説明

折畳式座席運搬車体

【課題】 基本構造をなすフレームの数を少なくした折畳式座席運搬車体を提供する。
【解決手段】 座席運搬車体は、前脚10と、後脚20と、押棒30と、位置関係固定手段60とを備える。前脚10の上端部と後脚20の上端部とは、第1の軸1を介して回動可能に連結される。押棒30の前端部材32は、折畳み動作時に前脚10に沿って変位し得るように前脚10に連結されている。押棒30の途中位置の部分は、第2の軸2を介して後脚20に回動可能に連結される。位置関係固定手段60は、開状態および折畳み状態おいて、前脚、後脚および押棒の位置関係を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、座席を運搬する車体に関し、特に簡単な構造の折畳式座席運搬車体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
座席を運搬する車体の一例として、乳母車がある。折畳式乳母車は、例えば、特開2004−161039号公報(特許文献1)、特開2004−237784号公報(特許文献2)および特開2004−291661号公報に開示されている。これらの公報に開示された乳母車は、前輪と後輪とが互いに近づくように折畳まれ、折畳み状態においては自立可能になっている。
【特許文献1】特開2004−161039号公報
【特許文献2】特開2004−237784号公報
【特許文献3】特開2004−291661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の各公報に開示された乳母車において、基本構造をなすフレームの数を少なくしてより簡単な構造にすることが望まれる。
【0004】
本発明の目的は、基本構造をなすフレームの数を少なくした折畳式座席運搬車体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に従った折畳式座席運搬車体は、下端部に前輪を有する前脚と、下端部に後輪を有する後脚と、車体を移動操作する際に掴まれる押棒と、位置関係固定手段とを備える。後脚の上端部は、前脚の上端部に回動可能に連結される。押棒は、その前端部が前脚に連結され、その途中位置の部分が後脚に回動可能に連結されている。押棒の前端部は、前輪および後輪が互いに近づく折畳み動作時に前脚に沿って相対的に変位し得るような態様で前脚に連結されている。位置関係固定手段は、座席運搬車体の開状態および折畳み状態において、前脚、後脚および押棒の位置関係を固定する。
【0006】
上記構成の折畳式座席運搬車体によれば、前脚と、後脚と、押棒とによって基本構造が作られているので、基本構造をなすフレームの数が少なくなる。
【0007】
一つの実施形態では、座席運搬車体は、座席の座部を下から支えるように押棒に固定された座部支え部材を備える。この場合、座席を座部支え部材上に固定して取り付けておいてもよい。また、座席を、座部支え部材上に着脱可能に取り付けるようにしてもよい。
【0008】
座席を座部支え部材上に着脱可能に取り付ける実施形態の場合、好ましくは、座席は、座部支え部材上に前向きおよび後ろ向きの両状態で取り付け可能に設けられる。このようにすれば、必要に応じて、背面押しの状態と対面押しの状態とに切換えることが可能になる。
【0009】
一つの実施形態では、押棒は、その前端部に前脚を受入れるように上下方向に貫通した受入穴を有する。座席運搬車体の折畳み動作時に、前脚は押棒前端部の受入穴内をスライド移動する。
【0010】
位置関係固定手段は、例えば、押棒と後脚との交差角度を固定する構造を有する。他の実施形態として、位置関係固定手段は、前脚と後脚との交差角度を固定する構造のものであってもよく、あるいは前脚と押棒との交差角度を固定する構造のものであってもよい。
【0011】
例えば押棒と後脚との交差角度を固定する構造の一例として、位置関係固定手段は、押棒に沿って上下方向に変位可能に設けられたロック部材と、このロック部材に係止し得るように後脚上に固定して設けられた複数の係止部とを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図4は、この発明の一実施形態である折畳式座席運搬車体の全体を示している。折畳式座席運搬車体は、座席本体70を運搬するものである。図示した実施形態では、座席本体70は、運搬車体に対して着脱可能に設けられており、さらに前向きおよび後ろ向きの両状態で取り付け可能になっている。図2は、座席本体70を前向きに取り付けた状態を示しており、母親等は、座席に着座した子供に対して背面押しの状態で車体を移動操作することになる。図3は、座席本体70を後ろ向きに取り付けた状態を示しており、母親等は、座席に着座した子供に対して対面押しの状態で車体を移動操作することになる。
【0013】
図4は、座席運搬車体を折畳んだ状態を示している。図示するように、折畳み状態においては、前輪11と後輪12とが互いに近づき、座席運搬車体は自立可能になっている。また、座席70を取り付けた状態のままで、座席運搬車体を折畳むことができる。図2および図3を比較すれば明らかなように、座席運搬車体の開状態および折畳み状態において、座席本体70の形態は変化していない。すなわち、座席本体70は、座部71と背もたれ部72とを備えているが、座部71と背もたれ部72との間の角度は、座席運搬車体の開状態および折畳み状態において同じである。
【0014】
座席運搬車体に座席本体70を取り付けることにより、座席運搬車体を乳母車として使用することが可能になる。また、座席運搬車体から取外した座席本体70を、自動車用子供座席として、自動車の座席上に取り付けて使用することもできる。さらに、座席運搬車体から取外した座席本体70を室内用子供椅子として使用することも可能である。
【0015】
図1、図5および図6を参照して、座席運搬車体の基本構造を説明する。座席運搬車体は、前輪11を有する前脚10と、後輪21を有する後脚20と、車体の移動操作時に掴まれる押棒30と、開状態および折畳み状態において前脚10、後脚20および押棒30の位置関係を固定する位置関係固定手段60とを備える。
【0016】
前脚10の上端部と、後脚20の上端部とは、第1の軸1を介して回動可能に連結されている。押棒30は、その前方端に前端部材32を有しており、この前端部材32が、折畳み動作時に前脚10に沿って変位し得るように、前脚10に連結されている。具体的には、前端部材32は、図5に示すように、上下方向に貫通した受入穴33を有しており、前脚10はこの受入穴33内を上下方向に相対的にスライド可能となっている。
【0017】
押棒30の途中位置の部分は、第2の軸2を介して、後脚20に回動可能に連結されている。より具体的な構造を説明する。図5に示すように、後脚20は、その上方端に上部プレート22を有している。押棒30は、その途中位置に中間プレート31を有している。後脚20の上部プレート22と、押棒30の中間プレート31とが、第2の軸2を介して、回動可能に連結される。
【0018】
図示した実施形態における位置関係固定手段60は、座席運搬車体の開状態および折畳み状態において、押棒30と後脚20との交差角度を固定するものである。他の実施形態として、位置関係固定手段が、前脚と後脚との交差角度を固定するものであってもよいし、あるいは前脚と押棒との交差角度を固定するものであってもよい。要するに、位置関係固定手段は、押棒30の前端部材32と前脚10との連結点と、第1の軸1と、第2の軸2とで形成される三角形を固定するものであればよい。位置関係固定手段60の詳細については、後述する。
【0019】
押棒30は、その上方部に、連結軸35を介して回動可能に設けられた逆U字形状の握り部34を有する。図1および図2に示す座席運搬車体の開状態においては、握り部34は、押棒30を上方に延長させるように延びている。一方、図4に示す折畳み状態においては、握り部34は、押棒30の下方部分に沿うように折り曲げられ、それにより座席運搬車体の折畳み状態の高さを減じている。
【0020】
次に、図7〜図9を参照して、位置関係固定手段60を説明する。なお、図8および図9においては、位置関係固定手段60に関連する各要素を図解的に示しており、実際の形状とは異なることを理解しなければならない。
【0021】
図示した位置関係固定手段60は、押棒30と後脚20との交差角度を固定するものであり、具体的な構造として、押棒30に沿って上下方向に変位可能に設けられたロック部材61と、このロック部材61に係止し得るように後脚20の上部プレート22に設けられた複数の係止部62、63を有している。図8に示すように、ロック部材61が一方の係止部62に係合している状態では、押棒30と前脚10との連結点と、第1の軸1と、第2の軸2とで形成される三角形が固定され、座席運搬車体の開状態が固定される。
【0022】
図9に示すように、ロック部材61が他方の係止部63に係合している状態では、折畳み状態における上記三角形が固定され、座席運搬車体の折畳み状態が固定される。
【0023】
図7は、ロック部材61を動かすための操作手段を示している。図7に示すように、押棒30の上方部に位置する逆U字形状の握り部34の中央には、下方に空洞を有する取付部材36が固定されている。取付部材36は、固定軸42を受入れる取付穴43を有する。
【0024】
取付部材36の空洞部に組み込まれる操作部材37は、固定軸42を受入れる長孔44を有する。長孔44は上下方向に長いので、操作部材37は、上下方向に変位可能となる。
【0025】
固定軸42には、3つの頂点を有する2個の回動部材38,39が回動可能に取り付けられている。各回動部材38、39の3つの頂点のうち、第1の頂点が固定軸42に連結され、第2の頂点が操作部材37に当接し、第3の頂点がワイヤ40、41に連結されている。ワイヤ40、41は、座席運搬車体の左右側部に位置する一対の押棒30に沿って延び、その下端が位置関係固定手段60の構成要素であるロック部材61に連結されている。図示していないが、左右の側部に位置する一対のロック部材61は、ばねによって常に下方に向かって移動するように付勢されている。したがって、ワイヤ40、41を介して、一方の回動部材38には図において反時計方向に回動させようとする付勢力が作用し、他方の回動部材39には図において時計方向に回動させようとする付勢力が作用している。そのため、操作部材37は、常時は、下方の位置にもたらされている。
【0026】
例えば、開状態にある座席運搬車体を折りたたもうとするときには、操作部材37を手で掴んで上方の位置にもたらす。すると、ロック部材61がワイヤ40、41に引張られて上方に移動し、一方の係止部62から離れる。その状態では、後脚20と押棒30との交差角度を変更することが可能であるので、前輪11と後輪21とを近づけるように座席運搬車体を折畳んでゆく。この折畳み動作時に、前脚10は、押棒30の前端部材32の受入穴33内を所定量だけスライド移動する。
【0027】
座席運搬車体が所定の折畳み状態になったら、操作部材37を掴んでいた手を離す。すると、ロック部材61はばねの付勢力により下方に移動し、他方の係止部63に係合して座席運搬車体の折畳み状態を固定する。
【0028】
図1〜図4に示すように、座席運搬車体は、座席本体70の座部71を下から支える座部支え部材45を備える。この座部支え部材45は、固定軸46、47を介して押棒30に固定される。座席本体70は、座部支え部材45上に着脱可能に取り付けられる。また、前述したように、座席本体70は、座部支え部材45上に前向きおよび後ろ向きの両状態で取り付け可能である。さらに、図4に示すように、座席本体70を座部支え部材45上に取り付けた状態のままで、座席運搬車体を折畳むことが可能である。
【0029】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明は、非常に簡単な構造の座席運搬車体として有利に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の一実施形態である座席運搬車体の側面図である。
【図2】座席本体を前向きにして取り付けた状態の座席運搬車体の側面図である。
【図3】座席本体を後ろ向きにして取り付けた状態の座席運搬車体の側面図である。
【図4】座席本体を取り付けた状態のままで折畳んだ座席運搬車体の側面図である。
【図5】前脚と、後脚と、押棒とを分解して示す側面図である。
【図6】後脚と押棒とを連結した状態の側面図である。
【図7】ロック部材を動かすための操作手段を示す図である。
【図8】座席運搬車体を開状態で固定している位置関係固定手段の図解図である。
【図9】座席運搬車体を折畳み状態で固定している位置関係固定手段の図解図である。
【符号の説明】
【0032】
1 第1の軸、2 第2の軸、10 前脚、11 前輪、20 後脚、21 後輪、22 上部プレート、30 押棒、31 中間プレート、32 前端部材、33 受入穴、34 握り部、35 連結軸、36 取付部材、37 操作部材、38、39 回動部材、40、41 ワイヤ、42 固定軸、43 取付穴、44 長孔、45 座部支え部材、46、47 固定軸、60 位置関係固定手段、61 ロック部材、62、63 係止部、70 座席本体、71 座部、72 背もたれ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部に前輪を有する前脚と、
下端部に後輪を有し、その上端部が前記前脚の上端部に回動可能に連結された後脚と、
前記前輪および後輪が互いに近づく折畳み動作時に前端部が前記前脚に沿って変位し得るように前記前脚に連結され、その途中位置の部分が前記後脚に回動可能に連結された押棒と、
開状態および折畳み状態において前記前脚、後脚および押棒の位置関係を固定する位置関係固定手段とを備える、折畳式座席運搬車体。
【請求項2】
座席の座部を下から支えるように前記押棒に固定された座部支え部材を備える、請求項1に記載の折畳式座席運搬車体。
【請求項3】
前記座部支え部材上に固定して取り付けられる座席を備える、請求項2に記載の折畳式座席運搬車体。
【請求項4】
前記座席は、前記座部支え部材上に着脱可能に取り付けられる、請求項3に記載の折畳式座席運搬車体。
【請求項5】
前記座席は、前記座部支え部材上に前向きおよび後ろ向きの両状態で取り付け可能に設けられている、請求項4に記載の折畳式座席運搬車体。
【請求項6】
前記押棒は、その前端部に前記前脚を受入れるように上下方向に貫通した受入穴を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の折畳式座席運搬車体。
【請求項7】
前記位置関係固定手段は、前記押棒と前記後脚との交差角度を固定するものである、請求項1〜6のいずれかに記載の折畳式座席運搬車体。
【請求項8】
前記位置関係固定手段は、前記押棒に沿って上下方向に変位可能に設けられたロック部材と、前記ロック部材に係止し得るように前記後脚上に固定して設けられた複数の係止部とを備える、請求項7に記載の折畳式座席運搬車体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−69758(P2007−69758A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259492(P2005−259492)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(390006231)アップリカ育児研究会アップリカ▲葛▼西株式会社 (97)
【Fターム(参考)】