説明

抽出器

【課題】抽出容器部から抽出網を容易に取外しできるようにした抽出器において、抽出網内からの被抽出物の漏出をより抑制できるようにすること。
【解決手段】被抽出物から飲料成分を抽出する抽出器10であって、内部に液体を貯留可能な器状に形成され、上方に開口部が形成された抽出容器部20と、抽出容器部20の開口部27に着脱可能に装着される蓋部12と、網目を有する筒状に形成され、開口部27を通って前記抽出容器部20内に配設可能な抽出網30とを備える。抽出容器部20の底部内面に、抽出網30の一方側開口部を嵌め込み可能な凹部24が形成され、抽出網30の一方側の開口部が、凹部24の上方開口部と最底部25との間に位置した状態で凹部24に嵌め込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、茶葉、コーヒー粉等の被抽出物から飲料成分を抽出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
茶葉等から飲料成分を抽出するための急須として、特許文献1又は2に開示のものがある。
【0003】
特許文献1では、急須の内部底面に嵌合溝が形成され、内筒の下端部が嵌合溝に嵌合されている。
【0004】
特許文献2では、急須本体の内部底面に円形状の穴が形成され、筒形の網の底部が前記穴に嵌め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭51−159287号公報
【特許文献2】特開2001−186985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1又は2に開示の技術では、筒状の網の下側縁部は、急須等の底部に形成された嵌合溝又は穴の底部に接している。しかも、嵌合溝又は穴は、筒状の網の下部を位置決めできる程度の深さでしかない。このため、嵌合溝又は穴の底部に貯まった茶葉、特に、細かい茶葉が、嵌合溝又は穴の底部と筒状の網の下側縁部との間を通って漏れ出てしまう。
【0007】
そこで、本発明は、抽出容器部から抽出網を容易に取外しできるようにした抽出器において、抽出網内からの被抽出物の漏出をより抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る抽出器は、被抽出物から飲料成分を抽出する抽出器であって、内部に液体を貯留可能な器状に形成され、上方に開口部が形成された抽出容器部と、前記抽出容器部の開口部に着脱可能に装着される蓋部と、網目を有する筒状に形成され、前記開口部を通って前記抽出容器部内に配設可能な抽出網とを備え、前記抽出容器部の底部内面に、前記抽出網の一方側開口部を嵌め込み可能な凹部が形成され、前記抽出網の一方側の開口部が、前記凹部の上方開口部と最底部との間に位置した状態で前記凹部に嵌め込まれるものである。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る抽出器であって、前記凹部は、前記上方開口部側に、前記抽出網の一方側の開口部を任意の位置にて嵌め込み可能な同径部分を有する。
【0010】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る抽出器であって、前記凹部は、前記上方開口部から前記最底部に向けて順次狭くなる細径変化部分を有する。
【0011】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか一つの態様に係る抽出器であって、前記抽出網の一方側開口部に、弾性環状部材が装着されている。
【0012】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか一つの態様に係る抽出器であって、前記抽出網の一方側開口部に、外側又は内側に張出すつば部が形成されている。
【0013】
第6の態様は、第1〜第5のいずれか一つの態様に係る抽出器であって、前記抽出網の他方側開口部に、外側又は内側に張出すつば部が形成されている。
【0014】
第7の態様は、第1〜第6のいずれか一つの態様に係る抽出器であって、前記蓋部が前記抽出容器部の開口部に装着された状態で、前記抽出網の一方側開口部縁部が前記凹部に嵌め込まれる関係を維持するように、前記蓋部が前記抽出網の他方側開口部に当接する。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様によると、前記抽出網の一方側の開口部は、前記凹部の上方開口部と最底部との間に位置した状態で前記凹部に嵌め込まれるため、非抽出容器部から抽出網を容易に取外すことができる。また、抽出網内に投入された被抽出物の少なくとも一部は、抽出網の一方側開口部よりも底側で凹部内に貯まるため、抽出網内から漏出し難くなる。
【0016】
第2の態様によると、前記抽出網の一方側の開口部を、凹部の同径部分の任意の位置に嵌め込むことができるため、抽出網の装着を容易に行える。
【0017】
第3の態様によると、抽出網の一方側開口部を凹部の細径変化部分に嵌め込んでいくと、抽出網の一方側開口部と凹部との隙間が徐々に小さくなるため、抽出網内からの被抽出物の漏出をより確実に抑制できる。
【0018】
第4の態様によると、前記抽出網の一方側開口部に装着された弾性環状部材を、凹部の内周面に密着させることができる。これにより、抽出網の一方側開口部と凹部との隙間をより確実に小さくして、抽出網内からの被抽出物の漏出をより確実に抑制できる。
【0019】
第5の態様によると、前記抽出網の一方側開口部に形成されたつば部によって、抽出網の一方側開口部の変形を抑制できる。これにより、前記抽出網の一方側の開口部と凹部の内周面との間での隙間の発生を抑制することができる。
【0020】
第6の態様によると、前記抽出網の他方側開口部に形成されたつば部によって、抽出網の他方側開口部の変形を抑制できる。
【0021】
第7の態様によると、蓋部が抽出網を押え込んでいるため、前記抽出網の一方側開口部と前記周壁部とが嵌まり合う関係がより確実に維持される。これにより、被抽出物の通過をより確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係るポットを示す分解斜視図である。
【図2】ポットの断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】抽出網内における被抽出物の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態に係る抽出器について説明する。ここでは、抽出器として、ポットを想定した例で説明する。図1は実施形態に係るポット10を示す分解斜視図であり、図2はポット10の断面図であり、図3は図2の部分拡大図である。
【0024】
このポット10は、被抽出物(例えば、日本茶或は紅茶等の茶葉、コーヒー等)から、茶成分、コーヒー成分等の飲料成分を抽出するための装置、即ち、飲料を生成するための装置である。
【0025】
ポット10は、抽出容器部としての容器部20と、蓋部12と、抽出網30とを有している。
【0026】
容器部20は、容器本体部22と、注ぎ口部28と、取っ手部29とを有している。
【0027】
容器本体部22は、上方に開口部27を有する器状に形成されている。より具体的には、容器本体部22は、高さ方向中間部が太く、かつ、上部及び下部が前記中間部よりも細い器状に形成されており、内部に液体を貯留できるようになっている。
【0028】
容器本体部22の底部23の外面は平らに形成されており、また、底部23の内面には、円状に凹む凹部24が形成されている(図2参照)。凹部24は、円状の最底部25と、最底部25の周りを囲む内向きの周壁部26とを有している。凹部24は、抽出網30の一方側(下方側)開口部を、凹部24の上方開口部と最底部との間に位置させた状態で、嵌め込み可能な形状及び大きさに形成されている。
【0029】
より具体的には、周壁部26は、上方開口部側に同径部分26aを有すると共に、最底部25側に細径変化部分26bを有している。
【0030】
同径部分26aは、上下方向において内径が同じに形成された部分である。同径部分26aの内径は、抽出網の一方側(下側)の開口部の外周部の外径と同じに形成されており、抽出網30の一方側(下側)の開口部の外周縁部全体を、当該同径部分26aの内周面の全体に接触させた状態で、抽出網30の一方側(下側)の開口部を同径部分26aに嵌め込めるようになっている。また、この際、抽出網30の一方側の開口部を、同径部分26aが形成された範囲内で上下方向に移動させても、抽出網30の一方側の開口部の外周縁部全体を、同径部分26aの内周部の全体に接触させた状態を維持できるようになっている。
【0031】
細径変化部分26bは、同径部分26aの下端部から最底部25に向けて、内径が順次小さくなるように形成された部分である。つまり、最底部25の外周縁の径は、同径部分26aの内径よりも小さくなっており、細径変化部分26bの内周面は、外向きに凸となる湾曲曲面を描きつつ、同径部分26aの下端部内周面から徐々に狭まりつつ最底部25の外周縁部に至るようになっている。
【0032】
そして、抽出網30の一方側(下側)の開口部を、同径部分26aを越えて細径変化部分26b内に押込むように嵌め込むと、抽出網の一方側開口部が細径変化部分26bの内周面に強く押し当てられ、抽出網30の一方側の開口部と凹部24の内周面の隙間とがより小さくなる。
【0033】
なお、凹部24が円状の凹部であることは必須ではなく、楕円状、多角形状等であってもよい。つまり、抽出網30の一方側の開口部と凹部24とが、相互に対応する略相似形状に形成され、相互に嵌まり合う形状であればよい。また、上記同径部分26a及び細径変化部分26bの一方が省略されていてもよい。
【0034】
開口部27は、容器本体部22の上方で、上向きに開口している。ここでは、容器本体部22の上方端縁部よりも(ここでは若干)下側部分が絞り込まれるように細径に形成されることで、細径開口部分27aと、当該細径開口部分27aより上方に向けて順次拡開する拡開縁部分27bとを有する開口部27が形成されている。なお、開口部27の細径開口部分27aの内径は、周壁部26よりも大きい(ここでは僅かに大きい)。そして、液体を、開口部27を通じて容器本体部22内に注ぎ、また、その液体を容器本体部22内に貯留できるようになっている。また、拡開縁部分27bの内面部分上に上記蓋部12の周縁部を載置することで、蓋部12が開口部27を閉塞するように、容器本体部22に装着されるようになっている。
【0035】
注ぎ口部28は、開口部27の周縁部の一部を外下方に向けて引出したような、半筒状形状に形成されている。蓋部12を容器本体部22に装着した状態で、注ぎ口部28の内周面と蓋部12の外周縁部との間に、液体が通過可能な隙間が形成される。また、注ぎ口部28の先端部は、外下方に向けて開口している。そして、注ぎ口部28の先端部を下方に向けるように、容器部20を傾けると、容器本体部22内の液体が注ぎ口部28を通って外部に流れ出るようになっている。
【0036】
取っ手部29は、容器本体部22の他の一側部の高さ方向上部から外方を迂回して高さ方向中間部に至るC字状形状に形成されている。容器本体部22の平面視において、注ぎ口部28と取っ手部29とは反対側の位置に設けられている。そして、本ポット10の利用者が、手で取っ手部29を掴むことによって、ポット10を持上げて当該ポット10を傾けることにより、上記注ぎ口部28から湯飲み等に飲料(お茶)を注ぐことができるようになっている。このように容器本体部22の一側部に固定される取っ手部29の他、容器本体部をぶら下げるようにして支持する取っ手等であってもよく、また、取っ手は省略されてもよい。
【0037】
蓋部12は、上記開口部27に着脱可能に装着されるように構成されている。より具体的には、蓋部12は、浅い皿状形状に形成され、その外径は、上記開口部27の細径開口部分27aの内径よりも大きく、かつ、拡開縁部分27bの上側開口縁部の外径よりも小さく設定されている。そして、蓋部12の外周縁部を、拡開縁部分27bの内面部分上に載置することで、蓋部12で開口部27を閉塞できるようになっている。この状態では、拡開縁部分27bが蓋部12を取り囲むことによって、当該蓋部12が位置決めされた状態となっている。もっとも、蓋部の内面側に形成された環状突部を、開口部の内周縁部に当接させて、蓋部の位置決めを図るようにしてもよい。
【0038】
また、上記状態から、蓋部12を上方に持上げることによって、蓋部12を開口部27から取外せるようになっている。なお、蓋部12の外面(上面)の略中央部には、つまみ部13が突設されており、利用者が手でつまみ部13をつまむことによって、当該蓋部12を開口部27に対して容易に着脱できるようになっている。
【0039】
抽出網30は、網目を有する筒状に形成され、開口部27を通って容器部20内に配設可能に構成されている。
【0040】
より具体的には、抽出網30は、網部32と、上枠部34と、下枠部36と、弾性環状部材38とを有している。
【0041】
網部32は、網材を筒状に形成した構成とされている。ここでは、網部32は、軸方向に沿って径が同じである筒状に形成されている。網部32が軸方向に沿って径が同じである筒状であることは必須ではないが、そのような形状であれば、面状に広がる網材から網部32を容易に製造できるという利点がある。網材としては、ステンレス細線で形成されたステンレス製の網材、その他の金属製の網、樹脂製の網、植物性の網等を用いることができる。また、網材を筒状に加工する際に接続箇所が発生する際には、溶接等で接合してもよいし、当該網材の端部を重ねて配設するだけであってもよい。
【0042】
上枠部34は、ステンレス製の帯板材等を円状に曲げると共に、網部32の他方側(上側)の端縁部開口を挟込むように二つ折り状に折曲げることにより形成されている。
【0043】
また、ここでは、上枠部34の上端部を外側に向けて折曲げることで、抽出網30の外側に張出すつば部34aが形成されている。つば部34aの外径は、開口部27の内径と同じ値か又は小さい値に設定されている。このつば部34aは、抽出網30の軸方向に対して直交する方向に延在する板部材として存在することで、抽出網30の他方側(下側)の開口部の変形を抑制する役割を有している。なお、つば部34aは、抽出網30の内側に張出す形状であってもよい。もっとも、つば部34aが抽出網30の内側に張出すことで、抽出網30を容器部20内に配設した状態で、網部32と開口部27との隙間を可及的に塞ぐことができる。これにより、抽出網30内に被抽出物を投入する際に、被抽出物が容器部20内であって抽出網30外にこぼれ落ちることを抑制できる。
【0044】
もっとも、上枠部34は必須ではないし、また、つば部34aも必須ではない。
【0045】
下枠部36は、ステンレス製の帯板材等を円状に曲げると共に、網部32の一方側(下側)の端縁部開口を挟込むように二つ折り状に折曲げることにより形成されている。また、ここでは、下枠部36の下端部を外側に向けて折曲げることで、抽出網30の外側に張出すつば部36aが形成されている。つば部36aの外径は、凹部24の同径部分26aの内径と同じ値か又は小さい値に設定されていることが好ましい。ここでは、弾性環状部材38の装着を考慮した分、つば部36aの外径は、凹部24の同径部分26aの内径よりも小さい値に設定されている。このつば部36aは、抽出網30の軸方向に対して直交する方向に延在する板部材として存在することで、抽出網30の一方側(上側)の開口部の変形を抑制する役割を有している。なお、つば部36aは、抽出網30の内側に張出す形状であってもよい。
【0046】
もっとも、下枠部36は必須ではないし、また、つば部36aも必須ではない。
【0047】
弾性環状部材38は、抽出網30の一方側(下側)の開口部に装着された部材である。より具体的には、弾性環状部材38は、シリコーンゴム、合成ゴム等のエラストマーによって形成されている。ここでは、弾性環状部材38は、つば部36aの外径よりも小さい内径で、かつ、凹部24の同径部分26aの内径と略同じ外径を有する環状部材に形成されている。また、弾性環状部材38の内周部に、つば部36aを嵌め込み可能な環状溝38bが形成されている(図3参照)。弾性環状部材38をつば部36aの外側に被せるようにして、つば部36aの外周縁部を環状溝38bに嵌め込むことで、弾性環状部材38が抽出網30の一方側の開口部に装着される。
【0048】
この抽出網30を容器部20内に装着する際には、弾性環状部材38が凹部24内に嵌め込まれる。この際、弾性環状部材38が、凹部24の同径部分26a内においてその上下方向任意の位置に嵌め込まれることで、当該弾性環状部材38の外周部が同径部分26aの内周面に接する。これにより、容器部20内において抽出網30の内外空間がより確実に仕切られる。また、弾性環状部材38が、凹部24の同径部分26aを越えて細径変化部分26bに押込まれると、弾性環状部材38の外周部が細径変化部分26bの内周面に強く押し当てられる。これにより、容器部20内において抽出網30の内外空間がより確実に仕切られるようになる。
【0049】
なお、下枠部36のつば部36aを省略した場合、弾性環状部材は枠部の下側より嵌め込まれてもよい。また、下枠部36を省略した場合、弾性環状部材は網部の一方側(下側)の開口部に直接装着されてもよい。また、弾性環状部材38は省略されてもよい。
【0050】
なお、抽出網30は、全体として容器部20の開口部27よりも小さな径の筒状に形成されており、当該開口部27を通って容器部20内に配設できるようになっている。
【0051】
また、抽出網30の軸方向における高さ寸法は、蓋部12が開口部27に装着された状態で、抽出網30の一方側(下側)開口部が凹部24に嵌め込まれる関係を維持するように、蓋部12が抽出網30の他方側(上側)開口部に当接するように設定されている。ここでは、抽出網30の高さ寸法は、凹部24の周壁部26における同径部分26aと細径変化部分26bとの境界と、蓋部12の内面のうち周壁部26の上方部分までの距離Hと略同じになるように設定されている。
【0052】
これにより、抽出網30を容器部20内に配設した状態で、抽出網30の一方側(下側)の開口部が凹部24内に十分に嵌め込まれていない状態であっても、蓋部12を開口部27に装着すると、抽出網30が押込まれ、その一方側開口部が凹部24内に十分に押込まれる。また、抽出網30を容器部20内に配設した状態で、蓋部12が自重によって抽出網30を容器部20内に押込む。また、ポット10からカップ等に飲料を注ぐ場合に、利用者が手で蓋部12を押えると、その押え込みの力によっても、抽出網30の一方側開口部が凹部24に押込まれる。このため、抽出網30の一方側開口部とポット10の内面である凹部24との間の隙間がより確実に閉ざされることとなる。
【0053】
もっとも、抽出網30の高さ寸法を上記のように設定することは必須でなく、抽出網30を容器部20内に装着した状態で、蓋部12を装着しても、抽出網30の他方側(上側)の開口部が蓋部12に接しない構成であってもよい。
【0054】
このように構成されたポット10の使用方法について説明する。
【0055】
まず、空の容器部20内に、開口部27を通って抽出網30を配設し、抽出網30の一方側(下側)の開口部を凹部24内に嵌め込む。この際、抽出網30の一方側(下側)の開口部を凹部24の細径変化部分26bに嵌め込むことが好ましい。もっとも、これは必須ではなく、抽出網30の一方側(下側)の開口部が凹部24の同径部分26aに嵌め込まれていてもよい。
【0056】
この状態で、容器部20の上方の開口部27内に配設された、抽出網30の他方側(上側)開口を通って、抽出網30内に被抽出物を投入する。この際、上枠部34のつば部36aによって、抽出網30の他方側(上側)の開口部と容器部20の開口部27の縁部との間の隙間がなるべく小さくなるように塞がれているため、被抽出物が抽出網30からこぼれ難い。
【0057】
この後、お湯を、容器部20の上方の開口部27を通って容器部20内に注ぐ。この際、抽出網30内空間の底は、容器部20の底と一致している。このため、容器部20に注がれたお湯が少量であっても、被抽出物は当該お湯に浸される。このため、少量のお湯であっても、被抽出物からその飲料成分等を十分に抽出することができる。
【0058】
容器部20内にお湯を注いだ後、蓋部12を装着し、飲料成分を抽出するのに適切な時間が経過すると、利用者が手で取っ手部29を持って、ポット10を持上げ、注ぎ口部28を下方に向けるようにポット10を傾ける。すると、容器部20内において抽出成分が溶け込んだお湯、即ち、飲料が、注ぎ口部28から流れ出て、注ぎ口部28の下方にある湯飲み等の容器に注がれる。
【0059】
この際、抽出成分が溶け込んだお湯(飲料)が抽出網30を通過し、被抽出物は抽出網30内に残存する。また、お湯は、筒状の抽出網30の周り全体を使って濾過されるため、濾過面積を比較的大きくすることができる。これにより、飲料を円滑に注ぎ出すことができる。また、抽出網30の一方(下方)側の開口部と凹部24とが嵌まり合った構成であるため、抽出網30の一方側(下側)の開口部と容器部20の底内面との間を通った、被抽出物の通過も抑制されている。特に、飲料を注ぐ際に、利用者が蓋部12を押えることで、抽出網30の一方側(下側)の開口部と凹部24とが嵌まり合った構成がより確実に維持されるため、被抽出物の通過がより確実に抑制される。
【0060】
しかも、抽出網30の一方側(下側)の開口部が、凹部24の上方開口部と最底部25との間に位置した状態で凹部24に嵌め込まれるため、図4に示すように、底に沈んだ被抽出物L(特に、粉末状の被抽出物Ls)は、当該凹部24の底に貯まっている。このため、容器部20内の底に沈んだ被抽出物L(特に、粉末状の被抽出物Ls)が流出し難くなり、注ぎ口部28から注ぎ出されるお茶に、粉末状の被抽出物Ls等が混じることが抑制される。
【0061】
また、被抽出物Lから飲料成分を抽出した後には、本ポット10を洗浄することになる。この際には、蓋部12を取外し、抽出網30を、開口部27を通って上方に引出す。そして、抽出網30の全体に勢いよく水を流しかけ、必要に応じブラシ等を使って、抽出網30に付着していた被抽出物を洗い流す。この際、抽出網30は、容器部20から取外されているため、抽出網30のいずれの位置に対しても、水を流しかけ、また、ブラシ洗浄することができる。また、通常、抽出網30の内側に被抽出物がこびりつきやすいところ、抽出網30の外側からも水を流しかけることができるため、付着した被抽出物をより確実に洗い流すことができる。また、容器部20については、内部に水を流しかけ、あるいは、ブラシで容器部20の内周面をこする等して、洗浄する。この際、凹部24は、円状の最底部25と、最底部25の周りを囲む内向きの周壁部26とを有し、細径変化部分26bの内周面は、外向きに凸となる湾曲曲面を描きつつ、同径部分26aの下端部内周面から徐々に狭まりつつ最底部25の外周縁部に至る形状であるため、当該凹部24をブラシ或は流水等で容易に洗うことができる。その他、容器部20の外周、蓋部12等については、一般的なポット10と同様の方法で洗浄することができる。
【0062】
以上のように構成されたポット10によると、抽出網30の一方側(下側)の開口部は、凹部24と上方開口部と最底部25との間に位置した状態で凹部24に嵌め込まれて容器部20に装着されるため、当該抽出網30を容器部20から容易に取外しまた装着することができる。また、被抽出物を抽出網30内に投入した後、飲料を注ぐ際には、抽出網30内に投入された被抽出物の少なくとも一部は、抽出網30の一方側(下側)の開口部と凹部24との接触部分よりも底側で凹部24内に貯まる。このため、被抽出物が抽出網30と凹部24との接触部分を通って漏出し難い。特に、細かい被抽出物は、凹部24の底の下方に貯まる傾向にあるため、飲料を注ぐ際に、抽出網30の一方側(下側)の開口部との接触部分を通って漏出し難い。
【0063】
しかも、凹部24は、同径部分26aの下端部内周面から徐々に狭まりつつ最底部25の外周縁部に至る形状であるため、凹部24の底に貯まった被抽出物を洗浄し易い。
【0064】
また、抽出網30の一方側(下側)の開口部を、凹部24の同径部分26aの任意の位置に嵌め込むことができるため、抽出網30の高さ方向に関しては、抽出網30の位置決め精度は低くてもよい。このため、抽出網30の装着を容易に行える。
【0065】
また、凹部24は、同径部分26aの下端部から最底部25に向けて、内径が順次小さくなるように形成された細径変化部分26bを有しているため、抽出網30の一方側(下側)の開口部を凹部24の細径変化部分26bに嵌め込んでいくと、抽出網30の一方側(下側)の開口部が凹部24の内周面により強く押付けられ、それらの隙間がより小さくなる。これにより、抽出網30内からの被抽出物の漏出をより確実に抑制できる。
【0066】
また、抽出網30の一方側(下側)の開口部に弾性環状部材38が装着されているため、この弾性環状部材38を凹部24の内周面に密着させることができる。これにより、抽出網30の一方側(下側)の開口部と凹部との隙間をより確実に小さくして、抽出網30内からの被抽出物の漏出をより確実に抑制できる。
【0067】
また、抽出網30の一方側(下側)の開口部及び他方側(上側)の開口部につば部36a、34aが形成されているため、このつば部36a、34aによって、抽出網30の一方側(下側)の開口部及び他方側(上側)の開口部の変形を抑制できる。特に、抽出網30の一方側(下側)の開口部の変形を抑制することによって、抽出網30の一方側(下側)の開口部の外周全体を、ぴったりと凹部24の内周面に嵌め込む状態を維持することができる。これにより、抽出網30の一方側(下側)の開口部と凹部24との隙間をより確実に小さくして、抽出網30内からの被抽出物の漏出をより確実に抑制できる。
【0068】
また、蓋部12が抽出網30を押え込んでいるため、抽出網30の一方側(下側)の開口部と周壁部26との嵌まり合い関係をより確実に実現或は維持することができる。これにより、その間を通った被抽出物の通過をより確実に抑制することができる。
【0069】
{変形例}
なお、上記実施形態では、抽出網30がその軸方向に沿って同径である筒状である例で説明したが、必ずしもその必要はない。例えば、抽出網は、軸方向一方側(ここでは下方側)に向けて順次縮径する筒状に形成されていてもよい。
【0070】
また、被抽出物としては、日本茶、紅茶、中国茶等の各種茶葉、その他、コーヒー等を想定することができる。すなわち、本実施形態は、各種被抽出物から、お湯、お水等の液体を溶媒として、コーヒー成分等の各種飲料成分を抽出するものに適用可能である。
【0071】
抽出網30の網目の大きさは、それらの被抽出物の大きさに応じて適宜設定される。抽出網30は、日本茶用、紅茶用、コーヒー用等、被抽出物の種類に応じて別々のものを準備しておくことが好ましい。これにより、別種の抽出物のにおいが、他の抽出物を抽出する際に、移ってしまうことを抑制することができる。
【0072】
また、抽出容器、蓋部は、ガラス、陶器、漆器、金属製等によって製造することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 ポット
12 蓋部
20 容器部
23 底部
24 凹部
25 最底部
26 周壁部
26a 同径部分
26b 細径変化部分
27 開口部
30 抽出網
34 上枠部
34a つば部
36 下枠部
36a つば部
38 弾性環状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被抽出物から飲料成分を抽出する抽出器であって、
内部に液体を貯留可能な器状に形成され、上方に開口部が形成された抽出容器部と、
前記抽出容器部の開口部に着脱可能に装着される蓋部と、
網目を有する筒状に形成され、前記開口部を通って前記抽出容器部内に配設可能な抽出網と、
を備え、
前記抽出容器部の底部内面に、前記抽出網の一方側開口部を嵌め込み可能な凹部が形成され、
前記抽出網の一方側の開口部が、前記凹部の上方開口部と最底部との間に位置した状態で前記凹部に嵌め込まれる、抽出器。
【請求項2】
請求項1記載の抽出器であって、
前記凹部は、前記上方開口部側に、前記抽出網の一方側の開口部を任意の位置にて嵌め込み可能な同径部分を有する、抽出器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の抽出器であって、
前記凹部は、前記上方開口部から前記最底部に向けて順次狭くなる細径変化部分を有する、抽出器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の抽出器であって、
前記抽出網の一方側開口部に、弾性環状部材が装着されている、抽出器。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の抽出器であって、
前記抽出網の一方側開口部に、外側又は内側に張出すつば部が形成されている、抽出器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の抽出器であって、
前記抽出網の他方側開口部に、外側又は内側に張出すつば部が形成されている、抽出器。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一つに記載の抽出器であって、
前記蓋部が前記抽出容器部の開口部に装着された状態で、前記抽出網の一方側開口部縁部が前記凹部に嵌め込まれる関係を維持するように、前記蓋部が前記抽出網の他方側開口部に当接する、抽出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−179323(P2012−179323A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45963(P2011−45963)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【特許番号】特許第4805420号(P4805420)
【特許公報発行日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(506095526)
【Fターム(参考)】