説明

押下ヘッド

【課題】操作性を悪化させることなく内容物を吐出させることができるうえ、内容物の飛散を効果的に抑制しながら吐出を行うこと。
【解決手段】上方付勢状態で起立した押込み可能なステム11に嵌着される押下部2と、該押下部に前方に向けて突設されると共に、前端に内容物が吐出されるノズル孔3aが形成されたノズル3と、を備える押下ヘッド1であって、ノズル及び押下部のうちの何れか一方にヒンジ5を介して一体に連結されて該ヒンジ回りに回動することでノズルに対して脱着可能なノズルカバー4を備え、ノズルカバーが、ノズルに被着された状態において、ノズル孔よりも前方に向けて延在すると共にノズル孔を前方に向けて開放している押下ヘッドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば吐出器などに用いられる押下ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、吐出器として、上方付勢状態で起立した押込み可能なステムを有するポンプと、内容物が吐出されるノズル孔が形成されたノズルを有するとともにステムに装着された押下ヘッドと、を備える構成が知られている。
この吐出器は、内容物が収容された容器の口部に装着された状態で、押下ヘッドを押下してステムを下方に移動させポンプを作動させることにより、容器内の内容物が移送されてノズル内を通ってノズル孔から吐出されるようになっている。
【0003】
しかしながら、この種の吐出器では、吐出後にノズル内に内容物が残留して固化してしまい、その後、内容物を吐出する際に、既に固化した内容物の影響によって飛散してしまうという問題があった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するための押下ヘッドが知られている(特許文献1参照)。この押下ヘッドは、上方付勢状態で起立した押込み可能なステムの上端部に装着される押下部と、その押下部に前方に向けて突設されるとともに、前端にノズル孔が形成されたノズルと、そのノズルの前端部に脱着可能に装着された栓部材(以下、ノズルカバーと記す)と、を備えている。
ノズルカバーは、ノズルに対して引き抜くことで取り外し可能なキャップ体である。このノズルカバーは、可撓性を有する連結帯を介して押下部に連結されており、ノズルから離脱されても押下部から分離されない構成となっている。
【0005】
このように構成された押下ヘッドによれば、未使用時にノズルカバーをノズルに被着することができるので、ノズル内に外気等が侵入することをできるだけ防止できるように設計されている。そのため、ノズル内に残留した内容物が固化し難い構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−292018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した押下ヘッドであっても、ノズル内に外気等が侵入してしまうことを完全に抑えることができないので、依然としてノズル内に内容物が固化してしまう可能性があった。そのため、新たに吐出される内容物が固化した内容物の影響を受けてしまい、飛散する問題が依然として残されていた。
更に、内容物を吐出する度にノズルカバーをノズルから取り外し、使用後には再度ノズルカバーを装着する必要がある。そのため、毎回ノズルカバーを脱着させる手間がかかり、操作性が悪いという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、操作性を悪化させることなく内容物を吐出させることができるうえ、内容物の飛散を効果的に抑制しながら吐出を行うことができる押下ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
(1)本発明に係る押下ヘッドは、上方付勢状態で起立した押込み可能なステムに嵌着される押下部と、該押下部に前方に向けて突設されると共に、前端に内容物が吐出されるノズル孔が形成されたノズルと、を備える押下ヘッドであって、前記ノズル及び前記押下部のうちの何れか一方にヒンジを介して一体に連結されて該ヒンジ回りに回動することで前記ノズルに対して脱着可能なノズルカバーを備え、前記ノズルカバーが、前記ノズルに被着された状態において、前記ノズル孔よりも前方に向けて延在すると共に前記ノズル孔を前方に向けて開放していることを特徴とする。
【0010】
このように構成された押下ヘッドにおいては、ノズルカバーがノズルに被着された状態において、ノズル孔を前方に向けて開放している。そのため、ノズルカバーをノズルに被着させたままの状態であっても、押下部を押し込み操作することで内容物を吐出することができる。従って、従来のようにノズルカバーを取り外す手間が不要であるので、操作性を悪化させることなく内容物の吐出を行うことができる。
【0011】
また、ノズルカバーがノズルに被着されている際、該ノズルカバーはノズル孔よりも前方に延在している。そのため、仮にノズル内に固化した内容物が存在し、新たに吐出される内容物がこの固化した内容物の影響を受けながらノズル孔から吐出されたとしても、ノズルカバーによって飛散が防止される。従って、飛散を効果的に抑制しながら吐出を行うことができる。
【0012】
しかも、ノズル孔を開放させているとはいえ、ノズルカバーはノズル孔よりも前方に延在しているので、ノズル孔からノズル内に流通する空気の流れを一部遮ることができる。従って、ノズル内が乾燥し難くなり、ノズル内に残留した内容物が固化するまでの進行を遅くすることができる。
更に、状況に応じてノズル内に固化した内容物を洗浄等によって取り除く場合があるが、この際ノズルカバーをヒンジ回りに回動させてノズルから離脱させることができる。よって、ノズルカバーに邪魔されることなく、除去作業を効率良く行うことができる。
【0013】
(2)本発明に係る押下ヘッドは、前記ノズルカバーが前記ノズルから離脱した位置で、該ノズルカバーを係止する係止手段を備えていることが好ましい。
【0014】
このように構成された押下ヘッドにおいては、ノズルカバーをヒンジ回りに回動させてノズルから離脱させた際に、係止手段によってノズルカバーを係止することができ、該ノズルカバーを離脱した位置で固定することができる。よって、ノズル内に固化した内容物を洗浄等によって取り除く際に、ノズルカバーを離脱させたままの状態に維持しておくことができる。従って、除去作業をより効率良く行うことができる。
【0015】
(3)本発明に係る押下ヘッドは、前記係止手段として、前記ノズルカバーが前記ノズルに被着された状態において前記ノズルから離間され、前記ノズルカバーが前記ノズルから離脱された状態において前記ノズルの外周面に係止されて前記ノズルを挟持する一対の係止部が、前記ノズルカバーに設けられていることが好ましい。
【0016】
このように構成された押下ヘッドにおいては、ノズルに被着されたノズルカバーをヒンジ回りに回動させてノズルから離脱させると、ノズルカバーに設けられた一対の係止部がノズルの外周面に係止されてノズルを挟持する。これにより、ノズルカバーがノズルから離脱した位置で固定される。
また、ノズルから離脱したノズルカバーをヒンジ回りに回動させると、一対の係止部がノズルから外れてノズルカバーの係止が解除されるとともにノズルカバーがノズルに被着される。
【0017】
(4)本発明に係る押下ヘッドは、前記係止手段として、前記ノズルの外面に該ノズルの後側から前側に向かって下る段差が形成されており、前記ノズルカバーは、前記ノズルのうちの前記段差よりも前側の部分に被着されており、前記ノズルカバーの基端は、該ノズルカバーの回動に伴い前記段差を乗り越え可能であり、前記ノズルカバーが前記ノズルから離脱された状態において、前記ノズルのうちの前記段差よりも後側の部分に係止されることが好ましい。
【0018】
このように構成された押下ヘッドにおいては、ノズルカバーをヒンジ回りに回動させると、ノズルカバーの基端が段差を乗り越え、ノズルカバーがノズルから離脱される。これにより、ノズルカバーの基端が段差よりも後側の部分に係止され、ノズルカバーがノズルから離脱した位置で固定される。
また、固定されたノズルカバーをヒンジ回りに逆方向に回動させると、ノズルカバーの基端が段差よりも後側の部分から外れてノズルカバーの係止が解除され、ノズルカバーがノズルに被着される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る押下ヘッドによれば、操作性を悪化させることなく内容物を吐出することができるうえ、内容物の飛散を効果的に抑制しながら吐出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態を説明するための押下ヘッド付きの吐出器の破断図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を説明するための押下ヘッドの平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を説明するための押下ヘッドの斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を説明するための押下ヘッド付きの吐出器の破断図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態を説明するための押下ヘッド付きの吐出器の側面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を説明するための押下ヘッドの平面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態を説明するための押下ヘッド付きの吐出器の破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る押下ヘッドの実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0022】
[第1の実施の形態]
まず、第1の実施の形態について、図1から図4に基づいて説明する。
なお、本実施の形態では、押下ヘッド1の押し込み側(図1における下側)を下方とし、その反対側(図1における上側)を上方とする。また、図1に示す符号Oは、後述するステム11の中心軸線を示しており、以下、単に軸線Oと記す。また、この軸線O方向を、以下、単に「軸方向」と記し、軸線Oに直交する方向を、以下、単に「径方向」と記し、軸線O回りの方向を、以下、単に「周方向」と記す。また、「径方向」のうち後述するノズル3の延在方向を前方とする。
【0023】
図1、図2に示すように、押下ヘッド1は、ポンプ式の吐出器10に備えられる押下ヘッドであり、吐出器10のステム11に装着されている。ここで、吐出器10について説明すると、吐出器10の概略構成としては、図示せぬ容器の口部に装着される装着キャップ12と、装着キャップ12の上端に設けられたヘッド保持部13と、装着キャップ12に取り付けられたポンプ14と、ポンプ14に連通されていると共に上方付勢状態で起立した押込み可能なステム11と、が備えられている。
【0024】
押下ヘッド1の概略構成としては、上記したステム11に嵌着される押下部2と、押下部2に突設されたノズル3と、ノズル3に対して脱着可能なノズルカバー4と、を備えている。
【0025】
押下部2は、指等で押し下げ操作されるヘッド本体であり、その概略構成としては、ドーム状の外殻部20と、外殻部20の内面から垂下された連通筒部21と、が備えられている。
【0026】
外殻部20は、軸線Oを中心にして配設された平面視円形の球面状の天壁部20aと、天壁部20aの外縁から垂下されて軸線Oを中心軸線にして延設された略円筒形状の周壁部20bと、を備えている。天壁部20aの上面は、指等で押圧される押圧面となっている。外殻部20の周壁部20bには、ノズル3が挿通される開口部22が形成されている。開口部22は、外殻部20の外側に向けて突出された略逆U字状の壁部であり、軸方向に沿って延在すると共に互いに対向する両側の側壁部22aと、両側の側壁部22aの上端の間に配設された上壁部22bと、が備えられている。上壁部22bの上面は、外殻部20の天壁部20aの上端面と略面一に形成されている。両側の側壁部22aの各内面(互いに対向する面)には、軸方向に延在する係合凸部22cがそれぞれ形成されている。
【0027】
連通筒部21は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延在された略円筒形状の筒部であり、外殻部20の天壁部20aの下面から垂下されている。この連通筒部21の内側には、上記したステム11の上端部が嵌合されており、連通筒部21の内側は、ステム11の内側に連通されている。また、連通筒部21の下部は、外殻部20の下側から下向きに突出されており、その下部の外周面には、上記したヘッド保持部13の図示せぬ雌ねじに螺合可能な雄ねじ23が形成されている。また、連通筒部21の上部は、外殻部20の内側に配設されており、連通筒部21の上部の外周面には、軸方向に沿って延設された凸リブ24が周方向に間欠的に配設されている。
【0028】
ノズル3は、上記した連通筒部21の上端部の側面に突設された略円筒形状の筒部であり、ノズル3の基端は連通筒部21の内側に向けて開放されており、ノズル3の内側は連通筒部21の内側に連通されている。また、ノズル3は、前方に向けて突設されており、上記した外殻部20の開口部22から外殻部20の外側に突出されている。ノズル3の前端には、外殻部20の外側に開放され、内容物が吐出されるノズル孔3aが形成されている。また、ノズル3の基端部の上面は、外殻部20の天壁部20aおよび開口部22の上壁部22bと一体に形成されている。
【0029】
ノズルカバー4は、上記したノズル3を覆うカバーであり、ヒンジ5を介して回転可能に支持され、ヒンジ5回りに回動することでノズル3に対して脱着可能となっている。詳しく説明すると、ノズルカバー4は、ノズル3に装着された状態において、ノズル孔3aよりも前方に向けて延在するように形成されていると共に、ノズル孔3aを前方に向けて開放するように形成されている。そして、本実施形態ではノズル3に被着された状態において、ノズル3の上方側及び両側方側をそれぞれ覆うように構成されており、その概略構成としては、ノズル3の上方に配設された上板部40と、ノズル3の両側にそれぞれ配設された側板部41と、が備えられている。
【0030】
上板部40は、開口部22の上壁部22bの先端から前方側に向かって延在する板部であり、ノズル孔3aよりも前方に向けて延設されている。上板部40の基端部の上面は、開口部22の上壁部22bの上面と略面一に形成されており、この上板部40の基端部は、開口部22の上壁部22bにヒンジ5を介して一体に連結されている。つまり、ノズルカバー4及び押下部2はヒンジ5を介して一体に形成されており、上記した押下部2、ノズル3及びノズルカバー4は一体に形成されている。なお、上記したヒンジ5は、ノズル3の中心軸線Lに対して直交する水平方向に沿って延在する屈曲可能な板部であり、このヒンジ5によってノズルカバー4が鉛直面(ステム11の軸線O及びノズル3の中心軸線Lをそれぞれ含む面)に沿って回動可能となっている。
【0031】
側板部41は、上板部40に対して垂直に配設された板部であり、上板部40の両側端からそれぞれ垂下されている。両側の側板部41は、互いに対向して配設されており、両側の側板部41の間には、ノズル3が配設されている。両側の側板部41の基端部には、係止部42がそれぞれ設けられており、これら両側一対の係止部42によって、ノズルカバー4がノズル3から離脱した位置(図4に示す。)でノズルカバー4を係止する係止手段が構成されている。
【0032】
詳しく説明すると、係止部42は、ノズルカバー4がノズル3に被着された状態(図1に示す状態)においてノズル3から離間され、ノズルカバー4がノズル3から離脱された状態(図4に示す状態)においてノズル3の外周面に係止される矩形状の板片部である。係止部42は、側板部41の基端に突設されて開口部22の内側に向けて突出されている。また、係止部42は、両側の側板部41にそれぞれ設けられており、これら両側一対の係止部42は、互いに対向して配設されていると共に上記した開口部22の側壁部22aの内面(互いに対向する面)に沿って配設されている。これら一対の係止部42によって、図3、図4に示すようにノズルカバー4がノズル3から離脱されたときにノズル3が両側から挟持されてノズル3に対するノズルカバー4の回動動作が規制される。
【0033】
係止部42の内面(互いに対向する面)には、複数の略半球状の突起42aが形成されている。複数の突起42aは、ノズルカバー4がノズル3に被着された姿勢(図1に示す。)において軸方向に沿って並設されており、ノズルカバー4がノズル3から離脱した姿勢(図4に示す。)においてはノズル3の中心軸線Lに沿って並んだ状態となり、複数の突起42aがそれぞれノズル3の外周面に係合される。
【0034】
係止部42の外面(開口部22の側壁部22aに対向する面)には、係合凸部42bが形成されている。この係合凸部42bは、ノズルカバー4がノズル3に被着された姿勢において軸方向に沿って延設されていると共に、側壁部22aの係合凸部22cにアンダーカット嵌合されている。
【0035】
次に、上記した構成からなる押下ヘッド1の作用について説明する。
【0036】
まず、押下ヘッド1(吐出器10)の不使用時には、図1、図2に示すように、係止部42の外面の係合凸部42bが開口部22の側壁部22aの係合凸部22cにアンダーカット嵌合されているため、ノズルカバー4のヒンジ5回りの上向きの回動が規制され、ノズルカバー4がノズル3に被着された状態で保持されている。
【0037】
なお、商品搬送時や陳列時などの使用前の状態においては、連通筒部21の雄ねじ23がヘッド保持部13の図示せぬ雌ねじに螺着されており、押下ヘッド1が押し下げられた状態で保持されている。これにより、押下ヘッド1が不用意に操作されて内容物が吐出されることが防止される。また、このとき、連通筒部21に設けられた凸リブ24の下端がヘッド保持部13の上面に係止する位置まで連通筒部21がヘッド保持部13に捩じ込まれている。これにより、押下ヘッド1が所定の高さ位置に配置されるので、複数の吐出器10の高さ寸法を揃えることができる。
【0038】
次に、押下ヘッド1(吐出器10)を使用する場合について説明する。
まず、ノズルカバー4がノズル3に被着されている状態において、ノズル孔3aが前方に向けて開放された状態となっている。そのため、ノズルカバー4をノズル3に被着させたままの状態であっても、押下部2を押し込み操作することで内容物を吐出することができる。
この内容物の吐出動作について詳しく説明すると、押下部2の外殻部20の天壁部20aの上面を指等で押圧して押下部2を軸方向に沿って押し下げ、押下部2と共にステム11を押し下げる。これにより、ポンプ14によって図示せぬ容器内の内容物がステム11内を通って連通筒部21内に流入し、連通筒部21内からノズル3内に流入する。その結果、ノズル孔3aから内容物を吐出することができる。
特に、吐出の度にノズルカバーを取り外す手間が必要であった従来の押下ヘッドとは異なり、ノズルカバー4を被着させたままで良いので、操作性を悪化させることなく内容物の吐出を行うことができる。
【0039】
また、ノズルカバー4がノズル3に被着されている際、該ノズルカバー4はノズル孔3aよりも前方に延在している。そのため、仮にノズル3内に固化した内容物が存在し、新たに吐出される内容物がこの固化した内容物の影響を受けながらノズル孔3aから吐出されたとしても、ノズルカバー4によって飛散が防止される。このように、仮にノズル3内に固化した内容物が存在していたとしても、飛散を効果的に抑制しながら吐出を行うことができる。
【0040】
しかも、ノズル孔3aを開放させているとはいえ、ノズルカバー4はノズル孔3aよりも前方に延在しているので、ノズル孔3aからノズル3内に流通する空気の流れを一部遮ることができる。従って、ノズル3内の乾燥を抑えることができ、ノズル3内に残留した内容物が固化するまでの進行を遅くすることができる。
【0041】
更に、状況に応じてノズル3内に固化した内容物を洗浄等によって取り除く場合があるが、この際ノズルカバー4をヒンジ5回りに回動させてノズル3から離脱させることができる。よって、ノズルカバー4に邪魔されることなく、除去作業を効率良く行うことができる。
ここで、上述したノズルカバー4の離脱動作について詳細に説明する。まず、ノズル3に被着されているノズルカバー4を上方に押し上げる。これにより、係止部42の外面の係合凸部42bが開口部22の側壁部22aの係合凸部22cから外れ、ノズルカバー4がヒンジ5回りに回動可能となる。
【0042】
続いて、図3、図4に示すように、上記したノズルカバー4をヒンジ5回りに上向きに回動させ、ノズル3からノズルカバー4を離脱させる。このとき、ノズルカバー4に設けられた一対の係止部42がノズル3の外周面に係止されてノズル3を挟持する。これにより、ノズルカバー4が、ノズル3から離脱した位置で、略鉛直に立設した姿勢のまま固定される。つまり、ノズルカバー4の回動動作の軌道上に一対の係止部42(係止手段)による係止位置があるため、ノズルカバー4をノズル3から離脱させる動作によってノズルカバー4が一対の係止部42により固定される。なお、上記した係止部42の内面には、複数の突起42aが形成されているので、係止部42がノズル3の外周面に確実に係止される。
【0043】
従って、ノズルカバー4を離脱した位置で固定することができる。よって、ノズル3内に固化した内容物を洗浄等によって取り除く際に、ノズルカバー4を離脱させたままの状態に維持しておくことができる。従って、除去作業を非常に効率良く行うことができる。
【0044】
なお、固化した内容物の除去作業が終了した後には、略鉛直に立設した姿勢のノズルカバー4を前方側に押圧して傾倒させ、ノズルカバー4をヒンジ5回りに下向きに回動させる。これにより、一対の係止部42がノズル3から外れてノズルカバー4の係止が解除された後、ノズルカバー4がそのままノズル3に被着される。つまり、ノズルカバー4の回動動作の軌道上に一対の係止部42(係止手段)による係止位置があるため、係止部42によるノズルカバー4の係止を解除する動作によってノズルカバー4がノズル3に被着される。なお、このとき、係止部42の外面の係合凸部42bが開口部22の側壁部22aの係合凸部22cにアンダーカット嵌合される。これにより、ノズルカバー4のヒンジ5回りの上向きの回動が規制され、ノズルカバー4がノズル3に被着された状態で保持される。
【0045】
上記した押下ヘッド1によれば、ノズルカバー4をノズル3に被着させたままの状態で押下部2を押し込み操作して、内容物を吐出させることができるので、操作性を悪化させることなく円滑な吐出作業を行うことができる。
また、ノズルカバー4がノズル孔3aの前方よりも延在しているので、仮にノズル3内に固化した内容物が存在していたとしても、飛散を効果的に抑制しながら吐出を行うことができる。更に、ノズルカバー4をヒンジ5回りに回動させてノズル3から離脱させることができるので、ノズルカバー4に邪魔されることなく除去作業を効率良く行うことができる。
【0046】
また、上記した押下ヘッド1では、係止手段として、ノズルカバー4がノズル3から離脱されるとノズル3を挟持する一対の係止部42がノズルカバー4に設けられているので、ノズルカバー4をノズル3から離脱させる操作と同時にノズルカバー4をより確実に固定させることができる。
【0047】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について、図5から図7に基づいて説明する。
なお、上述した第1の実施の形態と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省略する。
【0048】
図5、図6に示すように、ノズル103の上面には、ノズル103の基端側(後側)から先端側(前側)に向かって下る段差130が形成されている。詳しく説明すると、ノズル103の基端部(ノズル基端部131)は、円筒形状の筒部であり、ノズル基端部131の基端は、連通筒部21に連通されている。また、ノズル孔103aが形成されたノズル103の先端部(ノズル先端部132)は、外周面の上面が扁平状に形成された筒部であり、内周面がノズル基端部131と同様の円形状を成している。そして、上記したノズル基端部131の上面とノズル先端部132の上面との間に、ノズル103の径方向に沿って立ち上がった段差130が形成されている。
【0049】
ノズルカバー104は、ノズル103に被着された状態において、ノズル孔103aよりも前方に向けて延在すると共にノズル孔103aを前方に向けて開放しているカバーであり、上記した段差130に係合されている。詳しく説明すると、ノズルカバー104は、ノズル先端部132の先端側及び下方側がそれぞれ開放されてノズル先端部132の上方側及び両側方側をそれぞれ覆うカバーであり、その概略構成としては、ノズル先端部132の上方に配設された上板部140と、ノズル先端部132の両側にそれぞれ配設された側板部141と、が備えられている。
【0050】
上板部140は、上記した段差130の先端から径方向外側に向かって延在する板部であり、ノズル103の先端の先方まで延設されている。この上板部140の基端部は、上記した段差130に係止されている。側板部141は、上板部140に対して垂直に配設された板部であり、上板部140の両側端からそれぞれ垂下されている。両側の側板部141は、互いに対向して配設されており、両側の側板部141の間には、ノズル103が配設されている。
【0051】
上記したノズルカバー104は、ヒンジ105を介してノズル103に一体に連結されており、ヒンジ105回りに回動可能となっている。詳しく説明すると、上板部140の基端部は、ノズル103の両側に配設されたヒンジ105を介してノズル103に一体に連結されており、上記した押下部2、ノズル103及びノズルカバー104は一体に形成されている。
【0052】
ヒンジ105は、上板部140の基端部とノズル基端部131の外周面との間に架設された帯状の連結片であり、ヒンジ105の一端が上板部140の基端部に連結され、ヒンジ105の他端がノズル基端部131の外周面に連結されている。このヒンジ105は、ノズル基端部131の両側にそれぞれ配設されており、これら両側一対のヒンジ105を介してノズルカバー104が回転可能に支持されている。ヒンジ105の中間部には、屈曲部150が形成されており、ノズルカバー104がノズル103に被着された状態においては、この屈曲部150が屈曲されている。
【0053】
次に、上記した構成からなる押下ヘッド1の作用について説明する。
【0054】
本実施形態の場合であっても、ノズルカバー104がノズル103に被着されている状態において、ノズル孔103aが前方に向けて開放された状態となっているので、ノズルカバー104をノズル103に被着させたままの状態で押下部2を押し込み操作でき、内容物を吐出することができる。
【0055】
また、ノズルカバー104がノズル103に被着されている際、該ノズルカバー104はノズル孔103aよりも前方に延在している。そのため、第1の実施の形態と同様に、仮にノズル103内に固化した内容物が存在し、新たに吐出される内容物がこの固化した内容物の影響を受けながらノズル孔103aから吐出されたとしても、ノズルカバー104によって飛散を防止することができる。従って、飛散を効果的に抑制しながら吐出を行うことができる。
【0056】
また、ノズルカバー104がノズル孔103aよりも前方に延在し、ノズル孔103aからノズル103内に流通する空気の流れを一部遮ることができるので、ノズル103内の乾燥を抑えることができ、ノズル103内に残留した内容物が固化するまでの進行を遅くすることができる。
【0057】
ここで、ノズル103内に固化した内容物を洗浄等によって取り除く場合には、図7に示すように、ノズルカバー104をヒンジ105回りに上向きに回動させる。これにより、ノズルカバー104(上板部140)の基端が段差130を乗り越え、ノズルカバー104がノズル103から離脱されると共に、ノズルカバー104の基端がノズル基端部131の上面に係止され、ノズルカバー104がノズル103から離脱した位置で固定される。
これにより、ノズルカバー104を離脱させたままの状態に維持しておくことができるので、固化した内容物の除去作業を非常に効率良く行うことができる。
【0058】
なお、固化した内容物の除去作業が終了した後には、ノズルカバー104を前方側に押圧して傾倒させ、ノズルカバー104をヒンジ105回りに下向きに回動させる。これにより、ノズルカバー104の基端がノズル基端部131の上面から外れてノズルカバー104の係止が解除された後、ノズルカバー104がそのままノズル先端部132に被着される。
【0059】
上記した押下ヘッド1によれば、係止手段として、ノズルカバー104に段差130が形成され、ノズルカバー104の基端がノズル先端部132の上面に係止される構成となっているので、より簡単に、ノズルカバー104をノズル103から離脱させる操作と同時に固定させることができる。
【0060】
以上、本発明に係る押下ヘッドの実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した第1の実施の形態では、ヒンジ5を介してノズルカバー4と押下部2(開口部22)とが連結されているが、本発明は、上記した第1の実施の形態における押下ヘッド1において、ノズルカバー4とノズル3とがヒンジを介して連結されていてもよい。また、上記した第2の実施の形態では、ヒンジ105を介してノズルカバー104とノズル103(ノズル基端部131)とが連結されているが、本発明は、上記した第2の実施の形態における押下ヘッド1において、ノズルカバー104と押下部2(外殻部20)とがヒンジを介して連結されていてもよい。
【0061】
また、上記した実施の形態では、上板部40,140と両側の側板部41,141とからなる断面視コ字形状のノズルカバー4,104が備えられているが、本発明は、他の形状のノズルカバーであってもよく、例えば、断面視U字形状のノズルカバーであってもよい。
【0062】
また、上記した実施の形態では、軸線O及びノズル3,103の中心軸線Lを含む鉛直面に沿って回動するノズルカバー4,104が備えられているが、本発明は、上記鉛直面に沿って回動するノズルカバーに限定されるものではなく、他の方向に回動するノズルカバーであってもよい。例えば、水平面(軸線Oに対して垂直な面)に沿って回動するノズルカバーであってもよい。
【0063】
また、上記した第1の実施の形態では、一対の係止部42からなる係止手段が備えられ、第2の実施の形態では、ノズル103の段差130からなる係止手段が備えられているが、本発明は、他の構成からなる係止手段であってもよい。例えば、ノズルカバー4,104の基端部に掛止部が形成され、ノズル3,103の上面に被掛止部が形成され、ノズルカバー4,104がノズル3,103から離脱したところで、上記した掛止部が被掛止部に掛止される構成であってもよい。
【0064】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 押下ヘッド
2 押下部
3、103 ノズル
3a、103a ノズル孔
4、104 ノズルカバー
5、105 ヒンジ
11 ステム
42 係止部
130 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で起立した押込み可能なステムに嵌着される押下部と、該押下部に前方に向けて突設されると共に、前端に内容物が吐出されるノズル孔が形成されたノズルと、を備える押下ヘッドであって、
前記ノズル及び前記押下部のうちの何れか一方にヒンジを介して一体に連結されて該ヒンジ回りに回動することで前記ノズルに対して脱着可能なノズルカバーを備え、
前記ノズルカバーは、前記ノズルに被着された状態において、前記ノズル孔よりも前方に向けて延在すると共に前記ノズル孔を前方に向けて開放していることを特徴とする押下ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の押下ヘッドにおいて、
前記ノズルカバーが前記ノズルから離脱した位置で、該ノズルカバーを係止する係止手段を備えていることを特徴とする押下ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の押下ヘッドにおいて、
前記係止手段として、前記ノズルカバーが前記ノズルに被着された状態において前記ノズルから離間され、前記ノズルカバーが前記ノズルから離脱された状態において前記ノズルの外周面に係止されて前記ノズルを挟持する一対の係止部が、前記ノズルカバーに設けられていることを特徴とする押下ヘッド。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の押下ヘッドにおいて、
前記係止手段として、前記ノズルの外面に該ノズルの後側から前側に向かって下る段差が形成されており、
前記ノズルカバーは、前記ノズルのうちの前記段差よりも前側の部分に被着されており、
前記ノズルカバーの基端は、該ノズルカバーの回動に伴い前記段差を乗り越え可能であり、前記ノズルカバーが前記ノズルから離脱された状態において、前記ノズルのうちの前記段差よりも後側の部分に係止されることを特徴とする押下ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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