説明

抗IL−1治療に関する新しい適応症

本発明は自己炎症症候群、例えば若年性関節リウマチまたは成人関節リウマチ症候群の処置および/または防御における、IL−1β−リガンド−IL−1受容体相互作用を破壊する小分子化合物、IL−1β抗体もしくはIL−1受容体抗体、例えば本明細書に記載されるIL−1β結合分子、例えば本明細書に開示される抗体、例えばIL−1β結合化合物もしくはIL−1受容体結合化合物、および/またはIL−1βリガンドもしくはIL−1受容体タンパク質レベルのいずれかを減少させるRNA化合物のような、IL−1β−リガンド/IL−1受容体破壊化合物(本明細書では「IL−1ベータ化合物」と称する)の新規使用、ならびに哺乳動物、とりわけヒトにおける自己炎症症候群、例えば若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチ症候群を処置および/または防御する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自己炎症症候群、例えば若年性関節リウマチまたは成人関節リウマチ症候群の処置および/または防御における、IL−1β−リガンド−IL−1受容体相互作用を破壊する小分子化合物、IL−1β抗体もしくはIL−1受容体抗体、例えば本明細書に記載されるIL−1β結合分子、例えば本明細書に開示される抗体、例えばIL−1β結合化合物もしくはIL−1受容体結合化合物、および/またはIL−1βリガンドもしくはIL−1受容体タンパク質レベルのいずれかを減少させるRNA化合物のような、IL−1β−リガンド/IL−1受容体破壊化合物(本明細書では「IL−1ベータ化合物」と称する)の新規使用、ならびに哺乳動物、とりわけヒトにおける自己炎症症候群、例えば若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチ症候群を処置および/または防御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン−1β(IL−1ベータまたはIL−1βまたはインターロイキン−1βはここでは同じ意味を有する)は広範な免疫および炎症応答を媒介する強力な免疫調節物質である。IL−1βの不適切なまたは過剰な生成は敗血症、敗血症性または内毒素性ショック、アレルギー、喘息、骨量減少、虚血、卒中、外傷性脳損傷、関節リウマチおよびその他の炎症性障害のような種々の疾患および障害の病理に関連する。IL−1βに対する抗体はIL−1媒介疾患および障害の処置における使用に関して提唱されている;例えば第WO95/01997号およびその序論における考察ならびに第WO02/16436号(その内容を出典明示により本明細書の一部とする)を参照のこと。
【0003】
本発明によって、今回、驚くべきことに、IL−1ベータ化合物が哺乳動物、とりわけヒトのような患者における自己炎症症候群の防御および処置に有用であることが見出された。本発明による自己炎症症候群は例えば、限定するものではないが、炎症の再発性エピソードを特徴とする遺伝性障害の群であり、自己免疫疾患とは対照的に自己抗体または抗原特異的T細胞は高力価ではない。さらに本発明による自己炎症症候群はIL−1ベータ分泌の増大(該疾患では変異していると考えられるパイリンの負の調節の役割の喪失)、NFkB活性化および白血球のアポトーシス不全を示す。本発明による自己炎症症候群はマックル・ウェルズ症候群(MWS)、LADA(成人における潜在型自己免疫性糖尿病)、家族性感冒自己炎症症候群(FCAS)、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、新生児期発症多臓器性炎症性症候群(NOMID)、慢性小児神経皮膚関節(CINCA)症候群、家族性地中海熱(FMF)ならびに/または全身型若年性特発性関節炎(SJIA)のような特定の形態の若年性関節炎、全身型若年性関節リウマチのような特定の形態の若年性関節リウマチおよび/もしくは特定の形態の成人関節リウマチである。IL−1ベータ化合物はまた、臨床および前臨床研究によりIL−1遮断による膵島機能の改善が示される2型糖尿病の処置においても有用であり得る。IL−1ベータ化合物はまた網膜症、創傷治癒、血管疾患(ステント留置または血管形成術後の動脈再狭窄を含む)、腎機能不全、慢性腎臓疾患ならびにメタボリックシンドロームおよび肥満のような種々の糖尿病関連の病理の処置においても有用である。IL−1ベータ化合物はまた片頭痛、滑膜炎、痛風、偽痛風/痛風性関節炎もしくは軟骨石灰化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、人工呼吸誘起の肺傷害、モルヒネ抵抗性疼痛、神経因性疼痛、早産陣痛、椎間板に起因する疼痛、炎症性疼痛、頭痛または片頭痛のような種々の疼痛症状の処置においても有用である。IL−1ベータは疼痛知覚に関与し、そして神経原性のシグナルを増幅する。さらに本発明のIL−1ベータ化合物はアテローム性動脈硬化症、急性腎疝痛、胆道疝痛およびこれらの障害に関連する疼痛の処置に有用である。
【0004】
IL−1ベータ化合物は、IL−1ベータは優性サイトカインである周期熱症候群:家族性地中海熱(FMF)、腫瘍壊死因子受容体関連周期性症候群(TRAPS)、高免疫グロブリンD症候群(HIDS)(メバロン酸キナーゼ関連周期熱症候群とも称される)、家族性感冒自己炎症症候群および周期熱、アフタ性口内炎咽頭炎腺炎(PFAPA)症候群の処置に有用であり得る。IL−1ベータが優性サイトカインであり、そして本発明によるIL−1ベータ化合物で処置することができるその他の疾患は抗シンテターゼ症候群、マクロファージ活性化症候群(MAS)、ベーチェット病、ブロー症候群、PAPA症候群、シュニッツラー(Schnizler's)症候群、スウィート症候群を含む。脈管炎;巨細胞動脈炎(GCA)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、原発性全身性脈管炎、川崎病(皮膚粘膜リンパ節症候群)、高安動脈炎、結節性多発動脈炎、本態性クリオグロブリン血症性脈管炎、顕微鏡的多発性血管炎(MPA)およびチャーグ・ストラウス症候群(CSS)、蕁麻疹様脈管炎を処置するために本発明のIL−1ベータリガンド−受容体遮断およびIL−1ベータ化合物を使用することもできる。さらに本発明のIL−1ベータ化合物はサルコイドーシス、天疱瘡(pemphygus)、強直性脊椎炎、アルツハイマー病、アミロイドーシス、続発性アミロイドーシスおよび成人発症スチル病(AOSD)のような自己免疫疾患の処置に有用である。限定するものではないが、乾癬、硬直性脊椎炎、ライター病および腸疾患性関節炎のようなHLA−B27関連疾患を処置するために本発明のIL−1ベータ化合物を使用できる。リウマチ熱、リウマチ性多発筋痛症および巨細胞性関節炎(artheriitis)を処置するために本発明によるIL−1ベータ化合物を使用できる。最後に、感染、とりわけ細菌感染およびウイルス感染、さらにとりわけ、限定するものではないが血行性骨髄炎、感染性関節炎、結核性関節炎のような関節炎症状または観察に関連する細菌感染を処置するために本発明のIL−1ベータ化合物を使用できる。
【0005】
好ましくはIL−1ベータ化合物は若年性関節リウマチおよび成人関節リウマチならびに/またはマックル・ウェルズ症候群の防御および処置に有用である。
【0006】
本発明の特定の知見にしたがって、以下の実施態様を提供する:
本発明はヒトを含む哺乳動物における自己炎症症候群の防御および処置のための組成物および方法に関する。したがってIL−1ベータ化合物はまた自己炎症症候群の処置のための医薬品および薬剤を調製するのにも有用である。具体的な態様では、かかる医薬品および薬剤は治療上有効量のIL−1ベータ化合物を薬学的に許容される担体と共に含む。
【0007】
別の実施態様では、本発明は若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチ症候群および/またはその他の自己炎症症候群および/またはマックル・ウェルズ症候群の防御および/または処置における、前記または後記のポリペプチドのいずれか、例えばIL−1β−リガンドまたはIL−1β受容体、好ましくはIL−1βリガンドに特異的に結合する抗体の使用を提供する。所望により、抗体はモノクローナル抗体、ヒト化抗体、抗体フラグメントまたは一本鎖抗体である。1つの態様では、本発明はIL−1βリガンドに特異的に結合する単離された抗体に関する。別の態様では、抗体はIL−1β−リガンド(アンタゴニスト抗体)の活性を阻止または中和する。別の態様では、抗体はヒトまたは非ヒトのいずれかの相補性決定領域(CDR)残基およびヒトフレームワーク領域(FR)残基を有するモノクローナル抗体である。抗体を標識でき、そして固体支持体に固定できる。さらなる態様では、抗体は抗体フラグメント、モノクローナル抗体、一本鎖抗体または抗イディオタイプ抗体である。なお別の実施態様では、本発明は薬学的に許容される担体との混合物中に抗IL−1βリガンドまたはIL−1β受容体抗体、好ましくは抗IL−1β−リガンド抗体を含む組成物を提供する。1つの態様では、組成物は治療上有効量の抗体を含む。好ましくは組成物は無菌である。組成物を液体医薬製剤の形態で投与でき、それを貯蔵安定性の延長を達成するために保存剤を添加してよい。あるいは、抗体はモノクローナル抗体、抗体フラグメント、ヒト化抗体または一本鎖抗体である。
【0008】
別の実施態様では、本発明は若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチおよび/またはその他の自己炎症症候群および/またはマックル・ウェルズ症候群の防御および/または処置における;インビボで正のIL−1ベータフィードバックループを妨害することが可能であるIL−1ベータ化合物、例えばIL−1ベータ抗体の使用を提供する。このインビボでの正のフィードバックはこれらの患者におけるIL−1bの自律的な過剰生成に至る。
【0009】
別の実施態様では、本発明は染色体16p13に位置し、そしてタンパク質パイリン(マレノストリンとしても公知)をコードするMEFV遺伝子の変異を伴う疾患における、IL−1ベータ化合物、例えばIL−1ベータ抗体の使用を提供する。パイリンは顆粒球、単球および滑膜線維芽細胞において発現される。パイリンはIL−1ベータプロセシングに関与する。
【0010】
さらなる実施態様では、本発明は若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチおよび/またはその他の自己炎症症候群および/またはマックル・ウェルズ症候群の処置における:(a)抗IL−1ベータリガンドまたはIL−1ベータ受容体抗体、好ましくは抗IL−1βリガンド抗体を含む物質の組成物;(b)該組成物を含有する容器;および(c)該抗IL−1βリガンドまたはIL−1β受容体抗体、好ましくは抗IL−1βリガンド抗体の使用を述べる該容器に取り付けられたラベルまたは該容器に含まれる添付文書;を含む製品に関する。組成物は治療上有効量の抗IL−1βリガンドまたはIL−1β受容体抗体、好ましくは抗IL−1βリガンドを含むことができる。
【0011】
なおさらなる実施態様では、本発明は遊離形態または塩形態の、好ましくは静脈内または皮下のような薬学的に許容される送達形態の治療上有効量のIL−1ベータ化合物、および第2の薬物の同時投与を含む、前記で定義した方法または使用を提供し、該第2の薬物は遊離形態または塩形態の抗炎症化合物である。
【0012】
なおさらなる実施態様では、本発明にしたがって使用されるIL−1ベータ化合物は、超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を順に含み、該CDR1はアミノ酸配列Val−Tyr−Gly−Met−Asnを有し、該CDR2はアミノ酸配列Ile−Ile−Trp−Tyr−Asp−Gly−Asp−Asn−Gln−Tyr−Tyr−Ala−Asp−Ser−Val−Lys−Glyを有し、そしてCDR3はアミノ酸配列Asp−Leu−Arg−Thr−Gly−Proを有する少なくとも1つの免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V)を含む抗原部位を含むIL−1β結合分子ならびにその直接均等物である。
【0013】
なおさらなる実施態様では、本発明にしたがって使用されるIL−1ベータ化合物は、超可変領域CDR1’、CDR2’およびCDR3’を順に含み、該CDR1’はアミノ酸配列Arg−Ala−Ser−Gln−Ser−Ile−Gly−Ser−Ser−Leu−Hisを有し、該CDR2’はアミノ酸配列Ala−Ser−Gln−Ser−Phe−Serを有し、そして該CDR3’はアミノ酸配列His−Gln−Ser−Ser−Ser−Leu−Proを有する少なくとも1つの免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V)を含むIL−1β結合分子ならびにその直接均等物である。
【0014】
なおさらなる実施態様では、本発明にしたがって使用されるIL−1ベータ化合物は、例えば若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチ症候群および/またはその他の自己炎症症候群、好ましくは若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチ症候群および/またはマックル・ウェルズ症候群の処置のための薬剤の調製のための、前記で定義した重鎖可変ドメイン(V)を含む単離された免疫グロブリン重鎖を含む単一ドメインIL−1ベータ結合分子である。
【0015】
なおさらなる実施態様では、本発明にしたがって使用されるIL−1ベータ化合物は、重(V)および軽鎖(V)可変ドメインを含むIL−1β結合分子ならびにその直接均等物であり、ここで該IL−1β結合分子は:
a)超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を順に含み、該CDR1はアミノ酸配列Val−Tyr−Gly−Met−Asnを有し、該CDR2はアミノ酸配列Ile−Ile−Trp−Tyr−Asp−Gly−Asp−Asn−Gln−Tyr−Tyr−Ala−Asp−Ser−Val−Lys−Glyを有し、そしてCDR3はアミノ酸配列Asp−Leu−Arg−Thr−Gly−Proを有する免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V);ならびに
b)超可変領域CDR1’、CDR2’およびCDR3’を順に含み、該CDR1’はアミノ酸配列Arg−Ala−Ser−Gln−Ser−Ile−Gly−Ser−Ser−Leu−Hisを有し、該CDR2’はアミノ酸配列Ala−Ser−Gln−Ser−Phe−Serを有し、そして該CDR3’はアミノ酸配列His−Gln−Ser−Ser−Ser−Leu−Proを有する免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V);
を含む少なくとも1つの抗原部位を含む。
【0016】
特記しない限り、本明細書では全てのポリペプチド鎖はN末端で始まり、そしてC末端で終わるアミノ酸配列を有するとして記載される。抗原結合部位がVおよびVドメインの双方を含むとき、これらは同じポリペプチド分子上に位置するか、または好ましくは各ドメインは異なる鎖上でよく、Vドメインは免疫グロブリン重鎖またはそのフラグメントの一部であり、そしてVは免疫グロブリン軽鎖またはそのフラグメントの一部である。
【0017】
「IL−1β結合分子」とは、単独でまたはその他の分子と会合してのいずれかでIL−1βリガンドに結合することが可能である全ての分子を意味する。例えば無関係の特異性であるが、同じアイソタイプの抗体、例えば抗CD25抗体を使用する陰性対照を参照して、その受容体へのIL−1β結合の阻止を測定するためのバイオアッセイまたは任意の種類の結合アッセイを含む標準的な方法(定性アッセイ)により結合反応を示すことができる。有利には、本発明のIL−1β結合分子のIL−1βに対する結合を競合結合アッセイにおいて示すことができる。
【0018】
抗原結合分子の例には、B細胞もしくはハイブリドーマにより生成された抗体およびキメラ、CDR−グラフトもしくはヒト抗体、または任意のそのフラグメント、例えばF(ab’)およびFabフラグメント、ならびに一本鎖または単一ドメイン抗体が含まれる。
【0019】
一本鎖抗体は通常10から30個のアミノ酸、好ましくは15から25個のアミノ酸からなるペプチドリンカーにより共有結合した抗体の重および軽鎖の可変ドメインからなる。それ故にかかる構造は重および軽鎖の定常部分を含まず、そして小ペプチドスペーサーは定常部分全体よりも抗原性が低くなるはずであると考えられる。「キメラ抗体」とは、重もしくは軽鎖または双方の定常領域がヒト起源であるが、重および軽鎖の双方の可変ドメインは非ヒト(例えばマウス)起源であるか、またはヒト起源であるが、異なるヒト抗体から誘導されたものである抗体を意味する。「CDRグラフト抗体」とは、超可変領域(CDR)が非ヒト(例えばマウス)抗体または別のヒト抗体のようなドナー抗体から誘導されるが、免疫グロブリンのその他の部分の全てまたは実質的に全て、例えば定常領域および可変ドメインの高度に保存された部分、すなわちフレームワーク領域はアクセプター抗体、例えばヒト起源の抗体から誘導される抗体を意味する。しかしながらCDRグラフト抗体はフレームワーク領域において、例えば超可変領域に隣接するフレームワーク領域の部分において、ドナー配列のわずかのアミノ酸を含有できる。「ヒト抗体」とは、例えば欧州特許第0546073(B1)号、米国特許第5545806号、米国特許第5569825号、米国特許第5625126号、米国特許第5633425号、米国特許第5661016号、米国特許第5770429号、欧州特許第号0438474(B1)号および欧州特許第号0463151(B1)号の一般用語において記載される通り、重および軽鎖の双方の定常および可変領域が全てヒト起源であるか、または実質的にヒト起源の配列と同一であるが、同一抗体からの必要はなく、そしてマウス免疫グロブリン可変および定常部分遺伝子がそのヒト対応物により置き換えられているマウスにより生成された抗体を含む抗体を意味する。
【0020】
直接均等物なる語句はこの記載において提供されるような本発明のIL−1ベータ結合分子の特性を有する任意の分子、抗体またはその機能的フラグメントを包含し、種々の種およびアイソタイプの抗体、Fab2、FabおよびscFvフラグメントならびに配列番号1および2のCDR領域において、またはCDR領域の外側で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多い点変異を含む変異体を含む。
【0021】
本発明のとりわけ好ましいIL−1β結合分子はヒト抗体、特に本明細書後記で実施例において、および第WO02/16436号において記載されるACZ885抗体である。
【0022】
故に本発明の好ましい抗体では、重および軽鎖双方の可変ドメインはヒト起源であり、例えば配列番号1および配列番号2で示されるACZ885抗体のものである。定常領域ドメインは好ましくは、例えば「Sequences of Proteins of Immunological Interest」 Kabat E.A. et al, US Department of Health and Human Services, Public Health Service, National Institute of Healthに記載される適当なヒト定常領域ドメインをも含む。
【0023】
超可変領域は任意の種類のフレームワーク領域と会合できるが、好ましくはヒト起源である。適当なフレームワーク領域はKabat E.A. et al, ibidに記載される。好ましい重鎖フレームワークはヒト重鎖フレームワーク、例えば配列番号1で示されるACZ885抗体のものである。それは順にFR1、FR2、FR3およびFR4領域からなる。類似の様式で、配列番号2は順にFR1’、FR2’、FR3’およびFR4’領域からなる好ましいACZ885軽鎖フレームワークを示す。
【0024】
したがって、本発明はまた1位のアミノ酸で始まり、そして118位のアミノ酸で終わる配列番号1で示されるものと実質的に同一なアミノ酸配列を有する第1ドメインまたは前記の第1ドメインのいずれか、および1位のアミノ酸で始まり、そして107位のアミノ酸で終わる配列番号2で示されるものと実質的に同一なアミノ酸配列を有する第2ドメインを含む少なくとも1つの抗原結合部位を含むIL−1β結合分子を提供する。
【0025】
全てのヒトにおいて天然に見出されるタンパク質に対して上昇させたモノクローナル抗体は、典型的には非ヒト系において、例えばマウスにおいて発達させ、そしてそれ自体は典型的には非ヒトタンパク質である。これの直接的な結果として、ハイブリドーマにより生成されるような異種抗体は、ヒトに投与された場合、主に異種免疫グロブリンの定常部分により媒介される望ましくない免疫応答を惹起する。かかる抗体を長期間にわたって投与することができないので、これは明らかにこれらの使用を制限する。それ故にヒトに投与した場合に実質的に同種異型の応答を惹起する可能性のない一本鎖、単一ドメイン、キメラ、CDRグラフト化または特にヒト抗体を使用することがとりわけ好ましい。
【0026】
前記に鑑みて、さらに好ましい本発明のIL−1β結合分子を少なくとも:
a)(i)超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を順に含む可変ドメイン;および(ii)ヒト重鎖の定常部分またはそのフラグメント;を含み、該CDR1はアミノ酸配列Val−Tyr−Gly−Met−Asnを有し、該CDR2はアミノ酸配列Ile−Ile−Trp−Tyr−Asp−Gly−Asp−Asn−Gln−Tyr−Tyr−Ala−Asp−Ser−Val−Lys−Glyを有し、そして該CDR3はアミノ酸配列Asp−Leu−Arg−Thr−Gly−Proを有する免疫グロブリン重鎖またはそのフラグメント;および
b)(i)超可変領域および場合によってはCDR1’、CDR2’およびCDR3’超可変領域もまた順に含む可変ドメイン;および(ii)ヒト軽鎖の定常部分またはそのフラグメント;を含み、該CDR1’はアミノ酸配列Arg−Ala−Ser−Gln−Ser−Ile−Gly−Ser−Ser−Leu−Hisを有し、該CDR2’はアミノ酸配列Ala−Ser−Gln−Ser−Phe−Serを有し、そして該CDR3’はアミノ酸配列His−Gln−Ser−Ser−Ser−Leu−Proを有する免疫グロブリン軽鎖またはそのフラグメント;
を含むヒト抗IL−1β抗体ならびにその直接均等物から選択する。
【0027】
あるいは、本発明のIL−1β結合分子を:
a)超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を順に含み、該CDR1はアミノ酸配列Val−Tyr−Gly−Met−Asnを有し、該CDR2はアミノ酸配列Ile−Ile−Trp−Tyr−Asp−Gly−Asp−Asn−Gln−Tyr−Tyr−Ala−Asp−Ser−Val−Lys−Glyを有し、そして該CDR3はアミノ酸配列Asp−Leu−Arg−Thr−Gly−Proを有する第1ドメイン;
b)超可変領域CDR1'、CDR2’およびCDR3’を含み、該CDR1’はアミノ酸配列Arg−Ala−Ser−Gln−Ser−Ile−Gly−Ser−Ser−Leu−Hisを有し、該CDR2’はアミノ酸配列Ala−Ser−Gln−Ser−Phe−Serを有し、そして該CDR3’はアミノ酸配列His−Gln−Ser−Ser−Ser−Leu−Proを有する第2ドメイン;および
c)第1ドメインのN末端および第2ドメインのC末端または第1ドメインのC末端および第2ドメインのN末端のいずれかに結合したペプチドリンカー;
を含む抗原結合部位を含む一本鎖結合分子ならびにその直接均等物から選択できる。
【0028】
周知のように、1つの、わずかのまたはさらには数個のアミノ酸の欠失、付加または置換のようなアミノ酸配列における微小変化は、実質的に同一の特性を有する元来のタンパク質の対立遺伝子形態に至り得る。
【0029】
故に「その直接均等物」なる用語は任意の単一ドメインIL−1β結合分子(分子X)であって:
(i)ここで超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3は前記で示されるように全体的に見て超可変領域に対して少なくとも80%相同、好ましくは少なくとも90%相同、さらに好ましくは少なくとも95%相同であり;そして
(ii)分子Xのものと同一のフレームワーク領域を有するが、前記で示されるものと同一の超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を有する参照分子と実質的に同じ程度まで、IL−1βのその受容体への結合を阻止することが可能である;
または結合部位あたり少なくとも2つのドメインを有する任意のIL−1β結合分子(分子X’)であって:
(i)ここで超可変領域CDR1、CDR2、CDR3、CDR1'、CDR2’およびCDR3’は前記で示されるように全体的に見て超可変領域に対して少なくとも80%相同、好ましくは少なくとも90%相同、さらに好ましくは少なくとも95、98または99%相同であり;そして
(ii)分子X’と同一のフレームワーク領域および定常部分を有するが、前記で示されるものと同一の超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3、CDR1'、CDR2’およびCDR3’を有する参照分子と実質的に同じ程度まで、IL−1βのその受容体への結合を阻止することが可能である;
のいずれかを意味する。
【0030】
さらなる態様では、本発明はまた重(V)および軽鎖(V)可変ドメインを含むIL−
ベータ結合分子ならびにその直接均等物を提供し、ここで該IL−1ベータ結合分子は:
a)超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を順に含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V);該CDR1はアミノ酸配列Ser−Tyr−Trp−Ile−Glyを有し、該CDR2はアミノ酸配列Ile−Ile−Tyr−Pro−Ser−Asp−Ser−Asp−Thr−Arg−Tyr−Ser−Pro−Ser−Phe−Gln−Glyを有し、そして該CDR3はアミノ酸配列Tyr−Thr−Asn−Trp−Asp−Ala−Phe−Asp−Ileを有する;および
b)アミノ酸配列Gln−Gln−Arg−Ser−Asn−Trp−Met−Phe−Proを有するCDR3’超可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V);
を含む少なくとも1つの抗原結合部位を含む。
【0031】
本発明のさらなる態様では、本発明は重(V)および軽鎖(V)可変ドメインの双方を含むIL−1ベータ結合分子ならびにその直接均等物を提供し、該IL−1ベータ結合分子は:
a)超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を順に含み、該CDR1はアミノ酸配列Ser−Tyr−Trp−Ile−Glyを有し、該CDR2はアミノ酸配列Ile−Ile−Tyr−Pro−Ser−Asp−Ser−Asp−Thr−Arg−Tyr−Ser−Pro−Ser−Phe−Gln−Glyを有し、そして該CDR3はアミノ酸配列Tyr−Thr−Asn−Trp−Asp−Ala−Phe−Asp−Ileを有する免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V);ならびに
b)超可変領域CDR1’、CDR2’およびCDR3’を順に含み、該CDR1’はアミノ酸配列Arg−Ala−Ser−Gln−Ser−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Alaを有し、該CDR2’はアミノ酸配列Asp−Ala−Ser−Asn−Arg−Ala−Thrを有し、そして該CDR3’はアミノ酸配列Gln−Gln−Arg−Ser−Asn−Trp−Met−Phe−Proを有する免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V);
を含む少なくとも1つの抗原結合部位を含む。
【0032】
本明細書では、配列を最適にアラインし、アミノ酸配列におけるギャップまたは挿入を非同一残基として計数するとき、同様の位置において少なくとも80%同一のアミノ酸残基を有する場合、アミノ酸配列は互いに少なくとも80%相同である。
【0033】
第WO02/16436号に記載されるアッセイを含む種々のアッセイにおいてIL−1βのその受容体への結合の阻止を都合よく試験できる。「同じ程度まで」なる用語は、参照および均等な分子が、前記で言及されたアッセイの1つにおいて統計学に基づいて本質的に同一のIL−1β結合阻止曲線を呈することを意味する。例えばIL−1β結合において本発明の分子は典型的にはIL−1βのその受容体への結合の阻止に関して、前記で記載されるように検定された場合、対応する参照分子のIC50の±5倍内、好ましくはそれと実質的に同じであるIC50を有する。
【0034】
例えば用いられるアッセイは可溶性IL−1受容体および本発明のIL−1β結合分子によるIL−1βの結合の競合阻止のアッセイでよい。
【0035】
最も好ましくは、本発明にしたがって使用するためのIL−1β結合分子は少なくとも:
a)1位のアミノ酸で始まり、そして118位のアミノ酸で終わる配列番号1で示されるものと実質的に同一のアミノ酸配列を有する可変ドメイン、およびヒト重鎖の定常部分を含む1つの重鎖;ならびに
b)1位のアミノ酸で始まり、そして107位のアミノ酸で終わる配列番号2で示されるものと実質的に同一のアミノ酸配列を有する可変ドメイン、およびヒト軽鎖の定常部分を含む1つの軽鎖;
を含むヒトIL−1抗体である。
【0036】
最も好ましくは、本発明にしたがって使用するためのIL−1β結合分子はACZ885(実施例参照)である。
【0037】
ヒト重鎖の定常部分はγ、γ、γ、γ、μ、α、α、δまたはε型、好ましくはγ型、さらに好ましくはγ型のものでよく、一方ヒト軽鎖の定常部分はκまたはλ型(λ、λおよびλサブタイプを含む)のものでよいが、好ましくはκ型のものである。これらの全ての定常部分のアミノ酸配列をKabat et al ibidで提示する。
【0038】
本発明のIL−1β結合分子を、例えば第WO02/16436号に記載される組換えDNA技術により生成できる。
【0039】
本発明のなお別の実施態様では、IL−1ベータ化合物はヒトIL−1βの抗原性エピトープに関する結合特異性を有する抗体でよく、それは成熟ヒトIL−1βのGlu64残基(ヒトIL−1ベータ前駆体の残基180に相当する成熟ヒトIL−1βの残基Glu64)を含むループを含む。このエピトープはIL−1ベータ受容体の認識部位の外側であり、そしてそれ故にこのエピトープに対する抗体、例えばACZ885抗体がIL−1βのその受容体への結合を阻止することが可能であることは最も驚くべきことである。故に若年性関節リウマチおよび成人関節リウマチならびに/または自己炎症症候群ならびに/またはマックル・ウェルズ症候群の処置のためのかかる抗体の使用は新規であり、そして本発明の範囲内に含まれる。
【0040】
故にさらなる態様では本発明は若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチおよび/または自己炎症症候群および/またはマックル・ウェルズ症候群の処置のための、ヒトIL−1βの抗原性エピトープに関する結合特異性を有し、成熟ヒトIL−1βのGlu64残基を含むループを含み、そしてIL−1βのその受容体への結合を阻止することが可能であるIL−1βに対する抗体の使用を含む。
【0041】
なおさらなる態様では本発明は:
i)若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチおよび/または自己炎症症候群および/またはマックル・ウェルズ症候群の防御および/または処置のための、成熟ヒトIL−1βの抗原性エピトープに関する抗原結合特異性を有し、Glu64を含むループを含み、そしてIL−1βのその受容体への結合を阻止することが可能であるIL−1βに対する抗体の使用;
ii)成熟ヒトIL−1βの抗原性エピトープに関する抗原結合特異性を有し、Glu64を含むループを含み、そしてIL−1βのその受容体への結合を阻止することが可能であるIL−1βに対する抗体の有効量を患者に投与することを含む、患者における若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチおよび/または自己炎症症候群および/またはマックル・ウェルズ症候群の防御および/または処置のための方法;
iii)若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチ症候群および/または自己炎症症候群および/またはマックル・ウェルズ症候群の処置のために、成熟ヒトIL−1βの抗原性エピトープに関する抗原結合特異性を有し、Glu64を含むループを含み、そしてIL−1βのその受容体への結合を阻止することが可能であるIL−1βに対する抗体を薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と組み合わされて含む医薬組成物;
iv)若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチ症候群および/または自己炎症症候群および/またはマックル・ウェルズ症候群の処置のための薬剤の調製のためのGlu64を含むループを含み、そしてIL−1βのその受容体への結合を阻止することが可能であるIL−1βに対する抗体の使用;
を含む。
【0042】
本記載の目的のために、抗体がIL−1βのその受容体への結合をACZ885抗体と実質的に同じ程度まで阻止する(すなわち例えば実施例において開示される標準的なBIAcore分析で測定される、10nM以下、例えば1nM以下、好ましくは100pM以下、さらに好ましくは50pM以下の解離平衡定数(K)を有する)ことが可能であるとき、抗体は「IL−1βの結合を阻止することが可能である」。
【0043】
故になおさらなる態様では本発明は若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチ症候群および/または自己炎症症候群の処置のための、IL−1βに対する結合に関して約10nM、1nM、好ましくは100pM、さらに好ましくは50pM以下のKを有するIL−1βに対する抗体の使用を提供する。本発明のこの態様はまた、Glu64を含むループを含む成熟ヒトIL−1βの抗原性決定基に関して結合特異性を有するIL−1βに対する抗体に関して前記の高親和性抗体に関する使用、方法および組成物を含む。
【0044】
本記載では「若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチ症候群および/または自己炎症症候群」なる語句は、疾患または医学的症状において直接的であろうと、間接的であろうと、疾患または症状の因果関係、発達、進行、持続または病理を含む、若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチ症候群および/または自己炎症症候群の一部である全ての疾患および医学的症状を包含する。
【0045】
本記載では「マックル・ウェルズ症候群」(また「MWS」)なる語句は、疾患または医学的症状において直接的であろうと、間接的であろうと、疾患または症状の因果関係、発達、進行、持続または病理を含む、「マックル・ウェルズ症候群」の一部である全ての疾患および医学的症状を包含する。
【0046】
式Iの化合物を単独の活性成分として、または例えば同種もしくは異種移植片急性もしくは慢性拒絶または炎症もしくは自己免疫障害の処置もしくは防御のためのその他の薬物、例えば免疫抑制もしくは免疫調節剤またはその他の抗炎症剤、または化学療法剤、例えば悪性細胞抗増殖剤との併用で、例えばそれに対する佐剤として投与できる。例えば本発明による抗体をカルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンAもしくはFK506;mTOR阻害剤、例えばラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP23573、AP23464、AP23675、AP23841、TAFA−93、バイオリムス−7もしくはバイオリムス−9;免疫抑制特性を有するアスコマイシン、例えばABT−281、ASM981等;コルチコステロイド;シクロホスファミド;アザチオプレン;メトトレキサート;レフルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸もしくは塩;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリンまたはその免疫抑制性相同体、類似体もしくは誘導体;例えば第WO02/38561号もしくは第WO03/82859号に開示されるようなPKC阻害剤、例えば実施例56もしくは70の化合物;JAK3キナーゼ阻害剤、例えばN−ベンジル−3,4−ジヒドロキシ−ベンジリデン−シアノアセトアミド□−シアノ−(3,4−ジヒドロキシ)−]N−ベンジルシンナムアミド(チルホスチンAG490)、プロジギオシン25−C(PNU156804)、[4−(4’−ヒドロキシフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン](WHI−P131)、[4−(3'−ブロモ−4'−ヒドロキシルフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン](WHI−P154)、[4−(3’,5'−ジブロモ−4'−ヒドロキシルフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン]WHI−P97、KRX−211、遊離形態もしくは薬学的に許容される塩形態、例えばモノクエン酸塩の3−{(3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル}−3−オキソ−プロピオニトリル(CP−690,550とも称される)、または第WO04/052359号もしくは第WO05/066156号に開示される化合物;免疫抑制性モノクローナル抗体、例えば白血球受容体、例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD52、CD58、CD80、CD86に対するモノクローナル抗体またはそのリガンド;その他の免疫調節化合物、例えばCTLA4もしくはその変異体の細胞外ドメインの少なくとも一部分、例えば非CTLA4タンパク質配列に結合したCTLA4もしくはその変異体の少なくとも細胞外部分を有する組換え結合分子、例えばCTLA4Ig(例えば命名ATCC68629)もしくはその変異体、例えばLEA29Y;接着分子阻害剤、例えばLFA−1アンタゴニスト、ICAM−1もしくは−3アンタゴニスト、VCAM−4アンタゴニストもしくはVLA−4アンタゴニスト;または化学療法剤、例えばパクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチナム、ドキソルビシンもしくは5−フルオロウラシル;または抗感染剤と組み合わせて使用できる。
【0047】
本発明の化合物との組み合わせに有用である傾向がある免疫調節薬物には、例えば式:
【化1】

のラパマイシンならびに、例えば40−O−(2−ヒドロキシ)−エチル−ラパマイシン(エベロリムス)のような、40−O−ヒドロキシアルキル−ラパマイシン誘導体のような、40−O−アルキル−ラパマイシン誘導体;
32−デオキソラパマイシンのような32−デオキソ−ラパマイシン誘導体および32−ヒドロキシ−ラパマイシン誘導体;
16−ペント−2−イニルオキシ−32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−ラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンのような16−O−置換ラパマイシン誘導体;
40位の酸素基でアシル化されたラパマイシン誘導体、例えば40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシ−メチル)−2−メチルプロパノアート]−ラパマイシン(CCI779としても公知);
40位でヘテロシクリルにより置換されたラパマイシン誘導体、例えば40−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT578としても公知);
例えばAP23573のような第WO9802441号、第WO0114387号および第WO0364383号に開示されるようないわゆるラパログ(rapalogs);ならびに
TAFA−93およびバイオリムス(バイオリムスA9)の名の下に開示された化合物;
を含むラパマイシン誘導体を含むmTOR活性のメディエーター、例えば阻害剤が含まれる。
【0048】
本発明によるIL−1ベータ化合物を単独の活性成分として、またはビスホスホネートとの併用で、逐次的、同時または1個の製剤に組み合わされて投与できる。本発明のIL−1ベータ分子と併用して使用されるビスホスホネートはエチドロネート、クロドロネート、チルドロネート、パミドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、アレンドロネート、イバンドロナート、リセドロネート、ゾレドロネートおよびその任意の塩、酸、多形または誘導体を含む。
【0049】
有利には、例えば適応免疫系を阻止し、そしてそれによりIL−1ベータ化合物の治療効果をさらに強化するために、本発明のIL−1ベータ化合物をタンパク質キナーゼC阻害剤および/またはT細胞活性化の抑制剤、とりわけソトラスタウリン(3−(1.H.−インドール−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン)のようなインドリルマレイミド誘導体と組み合わせることができる。
【0050】
有利には、本発明のIL−1ベータ化合物をまた、場合によってはソトラスタウリンと組み合わされた、抗サイトカインおよび/または抗インターロイキン、とりわけ第WO2006/013107号に開示されるIL−17結合化合物と組み合わせることができる。
【0051】
有利には、例えばRAおよびその他の(自己)炎症疾患の処置において本発明のIL−1ベータ化合物をエタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブのような抗TNFアルファ化合物と組み合わせることができる。
【0052】
本記載では、「処置」または「処置する」なる用語は、疾患にかかる危険性のある、または疾患にかかっていると疑われる患者、および病気であるかまたは疾患もしくは医学的症状を患っていると診断されている患者の処置を含む、予防的または防御的処置、および治療的または疾患修飾的処置の双方を指し、そして臨床的再発の抑制を含む。本発明による処置の成功にはまた全ての回復可能な症状の寛解が含まれるが、回復不能な症状の寛解は含まれない。例えばマックル・ウェルズの症状の1つは進行性の神経性難聴であり、それは通常回復不能であり、そして故にこの症状を処置できる見込みはない。しかしながら発疹、筋肉痛、発熱、疲労および結膜炎のようなマックル・ウェルズのその他の回復可能な症状は本発明による処置の成功で完全に消失し得る。処置の成功の別の測定は、自己炎症症候群、例えばマックル・ウェルズに関する関連するバイオマーカーの減少、すなわち血清アミロイドタンパク質(SAA)およびC反応性タンパク質(CRP)の正常範囲までの減少、すなわち患者において<10mg/l血清である。
【0053】
本記載では、「マックル・ウェルズ」なる疾患は中でも(分子病理学)その臨床症状にしたがって決定され、それは関節炎および蕁麻疹の急性熱性炎症のエピソード、進行性神経性難聴および場合によっては長期多臓器アミロイドーシス(約25%の症例)である。分子病理学はパイリンと命名されたタンパク質をコードする、染色体16p13に位置するMEFV遺伝子における1つまたは数個の変異により引き起こされる。
【0054】
前記で定義したIL−1β結合分子、とりわけGlu64を含むループを含む成熟ヒトIL−1βの抗原性エピトープに関する結合特異性を有する本発明の抗体の第1および第2の態様によるIL−1β結合分子、とりわけIL−1βのその受容体への結合を阻止することが可能である抗体;およびIL−1βに対する結合に関して約10nM、1nM、好ましくは100pM、さらに好ましくは50pM以下のKを有するIL−1βに対する抗体が本明細書にて本発明の抗体と称される。
【0055】
本発明のなお別の実施態様では、IL−1ベータ化合物、例えば本発明の抗体のさらなる用途は以下のとおりである:
炎症性腸疾患(IBD)、若年性関節炎、反応性関節炎、強直性(ankylsoing)脊椎炎、冠不全症候群、動脈再狭窄、嚢胞性線維症、アルツハイマー病、多発性骨髄腫、動脈硬化症、肺線維症、マックル・ウェルズおよび慢性閉塞性肺疾患(COPD)の防御および処置。
【0056】
本明細書にて開示される全ての適応症(本発明の適応症)に関して、適切な投薬量はもちろん、例えば特定のIL−1ベータ化合物、例えば用いられる本発明の抗体、宿主、投与の様式ならびに処置されている症状の性質および重篤度に依存して異なる。しかしながら一般的に予防的使用では体重kgあたり約0.05mgから約10mg、より一般的には体重kgあたり約0.1mgから約5mgの投薬量で満足できる結果が得られることが示される。本発明の抗体は非経口、静脈内、例えば前腕全部もしくはその他の末梢静脈に、筋肉内または皮下に都合よく投与される。
【0057】
なお別の実施態様では、本発明は治療用途のための驚くべき投与頻度に関し、すなわちIL−1ベータ化合物、好ましくはIL−1ベータ抗体、さらに好ましくはACZ885での処置スケジュール(典型的な用量、例えば患者の体重kgあたり約0.1mgから約50mgの間、さらに好ましくは約0.5mgから20mgの間、よりさらに好ましくは1mgから10mgの間のACZ885)は毎週1回以下の頻度で、さらに好ましくは2週毎に1回以下の頻度で、さらに好ましくは3週毎に1回以下の頻度で、さらに好ましくは毎月1回以下の頻度で、さらに好ましくは2か月毎に1回以下の頻度で、さらに好ましくは3か月毎に1回以下の頻度で、よりさらに好ましくは4か月毎に1回以下の頻度で、よりさらに好ましくは5か月毎に1回以下の頻度で、またはよりさらに好ましくは6か月毎に1回以下の頻度でよい。最も好ましいのは毎月1回である。
【0058】
本発明の医薬組成物を慣用法で製造できる。本発明による組成物は好ましくは凍結乾燥形態で提供される。即時投与用にそれを適当な水性担体、例えば注射用滅菌水または無菌緩衝生理学的食塩水に溶解する。ボーラス注射よりもむしろ注入による投与のために、より多量の溶液を作製するのが望ましいと考えられるならば、製剤時にヒト血清アルブミンまたは患者自身のヘパリン処理血液を生理食塩水に組み込むのが有利である。かかる生理学的に不活性なタンパク質が過剰に存在することにより、注入溶液と共に用いられる容器および管の壁面への吸着による抗体の損失が防御される。アルブミンを使用する場合、適当な濃度は生理食塩水の0.5から4.5重量%である。
本発明を以下の実施例における例証によりさらに記載する。
【実施例】
【0059】
実施例1:ACZ885
ACZ885の構造および製造は例えば第WO02/16436号に記載される。要するに、重および軽鎖可変ドメインのアミノ末端配列ならびに対応するDNA配列を以下の配列番号1および配列番号2に提示し、ここでCDRを斜体および下線を付した活字で示す。
【0060】
【化2】

【0061】
【化3】

【0062】
実施例2:ACZ885の生化学的および生物学的データ
モノクローナル抗体ACZ885はインビボでインターロイキン−1βの活性を中和することが見出された。モノクローナル抗体は表面プラスモン共鳴分析により組換えヒトIL−1βに対するその結合に関してさらに特徴付けされる。中和の様式は可溶性IL−1受容体との競合結合研究により評価される。組換えおよび天然に生成されたIL−1βに対する抗体ACZ885の生物学的活性を、IL−1βによる刺激に応答するヒト一次細胞において決定する。
【0063】
解離平衡定数の決定
ACZ885に対する組換えヒトIL−1ベータの結合に関する会合および解離速度定数を表面プラスモン共鳴分析により決定する。ACZ885を固定し、そして1から4nMの濃度範囲の組換えIL−1ベータの結合を表面プラスモン共鳴により測定する。選択された様式は一価の相互作用を表し、そして故にIL−1ベータのACZ885に対する結合事象を化学量論的に1:1により処理することが許容される。BIAevaluationソフトウェアを用いてデータ分析を実施する。
【表1】

結論:ACZ885は組換えヒトIL−1ベータに非常に高い親和性で結合する。
【0064】
実施例3:ACZ885での臨床試験
IL−1ベータ化合物、例えばACZ885の適合性を評価するために、NALP3変異を特徴とするMW症候群の患者における臨床有効性、安全性、薬物動態および薬動力学を評価するためのACZ885(ヒト抗IL−1ベータモノクローナル抗体)のオープンラベル、単一施設用量漸増研究を行う。
患者をACZ885の一用量の注入(10mg/kg i.v.)により処置する。症状(例えば発疹、筋肉痛、発熱、疲労)の改善により、および急性期タンパク質血清アミロイドタンパク質(SAA)およびC反応性タンパク質(CRP)の低下により臨床応答を測定する。加えて末梢血液細胞から得られたmRNAの分析により、処置に対する応答を評価する。臨床症状の再出現の後、2回目の処置(1mg/kg i.v.)を提供する。結果:3日以内の症状(発熱、発疹、結膜炎)の臨床上の寛解ならびに患者におけるCRPおよびSAAの正常範囲(<10mg/l)までの減少。最初の注入での症状の臨床上の寛解は少なくとも134日間、典型的には160日間と200日間との間持続する。より低用量での2回目の処置時に、患者は症状の改善および急性期タンパク質の正常化を伴って応答する。
【0065】
末梢血液細胞から得られたmRNAの分析により、ACZ885での処置の24時間以内に、IL−1bおよびIL−1b誘起遺伝子の転写の下方調節が実証される。これによりACZ885がインビボで、これらの患者におけるIL−1bの自律的な過剰生成に至る正のフィードバックループを妨害することが可能であることが示唆される。この主張はまた、これらの患者におけるACZ885での処置時にIL−1bの生成の遮断を実証するACZ885のPK/PD効果の初期の特徴付けにより支持される。ACZ885のこの特定の能力はその長期間持続する臨床効果に寄与し(原因となり)得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己炎症症候群の処置のための薬剤の製造のためのIL−1ベータ化合物の使用。
【請求項2】
有効量のIL−1ベータ化合物をそれを必要とする患者に投与することを含む、患者における自己炎症症候群の処置方法。
【請求項3】
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と組み合わされたIL−1ベータ化合物を含む、自己炎症症候群の処置に使用するための医薬組成物。
【請求項4】
IL−1ベータ化合物が超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を順に含み、該CDR1はアミノ酸配列Val−Tyr−Gly−Met−Asnを有し、該CDR2はアミノ酸配列Ile−Ile−Trp−Tyr−Asp−Gly−Asp−Asn−Gln−Tyr−Tyr−Ala−Asp−Ser−Val−Lys−Glyを有し、そして該CDR3はアミノ酸配列Asp−Leu−Arg−Thr−Gly−Proを有する少なくとも1つの免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V);含む抗原結合部位を含むIL−1ベータ結合分子ならびにその直接均等物である、請求項1、2または3に記載の使用、処置のための方法または医薬組成物。
【請求項5】
IL−1ベータ化合物が:
a)超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を順に含み、該CDR1はアミノ酸配列Val−Tyr−Gly−Met−Asnを有し、該CDR2はアミノ酸配列Ile−Ile−Trp−Tyr−Asp−Gly−Asp−Asn−Gln−Tyr−Tyr−Ala−Asp−Ser−Val−Lys−Glyを有し、そして該CDR3はアミノ酸配列Asp−Leu−Arg−Thr−Gly−Proを有する免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V);および
b)超可変領域CDR1’、CDR2’およびCDR3’を順に含み、該CDR1’はアミノ酸配列Arg−Ala−Ser−Gln−Ser−Ile−Gly−Ser−Ser−Leu−Hisを有し、該CDR2’はアミノ酸配列Ala−Ser−Gln−Ser−Phe−Serを有し、そして該CDR3’はアミノ酸配列His−Gln−Ser−Ser−Ser−Leu−Proを有する免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V);
を含む少なくとも1つの抗原部位を含む重(V)および軽鎖(V)可変ドメインの双方を含むIL−1β結合分子ならびにその直接均等物である、請求項1から4のいずれかに記載の使用、処置のための方法または医薬組成物。
【請求項6】
IL−1ベータ化合物が配列番号1に示されるものと実質的に同一のアミノ酸配列を有する第1ドメインおよび配列番号2に示されるものと実質的に同一のアミノ酸配列を有する第2ドメインを含む少なくとも1つの抗原結合部位を含むIL−1ベータ結合分子である、請求項1から5のいずれかに記載の使用、処置のための方法または医薬組成物。
【請求項7】
自己炎症症候群が若年性関節リウマチもしくは成人関節リウマチ症候群またはマックル・ウェルズ症候群である、請求項1から6のいずれかに記載の使用、処置のための方法または医薬組成物。
【請求項8】
IL−1ベータ化合物が毎週1回以下の頻度で適用される、請求項1から7のいずれかに記載の使用、処置のための方法または医薬組成物。
【請求項9】
IL−1ベータ化合物が皮下に適用される、請求項1から7のいずれかに記載の使用、処置のための方法または医薬組成物。

【公表番号】特表2010−528086(P2010−528086A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509810(P2010−509810)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056520
【国際公開番号】WO2008/145664
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】