説明

押出器

【課題】作業中に押出用ノズルの切断面の角度を調整しても、ピストンおよびシリンダーが脱落せず、作業性が良い押出器を提供することにある。
【解決手段】操作用トリガーを回動可能に取り付けた押出器本体と、先端部にピストン28を回動可能に装着し、かつ、前記押出器本体に軸心方向にスライド可能に挿通されたロッド13と、両端開口部に第1,第2キャップをそれぞれ脱着可能に螺合一体化し、前記第1キャップを介して前記押出器本体に装着するとともに、前記ピストン28がスライド可能に収納されたシリンダーとからなる。そして、前記操作用トリガーを操作して前記ロッド13を前進させることにより、前記シリンダー内に収納したパウチを圧縮し、前記パウチ内に充填された内容物を押し出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は押出器、特に、シーリング材等をはじめとする高粘性流動体を筒状袋容器から押し出すための押出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押出器としては、例えば、フィルム状生地からなり、一端部を密閉するとともに、他端部に押出用ノズルを装着したパウチを圧縮し、前記押出用ノズルから高粘性流動体を押し出すものがある(特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、前記押出器を詳細に説明すると、例えば、本願の図3に示すように、操作用トリガー11を回動可能に取り付けた押出器本体10の一端側にリリースプレート12を介してロッド13を軸心方向にスライド可能に挿通してある。前記ロッド13は、前記リリースプレート12と押出器本体10との間の領域にスリーブ14およびコイルバネ15を挿通してある。また、前記ロッド13は、前記トリガー11の上方に位置する領域にキャッチプレート16および復帰用コイルバネ17を挿通してある。なお、図3においては、説明の便宜上、ロッド13に対するキャッチプレート16および復帰用コイルバネ17の取付位置を正規の位置よりも前に図示してある。
【0004】
また、前記押出器本体10は、その他端側の雌ネジ部10aに螺合したバレル18で、ワッシャ19を介して第1キャップ20を固定してある。そして、前記第1キャップ20の雌ネジ部20aにはシリンダー21の一端側の雄ネジ部21aを螺合一体化するとともに、その他端側の雄ネジ部21bに第2キャップ22を螺合し、Oリング23およびノズルホルダ24を固定してある。
【0005】
さらに、前記ロッド13は、その先端部に形成した雄ネジ部13a(図1C,1D)に、第1ナット25および第2ナット26を螺合し、第1,第2ナット25,26でプランジャ27およびピストン28を挟持し、かつ、前記ロッド13の先端部に固定してある。特に、前記ピストン28の先端面中央に突設したリブ29の略六角形の凹部29aに、第2ナット26が嵌合されている。このため、前記ピストン28が回動すると、ナット26も回動する。
【0006】
そして、前記操作用トリガー11を操作すると、キャッチプレート16がロッド13を少しずつ前進させる。このため、前記ロッド13の先端に固定したピストン28が、シリンダー21内に収納した図示しないパウチの底部を押圧して圧縮する。この結果、前記パウチの先端に取り付けた押出用ノズル(図示せず)の切り口からシーリング材等の内容物が押し出される。
【0007】
特に、施工現場では、例えば、窓の枠に沿ってシーリング材を美麗に充填しようとすると、連続的に充填する必要がある。このため、熟練の作業者は押出用ノズルの先端を斜めに切断し、その切断面の切り口から押し出されたシーリング材のうち、余分なシーリング材を前記切断面で均しながら充填作業を行う。したがって、作業者は窓の枠に沿って連続的にシーリング材を充填しようとすると、窓枠に対して押出用ノズルの切断面を一定の角度に保持しながら移動する必要がある。このため、通常、作業者は前記第2キャップ22を回動し、あるいは、前記シリンダー21を回動して押出用ノズルの切断面の角度を微調整しながら移動し、シーリング作業を行う。
【特許文献1】特開2003−160181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の押出器では、シーリング材を充填したパウチがフィルム状袋容器で構成されているので、例えば、前記第2キャップ22を回すと、前記シリンダー21内のパウチも回動し、その底部に圧接しているピストン28も回動する。そして、前記ピストン28の略六角形の凹部29aに第2ナット26が嵌め込まれているので、前記ピストン28が回動すると、第2ナット26も回動して緩む。このため、シーリング作業の途中で第2ナット26,ピストン28が外れ、作業を中断しなければならない場合があり、作業性が悪い。
【0009】
また、前記押出器では、押出器本体10に第1キャップ20が固定されているので、作業中に作業者がシリンダー21を回転させて押出用ノズルの切断面の角度を微調整すると、前述と同様、第1キャップ20からシリンダー21が外れ、作業を中断しなければならない場合があり、作業性が悪いという問題点がある。
【0010】
本発明は、前記問題点に鑑み、作業中に押出用ノズルの切断面の角度を調整しても、ナット,ピストンまたはシリンダーが脱落せず、作業性の良い押出器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる押出器は、前記課題を解決すべく、トリガーを回動可能に取り付けた押出器本体と、先端部にピストンを装着し、かつ、前記押出器本体に軸心方向にスライド可能に挿通されたロッドと、両端開口部に第1,第2キャップをそれぞれ脱着可能に螺合一体化し、前記第1キャップを介して前記押出器本体に装着するとともに、前記ピストンがスライド可能に収納されたシリンダーとからなり、前記操作用トリガーを操作して前記ロッドを前進させることにより、前記シリンダー内に収納したパウチを圧縮し、前記パウチ内に充填された内容物を押し出す押出器であって、前記ロッドの先端部にピストンを回動可能に支持した構成としてある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1によれば、ピストンがロッドの先端部に回動可能に取り付けられているので、押出用ノズルの角度調整のために第2キャップを回してピストンを回転させても、前記ピストンを支持するナットは回転せず、ナット,ピストンがロッドから抜け落ちることはない。このため、作業を中断する必要がなくなり、連続的作業が可能になるので、作業性の良い押出器が得られる
【0013】
本発明の実施形態としては、ロッドの先端部に挿通したピストンの両側に2個のナットをそれぞれ螺合するとともに、隣り合う前記ナットを相互に圧接させて固定し、前記ピストンを回動可能に支持した構成としてある。
本実施形態によれば、前述の効果に加え、通常のナットを使用するだけでピストンを回動可能に支持できるので、製造が容易であるとともに、製造コストを安価にできる。
【0014】
本発明にかかる他の発明としては、操作用トリガーを回動可能に取り付けた押出器本体と、先端部にピストンを装着し、かつ、前記押出器本体に軸心方向にスライド可能に挿通されたロッドと、両端開口部に第1,第2キャップを脱着可能に螺合一体化し、前記第1キャップを介して前記押出器本体に装着するとともに、前記ピストンがスライド可能に収納されたシリンダーとからなり、前記操作用トリガーを操作して前記ロッドを前進させることにより、前記シリンダー内に収納したパウチを圧縮し、前記パウチ内に充填された内容物を押し出す押出器であって、押出器本体の雌ネジ部の両側から第1固定具および第2固定具をそれぞれ螺合し、両者の先端面を前記雌ネジ部内で突き合わせることにより、押出器本体に第1キャップを回動可能に支持した構成としてある。
【0015】
本発明によれば、シリンダーを回動しても、第2キャップが同時に回動し、前記第2キャップが押出器本体から脱落することがない。このため、作業を中断することなく連続作業が可能になり、作業性の良い押出器が得られる。
【0016】
本発明にかかる実施形態としては、第1キャップの両側にワッシャを配置して押出器本体に回動可能に支持してもよい。
本実施形態によれば、第1キャップの両側に配置したワッシャによって摩擦が小さくなり、より円滑に調整しながら作業できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明にかかる実施形態を図1および図2の添付図面に従って説明する。
本実施形態は、図3に示した押出器と基本構造が同一であるので、異なる点についてのみ説明する。なお、同一部分については同一番号を附して説明する。
【0018】
すなわち、本実施形態では、図1に示すように、ロッド13の先端部に設けた雄ネジ部13aに、第1ナット25a,25bおよび第2ナット26a,26bをそれぞれ螺合する。そして、第1ナット25a,25bを相互に圧接するとともに、第2ナット26a,26bを相互に圧接し、第1ナット25aと第2ナット26bとの間にプランジャ27およびピストン28を回動可能に配置してある。
【0019】
したがって、第2キャップ22を回動することにより、シリンダー21内のパウチが回動しても、ピストン28が回動するだけであり、第2ナット26a,26bが緩んで外れることがない。特に、ピストン28の正面に突設した環状のリブ29に、ナット26a,26bを接触しないように配置してあるので、パウチが第2ナット26a,26bに接触しにくく、第2ナット26a,26bが緩みにくいという利点がある。
【0020】
また、本実施形態にかかる押出器本体10に対する第1キャップ20の取付構造は、第2図に示すように、押出器本体10の雌ネジ部10aに、貫通孔30aを備えた第1バレル30と貫通孔31aを備えた第2バレル31とを螺合し、両者の先端部を突き合わせるように締め付けることにより、前記押出器本体10に対して前記第1,2ワッシャ32,33を介して第1キャップ20を回動可能に固定してある(図2B)。そして、前記第1キャップ20の雌ネジ部20aにシリンダー21の第1雄ネジ部21aを固く螺合することにより、押出器本体10にシリンダー21を装着できる。
したがって、前記シリンダー21を回動させると、これにつれて前記第1キャップ20も回動し、第1キャップ20からシリンダー21が脱落することはない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明にかかる押出器はシーリング材に限らず、接着剤等の他の高粘性流動体の押し出しに使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1A,1Bは本発明にかかる押出器のピストンの取付構造を示す正面図および部分断面図であり、図1C,1Dは従来例にかかる押出器のピストンの取付構造を示す正面図および部分断面図である。
【図2】図2A,2Bは本発明にかかるシリンダの取付構造を示す部分断面の分解図および部分断面図である。
【図3】従来例にかかる押出器の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
10:押出器本体
11:操作用トリガー
13:ロッド
20:第1キャップ
21:シリンダー
22:第2キャップ
25a,25b:第1ナット
26a,26b:第2ナット
28:ピストン
30:第1バレル
31:第2バレル
32,33:第1,第2ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作用トリガーを回動可能に取り付けた押出器本体と、先端部にピストンを装着し、かつ、前記押出器本体に軸心方向にスライド可能に挿通されたロッドと、両端開口部に第1,第2キャップをそれぞれ脱着可能に螺合一体化し、前記第1キャップを介して前記押出器本体に装着するとともに、前記ピストンがスライド可能に収納されたシリンダーとからなり、前記操作用トリガーを操作して前記ロッドを前進させることにより、前記シリンダー内に収納したパウチを圧縮し、前記パウチ内に充填された内容物を押し出す押出器であって、
前記ロッドの先端部にピストンを回動可能に支持したことを特徴とする押出器。
【請求項2】
ロッドの先端部に挿通したピストンの両側に2個のナットをそれぞれ螺合するとともに、隣り合う前記ナットを相互に圧接させて固定し、前記ピストンを回動可能に支持したことを特徴とする請求項1に記載の押出器。
【請求項3】
操作用トリガーを回動可能に取り付けた押出器本体と、先端部にピストンを装着し、かつ、前記押出器本体に軸心方向にスライド可能に挿通されたロッドと、両端開口部に第1,第2キャップを脱着可能に螺合一体化し、前記第1キャップを介して前記押出器本体に装着するとともに、前記ピストンがスライド可能に収納されたシリンダーとからなり、前記操作用トリガーを操作して前記ロッドを前進させることにより、前記シリンダー内に収納したパウチを圧縮し、前記パウチ内に充填された内容物を押し出す押出器であって、
押出器本体の雌ネジ部の両側から第1固定具および第2固定具をそれぞれ螺合し、両者の先端面を前記雌ネジ部内で突き合わせることにより、押出器本体に第1キャップを回動可能に支持したことを特徴とする押出器。
【請求項4】
第1キャップの両側にワッシャを配置して押出器本体に回動可能に支持したことを特徴とする請求項3に記載の押出器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−18949(P2008−18949A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190572(P2006−190572)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(000107000)シャープ化学工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】