説明

折り装置及び吸収性物品の製造方法

【課題】 吸収性物品を構成するウェブの一方の側縁に向けて他方の側縁を折り返す場合において、折返位置を含む股下部の捻れによる吸収性物品の製造不良をより確実に抑制できる折り装置及び吸収性物品の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る折り装置100は、吸収性物品1を構成する長尺状のウェブ7の搬送方向MDに沿った折返位置において、ウェブ7の側縁20Aに向けて側縁10Aを折り返す。折り装置100は、折返位置から側縁20Aまでの基準領域11を押え付ける大径ロール110と、折返位置においてウェブ7を支持する折返ガイドバー130と、折返位置から側縁10Aまでの折返領域12を、基準領域11に向けて案内する案内機構140とを備える。折返ガイドバー130は、ウェブ7が摺動する摺動部131を有する。摺動部131の摩擦係数は、0.4以下であることを要旨とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品を構成する長尺状のウェブの搬送方向に沿った折返位置において、ウェブの一方の側縁に向けて他方の側縁を折り返す折り装置及び吸収性物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パンツ型の使い捨ておむつ等の吸収性物品は、着用者の前胴回りに対応する前胴回り部と、着用者の後胴回りに対応する後胴回り部と、着用者の股下に対応する股下部とを備える。なお、股下部の側部には、着用者の脚が挿入される脚周り開口領域(例えば、レッグホール)が形成される。
【0003】
このような吸収性物品の製造方法には、前胴回り部や後胴回り部、股下部などの吸収性物品を構成する長尺状のウェブに脚周り開口領域が形成された後、折り装置によって、ウェブの搬送方向に沿った折返位置(例えば、搬送方向に直交する方向の中心部分)において、ウェブの一方の側縁に向けて他方の側縁を折り返す折返工程が含まれる。
【0004】
具体的には、折り装置は、大径ロールと、折返ガイドバーと、複数の案内ロールとを少なくとも備える。大径ロールは、折返位置から一方の側縁までの基準領域(第1領域)を押え付ける。折返ガイドバーは、折返位置(中心部分)においてウェブを支持する。複数の案内ロールは、折返位置から他方の側縁までの折返領域(第2領域)を、基準領域に向けて案内する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−46246号公報(第6−7頁、図3及び図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の発明者は、上述した折り装置には、次のような問題があることを見出した。すなわち、折り装置によって一方の側縁に向けて他方の側縁を折り返す際、折返ガイドバーが折返位置を含む股下部に対応する部分に接触する。このため、前胴回り部や後胴回り部に対応する部分の搬送に対して、股下部に対応する部分の搬送が遅れてしまい、股下部に対応する部分が捻れた状態で一方の側縁に向けて他方の側縁が折り曲げられてしまうことがあった。
【0007】
これにより、前胴回り部から股下部に亘る部分や、後胴回り部から股下部に亘る部分にまで捻れが影響してしまう。つまり、上述した折返し工程の後において、前胴回り部と後胴回り部との接合部がずれてしまい、吸収性物品全体に歪みや変形が生じる。従って、吸収性物品の外観を著しく損ね、吸収性物品の製造不良が発生する場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、吸収性物品を構成するウェブの一方の側縁に向けて他方の側縁を折り返す場合において、折返位置を含む股下部の捻れによる吸収性物品の製造不良をより確実に抑制できる折り装置及び吸収性物品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の特徴は、吸収性物品(吸収性物品1)を構成する長尺状のウェブ(ウェブ7)の搬送方向(搬送方向MD)に沿った折返位置(折返位置)において、前記ウェブの一方の側縁(側縁20A)に向けて他方の側縁(側縁10A)を折り返す折り装置(例えば、折り装置100)であって、前記折返位置から前記一方の側縁までの第1領域(基準領域11)を押え付ける押付機構(大径ロール110)と、前記折返位置において前記ウェブを支持する支持機構(折返ガイドバー130)と、前記折返位置から前記他方の側縁までの第2領域(折返領域12)を、前記第1領域に向けて案内する案内機構(案内機構140)とを備え、前記支持機構は、前記ウェブが摺動する摺動部(摺動部131)を有し、前記摺動部の摩擦係数μは、0.4以下であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の特徴によれば、吸収性物品を構成するウェブの一方の側縁に向けて他方の側縁を折り返す場合において、折返位置を含む股下部の捻れによる吸収性物品の製造不良をより確実に抑制できる折り装置及び吸収性物品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1実施形態に係る吸収性物品を示す斜視図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る吸収性物品の製造方法の一部を説明するための図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る折り装置100を示す側面図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る折り装置100を示す斜視図である。
【図5】図5は、第1実施形態に係る折り装置100の矢視図(図4のA矢視図)である。
【図6】図6は、第2実施形態に係る折返ガイドバー130Aの一部を示す斜視図である。
【図7】図7は、第3実施形態に係る折返ガイドバー130Bの一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明に係る折り装置及び吸収性物品の製造方法について、図面を参照しながら説明する。具体的には、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態及びその他の実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0013】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る吸収性物品1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る吸収性物品1を示す斜視図である。第1実施形態では、吸収性物品1は、大人用のパンツ型の使い捨ておむつである。
【0014】
図1に示すように、吸収性物品1は、表面シート2と、裏面シート3と、吸収体4と、防水シート5とによって大略構成される。
【0015】
表面シート2は、着用対象(以下、着用者)の肌に接する。表面シート2には、不織布や開口プラスチックフィルムなどの液透過性のシートが使用される。裏面シート3は、表面シート2よりも外側(着用者から離れる側)に設けられる。裏面シート3は、不織布などが使用される。
【0016】
吸収体4は、表面シート2及び裏面シート3の間に設けられ、着用者からの排泄物を吸収する。吸収体4には、粉砕パルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物などが使用される。防水シート5は、裏面シート3と吸収体4との間に設けられ、着用者からの排泄物を透過させない。防水シート5には、液不透過性のシートが使用される。吸収性物品1は、着用者の肌側から順番に、表面シート2と、吸収体4と、防水シート5と、裏面シート3とを備える。
【0017】
このような吸収性物品1は、着用者の前胴回りに対応する前胴回り部10と、着用者の後胴回りに対応する後胴回り部20と、着用者の股下に対応する股下部30とが組み合わされることによって形成される。なお、股下部30の側部には、着用者の脚が挿入される脚周り開口領域40が形成される。
【0018】
前胴回り部10及び後胴回り部20は、接合部50によって一体化され、着用者の胴が挿入される胴回り開口領域60を形成する。前胴回り部10及び後胴回り部20の周縁には、伸縮性を有する糸状のゴム等からなるウエストギャザー6Aが設けられている。
【0019】
例えば、前胴回り部10及び後胴回り部20は、ウエストギャザー6Aが設けられることによって、前胴回り部10から後胴回り部20向かう前後方向に交差する交差方向に伸縮性を有していてもよく、前胴回り部10及び後胴回り部20自体が伸縮性を有するシートで形成されていることによって交差方向に伸縮性を有していてもよい。
【0020】
股下部30は、前胴回り部10と後胴回り部20との間に設けられる。股下部30の両側部には、伸縮性を有する糸状のゴム等からなるレッグギャザー6Bが設けられている。例えば、股下部30は、例えば、レッグギャザー6Bが設けられることによって吸収性物品1の前後方向に伸縮性を有していてもよく、股下部30自体が伸縮性を有するシートで形成されていることによって吸収性物品1の前後方向に伸縮性を有していてもよい。
【0021】
次に、第1実施形態に係る吸収性物品の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図2は、第1実施形態に係る吸収性物品の製造方法の一部を説明するための図である。図2に示すように、吸収性物品の製造方法は、胴回り形成工程S1と、吸収体転写工程S2と、脚周り形成工程S3と、折り工程S4と、接合工程S5と、切断工程S6とを少なくとも有する。
【0022】
胴回り形成工程S1では、ウェブ7Aとウェブ7Bとの間にギャザー(ウエストギャザー6A及び/又はレッグギャザー6B)を配置することによって、前胴回り部10及び後胴回り部20のそれぞれに対応するウェブ7を形成する。なお、搬送中のウェブ7(ウェブ7A,7B)は、ウェブ7の搬送方向MDに直交する直交方向CD(幅方向)に対して伸縮性を有する。また、ウェブ7は、ウェブ7の直交方向CDの中心を通り、かつウェブ7の搬送方向MDに沿った中心線CLに対して非対称である。
【0023】
吸収体転写工程S2では、胴回り形成工程S1の後に、ウェブ7上、具体的には、前胴回り部10と後胴回り部20との間に、股下部30に対応する股下部材30Aを転写する。なお、股下部材30Aは、裏面シート3と吸収体4とによって構成される。
【0024】
脚周り形成工程S3では、吸収体転写工程S2の後に、カットロール200(図3参照)によって、ウェブ7(ウェブ7A,7B)を切断することによって、脚周り開口領域40(いわゆる、レッグホール)を形成する。なお、脚周り開口領域40は、必ずしもウェブ7(ウェブ7A,7B)が切断されることによって形成される必要はなく、ウェブ7A及びウェブ7Bに加えて、股下部材30Aを構成する裏面シート3も一緒に切断されることによって形成されてもよい。ここで、吸収体転写工程S2と脚周り形成工程S3との順序については、逆の順序であってもよい。
【0025】
折り工程S4では、脚周り形成工程S3の後に、後述する折り装置100によって、ウェブ7の搬送方向MDに沿った折返位置において、ウェブ7における後胴回り部20側に位置する側縁20A(一方の側縁)に向けて、前胴回り部10に位置する側縁10A(他方の側縁)を2つに折り返えす。
【0026】
なお、折返位置とは、図2に示す実施形態においては、ウェブ7に対する直交方向CD中心を通り、かつ搬送方向MDに向かう中心線CLである。また、折返位置は、必ずしも中心線CLである必要はなく、中心線CLから側縁10A側または側縁20A側にズレていてもよい。ここで、折り工程S4の後に搬送されるウェブ7は、後述する一対の挟持ベルトコンベア300(図3及び図4参照)によって挟持されながら搬送される。
【0027】
接合工程S5では、折り工程S4の後に、超音波処理や加熱処理によって、吸収性物品1の接合部50に対応する接合領域50Aが接合される。なお、接合領域50Aは、ウェブ7の直交方向CDに延びる切断予定位置を示す仮想線SLの搬送方向MD両側を示す。
【0028】
切断工程S6では、接合工程S5の後に、接合領域50Aが接合されたウェブ7が仮想線SLに沿って切断される。これにより、吸収性物品1が製造される。
【0029】
次に、上述した折り工程S4において用いられる折り装置100の構成について、図面を参照しながら説明する。図3は、第1実施形態に係る折り装置100を示す側面図である。図4は、第1実施形態に係る折り装置100を示す斜視図である。図5は、第1実施形態に係る折り装置100の矢視図(図4のA矢視図)である。
【0030】
図3及び図4に示すように、折り装置100は、上述した脚周り開口領域40を形成する一対のカットロール200と、折り工程S4の後に搬送されるウェブ7を挟持する挟持ベルトコンベア300との間に設けられる。なお、一対のカットロール200には、第1搬送ロールR1を介してウェブ7が供給される。折り装置100には、第2搬送ロールR2、第3搬送ロールR3、第4搬送ロールR4、第5搬送ロールR5を介してウェブ7が供給される。なお、第1搬送ロールR1〜第4搬送ロールR4は、それぞれ支軸(不図示)を中心に回転する。
【0031】
折り装置100は、大径ロール110(押付機構)と、搬送ベルトコンベア120と、折返ガイドバー130(支持機構)と、案内機構140と、位置検出手段150と、位置制御手段160とを備える。
【0032】
大径ロール110は、第5搬送ロールR5と案内機構140との間に設けられ、支軸を中心に回転する。大径ロール110は、折返位置から側縁20Aまでの基準領域11(第1領域)を、搬送ベルトコンベア120側に向けて押さえ付けながら、ウェブ7を搬送する。大径ロール110は、基準領域11を略水平な状態で維持する。大径ロール110は、少なくとも折返位置から側縁20Aまでの幅を有する。
【0033】
搬送ベルトコンベア120は、大径ロール110と挟持ベルトコンベア300との間に設けられている。搬送ベルトコンベア120は、ウェブ7を挟んで大径ロール110の逆側に配設される。搬送ベルトコンベア120は、折り装置100の接地面101に対して略水平な状態で基準領域11を搬送する。
【0034】
搬送ベルトコンベア120は、基準領域11を支持しながら複数のローラ121間を巻回する搬送ベルト122と、搬送ベルト122を複数のローラ121間で巻回させる駆動手段(不図示)と、外気を吸引可能であり、搬送ベルト122上に位置する基準領域11を吸着する吸着機構123とを有する。
【0035】
搬送ベルト122は、折り装置100の接地面101に対して略水平な状態で駆動する。搬送ベルト122の駆動速度vは、ウェブ7の搬送速度vと同じであることが好ましい。搬送ベルト122には、基準領域11を吸着する吸着孔124(図4及び図5参照)が複数形成されている。つまり、吸着孔124を介した吸着機構123の吸引によって、搬送ベルト122上に基準領域11が吸着されながら、ウェブ7が搬送される。
【0036】
折返ガイドバー130は、第5搬送ロールR5近傍から一対の挟持ベルトコンベア300間まで少なくとも設けられる。折返ガイドバー130は、折返位置(すなわち、中心線CL上)においてウェブ7を支持する。つまり、折返ガイドバー130は、基準領域11と、折返位置から側縁10Aまでの折返領域12(第2領域)とを区分けする。折返ガイドバー130は、搬送方向MDに伸び、かつ搬送ベルト122と略平行に設けられている。また、折返ガイドバー130は、搬送ベルト122上に位置している(図3及び図4参照)。
【0037】
折返ガイドバー130は、ウェブ7が摺動する摺動部131を有する。摺動部131の摩擦係数μは、0.4以下である。摺動部131の摩擦係数μは、0.1〜0.3とすることができる。摺動部131の摩擦係数μは、0.2とすることができる。具体的には、摺動部131は、折返ガイドバー130の外皮層を構成し、ポリテトラフルオロエチレンからなるチューブにより形成される。なお、摩耗係数は、JIS R 1613−1993に規定されたボールオンディスク方式に準拠して測定された値である。
【0038】
ここで、摺動部131は、必ずしもポリテトラフルオロエチレンからなるチューブにより形成される必要はなく、例えば、超高分子ポリエチレン(摩擦係数が0.2)からなるチューブにより形成されていてもよい。
【0039】
案内機構140は、第5搬送ロールR5と挟持ベルトコンベア300との間に設けられている。案内機構140は、ウェブ7の側縁20Aに向けて側縁10Aを一致させるように、側縁20Aを案内する。すなわち、案内機構140は、折返領域12を基準領域11に向けて案内する。
【0040】
案内機構140は、一対の第1案内ロール141と、一対の第2案内ロール142と、第3案内ロール143と、一対の第4案内ロール144と、第5案内ロール145とによって構成される。なお、第1案内ロール141〜第5案内ロール145は、それぞれ支軸を中心に回転する。
【0041】
第1案内ロール141は、折返ガイドバー130を介して折返領域12を立ち上げる。図5に示すように、第1案内ロール141から第5案内ロール145にかけて、基準領域11に対する折返領域12の傾斜角α(股下部30の折り角度)が徐々に小さくなる。
【0042】
位置検出手段150は、第5案内ロール145と挟持ベルトコンベア300との間に設けられる。位置検出手段150は、ウェブ7の側縁10A及び側縁20Aが搬送される位置を検出する。位置検出手段150は、第1センサー151と、第2センサー152とによって構成される。
【0043】
第1センサー151は、側縁10Aが搬送される位置を検出する。第2センサー152は、側縁20Aが搬送される位置を検出する。第1センサー151及び第2センサー152は、それぞれ検出した側縁10A及び側縁20Aが搬送される位置を示す位置データを位置制御手段160に供給する。
【0044】
位置制御手段160は、第5案内ロール145と挟持ベルトコンベア300との間に設けられる。位置制御手段160は、位置検出手段150からの指示によってウェブ7の直交方向CDの位置合わせを行うローラーなどからなる。
【0045】
挟持ベルトコンベア300には、折り装置100を通過して2つに折られたウェブ7を挟持しながら搬送する。挟持ベルトコンベア300は、複数のローラR10間を巻回する第1挟持ベルト301と、複数のローラR20間を巻回する第2挟持ベルト302と、第1挟持ベルト301及び第2挟持ベルト302を複数のローラR10,R20間で巻回させる駆動手段(不図示)とを少なくとも備える。つまり、第1挟持ベルト301と第2挟持ベルト302をとによって、2つに折られたウェブ7が挟持される。
【0046】
以上説明した第1実施形態では、摺動部131の摩擦係数は、0.4以下である。これによれば、折り装置100によって側縁20Aに向けて側縁10Aを折り返す際に、折返位置を含む股下部30に対応する部分と折返ガイドバー130とが滑りやすく、前胴回り部10や後胴回り部20に対応する部分の搬送に対して股下部30に対応する部分の搬送が遅れることを抑制できる。従って、ウェブ7の側縁20Aに向けて側縁10Aが一致しやすく、股下部30の捻れによる吸収性物品1の製造不良をより確実に抑制できる。
【0047】
なお、摺動部131の摩擦係数が0.4よりも大きいと、折返ガイドバー130が折返位置を含む股下部30に接触した際、前胴回り部10や後胴回り部20に対応する部分の搬送に対して、股下部30に対応する部分の搬送が遅れてしまい、股下部30に対応する部分が捻れてしまうことがある。これにより、前胴回り部10から股下部30に亘る部分や、後胴回り部20から股下部30に亘る部分にまで捻れが影響してしまう。例えば、接合工程S5において、接合部50に対応する所定領域50Aがずれてしまい、吸収性物品全体に歪みや変形が生じる。従って、吸収性物品の外観を著しく損ね、吸収性物品の製造不良が発生する場合がある。
【0048】
特に、搬送中のウェブ7(ウェブ7A,7B)は、ウェブ7の直交方向CDに対して伸縮性を有する。また、ウェブ7は、中心線CLに対して非対称である。この場合、ウェブ7の側縁10Aまたは側縁20Aにおいて、ウェブ7の直交方向CDに対する伸縮性が高い側へ引っ張られる力が発生し、股下部30に対応する部分が遅れやすい。このため、上述したように、摺動部131の摩擦係数が0.4以下であることによって、股下部30に対応する部分の搬送が遅れることを抑制できる。
【0049】
第1実施形態では、摺動部131は、ポリテトラフルオロエチレンからなるチューブにより形成される。これによれば、摺動部131が非粘着特性となる。このため、吸収性物品1を構成する構成部品(例えば、レッグギャザー6)の接合に使用された接着剤が脚周り開口領域40から接着剤がはみ出した場合や染み出した場合であっても、前胴回り部10や後胴回り部20に対応する部分の搬送に対して、股下部30に対応する部分の搬送が遅れることを抑制できる。
【0050】
第1実施形態では、吸着機構123は、搬送ベルト122上に位置する基準領域11を吸着する。これによれば、搬送ベルト122上に基準領域11が吸着されながら、ウェブ7が搬送される。従って、基準領域11の搬送が安定し、前胴回り部10や後胴回り部20に対応する部分の搬送に対して、股下部30に対応する部分の搬送が遅れることを確実に抑制できる。
【0051】
[第2実施形態]
以下において、第2実施形態に係る折り装置100Aの構成について、図面を参照しながら説明する。図6は、第2実施形態に係る折返ガイドバー130Aの一部を示す斜視図である。なお、上述した第1実施形態に係る折り装置100と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0052】
ここで、上述した第1実施形態に係る折り装置100では、折返ガイドバー130の摺動部131は、ポリテトラフルオロエチレンからなるチューブにより形成される。これに対して、第2実施形態に係る折り装置100Aでは、折返ガイドバー130Aの摺動部131Aは、折返位置に沿って配設されるボールコンベアにより形成される。
【0053】
具体的には、図6(a)に示すように、摺動部131Aは、回転可能な球状のボール133と、ボール133を回転可能に支持する支持部134と、複数の支持部134を固定する棒状の固定部135とによって構成される。なお、ボール133は、樹脂によって形成されることが好ましい。
【0054】
ここで、摺動部131Aは、必ずしもボールコンベアである必要はなく、例えば、図6(b)に示すように、軸136Aを有するホイール136と、ホイール136を回転可能に支持する支持部137とを備えるホイールコンベアにより形成されていてもよい。
【0055】
以上説明した第2実施形態では、摺動部131Aは、ボールコンベアにより形成される。これによれば、第1実施形態の作用・効果と同様に、折り装置100Aによって側縁20Aに向けて側縁10Aを折り返す際に、前胴回り部10や後胴回り部20に対応する部分の搬送に対して、股下部30に対応する部分の搬送が遅れることを抑制できる。
【0056】
[第3実施形態]
以下において、第3実施形態に係る折り装置100Bの構成について、図面を参照しながら説明する。図6は、第3実施形態に係る折返ガイドバー130Bの一部を示す斜視図である。なお、上述した第1実施形態に係る折り装置100と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0057】
ここで、上述した第1実施形態に係る折り装置100では、折返ガイドバー130の摺動部131は、ポリテトラフルオロエチレンからなるチューブにより形成される。これに対して、第3実施形態に係る折り装置100Bでは、折返ガイドバー130Bは、筒状部138と空気供給部139とによって構成される。
【0058】
具体的には、筒状部138には、複数の穴138Aが形成される。空気供給部139は、筒状部138に空気を供給する。つまり、空気供給部139から供給された空気は、筒状部138内を通過して、穴138Aから放出される。
【0059】
以上説明した第3実施形態では、折返ガイドバー130Bは、筒状部138と空気供給部139とによって構成される。これによれば、折返位置を含む股下部30に対応する部分が折返ガイドバー130から浮いた状態となり、摩擦抵抗が減少する。このため、折り装置100Bによって側縁20Aに向けて側縁10Aを折り返す際に、前胴回り部10や後胴回り部20に対応する部分の搬送に対して、股下部30に対応する部分の搬送が遅れることを抑制できる。
【0060】
なお、第3実施形態と同様の効果を得るために、筒状部138には、必ずしも複数の穴138Aが形成される必要はなく、例えば、穴138Aの代わりに隆起部が形成されていてもよい。この場合、空気供給部139が設けられる必要ないことは勿論である。
【0061】
[その他の実施形態]
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0062】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、吸収性物品1は、前胴回り部10と、後胴回り部20と、股下部30とが組み合わされることによって形成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、全て一体に形成されてもよい。この場合、吸収性物品の製造方法が異なることは勿論である。
【0063】
また、折り装置100は、パンツ型の使い捨ておむつの製造に用いられるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、オープン型使い捨ておむつや生理用ナプキン、パンティライナーなど様々な物品の製造に用いられてもよい。
【0064】
また、搬送ベルトコンベア120は、折り装置100の接地面101に対して略水平な状態で基準領域11を搬送するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、折り装置100の接地面101に対して傾斜した状態で基準領域11を搬送してもよい。この場合、搬送ベルト122は、折り装置100の接地面101に対して傾斜した状態で駆動する。
【0065】
さらに、摺動部131は、ポリテトラフルオロエチレンからなる、或いはポリテトラフルオロエチレンで被覆されていると説明した。しかし、低摩擦材料であれば、ポリテトラフルオロエチレンに代わって使用することができる。なお、「低摩擦材料」とは、上記JIS R 1613−1993に規定されたボールオンディスク方式に準拠して測定された値で、摩擦係数0.4以下の材料である。また、搬送ベルトコンベア120は、吸着機構123を備えているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、吸着機構123以外であっても、搬送ベルト122に基準領域11をくっつけられればよい。
【0066】
また、折り装置100は、大径ロール110と、搬送ベルトコンベア120と、折返ガイドバー130と、案内機構140と、位置制御手段160とを備えるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、少なくとも大径ロール110と、折返ガイドバー130と、案内機構140とを備えていればよい。
【0067】
例えば、折り装置100は、必ずしも搬送ベルトコンベア120を備える必要はなく、ウェブ7を搬送可能な構成であればよく、例えば、搬送ベルトコンベア120の代わりに複数のロールであってもよい。また、第1搬送ロールR1〜第5搬送ロールR5や、第1案内ロール141〜第5案内ロール145は、任意の数であってもよい。
【0068】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0069】
1…吸収性物品、2…表面シート、3…裏面シート、4…吸収体、5…防水シート、6…レッグギャザー、6A…ウエストギャザー、6B…レッグギャザー、7,7A,7B…ウェブ、10…前胴回り部、10A…側縁、11…基準領域、12…折返領域、20…後脚周り部、20A…側縁、30…股下部、40…脚周り開口領域、50…接合部、50A…接合領域、60…胴周り開口領域、100,100A,100B…折り装置、101…接地面、110…大径ロール(押付機構)、120…搬送ベルトコンベア、121…ローラ、122…搬送ベルト、123…吸着機構、124…吸着孔、130,130A…折返ガイドバー(支持機構)、131,131A…摺動部、140…案内機構、141〜145…第1〜第5案内ロール、150…位置検出手段、151…第1センサー、152…第2センサー、160…位置制御手段、200…カットロール、300…挟持ベルトコンベア、301…第1挟持ベルト、302…第2挟持ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品を構成する長尺状のウェブの搬送方向に沿った折返位置において、前記ウェブの一方の側縁に向けて他方の側縁を折り返す折り装置であって、
前記折返位置から前記一方の側縁までの第1領域を押え付ける押付機構と、
前記折返位置において前記ウェブを支持する支持機構と、
前記折返位置から前記他方の側縁までの第2領域を、前記第1領域に向けて案内する案内機構と
を備え、
前記支持機構は、前記ウェブが摺動する摺動部を有し、
前記摺動部の摩擦係数μは、0.4以下である折り装置。
【請求項2】
前記摺動部は、ポリテトラフルオロエチレンからなるチューブにより形成される請求項1に記載の折り装置。
【請求項3】
前記摺動部は、前記折返位置に沿って配設されるボールコンベアにより形成される請求項1に記載の折り装置。
【請求項4】
前記ウェブを挟んで前記押付機構の逆側に配設されるベルトコンベアをさらに備え、
前記ベルトコンベアは、
前記第1領域を支持しながら複数のローラ間を巻回する搬送ベルトと、
前記搬送ベルト上に位置する前記第1領域を吸着する吸着機構と
を有する請求項1乃至3の何れか一項に記載の折り装置。
【請求項5】
吸収性物品を構成する長尺状のウェブの搬送方向に沿った折返位置において、前記ウェブの一方の側縁に向けて他方の側縁を折り返す折り装置であって、
前記折返位置から前記一方の側縁までの第1領域を押え付ける押付機構と、
前記折返位置において前記ウェブを支持する支持機構と、
前記折返位置から前記他方の側縁までの第2領域を、前記第1領域に向けて案内する案内機構と
を備え、
前記支持機構は、
複数の穴が形成される筒状部と、
前記筒状部に空気を供給する空気供給部と
を有する折り装置。
【請求項6】
着用者の前胴回りに対応する前胴回り部と、着用者の後胴回りに対応する後胴回り部と、着用者の股下に対応する股下部と、股下部の側部に開口する脚周り開口領域とを備える吸収性物品の製造方法であって、
前記吸収性物品を構成する長尺状のウェブに前記脚周り開口領域を形成する工程と、
折り装置によって、前記ウェブの搬送方向に沿った折返位置において、前記ウェブの一方の側縁に向けて他方の側縁を折り返す工程と
を備え、
前記折り装置は、
前記折返位置から前記一方の側縁までの第1領域を押え付ける押付機構と、
前記折返位置において前記ウェブを支持する支持機構と、
前記折返位置から前記他方の側縁までの第2領域を、前記第1領域に向けて案内する案内機構と
を備え、
前記支持機構は、前記ウェブが摺動する摺動部を有し、
前記摺動部の摩擦係数は、0.4以下である吸収性物品の製造方法。
【請求項7】
前記ウェブは、前記ウェブの搬送方向に直交する直交方向の中心を通り、かつ前記ウェブの搬送方向に沿った中心線に対して非対称である請求項6に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項8】
前記ウェブは、前記ウェブの直交方向に対して伸縮性を有する請求項6または7に記載の吸収性物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−227545(P2010−227545A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41995(P2010−41995)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】