抜止め部材の挿入装置及び抜止め部材の挿入方法
【課題】ハウジングの収容溝に抜止め部材を精度良く効率的に挿入できる抜止め部材の挿入装置と抜止め部材の挿入方法を提供する。
【解決手段】流体管を取り囲んで装着される環状の受口部1に形成された収容溝4に、前記流体管の外周面に係止可能な抜止め部材を挿入する抜止め部材の挿入装置において、前記抜止め部材に内側から押し当たる押圧ヘッド53と、流体管P1の径方向に押圧ヘッド53を駆動するエアシリンダ54とを有する押圧部51と、受口部1の内部で収容溝4の内側に配置される位置と受口部1の外部に配置される位置との間で押圧ヘッド53が変位するように、押圧部51を受口部1に対して相対的に管軸方向に駆動するエアシリンダ52とを備える。
【解決手段】流体管を取り囲んで装着される環状の受口部1に形成された収容溝4に、前記流体管の外周面に係止可能な抜止め部材を挿入する抜止め部材の挿入装置において、前記抜止め部材に内側から押し当たる押圧ヘッド53と、流体管P1の径方向に押圧ヘッド53を駆動するエアシリンダ54とを有する押圧部51と、受口部1の内部で収容溝4の内側に配置される位置と受口部1の外部に配置される位置との間で押圧ヘッド53が変位するように、押圧部51を受口部1に対して相対的に管軸方向に駆動するエアシリンダ52とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管を取り囲んで装着される環状のハウジングに形成された収容溝に、その流体管の外周面に係止可能な抜止め部材を挿入する装置と方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1の第7〜9図に開示されているように、一方の流体管の端部に形成された受口部に、他方の流体管の端部に形成された挿口部を挿入し、受口部の内周側に配設した抜止め部材を挿口部の外周面に係止させて、その挿口部を有する流体管が管軸方向に移動するのを防止できるように構成した管継手が知られている。かかる管継手では、受口部が、挿口部を取り囲んで装着される環状のハウジングとなり、そのハウジングに形成された収容溝に抜止め部材が収容される。
【0003】
また、上記文献の第2〜4図に開示されているように、受口部の内周と挿口部の外周との間を密封するシール材を、押輪と呼ばれる環状の金具で押圧するとともに、その押輪の内周側に配設した抜止め部材を挿口部の外周面に係止させて、挿口部を有する流体管が管軸方向に移動するのを防止できるように構成した管継手も知られている。かかる管継手では、押輪が、挿口部を取り囲んで装着される環状のハウジングとなり、そのハウジングに形成された収容溝に抜止め部材が収容される。
【0004】
上記の如き流体管の移動防止装置を組み立てる作業では、受口部や押輪などのハウジングが有する収容溝に抜止め部材を精度良く挿入する必要があり、仮に、収容溝に対する抜止め部材の挿入量にばらつきが生じたり、挿入した抜止め部材の姿勢が崩れていたりすると、挿口部の外周面に対する抜止め部材の係止作用を安定的に発揮しにくい傾向にある。また、生産性の観点からは、抜止め部材を挿入する際の作業効率が高められ、大量生産にも適した手法の提案が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−88091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハウジングの収容溝に抜止め部材を精度良く効率的に挿入できる抜止め部材の挿入装置と抜止め部材の挿入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係る抜止め部材の挿入装置は、流体管を取り囲んで装着される環状のハウジングに形成された収容溝に、前記流体管の外周面に係止可能な抜止め部材を挿入する抜止め部材の挿入装置において、前記抜止め部材に内側から押し当たる押圧ヘッドと、前記流体管の径方向に前記押圧ヘッドを駆動するヘッド駆動機構とを有する押圧部と、前記ハウジングの内部で前記収容溝の内側に配置される位置と前記ハウジングの外部に配置される位置との間で前記押圧ヘッドが変位するように、前記押圧部を前記ハウジングに対して相対的に管軸方向に駆動する押圧部駆動機構と、を備えるものである。
【0008】
本発明に係る抜止め部材の挿入装置によれば、押圧部駆動機構により押圧部を駆動して押圧ヘッドをハウジングの内部で収容溝の内側に配置したうえで、ヘッド駆動機構により押圧ヘッドを流体管の径方向に駆動できることから、抜止め部材を収容溝に精度良く効率的に挿入することができる。しかも、ヘッド駆動機構を用いることによって、抜止め部材を挿入する際の作業効率を高められるため、大量生産にも適している。
【0009】
本発明の抜止め部材の挿入装置では、前記押圧部に台座が設けられ、前記収容溝の内側に前記押圧ヘッドを配置したときに、前記台座の座面が前記収容溝の奥側の内壁面の高さに配置されるものが好ましい。この場合、台座があることにより抜止め部材を安定して仮置きできるとともに、仮置きした抜止め部材の落下を防止して作業性を向上できる。その結果、収容溝に抜止め部材をより精度良く効率的に挿入することができる。
【0010】
本発明の抜止め部材の挿入装置では、前記押圧部に、前記ヘッド駆動機構による前記押圧ヘッドの駆動方向とは逆向きに前記ハウジングの内周面に当接可能な支持部が設けられているものが好ましい。かかる構成によれば、押圧ヘッドを駆動して抜止め部材を収容溝に挿入するときの押圧に伴ってハウジングが傾いたり動いたりするのを防いで、抜止め部材をより精度良く挿入することができる。
【0011】
本発明の抜止め部材の挿入装置では、前記押圧部に対して前記ハウジングを相対的に回転させる回転機構を備えるものが好ましい。かかる構成であれば、ハウジングに対する押圧ヘッドの周方向位置を変えながら、簡便な作業により抜止め部材を収容溝に向けて次々に押圧できるため、抜止め部材をより効率的に挿入することができる。
【0012】
また、本発明に係る抜止め部材の挿入方法は、流体管を取り囲んで装着される環状のハウジングに形成された収容溝に、前記流体管の外周面に係止可能な抜止め部材を挿入する抜止め部材の挿入方法において、管軸方向を上下にして据えた前記ハウジングに対して押圧部を相対的に昇降させ、その押圧部が有する押圧ヘッドを前記収容溝の内側に配置する工程と、前記収容溝に抜止め部材を仮置きする工程と、前記押圧ヘッドを前記流体管の径方向に駆動し、仮置きした抜止め部材を前記押圧ヘッドで押圧して前記収容溝に挿入する工程と、を備えるものである。
【0013】
本発明に係る抜止め部材の挿入方法では、流体管の径方向に押圧ヘッドを駆動することで、収容溝に仮置きしている抜止め部材を押圧できることから、抜止め部材を収容溝に精度良く挿入することができる。しかも、抜止め部材を挿入する際の作業効率を高められるため、大量生産にも適している。
【0014】
本発明の抜止め部材の挿入方法では、前記抜止め部材を仮置きする工程の前に、前記ハウジングの内部に台座を挿入し、その台座の座面を前記収容溝の奥側の内壁面の高さに配置するものが好ましい。この場合、ハウジングの内部に台座を挿入したことにより抜止め部材を安定して仮置きできるとともに、仮置きした抜止め部材の落下を防止して作業性を向上できる。その結果、収容溝に抜止め部材をより精度良く効率的に挿入することができる。
【0015】
本発明の抜止め部材の挿入方法では、前記押圧ヘッドで前記抜止め部材を押圧する際に、前記押圧部が前記押圧ヘッドの駆動方向とは逆向きに前記ハウジングの内周面に当接して支持するものが好ましい。かかる方法によれば、押圧ヘッドを駆動して抜止め部材を収容溝に挿入するときの押圧に伴ってハウジングが傾いたり動いたりするのを防いで、抜止め部材をより精度良く挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】管継手の縦断面図(図2のA−A断面図)
【図2】受口部の正面図
【図3】受口部を内周側から見たときの展開図
【図4】図3に示した抜止め部材の(a)B−B断面図と(b)C−C断面図
【図5】流体管の縦断面と挿入装置を示す側面図
【図6A】押圧部を下降させたときの側面図
【図6B】押圧部を下降させたときの平面図
【図7A】抜止め部材を仮置きしたときの側面図
【図7B】抜止め部材を仮置きしたときの平面図
【図8A】抜止め部材を収容溝に挿入したときの側面図
【図8B】抜止め部材を収容溝に挿入したときの平面図
【図9】受口部を有する流体管の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。はじめに、図1〜4を用いて、流体管の移動防止装置の構成について簡単に説明する。
【0018】
図1,2に示した管継手では、流体管P1の端部に形成された受口部1に、流体管P2の端部に形成された挿口部2を挿入し、その受口部1の内周と挿口部2の外周との間を環状のシール材3により密封している。本実施形態では、流体管P1,P2がダクタイル鋳鉄製の水道管であるが、これに限られるものではなく、ガス管やプラント用配管などの他の流体管であっても構わない。受口部1は、二本の流体管の間に介在する管継手本体の端部に形成されたものでもよい。
【0019】
受口部1は、挿口部2を取り囲んで装着される環状のハウジングであり、その内周側には挿口部2に向かって開口した収容溝4が環状に形成され、管周方向に並んだ複数の(本実施形態では四つの)抜止め部材6を収容している。抜止め部材6は、挿口部2の外周面に沿って湾曲した断面三角形状の爪8を内周面に有し、挿口部2の外周面に係止可能に構成されている。抜止め部材6の各々の外周側では、収容溝4の外周壁を貫通するネジ孔に押ボルト7が螺合されており、抜止め部材6を挿口部2に向けて押圧可能になっている。
【0020】
図1の状態において受口部1から挿口部2が抜け出そうとすると、挿口部2の外周面に対する抜止め部材6の係止作用によって流体管P2の管軸方向への移動が妨げられ、挿口部2の離脱が阻止される。また、本実施形態では、抜止め部材6の外周面に傾斜面6aが形成されており、挿口部2が抜け出す力が働いた際には、楔効果によって押ボルト7の先端が抜止め部材6を内周側に押圧し、挿口部2の外周面に対する爪8の接触抵抗を増大して、抜止め部材6による移動防止効果が高められる。
【0021】
図1,3,4に示すように、本実施形態では管軸方向に間隔を置いて二本の爪8を設けており、管周方向に隣り合う抜止め部材6の間で、爪8同士が管軸方向に重なるように配置されている。これによって、挿口部2の外周面に対する爪8の接触領域が管周方向に連続的に形成され、抜止め部材6による移動防止効果が格段に向上する。このように爪8を重複して配置する構造では、隣り合う抜止め部材6の間で爪8が干渉しないよう、収容溝4に対して抜止め部材6を精度良く挿入することが重要となる。
【0022】
抜止め部材6は、移動規制部材11と保持部材12を介して収容溝4内に嵌まり込んでおり、受口部1から脱落しないように保持されている。移動規制部材11及び保持部材12は、それぞれ抜止め部材6の側面61,62に取り付けられ、本実施形態では双方がシート状のゴムで構成されている。移動規制部材11は、弾性材料により形成され、保持部材12よりも硬質であることが好ましい。保持部材12は、ゴムやウレタンなどの弾性材料により形成されることが好ましい。
【0023】
保持部材12は、収容溝4の奥側の内壁面42に常に当接し、抜止め部材6を収容溝4の手前側の内壁面41に向けて付勢する。このため、抜止め部材6の側面61と内壁面41との間には、移動規制部材11の厚みに対応した間隔Dが設けられる。挿口部2が抜け出す力が働くと、それに応じて抜止め部材6が内壁面41に向かって移動するが、そのときの移動代は、挿口部2の外周面に爪8が係止可能な状態での間隔Dに基づいて定められる。
【0024】
流体管P2の管軸方向への移動を防止する機能を安定的に発揮するには、抜止め部材6の移動代のばらつきを抑えることが有効である。例えば、流体管P2の上側に位置する抜止め部材6と、その流体管P2の下側に位置する抜止め部材6との間で移動代が異なると、移動防止効果が安定的に発揮されにくく、特に流体管P2に強力な負荷が作用したときには、抜止め部材6の移動代のばらつきにより極限性能が左右される場合がある。
【0025】
この管継手では、押ボルト7が抜止め部材6を斜め方向に押し込もうとするが、保持部材12が内壁面42に当接し、移動規制部材11を介して間隔Dが一定に保持されるため、その押込み量や収容溝4の溝幅に左右されることなく、抜止め部材6の移動代が定まる。その結果、押ボルト7による押込み量が互いに異なる場合や、ハウジングが鋳物(例えば鋳鉄製)であって寸法公差が大きい場合であっても、抜止め部材6の移動代のばらつきを抑えて、流体管P2の移動防止効果を安定的に発揮できる。
【0026】
次に、ハウジングである受口部1の収容溝4に抜止め部材6を挿入するための挿入装置と、その挿入方法について説明する。尚、図1,7A及び8Aにおいては、抜止め部材6を周方向から見た側方視にて描いている。
【0027】
図5に示すように、挿入装置5は、押圧部51とエアシリンダ52とを備えており、その傍らには、受口部1を上方に向けた流体管P1が設置されている。この受口部1の収容溝4には、未だ抜止め部材6が内蔵されていない。押圧部51は、後述のように抜止め部材6に内側から押し当たる押圧ヘッド53と、流体管P1の径方向に押圧ヘッド53を駆動するエアシリンダ54とを有する。したがって、本実施形態では、ヘッド駆動機構がエアシリンダ54により構成される。
【0028】
エアシリンダ52は、押圧部51に接続された駆動ロッド52aを上下動させ、押圧部51を受口部1に対して相対的に管軸方向に駆動する。これに伴い、押圧ヘッド53は、受口部1の内部で収容溝4の内側に配置される位置(図6A参照)と、受口部1の外部に配置される位置(図5参照)との間で変位する。このように、本実施形態では、押圧部駆動機構がエアシリンダ52により構成される。従動ロッド55aは、重心を取るようにして押圧部51に接続され、エアシリンダ52の駆動に伴ってシリンダ55から進退自在に構成されている。
【0029】
抜止め部材6を収容溝4に挿入する際には、まず、図5の如く管軸方向を上下にして据えた受口部1に対して押圧部51を相対的に昇降させ、図6A,6Bのように押圧ヘッド53を収容溝4の内側に配置する。本実施形態では、押圧部51を下降させたときに、押圧部51に設けられた垂下形状のガイド部59と、後述する支持部57との間に受口部1が挟まれ、押圧部51と受口部1との径方向における相対位置が定まるようにガイドされる。
【0030】
押圧ヘッド53を収容溝4の内側に配置したら、図7A,7Bに示すように収容溝4に抜止め部材6を仮置きする。仮置きは作業者の手作業によるものでよく、収容溝4の径方向内側に抜止め部材6が軽く嵌め込まれた状態となる。この例では、保持部材12の突き出た部分を引っ掛けるようにして、抜止め部材6を若干斜めにセットしている。
【0031】
本実施形態では、押圧部51に台座56が設けられ、収容溝4の内側に押圧ヘッド53を配置したときに、台座56の座面56aが収容溝4の内壁面42の高さに配置される。このため、抜止め部材6を安定して仮置きできるとともに、仮置きした抜止め部材6の落下を防止して作業性を向上できる。かかる効果が得られる限り、座面56aの位置は内壁面42より若干上下しても構わない。台座56は平板状に形成されているが、これと異なる形状であってもよい。
【0032】
台座56は、エアシリンダ52の駆動により押圧ヘッド53と共に昇降され、押圧ヘッド53を収容溝4の内側に配置すると、それに伴って座面56aが内壁面42の高さに配置されるように設定されている。それ故、本実施形態では、抜止め部材6を仮置きする前に、受口部1の内部に台座56が挿入され、その座面56aが上述した高さに配置される。但し、抜止め部材6を仮置きする工程は、押圧ヘッド53を収容溝4の内側に配置する工程と前後しても構わない。
【0033】
続いて、図8A,8Bに示すように、エアシリンダ54の駆動ロッド54aを突出させて、押圧ヘッド53を流体管P1の径方向に駆動し、仮置きした抜止め部材6を押圧ヘッド53で押圧して収容溝4に挿入する。これにより、収容溝4に対する抜止め部材6の挿入量を一定にでき、また抜止め部材6の挿入作業が半自動で行われるため、抜止め部材6を収容溝4に精度良く効率的に挿入できる。
【0034】
本実施形態では、移動規制部材11と保持部材12を貼り付けた抜止め部材6が収容溝4内に嵌まり込んでいるため、抜止め部材6を強く押しこんで圧入する必要があり、収容溝4に対する抜止め部材6の挿入量にばらつきが生じやすい構造であるが、かかる挿入方法によれば、収容溝4に対して抜止め部材6を精度良く挿入することが可能となる。
【0035】
押圧ヘッド53は、抜止め部材6の内周面に径方向内側から押し当たる。そのため、押圧ヘッド53には、抜止め部材6の爪8を傷めないように、ゴムなどの緩衝材を取り付けておくことが好ましい。或いは、抜止め部材6の先端形状を調整して、抜止め部材6の爪8以外の部分(例えば二本の爪8の間)を押圧可能に構成することも効果的である。本実施形態では、抜止め部材6を周方向の一方に片寄って押圧しないよう、図6B,7Bの如く押圧ヘッド53が周方向両側を突出させているが、これに限られるものではない。
【0036】
押圧部51には、エアシリンダ54による押圧ヘッド53の駆動方向(図8Aでは左方向)とは逆向き(図8Aでは右方向)に受口部1の内周面に当接可能な支持部57が設けられている。このように押圧部51が受口部1の内周面に当接して支持することで、押圧ヘッド53で抜止め部材6を挿入するときの押圧に伴って受口部1が(つまりは流体管P1が)傾いたり動いたりするのを防ぎ、延いては抜止め部材6をより精度良く挿入できる。
【0037】
本実施形態では、支持部57が収容溝4の内壁面42の内側に当接するため、略同じ高さに位置する押圧ヘッド53の押圧力にバランス良く抵抗して、受口部1の姿勢を良好に保持できる。但し、これに限られず、受口部1の奥端1a(図5参照)の近辺や、受口部1の端面の近辺にて、受口部1の内周面に支持部を当接させてもよく、それら複数の箇所で当接するものでもよい。
【0038】
抜止め部材6を収容溝4に挿入して駆動ロッド54aを引っ込めたら、受口部1を(つまりは流体管P1を)周方向に回転し、図6Aのように収容溝4の未だ抜止め部材6が挿入されていない箇所を押圧ヘッド53に対向させる。そして、上記と同様にして抜止め部材6を仮置きし、エアシリンダ54を駆動して抜止め部材6を挿入する。本実施形態では四つの抜止め部材6を内蔵するため、かかる作業を四回繰り返せば全ての挿入作業が完了する。
【0039】
挿入装置5は、押圧部51に対して受口部1を相対的に回転させる回転機構としての回転台58を備える。回転台58は、例えばろくろ台のような機構を有し、これに載置されている流体管P1を回転自在に支持する。挿入装置5が備える回転機構は、受口部1側でなく、挿入装置5側を回転させるように構成しても構わない。
【0040】
本実施形態では、隣り合う抜止め部材6の間で爪8同士が管軸方向に重なるように配置されるが、本発明によれば抜止め部材6を精度良く挿入できるため、隣り合う抜止め部材6の間で爪8の干渉を防ぎやすい。全ての抜止め部材6の挿入を完了した後は、押圧部51を上昇させて押圧ヘッド53を受口部1の外部に配置するとともに、押ボルト7やシール材3を装着することで、図1,2の如き流体管の移動防止装置に供することができる。
【0041】
本実施形態では、隣り合う抜止め部材6の間で爪8同士が管軸方向に重なるように配置される例を示すが、本発明はこれに限られず、爪8同士が管軸方向に重ならない配置でも構わない。かかる場合には、収容溝4を、抜止め部材6ごとに独立させて、周方向に断続的に設けてもよい。また、そのような爪の配置の採否に関わらず、抜止め部材6が有する爪8の本数は一本又は三本以上でもよい。
【0042】
本実施形態では、流体管の受口部をハウジングとした例を示すが、本発明はこれに限られず、受口部の内周と挿口部の外周との間に介在するシール材を管軸方向に押圧可能な環状の押輪(例えば、特開平11−63328号公報参照)をハウジングとしてもよい。かかる押輪は、挿口部を取り囲んで装着され、内周側に形成された収容溝に抜止め部材を収容して、流体管の移動防止装置を構成する。押輪が有するその他の構造については、本技術分野における公知の構造を限定なく使用可能である。
【0043】
更に、本発明では、管継手の挿口部を取り囲んで装着され、受口部から挿口部が抜け出す力が働いた際に受口部のフランジに係合するフックを持つ補強金具(例えば、特開平10−122466号公報参照)や、流体管を取り囲んで装着される不平均力の支持装置(例えば、特開2002−243066号公報参照)をハウジングとしてもよい。かかる補強金具や支持装置は、その内周側に形成された収容溝に抜止め部材を収容して、流体管の移動防止装置を構成する。
【0044】
ハウジングは、環状体として一体的に形成されているものに限られず、複数の分割片の周端を互いに組み付けて環状に形成される割り構造でもよい。また、前述したハウジングとしての受口部1には、抜止め部材6を挿口部2に向けて押圧する押ボルト7を設けていたが、これに限定されず、ハウジングの縮径や収容溝の外周壁での楔効果によって押圧するようにしても構わない。
【0045】
前述の実施形態では、ヘッド駆動機構及び押圧部駆動機構のアクチュエータとして、エアシリンダを採用した例を示したが、これに限定されるものではなく、例えばリニアモータやボイスコイルモータなど、押圧ヘッド又は押圧部を駆動できるアクチュエータであれば、特に制限なく適用することが可能である。
【0046】
前述の実施形態では、押圧部51が台座56を有する例を示したが、かかる台座は省略してもよく、或いは台座を押圧部とは別個の部材にしても構わない。図9の例では、受口部1の奥端1aに載置可能な有底の円筒体よりなる台座9を挿入し、その台座9の座面9aを収容溝4の内壁面42の高さに配置している。この収容溝4の内側に押圧ヘッドを配置して抜止め部材を仮置きすれば、既述のようにして抜止め部材の挿入を実行できる。
【符号の説明】
【0047】
1 受口部(ハウジングの一例)
2 挿口部
4 収容溝
5 挿入装置
6 抜止め部材
8 爪
11 移動規制部材
12 保持部材
41 内壁面
42 内壁面
51 押圧部
52 エアシリンダ(押圧部駆動機構)
53 押圧ヘッド
54 エアシリンダ(ヘッド駆動機構)
56 台座
56a 座面
57 支持部
58 回転台(回転機構)
P1 流体管
P2 流体管
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管を取り囲んで装着される環状のハウジングに形成された収容溝に、その流体管の外周面に係止可能な抜止め部材を挿入する装置と方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1の第7〜9図に開示されているように、一方の流体管の端部に形成された受口部に、他方の流体管の端部に形成された挿口部を挿入し、受口部の内周側に配設した抜止め部材を挿口部の外周面に係止させて、その挿口部を有する流体管が管軸方向に移動するのを防止できるように構成した管継手が知られている。かかる管継手では、受口部が、挿口部を取り囲んで装着される環状のハウジングとなり、そのハウジングに形成された収容溝に抜止め部材が収容される。
【0003】
また、上記文献の第2〜4図に開示されているように、受口部の内周と挿口部の外周との間を密封するシール材を、押輪と呼ばれる環状の金具で押圧するとともに、その押輪の内周側に配設した抜止め部材を挿口部の外周面に係止させて、挿口部を有する流体管が管軸方向に移動するのを防止できるように構成した管継手も知られている。かかる管継手では、押輪が、挿口部を取り囲んで装着される環状のハウジングとなり、そのハウジングに形成された収容溝に抜止め部材が収容される。
【0004】
上記の如き流体管の移動防止装置を組み立てる作業では、受口部や押輪などのハウジングが有する収容溝に抜止め部材を精度良く挿入する必要があり、仮に、収容溝に対する抜止め部材の挿入量にばらつきが生じたり、挿入した抜止め部材の姿勢が崩れていたりすると、挿口部の外周面に対する抜止め部材の係止作用を安定的に発揮しにくい傾向にある。また、生産性の観点からは、抜止め部材を挿入する際の作業効率が高められ、大量生産にも適した手法の提案が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−88091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハウジングの収容溝に抜止め部材を精度良く効率的に挿入できる抜止め部材の挿入装置と抜止め部材の挿入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係る抜止め部材の挿入装置は、流体管を取り囲んで装着される環状のハウジングに形成された収容溝に、前記流体管の外周面に係止可能な抜止め部材を挿入する抜止め部材の挿入装置において、前記抜止め部材に内側から押し当たる押圧ヘッドと、前記流体管の径方向に前記押圧ヘッドを駆動するヘッド駆動機構とを有する押圧部と、前記ハウジングの内部で前記収容溝の内側に配置される位置と前記ハウジングの外部に配置される位置との間で前記押圧ヘッドが変位するように、前記押圧部を前記ハウジングに対して相対的に管軸方向に駆動する押圧部駆動機構と、を備えるものである。
【0008】
本発明に係る抜止め部材の挿入装置によれば、押圧部駆動機構により押圧部を駆動して押圧ヘッドをハウジングの内部で収容溝の内側に配置したうえで、ヘッド駆動機構により押圧ヘッドを流体管の径方向に駆動できることから、抜止め部材を収容溝に精度良く効率的に挿入することができる。しかも、ヘッド駆動機構を用いることによって、抜止め部材を挿入する際の作業効率を高められるため、大量生産にも適している。
【0009】
本発明の抜止め部材の挿入装置では、前記押圧部に台座が設けられ、前記収容溝の内側に前記押圧ヘッドを配置したときに、前記台座の座面が前記収容溝の奥側の内壁面の高さに配置されるものが好ましい。この場合、台座があることにより抜止め部材を安定して仮置きできるとともに、仮置きした抜止め部材の落下を防止して作業性を向上できる。その結果、収容溝に抜止め部材をより精度良く効率的に挿入することができる。
【0010】
本発明の抜止め部材の挿入装置では、前記押圧部に、前記ヘッド駆動機構による前記押圧ヘッドの駆動方向とは逆向きに前記ハウジングの内周面に当接可能な支持部が設けられているものが好ましい。かかる構成によれば、押圧ヘッドを駆動して抜止め部材を収容溝に挿入するときの押圧に伴ってハウジングが傾いたり動いたりするのを防いで、抜止め部材をより精度良く挿入することができる。
【0011】
本発明の抜止め部材の挿入装置では、前記押圧部に対して前記ハウジングを相対的に回転させる回転機構を備えるものが好ましい。かかる構成であれば、ハウジングに対する押圧ヘッドの周方向位置を変えながら、簡便な作業により抜止め部材を収容溝に向けて次々に押圧できるため、抜止め部材をより効率的に挿入することができる。
【0012】
また、本発明に係る抜止め部材の挿入方法は、流体管を取り囲んで装着される環状のハウジングに形成された収容溝に、前記流体管の外周面に係止可能な抜止め部材を挿入する抜止め部材の挿入方法において、管軸方向を上下にして据えた前記ハウジングに対して押圧部を相対的に昇降させ、その押圧部が有する押圧ヘッドを前記収容溝の内側に配置する工程と、前記収容溝に抜止め部材を仮置きする工程と、前記押圧ヘッドを前記流体管の径方向に駆動し、仮置きした抜止め部材を前記押圧ヘッドで押圧して前記収容溝に挿入する工程と、を備えるものである。
【0013】
本発明に係る抜止め部材の挿入方法では、流体管の径方向に押圧ヘッドを駆動することで、収容溝に仮置きしている抜止め部材を押圧できることから、抜止め部材を収容溝に精度良く挿入することができる。しかも、抜止め部材を挿入する際の作業効率を高められるため、大量生産にも適している。
【0014】
本発明の抜止め部材の挿入方法では、前記抜止め部材を仮置きする工程の前に、前記ハウジングの内部に台座を挿入し、その台座の座面を前記収容溝の奥側の内壁面の高さに配置するものが好ましい。この場合、ハウジングの内部に台座を挿入したことにより抜止め部材を安定して仮置きできるとともに、仮置きした抜止め部材の落下を防止して作業性を向上できる。その結果、収容溝に抜止め部材をより精度良く効率的に挿入することができる。
【0015】
本発明の抜止め部材の挿入方法では、前記押圧ヘッドで前記抜止め部材を押圧する際に、前記押圧部が前記押圧ヘッドの駆動方向とは逆向きに前記ハウジングの内周面に当接して支持するものが好ましい。かかる方法によれば、押圧ヘッドを駆動して抜止め部材を収容溝に挿入するときの押圧に伴ってハウジングが傾いたり動いたりするのを防いで、抜止め部材をより精度良く挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】管継手の縦断面図(図2のA−A断面図)
【図2】受口部の正面図
【図3】受口部を内周側から見たときの展開図
【図4】図3に示した抜止め部材の(a)B−B断面図と(b)C−C断面図
【図5】流体管の縦断面と挿入装置を示す側面図
【図6A】押圧部を下降させたときの側面図
【図6B】押圧部を下降させたときの平面図
【図7A】抜止め部材を仮置きしたときの側面図
【図7B】抜止め部材を仮置きしたときの平面図
【図8A】抜止め部材を収容溝に挿入したときの側面図
【図8B】抜止め部材を収容溝に挿入したときの平面図
【図9】受口部を有する流体管の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。はじめに、図1〜4を用いて、流体管の移動防止装置の構成について簡単に説明する。
【0018】
図1,2に示した管継手では、流体管P1の端部に形成された受口部1に、流体管P2の端部に形成された挿口部2を挿入し、その受口部1の内周と挿口部2の外周との間を環状のシール材3により密封している。本実施形態では、流体管P1,P2がダクタイル鋳鉄製の水道管であるが、これに限られるものではなく、ガス管やプラント用配管などの他の流体管であっても構わない。受口部1は、二本の流体管の間に介在する管継手本体の端部に形成されたものでもよい。
【0019】
受口部1は、挿口部2を取り囲んで装着される環状のハウジングであり、その内周側には挿口部2に向かって開口した収容溝4が環状に形成され、管周方向に並んだ複数の(本実施形態では四つの)抜止め部材6を収容している。抜止め部材6は、挿口部2の外周面に沿って湾曲した断面三角形状の爪8を内周面に有し、挿口部2の外周面に係止可能に構成されている。抜止め部材6の各々の外周側では、収容溝4の外周壁を貫通するネジ孔に押ボルト7が螺合されており、抜止め部材6を挿口部2に向けて押圧可能になっている。
【0020】
図1の状態において受口部1から挿口部2が抜け出そうとすると、挿口部2の外周面に対する抜止め部材6の係止作用によって流体管P2の管軸方向への移動が妨げられ、挿口部2の離脱が阻止される。また、本実施形態では、抜止め部材6の外周面に傾斜面6aが形成されており、挿口部2が抜け出す力が働いた際には、楔効果によって押ボルト7の先端が抜止め部材6を内周側に押圧し、挿口部2の外周面に対する爪8の接触抵抗を増大して、抜止め部材6による移動防止効果が高められる。
【0021】
図1,3,4に示すように、本実施形態では管軸方向に間隔を置いて二本の爪8を設けており、管周方向に隣り合う抜止め部材6の間で、爪8同士が管軸方向に重なるように配置されている。これによって、挿口部2の外周面に対する爪8の接触領域が管周方向に連続的に形成され、抜止め部材6による移動防止効果が格段に向上する。このように爪8を重複して配置する構造では、隣り合う抜止め部材6の間で爪8が干渉しないよう、収容溝4に対して抜止め部材6を精度良く挿入することが重要となる。
【0022】
抜止め部材6は、移動規制部材11と保持部材12を介して収容溝4内に嵌まり込んでおり、受口部1から脱落しないように保持されている。移動規制部材11及び保持部材12は、それぞれ抜止め部材6の側面61,62に取り付けられ、本実施形態では双方がシート状のゴムで構成されている。移動規制部材11は、弾性材料により形成され、保持部材12よりも硬質であることが好ましい。保持部材12は、ゴムやウレタンなどの弾性材料により形成されることが好ましい。
【0023】
保持部材12は、収容溝4の奥側の内壁面42に常に当接し、抜止め部材6を収容溝4の手前側の内壁面41に向けて付勢する。このため、抜止め部材6の側面61と内壁面41との間には、移動規制部材11の厚みに対応した間隔Dが設けられる。挿口部2が抜け出す力が働くと、それに応じて抜止め部材6が内壁面41に向かって移動するが、そのときの移動代は、挿口部2の外周面に爪8が係止可能な状態での間隔Dに基づいて定められる。
【0024】
流体管P2の管軸方向への移動を防止する機能を安定的に発揮するには、抜止め部材6の移動代のばらつきを抑えることが有効である。例えば、流体管P2の上側に位置する抜止め部材6と、その流体管P2の下側に位置する抜止め部材6との間で移動代が異なると、移動防止効果が安定的に発揮されにくく、特に流体管P2に強力な負荷が作用したときには、抜止め部材6の移動代のばらつきにより極限性能が左右される場合がある。
【0025】
この管継手では、押ボルト7が抜止め部材6を斜め方向に押し込もうとするが、保持部材12が内壁面42に当接し、移動規制部材11を介して間隔Dが一定に保持されるため、その押込み量や収容溝4の溝幅に左右されることなく、抜止め部材6の移動代が定まる。その結果、押ボルト7による押込み量が互いに異なる場合や、ハウジングが鋳物(例えば鋳鉄製)であって寸法公差が大きい場合であっても、抜止め部材6の移動代のばらつきを抑えて、流体管P2の移動防止効果を安定的に発揮できる。
【0026】
次に、ハウジングである受口部1の収容溝4に抜止め部材6を挿入するための挿入装置と、その挿入方法について説明する。尚、図1,7A及び8Aにおいては、抜止め部材6を周方向から見た側方視にて描いている。
【0027】
図5に示すように、挿入装置5は、押圧部51とエアシリンダ52とを備えており、その傍らには、受口部1を上方に向けた流体管P1が設置されている。この受口部1の収容溝4には、未だ抜止め部材6が内蔵されていない。押圧部51は、後述のように抜止め部材6に内側から押し当たる押圧ヘッド53と、流体管P1の径方向に押圧ヘッド53を駆動するエアシリンダ54とを有する。したがって、本実施形態では、ヘッド駆動機構がエアシリンダ54により構成される。
【0028】
エアシリンダ52は、押圧部51に接続された駆動ロッド52aを上下動させ、押圧部51を受口部1に対して相対的に管軸方向に駆動する。これに伴い、押圧ヘッド53は、受口部1の内部で収容溝4の内側に配置される位置(図6A参照)と、受口部1の外部に配置される位置(図5参照)との間で変位する。このように、本実施形態では、押圧部駆動機構がエアシリンダ52により構成される。従動ロッド55aは、重心を取るようにして押圧部51に接続され、エアシリンダ52の駆動に伴ってシリンダ55から進退自在に構成されている。
【0029】
抜止め部材6を収容溝4に挿入する際には、まず、図5の如く管軸方向を上下にして据えた受口部1に対して押圧部51を相対的に昇降させ、図6A,6Bのように押圧ヘッド53を収容溝4の内側に配置する。本実施形態では、押圧部51を下降させたときに、押圧部51に設けられた垂下形状のガイド部59と、後述する支持部57との間に受口部1が挟まれ、押圧部51と受口部1との径方向における相対位置が定まるようにガイドされる。
【0030】
押圧ヘッド53を収容溝4の内側に配置したら、図7A,7Bに示すように収容溝4に抜止め部材6を仮置きする。仮置きは作業者の手作業によるものでよく、収容溝4の径方向内側に抜止め部材6が軽く嵌め込まれた状態となる。この例では、保持部材12の突き出た部分を引っ掛けるようにして、抜止め部材6を若干斜めにセットしている。
【0031】
本実施形態では、押圧部51に台座56が設けられ、収容溝4の内側に押圧ヘッド53を配置したときに、台座56の座面56aが収容溝4の内壁面42の高さに配置される。このため、抜止め部材6を安定して仮置きできるとともに、仮置きした抜止め部材6の落下を防止して作業性を向上できる。かかる効果が得られる限り、座面56aの位置は内壁面42より若干上下しても構わない。台座56は平板状に形成されているが、これと異なる形状であってもよい。
【0032】
台座56は、エアシリンダ52の駆動により押圧ヘッド53と共に昇降され、押圧ヘッド53を収容溝4の内側に配置すると、それに伴って座面56aが内壁面42の高さに配置されるように設定されている。それ故、本実施形態では、抜止め部材6を仮置きする前に、受口部1の内部に台座56が挿入され、その座面56aが上述した高さに配置される。但し、抜止め部材6を仮置きする工程は、押圧ヘッド53を収容溝4の内側に配置する工程と前後しても構わない。
【0033】
続いて、図8A,8Bに示すように、エアシリンダ54の駆動ロッド54aを突出させて、押圧ヘッド53を流体管P1の径方向に駆動し、仮置きした抜止め部材6を押圧ヘッド53で押圧して収容溝4に挿入する。これにより、収容溝4に対する抜止め部材6の挿入量を一定にでき、また抜止め部材6の挿入作業が半自動で行われるため、抜止め部材6を収容溝4に精度良く効率的に挿入できる。
【0034】
本実施形態では、移動規制部材11と保持部材12を貼り付けた抜止め部材6が収容溝4内に嵌まり込んでいるため、抜止め部材6を強く押しこんで圧入する必要があり、収容溝4に対する抜止め部材6の挿入量にばらつきが生じやすい構造であるが、かかる挿入方法によれば、収容溝4に対して抜止め部材6を精度良く挿入することが可能となる。
【0035】
押圧ヘッド53は、抜止め部材6の内周面に径方向内側から押し当たる。そのため、押圧ヘッド53には、抜止め部材6の爪8を傷めないように、ゴムなどの緩衝材を取り付けておくことが好ましい。或いは、抜止め部材6の先端形状を調整して、抜止め部材6の爪8以外の部分(例えば二本の爪8の間)を押圧可能に構成することも効果的である。本実施形態では、抜止め部材6を周方向の一方に片寄って押圧しないよう、図6B,7Bの如く押圧ヘッド53が周方向両側を突出させているが、これに限られるものではない。
【0036】
押圧部51には、エアシリンダ54による押圧ヘッド53の駆動方向(図8Aでは左方向)とは逆向き(図8Aでは右方向)に受口部1の内周面に当接可能な支持部57が設けられている。このように押圧部51が受口部1の内周面に当接して支持することで、押圧ヘッド53で抜止め部材6を挿入するときの押圧に伴って受口部1が(つまりは流体管P1が)傾いたり動いたりするのを防ぎ、延いては抜止め部材6をより精度良く挿入できる。
【0037】
本実施形態では、支持部57が収容溝4の内壁面42の内側に当接するため、略同じ高さに位置する押圧ヘッド53の押圧力にバランス良く抵抗して、受口部1の姿勢を良好に保持できる。但し、これに限られず、受口部1の奥端1a(図5参照)の近辺や、受口部1の端面の近辺にて、受口部1の内周面に支持部を当接させてもよく、それら複数の箇所で当接するものでもよい。
【0038】
抜止め部材6を収容溝4に挿入して駆動ロッド54aを引っ込めたら、受口部1を(つまりは流体管P1を)周方向に回転し、図6Aのように収容溝4の未だ抜止め部材6が挿入されていない箇所を押圧ヘッド53に対向させる。そして、上記と同様にして抜止め部材6を仮置きし、エアシリンダ54を駆動して抜止め部材6を挿入する。本実施形態では四つの抜止め部材6を内蔵するため、かかる作業を四回繰り返せば全ての挿入作業が完了する。
【0039】
挿入装置5は、押圧部51に対して受口部1を相対的に回転させる回転機構としての回転台58を備える。回転台58は、例えばろくろ台のような機構を有し、これに載置されている流体管P1を回転自在に支持する。挿入装置5が備える回転機構は、受口部1側でなく、挿入装置5側を回転させるように構成しても構わない。
【0040】
本実施形態では、隣り合う抜止め部材6の間で爪8同士が管軸方向に重なるように配置されるが、本発明によれば抜止め部材6を精度良く挿入できるため、隣り合う抜止め部材6の間で爪8の干渉を防ぎやすい。全ての抜止め部材6の挿入を完了した後は、押圧部51を上昇させて押圧ヘッド53を受口部1の外部に配置するとともに、押ボルト7やシール材3を装着することで、図1,2の如き流体管の移動防止装置に供することができる。
【0041】
本実施形態では、隣り合う抜止め部材6の間で爪8同士が管軸方向に重なるように配置される例を示すが、本発明はこれに限られず、爪8同士が管軸方向に重ならない配置でも構わない。かかる場合には、収容溝4を、抜止め部材6ごとに独立させて、周方向に断続的に設けてもよい。また、そのような爪の配置の採否に関わらず、抜止め部材6が有する爪8の本数は一本又は三本以上でもよい。
【0042】
本実施形態では、流体管の受口部をハウジングとした例を示すが、本発明はこれに限られず、受口部の内周と挿口部の外周との間に介在するシール材を管軸方向に押圧可能な環状の押輪(例えば、特開平11−63328号公報参照)をハウジングとしてもよい。かかる押輪は、挿口部を取り囲んで装着され、内周側に形成された収容溝に抜止め部材を収容して、流体管の移動防止装置を構成する。押輪が有するその他の構造については、本技術分野における公知の構造を限定なく使用可能である。
【0043】
更に、本発明では、管継手の挿口部を取り囲んで装着され、受口部から挿口部が抜け出す力が働いた際に受口部のフランジに係合するフックを持つ補強金具(例えば、特開平10−122466号公報参照)や、流体管を取り囲んで装着される不平均力の支持装置(例えば、特開2002−243066号公報参照)をハウジングとしてもよい。かかる補強金具や支持装置は、その内周側に形成された収容溝に抜止め部材を収容して、流体管の移動防止装置を構成する。
【0044】
ハウジングは、環状体として一体的に形成されているものに限られず、複数の分割片の周端を互いに組み付けて環状に形成される割り構造でもよい。また、前述したハウジングとしての受口部1には、抜止め部材6を挿口部2に向けて押圧する押ボルト7を設けていたが、これに限定されず、ハウジングの縮径や収容溝の外周壁での楔効果によって押圧するようにしても構わない。
【0045】
前述の実施形態では、ヘッド駆動機構及び押圧部駆動機構のアクチュエータとして、エアシリンダを採用した例を示したが、これに限定されるものではなく、例えばリニアモータやボイスコイルモータなど、押圧ヘッド又は押圧部を駆動できるアクチュエータであれば、特に制限なく適用することが可能である。
【0046】
前述の実施形態では、押圧部51が台座56を有する例を示したが、かかる台座は省略してもよく、或いは台座を押圧部とは別個の部材にしても構わない。図9の例では、受口部1の奥端1aに載置可能な有底の円筒体よりなる台座9を挿入し、その台座9の座面9aを収容溝4の内壁面42の高さに配置している。この収容溝4の内側に押圧ヘッドを配置して抜止め部材を仮置きすれば、既述のようにして抜止め部材の挿入を実行できる。
【符号の説明】
【0047】
1 受口部(ハウジングの一例)
2 挿口部
4 収容溝
5 挿入装置
6 抜止め部材
8 爪
11 移動規制部材
12 保持部材
41 内壁面
42 内壁面
51 押圧部
52 エアシリンダ(押圧部駆動機構)
53 押圧ヘッド
54 エアシリンダ(ヘッド駆動機構)
56 台座
56a 座面
57 支持部
58 回転台(回転機構)
P1 流体管
P2 流体管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管を取り囲んで装着される環状のハウジングに形成された収容溝に、前記流体管の外周面に係止可能な抜止め部材を挿入する抜止め部材の挿入装置において、
前記抜止め部材に内側から押し当たる押圧ヘッドと、前記流体管の径方向に前記押圧ヘッドを駆動するヘッド駆動機構とを有する押圧部と、
前記ハウジングの内部で前記収容溝の内側に配置される位置と前記ハウジングの外部に配置される位置との間で前記押圧ヘッドが変位するように、前記押圧部を前記ハウジングに対して相対的に管軸方向に駆動する押圧部駆動機構と、を備えることを特徴とする抜止め部材の挿入装置。
【請求項2】
前記押圧部に台座が設けられ、前記収容溝の内側に前記押圧ヘッドを配置したときに、前記台座の座面が前記収容溝の奥側の内壁面の高さに配置される請求項1に記載の抜止め部材の挿入装置。
【請求項3】
前記押圧部に、前記ヘッド駆動機構による前記押圧ヘッドの駆動方向とは逆向きに前記ハウジングの内周面に当接可能な支持部が設けられている請求項1または2に記載の抜止め部材の挿入装置。
【請求項4】
前記押圧部に対して前記ハウジングを相対的に回転させる回転機構を備える請求項1〜3いずれか1項に記載の抜止め部材の挿入装置。
【請求項5】
流体管を取り囲んで装着される環状のハウジングに形成された収容溝に、前記流体管の外周面に係止可能な抜止め部材を挿入する抜止め部材の挿入方法において、
管軸方向を上下にして据えた前記ハウジングに対して押圧部を相対的に昇降させ、その押圧部が有する押圧ヘッドを前記収容溝の内側に配置する工程と、
前記収容溝に抜止め部材を仮置きする工程と、
前記押圧ヘッドを前記流体管の径方向に駆動し、仮置きした抜止め部材を前記押圧ヘッドで押圧して前記収容溝に挿入する工程と、を備えることを特徴とする抜止め部材の挿入方法。
【請求項6】
前記抜止め部材を仮置きする工程の前に、前記ハウジングの内部に台座を挿入し、その台座の座面を前記収容溝の奥側の内壁面の高さに配置する請求項5に記載の抜止め部材の挿入方法。
【請求項7】
前記押圧ヘッドで前記抜止め部材を押圧する際に、前記押圧部が前記押圧ヘッドの駆動方向とは逆向きに前記ハウジングの内周面に当接して支持する請求項5または6に記載の抜止め部材の挿入方法。
【請求項1】
流体管を取り囲んで装着される環状のハウジングに形成された収容溝に、前記流体管の外周面に係止可能な抜止め部材を挿入する抜止め部材の挿入装置において、
前記抜止め部材に内側から押し当たる押圧ヘッドと、前記流体管の径方向に前記押圧ヘッドを駆動するヘッド駆動機構とを有する押圧部と、
前記ハウジングの内部で前記収容溝の内側に配置される位置と前記ハウジングの外部に配置される位置との間で前記押圧ヘッドが変位するように、前記押圧部を前記ハウジングに対して相対的に管軸方向に駆動する押圧部駆動機構と、を備えることを特徴とする抜止め部材の挿入装置。
【請求項2】
前記押圧部に台座が設けられ、前記収容溝の内側に前記押圧ヘッドを配置したときに、前記台座の座面が前記収容溝の奥側の内壁面の高さに配置される請求項1に記載の抜止め部材の挿入装置。
【請求項3】
前記押圧部に、前記ヘッド駆動機構による前記押圧ヘッドの駆動方向とは逆向きに前記ハウジングの内周面に当接可能な支持部が設けられている請求項1または2に記載の抜止め部材の挿入装置。
【請求項4】
前記押圧部に対して前記ハウジングを相対的に回転させる回転機構を備える請求項1〜3いずれか1項に記載の抜止め部材の挿入装置。
【請求項5】
流体管を取り囲んで装着される環状のハウジングに形成された収容溝に、前記流体管の外周面に係止可能な抜止め部材を挿入する抜止め部材の挿入方法において、
管軸方向を上下にして据えた前記ハウジングに対して押圧部を相対的に昇降させ、その押圧部が有する押圧ヘッドを前記収容溝の内側に配置する工程と、
前記収容溝に抜止め部材を仮置きする工程と、
前記押圧ヘッドを前記流体管の径方向に駆動し、仮置きした抜止め部材を前記押圧ヘッドで押圧して前記収容溝に挿入する工程と、を備えることを特徴とする抜止め部材の挿入方法。
【請求項6】
前記抜止め部材を仮置きする工程の前に、前記ハウジングの内部に台座を挿入し、その台座の座面を前記収容溝の奥側の内壁面の高さに配置する請求項5に記載の抜止め部材の挿入方法。
【請求項7】
前記押圧ヘッドで前記抜止め部材を押圧する際に、前記押圧部が前記押圧ヘッドの駆動方向とは逆向きに前記ハウジングの内周面に当接して支持する請求項5または6に記載の抜止め部材の挿入方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【公開番号】特開2012−41946(P2012−41946A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181073(P2010−181073)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(396020361)株式会社水道技術開発機構 (113)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(396020361)株式会社水道技術開発機構 (113)
【Fターム(参考)】
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