説明

抽出ホップエキスを用いた高香味発酵アルコール飲料及びその製造方法

【課題】超臨界炭酸ガス抽出ホップのようなホップ抽出エキスを用いた発酵アルコール飲料において、温和で良質な苦味とボディー感を具備する調和した苦味を付与した高香味発酵アルコール飲料、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】ビールや発泡酒及びその他の雑種のような発酵アルコール飲料の製造において、超臨界炭酸ガス抽出ホップのようなホップ抽出エキスに、超臨界二酸化炭素を用いたホップの抽出残渣(スペントホップ)を組み合わせて添加することにより、発酵アルコール飲料の苦味成分において、HPLCのイソα酸ピーク以前に検出される全てのピークの面積の総和として定義されるS−フラクションの、S−フラクション+イソα酸に対する比率であるS−フラクション比率を0.28〜0.37に調整することにより、温和で良質な苦味とボディー感を具備する調和した苦味を付与した高香味発酵アルコール飲料を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調和した苦味を付与した発酵アルコール飲料及びその製造方法、特に、超臨界炭酸ガス抽出ホップのようなホップ抽出エキスを用いた発酵アルコール飲料において、温和で良質な苦味とボディー感を具備する調和した苦味を付与した高香味発酵アルコール飲料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールや発泡酒のような発酵アルコール飲料や、ビール風飲料のような発酵アルコール飲料においては、酵母及びホップを用いて発酵アルコール飲料の製造が行われている。このような酵母及びホップを用いた発酵アルコール飲料の製造において、ホップは、通常、ホップ毬花を収穫・乾燥後(通常、8〜9%程度に乾燥される)、ペレットに加工して用いられている。すなわち、発酵アルコール飲料の製造に用いられるホップは、収穫後乾燥して、圧縮若しくは粉砕ペレット状に加工して、低温保存され、使用に際しては、その必要量を仕込み工程の麦汁煮沸の際に投入して苦味成分並びにホップ由来の香気成分を麦汁に移行させ、発酵、貯蔵を経て、発酵アルコール飲料にホップ由来の苦味成分並びに香気成分が付与されている。
【0003】
ホップは通常、ホップ毬花を収穫・乾燥後、できるだけ速やかにペレットに加工して用いられている。乾燥状態の毬花はそのままの状態に保持すると、保管による酸化で熟成が進み、酸化精油成分が増加し、Humulene Epoxide IIのようなハーブ様の香気成分が増加することが知られている(宮地秀夫著「ビール醸造技術」(1999年12月28日発行)p.29〜66)。また、α酸、β酸の苦味成分は、ホップの保管に伴い低分子の成分に、酸化かつ、若しくは分解することが知られている。意図的に、このようにして調製したホップは「後熟化」したと称し、実際にビール等、発泡性飲料の製造で使用すると、味わいがある、口当たりがよい、コクがある、すっきりしている、まろやかである、上質な味であるとの評価が通常ペレットホップよりも高い評価となった(特開2007−89439号公報)。
【0004】
小若らは、ホップの保存に伴って非イソα酸態苦味物質群が増加し、化学分析上の苦味価は上昇するが、官能上の苦味の強度は低下し、シャープさがなくなることを、更に小野らはこの非イソα酸態苦味物質群は、逆相HPLC法で分析したときに、イソα酸より前に検出される画分に相当し、この画分をS−フラクションと呼んだ(「醸造物の成分」(財団法人日本醸造協会:平成11年12月10日発行)、p.252〜258)。
【0005】
ホップの後熟には、2週間程度から1ヶ月を要するものであり(特開2008−228634号公報)、保管条件の制御や指標成分に管理に労力を要した。したがって、発酵アルコール飲料の製造に際して、後熟ホップを用いることは、発酵アルコール飲料に口当たりがよく、コクがある苦味を付与する上で重要なものであるが、ホップの後熟には2週間程度から1ヶ月を要するものであり、また、保管条件の制御や指標成分の管理に労力を要するという問題があることから、該方法を代替できる簡便な方法が開発できれば、まろやかでコクがある苦味の香味に優れた発酵アルコール飲料を提供する上で、極めて望ましいことである。
【0006】
ビールや発泡酒のようなホップを添加して製造した発泡性アルコール飲料において、マイルドな苦味が後まで持続するという特性を付与するために、高温保管したホップを用いる方法が開示されている(特開2008−212048号公報)。この方法では、発泡性アルコール飲料中の低分子苦味成分(上記S−フラクションに相当する。)の総量が、イソα酸の総量と低分子苦味成分の総量の和の20%以上とすることが示されている。
【0007】
ビール、発泡酒、雑酒等の発酵アルコール飲料の製造においては、その主原料の一つであるホップは、ビール等の発酵アルコール飲料に独特の芳香と苦味を付与するものであり、ホップの加工形態の特性を利用して、それぞれ最適な使用方法が工夫されている。現在では、ベールホップを粉砕圧縮してペレット状に加工したペレットホップや、ホップルプリン粒に含まれるα酸を溶媒抽出した各種抽出エキスがその主要な使用形態として用いられている。
【0008】
ホップの使用形態において、超臨界二酸化炭素のような抽出溶媒を用いて抽出したホップ抽出エキスも使用されている。超臨界二酸化炭素抽出エキスは、保存性や均一性に優れ、一般に広く使用されている。超臨界二酸化炭素抽出ホップエキスをビール等の発酵アルコール飲料の製造に使用すると、イソα酸主体のシャープな苦味が感じられるホップ香気を飲料に付与することができる。しかし、一方では、シャープな苦味により、苦味が単調に感じられるという問題があり、またボディー感が弱くなり、全体的に平板な印象の発酵アルコール飲料となる傾向がある。
【0009】
このように、それぞれのホップの使用形態特徴から、実際のビール等の発酵アルコール飲料の製造時には、それぞれのホップの使用形態のメリット、デメリットを勘案しながら、異なるホップの使用形態のものを組み合わせて用いることも行われている。例えば、苦味の質をコントロールするために、α酸抽出エキスにペレットホップを適切に組み合せて使用する場合も多いが、ペレットホップを添加するとイソα酸やホップ精油分が新たに加わることから、全体の苦味強度が強くなるほか、ホップ香気など苦味以外の成分も付与されるので、香気成分や苦味の強度をコントロールしながら望ましい苦味の質をコントロールすることが課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−89439号公報
【特許文献2】特開2008−212048号公報
【特許文献3】特開2008−228634号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】宮地秀夫著「ビール醸造技術」(1999年12月28日発行)p.29〜66
【非特許文献2】「醸造物の成分」(財団法人日本醸造協会:平成11年12月10日発行)、p.252〜258
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、調和した苦味を付与した発酵アルコール飲料及びその製造方法を提供すること、特に、超臨界炭酸ガス抽出ホップのようなホップ抽出エキスを用いた発酵アルコール飲料において、温和で良質な苦味とボディー感を具備する調和した苦味を付与した高香味発酵アルコール飲料、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、ビールや発泡酒及びその他の雑種のような発酵アルコール飲料の製造において、超臨界炭酸ガス抽出ホップのようなホップ抽出エキスを用い、温和で良質な苦味を付与した発酵アルコール飲料の製造について鋭意検討する中で、発酵アルコール飲料の苦味成分において、HPLCのイソα酸ピーク以前に検出される全てのピークの面積の総和として定義されるS−フラクションの、S−フラクション+イソα酸に対する比率であるS−フラクション比率を特定の値、すなわち、0.28〜0.37に調整することにより、温和で良質な苦味とボディー感を具備する調和した苦味を付与した高香味発酵アルコール飲料を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
また、本発明者は、該S−フラクション比率の特定の値が、ホップ抽出液に、超臨界二酸化炭素を用いたホップの抽出残渣(スペントホップ)を組み合わせて添加することにより調整できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0015】
すなわち、本発明者は、保存性や均一性に優れ、イソα酸主体の温和で良質な苦味が感じられるホップ香気を飲料に付与する超臨界炭酸ガス抽出ホップのようなホップ抽出エキスを用いた発酵アルコール飲料の製造について検討する中で、該ホップ抽出エキスの添加が、苦味が単調に感じられ、ボディー感が弱くなり、全体的に平板な印象の発酵アルコール飲料となる傾向がある点について、該苦味の質を改善するために、苦味成分のうちS−フラクション比率に着目した。このS−フラクション比率は、従来、後熟ホップにおいて増加が確認されたHPLCの検出ピークの変化であるが、本発明者は、炭酸ガス(超臨界二酸化炭素)抽出エキス由来の抽出残渣分であるスペントホップを使用することより、発酵アルコール飲料中のS−フラクションが上昇することを見出した。そして、該抽出残渣を用い、S−フラクション比率を特定の値に調整することにより、温和で良質な苦味とボディー感を具備する調和した苦味を付与した高香味発酵アルコール飲料を製造することができることを見出した。
【0016】
本発明の発酵アルコール飲料の製造方法においては、発酵アルコール飲料のS−フラクション比率の調整は、発酵アルコール飲料の製造における、煮沸工程中の麦汁に、ホップ抽出液に加えて、該超臨界二酸化炭素を用いたホップの抽出残渣(スペントホップ)を組み合わせて添加することにより行うことができるが、該抽出残渣の添加時期は麦汁煮沸工程中であればいつでも可能であるが、好ましくは麦汁煮沸開始直後に添加することが好ましい。
【0017】
すなわち具体的には本発明は、[1]ホップ抽出液を添加して製造する発酵アルコール飲料において、該発酵アルコール飲料の苦味成分が、(1)HPLC用カラム:C18(オクタデシル)カラム、粒径5μm、カラム長250mm、内径4.0mmを用い、蒸留水27%、メタノール72%、及び、リン酸1%からなる移動相Aとメタノール99.0%、及びリン酸1.0%からなる移動相Bを、1ml/分の一定流速で、運転開始から10分までを移動相Aを100%、10分から40分の間に移動相Aから移動相Bに置換し、40分以降を移動相B100%で送液し、270nmの検出波長のHPLCによる測定をした場合において、イソα酸ピーク以前に検出される全てのピークの面積の総和として定義されるS−フラクションの、S−フラクション+イソα酸に対する比率であるS−フラクション比率が、0.28〜0.37であることを特徴とする温和で良質な苦味とボディー感を具備する調和した苦味を付与した高香味発酵アルコール飲料や、[2]発酵アルコール飲料の苦味成分のS−フラクション比率が、ホップ抽出液に、超臨界二酸化炭素を用いたホップの抽出残渣を添加することにより調整したものであることを特徴とする上記[1]記載の高香味発酵アルコール飲料からなる。
【0018】
また、本発明は、[3]ホップ抽出液が、ホップを超臨界二酸化炭素を用いて抽出したホップ抽出液であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の高香味発酵アルコール飲料や、[4]ホップ抽出液を添加して製造する発酵アルコール飲料の製造において、煮沸工程中の麦汁に、ホップ抽出液に加えて、該超臨界二酸化炭素を用いたホップの抽出残渣を組み合わせて添加することにより、発酵アルコール飲料の苦味成分のS−フラクション+イソα酸に対するS−フラクションの比率であるS−フラクション比率を、0.28〜0.37に調整することを特徴とするにより温和で良質な苦味とボディー感を具備する調和した苦味を付与した高香味発酵アルコール飲料の製造方法や、[5]ホップ抽出液を添加して製造する発酵アルコール飲料の製造において、ホップ抽出液に加えて、該超臨界二酸化炭素を用いたホップの抽出残渣を組み合わせて添加することにより、発酵アルコール飲料の苦味成分のS−フラクション+イソα酸に対するS−フラクションの比率であるS−フラクション比率を、0.28〜0.37に調整することにより温和で良質な苦味とボディー感を付与することを特徴とする発酵アルコール飲料の製造におけるホップ香気の調整方法からなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、超臨界炭酸ガス抽出ホップのようなホップ抽出エキスを用いた発酵アルコール飲料において、温和で良質な苦味とボディー感を具備する調和した苦味を付与した高香味発酵アルコール飲料、及びその製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のホップ苦味成分の特定値である「S−フラクション」の定義の説明のためのHPLC分析チャートを示す図である。
【図2】本発明の実施例における超臨界二酸化炭素用いたホップの抽出残渣(スペントホップ)を添加した発酵アルコール飲料の製造例において、S−フラクション比率と、官能評価の結果との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、ホップ抽出液を添加して製造する発酵アルコール飲料の製造において、煮沸工程中の麦汁に、ホップ抽出液に加えて、該超臨界二酸化炭素を用いたホップの抽出残渣を組み合わせて添加することにより、発酵アルコール飲料の苦味成分のS−フラクション+イソα酸に対するS−フラクションの比率であるS−フラクション比率を、0.28〜0.37に調整することにより温和で良質な苦味とボディー感を具備する調和した苦味を付与した高香味発酵アルコール飲料を製造する方法、及び該方法により製造された高香味発酵アルコール飲料からなる。
【0022】
本発明の発酵アルコール飲料の製造において、煮沸工程中の麦汁に、ホップ抽出液に加えて、該超臨界二酸化炭素を用いたホップの抽出残渣を組み合わせて添加することにより、発酵アルコール飲料の苦味成分のS−フラクション比率を、0.28〜0.37に調整する点を除いて、従来のホップ抽出液を添加して製造する発酵アルコール飲料の製造方法と特に変わるところはない。超臨界二酸化炭素を用いたホップの抽出方法も、特に、限定されず、従来用いられている超臨界二酸化炭素を用いたホップの抽出方法を用いることができる。
【0023】
本発明を実施するに際して用いられる「苦味価の測定」、「HPLC分析のための試料の調製」、「S−フラクション比率」、及び「官能評価方法」は、以下のとおりである。
【0024】
<(1)苦味価の測定>
試料10mlに1mlの3N塩酸を加えた後、20mlのイソオクタンを加え、振とう、静置した。この溶液は、試料から成る水溶層とイソオクタンから成る有機溶媒層の2層に分離し、イソオクタン有機溶媒層から10mlを採取した。試料は波長275nmの吸光度で測定し、その値に50を乗じて求める。
【0025】
<(2)HPLC分析のための試料の調整>
(1)の手順で得たイソオクタン有機溶媒層10mlを採取した後、窒素ガス噴霧下で完全に乾燥させ固定化させた。これにリン酸メタノール溶液(リン酸:メタノール=30ml:300ml)を1ml加え、溶解したものをHPLC分析用試料とした。
【0026】
<(3)HPLC分析によるS−フラクション及びS−フラクション比率の算出>
HPLC分析の分析条件は以下のとおりである:
【0027】
[HPLC分析条件]:
カラム:C18(オクタデシル)カラム、粒径5μm、カラム長250mm、内径4.0mm
サンプル注入量:50μl
移動相A組成:蒸留水27.0%・メタノール72.0%・リン酸1.0%
移動相B組成:メタノール99.0%・リン酸1.0%
移動相流速:1ml/min.(流速一定)
検出波長:270nm
グラジエントプログラム:表1のとおり。
【0028】
【表1】

【0029】
[S−フラクション比率の算出]
HPLC用カラム;C18(オクタデシル)カラム、粒径5μm、カラム長250mm、内径4.0mmを用いて、蒸留水27%、メタノール72%、及び、リン酸1%からなる移動相Aを、1ml/分の一定流速で270nmの検出波長のHPLCによる測定をした場合において、イソα酸ピーク以前に検出される全てのピークの面積を総和し、「S−フラクション」で表した(図1:HPLC分析チャート:mAUは、270nmの吸収強度を電気変換した単位を表す)。イソα酸のピークの面積の総和も同様にピークの総和として求める。S−フラクション比率は、次の通り算出した:S−フラクション比率=(S−フラクション面積)/(S−フラクション面積+イソα酸面積)
【0030】
<(4)試験醸造用サンプル調整方法と官能評価>
官能評価に用いた貯酒サンプルは1.5Lスケールの装置を用いて作成した。11.5度に調整した仕込麦汁(仕込時の麦芽使用比率60%、液糖使用比率40%)をサンプルとして煮沸試験に用いる。電気ヒーターで麦汁を加温煮沸し、煮沸強度は一定で90分間で蒸発率が10%となるようにコントロールして行い、煮沸終了後、蒸発量と同量の水をサンプルに追加した上で、95℃で60分麦汁静置させた。ろ紙ろ過後、氷水で麦汁を冷却させた麦汁にビール酵母を添加し、1週間主発酵、4日間後発酵を行ったサンプルを試飲用貯酒サンプルとする。(以下の実施例では、使用したホップの品種はドイツ産マグナム種を用いた。官能評価は、3名の官能評価パネルが試飲を行った。)
【0031】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
超臨界状態の二酸化炭素を抽出溶媒として製造した超臨界二酸化炭素抽出ホップ樹脂エキス0.22g及びその抽出時に生じた抽出残渣物(スペントホップ)14.06gを発酵アルコール飲料の煮沸工程の煮沸開始直後に添加し、上述(4)に記載する方法で試醸サンプルを作製した。苦味価を、調整することを目的にホップを加えないサンプルを同様の方法で作製した。これらのサンプルをブレンドすることでS−フラクションを変化させながら、BU=22程度となるようなサンプルを調整し、官能評価を行った(表2:図2)。
【0033】
苦味調和のスコアはS−フラクション比率により変動し、0.28〜0.37程度において最もスコアが高くなった。このことから、抽出残渣(スペントホップ)を使用することで苦味の質を変化することが可能であり、S−フラクション比率を指標とした場合に0.28〜0.37の範囲に入るように抽出残渣(スペントホップ)を使用することで、苦味調和度の高い、すなわち官能上の苦味の質が最も高い発酵アルコール飲料(ビール)を作製することが可能である(表2及び図2:S−フラクション比率と官能評価との関係)。官能評価の結果からも、ボディー感のある、バランスが良好な苦味の発酵アルコール飲料が製造できることが示された。
【0034】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、超臨界炭酸ガス抽出ホップのようなホップ抽出エキスを用いた発酵アルコール飲料において、温和で良質な苦味とボディー感を具備する調和した苦味を付与した高香味発酵アルコール飲料、及びその製造方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホップ抽出液を添加して製造する発酵アルコール飲料において、該発酵アルコール飲料の苦味成分が、(1)HPLC用カラム:C18(オクタデシル)カラム、粒径5μm、カラム長250mm、内径4.0mmを用い、蒸留水27%、メタノール72%、及び、リン酸1%からなる移動相Aとメタノール99.0%、及びリン酸1.0%からなる移動相Bを、1ml/分の一定流速で、運転開始から10分までを移動相Aを100%、10分から40分の間に移動相Aから移動相Bに置換し、40分以降を移動相B100%で送液し、270nmの検出波長のHPLCによる測定をした場合において、イソα酸ピーク以前に検出される全てのピークの面積の総和として定義されるS−フラクションの、S−フラクション+イソα酸に対する比率であるS−フラクション比率が、0.28〜0.37であることを特徴とする温和で良質な苦味とボディー感を具備する調和した苦味を付与した高香味発酵アルコール飲料。
【請求項2】
発酵アルコール飲料の苦味成分のS−フラクション比率が、ホップ抽出液に、超臨界二酸化炭素を用いたホップの抽出残渣を添加することにより調整したものであることを特徴とする請求項1記載の高香味発酵アルコール飲料。
【請求項3】
ホップ抽出液が、ホップを超臨界二酸化炭素を用いて抽出したホップ抽出液であることを特徴とする請求項1又は2記載の高香味発酵アルコール飲料。
【請求項4】
ホップ抽出液を添加して製造する発酵アルコール飲料の製造において、煮沸工程中の麦汁に、ホップ抽出液に加えて、該超臨界二酸化炭素を用いたホップの抽出残渣を組み合わせて添加することにより、発酵アルコール飲料の苦味成分のS−フラクション+イソα酸に対するS−フラクションの比率であるS−フラクション比率を、0.28〜0.37に調整することを特徴とするにより温和で良質な苦味とボディー感を具備する調和した苦味を付与した高香味発酵アルコール飲料の製造方法。
【請求項5】
ホップ抽出液を添加して製造する発酵アルコール飲料の製造において、ホップ抽出液に加えて、該超臨界二酸化炭素を用いたホップの抽出残渣を組み合わせて添加することにより、発酵アルコール飲料の苦味成分のS−フラクション+イソα酸に対するS−フラクションの比率であるS−フラクション比率を、0.28〜0.37に調整することにより温和で良質な苦味とボディー感を付与することを特徴とする発酵アルコール飲料の製造におけるホップ香気の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−135263(P2012−135263A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290158(P2010−290158)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)