを越える)を越えるALT及び/又はAST
−2.5xULN(肝臓又は骨転移ならば4.0xULNを越える)を越えるアルカリホスファターゼ
9)次の異常な基準腎機能試験:
−1.5xULNを越える血清中クレアチニン
10)治験研究への患者の参加を排除する他の深刻な医学的症状の経歴。
【0118】
ハーセプチン(登録商標)負荷量と計画:最初の投薬に対して8mg/kg。維持量と計画:3週毎に6mg/kg
パクリタキセル−3時間の注入として3週毎に6サイクルの175mg/mIV
注意事項:治療の最初のサイクルでは、パクリタキセルはハーセプチン(登録商標)の8時間前に投与してパクリタキセル単独のPKを定量する。ハーセプチン(登録商標)は最初のサイクルの間だけパクリタキセルの8時間後に投与する。続く治療サイクルでは、ハーセプチン(登録商標)はパクリタキセルの前に投与する。
この実験の全期間は18週である。研究患者は6回までの全ハーセプチン(登録商標)投薬を受ける。最後の患者がパクリタキセルの最後のサイクルを受けた後に、安全と薬物動態学的分析のためのデータ収集を停止し、実験を終了して特定の治療をプロトコル化する。実験の患者は治験研究者の裁量によってハーセプチン(登録商標)+/−パクリタキセルの投薬を継続して受けることができる。
上記の治療方法は、まれにハーセプチン(登録商標)が患者に投与されるにもかかわらず、転移性乳癌の治療に効果的であると考えられる。
ここに示し詳細に開示した本発明の特定の側面と実施態様は十分に目的を達成することができ、ここに先に述べられた利点をもたらすものであるが、それは本発明の現在の好ましい実施態様の幾つかを単に例証するものであって、添付の特許請求の範囲に記載されたもの以外の限定を、示した方法と製造品の詳細に加えることを意図するものではないことが理解されなければならない。明細書中の全ての引用文献の開示は出典明示によってここに明示的に取り込む。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】切断変異体分析法及び部位特異的突然変異誘発(Nakamuraら, J. of Virology 67(10):6179-6191[1993年10月];Renzら, J. Cell Biol. 125(6):1395-1406[1994年6月])により決定されたErbB2の細胞外ドメインのエピトープマッピングを示す。抗増殖性MAbs 4D5及び3H4は、膜貫通ドメインに隣接して結合している。種々のErbB2-ECD切断又は点変異を、ポリメラーゼ連鎖反応法を使用してcDNAから調製した。ErbB2変異体は、哺乳類発現プラスミドにおけるgD融合タンパク質として発現された。この発現プラスミドとして、挿入cDNAの下流に位置するポリアデニル化シグナルとSV40末端を有するサイトメガロウイルスのプロモーター/エンハンサーが使用される。プラスミドDNAを293S細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション1日後、細胞を、35Sメチオニン及び35Sシステインを各々25uCiと、透析されたウシ胎児血清を1%含むメチオニン及びシステインフリーの低グルコースDMEM中で、一晩かけて代謝標識した。上清を回収し、ErbB2 MAb又は対照抗体のいずれかを上清に添加し、4℃で2−4時間インキュベートした。複合体を沈殿させ、10-20%のトリシンSDS勾配ゲルに塗布し、100Vで電気泳動にかけた。ゲルは膜上にエレクトロブロットされ、これをオートラジオグラフィーで分析した。配列番号:8及び9が、それぞれ3H4及び4D5エピトープを示すものである。
【図2】ErbB2のドメイン1のアミノ酸配列(配列番号:1)に下線を付して示すものである。太字のアミノ酸は欠失マッピングにより決定されたMAb 7C2及び7F3により認識されたエピトープ、すなわち「7C2/7F3エピトープ」(配列番号:2)の位置を示す。
【図3】ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体を4mg/kgの初期投与量に続いて毎週2mg/kgで用いて治療されたErbB2過剰発現患者に対する2週目から36週目の週による抗ErbB抗体(ハーセプチン(登録商標))トラフ血清濃度(μg/ml、平均±SE、黒塗り丸)のグラフである。それぞれの時点の患者の数は、「n」(白い四角)で表した。
【図4】図4Aは、ハーセプチン(登録商標)抗ErbB2抗体を用いて治療したマウスの経時的腫瘍体積の変化のグラフである。図4Bは、治療された動物の腫瘍耐性記の変化をより分かりやくすくした、図4Aと同じデータの半対数グラフである。
【図5】マウスモノクローナル抗体2C4の可変軽鎖(V)(図5A)及び可変重鎖(V)(図5B)ドメインのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号10及び配列番号11)の並びを表し;ヒトかFabバージョン574のVL及びVHドメイン(それぞれ、配列番号12及び13)、及びヒトV及びVコンセンサスフレームワーク(Hum κ1、ライトカッパサブグループI;HumIII、ヘビーカッパサブグループIII)(それぞれ、配列番号14及び15)。星印はヒト化Fabバージョン574とマウスモノクローナル抗体2C4との間、又はヒト化Fabバージョン574とヒトフレームワークとの間での違いを示す。相補性決定領域(CDR)括弧内にある。変異ArgH71Val、AspH73Arg及びIleH69Leuを有するヒト化Fabバージョン574は、元のキメラ2C4Fab断片に戻す結合を有することが示される。さらなるFR及び/又はCDR領域、例えばL2、L54、L55、L56、H35及び/又はH48は、ヒト化抗体の更なる精製又は増強された結合のために修飾されうる(例えば、次のIle2Thr;ArgL54Leu;TyrL55Glu;ThrL56Ser;AspH35Ser;及びValH48Ileのような置換)。あるいは、又はさらに、ヒト化抗体は、その親和性及び/又は他の生物学的活性をさらに改善又は精製するために親和性成熟されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ErbB2レセプターの過剰発現により特徴付けられる疾患と推測される又は診断されたヒト患者の治療方法であって、ヒト患者に抗ErbB2抗体の有効量を投与することを含み:
少なくとも約5mg/kgの抗ErbB2抗体の初期投与量を患者に投与し;さらに
抗体の複数回のその後の投与量を初期投与量とおよそ同量又はより少量である量で患者に投与することを含む方法。
【請求項2】
初期投与量が、少なくとも約6mg/kgである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
初期投与量が、少なくとも約8mg/kgである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
初期投与量が、少なくとも約12mg/kgである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
その後の投与量が互いに少なくとも1週間の間隔をおかれる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
その後の投与量が互いに少なくとも2週間の間隔をおかれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
その後の投与量が互いに少なくとも3週間の間隔をおかれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
初期投与量が、静脈内注射により投与され、少なくとも一のその後の投与量が皮下注射により投与される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
初期投与量が、静脈内注射により投与され、少なくとも二のその後の投与量が投与され、それぞれのその後の投与量は本質的に静脈内注射及び皮下注射からなる群から選択される方法により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
初期投与量及び少なくとも1のその後の投与量が皮下注射により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
初期投与量が、本質的に約6mg/kg、8mg/kg、又は12mg/kgからなる群から選択され、複数回のその後の投与量が少なくとも約2mg/kgであり、その後の投与量が互いに少なくとも1週間の間隔をおかれる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
複数回のその後の投与量が、互いに少なくとも2週間の間隔をおかれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
複数回のその後の投与量が、互いに少なくとも3週間の間隔をおかれる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
初期投与量が約8mg/kgであり、少なくとも一のその後の投与量が約6mg/kgである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
初期投与量が約12mg/kgであり、少なくとも一のその後の投与量が約6mg/kgである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
初期投与量が約8mg/kgであり、少なくとも一のその後の投与量が約8mg/kgである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
初期投与量が約8mg/kgであり、少なくとも一のその後の投与量が8mg/kgであり、初期投与量及びその後の投与量の投与が少なくとも2週間の間隔をおかれる、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
初期投与量及びその後の投与量が少なくとも3週間の間隔をおかれる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
初期投与量が複数回の投与量であり、複数回の初期投与量のそれぞれが少なくとも約1mg/kgであり、さらに少なくとも2日連続して投与され、少なくとも一のその後の投与量が少なくとも約2mg/kgであり、最終初期投与量及び第1のその後の投与量及び更なるその後の投与量の投与が少なくとも1週間をおかれる請求項1に記載の方法。
【請求項20】
初期投与量が複数回の投与量であり、複数回の初期投与量のそれぞれが少なくとも約1mg/kgであり、さらに少なくとも3日連続して投与され、少なくとも一のその後の投与量が少なくとも約6mg/kgであり、最終初期投与量及び第1のその後の投与量及び更なるその後の投与量の投与が少なくとも3週間の間隔をおかれる請求項19に記載の方法。
【請求項21】
初期投与量が複数回の投与量であり、複数回の初期投与量のそれぞれが少なくとも約1mg/kgであり、さらに少なくとも週に2回の3週間、第1の投与サイクルとして投与され、投与サイクルが繰り返され、それぞれのサイクルの投与量が少なくとも1日の間隔をおかれ、投与サイクルが少なくとも1週間の間隔をおかれる請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記疾患が良性又は悪性の腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記疾患が癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記癌が、乳癌、白血病、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、大腸癌、結腸直腸癌、子宮体癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、及び様々なタイプの頭部及び頸部癌からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌が乳癌である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記癌が転移性乳癌である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体がErbB2レセプターの細胞外ドメインに結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体がErbB2細胞外ドメイン配列内のエピトープ4D5に結合する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体がヒト化4D5抗ErbB2抗体である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
方法がさらに有効量の化学療法剤を投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
化学療法剤がタキソイドである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記タキソイドがパクリタキセル又はドセタキセルである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
併用される有効量の抗ErbB2抗体と有効量の化学療法剤が、単独の薬剤として個々に投与される場合の有効量の前記抗ErbB2抗体及び前記化学療法剤の総量よりも少ない、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
化学療法剤がアントラサイクリン誘導体である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
アントラサイクリン誘導体がドキソルビシン又はエピルビシンである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
方法がさらに心臓保護剤の投与を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
効果が疾患の進行、又は反応速度の時間を決定することにより測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
容器、抗ErbB2抗体を含む容器内の組成物、及び少なくとも5mg/kgの抗ErbB2抗体の初期投与量と、初期投与量と同量又はそれより少量の少なくとも一のその後の投与量を投与するという説明を含むパッケージ挿入物を含む製造品。
【請求項39】
説明が静脈内注射による初期投与量及び皮下注射による少なくとも一のその後の投与量に対するものである、請求項38に記載の製造品。
【請求項40】
初期投与量が少なくとも約6mg/kgである、請求項38に記載の製造品。
【請求項41】
初期投与量が少なくとも約8mg/kgである、請求項40に記載の製造品。
【請求項42】
初期投与量が少なくとも約12mg/kgである、請求項41に記載の製造品。
【請求項43】
その後の投与量が互いに少なくとも1週間の間隔をおかれる、請求項38に記載の製造品。
【請求項44】
その後の投与量が互いに少なくとも2週間の間隔をおかれる、請求項38に記載の製造品。
【請求項45】
その後の投与量が互いに少なくとも3週間の間隔をおかれる、請求項38に記載の製造品。
【請求項46】
初期投与量及び少なくとも一のその後の投与量が皮下注射により投与される、請求項38に記載の製造品。
【請求項47】
初期投与量が原則的に約6mg/kg、8mg/kg、12mg/kgからなる群から選択され、複数回のその後の投与量が、少なくとも約2mg/kgであり、その後の投与量が互いに少なくとも1週間の間隔をおかれる、請求項38に記載の製造品。
【請求項48】
複数回のその後の投与量が互いに少なくとも2週間の間隔をおかれる、請求項47に記載の製造品。
【請求項49】
複数回のその後の投与量が互いに少なくとも3週間の間隔をおかれる、請求項48に記載の製造品。
【請求項50】
初期投与量が約8mg/kgであり、少なくとも一のその後の投与量が約6mg/kgである、請求項49に記載の製造品。
【請求項51】
初期投与量が約12mg/kgであり、少なくとも一のその後の投与量が約6mg/kgである、請求項49に記載の製造品。
【請求項52】
初期投与量が約8mg/kgであり、少なくとも一のその後の投与量が約8mg/kgである、請求項47に記載の製造品。
【請求項53】
初期投与量が約8mg/kgであり、少なくとも一のその後の投与量が8mg/kgであり、初期投与量及びその後の投与量の投与が少なくとも2週間の間隔をおかれる、請求項47に記載の製造品。
【請求項54】
初期投与量及びその後の投与量が少なくとも3週間の間隔をおかれる請求項53に記載の製造品。
【請求項55】
初期投与量が複数回の投与量であり、複数回の初期投与量のそれぞれが少なくとも約1mg/kgであり、さらに少なくとも2日連続して投与され、少なくとも一のその後の投与量が少なくとも約2mg/kgであり、最終初期投与量及び第1のその後の投与量及び更なるその後の投与量が少なくとも1週間の間隔をおかれる、請求項38に記載の製造品。
【請求項56】
初期投与量が複数回の投与量であり、複数回の初期投与量のそれぞれが少なくとも約1mg/kgであり、さらに少なくとも3日連続して投与され、少なくとも一のその後の投与量が少なくとも約6mg/kgであり、最終初期投与量及び第1のその後の投与量及び更なるその後の投与量が少なくとも3週間の間隔をおかれる、請求項55に記載の製造品。
【請求項57】
初期投与量が複数回の投与量であり、複数回の初期投与量のそれぞれが少なくとも約1mg/kgであり、さらに少なくとも週に2回の3週間、第1の投与サイクルとして投与され、投与サイクルが繰り返され、それぞれのサイクルの投与が少なくとも1日の間隔がおかれ、投与サイクルが少なくとも1週間の間隔をおかれる、請求項38に記載の製造品。
【請求項58】
説明が皮下注射による初期投与量及び皮下注射による少なくとも一のその後の投与量の投与である請求項38に記載の製造品。
【請求項59】
初期投与量が少なくとも約6mg/kgである、請求項58に記載の製造品。
【請求項60】
初期投与量が少なくとも約8mg/kgである、請求項59に記載の製造品。
【請求項61】
初期投与量が少なくとも約12mg/kgである、請求項60に記載の製造品。
【請求項62】
その後の投与量が互いに少なくとも1週間の間隔をおかれる、請求項58に記載の製造品。
【請求項63】
その後の投与量が互いに少なくとも2週間の間隔をおかれる、請求項58に記載の製造品。
【請求項64】
その後の投与量が互いに少なくとも3週間の間隔をおかれる、請求項58に記載の製造品。
【請求項65】
初期投与量が原則的に約6mg/kg、8mg/kg、又は12mg/kgからなる群から選択され、複数回のその後の投与量が少なくとも約2mg/kgであり、その後の投与量が互いに少なくとも1週間の間隔をおかれる、請求項58に記載の製造品。
【請求項66】
複数回のその後の投与量が互いに少なくとも2週間の間隔をおかれる、請求項58に記載の製造品。
【請求項67】
複数回のその後の投与量が互いに少なくとも3週間の間隔を置かれる、請求項66に記載の製造品。
【請求項68】
初期投与量が約8mg/kgであり、少なくとも一のその後の投与量が約6mg/kgである、請求項67に記載の製造品。
【請求項69】
初期投与量が約12mg/kgであり、少なくとも一のその後の投与量が約6mg/kgである、請求項67に記載の製造品。
【請求項70】
初期投与量が約8mg/kgであり、少なくとも一のその後の投与量が約8mg/kgである、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
初期投与量が約8mg/kgであり、少なくとも一のその後の投与量が8mg/kgであり、初期投与量及びその後の投与量の投与が少なくとも2週間の間隔をおかれる、請求項65に記載の製造品。
【請求項72】
初期投与量及びその後の投与量が少なくとも3週間の間隔をおかれる、請求項71に記載の製造品。
【請求項73】
初期投与量が複数回の投与量であり、複数回の初期投与量のそれぞれが少なくとも約1mg/kgであり、さらに少なくとも2日連続して投与され、少なくとも一のその後の投与量が少なくとも約2mg/kgであり、最終初期投与量及び第1のその後の投与量及び更なるその後の投与量の投与が少なくとも1週間の間隔をおかれる、請求項58に記載の製造品。
【請求項74】
初期投与量が複数回の投与量であり、複数回の初期投与量のそれぞれが少なくとも約1mg/kgであり、さらに少なくとも3日連続して投与され、少なくとも一のその後の投与量が少なくとも約6mg/kgであり、最終初期投与量及び第1のその後の投与量及び更なるその後の投与量の投与が少なくとも3週間の間隔をおかれる、請求項73に記載の製造品。
【請求項75】
初期投与量が複数回の投与量であり、複数回の初期投与量のそれぞれが少なくとも約1mg/kgであり、さらに少なくとも週に2回の3週間、第1の投与サイクルとして投与され、投与サイクルが繰り返され、それぞれのサイクルの投与が少なくとも1日の間隔がおかれ、投与サイクルが少なくとも1週間の間隔をおかれる、請求項58に記載の製造品。
【請求項76】
説明がさらに化学療法剤を投与することを含む、請求項38に記載の製造品。
【請求項77】
化学療法剤がタキソイドである、請求項76に記載の製造品。
【請求項78】
前記タキソイドがパクリタキセル又はドセタキセルである、請求項77に記載の製造品。
【請求項79】
化学療法剤がアントラサイクリン誘導体である、請求項76に記載の製造品。
【請求項80】
説明がさらに心臓保護剤を投与することを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記組成物をErbB2レセプターの過剰発現により特徴付けられる症状の治療に使用することができることを示す容器上の又は容器に付随するラベルをさらに含む、請求項38に記載の製造品。
【請求項82】
前記ラベルが、前記組成物が乳癌の治療に使用することができることを示す、請求項81に記載の製造品。
【請求項83】
前記抗ErbB2抗体がレセプターの細胞外ドメインに結合する、請求項38に記載の製造品。
【請求項84】
抗ErbB2抗体がErbB2細胞外ドメイン配列内のエピトープ4D5に結合する、請求項83に記載の製造品。
【請求項85】
前記抗体がヒト化4D5抗ErbB2抗体である、請求項84に記載の製造品。
【請求項86】
ヒト患者の癌を治療する方法であって、抗ErbB2抗体の第1の投与量に続いて、抗体の少なくとも一のその後の投与量を投与することを含み、第1の投与量及びその後の投与量が互いに少なくとも約2週間の間隔をおかれる方法。
【請求項87】
第1の投与量及びその後の投与量が、互いに少なくとも約3週間の間隔をおかれる、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
第1の投与量及びその後の投与量がそれぞれ約2mg/kgから約16mg/kgである、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
第1の投与量及びその後の投与量がそれぞれ約4mg/kgから約12mg/kgである、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
第1の投与量及びその後の投与量がそれぞれ約6mg/kgから約12mg/kgである、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
二又はそれ以上の抗体のその後の投与量が患者に投与される、請求項86に記載の方法。
【請求項92】
約2から約10の抗体のその後の投与量が患者に投与される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
二又はそれ以上のその後の投与量が互いに少なくとも約2週間の間隔をおかれる、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
二又はそれ以上のその後の投与量が互いに少なくとも約3週間の間隔をおかれる、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
二又はそれ以上のその後の投与量がそれぞれ約2mg/kgから約16mg/kgである、請求項91に記載の方法。
【請求項96】
二又はそれ以上のその後の投与量がそれぞれ約4mg/kgから約12mg/kgである、請求項91に記載の方法。
【請求項97】
二又はそれ以上のその後の投与量がそれぞれ約6mg/kgから約12mg/kgである、請求項91に記載の方法。
【請求項98】
方法がさらに有効量の化学療法剤を患者に投与することを含む、請求項86に記載の方法。
【請求項99】
化学療法剤がタキソイドである、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
容器、抗ErbB2抗体を含む容器内の組成物、及び請求項86から99の何れかに記載の抗体の投与量の説明を含むパッケージ挿入物を含む製造品。
【請求項101】
ヒト患者の癌を治療する方法であって、ヒト患者に抗ErbB抗体の有効量を投与することを含み:
少なくとも約5mg/kgの抗ErbB抗体の初期投与量を患者に投与し;さらに
複数回の抗体のその後の投与量を初期投与量とおよそ同量又はより少量である量で患者に投与することを含む方法。
【請求項102】
抗ErbB抗体が抗上皮細胞成長因子レセプター(EGFR)、抗ErbB3及び抗ErbB4からなる群から選択される、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
ヒト患者の癌を治療する方法であって、ヒト患者に第1の投与量の抗ErbB抗体に続いて、抗体の少なくとも一のその後の投与量を投与することを含み、第1の投与量及びその後の投与量が互いに少なくとも約2週間の間隔をおかれる方法。
【請求項104】
抗ErbB抗体が抗上皮細胞成長因子レセプター(EGFR)、抗ErbB3及び抗ErbB4からなる群から選択される、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
容器、抗ErbB抗体を含む容器内の組成物、及び請求項101から104の何れかに記載の抗体の投与量の説明を含むパッケージ挿入物を含む製造品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−251975(P2011−251975A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−151346(P2011−151346)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【分割の表示】特願2001−520142(P2001−520142)の分割
【原出願日】平成12年8月25日(2000.8.25)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】