説明

押出成型用シリコ−ンゴム組成物

【課題】30℃〜110℃において弾性率が上昇するためアクリル系光ファイバセンサの温度依存性を低減させることができる硬化物を与え、かつ押出成型をすることができる押出成型用シリコーンゴム組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記平均組成式(1):RSiO(4−n)/2(式中、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基、nは1.95〜2.04の正数である。)で表されるオルガノポリシロキサン 100質量部、(B)ビニル基含有ケイ素化合物 0〜50質量部、(C)補強性シリカ 5〜100質量部、および(D)硬化剤 有効量、を含有してなる押出成型用シリコーンゴム組成物であって、(A)〜(D)成分の合計に対するビニル基の含有量が1.0×10-4mol/g以上である組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、30℃〜110℃において弾性率が上昇する硬化物を与える押出成型用シリコーンゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複合材料等の高性能な構造材料中に特殊な光ファイバセンサを埋め込み、その構造材料のひずみ等を常時モニターしようという試みがなされている。例えば、光ファイバ干渉計のセンサ部を繊維強化複合材積層板の層間に埋め込んでセンサ部による干渉光の強度変化を測定して繊維強化複合材積層板の内部ひずみを測定する方法が公知である(特許文献1)。また、光ファイバを高電圧機器絶縁モールド等のエポキシ樹脂注型品に埋め込む方法も公知である(特許文献2)。プラスチック、金属、セラミックス、もしくはコンクリート等に、またはSiC等の無機繊維、ステンレス鋼繊維等の強化繊維で強化した複合材料、同種材料もしくは異種材料の積層体等に光ファイバを埋め込み、センサとして使用する方法も公知である(特許文献3)。
【0003】
衝突センサとしては、落石センサ(特許文献4)や車両用衝突センサ(特許文献5〜7)などが公知である。
【0004】
石英系光ファイバやガラス系光ファイバと比べて、アクリル系光ファイバは曲げに強く、加工が容易であるために多くの分野で使用されている。しかし、アクリルは温度上昇に伴い弾性率が低下するため、アクリル系光ファイバは、温度依存性が大きく、光ファイバセンサとして用いるには不利である。
【0005】
シリコーンゴムは、優れた耐候性、電気特性、低圧縮永久歪み性、耐熱性、耐寒性等の特性を有しているので、マトリックス材料として使用できる。温度上昇に伴い、弾性率が上昇する液状シリコーンゴムを使用することにより、アクリル系光ファイバセンサの温度依存性を低減させることできるが、作業性が悪く、量産には向かない。
【特許文献1】特開平4−361126号公報
【特許文献2】特開平11−165324号公報
【特許文献3】特開2001−082918号公報
【特許文献4】特開2002−267549号公報
【特許文献5】特開平5−45372号公報
【特許文献6】特表2003−510216号公報
【特許文献7】特表2006−500284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、30℃〜110℃において弾性率が上昇するためアクリル系光ファイバセンサの温度依存性を低減させることができる硬化物を与え、かつ押出成型をすることができる押出成型用シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、シリコーンゴム組成物全体に対するビニル基の含有量を1.0×10-4mol/g以上にすることにより、30℃〜110℃において弾性率が上昇する硬化物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
従って、本発明は
(A)下記平均組成式(1)
SiO(4−n)/2 (1)
(式中、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基、nは1.95〜2.04の正数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)ビニル基含有ケイ素化合物 0〜50質量部、
(C)補強性シリカ 5〜100質量部、および
(D)硬化剤 有効量
を含有してなる押出成型用シリコーンゴム組成物であって、(A)〜(D)成分の合計に対するビニル基の含有量が1.0×10-4mol/g以上である組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の押出成型用シリコーンゴム組成物によれば、30℃〜110℃において弾性率が上昇する成型物が得られる。本発明組成物の硬化物は、アクリル系光ファイバセンサの温度依存性を低減させるのに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、粘度は回転粘度計により測定した値を示す。
【0011】
[(A)成分]
(A)成分のオルガノポリシロキサンは下記平均組成式(1)
SiO(4−n)/2 (1)
(式中、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基、nは1.95〜2.04の正数である。)
で示されるものである。
【0012】
上記式(1)中、Rとしては、例えば、同一または異種の非置換もしくは置換の炭素原子数1〜20、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8の1価炭化水素基が挙げられる。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリ−ル基;β−フェニルプロピル基等のアラルキル基;またはこれらの炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられる。
【0013】
上記式(1)中、nは1.95〜2.04、好ましくは1.98〜2.02の正数である。このnが1.95〜2.04の範囲でないと、得られる組成物の硬化物が十分なゴム弾性を示さないことがある。
【0014】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基、メチルジビニルシリル基、トリビニルシリル基などで封鎖されたものであることが好ましく、少なくとも1つのビニル基を有するシリル基(例えば、ジメチルビニルシリル基、メチルジビニルシリル基、トリビニルシリル基など)で封鎖されたものであることが特に好ましい。
【0015】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有し、具体的には、R1のうち0.001〜10モル%、特に0.01〜5モル%がアルケニル基であることが好ましい。該アルケニル基の例としては、好ましくはビニル基およびアリル基が挙げられ、特に好ましくはビニル基である。
【0016】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの平均重合度は、100以上であることが好ましく、3,000〜100,000の範囲であることがより好ましく、4,000〜20,000の範囲であることが特に好ましい。平均重合度は、ポリスチレンを分子量マーカーとしてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により数平均分子量を測定し、式:
平均重合度=数平均分子量/(A)成分の繰り返し単位の分子量
により計算して求めることができる。(A)成分中に複数種の繰り返し単位が含まれる場合、上記式中の「(A)成分の繰り返し単位の分子量」はこれら複数種の繰り返し単位の数平均分子量である。
【0017】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても、平均重合度や分子構造の異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
[(B)成分]
(B)成分のビニル基含有ケイ素化合物は、必要に応じて任意的に本発明に用いられる。(B)成分は、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。(B)成分としては、例えば、ビニル基含有シランおよびビニル基含有シラザンが挙げられる。
【0019】
ビニル基含有シランとしては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン等が挙げられる。ビニル基含有シラザンとしては、1,3-ジビニル‐1,1,3,3−テトラメチルシラザン等が挙げられる。
【0020】
(B)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して、50質量部以下(即ち、0〜50質量部)であり、好ましくは20質量部以下(即ち、0〜20質量部)である。この添加量が50質量部を超えると、得られるシリコーンゴム組成物が粘着性を有するものとなりやすい。(B)成分を本発明の組成物に添加する場合、その添加量の下限は、(A)成分100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上でよい。
【0021】
[(C)成分]
(C)成分の補強性シリカは、機械的強度の優れたシリコ−ンゴムを得る目的に用いられる。(C)成分の補強性シリカは、その比表面積が好ましくは50m/g以上、より好ましくは100〜400m/gである。比表面積はBET法により測定される。(C)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0022】
(C)成分の補強性シリカとしては、従来からシリコーンゴムの補強性充填剤として使用されている公知のものを用いることができ、例えば、煙霧質シリカ、沈降シリカなどが挙げられる。
【0023】
このような補強性シリカは、そのまま使用してもよいが、必要に応じて、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等で予め表面処理された補強性シリカを用いてもよい。
【0024】
(C)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して5〜100質量部であり、好ましくは10〜70質量部である。該配合量が多すぎる場合、得られるシリコーンゴム組成物の加工性が低下しやすい。該配合量が少なすぎる場合、該シリコーンゴムを硬化して得られる硬化物は、引張強さ、引き裂き強度などの機械的強度が十分でないものとなりやすい。
【0025】
[(D)成分]
(D)成分は硬化剤としては、シリコーンゴムを常圧熱気加硫やスチーム加硫する際に使用されるものとして公知のものであれば、いずれも使用することができる。(D)成分の好ましい例としては、(i)有機過酸化物、(ii)シリコーンゴムの付加反応用硬化剤として公知の、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金族金属系触媒との組み合わせ、および(i)と(ii)との併用系が挙げられる。これらの中で、有機過酸化物が特に好ましい。いずれの場合も、(D)成分は有効量で使用される。
【0026】
(i)有機過酸化物
有機過酸化物により本発明組成物を加熱硬化させることにより、容易にシリコーンゴムを得ることができる。有機過酸化物は一種単独で使用しても二種以上を組み合わせて使用してもよい。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、パラメチルベンゾイルパーオキサイド、オルトメチルベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、クミル−t−ブチルパーオキサイド等の塩素原子を含まない有機過酸化物が挙げられ、特に、常圧熱気加硫用としては、ベンゾイルパーオキサイド、パラメチルベンゾイルパーオキサイド、オルトメチルベンゾイルパーオキサイド等のアシル系有機過酸化物が好ましい。
【0027】
有機過酸化物の添加量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対し、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.3〜5質量部である。該添加量がこの範囲内にあると、架橋が十分となりやすく、該添加量の増加に応じて硬化速度が向上しやすいので、経済的に有利となりやすい。
【0028】
(ii)オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金族金属系触媒との組み合わせ
・白金族金属系触媒
付加反応により本発明組成物を硬化させる場合には、上記(ii)オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金族金属系触媒との組合せを使用する。この付加反応に用いられる白金族金属系触媒は、(A)成分中の脂肪族不飽和基(アルケニル基、ジエン基等)および(B)成分中のビニル基と(ii)の硬化剤中のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子(即ち、SiH基)とを付加反応させる触媒である。白金族金属系触媒は一種単独で使用しても二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
白金族金属系触媒としては、例えば、白金族の金属単体とその化合物などが挙げられ、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の触媒として従来公知のものが使用できる。その具体例としては、シリカ、アルミナ又はシリカゲルのような担体に吸着させた微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水塩のアルコール溶液、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられるが、白金を含むものが好ましい。
【0030】
白金族金属系触媒の添加量は、上記付加反応を促進できる有効量であればよく、通常、白金系金属量に換算して(A)成分のオルガノポリシロキサンに対して1ppm(質量基準。以下、同様)〜1質量%の範囲であり、好ましくは10〜500ppmの範囲である。該添加量がこの範囲内にあると、付加反応が十分に促進されやすく、また、硬化が十分となりやすく、更に、該添加量の増加に応じて付加反応の速度が向上しやすいので、経済的にも有利となりやすい。
【0031】
・オルガノハイドロジェンポリシロキサン
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上のSiH基を含有する限り、直鎖状および環状のいずれであってもよく、分枝していてもよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは一種単独で使用しても二種以上を組み合わせて使用してもよい。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができ、例えば、下記平均組成式(2):
pqSiO(4-p-q)/2 (2)
(式中、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、pおよびqは、0≦p<3、0<q≦3、および0<p+q≦3、好ましくは1≦p≦2.2、0.002≦q≦1、および1.002≦p+q≦3を満たす正数である。)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができる。
【0032】
上記平均組成式(2)中、Rは、同一または異種の非置換もしくは置換の、好ましくは炭素原子数1〜12、特に好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基を示し、脂肪族不飽和結合を含まないことが好ましい。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基;及びこれらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子等のハロゲン原子等で置換した基、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0033】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンが直鎖状の場合、SiH基は、分子鎖末端および分子鎖末端でない部分のどちらか一方にのみ存在していても、その両方に存在していてもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は0.5〜10,000mm/sであることが好ましく、特に1〜300mm2/sであることが好ましい
【0034】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、下記構造式の化合物が挙げられる。
【0035】
【化1】


(式中、kは2〜10の整数、s及びtは0〜10の整数である。)
【0036】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分中の脂肪族不飽和結合(アルケニル基及びジエン基等)および(B)成分中のビニル基の合計1モルに対し、該オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基の量が好ましくは0.5〜5モル、より好ましくは0.8〜4モルとなる量である。該配合量がこの範囲内にあると、架橋が十分となりやすく、硬化後には、機械的強度が十分となりやすい。このような配合量は、例えば、(A)成分100質量部に対して該オルガノハイドロジェンポリシロキサンを好ましくは0.1〜50質量部添加することにより実現できる。
【0037】
[その他の成分]
本発明の組成物には、上記成分に加え、必要に応じて、下記式(3)
O(SiRO) (3)
(式中、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基、mは1〜50の正数である。Rは独立にアルキル基または水素原子である)
で表されるオルガノシランまたはオルガノポリシロキサン(以下、(E)成分とする)を添加してもよい。(E)成分は分子鎖末端にアルコキシ基または水酸基を有している。(E)成分は、(C)成分の補強性シリカを処理する処理剤として作用する。(E)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0038】
上記式(3)中、R基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリ−ル基;β−フェニルプロピル基等のアラルキル基;またはこれらの炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられるが、(A)成分のオルガノポリシロキサンとの相溶性の観点から、(A)成分中の一価炭化水素基Rと同一の種類または同一の組み合わせであることが好ましい。
【0039】
上記式(3)中、R基としては、例えば、水素原子またはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基が挙げられる。
【0040】
上記式(3)中、平均重合度mは、1〜50の範囲であり、好ましくは2〜30の範囲である。mがこの範囲内にあると、(E)成分は、(C)成分の補強性シリカを処理する処理剤としての効果を十分に発揮しやすい。平均重合度は上記と同様に求めることができる。
【0041】
(E)成分を本発明の組成物に配合する場合、その配合量は(A)成分100質量部当たり0.5〜50質量部であることが好ましい。該配合量がこの範囲内にあると、得られるシリコーンゴム組成物は、粘着性を有するものとなるのを防ぎやすく、混練りが容易となりやすく、可塑化戻りの増加を抑えやすい。
【0042】
本発明の組成物には、更に、上記成分に加え、必要に応じて、粉砕石英、結晶性シリカ等の非補強性シリカ、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、炭酸カルシウム等の充填剤、着色剤、引き裂き強度向上剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導率向上剤などの各種添加剤や離型剤あるいは充填剤用分散剤として各種アルコキシシラン、特にフェニル基含有アルコキシシランおよびその加水分解縮合物、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子シロキサンなどを添加してもよい。
【0043】
[ビニル基含有量]
本発明の組成物において、(A)〜(D)成分の合計に対するビニル基の含有量は、1.0×10-4mol/g以上、好ましくは1.0×10-4〜1.0×10-2mol/gである。該含有量が1.0×10-4mol/g未満であると、得られる組成物の硬化物は、30℃〜110℃において弾性率が上昇しにくい。
【0044】
[弾性率変化率]
本発明の組成物は、30℃〜110℃において弾性率が上昇する硬化物を与える。具体的には、下記式:
R=(E100−E30)/E30×100
(式中、E30は30℃における該硬化物の弾性率を表し、E100は100℃における該硬化物の弾性率を表す。)
で計算される弾性率変化率Rが好ましくは5%以上である硬化物を与える。なお、弾性率は、固体粘弾性測定装置を用いて、周波数30Hz、昇温速度5℃/minで測定される。
【0045】
[製造方法]
本発明のシリコーンゴム組成物は、上記成分を2本ロールミル、バンバリーミキサー、ドウミキサー(ニーダー)などのゴム練機を用いて均一に混合することにより得ることができる。必要に応じて加熱処理(加熱下、例えば、80〜250℃での混合)を施してもよい。例えば、すべての成分を同時に室温で混合してもよいし、上記の(A)〜(C)成分およびその他の成分を加熱下で混合した後、室温で更に(D)成分を混合してもよい。
【0046】
[押出成型]
このようにして得られたシリコーンゴム組成物は、必要とされる用途に応じて押出成型により成型することができる。なお、硬化温度は硬化剤の種類、押出方法、目的とする成型体の肉厚により適宜選択することができるが、例えば80〜500℃が挙げられる。
【0047】
[用途]
アクリル系光ファイバセンサによる測定の対象となる材料とアクリル系光ファイバセンサとの間に本発明組成物の硬化物を配置することにより、アクリル系光ファイバセンサの温度依存性を低減させることができる。この場合、該材料とアクリル系光ファイバセンサとの間に該硬化物を挟み込んでもよいし、該硬化物で表面が被覆されたアクリル系光ファイバセンサを該材料に埋め込んでもよいし、アクリル系光ファイバセンサと接する面が該硬化物で被覆された材料にアクリル系光ファイバセンサ(表面が該硬化物で被覆されていても被覆されていなくてもよい)を埋め込んでもよい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。なお、特に断りがない限り、操作は室温(25℃)で行った。
【0049】
[実施例1]
ジメチルシロキサン単位99.431モル%、メチルビニルシロキサン単位0.544モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8000であるオルガノポリシロキサン100質量部、BET法による比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(商品名:アエロジル(登録商標)200、日本アエロジル(株)製)20質量部、両末端にシラノール基を有し、平均重合度が15であるジメチルポリシロキサン4質量部、ビニルトリメトキシシラン0.45質量部、1,3−ジビニルー1,1,3,3−テトラメチルジシラザン0.01部をニーダーに投入し、180℃にて加熱下2時間混練りして、ベースコンパウンドを得た。このベースコンパウンド100質量部に対し架橋剤として1,6-ヘキサンジオール-t-ブチルパーオキシカーボネート0.8質量部を添加し、2本ロールミルを用いて均一に混合して、組成物1を調製した。
【0050】
[実施例2]
ジメチルシロキサン単位99.5モル%、メチルビニルシロキサン単位0.475モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8000であるオルガノポリシロキサン100質量部、BET法による比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ(商品名:アエロジル300、日本アエロジル(株)製)22質量部、ビニルトリメトシキシシラン0.5質量部、平均重合度が15であり、ビニル基量が0.0013モル/gであるメチルビニルポリシロキサン3質量部、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン0.01部をニーダーに投入し、180℃にて加熱下2時間混練りして、ベースコンパウンドを得た。このベースコンパウンド100質量部に対し架橋剤として1,6-ヘキサンジオール-t-ブチルパーオキシカーボネート0.8質量部を添加し、2本ロールミルを用いて均一に混合して、組成物2を調製した。
【0051】
[実施例3]
ジメチルシロキサン単位99.85モル%、メチルビニルシロキサン単位0.125モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8000であるオルガノポリシロキサン100質量部、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された25℃における粘度が5,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン1部、(CH3)2(CH2=CH)SiO1/2単位6.5モル%、SiO2単位54モル%、(CH3)3SiO1/2単位39.5モル%からなるオルガノポリシロキサン樹脂1部、BET法による比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ(商品名:アエロジル300、日本アエロジル(株)製)22質量部、ビニルトリメトシキシシラン0.5質量部、平均重合度が15であり、ビニル基量が0.0013モル/gであるメチルビニルポリシロキサン3質量部、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン0.01部をニーダーに投入し、180℃にて加熱下2時間混練りして、ベースコンパウンドを得た。このベースコンパウンド100質量部に対し架橋剤として1,6-ヘキサンジオール-t-ブチルパーオキシカーボネート0.8質量部を添加し、2本ロールミルを用いて均一に混合して、組成物3を調製した。
【0052】
[比較例1]
ジメチルシロキサン単位99.85モル%、メチルビニルシロキサン単位0.125モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8000であるオルガノポリシロキサン84質量部、ジメチルシロキサン単位99.985モル%、ジメチルビニルシロキサン0.025モル%からなり、平均重合度が約8000であるオルガノポリシロキサン16質量部、BET法による比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(商品名:アエロジル200、日本アエロジル(株)製)47質量部、両末端にシラノール基を有し、平均重合度が15であるジメチルポリシロキサン20質量部、ビニルトリメトキシシラン0.15質量部をニーダーに投入し、180℃にて加熱下2時間混練りして、ベースコンパウンドを得た。このベースコンパウンド100質量部に対し架橋剤として1,6-ヘキサンジオール-t-ブチルパーオキシカーボネート0.8質量部を添加し、2本ロールミルを用いて均一に混合して、組成物4を調製した。
【0053】
[比較例2]
ジメチルシロキサン単位99.85モル%、メチルビニルシロキサン単位0.125モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8000であるオルガノポリシロキサン100質量部、BET法による比表面積が201m2/gである沈降シリカ(商品名:NIPSIL(登録商標)-LP、日本シリカ(株)製)40質量部、両末端にシラノール基を有し、平均重合度が15であるジメチルポリシロキサン8質量部をニーダーに投入し、180℃にて加熱下2時間混練りして、ベースコンパウンドを得た。このベースコンパウンド100質量部に対し架橋剤として1,6-ヘキサンジオール-t-ブチルパーオキシカーボネート0.8質量部を添加し、2本ロールミルを用いて均一に混合して、組成物5を調製した。
【0054】
[比較例3]
分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された25℃における粘度が5,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン60質量部、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された25℃における粘度が1,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン15質量部、(CH3)2(CH2=CH)SiO1/2単位6.5モル%、SiO2単位54モル%、(CH3)3SiO1/2単位39.5モル%からなるオルガノポリシロキサン樹脂25質量部、平均重合度が15であり、ビニル基量が0.0013モル/gであるメチルビニルポリシロキサン4.4質量部、分子鎖両末端及び分子鎖非末端にSiH基を有する平均重合度が17のメチルハイドロジェンポリシロキサン(SiH基の量0.0060mol/g)10質量部、ヒドロシリル化触媒として、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体(白金原子濃度1質量%)0.25質量部を2本ロールミルにて混合し、組成物6を調製した。
【0055】
[試験片および試験シートの作成]
組成物1〜5については、165℃、100kgf/cm2の条件で10分間プレスキュアーを行った後、200℃で4時間、二次加硫を行って、下記の各測定内容に応じた試験シートおよび試験片を作成した。一方、組成物6については、120℃、100kgf/cm2の条件で10分間プレスキュアーを行った後、150℃で1時間、二次加硫を行って、下記の各測定内容に応じた試験シートおよび試験片を作製した。
【0056】
[弾性率、弾性率変化率]
厚さ2mm、幅5mm、長さ20mmの試験片を用いた。この試験片について、固体粘弾性測定装置(株式会社ヨシミズ製)を用いて、周波数30Hz、昇温速度5℃/minで弾性率を測定した。弾性率変化率(%)は式:
[(110℃での弾性率)−(30℃での弾性率)]/(30℃での弾性率)×100
で計算することにより求めた。結果を表1に示す。
【0057】
[密度、硬さ、引張強さ、切断時伸び]
JIS K 6249に準拠して作製した試験シートについて、JIS K 6249に準じた方法で、密度、硬さ、引張強さ、切断時伸びを測定した。結果を表1に示す。
【0058】
[反発弾性]
JIS K 6255に準拠して作製した試験片について、JIS K 6255に準じた方法で、反発弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
[押出性]
組成物1〜5を、60mmΦの押出機を使用して、直径2.5mmの円形のダイから円柱状に押し出し、200℃にて硬化させた後に、発泡が見られないときは、押出性良好であると評価し、表1では○で示した。発泡が見られる場合、押出性は不良であると評価し、表1では△で示した。組成物6は液状だったため、押し出すことはできなかった。表1では×で示した。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(1)
SiO(4−n)/2 (1)
(式中、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基、nは1.95〜2.04の正数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)ビニル基含有ケイ素化合物 0〜50質量部、
(C)補強性シリカ 5〜100質量部、および
(D)硬化剤 有効量
を含有してなる押出成型用シリコーンゴム組成物であって、(A)〜(D)成分の合計に対するビニル基の含有量が1.0×10-4mol/g以上である組成物。
【請求項2】
請求項1に係る押出成型用シリコーンゴム組成物であって、該組成物の硬化物について下記式:
R=(E100−E30)/E30×100
(式中、E30は30℃における該硬化物の弾性率を表し、E100は100℃における該硬化物の弾性率を表す。)
で計算される弾性率変化率Rが5%以上である組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物を硬化させることにより得られる硬化物であって、下記式:
R=(E100−E30)/E30×100
(式中、E30は30℃における該硬化物の弾性率を表し、E100は100℃における該硬化物の弾性率を表す。)
で計算される弾性率変化率Rが5%以上である硬化物。

【公開番号】特開2008−63508(P2008−63508A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244945(P2006−244945)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】