説明

折り畳み可能な長尺部材の収納用容器

【課題】ランチャンネル等の折り畳み可能な長尺部材の折曲箇所に加わる負荷を軽減しつつ、複数本の長尺部材を輸送することができる容器を提供する。
【解決手段】本発明は、複数本の折り畳み可能なランチャンネル5、50を収納できるトレイに関する。トレイ本体10内には、2本のランチャンネル5、50を内側と外側の横並びに配備可能な幅広溝20と、該幅広溝20に繋がって1本のランチャンネル5が配備される幅狭溝3が開設され、該幅広溝20と幅狭溝3の繋ぎ目はランチャンネル5、50の折曲箇所に対応している。幅狭溝3は外側に配備される第1のランチャンネル50が嵌まる第1の溝30と、内側に配備される第2のランチャンネル5に対応して、第1の溝30よりも内向きに膨らんだ第2の溝31を具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み可能な長尺部材の収納用容器、具体的には自動車用ランチャンネルを収納するトレイ等の容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車車両に於ける窓ガラスでは、通風換気、或いは車両外部との通話との為に、昇降による開閉動作が必要である。窓ガラスの昇降開閉動作を容易にしながら、窓ガラスと窓枠との密閉操作を可能とすべく、窓ガラスと窓枠との間にランチャンネルと呼ばれるエラストマー製の案内部材を設けている。
図6は、ランチャンネル(5)が取り付けられる窓枠(60)を具えたドア(6)の斜視図であり、ランチャンネル(5)は矩形状の窓枠(60)の周縁に沿って、複数箇所が折曲される長尺部材である(特許文献1参照)。ランチャンネル(5)は窓枠(60)の下辺以外の3辺に取り付けられるから、具体的には2箇所が折曲される。
【0003】
図7(a)、(b)は、図6をA−A線を含む面にて破断し、矢視した断面図である。ランチャンネル(5)は下面が開口したコ字状の本体(51)と、該本体(51)の両下端部から斜め上内向きに延びた足片(52)(52)を具え、両足片(52)(52)は互いに開閉可能な位置関係にあって、図7(b)に示すように、両足片(52)(52)間に窓ガラス(61)の上端部が挿入される。本体(51)はドア(6)の窓枠(60)に支持される。
ランチャンネル(5)は、上記の如く、窓枠(60)に取り付ける際に複数箇所が折曲される。ランチャンネル(5)を輸送する際には、図8に示すように、ランチャンネル(5)を折曲して束ねて、ポリシート(図示せず)で包んでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−77363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の輸送にあっては、ランチャンネル(5)を折曲して束ねているから、該折曲箇所にて隣り合うランチャンネル(5)の成す角度(図8のθ3)が約0度となるように重なっており、負荷が加わっている。従って、該折曲箇所にひび等が入る虞れがあり、これでは窓枠(60)に取り付けた際に、水等が入り、密閉機能を満たすことができない。
出願人は、ランチャンネル(5)をトレイに入れ、折曲角度を従来よりも大きくして、該折曲箇所に加わる負荷を軽減することを着想した。その一方、トレイに複数本のランチャンネル(5)を収納できなければ、輸送効率が悪く、流通コストの低減が図れない。
本発明の目的は、ランチャンネル等の折り畳み可能な長尺部材の折曲箇所に加わる負荷を軽減しつつ、複数本の長尺部材を輸送することができる容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
複数本の折り畳み可能な長尺部材を収納できる容器であって、
容器本体内には、少なくとも2本の長尺部材を内側と外側の横並びに配備可能な幅広溝(20)と、該幅広溝(20)に繋がって少なくとも1本の長尺部材が配備される幅狭溝(3)が開設され、該幅広溝(20)と幅狭溝(3)の繋ぎ目は長尺部材の折曲箇所に対応し、
幅狭溝(3)は少なくとも、外側に配備される第1の長尺部材が嵌まる第1の溝(30)と、内側に配備される第2の長尺部材に対応して、第1の溝(30)よりも内向きに膨らんだ第2の溝(31)を具える。
【発明の効果】
【0007】
1.幅広溝と幅狭溝に亘って長尺部材を折曲した状態で収納できるから、溝の折曲角度を大きくすれば、長尺部材の折曲箇所に加わる負荷を軽減できる。
2.互いに横並びにされる長尺部材の折曲箇所間の距離は本来、互いに等しい。しかし、折曲した2本の長尺部材を内側と外側の横並びに配備すると、内側の長尺部材の折曲箇所間の直線長さは、外側の長尺部材の折曲箇所間の直線長さに比して短くなる。従って、折曲した内側の長尺部材を無理に、外側の長尺部材と同じ溝に収納すると、内側の長尺部材に負荷が加わる。
しかし、容器には外側に配備される第1の長尺部材用の第1の溝(30)よりも、内向きに膨らんだ第2の溝(31)が開設されており、この第2の溝(31)は第1の溝(30)とほぼ同じ長さに形成することができる。内側に配備される第2の長尺部材は、該第2の溝(31)に嵌まる。従って、折曲した内側の長尺部材を円滑に収納でき、折曲により内側の長尺部材に加わる負荷を低減することができる。
即ち、本発明の容器によって、複数本の長尺部材を折曲負荷を軽減した状態で輸送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】トレイの平面図である。
【図2】収納溝内に、2本のランチャンネルを収納した状態を示す平面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】別のトレイの平面図である。
【図5】トレイを積み上げてカートンとした状態の斜視図である。
【図6】ランチャンネルが取り付けられる窓枠)を具えたドアの斜視図である。
【図7】(a)、(b)は、図6をA−A線を含む面にて破断し、矢視した断面図である。
【図8】従来のランチャンネルの輸送形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例を図を用いて詳述し、長尺部材としてランチャンネルを例示する。本発明の容器、即ちトレイに収納するランチャンネル(5)自体は、図7(a)、(b)に示す従来と同じものである。4ドアの車両に取り付けられるランチャンネルは、左右のドアでは同じ長さであるが、前後のドアでは長さが異なる。また、ランチャンネルは長手方向上の2箇所が折曲される。
図1は、本例に係わるトレイ(1)の平面図である。矩形状のトレイ本体(10)内には、左側と右側に連続した略三角形を囲む収納溝(2)(2a)が夫々開設され、左側の収納溝(2)にはフロント(前)側のランチャンネル(5)が収納され、右側の収納溝(2a)には、リア(後)側のランチャンネル(5)が配備されるが、この配置に限定されない。
また、トレイ本体(10)はポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂から真空成形法により形成され得る。しかし、例えば圧縮成形法によっても形成することができ、また材質も物流資材としての使用に適する材質であれば、上記に限定されない。
【0010】
各収納溝(2)(2a)は、トレイ本体(10)の一片に沿って延びた第1の幅広溝(20)と、該第1の幅広溝(20)から離間して、第1の幅広溝(20)に対して傾いた第2の幅広溝(21)と、両幅広溝(20)(21)の外側端部を繋ぐ幅狭溝(3)を具える。
幅狭溝(3)は、両幅広溝(20)(21)の外側端部を直線状に繋ぐ第1の溝(30)と、該第1の溝(30)よりも内向きに膨らんだ第2の溝(31)とから構成される。各幅広溝(20)(21)には、2本のランチャンネル(5)(50)が内側と外側の横並びに配備可能であり、該幅広溝(20)(21)と幅狭溝(3)の繋ぎ目Aはランチャンネル(5)の折曲箇所に対応している。幅狭溝(3)の第1、第2の各溝(30)(31)内には、夫々1本のランチャンネル(5)(50)が配備される。
【0011】
図2は、収納溝(2)内に、2本のランチャンネル(5)(50)を収納した状態を示す平面図である。ランチャンネル(5)(50)は折曲されて収納され、第1、第2の幅広溝(20)(21)内には、2本のランチャンネル(5)(50)が内側と外側の横並びに収納される。幅狭溝(3)の第1の溝(30)には外側のランチャンネル(50)が延びて配備され、第2の溝(31)には、内側のランチャンネル(5)が湾曲されて配備される。
第1の幅広溝(20)と第1の溝(30)の成す角度θ1(図1では約90度)、及び第2の幅広溝(21)と第1の溝(30)の成す角度θ2(図1では鋭角)は大きいほど、ランチャンネル(5)(50)の折曲箇所に加わる負荷を小さくすることができ、ランチャンネル(5)(50)を傷付ける虞れを防止することができる。しかし、角度θ1、θ2を大きくすれば、トレイ本体(10)も大型化するので、トレイ本体(10)の大きさに応じて、角度θ1、θ2を設定することになる。
【0012】
ランチャンネル(5)(50)は2本横並びにされるから、折曲箇所間の距離は本来、互いに等しい。しかし、図3に示すように、内側のランチャンネル(5)の折曲箇所間の直線距離L1は、外側のランチャンネル(50)の折曲箇所間の直線距離L2に比して短い。
従って、折曲した内側のランチャンネル(5)を無理に、外側のランチャンネル(50)と同じ直線状の溝に収納すると、長さL2−L1分の内側のランチャンネル(5)を溝内に押し込むから、内側のランチャンネル(5)に負荷が加わる。
しかし、トレイ本体(10)には外側に配備されるランチャンネル(50)用の第1の溝(30)よりも、内向きに膨らんだ第2の溝(31)が開設されており、この第2の溝(31)は湾曲している分だけ、第1の溝(30)とほぼ同じ長さに形成できる。内側に配備されるランチャンネル(5)は、該第2の溝(31)に嵌まる。従って、折曲した内側のランチャンネル(5)を円滑に収納でき、折曲により内側のランチャンネル(50)に加わる負荷を低減することができる。
【0013】
上記の記載では、外側に配備されるランチャンネル(50)を直線状の第1の溝(30)に収納し、内側に配備されるランチャンネル(5)を湾曲した第2の溝(31)に収納した。
しかし、これに代えて、図4に示すように、内側に配備されるランチャンネル(5)を直線状の第1の溝(30)に収納し、外向きに湾曲した第2の溝(31)に外側に配備されるランチャンネル(50)を収納してもよい。
また、上記例では、ランチャンネル(5)(50)は2本横並びに配備されるとしたが、3本以上であっても構わない。この場合、幅狭溝(3)は互いに離れた3本以上の溝で構成される。
【0014】
本例の1つのトレイ本体(10)内には、フロント側とリア側の合計4本のランチャンネル(5)(50)が収納される。このトレイ本体(10)は図5に示すように、5段積み上げられて1カートンとなし、8つのカートン(即ち、160本のランチャンネルが収納される)がケース(図示せず)に収納されて、例えば輸出用に搬送される。最上段のトレイ本体(10)(10)には防塵用のポリシート(11)が被さる。
【0015】
トレイ本体(10)は、任意の樹脂成形体で作ることができるが、熱可塑性樹脂の成形体であることが好ましい。熱可塑性樹脂には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂などが挙げられる。もちろん、これら発泡性熱可塑性樹脂粒子の発泡成形体でつくることもできる。
【0016】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
上記例では長尺部材としてランチャンネルを例示したが、例えば弾性材料から成るパッキングでもよい。
【符号の説明】
【0017】
(3) 幅広溝
(5) ランチャンネル
(10) トレイ本体
(20) 第1の幅広溝
(21) 第2の幅広溝
(30) 第1の溝
(31) 第2の溝
(50) ランチャンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の折り畳み可能な長尺部材を収納できる容器であって、
容器本体内には、少なくとも2本の長尺部材を内側と外側の横並びに配備可能な幅広溝と、該幅広溝に繋がって少なくとも1本の長尺部材が配備される幅狭溝が開設され、該幅広溝と幅狭溝の繋ぎ目は長尺部材の折曲箇所に対応し、
幅狭溝は少なくとも、外側に配備される第1の長尺部材が嵌まる第1の溝と、内側に配備される第2の長尺部材に対応して、第1の溝よりも内向きに膨らんだ第2の溝を具えることを特徴とする容器。
【請求項2】
複数本の折り畳み可能な長尺部材を収納できる容器であって、
容器本体内には、少なくとも2本の長尺部材を内側と外側の横並びに配備可能な幅広溝と、該幅広溝に繋がって少なくとも1本の長尺部材が配備される幅狭溝が開設され、該幅広溝と幅狭溝の繋ぎ目は長尺部材の折曲箇所に対応し、
幅狭溝は少なくとも、内側に配備される第1の長尺部材が嵌まる第1の溝と、外側に配備される第2の長尺部材に対応して、第1の溝よりも外向きに膨らんだ第2の溝を具えることを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−57256(P2011−57256A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208951(P2009−208951)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】