説明

押出コーティングポリエチレン

多峰性高密度ポリエチレン(A)および低密度ポリエチレン(B)を含む、良好な加工特性を備えた押出コーティング用重合体組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出コーティングに適し、かつ、良好な機械的特性による、たとえば低粘度および低ネックイン並びにバリア特性、特に低水蒸気透過速度(WVTR)のような押出コーティングのための良好な加工特性を持つ重合体組成物に関する。さらに、本発明は、本発明の組成物を製造する方法およびその使用方法に関する。その上に、本発明は、該重合体組成物を含む多層物質並びに多層物質の製造方法およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最も大きくかつ最も急速に成長しているポリオレフィン加工方法の一つは、押出コーティングである。最大単一量のコーティングされる物質は、種々の紙および板紙であり、これらは多様な包装用途に使用される。しばしばコーティングされるその他の物質は、重合体フィルム、セロファン、アルミニウム箔、冷凍貯蔵用包装紙およびさまざまの種類の織物である。これらの基体は、かなり異なった条件を要求する二つの一般的タイプに分類されることができる。第一のタイプのコーティングするべき基体は、比較的粗く、かつ多孔性の物質、たとえば液体包装用板紙およびその他の似たような物質である。基本的に、ポリオレフィンは、このような物質にその表面に僅かに浸透し、そして基体と機械的に連結することによって結合する。プラスチックの種々の酸化処理、たとえば火炎処理、コロナ処理またはオゾン処理によって、該結合は改善されることができる。これは、コーティングと基体との間の化学的結合の形成を許す。他方のタイプの基体は、セロファンまたはアルミニウム箔である。ここでは機械的結合は可能ではなく、それ故に化学的接着が形成されなければならない。ポリオレフィンの非極性の性質は、ポリオレフィンにこれらの基体への化学的吸引力をほとんど与えない。しかし、温度および酸素への曝露は、まさによく接着する酸化生成物の生成を促進する。
【0003】
どんな場合でも、使用される重合体押出物質は、上述の基体を押出コーティングするために比較的低粘度を持たなければならない。フリーラジカル開始剤を用いるエチレンの高圧重合によってつくられる低密度ポリエチレン(LDPE)並びに慣用のジーグラー配位触媒を用いて低中圧でエチレンおよびα−オレフィンの共重合によってつくられる直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、優れた押出可能性および高い押出ドローダウン速度を許す。
【0004】
「ドローダウン」は、押出された溶融重合体(ウェブまたはフィラメント)を機械方向におよび時には(同時に、より少ない程度に)横断方向にも延伸または伸長することである。
【0005】
他方で低密度ポリエチレン押出組成物は、多くの用途のために十分な靭性を欠く。その上、これらの組成物は、良好なバリア特性、特に、許容できる水蒸気透過速度(WVTR)を持つけれども、水蒸気透過に対するさらにより良好な抵抗性を要求する用途が存在する。
【0006】
その上、これらの製品は、新しい多層物質に強く望まれる要件である剛性が不十分である。
【0007】
高密度ポリエチレンは、応力亀裂に対して比較的抵抗性がある、すなわち、改善された機械的特性を持つことが知られている。その上、バリア特性は低密度ポリエチレンに比較して有意に、より良好である。紙の基体を保護するためにコーティングが低い水蒸気透過速度(WVTR)を持たなければならない食品包装(すなわち、ジュースのカートン)において、これらの要件はとりわけ要求される。
【0008】
その上、一部の多層コーティングでは、ポリビニルアルコールまたはエチレンとビニルアルコールとのケン化共重合体(EVOH)が酸素バリア層として使用される。これらの重合体は、湿気の影響を受け易く、低い水蒸気透過速度(WVTR)を持つ保護層を必要とする。この理由から、オレフィン重合体はこの目的によく適っている。
【0009】
その上、ドローレゾナンス(伸長共鳴)現象が、念頭に置かれなければならない。ドローレゾナンスは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)並びに高密度ポリエチレン(HDPE)において、押出コーティング中に起きる。境界条件がダイにおける固定速度および引取り位置における固定速度であるときに、ダイと引取り位置との間で起きる、溶融伸長過程の速度および横断面に関しての、重合体溶融物の持続的なランダムのおよび/または周期的な振動、変動または脈動として、「ドローレゾナンス」は説明されることができる。「引取り位置」は、溶融された押出物をダイ出口における瞬間のその初期厚さからその最終厚さまで伸長するまたは引っ張るローラー装置の接触点(頂点若しくは底点)として説明されることができる。ローラー装置は、各種の表面、たとえば研磨、マット若しくはエンボス仕上げを備えた金属またはゴムから建造されたニップロール、ゴムロール、チルロール、これらの組み合わせ等であることができる。ドローレゾナンスは、延伸比(引取りにおける溶融物速度をダイ出口における瞬間の溶融物速度で割ったものであり、これはしばしば最終重合体厚さの逆数をダイ出口における瞬間の溶融物の厚さの逆数で割ったものによって近似される。)が重合体に特有の臨界値を越えたときに起きる。ドローレゾナンスは、最終のコーティング、フィルムまたは繊維の寸法のでこぼことして証明される溶融物流れの不安定性であり、しばしば幅広く変動する厚さおよび幅を生み出す。装置速度が発現速度を有意に超えるときは、ドローレゾナンスは、ウェブまたはフィラメントが破れる原因となり得、そしてそれによって全体の延伸または成形加工プロセスを停止させうる。
【0010】
直鎖状重合体の他の問題は、それが大きいネックインを持つことであり、ネックインは、ダイ幅と引取り位置における押出物の幅との差として定義され、引取り位置における押出物の幅は、コーティングされた物品のコーティングの幅と等しい。
【0011】
したがって、すべての上述の要件を満足させる重合体押出組成物を持ちたいという特別の要求が存在する。
【0012】
国際特許出願公開第98/30628号は、9〜13g/10分のメルトフローレートMFRおよび930〜942kg/mの密度を持つ直鎖状双峰性ポリエチレンを押出コーティングに使用する方法を開示する。しかし、この生成物は、高密度ポリエチレン(HDPE)と同等の剛性および水蒸気透過速度(WVTR)を持たない直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)である。
【0013】
欧州特許第792318号にも、低密度ポリエチレン組成物が記載され、それによって単峰性直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)並びに少なくとも916kg/mの密度および6.0g/10分より小さいメルトインデックスを持つ双峰性低密度ポリエチレン(LDPE)のブレンドが使用される。
【0014】
国際特許出願公開第00/71615号は、5g/10分のメルトフローレートMFRおよび957kg/mの密度を持つ双峰性高密度ポリエチレン(HDPE)を押出コーティングに使用することに言及している。しかし、高密度ポリエチレン(HDPE)は、押出コーティングにおいて有害であるドローレゾナンスの影響を受けやすい。
【特許文献1】国際特許出願公開第98/30628号公報
【特許文献2】欧州特許第792318号公報
【特許文献3】国際特許出願公開第00/71615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、ドローレゾナンスへの高い抵抗および減少されたネックインとともに良好な機械的特性、とりわけ良好な応力亀裂抵抗および低い水蒸気透過速度を持つ、押出コーティングに適した重合体組成物を提供することが、本発明の目的である。その上に、本発明の目的は、本発明の重合体組成物を製造する方法を提供することである。加えて、本発明の重合体組成物を含む多層物質並びにそれを製造する方法を提供することが本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、多峰性高密度ポリエチレン(HDPE)、およびHDPEよりも低い密度を持つさらなるポリエチレンを含む重合体押出組成物によって、本発明の目的が対処されることができるという発見に基づいている。
【0017】
本発明は、したがって、
(a)多峰性高密度ポリエチレン(A)、および
(b)低密度ポリエチレン(B)
を含む重合体組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のこの組成物は、ドローレゾナンスへの高い抵抗および減少されたネックイン並びにこれに加えて非常に良好な水蒸気透過速度を持つことによって特性付けられる。驚くべきことに、ポリエチレン(A)とポリエチレン(B)とを組み合わせることによって、この結果は達成される。
【0019】
ポリエチレン(A)の第一の要件は、それが多峰性(マルチモーダル)であることである。「多峰性」または「多峰性分布」とは、いくつかの相対最大値を持つ頻度分布を表す。特に、「重合体の多峰性」の表現は、その分子量分布(MWD)曲線の形、すなわち、分子量の関数としてのその重合体重量分率のグラフの外観のことをいう。重合体が、逐次段階プロセスで、すなわち直列に組み合わされた反応器を利用し、かつ各反応器で異なった条件を使用することによって製造されるならば、異なった反応器で製造された異なった重合体画分は、お互いにかなり相違しうるそれ自身の分子量分布をそれぞれ持つだろう。得られる最終重合体の分子量分布曲線は、重合体画分の分子量分布曲線の重ね合わせと見られることができ、したがってそれは2またはそれ以上の区別される極大値を示すだろうし、あるいは個々の重合体画分の曲線と比較して区別されるように少なくとも広げられるだろう。
【0020】
このような分子量分布曲線を示す重合体は、それぞれ「双峰性」または「多峰性」と呼ばれる。
【0021】
多峰性ポリエチレン(A)は、好ましくは双峰性ポリエチレン(A)である。
【0022】
たとえば国際特許出願公開第92/12182号および国際特許出願公開第97/22633号に記載されているいくつかのプロセスに従って、多峰性重合体は製造されることができる。
【0023】
多峰性ポリエチレン(A)は好ましくは、国際特許出願公開第92/12182号に記載されているような多段階反応配列の多段階プロセスで製造される。
【0024】
多峰性ポリエチレンのような多峰性、特に双峰性オレフィン重合体を、直列につながれた2以上の反応器で製造することは以前から知られている。
【0025】
本発明に従って、主要重合段階は、好ましくはスラリー重合/気相重合の組み合わせとして実施される。スラリー重合は、好ましくはいわゆるループ反応器で実施される。
【0026】
改善された特性を有する本発明の組成物を製造するためには、融通のきく方法が要求される。この理由から、ループ反応器/気相反応器を組み合わせた2の主要重合段階で、組成物が製造されることが好まれる。
【0027】
任意的に、およびより好都合には、主要重合段階は予備重合によって先行されてもよく、その場合には重合体の全量の20重量%まで、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%が製造される。予備重合の時点で、すべての触媒が好ましくはループ反応器中に仕込まれ、そして予備重合がスラリー重合として実施される。より低度に細かい粒子が後続の反応器で製造され、そしてより均一な生成物が最後に得られることを、このような予備重合はもたらす。このような予備重合は、たとえば国際特許出願公開第96/18662号に記載されている。
【0028】
一般に、該技術は、いくつかの連続する重合反応器中のジーグラーナッタまたはメタロセン触媒を用いた重合を経て、多峰性重合体混合物をもたらす。たとえば双峰性直鎖状高密度ポリエチレン(A)の製造では、第一のエチレン重合体が、水素/ガス−濃度、温度、圧力等に関するある条件下に第一反応器で製造される。重合後、触媒を含む反応器重合体は反応混合物から分離され、そして第二反応器に移送され、そこでさらなる重合が別の条件下に起きる。
【0029】
好まれる触媒は、欧州特許第0688704号文献に記載され、同文献は引用によって本明細書に包含される。これは、特定の無機担体、該担体上に堆積された塩素化合物を含む高活性プロ触媒であり、ここで該塩素化合物はチタン化合物と同じかまたは異なっており、そうすることによって該無機担体が、非極性炭化水素溶媒に可溶性でありかつ式(RMeCl3−nを持つアルキル金属塩化物と接触させられて(ここで、RはC〜C20のアルキル基であり、Meは周期表の第III(13)族の金属であり、n=1または2およびm=1または2である。)、第一の反応生成物を生成し、そして該第一の反応生成物は、マグネシウムに結合されたヒドロカルビルおよびヒドロカルビル酸化物を含有し非極性炭化水素溶媒に可溶性である化合物と接触させられて、第二の反応生成物を生成し、そして該第二の反応生成物は、塩素を含有し式ClTi(ORIV4−xを持つチタン化合物と接触させられて(ここで、RIVはC〜C20のヒドロカルビル基であり、xは3または4である。)、プロ触媒を生成する。好まれる担体は無機酸化物、より好ましくは二酸化ケイ素またはシリカである。最も好ましくは20μmの平均粒子サイズを持つシリカが使用される。助触媒としてトリエチルアルミニウムが使用されることが、さらにより好まれる。
【0030】
好ましくは、高メルトフローレートおよび低分子量の第一の重合体(LMW)が、少量の共単量体とともにまたはその添加なしに第一反応器で製造され、他方、低メルトフローレートおよび高分子量の第二の重合体(HMW)が、共単量体の添加とともにまたはその添加なしに第二反応器で製造される。
【0031】
得られる最終生成物は、2の反応器からの重合体の緊密な混合物からなり、これらの重合体について異なった分子量分布が生じ、一緒になって広い1の最大値または2の極大値を持つ分子量分布曲線を形成する、すなわち、最終生成物は双峰性重合体混合物である。多峰性および、特に双峰性のエチレン重合体およびその製造は先行技術に属するので、詳細の記載はここでは要求されないで、上述の国際特許出願公開第92/12182号が引用される。反応段階の順序は逆になってもよいことは注記されるだろう。
【0032】
好ましくは、上述のように、本発明に従う多峰性ポリエチレン(A)は、双峰性重合体混合物である。この双峰性重合体混合物は、直列につながれた2以上の重合反応器で異なった重合条件下に上記の重合によって製造されたものであることも好まれる。
【0033】
上記の定義から明らかになるように、多峰性重合体は少なくとも2の画分を含み、そうすることによって一方の画分は、より高い分子量を持つ他方の画分より低い分子量に対応する。
【0034】
ポリエチレン(A)についてのさらなる要件は、それが高密度ポリエチレンであることである。一般に、高密度ポリエチレンは、941〜968kg/mの密度を持つ熱可塑性ポリオレフィンである。好ましくは、ポリエチレン(A)の密度は950〜968kg/m、より好ましくは950〜965kg/m、また最も好ましくは955〜965kg/mである。密度はISO 1183−1987に従って測定される。
【0035】
さらにその上、およびこの発明に従って、「高密度」の語は、ポリエチレン(A)が好ましくは直鎖状でなければならないことを暗黙に示す。「直鎖状ポリエチレン」は、その分子が長鎖分岐または鎖間の架橋をほとんど持たないで鎖状の様式に配列された重合体である。より正確には、直鎖状重合体はほんのわずかの、すなわち好ましくは1000炭素原子当たり7より少ないそのような分岐点を持つ。分岐点は、13C−NMR分光分析法によって検出されることができる。
【0036】
したがって、この発明に従う直鎖状重合体は、重合体主鎖中に1000炭素原子当たり7より少ない長鎖分岐を持つ重合体である。
【0037】
次に、側鎖は、少なくとも6の炭素原子を持つときは「長側鎖」である。側鎖の炭素原子の数は、13C−NMR分光分析法によって測定されることができる。しかし、レオロジー挙動への効果が達成されないときは、重合体は長鎖分岐されているとみなされることはできない。したがって、「長側鎖」を持つ重合体は、強いせん断流動化、すなわち11〜35のせん断流動化指数SHI0/100をも示さなければならない。
【0038】
したがって、6未満の炭素原子の側鎖を持つとき、および/または6以上の炭素原子の側鎖を持つが11未満のSHI0/100のときは、この発明に従う重合体は直鎖状である。その上、上で定義されたいくらかの長側鎖を持つが重合体主鎖中の1000炭素原子当たり7未満のときは、この発明に従う重合体は「直鎖状」とみなされる。
【0039】
この直鎖性の結果として、重合体は十分に詰め込まれ、そして高密度を持つ、すなわち高密度ポリエチレン(HDPE)である。
【0040】
多峰性直鎖状高密度ポリエチレン(A)の分子量分布(MWD)は、さらにISO 1133に従う190℃におけるそのメルトフローレート(MFR)の有り方によって特性付けられる。メルトフローレートは、主として平均分子量に依存している。これは、長い分子は短い分子よりも低い流れ性向を物質に与えるからである。
【0041】
分子量の増加はMFR値の減少を意味する。メルトフローレート(MFR)は、特定の温度および圧力条件下に押出される重合体のg/10分で測定され、重合体の粘度のめやすであり、これは次に重合体の各タイプについてその分子量分布の影響を主に受け、その分岐度によってもまた影響を受ける。2.16kgの荷重下に測定されたメルトフローレート(ISO 1133)は、MFRと表される。次に、5kgの荷重で測定されたメルトフローレートは、MFRと表される。
【0042】
ポリエチレン(A)のメルトフローレートMFRは、5g/10分より高く、より好ましくは5〜20g/10分、さらにより好ましくは7〜15g/10分であることが好まれる。ポリエチレン(A)のメルトフローレート(MFR)が5よりも低いと、高い処理量が達成されない。他方、メルトフローレートMFRが20g/10分より高いと、重合体の溶融強度がほとんどの場合に許容できないほど悪くなる。加えて、ポリエチレン(A)は、20〜40g/10分のメルトフローレートMFRを持つことが好まれる。
【0043】
その上、同じ重合体について2の異なった荷重下に測定された2のメルトフローレートの比であるフローレート比が、特定の範囲内に入ることが好まれる。好まれる特定の範囲は、MFR/MFRのフローレート比について2.5〜4.5、より好ましくは2.7〜4.0である。
【0044】
数平均分子量(M)は、分子量に対する各分子量範囲の分子の数のプロットの一次モーメントとして表現された高重合体の平均分子量である。実際には、これはすべての分子の合計分子量を分子の数で割ったものである。次に、重量平均分子量(M)は、分子量に対する各分子量範囲の重合体の重量のプロットの一次モーメントである。
【0045】
数平均分子量および重量平均分子量並びに分子量分布は、オンライン粘度計付きのWaters Alliance GPCV2000の測定器を使用するサイズ排除クロマトグラフ法(SEC)によって測定される。炉の温度は140℃である。トリクロロベンゼンが溶媒として使用される。
【0046】
ポリエチレン(A)は、50000〜150000g/モル、より好ましくは60000〜100000g/モルの重量平均分子量(M)を持つことが好まれる。
【0047】
重合体中の分子の数とその個々の鎖長との関係である分子量分布(MWD)のさらなる特徴が、考慮されなければならない。分布の幅は、重量平均分子量を数平均分子量で割った比の結果としての数(M/M)である。本発明では、ポリエチレン(A)は、好ましくは4.5〜25、より好ましくは5〜15のM/Mを持つことが好まれる。
【0048】
好ましくは、ポリエチレン(A)は、エチレン単独重合体および/またはエチレン共重合体を含む。エチレン共重合体が存在する場合には、該共重合体はエチレンおよび少なくとも1のC〜C20のα−オレフィン、より好ましくはC〜C10のα−オレフィンを含む。とりわけ好まれるのは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、6−メチル−1−ヘプテン、4−メチル−1−ヘキセン、6−エチル−1−オクテンおよび7−メチル−1−オクテンからなる群から選ばれたα−オレフィンである。さらにより好まれるα−オレフィンは、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンからなる群から選ばれる。
【0049】
本発明の組成物の1の要件としては、使用されるポリエチレン(A)が高密度ポリエチレン(HDPE)であり、該重合体中の共単量体単位の含有量が、好ましくは0.1〜1.0モル%、より好ましくは0.15〜0.5モル%であることである。
【0050】
ポリエチレン(A)は、低分子量画分(LMW)および高分子量画分(HMW)を含むことが好まれる。「低分子量」および「高分子量」の語は、高分子量画分(HMW)が低分子量部分(LMW)よりも高い分子量を持つことを意味する。したがって、低分子量部分(LMW)が10000〜60000g/モル、より好まれるのは20000〜50000g/モルの重量平均分子量を持ち、および高分子量部分(HMW)が、より好ましくは80000〜300000g/モル、またさらにより好ましくは100000〜200000g/モルの重量平均分子量を持つことがより好まれる。
【0051】
好ましくは、低分子量部分(LMW)は、100〜2000g/10分、より好ましくは250〜1000g/10分のMFRのメルトフローレートを持つ。
【0052】
加えて、低分子量部分(LMW)は、少なくとも971kg/m、より好ましくは少なくとも973kg/mの密度を持つことが好まれる。
【0053】
低分子量部分(LMW)は、好ましくはエチレン単独重合体またはエチレン共重合体であることができる。しかし、低分子量部分(LMW)は単独重合体であることが好まれる。
【0054】
ここで使用される「エチレン単独重合体」の表現は、実質的に、すなわち、少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも99重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%、また最も好ましくは少なくとも99.8重量%のエチレン単位からなる、したがって好ましくはエチレン単量体単位のみを含むエチレン重合体である、エチレン重合体に関する。
【0055】
その上、低分子量部分(LMW)の共単量体含有量は、0.2モル%より低く、より好ましくは0.1モル%より低く、また最も好まれるのは0.05モル%より少ないことが好まれる。
【0056】
高分子量部分(HMW)は、好ましくはエチレン単独重合体またはエチレン共重合体であることができる。しかし、高分子量部分(HMW)はエチレン共重合体であることが好まれる。エチレン共重合体は、好ましくはエチレンおよび少なくとも1のC〜C20のα−オレフィン、より好ましくはC〜C10のα−オレフィンを含む。最も好まれるα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、6−メチル−1−ヘプテン、4−メチル−1−ヘキセン、6−エチル−1−オクテンおよび7−メチル−1−オクテンからなる群から選ばれる。さらにより好まれるα−オレフィンは、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンからなる群から選ばれる。
【0057】
さらにその上、高分子量部分(HMW)の共単量体含有量は、0.2〜2.0モル%、より好ましくは0.3〜1.0モル%である。
【0058】
加えて、ポリエチレン(A)は、低分子量部分(LMW)を好ましくは40〜60重量%、より好ましくは49〜55重量%、および高分子量部分(HMW)を好ましくは60〜40重量%、より好ましくは51〜45重量%含むことが好まれる。
【0059】
さらなる要件として、ポリエチレン(B)は、低密度ポリエチレンでなければならない。
低密度ポリエチレンは、910〜940kg/mの密度を持つ熱可塑性重合体である。しかし、該ポリエチレンは910〜935kg/mの密度を持つことがより好まれ、また915〜930kg/mが最も好まれる。密度はISO 1183−1987に従って測定される。
【0060】
好ましくは少ない分岐点を持つ高密度ポリエチレン(A)とは対照的に、低密度ポリエチレン(B)は、1000炭素原子当たり好ましくは60より多い分岐点を持つ、好ましくは高度に分岐された重合体である。
【0061】
「分岐された」とは、ポリエチレンが側鎖を持つことを意味する。「側鎖」とは、重合体の主鎖(直鎖)から分岐している、同類の原子(エチル基におけるような2以上の、一般に炭素)の集まりである。
【0062】
好ましくは、ポリエチレン(B)は長鎖で分岐されている。「長側鎖」とは、この発明に従えば、側鎖が13C−NMR分光分析法によって検出されることができ、かつこれに加えてレオロジー挙動へ効果を示す事実を表す。
【0063】
上述のように、直鎖性の1の効果は、側鎖が6未満の炭素原子を持つことである。したがって、「長側鎖」は6以上の炭素原子を要求する。しかし、レオロジー挙動への効果が達成されないときは、重合体は長鎖分岐されているとみなされることができない。したがって、「長側鎖」を持つ重合体は、強いせん断流動化、すなわち11〜35のせん断流動化指数SHI0/100をも示さなければならない。
【0064】
もっと具体的には、「長側鎖」は、好ましくは少なくとも6の炭素原子、より好ましくは少なくとも100の炭素原子を持つ側鎖を表すが、他の原子も制限量なしに存在することができる。該原子は、周期表の第2〜第4周期からそれぞれ第零族、第1族、第2族および第8族の元素を除いたいずれかであることもできる。該原子は、C、N、O、S、P、Cl、F、I、BrおよびSiからなる群から選ばれることが好まれる。最も好まれる原子はCである。しかし、これは側鎖を形成する原子が残基を持つことができないことを意味しない。したがって、「炭素」原子が残基として水素を持つことが好まれる。その上、好まれる「側鎖」はアルキル基であるが、それに限定されない。さらにより好まれる側鎖はC〜C200のアルキル基、より好ましくはC〜C20のアルキル基、またはC〜C20のアルキル残基のエーテル若しくはエステルである。最も好まれる側鎖は、以下に定義されるエチレンおよび/またはアクリル酸エステルの反応生成物である。
【0065】
その上、長鎖分岐は通常、フリーラジカル重合反応における重合体への連鎖移動反応、並びに別の連鎖停止反応の生成物として生成される。したがって、共単量体が付加的に使用されているかどうかの状況に応じて、側鎖はエチレンのみをまたは共単量体をも含む。
【0066】
さらに、ポリエチレン(B)は、3〜15g/10分、より好ましくは6〜15g/10分、また最も好ましくは6〜10g/10分のメルトフローレートMFRを持つことが好まれる。
【0067】
ポリエチレン(B)は、エチレン単独重合体および/またはエチレン共重合体であることができる。しかし、ポリエチレン(B)はエチレン単独重合体であることが好まれる。
【0068】
ここで使用される「エチレン単独重合体」の表現は、実質的に、すなわち、少なくともエチレン単位97重量%、好ましくは少なくとも99重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%、また最も好ましくは少なくとも99.8重量%からなる、したがって好ましくはエチレン単量体単位のみを含むエチレン重合体である、エチレン重合体に関する。
【0069】
ポリエチレン(B)が共重合体である場合は、ポリエチレン(B)は好ましくはエチレン並びに酢酸ビニル、アクリル酸ビニル、メタアクリル酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチルおよびアクリル酸ブチルからなる群から選ばれた少なくとも1の成分を含む。
【0070】
好ましくは、本発明の組成物は、ポリエチレン(A)40〜99重量%およびポリエチレン(B)1〜60重量%を含む。より好ましくは、該組成物は、ポリエチレン(A)40〜90重量%、また特には40〜80重量%、およびより好ましくはポリエチレン(B)10〜60重量%、また特には20〜60重量%を含む。とりわけ好ましくは、該組成物は、ポリエチレン(A)40〜70重量%およびポリエチレン(B)30〜60重量%を含む。付加的に、本発明の重合体組成物は、全組成物の40重量%まで、好ましくは20重量%まで、より好ましくは10重量%までの、従来技術で知られた他の重合体、充填剤および添加剤を含有することができる。とりわけ、該他の重合体は、好ましくは全組成物の20重量%まで、より好ましくは10重量%までの量で含有される。
【0071】
本発明の重合体組成物は、好ましくは930〜950kg/m、より好ましくは933〜947kg/mの密度を持つことが好まれる。
【0072】
その上、本発明の重合体組成物は、好ましくは5〜20g/10分、より好ましくは5〜15g/10分のメルトフローレートMFRを持つことが好まれる。
【0073】
加えて、本発明の重合体組成物は、ISO 11357に従って測定された、好ましくは45%〜65%、また最も好ましくは50%〜60%の結晶化度を持つことが好まれる。
【0074】
好ましくは、ポリエチレン(B)は、撹拌されたオートクレーブのプロセスによって、米国特許第2897183号に記載された、十分に撹拌された連続式オートクレーブ中で、ほとんど一定の温度、圧力、フリーラジカル濃度、および単量体と重合体との比で製造される。米国特許第2897183号は、引用によって本明細書に包含される。一般に、外部予熱器または内部加熱器によって、またはオートクレーブの加熱外套によって、エチレンおよび開始剤を開始温度まで加熱することによって、反応は開始される。重合が始まり、そして温度が所望の値まで上がると、加熱が停止され、そして反応器に供給される開始剤の量を調節することによって、温度が維持される。反応器全体を通しての均一な温度および開始剤濃度のために、オートクレーブ全体を通しての激しい撹拌が維持されることが重要である。オートクレーブ内の最大温度差は5℃を超えてはならない。
【0075】
押出コーティングでは、使用される樹脂の接着特性が改善されることは有利である。コーティングプロセスの間の樹脂の酸化によって、これは達成されることができる。したがって、本発明の重合体組成物は、2000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、また最も好ましくは700ppm以下の酸化防止剤および/または工程安定化剤を含有することが好まれる。酸化防止剤は、従来技術で知られたもの、たとえばヒンダードフェノール、第2級芳香族アミン、チオエーテルまたは他の硫黄含有化合物、ホスファイト等およびこれらの混合物を包含するものから選ばれることができる。
【0076】
好ましくは、本発明の重合体組成物からつくられたコーティングは、低い水蒸気透過率(WVTR)を持つ。したがって、20g/mのコーティング重量を持つコーティングについて、WVTRは15.4g/m/24時間より低い、より好ましくは15g/m/24時間より低いことが好まれる。水蒸気透過率は、ASTM E96法に従って、相対湿度90%および温度38℃で測定される。
【0077】
その上、200m/分のドローダウン速度、10g/mのコーティング重量および約900mmのダイ幅で運転されている押出コーティングプロセスにおいて、本発明の組成物は、140mm以下、好ましくは135mm以下のネックインを持つことが好まれる。
【0078】
本発明は、上記の本発明の組成物を製造する方法も提供する。
【0079】
好ましくは、本発明の組成物を製造する方法は、ループ反応器および気相反応器を含む多段階プロセスでのポリエチレン(A)の製造を含み、ここで低分子量部分(LMW)が少なくとも1のループ反応器で生成され、そして高分子量部分(HMW)が気相反応器で生成され、そしてポリエチレン(B)が好ましくは上記の高圧オートクレーブプロセスのフリーラジカル重合によって製造される。その後、ポリエチレン(A)およびポリエチレン(B)は、押出機を使用することによって一緒にブレンドされ、コンパウンドされる。
【0080】
好まれる使用される触媒は、欧州特許第0688794号文献に記載された触媒系であり、同文献は引用によって本明細書に包含される。該触媒は特に、粒子状無機担体、該担体上に堆積された塩素化合物を含む高活性プロ触媒であり、ここで該塩素化合物はチタン化合物と同じかまたは異なっており、そうすることによって該無機担体が、非極性炭化水素溶媒に可溶性でありかつ式(RMeCl3−nを持つアルキル金属塩化物と接触させられて(ここで、RはC〜C20のアルキル基であり、Meは周期表の第III(13)族の金属であり、n=1または2およびm=1または2である。)、第一の反応生成物を生成し、そして該第一の反応生成物は、マグネシウムに結合されたヒドロカルビルおよびヒドロカルビル酸化物を含有し非極性炭化水素溶媒に可溶性である化合物と接触させられて、第二の反応生成物を生成し、そして該第二の反応生成物は、塩素を含有し式ClTi(ORIV4−xを持つチタン化合物と接触させられて(ここで、RIVはC〜C20のヒドロカルビル基であり、xは3または4である。)、プロ触媒を生成する。好まれる担体は無機酸化物、より好ましくは二酸化ケイ素またはシリカである。最も好ましくは20μmの平均粒子サイズを持つシリカが使用される。助触媒としてトリエチルアルミニウムが使用されることが、さらにより好まれる。
【0081】
特に、上記の多段階プロセスが使用される。とりわけ、ループ反応器は75〜110℃、より好ましくは85〜100℃の範囲、また最も好ましくは90〜98℃の範囲で運転されることが好まれる。それによって、圧力は好ましくは58〜68バール、より好ましくは60〜65バールである。
【0082】
好ましくは、低分子量部分は、第1ループ反応器で予備重合され、そして次に第2ループ反応器へと連続的に除かれ、そこで低分子量部分がさらに重合される。第2ループ反応器の温度は、90〜98℃、より好ましくは約95℃であることが好まれる。それによって、圧力は好ましくは58〜68バール、より好ましくは約60バールである。
【0083】
加えて、第2ループ反応器では、エチレン濃度は4〜10モル%、より好ましくは5〜8モル%また最も好ましくは約6.7モル%であることが好まれる。
【0084】
水素とエチレンとのモル比は、使用される触媒に高度に依存する。ループ反応器から抜き出される重合体の所望のメルトフローレートMFRを与えるように、これは調整されなければならない。本明細書に記載された好まれる触媒については、水素とエチレンとの比は100〜800モル/kモル、より好ましくは300〜700モル/kモル、さらにより好ましくは400〜650モル/kモルまた最も好ましくは約550モル/kモルであることが好まれる。
【0085】
重合体スラリーは、次に好ましくはループ反応器から沈降レッグを使用することによって除かれ、そして次に好ましくは約3バールの圧力で運転されているフラッシュ容器中に好ましくは導入され、そこで重合体が流体相の大部分から分離される。重合体は、それから好ましくは75〜95℃、より好ましくは80〜90℃、また最も好ましくは約85℃、および好ましくは10〜40バール、より好ましくは15〜25バールまた最も好ましくは約20バールで運転されている気相反応器中に好ましくは移送される。
【0086】
加えて、エチレン、使用されるときは共重合体、および水素並びに不活性ガスとしての窒素が、流動化ガス中のエチレンの分率が好ましくは1〜10モル%、より好ましくは1〜5モル%また最も好ましくは約2.5モル%、および水素とエチレンとの比が好ましくは100〜400モル/kモル、より好ましくは150〜300モル/kモルまた最も好ましくは約210モル/kモルであるように、好ましくは該反応器中に導入される。
【0087】
共重合体とエチレンとの比は、双峰性重合体の所望の密度へ影響を与える。したがって、共重合体とエチレンとの比は好ましくは20〜150モル/kモル、より好ましくは50〜100モル/kモルまた最も好ましくは約80モル/kモルであることが好まれる。好ましくはその後、重合体は気相反応器から抜き出され、そしてそれから必要であれば酸化防止剤および/または工程安定化剤のようなさらなる添加剤と混合される。
【0088】
ポリエチレン(A)およびポリエチレン(B)は、それから従来技術で知られた任意の適当な方法でブレンドされることができる。これらの方法は、2軸押出機、たとえば逆方向回転2軸押出機または同方向回転2軸押出機でのコンパウンディングおよび単軸押出機でのコンパウンディングを包含する。
【0089】
本発明は、本発明の重合体組成物を含む多層物質にも関する。
【0090】
この発明に従う多層物質は、
(a) 第1層としての基体、および
(b) 少なくともさらなる層としての、上で定義された重合体組成物
を含む。
【0091】
多層物質は、第1層としての基体および第2層としての、上で定義された重合体組成物からなる2層物質であることがさらに好まれる。任意的に、この多層物質は、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラステアリル、チタン酸テトラキス(2−エチルヘキシル)およびポリ(チタン酸ジブチル)のような接着促進剤を含む。
【0092】
好ましくは、基体は紙、板紙、アルミニウムフィルムおよびプラスチックフィルムからなる群から選ばれる。
【0093】
本発明は、上記の多層物質を製造する方法をも包含し、それによって上で定義された重合体組成物が、繰り出し機、巻き取り機、チルロールおよびコーティングダイを含むフィルムコーティングラインによって基体上に施与される。
【0094】
その上、本発明は、上で定義された重合体組成物を押出コーティングについて使用する方法に関する。
【0095】
より好ましくは、上で定義された重合体組成物は、上記の多層物質を製造する押出コーティングについて使用される。
【0096】
以下に、本発明は実施例によって実証される。
【0097】
実施例:
測定:
WVTR
水蒸気透過速度は、ASTM E96法に従って相対湿度90%および温度38℃で測定された。
【0098】
坪量またはコーティング重量:
坪量(またはコーティング重量)は以下のように測定された。すなわち、押出コーティングされた紙から装置の横断方向と平行に、5のサンプルが切り取られた。サンプルのサイズは10cm×10cmであった。サンプルは乾燥器内で105℃で1時間乾燥された。サンプルはそれから秤量され、そしてコーティング重量が、コーティングされた構成体の坪量と基体の坪量との差として計算された。結果は1平方メートル当たりのプラスチックの重量として示された。
【0099】
分子量平均値および分子量分布:
分子量平均値および分子量分布は、オンライン粘度計付きのWater Alliance GPCV2000の測定器を使用してサイズ排除クロマトグラフ法(SEC)によって測定された。炉の温度は140℃であった。トリクロロベンゼンが溶媒として使用された。
【0100】
結晶化度
結晶化度は、ISO 11357に従って示差走査熱量計法によって測定された。測定器はMettler DSC−30であった。サンプルは窒素でパージされ、50℃/分の速度で30℃から180℃まで加熱され、それから10 ℃/分の速度で0℃まで冷却され、そして最後に10℃/分の速度で180℃まで再び加熱された。
【0101】
密度:
密度は、ISO 1183−1987に従って測定された。
【0102】
メルトフローレートまたはメルトインデックス:
メルトフローレート(メルトインデックスともいわれる。)は、ISO 1133に従って190℃で測定された。測定に使用された荷重は下付き文字として示される。すなわちMFRは2.16kg荷重下に測定されたMFRを示す。
【0103】
フローレート比:
フローレート比は、同じ重合体について2の異なった荷重下に測定された2のメルトフローレートの比である。荷重は下付き文字として示され、たとえばFRR5/2はMFRとMFRとの比を示す。
【0104】
ネックイン:
ネックインは、ダイの幅と基体上の重合体コーティングの幅との差として測定される。
【0105】
ドローレゾナンス:
ドローレゾナンスは、基体上のコーティング重量の標準偏差として測定された。
【0106】
エッジウィービング:
エッジウィービングは、コーティングの最大幅と最小幅との差として(mmで)測定された。
【0107】
最小コーティング重量:
最小コーティング重量は、有意なドローレゾナンスなしに400m/分のコーティング速度で得ることが出来たコーティングの最小重量であった。
【0108】
「レオロジー」:
重合体の「レオロジー」は、Rheometrics RDA II Dynamic Rheometerを使用して測定された。測定は190 ℃で窒素雰囲気下に実施された。測定は、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G’’)並びに周波数(ω)の関数としての複素粘度の絶対値(η)または複素弾性率の絶対値(G)を与えた。


【0109】
Cox−Merz則によれば、周波数がrad/秒でとられるならば、複素粘度関数η(ω)は慣用の粘度関数(せん断速度の関数としての粘度)と同一である。この経験式が正しければ、複素弾性率の絶対値は、慣用の(すなわち、定常状態の)粘度測定におけるせん断応力に相当する。これは関数η(G’)がせん断応力の関数としての粘度と同一であることを意味する。
【0110】
本データにおいては、(いわゆるゼロせん断速度粘度の近似としての役割をする)低せん断応力での粘度または低Gでのηが、平均分子量のめやすとして使用された。他方、Gとともに粘度が減少することであるせん断流動化は、分子量分布が広ければ広いほどより明白になる。この特性は、いわゆるせん断流動化指数SHIを、2の異なったせん断応力における粘度の比として定義することによって近似されることができる。以下の実施例では、1および10kPaのせん断応力(またはG)が使用された。したがって、

であり、ここで
ηは、G=1kPaでの複素粘度であり、
η100は、G=100kPaでの複素粘度である。
【0111】
上述のように、貯蔵弾性率関数G’(ω)および損失弾性率関数G(ω)は、動的測定からの基本関数として得られた。損失弾性率の特定の値における貯蔵弾性率の値は、分子量分布の広さとともに増加する。しかし、この量は、重合体の分子量分布の形に高度に依存している。「レオロジー」の原理は周知であり、とりわけ、Christopher W.Macosko著、「RHEOLOGY,Principles,Measurements and Applications」、VCH社刊、1994年に明らかにされている。この文献は、引用によって本明細書に包含される。
【実施例1】
【0112】
80℃および65バールで運転されている50dmのループ反応器中に、1kg/時のエチレン、22kg/時のプロパン、2g/時の水素、および20μmの平均粒子サイズを持つシリカが担体として使用されたことを除いて欧州特許第688794号の実施例3に従って調製された重合触媒、並びにトリエチルアルミニウム助触媒が、ポリエチレンの製造速度が6.8kg/時であるような量で導入された。助触媒のアルミニウムと固形触媒成分のチタンとのモル比は、30であった。重合体のメルトインデックスMFRおよび密度は、それぞれ30g/10分および970kg/mであると推定された。
【0113】
スラリーはループ反応器から連続的に除かれ、そして500dmの容積を持ち95℃の温度および60バールの圧力で運転されている第2ループ反応器中に導入された。エチレン濃度が6.7モル%および水素とエチレンとの比が550モル/kモルであるように、追加のエチレン、プロパンおよび水素が加えられた。重合体製造速度は27kg/時であり、また重合体のMFRおよび密度は、それぞれ400g/10分および974kg/mであった。
【0114】
重合体スラリーはループ反応器から沈降レッグを使用して除かれ、そしてそれから3バールの圧力で運転されているフラッシュ容器中に導入され、そこで重合体は流体相の大部分から分離された。それから重合体は、85℃および20バールで運転されている気相反応器中に移送された。流動化ガス中のエチレンの分率が2.5モル%並びに水素とエチレンおよび1−ブテンとエチレンとの比がそれぞれ210および80モル/kモルであるように、追加のエチレン、1−ブテン共単量体および水素、並びに不活性ガスとしての窒素が反応器中に導入された。気相反応器における共重合体製造速度は25kg/時であった。
【0115】
気相反応器から抜き出された重合体は、それから400ppmのIrganox B561(Ciba社によって製造販売されている酸化防止剤と工程安定化剤との混合物)と混合され、そしてWerner and Pfleiderer社によって製造された同方向回転2軸押出機ZSK70を使用することによってペレットにされた。溶融物温度は、押出の間199℃であった。重合体溶融物は、ダイプレートを通して水浴中へと押出され、そこで回転ナイフによって直ちにペレットへ切断された。重合体ペレットは乾燥された。ペレットにされた重合体は9.0g/10分のMFRおよび960kg/mの密度を持っていた。
【実施例2】
【0116】
実施例1に従って調製された重合体200kg、および高圧オートクレーブプロセスでフリーラジカル重合によって製造された(Borealis社によって製造販売された)低密度ポリエチレン(LDPE)CA8200の200kgから、ペレットのドライブレンドがつくられた。CA8200は、7.5g/10分のメルトインデックスMFR、13.0のSHI0/100および920kg/mの密度を持っていた。これは、押出コーティング用に設計され、Borealis社によって製造された低密度ポリエチレンである。このドライブレンドは次に、上述のZSK70押出機を使用することによってコンパウンドされ、かつペレットにされた。押出の間の溶融物温度は、200℃であった。得られた重合体組成物は5.9g/10分のMFRおよび940kg/mの密度を持っていた。組成物の特性が表1に示される。
【実施例3】
【0117】
実施例1に従って調製された重合体の量が600kgであり、およびCA8200の量が400kgであることを除いて、実施例2の手順が繰り返された。組成物の特性が表1に示される。
【実施例4】
【0118】
実施例1に従って調製された重合体の量が400kgであり、およびCA8200の量が600kgであることを除いて、実施例2の手順が繰り返された。組成物の特性が表1に示される。
【0119】
[比較例1]
12g/10分のMFRおよび964kg/mの密度を持つ単峰性高密度ポリエチレンが、気相重合反応器でジーグラーナッタ触媒の存在下にエチレンを重合することによって製造された。この重合体の一部が、管状反応器中のフリーラジカルプロセスでエチレンを重合して製造され、4.5g/10分のMFRおよび922kg/mの密度を持つ低密度ポリエチレンとブレンドされた。ブレンドは、HDPE52%およびLDPE48%を含有し、7.5g/10分のMFRおよび941kg/mの密度を持っていた。
【0120】
【表1】

【実施例5】
【0121】
実施例2〜4および比較例1に従って調製された重合体組成物が、押出コーティングに使用された。L/D(長さと直径との)比24およびLDPE吐出量450kg/時を持つ4.5インチ押出機2基並びにL/D比30およびLDPE吐出量170kg/時を持つ2.5インチ押出機1基を備えたBeloitパイロット押出コーティングラインで、コーティングがなされた。ダイは、5層フィードブロックを持つPeter Cloerenダイであった。ダイにおける重合体溶融物の温度は310℃であった。
【0122】
基体は、70g/mの坪量を持つ両更クラフト紙であった。コーティングラインの速度は、100m/分から400m/分に達するまで段階的に増加された。コーティング重量は30g/mから5g/mまで変化された。
【0123】
ドローダウン速度400m/分およびコーティング重量10g/mにおける組成物のドローレゾナンスに対する抵抗を、表2は示す。
【0124】
【表2】

【0125】
組成物のネックインが、ドローダウン速度200m/分およびコーティング重量10g/mにおいて測定された。結果が表3に示される。
【0126】
【表3】

【0127】
コーティング重量20g/mについての実施例2および比較例1について、コーティングのWVTRが測定された。結果が表4に示される。
【0128】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 多峰性高密度ポリエチレン(A)、および
(b) 低密度ポリエチレン(B)
を含む重合体組成物。
【請求項2】
5〜20g/10分の、ISO 1133に従う、190℃におけるメルトフローレートMFRを持つことを特徴とする、請求項1に従う組成物。
【請求項3】
930〜950kg/mの、ISO 1183−1987に従う密度を持つことを特徴とする、請求項2に従う組成物。
【請求項4】
ポリエチレン(A)が、950〜968kg/mの、ISO 1183−1987に従う密度を持つことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に従う組成物。
【請求項5】
ポリエチレン(A)が、5〜20g/10分の、ISO 1133に従う、190℃におけるメルトフローレートMFRを持つことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に従う組成物。
【請求項6】
ポリエチレン(A)が、50000〜150000g/モルの重量平均分子量Mを持つことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に従う組成物。
【請求項7】
ポリエチレン(A)が、双峰性であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に従う組成物。
【請求項8】
ポリエチレン(A)が、エチレン単独重合体および/またはエチレン共重合体を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に従う組成物。
【請求項9】
エチレン共重合体が、エチレンおよび少なくとも1のC〜C20のα−オレフィンを含むことを特徴とする、請求項8に従う組成物。
【請求項10】
ポリエチレン(A)の共単量体含有量が、0.1〜1.0モル%であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に従う組成物。
【請求項11】
ポリエチレン(A)が、低分子量画分(LMW)および高分子量画分(HMW)を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に従う組成物。
【請求項12】
ポリエチレン(A)が、低分子量画分(LMW)を40〜60重量%含むことを特徴とする、請求項11に従う組成物。
【請求項13】
低分子量画分(LMW)が、単独重合体であることを特徴とする、請求項11または12のいずれか1項に従う組成物。
【請求項14】
共単量体含有量が、低分子量画分(LMW)において0.2モル%より低いことを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に従う組成物。
【請求項15】
低分子量画分(LMW)が、少なくとも973kg/mの、ISO 1183−1987に従う密度を持つことを特徴とする、請求項11〜14のいずれか1項に従う組成物。
【請求項16】
低分子量画分(LMW)が、100〜2000g/10分の、ISO 1133に従う、190℃におけるメルトフローレートMFRを持つことを特徴とする、請求項11〜15のいずれか1項に従う組成物。
【請求項17】
低分子量画分(LMW)が、10000〜60000g/モルの重量平均分子量Mを持つことを特徴とする、請求項11〜16のいずれか1項に従う組成物。
【請求項18】
高分子量画分(HMW)が、エチレン共重合体であることを特徴とする、請求項11〜17のいずれか1項に従う組成物。
【請求項19】
エチレン共重合体が、エチレンおよび少なくとも1のC〜C20のα−オレフィンを含むことを特徴とする、請求項18に従う組成物。
【請求項20】
高分子量画分(HMW)の共単量体含有量が、0.2〜2.0モル%であることを特徴とする、請求項18〜19のいずれか1項に従う組成物。
【請求項21】
高分子量画分(HMW)が、80000〜300000g/モルの重量平均分子量Mを持つことを特徴とする、請求項18〜20のいずれか1項に従う組成物。
【請求項22】
ポリエチレン(B)が、長鎖分岐されていることを特徴とする、請求項1〜21のいずれか1項に従う組成物。
【請求項23】
ポリエチレン(B)が、910〜935kg/mの、ISO 1183−1987に従う密度を持つことを特徴とする、請求項1〜22のいずれか1項に従う組成物。
【請求項24】
ポリエチレン(B)が、3〜15g/10分の、ISO 1133に従う、190℃におけるメルトフローレートMFRを持つことを特徴とする、請求項1〜23のいずれか1項に従う組成物。
【請求項25】
ポリエチレン(B)が、エチレン共重合体であることを特徴とする、請求項1〜24のいずれか1項に従う組成物。
【請求項26】
エチレン共重合体が、エチレンと、酢酸ビニル、アクリル酸ビニル、メタアクリル酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチルおよびアクリル酸ブチルからなる群から選ばれた少なくとも1の成分とを含むことを特徴とする、請求項25に従う組成物。
【請求項27】
ポリエチレン(A)40〜99重量%およびポリエチレン(B)1〜60重量%を含むことを特徴とする、請求項1〜26のいずれか1項に従う組成物。
【請求項28】
(c) 20重量%までの一または複数の他の重合体
を追加的に含むことを特徴とする、請求項1〜27のいずれか1項に従う組成物。
【請求項29】
(d) 2000ppmより少ない、一または複数の酸化防止剤および/または工程安定化剤
を追加的に含むことを特徴とする、請求項1〜28のいずれか1項に従う組成物。
【請求項30】
請求項1〜27のいずれか1項に従う組成物を有し、かつ20g/mのコーティング重量を持つコーティングされた物品が、15.5g/m/24時間より小さい、ASTM E96に従う水蒸気透過速度(WVTR)を持つことを特徴とする、請求項1〜29のいずれか1項に従う組成物。
【請求項31】
(a) 第1層としての基体、および
(b) 少なくとも1のさらなる層としての、請求項1〜30のいずれか1項に従う重合体組成物
を含む多層物質。
【請求項32】
基体が、紙、板紙、アルミニウムフィルムおよびプラスチックフィルムからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項31に従う多層物質。
【請求項33】
(a) ポリエチレン(A)が、ループ反応器および気相反応器を含む多段階プロセスで製造され、ここで低分子量画分が少なくとも1のループ反応器で生成され、そして高分子量画分が気相反応器で生成され、
(b) ポリエチレン(B)が、高圧オートクレーブプロセスのフリーラジカル重合によって製造され、そして
(c) ポリエチレン(A)およびポリエチレン(B)が、押出機を使用することによって一緒にブレンドされかつコンパウンドされる
ことを特徴とする、請求項1〜30のいずれか1項に従う組成物を製造する方法。
【請求項34】
ポリエチレン(A)を製造するプロセスに使用される触媒が、粒子状無機担体、該担体上に堆積された塩素化合物を含む高活性プロ触媒であり、ここで該塩素化合物はチタン化合物と同じかまたは異なっており、そうすることによって
該無機担体が、非極性炭化水素溶媒に可溶性でありかつ式(RMeCl3−nを持つアルキル金属塩化物と接触させられて、第一の反応生成物を生成し(ここで、RはC〜C20のアルキル基であり、Meは周期律表の第III(13)族の金属であり、n=1または2およびm=1または2である。)、そして
該第一の反応生成物は、マグネシウムに結合されたヒドロカルビルおよびヒドロカルビルオキシドを有し非極性炭化水素溶媒に可溶性である化合物と接触させられて、第二の反応生成物を生成し、そして該第二の反応生成物は、塩素を含有し式ClTi(ORIV4−xを持つチタン化合物と接触させられて、プロ触媒を生成する(ここで、RIVはC〜C20のヒドロカルビル基であり、xは3または4である。)
ことを特徴とする、請求項33に従う方法。
【請求項35】
請求項1〜30のいずれか1項に従う重合体組成物が、繰り出し機、巻き取り機、チルロールおよびコーティングダイを含むフィルムコーティングラインによって基体上に施与されることを特徴とする、請求項31〜32のいずれか1項に従う多層物質を製造する方法。
【請求項36】
請求項1〜30のいずれか1項に従う重合体組成物を押出コーティングに使用する方法。
【請求項37】
重合体組成物が、多層物質を製造する押出コーティングに使用されることを特徴とする、請求項36に従う方法。

【公表番号】特表2007−517948(P2007−517948A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548232(P2006−548232)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000096
【国際公開番号】WO2005/068548
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(500224380)ボレアリス テクノロジー オイ (39)
【Fターム(参考)】