説明

押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物

【課題】 成形加工性が良好で、加工時の発煙量が少なく、加えて、優れた耐熱性とヒートシール性を併せ持ち、さらにはクリーン性を兼ね備えた、食品用、飲料用、医薬用などの容器包装材、防湿紙、剥離紙等の用途に好適に用いられる押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 密度、メルトマスフローレイト、数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が特定の範囲にあり、該線状ポリエチレン中の換算分子量が10000以下のエチレン系重合体の炭素原子1000個に含まれるメチル炭素原子の個数が100個以下である線状ポリエチレンと、高圧法低密度ポリエチレンが、密度、メルトマスフローレイト、溶融張力比が特定の範囲にあり、メルトマスフローレイト比と溶融張力とが特定の関係である2種類の高圧法低密度ポリエチレンとからなる押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物に関するものである。さらに詳しくは、成形加工性が良好で、加工時の発煙量が少なく、加えて、優れた耐熱性と接着性、ヒートシール性を併せ持ち、さらにはクリーン性を兼ね備えた、食品用、飲料用、医薬用などの容器包装材、防湿紙、剥離紙等の用途に好適に用いられる押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
押出しラミネート成形によってポリエチレンを紙、板紙、セロハン、アルミ箔、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、PETフィルムなどの基材に被覆することは良く知られている。これらの基材の内、紙や板紙、セロハンというような防湿性の低い基材の場合には、防湿性を付与するために、また、被覆したポリエチレンの耐熱性を高めるために高密度ポリエチレンを単独で、あるいは低密度ポリエチレンや中密度ポリエチレンと混合して使用するというようなことが行われている。しかしながら、そのような場合、サージングを発生する、ドローレゾナンスに起因する厚み変動を起こしやすくなる、ネックインが大きくなる、基材との接着性が低下する、というような問題を招来していた。それらを解決する方法が例えば特許文献1に提案されており、また、加えて接着性を改良し、加工時の発煙量を抑制する方法が特許文献2に開示されている。
しかしながら、これらの方法では耐熱性や接着性、発煙量が改良されても、一方でヒートシール性が損なわれるといった問題や、ヒートシール後や加熱処理、紫外線・放射線の照射による滅菌・殺菌加工後の臭気などのクリーン性に対する最近の高度な要求に対しては十分にこたえられていないという問題を残したままである。
【0003】
【特許文献1】特開平06−190983号公報
【特許文献2】特許第3005194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような状況を鑑みてなされたものであって、成形加工性が良好で、加工時の発煙量が少なく、加えて、優れた耐熱性と接着性、ヒートシール性を併せ持ち、さらにはクリーン性を兼ね備えた、食品用、飲料用、医薬用などの容器包装材、防湿紙、剥離紙等の用途に好適に用いられる押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、成形加工性が良好で、加工時の発煙量が少なく、加えて、優れた耐熱性と接着性、ヒートシール性を併せ持ち、さらにはクリーン性を兼ね備えた、食品用、飲料用、医薬用などの容器包装材、防湿紙、剥離紙等の用途に好適に用いられる押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物を開発するために鋭意研究を重ねた結果、特定のポリエチレン樹脂組成物を用いることで、上記の目的に適合することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
[1]線状ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンとからなる樹脂組成物であって、線状ポリエチレンが、密度が930kg/m3 以上、メルトマスフローレイトが0.1g/10min以上50g/10min以下、数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が2以上10以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られる該線状ポリエチレン中の換算分子量が10000以下のエチレン系重合体の炭素原子1000個に含まれるメチル炭素原子の個数が100個以下である線状ポリエチレン(A)、高圧法低密度ポリエチレンが、密度が935kg/m3 以下でメルトマスフローレイトが0.3g/10min以上10.0g/10min以下、下記式(1)で表される溶融張力比が0.7以上、メルトマスフローレイト比と溶融張力との関係が下記式(2)を満たす高圧法低密度ポリエチレン(B)と、密度が935kg/m3 以下でメルトマスフローレイトが0.3g/10min以上10.0g/10min以下、下記式(1)で表される溶融張力比が0.6以下、メルトマスフローレイト比と溶融張力との関係が下記式(3)を満たす高圧法低密度ポリエチレン(C)からなり、線状ポリエチレン(A)が20重量部以上95重量部以下、高圧法低密度ポリエチレン(B)と高圧法低密度ポリエチレン(C)との合計が80重量部以下5重量部以上、高圧法低密度ポリエチレン(B)と高圧法低密度ポリエチレン(C)との重量比が1/99以上99/1以下であることを特徴とする押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物。
MTR=(MT240 ℃)/(MT190 ℃) (1)
(MT190 ℃)≧0.65(FRR)−20 (2)
(MT190 ℃)≦0.65(FRR)−25 (3)
ここで上記式(1)、(2)及び(3)において、MTRは溶融張力比、MTは溶融張力、MTの添え字は溶融張力の測定温度、FRRはメルトマスフローレイト比を表す。
[2]線状ポリエチレンが、担持型幾何拘束型シングルサイト触媒を用いる重合法で得られたものであることを特徴とする上記[1]に記載の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物。
[3]ポリエチレン樹脂組成物が、充填剤、スリップ剤、酸化防止剤の添加剤を含有しないことを特徴とする上記[1]に記載の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成形加工性が良好で、加工時の発煙量が少なく、加えて、優れた耐熱性と接着性、ヒートシール性を併せ持ち、さらにはヒートシール後や加熱処理、紫外線・放射線の照射による滅菌・殺菌加工後の臭気も少なくクリーン性を兼ね備えた、乳製品等を含む食品用、飲料用容器包装材、あるいは、医薬用容器包装材、防湿紙、剥離紙等の用途に好適に用いられる押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物における線状ポリエチレンは、密度が930kg/m3以上、好ましくは932kg/m3以上、メルトマスフローレイト(以下、MFRと略す。)が0.1g/10min以上50g/10min以下、好ましくは0.3g/10min以上40g/10min以下、数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が2以上10以下であり、好ましくは3以上7以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す。)で得られる該線状ポリエチレン中の換算分子量が10000以下のエチレン系重合体の炭素原子1000個に含まれるメチル炭素原子の個数(以下、メチル基濃度と略す。)が100個以下(以後、メチル基濃度を個数/1000(C)と表す。)、好ましくは80個/1000(C)以下である。
【0009】
本発明の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物における線状ポリエチレンの密度、MFR、分子量分布、メチル基濃度が上記範囲外であるときの問題点について以下に述べる。密度が930kg/m3 未満であるとヒートシール性は良好であるが十分な耐熱性を得ることができなくなる。MFRが0.1g/10min未満であるとドローダウン性が低下し、50g/10minを超えるとネックインが大きくなり、いずれも成形加工性が低下する。また、分子量分布が2未満だと成形時の押出し負荷が大きくなる、耐熱性改良効果が十分でないという不具合を発生し、10を超えると成形形加工時の発煙量が増えるという問題を招来する。さらに、メチル基濃度が100個/1000(C)を超えると成形加工時の発煙量が増加する、ヒートシール後や加熱処理、紫外線・放射線の照射による滅菌・殺菌加工後の低臭性が損なわれるということになる。以上、本発明の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物における線状ポリエチレンは、成形加工時の発煙量の発生量低減、耐熱性改良の観点、およびヒートシール後や加熱処理、紫外線・放射線の照射による滅菌・殺菌加工後の低臭性の観点から密度、MFR、分子量分布、メチル基濃度は、上記の範囲内であることが必要である。
【0010】
本発明の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物における高圧法低密度ポリエチレンは、密度が935kg/m3 以下、好ましくは932kg/m3 以下で、MFRが0.3g/10min以上10.0g/10min以下、好ましくは0.4g/10min以上8.0g/10min以下、下記式(1)で表される溶融張力比(以下、MTRと略す。)が0.7以上、好ましくは0.8以上、メルトマスフローレイト比(以下、FRRと略す。)と溶融張力(以下、MTと略す。)との関係が下記式(2)を満たす高圧法低密度ポリエチレン(B)と、密度が935kg/m3 以下、好ましくは932kg/m3 以下で、MFRが0.3g/10min以上10.0g/10min以下、好ましくは0.4g/10min以上8.0g/10min以下、下記式(1)で表されるMTRが0.6以下、好ましくは0.5以下、FRRとMTとの関係が下記式(3)を満たす高圧法低密度ポリエチレン(C)からなる。
MTR=(MT240 ℃)/(MT190 ℃) (1)
(MT190 ℃)≧0.65(FRR)−20 (2)
(MT190 ℃)≦0.65(FRR)−25 (3)
ここで上記式(1)、(2)及び(3)において、MTの添え字はMTの測定温度を表す。
【0011】
本発明の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物における高圧法低密度ポリエチレンの密度、MFR、分子量分布、メチル基濃度が上記範囲外であるときの問題点を、高圧法低密度ポリエチレン(B)、(C)のそれぞれについて以下に述べる。高圧法低密度ポリエチレン(B)の密度が935kg/m3 を超えると十分なネックイン改良効果を得ることができない。MFRが0.3g/10min未満であるとドローダウン性が低下し、一方、10.0g/minを超えるとネックインが大きくなり、いずれも良好な成形加工性を実現することができない。MTRが0.7未満だと高温成形時のネックインが大きくなってしまい、安定成形ができなくなる。さらに上記式(2)を満足できないと、良好なネックインとドローダウン性を両立することができず、優れた成形加工性を得ることができない。
【0012】
一方、高圧法低密度ポリエチレン(C)の密度が935kg/m3 を超えるとヒートシール性が低下する。MFRが0.3g/10min未満であると良好な接着性を得ることができず、10.0g/minを超えるとネックインが小さくなり、また、サージングを発生しやすくなる。MTRが0.6を超えると高温成形時の流動性が低下して接着性改良効果が小さくなってしまうという問題を発生する。さらに上記式(3)を満足できないと、ネックインやサージングといった成形加工性の改良と接着性の改良を併せて実現することができない。以上、本発明の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物における高圧法低密度ポリエチレンは、ネックインやドローダウン性などの成形加工性、ヒートシール性、接着性などの改良の観点から密度、MFR、MTRおよびFRRと溶融張力の関係が、上記範囲であることが必要である。
【0013】
本発明の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物は、線状ポリエチレン(A)が20重量部以上95重量部以下、好ましくは25重量部以上90重量部以下、高圧法低密度ポリエチレン(B)と高圧法低密度ポリエチレン(C)との合計が80重量部以下5重量部以上、好ましくは75重量部以下10重量部以上、高圧法低密度ポリエチレン(B)と高圧法低密度ポリエチレン(C)との重量比が1/99以上99/1以下、好ましくは5/95以上95/5以下である。線状ポリエチレン(A)が20重量部未満だと十分な耐熱性改良効果が得られず、また、ヒートシール後や加熱処理、紫外線・放射線の照射による滅菌・殺菌加工後の低臭性が低下し、95重量部を超えるとネックインが大きい、サージングを発生しやすくなるという問題を引き起こす。高圧法低密度ポリエチレン(B)、高圧法低密度ポリエチレン(C)との混合割合が1/99未満だと、ネックインやドローダウン性というような成形加工性の改良が実現できず、99/1を超えると良好なヒートシール性や優れた接着性を得ることができない。なお、線状ポリエチレン(A)、高圧法低密度ポリエチレン(B)、高圧法低密度ポリエチレン(C)の混合方法はドライブレンド、あるいはメルトブレンドのどちらであってもよい。
【0014】
本発明の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物における線状ポリエチレンは、担持型幾何拘束型シングルサイト触媒を用いたポリエチレンの重合法で得る必要がある。重合法は公知の各種方法を使用でき、例えば、不活性ガス中での流動床式気相重合、或いは攪拌式気相重合、不活性溶媒中でのスラリー重合、モノマーを溶媒とするバルク重合などが挙げられるが、不活性溶媒中でのスラリー重合が好ましい。
本発明の線状ポリエチレンは、エチレン単独からなる重合体であってもエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなる共重合体であってもよく、エチレンと共重合させる炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1、6−メチル−ヘプテン−1などが挙げられる。また、これらを2種類以上、任意の比率でドライブレンド、あるいはメルトブレンドしたものであってもよい。
【0015】
上記の重合法において用いられる担持型幾何拘束型シングルサイト触媒(以下、メタロセン触媒と略す。)とは、(ア)担体物質、(イ)有機アルミニウム、(ウ)環状η性結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物、及び(エ)該環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤から調製される。(ウ)の環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物中の遷移金属原子としてチタニウムを用いることが特開平11−166009号公報に記載されている。
担体物質(ア)としては、有機担体、無機担体のいずれでもよい。有機担体としては、好ましくは(1)炭素数2〜20のα−オレフィンの重合体、例えば、エチレン樹脂や、プロピレン樹脂、ブテン−1樹脂、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、エチレン−ヘキセン−1共重合体樹脂、プロピレン−ブテン−1共重合体樹脂、エチレン−ヘキセン−1共重合体等、(2)芳香族不飽和炭化水素共重合体、例えば、スチレン樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体樹脂等、および(3)極性基含有重合体樹脂、例えば、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、アクリロニトリル樹脂、塩化ビニル樹脂、アミド樹脂、カーボネート樹脂等が挙げられる。
【0016】
無機担体としては、(4)無機酸化物として、例えば、SiO2 、Al22 、MgO、TiO2 、B23 、CaO、ZnO、BaO、ThO,SiO2 −MgO、SiO2 −Al23 、SiO2 −MgO、SiO2 −V25 など、(5)無機ハロゲン化合物として、例えば、MgCl2 、AlCl3 、MnCl2 など、(6)無機の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩として、例えば、Na2 CO3 、K2 CO3 、CaCO3 、MgCO3 、Al2 (SO43 、BaSO4 、KNO3 、Mg(NO32 など、(7)水酸化物として、例えば、Mg(OH)2 、Al(OH)3 、Ca(OH)3 などが例示される。最も好ましい担体はSiO2 である。
担体の粒子径は任意であるが、一般的には1μm〜3000μm、粒子の分散性の見地から、粒子形分布は好ましくは10〜1000μmの範囲内である。
【0017】
上記担体物質は必要に応じて(イ)有機アルミニウム化合物で処理される。好ましい有機アルミニウム化合物としては、一般式(−Al(R)O−)nで示される直鎖状、あるいは環状重合体(Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/又はRO基で置換されたものも含む。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である。)等が挙げられ、具体例として、Rがメチル基、エチル基、イソブチルエチル基である、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、イソブチルエチルアルモキサン等が挙げられる。
更にその他の有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲノアルミニウム、セスキアルキルハロゲノアルミニウム、アルメニルアルミニウム、ジアルキルハイドロアルミニウム、セスキアルキルハイドロアルミニウムなどが挙げられる。
【0018】
その他の有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルハロゲノアルミニウム、セスキメチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライドなどのセスキアルキルハロゲノアルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドなどを挙げることができる。これらの中で最も好ましくはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドである。
【0019】
担持触媒は、例えば下記式(4)で示される(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物を含む。
【化1】

式中、Mは1つ以上の配位子Lとη5結合をしている酸化数+2、+3、+4の長周期型周期律表第4族遷移金属であり、特に遷移金属としてはチタニウムが好ましい。
又、Lは環状η結合性アニオン配位子であり、各々独立にシクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、またはオクタヒドロフルオレニル基であり、これらの基は20個までの非水素原子を含む炭化水素基、ハロゲン、ハロゲン置換炭化水素基、アミノヒドロカルビ基、ヒドロカルビオルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基から各々独立に選ばれる1〜8の置換基を任意に有していてもよく、さらには2つのLが20個までの非水素原子を含むヒドロカルバジイル、ハロヒドロカルバジイル、ヒドロカルビレンオキシ、ヒドロカルビレンアミノ、ジラジイル、ハロシラジイル、アミノシランなどの2価の置換基により結合されていてもよい。
【0020】
Xは、各々独立に、60までの非水素原子を有する、1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、またはM及びLに各々1個ずつの価数で結合する2価のアニオンσ結合型配位子である。
X'は、各々独立に、炭素数4乃至40からなるフォスフィン、エーテル、アミン、オレフィン、及び/又は共役ジエンから選ばれる中性ルイス塩基配位性化合物である。
又、lは1または2の整数である。pは、0、1又は2の整数であり、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子又はM及びLに各々1個ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子であるときpはMの形式酸化数よりもl以上少なく、またはXがMと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子であるときpはMの形式酸化数よりもl+1以上少ない。又qは0、1または2である。遷移金属化合物としては上記式(4)でl=1の場合が好ましい。
【0021】
例えば、遷移金属化合物の好適な例は、下記式(5)で表される。
【化2】

式中、Mは形式酸化数+2、+3又は+4のチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムであり、特にチタニウムが好ましい。
【0022】
また、R3 は、各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合機であり、各々20までの非水素原子を有することができる。又近接するR3 同士がヒドロカルバジイル、ジラジイル、またはゲルマジイル等の2価の誘導体を形成して環状となっていてもよい。
X"は、各々独立にハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルアミノ基、またはシリル基であり、各々20までの非水素原子を有しており、また2つのX"が炭素数5〜30の中性共役ジエン、もしくは2価の誘導体を形成してもよい。
Yは、−O−、−S−、−NR*−、−PR*−であり、ZはSiR*2、CR*2、SiR*2SiR*2、CR*2CR*2、CR*=CR*、CR*2SiR*2またはGeR*2であり、ここでR*は各々独立に炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基である。又、nは1乃至3の整数である。
【0023】
さらに、遷移金属化合物として、より好適な例としては、下記式(6)および下記式(7)で表される。
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
式中、R3は、各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合機であり、各々20までの非水素原子を有することができる。また、遷移金属Mはチタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、チタニウムが好ましい。
Z、Y、X及びX'の定義は前出のとおりである。pは0、1又は2であり、qは0又は1である。但し、pが2でqが0のとき、Mの酸化数は+4であり、且つXはハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルフォスフィド基、ヒドロカルビルスルフィド基、シリル基またはこれらの複合基であり、20までの非水素原子を有している。
また、pが1でqが0のとき、Mの酸化数は+3であり、且つXはアリル基、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル基または2−(N,N−ジメチル)−アミノベンジル基から選ばれる安定化アニオン配位子であるか、もしくはMの酸化数が+4であり、かつXが2価の共役ジエンの誘導体であるか、あるいはMとXがともにメタロシクロペンテン基を形成している。
また、pが0でqが1のとき、Mの酸化数は+2であり、且つX'は中性の共役或いは非共役ジエンであって任意に1つ以上の炭化水素で置換されていてもよく、又該X'は40までの炭素原子を含み得るものであり、Mとπ型錯体を形成している。
【0026】
さらに、本発明において、遷移金属化合物として最も好適な例としては、下記式(8)及び下記式(9)で表される。
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
式中、R3は、各々独立に、水素または炭素数1乃至6のアルキル基である。又Mはチタニウムであり、Yは、−O−、−S−、−NR*−、−PR*−であり、Z*はSiR*2、CR*2、SiR*2SiR*2、CR*2CR*2、CR*=CR*、CR*2SiR2またはGeR*2であり、ここでR*は、各々独立に、水素、或いは炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基またはこれらの複合基である。該R*は20までの非水素原子を有することができ、又必要に応じてZ*中の2つのR*同士またはZ*中のR*とY中のR*が環状となっていてもよい。
pは0,1又は2であり、qは0又は1である。但し、pが2でqが0のとき、Mの酸化数は+4であり、且つXは各々独立にメチル基またはヒドロベンジル基である。
また、pが1でqが0のとき、Mの酸化数は+3であり、且つXが2−(N,N−ジメチル)−アミノベンジル基であるか、或いはMの酸化数が+4であり、かつXが2−ブテンー1,4−ジイルである。
また、pが0でqが1のとき、Mの酸化数は+2であり、且つX'は1,4−ジフェニル−1、3−ブタジエンまたは1,3−ペンタジエンである。前記ジエン類は金属錯体を形成する非対称ジエン類を例示したものであり、実際には各幾何異性体の混合物である。
また、メタロセン触媒は、(エ)遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤を含む。通常メタロセン触媒においては、遷移金属化合物と上記活性化剤により形成される錯体が、触媒活性種として高いオレフィン重合活性を示す。
【0029】
活性化剤としては、例えば、下記式(10)で表される化合物が挙げられる。
【化7】

但し式中、[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また[Mmtd-は相溶性の非配位性アニオンであり、Mは周期律表第5族乃至15族から選ばれる金属またはメタロイドであり、Qは各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキサイド基、アリロキサイド基、炭化水素基、炭素数20までの置換炭化水素基であり、またハライドであるQは1個以下である。又mは1乃至7の整数であり、pは2乃至14の整数であり、dは1〜7の整数であり、t−m=dである。
【0030】
活性化剤のより好ましい例としては、下記式(11)で表される化合物である。
【化8】

但し式中、[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また[Mmw(Gu(T−H)rzd-は相溶性の非配位性アニオンであり、Mは周期律表第5族乃至15族から選ばれる金属またはメタロイドであり、Qは各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキサイド基、アリロキサイド基、炭化水素基、炭素数20までの置換炭化水素基であり、またハライドであるQは1個以下である。又GはM及びTと結合するr+1の価数を持多価炭化水素基であり、TはO、S、NRまたはPRであり、ここでRはヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルマニウム基、もしくは水素である。
又mは1〜7の整数であり、wは0〜7の整数であり、uは0または1の整数であり、rは1〜3の整数であり、zは1〜8の整数であり、w+z−m=dである。
【0031】
活性化剤のさらに好ましい例は下記式(12)で表される化合物である。
【化9】

但し式中、[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また[BQ3*-は相溶性の非配位性アニオンであり、Bはホウ素原子、Qはペンタフルオロフェニル基であり、Q*は置換基としてOH基を1つ有する炭素数6〜20の置換アリール基である。
【0032】
非配位性アニオンの具体例としては、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニル−ジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4−ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)フェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(2,4ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジ−トリフルオロメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル、)(2−ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル、)(4−ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル、)(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル、)(4−(4‘−ヒドロキシフェニル)フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ボレート等が挙げられ、最も好ましいのは、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレートである。
【0033】
他の好ましい相溶性の非配位性アニオンの具体例としては、上記例示のボレートのヒドロキシ基がNHRで置き換えられたボレートが挙げられる。ここでRは、好ましくはメチル基、エチル基またはtert−ブチル基である。
また、プロトン付与性のブレンステッド酸の具体例としては、例えば、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、およびトリ(n−オクチル)アンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジブチルメチルアンモニウム、ジブチルエチルアンモニウム、ジヘキシルメチルアンモニウム、ジオクチルメチルアンモニウム、ジデシルメチルアンモニウム、ジドデシルメチルアンモニウム、ジテトラデシルメチルアンモニウム、ジヘキサデシルメチルアンモニウム、ジオクタデシルメチルアンモニウム、ジイコシルメチルアンモニウム、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム等のような、トリアルキル基置換型アンモニウムカチオンが挙げられ、又、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウム、N,N−ジメチルベンジルアニリニウムなどのようなN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンも好適である。
【0034】
本発明の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物は、充填剤、スリップ剤、酸化防止剤の添加剤を含有しない。充填剤としては、アルミノケイ酸塩、タルク、珪藻土、カオリン、クレー等が挙げられ、スリップ剤としては、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、アルコールの脂肪酸エステル、ワックス、高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン等が挙げられる。酸化防止剤には、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤があるが、フェノール酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(ジブチルヒドロキシトルエン)、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート))メタン等、リン系酸化防止剤としては、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスフォナイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−t−ブチルフェニルフォスファイト)等が挙げられる。
【0035】
なお、帯電防止剤としてグリセリン脂肪酸エステル、中和剤としてステアリン酸カルシウムは含有していてもかまわない。ここでいう含有とはポリエチレン樹脂組成物を改質、改良あるいは着色することを目的として上記の各種添加剤を該樹脂組成物に配合することであって、該樹脂組成物の製造中に不可避的に添加剤が微量混入するような場合、あるいは触媒や反応開始剤などが微量残存するような場合には含有しているとはいわない。充填剤、スリップ剤、酸化防止剤の添加剤を添加すると、乳、乳製品などの容器包装材料として用いることができなくなるという問題を招来するので好ましくない。
【0036】
本発明の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物は、各種基材に被覆して積層体として用いられるが、基材として、セロハン、エチレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、PP樹脂、CPP樹脂、PET樹脂、ナイロン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ビニルアルコール樹脂、エバール樹脂、スチレン樹脂、アクリロニトリル樹脂、カーボネート樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン・メチルアクリレート共重合体樹脂、エチレン・メチルアクリレート共重合体樹脂、エチレン・エチルアクリレート樹脂等からなるフィルムおよびこれらのKコートタイプ、アルミニウム蒸着タイプ、シリカ蒸着タイプ、アルミナ蒸着タイプ、さらには上質紙、クラフト紙、グラシン紙、パーチメント紙等の各種紙類、アルミ箔等が挙げられる。それぞれの基材を単独で用いてもよいし、2種以上の基材を併用して積層しても構わない。2種以上の基材を積層する方法は、ドライラミネーション法、押出しラミネーション法、ウェットラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、共押出インフレーション成形法、共押出キャスト成形法などの公知の方法を採用することができる。
【0037】
本発明の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物は、菓子・パン、調理食品、調理中間品、農産類、畜産類、水産類、練り製品、水物、油物、乳製品等の各種食品、チルド食品、レトルト食品、冷凍食品、調味料や水、ジュース、乳、清酒・焼酎などの酒類等の各種飲料、米飯類、ならびに医薬・医療用品、農薬類等の容器包装材料に好適に用いられる。中でも本発明の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物は、充填剤、スリップ剤、酸化防止剤の添加剤を含有せずに成形加工することも可能であるため、乳、乳製品などの容器包装材料として好適に用いられる。
【実施例】
【0038】
本発明について、以下に実施例などを用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
尚、物性測定方法、評価方法は以下の通りである。
(1)密度
JIS−K−7112:1999に準じて測定した。
(2)メルトマスフローレイト(MFR)
JIS−K−7210:1999(温度=190℃、荷重=2.16kg)に準じて測定した。
【0039】
(3)分子量分布
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)から求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を分子量分布とする。
GPC測定は、ウォーターズ社製;GPCV2000を用い、カラムは昭和電工(株)製;UT−807(1本)と東ソー(株)製;GMHHR−H(S)HT(2本)を直列に接続して使用し、移動相トリクロロベンゼン(TCB)、カラム温度140℃、流量1.0ml/分、試料濃度20mg/15ml(TCB)、試料溶解温度140℃、試料溶解時間2時間の条件で行う。分子量の校正は、東ソー(株)製;標準ポリスチレンのMwが1050〜206万の範囲の12点で行い、それぞれの標準ポリスチレンのMwに係数0.43を乗じてポリエチレン換算分子量とし、溶出時間とポリエチレン換算分子量のプロットから一次校正直線を作成し、分子量を決定した。
【0040】
(4)メチル基濃度
メチル基濃度は、上記の分子量分布の測定において、溶出成分の赤外分光分析をパーキンエルマー(株)社製;FT−IR、1760Xで同時に行い、メチレン基に帰属される吸光度I(メチレン)(吸収波数:2925cm-1)とメチル基に帰属される吸光度I(メチル)(吸収波数:2960cm-1)から両者の比、I(メチル)/I(メチレン)を換算分子量が10000以下の溶出成分毎に求め、次いで同溶出成分の重量分率を乗じ、それらを合計することによって得ることができる。
(5)溶融張力(MT)
2.095mm径、長さ8.0mmのキャピラリーを備えた東洋精機(株)製;キャピログラフ1Dを用い、60mm/minでポリエチレン樹脂を190℃、または240℃で押し出し、2m/minで引き取る時の張力を測定して得た。190℃で押し出したときの溶融張力をMT190℃、240℃で押し出したときの溶融張力をMT240℃として表す。
【0041】
(6)メルトフローレイト比(FRR)
メルトマスフローレイト比は、JIS−K−7210:1999で規定されるMFR(温度=190℃、荷重=21.6kg)をMFR(温度=190℃、荷重=2.16)で除して得ることができる。
(7)ネックイン
ネックインは、径=65φ、L/D=30のスクリューを備えた押出機、およびギャップ0.7mm、2段マニフォールドのインナーディッケルタイプのダイスを用いて、樹脂温度320℃、加工設定幅=400mm、エアーギャップ=130mm、加工速度=60m/min、厚み=20μmの条件で目付け75g/cm2のクラフト紙に押出しラミネート加工を行い、両側ネックインの合計値が加工の設定幅に対して、20%以内は非常に優れる:◎、25%以内は優れる:○、35%以内はやや劣る:△、35%超は劣る:×、として評価した。
【0042】
(8)ドローダウン性
ドローダウン性は、ネックイン評価の加工速度から同速度を徐々に上げていきサージングの発生する速度を測定することによって評価し、250m/min以上は非常に優れる:◎、250m/min未満〜220m/min以上は優れる:○、220m/min未満〜190m/minはやや劣る:△、190m/min未満は劣る:×、として評価した。
(9)発煙量
ネックイン評価と同じ条件で押出ラミネート加工した時に発生する発煙成分を押出機に取り付けられたTダイの上部で吸引ダクトにより吸引集積し、吸引部より5m離れた位置に設置したリオン(株)製;光散乱式自動粒子計測器:KC−01Dにて計測した。計測された発煙成分の内、粒径が0.3μm以上の大きさの発煙成分の量が1リットルあたり、1万個未満であれば非常に優れる:◎、1万個以上〜2万個未満であれば優れる:○、2万個以上〜5万個未満であればやや劣る:△、5万個以上であれば劣る:×、として評価した。
【0043】
(10)耐熱性
100m/minの加工速度にした以外はネックイン評価と同じ条件で、押出しラミネート加工した樹脂被覆紙を20cm四方に切り出して、このサンプルを130℃のオーブン中に90秒間放置した後のピンホール数で評価した。ピンホールの数が、2個以下は非常に優れる:◎、2個超〜5個以下は優れる:○、5個超〜10個以下はやや劣る:△、11個以上は劣る:×、として評価した。
(11)ヒートシール性
加工速度を80m/分、基材を厚み20ミクロンのアルミ箔にした以外はネックイン評価と同じ条件で押出しラミネート加工して得た樹脂被覆アルミ箔を、90℃から順次10℃ずつ温度を変えて、圧力=0.2MPa、時間=1秒の条件でヒートシールし、15mm幅で切り出したものをサンプルとして、引張速度500mm/minで引張試験を行った。シール温度に対してシール強度をプロットし、シール強度が平衡に達した温度より10℃高温のシール強度が3N/15mmを超え、その温度が140℃以下であればヒートシール性が非常に優れる:◎、140℃超〜150℃以下であればヒートシール性が優れる:○、150℃超〜160℃以下であればヒートシール性がやや劣る:△、160℃超であればヒートシール性が劣る:×、と評価した。
【0044】
(12)接着性
ネックイン評価と同じ条件で、目付け75g/m2のクラフト紙に押出しラミネート加工して得た樹脂被覆クラフト紙を用い、JIS−P−8112の試験方法に準じて、3.5kg/cm2の圧縮空気をクラフト紙側から当て、樹脂層の剥離状態で接着性を評価し、剥離部分の面積が0%であれば接着性が非常に優れ:◎、同面積が0%超〜5%未満であれば接着性に優れる:○、同面積が5%以上〜20%未満であれば接着性がやや劣る:△、同面積が20%以上であれば接着性が劣る:×、として評価した。
(13)低臭性
ヒートシール性を評価する樹脂被覆アルミ箔を用いて、樹脂被覆面を700mW/cm2の強度の紫外線で3秒間照射し、温度=180℃、圧力=0.2MPa、時間=1秒の条件でヒートシールして四方シール袋を作製、次いで50℃で30分加熱処理してサンプルを得る。このサンプルの臭気を10人のパネラーによって官能で評価する。紫外線照射前と比べて、臭気がほとんど変わらないという判定が8人以上のパネラーから得られれば、低臭性に非常に優れる:◎、8人未満なら劣る:×、と評価する。
【0045】
[メタロセン触媒を用いた線状ポリエチレンの製法]
6.2g(8.8mmol)のトリエチルアンモニウムトリス(ペンタフルオロフェニール)(4−ヒドロキシフェニール)ボレートを4リットルのトルエンに加え90℃、30分攪拌した。次にこの溶液に1mol/lのトリヘキシルアルミニウムのトルエン溶液40mlを加え90℃で分間攪拌した。一方、シリカP−10(日本、富士シリシア社製:商品名)を500℃で3時間窒素気流内で処理し、その処理後のシリカを1.7lのトルエン中に入れ攪拌した。このシリカスラリー溶液に、上記トリエチルアンモニウムトリエチルアンモニウムトリス(ペンタフルオロフェニール)(4−ヒドロキシフェニール)ボレートとトリヘキシルアルミニウムのトルエン溶液を加え3時間90℃で攪拌した。
【0046】
次に、1mol/lのトリヘキシルアルミニウムのトルエン溶液206mlを加え、さらに90℃で1時間攪拌した。その後、上澄み液を90℃のトルエンを用いて、デカンテーションを5回行い過剰のトリヘキシルアルミニウムを取り除いた。0.218mol/lの濃い紫色のチタニウム(N−1,1−ジメチルエチル)ジメチル(1−(1,2,3,4,5−eta)−2,3,4,5−テトラメチル−2,4−シクロペンタジエンー1−イル)シラナミナート)((2−)N−(η4−1,3−ペンタジエン)のISOPAR TME(米国、Exxon化学社製)溶液20mlを上記混合物に加え、3時間攪拌し緑色のメタロセン触媒を得た。
得られたメタロセン触媒は、触媒移送ラインに連鎖移動剤として必要量の水素を供給することで水素を接触させて重合反応器に導入し、溶媒としてヘキサン、モノマーとしてエチレン、必要に応じてブテン−1を用いて、所定のガス組成になるように各モノマーを供給し、反応温度75℃、全圧が0.8MPaで線状ポリエチレンを重合した。得られた線状ポリエチレンは日本製鋼(株)社製;押出機(スクリュー径 65mm、L/D=28)を用い、200℃にて押出して造粒した。
【0047】
[チーグラー触媒による線状ポリエチレンの製法]
充分に窒素置換された15リットルの反応器に、トリクロルシランを2モル/リットルのn−ヘプタン溶液として3リットル仕込み、攪拌しながら65℃に保ち、組成式AlMg6(C253(n−C496.4(On−C495.6で示される有機マグネシウム成分のn−ヘプタン溶液7リットル(マグネシウム換算で5モル)を1時間かけて加え、更に65℃にて1時間攪拌下反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、n−ヘキサン7リットルで4回洗浄を行い、固体物質スラリーを得た。この固体を分離・乾燥して分析した結果、固体1グラム当たり、Mg7.45ミリモルを含有していた。
このうち固体500gを含有するスラリーを、n−ブチルアルコール1モル/リットルのn−ヘキサン溶液0.93リットルとともに、攪拌下50℃で1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで1回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1モル/リットルのn−ヘキサン溶液1.3リットルを攪拌下加えて1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで2回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1モル/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットルおよび四塩化チタン1モル/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットルを加えて、2時間反応した。反応終了後上澄みを除去し、固体触媒を単離し、遊離のハロゲンが検出されなくなるまでヘキサンで洗浄した。この固体触媒は2.3重量%のチタンを有していた。
【0048】
上記で得られた触媒を用い、下記の要領で線状ポリエチレンを製造した。
単段重合プロセスにおいて、容積230lの重合器で重合した。重合温度は86℃、重合圧力は0.98MPaである。この重合器に合成したチーグラー触媒を0.3g/hrの速度で、トリイソブチルアルミニウムを15ミリモル/hr、ヘキサンは60リットル/hrの速度で導入した。これに、エチレン、水素、必要に応じてブテン−1を所定のガス組成になるように導入して重合を行い、得られた線状ポリエチレンは日本製鋼(株)社製;押出機(スクリュー径 65mm、L/D=28)を用いて、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、ステアリン酸カルシウムを添加し200℃にて押出して造粒した。
【0049】
[高圧法低密度ポリエチレンの製法]
高圧法低密度ポリエチレンはオートクレーブタイプ、あるいはチューブラータイプのリアクターでエチレンをラジカル重合して得ることができ、どちらのタイプであっても構わないが、高圧法低密度ポリエチレン(B)はオートクレーブタイプ、高圧法低密度ポリエチレン(C)はチューブラータイプで重合して得ることが好適である。オートクレーブタイプのリアクターを採用する場合には、重合条件は過酸化物存在下で、200〜300℃の温度、100〜250MPaの重合圧力に設定すればよく、一方、チューブラータイプのリアクターを採用する場合には、重合条件は過酸化物および連鎖移動剤の存在下で180〜400℃の重合反応ピーク温度、100〜400MPaの重合圧力に設定すればよいが、200〜350℃の重合反応ピーク温度、150〜350MPaの重合圧力にすることが望ましい。
【0050】
[線状ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンからなるポリエチレン樹脂組成物の製法]
上記の製法で得られる線状ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンを所定の重量比でドライブレンドし、65mmφ押出機を用いて200℃にて押出して造粒した。
[実施例1〜5]
表1記載のエチレン、ブテン−1および水素のガス組成、ならびに、上記のメタロセン触媒による線状ポリエチレンの製法によって得た線状ポリエチレンと表1記載の高圧法低密度ポリエチレンとをメルトブレンドしたポリエチレン樹脂組成物を320℃の樹脂温度で押出ラミネート加工した。成形加工性、耐熱性、ヒートシール性、低臭性の評価結果を表1に併せて示した。
【0051】
[比較例1]
表2記載のエチレン、ブテン−1および水素のガス組成、ならびに、上記のチタン触媒による線状ポリエチレンの製法によって線状ポリエチレンを得て、次いで、高圧法低密度ポリエチレンとメルトブレンドして得られるポリエチレン樹脂組成物を320℃の樹脂温度で押出ラミネート加工した。成形加工性、耐熱性、ヒートシール性、低臭性の評価結果を表2に併せて示した。
[比較例2〜4]
表2記載のエチレン、ブテン−1および水素のガス組成、ならびに、上記の水素と接触させたメタロセン触媒を用いた線状ポリエチレンの製法で得た線状ポリエチレンと表2記載の高圧法低密度ポリエチレンとをメルトブレンドしたポリエチレン樹脂組成物を320℃の樹脂温度で押出ラミネート加工した。成形加工性、耐熱性、ヒートシール性、低臭性の評価結果を表2に併せて示した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物は上述の効果を発現するため、菓子・パン、調理食品、調理中間品、農産類、畜産類、水産類、練り製品、水物、油物、乳製品等の各種食品、チルド食品、レトルト食品、冷凍食品、調味料や水、ジュース、乳、清酒・焼酎などの酒類等の各種飲料、米飯類、ならびに医薬・医療用品、農薬類等の容器包装材料に好適に用いられる。中でも、乳、乳製品などの容器包装材料として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンとからなる樹脂組成物であって、線状ポリエチレンが、密度が930kg/m3 以上、メルトマスフローレイトが0.1g/10min以上50g/10min以下、数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が2以上10以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られる該線状ポリエチレン中の換算分子量が10000以下のエチレン系重合体の炭素原子1000個に含まれるメチル炭素原子の個数が100個以下である線状ポリエチレン(A)、高圧法低密度ポリエチレンが、密度が935kg/m3 以下でメルトマスフローレイトが0.3g/10min以上10.0g/10min以下、下記式(1)で表される溶融張力比が0.7以上、メルトマスフローレイト比と溶融張力との関係が下記式(2)を満たす高圧法低密度ポリエチレン(B)と、密度が935kg/m3 以下でメルトマスフローレイトが0.3g/10min以上10.0g/10min以下、下記式(1)で表される溶融張力比が0.6以下、メルトマスフローレイト比と溶融張力との関係が下記式(3)を満たす高圧法低密度ポリエチレン(C)からなり、線状ポリエチレン(A)が20重量部以上95重量部以下、高圧法低密度ポリエチレン(B)と高圧法低密度ポリエチレン(C)との合計が80重量部以下5重量部以上、高圧法低密度ポリエチレン(B)と高圧法低密度ポリエチレン(C)との重量比が1/99以上99/1以下であることを特徴とする押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物。
MTR=(MT240 ℃)/(MT190 ℃) (1)
(MT190 ℃)≧0.65(FRR)−20 (2)
(MT190 ℃)≦0.65(FRR)−25 (3)
ここで上記式(1)、(2)及び(3)において、MTRは溶融張力比、MTは溶融張力、MTの添え字は溶融張力の測定温度、FRRはメルトマスフローレイト比を表す。
【請求項2】
線状ポリエチレンが、担持型幾何拘束型シングルサイト触媒を用いる重合法で得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエチレン樹脂組成物が、充填剤、スリップ剤、酸化防止剤の添加剤を含有しないことを特徴とする請求項1に記載の押出しラミネート用ポリエチレン樹脂組成物。