説明

押出成形した繊維状炭化ケイ素基材およびその製造方法

【解決手段】炭化ケイ素繊維の絡み合った配置の結果として生じる開放細孔網による有孔性を提供する繊維状炭化ケイ素基材が開示されている。その繊維構造は、炭素または有機の繊維をケイ素系の添加物と混合し、ハニカム基材を形成することで形成される。炭素または有機の繊維は、不活性環境下で加熱され、繊維およびケイ素系添加物中での炭素の反応により炭化ケイ素を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般には、触媒母体などのろ過および/または高温化学反応処理に有用な炭化ケイ素基材に関連する。本発明は、さらに特定すれば、実質的に繊維状の炭化ケイ素基材およびその製造方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
セラミックハニカム基材は、本来的な材料安定性および構造整合性が高い動作温度で必要とされる工業および自動車関連の用途で一般に使用される。セラミックハニカム基材では、効果的なろ過のための高い比表面積と、効率的な触媒反応のための補助が提供される。例えば、自動車関連用途では、セラミック基材は、排出ガスの触媒作用による酸化および還元を行い、粒子状排出物をろ過する触媒コンバータで使用される。
【0003】
セラミックハニカム基材は、一般に煤などのディーゼルの排気粒子を捕捉するために粒子状物質減少装置(DPF)で使用される。DPFで使用されるとき、セラミックハニカムは、入口経路と出口経路を形成する交互に並ぶ経路を選択的に塞ぐことで、壁流形態で製作される。押出成形した一つおきの経路は入口側で塞がれ、また残りの経路は出口側で塞がれ、それによって排気は強制的に入口経路に流入し、経路の壁を形成する多孔性のセラミック材料を通過し出口経路を通ってフィルタを通り外に流出する。運転中、煤粒子が入口経路の壁表面に蓄積し、これが最終的に装置の背圧を増大させることになる。ディーゼルエンジン制御装置は、背圧およびその他の指標を監視し、蓄積した煤を制御した上で燃焼させることでフィルタの再生を定期的に開始する。ディーゼルエンジンの制御によって、定期的なフィルタ再生の制御を維持できない場合には、煤が蓄積し過ぎたり制御されない再生が起こることがあり、これによってハニカムフィルタ内に極端に大きな温度勾配ができ、潜在的な基材の不良につながる。
【0004】
DPF基材は、コージライトまたは炭化ケイ素などの押出成形した粉末状のセラミック材料から製作されてきた。コージライト、2MgO・2Al2O3・5SiO2は、自動車の触媒コンバータなどのモノリス触媒担体用途に一般的に使用されるセラミック材料である。コージライトは一般に、カオリン、タルク、か焼カオリン、か焼タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、およびシリカといった粒子の混合物を押し出した後、高温の焼成工程でコージライトを原位置で形成させることにより形成される。原材料および工程の選択により、側壁に生成される有孔性が決定される。この材料は、再生時のDPFの作用温度と比較して比較的低い融点を示す。コージライトは、製作が比較的安価で熱膨張係数が低いが、この材料は1300°Cを超える動作温度では構造整合性を維持することができない。この点と、再生時に大きな温度勾配が発生した時に観察されるひびと相まって、時として重大な故障につながることがある。
【0005】
材料としての炭化ケイ素は、高温ろ過用途に望ましいが、これはこの材料がDPFセラミックハニカム基材の再生時の大きな熱勾配を効果的に低減させる著しく高い熱伝導率および高い熱容量を示すためである。また炭化ケイ素は化学的に安定かつ不活性であり、かつ結合時の機械的強度も高い。現行の商業的な炭化ケイ素基材は一般に、炭化ケイ素粒子および有機結合剤の混合物を押し出した後、結合剤を燃焼させて、炭化ケイ素粒子を多孔性の構造に焼結させる焼結工程により形成される。別の例では、金属ケイ素粒子はSiC粒子をまとめて結合するために使用されている。SiC粉末の押し出しの欠点は、摩耗性の高い粒子によって、高価な高圧押出機に使用されている押出型材および設備の摩耗が急速に進むことである。さらに、焼結工程には、アルゴンなどの不活性環境下で長時間(8〜12時間以上)にわたり、時には2000°Cを超える温度が必要となることがある。
【0006】
多孔性のセラミックハニカム基材はセラミック繊維からも作成でき、これについては所有者が共通する米国特許第6,946,013号、および所有者が共通する米国特許出願第10/833,298号(第US2005/0042151号として公開)および第11/322,544号(第US2006/0120937号として公開)で開示されており、これらのすべてを参照により本書に組み込む。繊維性セラミック構造の利点は、絡み合ったセラミック繊維により生成された開放性の細孔網に起因する有孔性、透過性、および比表面積の改善、結合した繊維構造の機械的な完全性、ならびにセラミック繊維基材の押出・硬化の本来的な低コスト性である。ところが、本技術の商業用途は、低コストのセラミック繊維の可用性によって制限されている。低コストの炭化ケイ素繊維は、簡単にあるいは商業的には入手できない。
【0007】
従って、炭化ケイ素ハニカム基材の熱特性および機械的特性を有し、代替的なセラミック材料および製作工程の性能および製作コスト面での利点を備えた、繊維性セラミックハニカム構造に対するニーズが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,946,013号
【特許文献2】US2005/0042151号の米国公開
【特許文献3】US2006/0120937号の米国公開
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、低コストの材料および工程を使用して製造でき、なおかつ有孔性および透過性の向上によって性能が改善される、改善された炭化ケイ素基材を提供する。従って、本発明の目的は、実質的に繊維状の炭化ケイ素構造を形成するための方法および工程、ならびに繊維状の炭化ケイ素微小構造を持つ器具もしくは成形された形状を対象とする。
【0010】
具体的には、本発明は、原材料である炭素、炭素繊維および炭素前駆物質(つまり有機)の繊維およびケイ素系添加物を使用した押出工程により、繊維状炭化ケイ素基材を成形するための押出成形可能な混合物を対象とする。炭素繊維およびケイ素系添加物の組み合わせを未焼成基材に押出成形し、酸化保護雰囲気または真空内で加熱すると、炭素とケイ素系添加物との間の反応として炭化ケイ素繊維が生成される。
【0011】
発明の特定の実施態様において、炭化ケイ素繊維は、炭素繊維およびケイ素系添加物の混合物からコロイド状シリカ、または非晶質シリカの形態で生成される。別の方法として、ケイ素系添加物は、金属ケイ素粒子、またはオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、ならびにシラザン、シランおよびケイ酸ナトリウムなどのケイ酸塩などのポリマーを含むその他のケイ素の形態で提供できる。
【0012】
本発明のまた別の一面では、有機繊維は、ケイ素系添加物と混合し、未焼成基材に押出成形される。その後に続く加熱工程中、有機繊維は炭素繊維に炭化され、また連続的に加熱することにより、炭化した有機繊維とびケイ素系添加物の反応から炭化ケイ素繊維が形成される。炭素、炭素繊維、または有機繊維の押出、およびその後に続く炭化ケイ素繊維の原位置での生成により、市販の炭化ケイ素繊維を探す必要性、および押出工程での炭化ケイ素材料の処理にかかる関連コストが回避される。
【0013】
本発明のこれらおよび他の特徴を以下の説明により明らかにするが、これらは添付の請求項で特に示す手段および組み合わせにより実施することができる。
【0014】
図は本明細書の一部を成すものであり、さまざまな形で具体化されうる本発明の典型的な実施態様を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明による繊維状炭化ケイ素基材の製造工程の概略フローチャートである。
【図2】図2は、本発明による繊維状炭化ケイ素基材の別の製造工程の概略フローチャートである。
【図3】図3は、本発明の方法で使用した材料の形態を表したものである。
【図4】図4は、本発明の方法での炭化ケイ素繊維の生成に使用した諸材料の関係を表したものである。
【図5】図5は、本発明の工程で作成される炭化ケイ素繊維を表したものである。
【図6】図6は、本発明の別の実施態様で使用した材料の形態を表したものである。
【図7】図7は、本発明の別の実施態様の方法での炭化ケイ素繊維の生成に使用した諸材料の関係を表したものである。
【図8】図8は、本発明の典型的な実施態様の走査電子顕微鏡画像の写真を提示したものである。
【図9】図9は、本発明の典型的な実施態様のX線回析(XRD)分析を説明したものである。
【図10】図10は、本発明による各種のハニカム基材を描写したものである。
【図11】図11は、本発明によるハニカム基材を含む高温ろ過装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[発明の詳細な説明]
本発明の例に関する詳細説明をここに示す。ただし、本発明はさまざまな形で例示される場合があることを理解すべきである。そのため、ここに開示する特定の詳細は制限的なものとして解釈されるべきではなく、むしろ実質的にすべての詳述したシステム、構造または様式において本発明を使用する方法を当業者に教示するための代表的な基本として捉えられるべきである。
【0017】
本発明は、炭化ケイ素繊維から成る押出成形した多孔性のセラミック基材および同左を生成する方法に関連する。炭化ケイ素は、熱導電性がある材料として、または機械的に耐久性の高い材料として材料を特徴付ける特性を持つ、化学的名称をSiCとするケイ素と炭素のセラミック複合物である。炭化ケイ素は一般に、珪砂と炭素粒子を1400〜2500°Cの温度で組み合わせることにより製造される。工業目的で製造される大多数の炭化ケイ素は、多孔性のハニカム基材に加えて、研削砥石や紙やすりなどの研磨材用に使用される。炭化ケイ素は、自然発生的ではなく、むしろ工業目的で合成的に製造される。多孔性基材を製造するために炭素ケイ素線維の混合物を混合し押出形成することは技術的には実現可能性がある一方、適切な炭化ケイ素繊維を獲得するにはコストが比較的高く、押出工程において材料加工することが本来的に困難なことから、商業的な適用性を損なう経済的問題が生じている。
【0018】
図1は、本発明の実施態様による繊維状炭化ケイ素基材を製造する方法のフローチャートを描写したものである。方法100では一般的に、炭素繊維110、(炭素質タイプの繊維)添加物120、および流体130を混合ステップ140で組み合わせ、次にこれをハニカム形状に押し出し150、ここで炭素繊維110および添加物120が反応して炭化ケイ素繊維160が形成される。炭化ケイ素繊維を原位置で形成することにより、適合性がある低コストの材料の混合・押出の商業的/経済的な利点が高性能なセラミック基材材料の低コストでの実施として実現される。
【0019】
炭素繊維110としては、炭素繊維で補強された複合体において一般的に使用されるタイプのポリアクリルニトリジル(PAN)繊維や石油ピッチ繊維、または高分子繊維、レイヨン、綿、木材または紙繊維などの多様な炭化有機繊維、またはポリマー樹脂フィラメントなどが考えられる。炭素繊維の直径としては直径約1〜30ミクロンが考えられるが、排気ろ過などの意図された用途向けでは望ましい繊維直径として約3〜10ミクロンを使用することができる。繊維の直径および長さは、その後に続く炭化ケイ素の生成においては実質的に変化しないため、炭素繊維の特性の選択は、最終製品の望ましい繊維構造に全般的に一致するはずである。PANまたはピッチ繊維、およびレイヨンまたは樹脂などの炭化した合成繊維は、製造時に繊維直径を制御できるため、より一貫性のある繊維直径を持つ。炭化した綿、木材、または紙繊維などの自然発生的な繊維はばらつきが大きく、繊維直径の制御があまりできない。炭素繊維110は一般的に、取り扱いに便利なように、また混合物での繊維の均一な分布を確保するために、多様な任意の長さに切断または摩砕される。押出後の最終状態で繊維が1〜1,000の間の望ましい直径に対する長さのアスペクト比を持つようにするために、その後に続く混合ステップ140中に繊維に対して与えるせん断力により、少なくとも繊維の一部が短縮することが予想されるが、アスペクト比は、1:100,000の範囲であることも予想されうる。
【0020】
添加物120には、金属ケイ素粒子などのケイ素系粒子またはコロイド状シリカなどの酸化ケイ素(シリカ)粒子、および結合剤の少なくとも2つの一次的な構成要素グループが含まれる。一部の場合において、ケイ素含有ポリマーまたは溶液などといった化学物質担体を使用してケイ素をこの方式に供給し、炭素と反応させて炭化ケイ素を生成することもできる。適切な温度および環境条件(真空または不活性環境)下で加熱したときに繊維内で炭素と反応・混合させて炭化ケイ素繊維を形成するために、ケイ素系粒子または化学物質または重合体溶液が必要である。混合物に可塑性を与えるため、および押出工程150における場合などのように押出成形した本体に十分な凝集力を与えてハニカム基材を形成するために、結合剤、可塑剤などが必要である。添加物120には、化学反応、有孔性、孔径、細孔構造、機械的特性および熱特性をさらに操作するために、可塑剤、分散剤、細孔形成剤、加工助剤、および強化材料を含めることもできる。後述するとおり、ケイ素系粒子および炭素繊維110からの炭化ケイ素の望ましい生成が抑制されないように、添加物の選択を行う必要がある。
【0021】
炭素繊維110および添加物120から炭化ケイ素繊維を形成するためには、ケイ素系粒子のケイ素含有量は、炭化ケイ素を形成するために凡その化学量論比で提供され、押出または形成された基材全体にわたり均一に分布する必要がある。ケイ素系粒子は、金属ケイ素粒子、煙霧状シリコン、ケイ素微粒子、シリカ系エアロゲル、ポリシリコン、シランポリマーもしくはシラザンポリマーの形態で、または非晶質、煙霧状、またはコロイド状の二酸化ケイ素(シリカ)などその他のケイ素系複合物からの材料でもよい。添加物120のケイ素系成分としてコロイド状シリカを使用することもできる。コロイド状シリカは、非晶質シリカ(SiO2)の個々の粒子の分散状態が安定したもので、ときにはシリカゾルとも呼ばれる。コロイド状シリカは、粒子サイズ5 nm〜5 μmが、水溶液または溶剤溶液中に分散した状態で、一般には約30〜50%の固体濃度で市販されている。小さな粒子サイズのコロイド状シリカは炭素繊維110と混合すると、ケイ素系成分の炭素繊維との一様な分布が可能となり、シリカは個々の炭素繊維の表面を効果的に被覆しうる。炭化ケイ素の化学量論比は、炭素3に対してシリカ1の比(3:1)に維持されるが、混合物に追加した材料の比は過剰炭素または過剰シリカでもよく、例えば混合物の炭素:シリカ比は約5:1〜2:1の範囲でもよい。
【0022】
別の方法として、添加物120のケイ素系組成は、処理中の完全かつ均一な分散にとって十分に細かい粒子サイズを持つ金属ケイ素粒子とすることもできる。ケイ素の純度は、炭化ケイ素の生成反応の発生においてさほど重要ではないが、金属性汚染物質によってその後の触媒層の適用やその効果が変化することもある。添加物120のケイ素系組成の粒子サイズは、市販品と同程度に細かいことが望ましい。低コストの材料は一般に30〜60 μmのサイズの粒子に関連したものであるが、1〜4 μmのサイズのケイ素粉末またはケイ素ナノ微粒子が望ましい。より大きい粒子も、炭化ケイ素の生成にあたり効果的に分布するために十分な細かさを持つ。炭化ケイ素の化学量論的モル比は、約1:1の炭素:ケイ素比に維持されるが、比は極端になり、結果的に過剰炭素または過剰ケイ素となることもある。過剰ケイ素は、工程中に(高温での揮発性により)失われうるケイ素または一酸化ケイ素の補充や、金属結合のための利用可能なケイ素の供給に有利である。さらに、形成された炭化ケイ素繊維上に存在する過剰ケイ素は、保護被覆として作用することができ、これは炭化ケイ素材料を化学的に劣化させうるカリウムなどの材料を含む触媒と併用する際に有利となりうる。
【0023】
添加物120には、混合物の可塑性および押出性を提供するために必要な結合剤成分が含まれる。結合剤は、最終的な炭化ケイ素繊維構造が形成ステップ160で完全に形成されるまで、混合物内での炭素繊維110および添加物120のケイ素系成分の相対位置を保持することで、基材の未焼成強度を提供する。下記に詳細に説明するとおり、結合剤は、ケイ素系粒子および炭素繊維110からの炭化ケイ素の望ましい生成を抑制することなく、その後に続く形成工程160中に混合物から選択的に除去できるように選択される必要がある。許容される結合剤には、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロースおよびその組み合わせが含まれる。一部の場合では、少量または些少な量の外部からの酸素供給において揮発性の種に変換することで熱分解しうる結合剤系を使用することができる。HPMCは、混合ステップ140中の粒子の分布を促進し、また押出ステップ150でのハニカム形状の押出のために混合物の十分な潤滑性および可塑性を提供する水溶性ポリマーである。非水溶液については、エチルセルロースなどの添加物が、混合物に可塑性を追加し、また適切な押出補助剤としての役割を果たす。
【0024】
添加物120には、任意に細孔形成剤、結合剤およびその他の加工助剤が含まれる。添加物120として含まれる場合、細孔形成剤は、混合および押出時に空間を占める非反応性材料であるが、熱分解によりあるいは熱劣化または揮発により最終的には除去される。例えば、マイクロワックス乳濁液またはフェノール樹脂粒子を添加物120として追加することができ、これはその後に続く形成工程160中に燃え尽き、その結果生じる構造の有孔性が増加する。さらに、結果的に生じる構造内部に残り隣接した繊維間の繊維間結合に貢献する添加物120として、結合剤を含めることもできる。結合剤は、アルミニウム、チタン、または過剰ケイ素の粒子を追加することにより金属結合を、またはアルミナ、ジルコニア、またはベントナイトなどの粘土などの酸化物ベースのセラミックまたは粘土の追加によりガラス/セラミック結合を形成することができる。結合剤はケイ素系添加物と同様に、中空の球またはエアロゲルなど低密度の形態で提供されるときには細孔形成剤として作用しうる。
【0025】
流体130は、押出に適切な望ましいレオロジーを、またはステップ150でのその他の望ましい形状生成を維持するために、必要に応じて追加される。各種の溶剤を利用することもできるが、コロイド状シリカ、シランまたはシラザン試薬液などの添加物に関連した液体とともに、一般には水が使用される。混合工程140中に、押出ステップ150について望ましいレオロジーと比較した混合物のレオロジーを評価するために、レオロジー的(流動学的)測定を行うことができる。
【0026】
炭素繊維110、添加物120、および流体130はステップ140で混合して、材料を押出、またはその他の成形加工のための望ましいレオロジーを持つ均質な塊となるように均一に分布させる。この混合には、乾式混合、湿式混合、せん断混合、および混錬などが含まれ、これは繊維、粒子および流体を分散させ、分布または分解させるために必要なせん断力を与えつつ材料を均質な塊へと均一に分布させる上で必要である。混合、せん断、および混錬の量、またこうした混合工程の持続時間は、ピストンまたはスクリュー押出機を使用した押出に適した望ましいレオロジーを持つ、均一かつ一貫性のある材料の分布を混合物内で得るための、繊維110、添加物120、および流体の選択と、ミキサータイプ130の選択に依存する。
【0027】
セラミック材料の押出は、一般的にハニカムセラミック基材の製造に最も費用効率的な方法であると考えられている。鋳造、射出成形、ブローチ削り他などハニカム基材を形成するその他の方法が当業者に知られており、これらは添付の請求項の範囲に含まれるものとして意図される。この説明の目的として、混合物をハニカム基材形状に成形するための方法を望ましい押出工程として説明する。
【0028】
本発明による炭素繊維110、添加物120、および流体130の混合物の押出工程は、粉末状セラミック材料の押出と類似している。HPMCなどの適切な可塑剤を含み、また適切なレオロジーを持つ混合物は、圧力がかけられてハニカム型材を通り、一般的に連続的なハニカムブロックが形成され、これが望ましい長さに切断される。ハニカム型材により、ハニカム経路の寸法および幾何学的形状が決定され、押出型材の設計に応じて長方形、三角形、六角形、またはその他の多角形の経路となりうる。押出ステップ150用に使用される押出システムには、ピストン押出機またはねじタイプの押出機など、粉末状セラミック材料の押出に一般に使用されているタイプのものを使用できる。当業者には、混合ステップ140の一定の側面は、押出ステップ150中にスクリュー押出機で実施できることが理解される。押出ステップ150により未焼成基材が製造されるが、これはその後に続く形成ステップ160時にその形状および繊維の配置を保持するために十分な未焼成強度を持つ。
【0029】
炭素繊維110、添加物120および流体130の押出成形可能な混合物を押し出すことで、ハニカム基材に絡み合った繊維のユニークな微小構造が生成される。型材を強制的に通過させる際に材料に作用するせん断力によって、結果的に繊維がハニカム経路の壁表面に沿った押出方向を向く傾向になる。経路の壁内で、押し出し中に材料に与えられえるせん断力によって繊維は一般的に押出方向に配列されるが、この整列度は、壁表面での繊維の整列度よりも低いことがある。結果的に生じる微小構造では、経路壁の表面に整列した繊維間の間隔が比較的小さい均一な分布となり、経路壁内の繊維間の間隔はこれよりも広い範囲となる。その後に続く形成ステップ160の後、結合剤および流体が除去され、基材全体にわたり相対的な繊維間隔が維持されると、結果的に生じる構造は多孔性となる。押し出し中の繊維の整列の結果としての基材の有孔性は、経路壁での小さな細孔の均一な分布を示し、繊維間の間隔から結果的に生じる開放細孔網内での細孔の分布はより広くなる。さらに、経路壁の表面は、連鎖的で相互に繋がった繊維の三次元構造を有する経路壁の内部領域で顕著なように、連鎖的で相互に繋がった繊維の二次元のマットとして見ることができる一方、経路壁の表面は完全に平面であるわけではない。繊維の終端は、表面からある角度で突き出している傾向にある。突出しは脱水ろ過用の核形成、凝固または捕捉場所の役目を果たすため、基材が粒子状物質減少装置などのフィルタとして使用されるときにこれらの突出しは特に有用である。経路壁の表面全体でのこれらの場所の分布によって、微粒子の一様な蓄積が確保され、これが捕捉効率の改善およびフィルタの再生の調節の役割を果たす。
【0030】
繊維の配置、細孔の寸法、細孔の分布、核形成、凝固、および捕捉場所の分布、ならびに壁表面と内部領域との間の細孔の特性は、押出工程のパラメーターを変化させることで調整できる。例えば、混合物のレオロジー、繊維の直径およびアスペクト比の分布、添加物の特性、押出型材の設計、および押し出しの圧力や速度は、結果的に生じる基材の構造の望ましい特性を得るために変化させることができる。
【0031】
形成ステップ160では、未焼成基材内でケイ素系添加物120と混合された炭素繊維110が炭化ケイ素繊維に効果的に変換され、押し出しにより成形されたハニカム構造は維持される。形成ステップ160は、乾燥、結合剤の燃え尽き、およびSiCの反応-生成の3段階の順で実施できる。第一の段階では、強制的な対流の有無にかかわらず、比較的低温の熱を使用して水分を徐々に除去して流体を除去することで、未焼成基材を乾燥させる。真空凍結乾燥、溶媒抽出、または電磁的/高周波(RF)乾燥方法など、別の乾燥方法を実施することもできる。RFを使用した未焼成基材の乾燥は、セラミック繊維の導電性のために課題がある可能性があり、そのためRF出力の変調を調節する必要がある。収縮によるひび割れの乾燥が形成されないように、基材からの流体の除去は急激過ぎてはならない。水溶性系のシステムでは一般に、未焼成基材は90〜150°Cの温度に約1時間さらして乾燥させることができるが、実際の乾燥時間は基材のサイズおよび形状によって変化し、大きめの部品では、完全乾燥するまでに長い時間かかることがよくある。
【0032】
図3は、炭素繊維110、およびケイ素系成分410として示した添加物(分布した球で表示)、および結合剤成分420(斜交平行模様を施した部分として表示)の混合物を図で表現したものである。この段階では、炭素繊維、およびケイ素系添加物は、添加物120の結合剤成分420の未焼成強度により定位置に保持される。
【0033】
未焼成基材が乾燥すると、または実質的に流体130がなくなると、形成ステップ160の次の段階に進み、添加物120の結合剤成分が焼き尽くされる。この第二の段階では、添加物120の炭素繊維およびケイ素系成分の組成に影響を与えることなく、基材は不活性環境で結合剤が効果的に分解される温度まで加熱される。例えば、添加物120の結合剤成分にメチルセルロースまたはHPMCを使用する場合、この結合剤は約300°Cの温度で分解し、その温度で約1時間保つと効果的に焼き尽くされる。細孔形成剤、可塑剤、および分散剤などその他の添加物は、完全に分解するように、あるいはその後に続くSiC反応で使用できる制御された残留炭素層を残すように選択すべきであることに注意することが重要である。結合剤の分解、また粘土などの添加物から結晶性の水を除去する際は、800°C未満の温度となるよう、結合剤および添加物を選択すべきである。形成ステップ160のこの段階で結果的に生じる基材の構造を一般的に図4に示すが、ここで炭素繊維110は、添加物120のケイ素系成分410の小さな粒子の均一な分布、またはその均一な被覆で覆われている。
【0034】
形成工程160の最終段階では、残りの構造、つまり添加物の炭素繊維およびケイ素系成分を、炭素繊維から炭化ケイ素を形成するのに十分な環境内で加熱することが必要となる。形成ステップ160のこの最終段階での化学反応は、一般的に次式で描写される。
C + Si → SiC
ただし、ケイ素系成分がシリカである場合は、反応は次式で描写することができる。
3C + SiO2 → SiC +2CO2
この反応では、安定したSiCが形成される前に中間体である移行的な化合物が形成される場合があることを理解すべきである。
【0035】
上記の反応は構造が不活性環境下で、約1400〜1800°Cの温度まで約2〜4時間以上加熱されたときに発生する。金属ケイ素が添加物120のケイ素系成分として含まれるとき、ケイ素粒子は、上記の1414°Cで融解し、これが次に炭素繊維を濡らし、覆い、炭化ケイ素に変換する。この濡れは真空雰囲気状態で最適化されるが、この状態下ではケイ素金属が自然に元素状態の炭素を濡らし、これには繊維自体、または結合剤添加物の焼き尽くしから残った残留炭素層の濡れも含まれる。
【0036】
シリカが添加物120のケイ素系成分として含まれているとき、拡散依存性で進行する固体状態(固体間)反応がある。
3C + SiO2 → SiC +2CO2
【0037】
二次的な反応がある場合があり、SiO2がまずSiOに蒸発し、次に炭素と反応して炭化ケイ素を形成し、結果的に次の気体−固体反応が起こる。
2C+ 2SiO → 2SiC + O2
【0038】
不活性環境は、炭素が二酸化炭素に酸化されることを阻止するべく酸素の不在を確保するために必要である。結果的に生じる構造を一般的に図5に示すが、ここで炭化ケイ素繊維430は、絡み合い重複した関係で表示され、開放細孔網440を形成している。基材内に形成される結果的に生じる微小構造は、本来的に炭素または有機繊維から構成される絡み合った繊維構造に基づくところが大きく、また形成ステップ160での炭化ケイ素の生成は、繊維の相対的位置を実質的には変えないことが理解できる。
【0039】
形成ステップ160は、従来的なバッチ方式または連続式の加熱炉または窯で実現できる。不活性環境は、加熱炉または窯を窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、形成ガスおよびその混合物、または何らかの不活性ガスまたはガス状混合物でパージすることで維持できる。反応性の種の酸化および揮発につながりうる有害な反応の発生を阻止するために、酸素の分圧がわずかからゼロであることが重要である。別の方法として、形成ステップ160は、真空環境で実施でき、これには一般に200.0トル以下の真空が要求される。形成ステップ160は、複数のバッチ式または連続式の窯による連続的な進行により実施でき、あるいは連続的な加熱ステップ、つまり乾燥、結合剤の燃え尽きおよび反応生成により連続した温度環境を手動もしくは自動で維持できる単一施設で実施できる。
【0040】
ここで図2を参照するが、本発明の方法の別の実施態様を表す。ここで有機繊維210は、炭化ケイ素繊維を形成するためのベース材料として使用されている。有機繊維210を添加物120および流体130と混ぜて、これを混合ステップ150で混合する。混合物をステップ150で押し出して未焼成ハニカム基材を形成し、またステップ220で有機繊維をまず炭化した後、炭化ケイ素繊維に変換する。この実施態様において、有機繊維210は、混合および押出の工程全体での処理に十分な強度を持つ可能性が高く、また図1に関連して説明したとおり、最初に炭素繊維110に炭化されたのと同じ繊維の一部よりは強度がより高い可能性がある。
【0041】
この別の実施態様で、有機繊維210としては、レイヨン、綿、木材 または紙繊維、またはポリマー樹脂フィラメントが考えられる。繊維直径は直径約1〜30ミクロンとすることができるが、排気ろ過などの意図される用途では、望ましい繊維直径の範囲は約3〜10ミクロンである。有機繊維210の直径は、形成ステップ220で炭化したときに70%程度ともなりうる収縮を考慮すべきである。綿、木材または紙などの自然発生的な繊維は、レイヨンまたは樹脂など合成的に生成された繊維に比べて、繊維直径に著しく大きな変動がみられる。有機繊維は、繊維が押出後の最終状態で1〜1,000の間の望ましい長さ対直径のアスペクト比を持つよう任意の多様な長さに切断または摩砕できるが、アスペクト比は1:100,000の範囲であることが期待できる。
【0042】
添加物120には、金属ケイ素粒子などのケイ素系粒子またはコロイド状シリカなどの酸化ケイ素(シリカ)粒子、および結合剤の少なくとも2つの一次的な構成要素グループが含まれる。ケイ素系粒子は、炭化した有機繊維内で炭素と反応し混合し、炭化ケイ素繊維を形成するために必要である。結合剤は、押出工程150にあるようなハニカム基材を形成するべく、混合物に可塑性を与えるために必要である。この添加剤120には、可塑剤、分散剤、細孔形成剤、処理補助剤、強化材料も含まれる場合がある。添加物は、有機繊維210の炭化が抑制されないよう、またケイ素系粒子および炭化した有機繊維210からの炭化ケイ素の望ましい生成が抑制されないように選択する必要がある。過剰炭素を提供し、その後に続く形成ステップ220で金属ケイ素の濡れを助けるために、細孔形成剤として炭素粒子を添加物120として含めることができる。
【0043】
有機繊維210および添加物120から炭化ケイ素繊維を形成するためには、ケイ素系粒子のケイ素含有量は、炭化ケイ素を形成するためのおおよその化学量論比で提供される必要があり、また押し出されたまたは形成された基材全体に均一に分布されている必要がある。ケイ素系粒子としては、金属ケイ素粒子、煙霧状シリコン、ケイ素微粒子、シリカ系エアロゲル、ポリシリコン、シラートまたはシラザンポリマーの形態で、あるいは非晶質、煙霧状、またはコロイド状 ケイ素二酸化ケイ素(シリカ)などその他のケイ素系複合物から提供される材料が考えられる。添加物120のケイ素系成分としてコロイド状シリカを使用することもできる。小さな粒子サイズのコロイド状シリカは炭素繊維210と混合すると、ケイ素系成分の炭素繊維に対する一様な分布が可能となり、シリカは個々の繊維の表面を効果的に被覆しうる。炭化ケイ素の化学量論比は、有機繊維中の炭素含有量3に対してシリカ1の比(3:1)に維持されるが、この比(炭素:シリカ)は約5:1〜2:1の範囲でもよい。
【0044】
別の方法として、添加物120のケイ素系成分は、その後に続く工程での完全かつ均一な分散にとって十分に細かい粒子サイズを持つ金属ケイ素粒子でもよい。ケイ素の純度は、炭化ケイ素の生成反応の発生においてさほど重要ではないが、金属性汚染物質によってその後の触媒層の適用やその効果が変化することもある。添加物120のケイ素系組成の粒子サイズは、市販品と同程度に細かいことが望ましい。低コストの材料は一般に30〜60μmのサイズの粒子に関連したものであるが、1〜4μmのサイズのケイ素粉末またはケイ素ナノ微粒子が望ましい。より大きい粒子も、炭化ケイ素の生成にあたり効果的に分布するために十分な細かさを持つ。炭化ケイ素の化学量論的モル比は約1:1の炭素:ケイ素比に維持されるが、混合物での比が極端になり、結果的に過剰炭素または過剰ケイ素となる可能性もある。過剰ケイ素は、その後の工程中に、高温での揮発性により失われうるケイ素または一酸化ケイ素の補充や、繊維間での金属結合の形成のために利用可能なケイ素の供給に有利である。さらに、形成された炭化ケイ素繊維上に存在する過剰ケイ素は保護被覆として作用することができ、これは炭化ケイ素材料を化学的に劣化させうるカリウムなどの材料を含む触媒と併用する際に有利となりうる。過剰炭素は、炭化または熱分解、あるいはその後に続く焼成中に酸素の存在による酸化で失われた材料の補充に有利である。
【0045】
添加物120には、押出などの製作技術による形成を助ける混合物の可塑性を提供するために必要な結合剤成分が含まれる。また結合剤は、形成された時点および乾燥した後、最終的な炭化ケイ素繊維構造が形成ステップ220で完全に形成されるまで、混合物内での有機繊維210および添加物120のケイ素系成分の相対位置を保持することで、基材の未焼成強度を提供する。下記に詳細に説明するとおり、結合剤は、有機繊維210の炭化を抑制することなく、またケイ素系粒子および炭化した有機繊維210からの炭化ケイ素の望ましい生成を抑制することなく、その後に続く形成工程220中に混合物から選択的に除去できるように選択される必要がある。許容される結合剤には、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロースおよびその組み合わせが含まれる。HPMCは、混合ステップ140中の粒子の分布を促進し、また押出ステップ150でのハニカム形状の押出のために混合物の十分な潤滑性および可塑性を提供する水溶性ポリマーである。エチルセルロースは、非水系での結合剤として使用することもできる。
【0046】
添加物120には、任意に細孔形成剤および結合剤を含めることができる。添加物120として含まれる時、細孔形成剤は、混合および押出時に空間を占める非反応性材料であるが、熱分解によりあるいは熱劣化または揮発により除去される。例えば、マイクロワックス乳濁液またはフェノール樹脂粒子を添加物120として追加することができ、これはその後に続く形成工程220中に燃え尽き、その結果生じる構造の有孔性が増加する。さらに、結果的に生じる構造内部に残り隣接した繊維間の繊維間結合に貢献する添加物120として、結合剤を含めることもできる。結合剤は、アルミニウム、チタン、または過剰ケイ素の粒子を追加することにより金属結合を、またはアルミナ、ジルコニア、ガラスフリットまたはベントナイトなどの粘土などの酸化物ベースのセラミックまたは粘土の追加によりガラス/セラミック結合を形成することができる。
【0047】
流体130は、押出に適切な望ましいレオロジーを、またはステップ150でのその他の望ましい形状生成を維持するために、必要に応じて追加される。各種の溶剤を利用することもできるが、コロイド状シリカ、シランまたはシラザン試薬液などの添加物の液体成分とともに、一般には水が使用される。混合工程140中に、押出ステップ150について望ましいレオロジーと比較した混合物のレオロジーを評価するために、レオロジー的(流動学的)測定を行うことができる。
【0048】
有機繊維210、添加物120、および流体130は、ステップ140で混合して、材料を押出、またはその他の成形加工のための望ましいレオロジーを持つ均質な塊となるように均一に分布させる。この混合には、乾式混合、湿式混合、せん断混合、および混錬などが含まれ、これは繊維、粒子および流体を分散させ、分布または分解させるために必要なせん断力を与えつつ材料を均質な塊に均一に分布させるために必要である。混合、せん断、および混錬の量、またこうした混合工程の持続時間は、望ましいレオロジーを持つ、均一で一貫性のある材料の分布を混合物内で得るために、繊維210、添加物120、流体130およびミキサータイプの選択に依存する。
【0049】
本発明による有機繊維210、添加物120、および流体130の混合物の押出工程は、上記の炭化繊維系の材料の押出と類似している。混合物に圧力がかかって強制的にハニカム型材を通過し、一般的に連続的なハニカムブロックが形成され、これが望ましい長さに切断される。ハニカム型材により、ハニカム経路の寸法および幾何学的形状が決定され、長方形、三角形、六角形、またはその他の多角形の経路となりうる。上述のとおり、押出ステップ150用に使用される押出システムは、ピストン押出機またはねじ押出機など、粉末状セラミック材料の押出に一般に使用されているタイプのものを使用できる。押出ステップ150により未焼成基材が製造されるが、これはその後に続く形成ステップ220中にその形状および繊維の配置を保持するために十分な未焼成強度を持つ。
【0050】
形成ステップ220では、未焼成基材内でケイ素系添加物と混合された有機繊維210が炭化ケイ素繊維に効果的に変換され、押し出しにより成形されたハニカム構造が維持される。形成ステップ220は、炭素繊維または炭化した有機繊維がまず混合される点で、上述の形成ステップ160と異なる。ここで、形成ステップ220では、有機繊維を炭化した形態に変換する一方、有機繊維の位置および寸法の特性(直径、長さなど)が維持される必要がある。図2の形成ステップ220は、別の面では図1に関連して説明した形成ステップ160と類似している。
【0051】
形成ステップ220は、乾燥、結合剤の燃え尽き、炭化、およびSiCの反応-生成の4段階の順に実施できる。第一の段階では、強制的な対流の有無にかかわらず、比較的低温の熱を使用して流体を徐々に除去して流体をなくすことで、未焼成基材を乾燥させる。真空凍結乾燥、溶媒抽出、または電磁的/高周波(RF)乾燥方法など、別の乾燥方法を実施することもできる。未焼成基材の繊維性の成分は、基材が乾燥している時点では導電性炭素ではないため、RFの使用はこの別の実施態様ではある程度適用性が高い。収縮によるひび割れの乾燥が形成されないように、基材からの流体の除去は急激過ぎてはならない。未焼成基材は一般に、90〜150°Cの温度に約1時間さらして乾燥させることができるが、実際の乾燥時間は基材のサイズおよび形状によって変化する。
【0052】
図6は、有機繊維210、およびケイ素系成分410として示した添加物(分布した球で表示)、および結合剤成分420(斜交平行模様を施した部分として表示)の混合物を図で表現したものである。この段階では、有機繊維、およびケイ素系添加物は、添加物120の結合剤成分420の未焼成強度により定位置に保持される。
【0053】
未焼成基材が乾燥すると、または実質的に流体130がなくなると、形成ステップ220の次の段階に進み、添加物120の結合剤成分が焼き尽くされる。この第二の段階では、添加物120の有機繊維およびケイ素系成分の組成に影響を与えることなく、基材は不活性環境で結合剤が効果的に分解される温度まで加熱される。例えば、添加物120の結合剤成分にメチルセルロースまたはHPMCを使用する場合、この結合剤は約300°Cの温度で分解し、その温度で約1時間保つと効果的に焼き尽くされる。細孔形成剤、可塑剤、および分散剤などその他の添加物は少なくとも600°C未満の温度で焼き尽くすことができるように、また処理環境が実質的に有機繊維またはケイ素系添加物の組成に影響せず、またその後に続く有機繊維の炭化に実質的に影響しないように選択する必要があると注意することが重要である。形成ステップ220のこの段階で結果的に生じる基材の構造については、一般的に図7に示すが、ここで有機繊維210は、添加物120のケイ素系成分410の小さな粒子の均一な分布で被覆される。
【0054】
形成工程220の次の段階は、有機繊維210の炭化である。有機繊維210は、有機材料の熱分解によって元素状態の炭素に変換されるが、繊維構造は維持される。形成工程220の炭化部分は、例えば、有機繊維210を不活性環境下で約1,000°Cで約4〜5時間加熱することで実施できる。不活性環境は、炭素がその形成後に酸化しないよう、また残りの添加物が酸化しないようにするために、このステップにとって必要である。この炭化段階の温度は、有機材料を炭化するために十分高い必要があるが、残りの添加物に影響するほど高くなってはならない(つまり、温度はケイ素系添加物410のガラス転移温度または融点より低い必要がある)。形成ステップ220のこの段階で結果的に生じる基材の構造については、一般的に図4に示すが、ここでは、この時点で炭素繊維110となった炭化した有機繊維は、添加物120のケイ素系成分410の小さな粒子の均一な分布または被覆で覆われる。
【0055】
形成工程220の最終段階では、残りの構造、つまり添加物の炭化した有機繊維およびケイ素系成分を、炭化した有機繊維から炭化ケイ素を形成するのに十分な環境内で加熱することが必要となる。形成ステップ220のこの最終段階での化学反応は、一般的に次式で描写される。
C + Si → SiC
ただし、ケイ素系成分がシリカである場合は、反応は次式で描写することができる。
C + SiO2 → SiC + O2
この反応は構造が不活性環境下で、少なくとも1400°C以上の温度で長期間、例えば4時間加熱したときに発生する。不活性環境は、炭素が二酸化炭素に酸化されることを阻止するべく、酸素の不在を確保するために必要である。結果的に生じる構造を一般的に図5に示すが、ここで炭化ケイ素繊維430は、絡み合い重複した関係で表示され、開放細孔網440を形成している。
【0056】
形成ステップ220は、従来的なバッチ方式または連続式の加熱炉または窯で実現できる。不活性環境は、加熱炉または窯を窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、およびその混合物、または何らかの不活性ガスまたはガス状混合物でパージすることで維持できる。別の方法として、形成ステップ220は真空環境で実施でき、これには一般に200トル以下の真空が要求される。形成ステップ220は、複数のバッチ式または連続式の窯による連続的な進行により実施でき、あるいは連続的な加熱ステップ、つまり乾燥、結合剤の燃え尽きおよび反応生成により、連続した温度環境を手動もしくは自動で維持できる単一施設で実施できる。
【0057】
図8は、本発明の結果的に生じる構造の走査電子顕微鏡画像を示すものである。炭素繊維およびケイ素系添加物の押し出した混合物の反応-生成から形成された炭化ケイ素繊維430を示す。繊維は一般的に、押出工程の結果として一方向に向き、開放細孔網を形成する重複し絡み合った関係が形成されている。図9は、結果的に生じる構造のX線回析(XRD)分析を描写し、特に炭素繊維が炭化ケイ素に形成される様子を示している。結果的に生じる構造の有孔性、透過性、および強度は、粒子状物質減少装置としての排気ろ過など、高温ろ過の用途に特に適用性が高いことが分かっている。
【0058】
添加物120にはまた、セラミックまたはガラス結合、または金属結合の形成による場合など繊維間の結合を形成することにより、最終的基材の強度を改善するための結合剤を含めることもできる。セラミックまたはガラス結合は、アルミナ、ジルコニア、またはガラスフリット、ならびにベントナイトなどの粘土など、酸化物ベースのセラミックを添加することで形成しうる。追加量のシリカを別の方法として、炭化ケイ素の形成に必要な化学量論量を超えて追加することができ、ここで過剰なシリカは繊維間、および繊維性の開放細孔網の交差する節にガラス結合を形成しうる。ケイ素の炭化ケイ素形成への反応を助長する一方で、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、およびシラザン、シランおよびケイ酸ナトリウムなどのケイ酸塩などのその他のケイ素を含む材料をセラミックまたはガラス結合の形成を助長するために追加することができる。金属結合は、チタンまたは過剰ケイ素金属の添加により形成できるが、これは炭化ケイ素を形成するために必要な化学量論量を超えて添加でき、ここでチタンまたはケイ素金属は、融解し、繊維を濡らし、および交差する繊維の節に流れる。添加物120として含まれる場合、結合剤は、形成ステップ160または形成ステップ220で実施される焼結工程中に、基材内にセラミック、ガラス、または金属結合を形成する。添加物120としてセラミック前駆ポリマーを含めることで、ポリマー結合を形成させることもできる。セラミック前駆ポリマーは、一般に熱分解によりセラミック材料に変換される液体ポリマー先駆物質である。市販のセラミック前駆ポリマーは、炭化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、およびオキシ窒化ケイ素に変換される。例えば、Starfire Systems社(ニューヨーク州マルタ)から入手できるSTARFIRE SMP-10は、炭化ケイ素の単一成分液体前駆物質である。
【0059】
図10は、本発明の方法により生成される典型的なハニカム基材510を描写したものである。基材510には、本書で説明した繊維状炭化ケイ素構造で構成される経路壁でそれぞれ分離された一連の経路580がある。基材510は、貼り合わせて1つの列にしてセグメント化した基材を形成しうる円筒または長方形モジュールなど、数多くの形状に製作できる。
【0060】
図11は、本発明の方法で作成したハニカムフィルタ510を持つ高温ろ過装置500の断面図を描写したものである。ろ過装置500の形態は通常、ハウジング520とフィルタ510の間の密閉を形成するために膨張マット530付のハニカムフィルタ510をサポートするハウジング520である。フィルタ510は、入口経路ブロック560および出口経路ブロック570を持つ交互の経路を選択的に塞ぎ、それぞれ複数の入口経路540および出口経路550を形成することにより、壁流形態に構成される。この形態では、本発明による製造方法で結果的に生じる炭化ケイ素繊維間の空間により生成される開放細孔網は、入口経路と隣接した出口経路との間で多孔性の壁内を流れるために必要とされる十分な有孔性および透過性が提供される。このようにして、粒子状物質が入口経路の壁表面に蓄積でき、こうして、ろ過装置500を通過するろ液流から除去される。結果的に生じる繊維状炭化ケイ素基材510は、蓄積した煤の酸化を促進し、排出ガスをよる有害性の低い成分へと変換を促進させるために、触媒で被覆することもできる。
【0061】
触媒作用による排気流に含まれる燃焼副産物を化学的に変化させるために、任意の数の触媒およびウォッシュコートをハニカムフィルタ510内に蒸着させることができる。こうした触媒には、白金、パラジウム(酸化パラジウムなど)、ロジウム、酸化物を含めたその誘導体、およびその混合物などが含まれるがこれらに限定はされない。さらに、触媒は貴金属、貴金属の組み合わせ、または酸化触媒のみには制限されない。その他の適切な触媒およびウォッシュコートには、クロム、ニッケル、レニウム、ルテニウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、タングステン、バリウム、イットリウム、ネオジム、ランタン、ガドリニウム、プラセオジム、および金、その誘導体、およびその混合物が含まれる。その他の適切な触媒には、パラジウム、アルミニウム、タングステン、セリウム、ジルコニウム、および希土類金属の二元系酸化物が含まれる。その他の適切な触媒には、バナジウムおよびその誘導体(V2O5など)、またはバナジン酸銀またはバナジン酸銅(特に硫黄が燃料または潤滑剤内に存在する時)などが含まれる。またさらに、異なる部分またはゾーンに適用される触媒の組み合わせにより構成を行い、基材510は複数機能の触媒を提供することができる。例えば、基材510は、入口経路の壁に適用される煤を酸化する触媒、窒素酸化物吸着器、または経路壁の内部繊維構造に適用される選択的な触媒還元触媒とともに、微粒子フィルタとして使用できる。類似した構成を、窒素酸化物トラップまたは4方向触媒コンバータを提供するために適用できる。
【実施例】
【0062】
本発明の原理をさらに説明するために、ここに本発明に基づき形成した押出炭化ケイ素繊維構造の一定の例を記載する。ただし、例は説明目的のみで提供するものであり、また発明がそれに限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱することなく、本発明にさまざまな改良や変更を行いうることが理解されるべきである。
【0063】
第一の例では、材料バッチ混合物を、混合物の全重量のパーセント値で表示される相対量で、下記の材料と混合させた。
短炭素繊維 17.9%
コロイド状シリカ(50%水溶液) 59.7%
hpmc 10.0%
脱イオン水 12.4%
【0064】
この例において、炭素繊維およびコロイド状シリカから炭化ケイ素を生成するためのおおよその化学量論的モル比が得られる。次に、混合物を0.030インチの壁厚みを持つ100 cpsi型材を通過させて押し出し、直径1インチおよび長さ約1インチのハニカム構造を得た。次に、未焼成ハニカム基材を200°Cに加熱した窒素置換乾燥機内に約4時間入れて乾燥させた後、温度を約325°Cに上昇させて約2時間加熱し、HPMC結合剤を完全に焼き尽くした。炭素で内張りした真空乾燥機内で、1550°Cで約2時間加熱すると、炭化ケイ素繊維構造が形成された。
【0065】
第二の例では、材料バッチ混合物を、混合物の全重量のパーセント値で表示される相対量で、下記の材料と混合させた。
短炭素繊維 16.7%
コロイド状シリカ(50%水溶液) 32.4%
hpmc 9.3%
脱イオン水 41.6%
【0066】
この例において、隣接した繊維間でのガラス/セラミック結合の形成に利用できる過剰シリカを用いて、炭素繊維およびコロイド状シリカから炭化ケイ素を生成するために、おおよその化学量論的モル比が得られる。次に、混合物を0.030インチの壁厚みを持つ100 cpsi型材を通過させて押し出し、直径1インチおよび長さ約1インチのハニカム構造を得た。次に、未焼成ハニカム基材を200°Cに加熱した窒素置換乾燥機内に約4時間入れて乾燥させた後、温度を約325°Cに上昇させて約2時間加熱し、HPMC結合剤を完全に焼き尽くした。炭素で内張りした真空乾燥機内で、1550°Cで約2時間加熱すると、炭化ケイ素繊維構造が形成された。
【0067】
第三の例では、材料バッチ混合物を、混合物の全重量のパーセント値で表示される相対量で、下記の材料と混合させた。
短炭素繊維 17.6%
金属ケイ素粉末(約45 μm) 41.2%
hpmc 11.8%
脱イオン水 29.4%
【0068】
この例において、炭素繊維および金属ケイ素から炭化ケイ素を生成するためのおおよその化学量論的モル比が得られる。次に、混合物を0.030インチの壁厚みを持つ100 cpsi型材を通過させて押し出し、直径1インチおよび長さ約1インチのハニカム構造を得た。次に、未焼成ハニカム基材を200°Cに加熱した窒素置換乾燥機内に約4時間入れて乾燥させた後、温度を約325°Cに上昇させて約2時間加熱し、HPMC結合剤を完全に焼き尽くした。炭素で内張りした真空乾燥機内で、1550°Cで約2時間加熱すると、炭化ケイ素繊維構造が形成された。
【0069】
第四の例では、材料バッチ混合物を、混合物の全重量のパーセント値で表示される相対量で、下記の材料と混合させた。
短炭素繊維 16.3%
金属ケイ素粉末(約45 μm) 45.7%
hpmc 10.9%
脱イオン水 27.2%
【0070】
この例において、隣接した繊維間での金属結合の形成に利用できる過剰金属ケイ素を用いて、炭素繊維および金属ケイ素から炭化ケイ素を生成するために、おおよその化学量論的モル比を維持した。次に、混合物を0.030インチの壁厚みを持つ100 cpsi型材を通過させて押し出し、直径1インチおよび長さ約1インチのハニカム構造を得た。次に、未焼成ハニカム基材を200°Cに加熱した窒素置換乾燥機内に約4時間入れて乾燥させた後、温度を約325°Cに上昇させて約2時間加熱し、HPMC結合剤を完全に焼き尽くした。炭素で内張りした真空乾燥機内で、1550°Cで約2時間加熱すると、炭化ケイ素繊維構造が形成された。
【0071】
第五の例では、材料バッチ混合物を、混合物の全重量のパーセント値で表示される相対量で、下記の材料と混合させた。
短炭素繊維 16.2%
金属ケイ素粉末(約45 μm) 37.8%
ベントナイト 2.7%
hpmc 10.8%
脱イオン水 32.4%
【0072】
この例において、炭素繊維および金属ケイ素から炭化ケイ素を生成するために、おおよその化学量論的モル比を得たが、隣接した繊維間での粘土/セラミック結合を形成させるために、粘土材料、ベントナイトを追加した。次に、混合物を0.030インチの壁厚みを持つ100 cpsi型材を通過させて押し出し、直径1インチおよび長さ約1インチのハニカム構造を得た。次に、未焼成ハニカム基材を200°Cに加熱した窒素置換乾燥機内に約4時間入れて乾燥させた後、温度を約325°Cに上昇させて約2時間加熱し、HPMC結合剤を完全に焼き尽くした。炭素で内張りした真空乾燥機内で、1550°Cで約2時間加熱すると、炭化ケイ素繊維構造が形成された。
【0073】
第六の例では、材料バッチ混合物を、混合物の全重量のパーセント値で表示される相対量で、下記の材料と混合させた。
短炭素繊維 14.7%
金属ケイ素粉末(約45 μm) 34.3%
金属チタン粉末(約45 μm) 11.8%
hpmc 9.8%
脱イオン水 29.4%
【0074】
この例において、炭素繊維および金属ケイ素から炭化ケイ素を生成するために、おおよその化学量論的モル比を得たが、隣接した繊維間での金属結合を形成させるために金属チタン粉末を追加した。次に、混合物を0.030インチの壁厚みを持つ100 cpsi型材を通過させて押し出し、直径1インチおよび長さ約1インチのハニカム構造を得た。次に、未焼成ハニカム基材を200°Cに加熱した窒素置換乾燥機内に約4時間入れて乾燥させた後、温度を約325°Cに上昇させて約2時間加熱し、HPMC結合剤を完全に焼き尽くした。炭素で内張りした真空乾燥機内で、1550°Cで約2時間加熱すると、炭化ケイ素繊維構造が形成された。
【0075】
第七の例では、材料バッチ混合物を、混合物の全重量のパーセント値で表示される相対量で、下記の材料と混合させた。
短炭素繊維 15.9%
金属ケイ素粉末(約45 μm) 37.1%
金属アルミニウム粉末(約45 μm) 7.2%
hpmc 10.6%
脱イオン水 29.2%
【0076】
この例において、炭素繊維および金属ケイ素から炭化ケイ素を生成するために、おおよその化学量論的モル比が得られたが、隣接した繊維間での金属結合を形成させるために金属アルミニウム粉末を追加した。次に、混合物を0.030インチの壁厚みを持つ100 cpsi型材を通過させて押し出し、直径1インチおよび長さ約1インチのハニカム構造を得た。次に、未焼成ハニカム基材を200°Cに加熱した窒素置換乾燥機内に約4時間入れて乾燥させた後、温度を約325°Cに上昇させて約2時間加熱し、HPMC結合剤を完全に焼き尽くした。炭素で内張りした真空乾燥機内で、1550°Cで約2時間加熱すると、炭化ケイ素繊維構造が形成された。
【0077】
第八の例では、材料バッチ混合物を、混合物の全重量のパーセント値で表示される相対量で、下記の材料と混合させた。
短炭素繊維 18.8%
金属ケイ素粉末(約45 μm) 43.8%
SMP-10 SiC前駆物質ポリマー溶液 6.3%
エチルセルロース 12.5%
トルエン 18.8%
【0078】
この例において、炭素繊維および金属ケイ素から炭化ケイ素を生成するために、おおよその化学量論的モル比が得られたが、隣接した繊維間でのポリマー結合を形成させるためにセラミック前駆体ポリマーを追加し、その結果、焼成後に炭化ケイ素結合した炭化ケイ素繊維が得られた。次に、混合物を0.030インチの壁厚みを持つ100 cpsi型材を通過させて押し出し、直径1インチおよび長さ約1インチのハニカム構造を得た。次に、未焼成ハニカム基材を200°Cに加熱した窒素置換乾燥機内に約4時間入れて乾燥させた後、温度を約325°Cに上昇させて約2時間加熱し、HPMC結合剤を完全に焼き尽くした。炭素で内張りした真空乾燥機内で、1550°Cで約2時間加熱すると、炭化ケイ素繊維構造が形成された。
【0079】
第九の例では、材料バッチ混合物を、混合物の全重量のパーセント値で表示される相対量で、下記の材料と混合させた。
West Systems 403 Microfibers 16.7%
金属ケイ素粉末(約45 μm) 38.9%
Hpmc 11.1%
脱イオン水 33.3%
【0080】
この例において、炭化した有機繊維および金属ケイ素から炭化ケイ素を生成するためのおおよその化学量論的モル比が得られる。West Systems 403 Microfibersは、樹脂-エポキシ混合物で一般に使用される木材/紙ベースの繊維充填剤で、これが焼成処理中に炭素繊維に炭化される。次に、混合物を0.030インチの壁厚みを持つ100 cpsi型材を通過させて押し出し、直径1インチおよび長さ約1インチのハニカム構造を得た。次に、未焼成ハニカム基材を200°Cに加熱した窒素置換乾燥機内に約4時間入れて乾燥させた後、温度を約325°Cに上昇させて約2時間加熱し、HPMC結合剤を完全に焼き尽くした。炭素ライニング付き真空乾燥機内で、1550°Cで約2時間加熱すると、有機繊維が炭化され、炭化ケイ素繊維構造が形成された。
【0081】
本発明は、ここでその一定の例証的および具体的な実施態様に関連して詳細に説明したが、添付の請求項の精神および範囲を逸脱することなく多数の改良が可能であることから、本説明に制限されるものと考慮されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状炭化ケイ素基材を製造する方法であって、
押出成形可能な混合物を提供するために、炭素繊維を、ケイ素および結合剤で構成される添加物、および流体と混合し、
前記押出成形可能な混合物を未焼成基材として押出成形し、
前記炭素繊維および前記添加物を用いて炭化ケイ素繊維を形成すべく、前記未焼成基材を加熱する、ことを特徴とする繊維状炭化ケイ素基材の製造方法。
【請求項2】
前記加熱ステップがさらに、
前記未焼成基材を第一の温度に加熱して、実質的にすべての流体を除去し、
前記未焼成基材を第二の温度に加熱して、添加物の結合剤部分を除去し、
前記未焼成基材を第三の温度に加熱して、炭化ケイ素を形成する、
ことから構成される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
第三の温度が少なくとも1400℃である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記添加物がさらに金属ケイ素粒子を備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記添加物がさらにシリカ粒子を備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
炭素繊維とシリカ粒子の比が、炭素繊維1に対してシリカが約2〜5である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記添加物がさらにメチルセルロースを備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記炭素繊維がさらに、ポリアクリルニトリジル炭素繊維、石油ピッチ炭素繊維および炭化した有機繊維のうち少なくとも一つを備えてなる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記添加物がさらに、細孔形成剤、可塑剤および分散剤のうち少なくとも一つを備えてなる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
繊維状炭化ケイ素基材を製造する方法であって、
押出成形可能な混合物を提供するために、炭素繊維を、コロイド状シリカ、有機結合剤、および流体と混合し、
前記押出成形可能な混合物を未焼成基材として押出成形し、
前記未焼成基材から流体を除去し、
有機結合剤を分解し、
前記炭素繊維および前記コロイド状シリカを用いて炭化ケイ素を形成する反応をさせる、ことを特徴とする繊維状炭化ケイ素基材の製造方法。
【請求項11】
前記混合ステップがさらに結合剤を含み、
前記形成ステップがさらに、前記結合剤を用いた結合の形成を含んでなる、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記炭素繊維が、ポリアクリルニトリジル炭素繊維、石油ピッチ炭素繊維および炭化した有機繊維のうち少なくとも一つを備えてなる、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記炭素繊維が1〜1000のアスペクト比を持つ、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
多孔質セラミック基材であって、
開放細孔網を形成する炭化ケイ素繊維から成る構造と、
その構造内にて少なくとも部分的に形成された複数の経路と、
入口経路として構成された、前記複数の経路のうちの少なくとも一つと、
出口経路として構成された、前記複数の経路のうちの他の少なくとも一つと、
を備えてなる多孔質セラミック基材。
【請求項15】
前記構造がさらに、隣接する炭化ケイ素繊維間での金属結合、セラミック結合およびガラス結合のうち少なくとも一つを備える、請求項14に記載の多孔質セラミック基材。
【請求項16】
前記炭化ケイ素繊維が、炭素繊維およびケイ素系添加物の混合物の反応から形成される、請求項14に記載の多孔質セラミック基材。
【請求項17】
前記複数の経路が押出により形成される、請求項14に記載の多孔質セラミック基材。
【請求項18】
押出成形されたハニカム基材であって、
隣接した経路間で多孔性の壁を形成するハニカムアレイの経路を備え、
前記多孔性の壁は、絡み合った炭化ケイ素繊維から形成される開放細孔網からなる構造を有してなる、ことを特徴とするハニカム基材。
【請求項19】
前記絡み合った炭化ケイ素繊維が少なくとも部分的に金属結合で結合されている、請求項18に記載のハニカム基材。
【請求項20】
前記金属結合がケイ素からなる、請求項19に記載のハニカム基材。
【請求項21】
前記絡み合った炭化ケイ素繊維が少なくとも部分的にガラス結合またはセラミック結合で結合されている、請求項18に記載のハニカム基材。
【請求項22】
前記ガラス結合またはセラミック結合がシリカからなる、請求項21に記載のハニカム基材。
【請求項23】
前記絡み合った炭化ケイ素繊維が少なくとも部分的にポリマー結合で結合されている、請求項18に記載のハニカム基材。
【請求項24】
入口および出口を有するハウジングと、
前記ハウジング内に設けられた押出成形したハニカム基材と
を具備したフィルタであって、
前記ハニカム基材は、隣接した経路間で多孔性の壁を形成するハニカムアレイの経路を備え、
前記多孔性の壁は、絡み合った炭化ケイ素繊維から形成される開放細孔網からなる構造を有しており、
前記ハニカムアレイの経路は、入口経路のセットおよび出口経路のセットとして構成されており、
フィルタハウジング内の流れは、前記入口から入口経路を通過し、多孔性の壁を通って出口経路に入り、出口に向かって出る、ことを特徴とするフィルタ。
【請求項25】
前記絡み合った炭化ケイ素繊維が少なくとも部分的に金属結合で結合されている、請求項24に記載のフィルタ。
【請求項26】
前記絡み合った炭化ケイ素繊維が少なくとも部分的にガラス結合またはセラミック結合で結合されている、請求項24に記載のフィルタ。
【請求項27】
前記絡み合った炭化ケイ素繊維が少なくとも部分的にポリマー結合で結合されている、請求項24に記載のフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−516621(P2010−516621A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548400(P2009−548400)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/052372
【国際公開番号】WO2008/094955
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(507280435)ジーイーオー2 テクノロジーズ,インク. (12)
【Fターム(参考)】