説明

担体上に膜を持つデバイス、そしてそのような膜を製造するための方法

【課題】担体上の膜の完全性を監視することが可能な手段を備える担体上の膜を提供する。
【解決手段】本発明は、液体の濾過のための、担体および膜からなる担体上の膜に関する。本発明は、また、本発明による担体上の膜を製造するための方法に関する。本発明は、さらに、本発明による担体上の膜の適用に関し、また、そのような膜からなるモジュールに関する。本発明は、また、そのような担体上の膜内の破損を判定するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体上の膜からなる、特に液体の濾過のためのデバイスに関する。本発明は、また、担体上に膜を持つデバイスを製造するための方法に関する。本発明は、さらに、本発明による、担体上に膜を持つデバイスの用途に関し、担体上のそのような膜からなるモジュールに関する。本発明は、また、担体上のそのような膜の破損を判定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
濾過膜は、米国特許第5,753,014号から既知である。この濾過膜は、膜孔を持つ膜からなる。これらの膜孔は、孔径が、5nm(ナノメートル)から50マイクロメートルである。例えば、適当な蒸着またはスピン・コーティングにより、担体上に薄層を付着させることによって膜を形成できる。このようにして形成した膜に、それから、例えば、リソグラフィ工程後のエッチングによって穿孔を行う。さらに、そのような膜を、例えば、限外濾過、ガス分離または触媒反応のための隔層を付着させるための担体として用いることができることが明示されている。
【0003】
担体が存在する場合は、この担体を完全にエッチングしても、または、担体に、膜の膜孔よりも大きな径を持つ担体孔を設けてもよい。前者の場合は、膜だけが残るが、後者の場合は、担体が膜を支持する。
【0004】
しかしながら、この米国特許による、そのような薄膜フィルタの欠点は、フィルタが機械的に弱いということである。結晶質の出発原料を使用した場合、そのように形成した膜担体の担体孔の壁は、実質的に結晶面からなる。例えば、[100]または[110]シリコンの場合は、<111>の方位が存在する。このメカニズムは、この米国特許を適用する方法に固有なものである。これは、機械的負荷が存在する場合に、破断線が容易に担体を破損に導くため、濾過膜も破断することを意味する。
【0005】
この米国特許の時点で既知であった技術を用いて、担体の外部、またはそれに適用した層にパターンをエッチングすることも可能であるが、担体を通るこのパターンのエッチングは、重大な欠点を伴う。これらの技術では、例えば、アンダー・エッチング(図2を参照)を防止することは不可能である、またはほとんど無理である。この点で理解すべきことは、アンダー・エッチングは、ラッカー層等の耐摩耗層下でエッチングが起こる、同業者には既知の現象を意味することである。この場合、基底構造は、意図しない不利な影響を受ける。
【0006】
さらに、シリコン[100]または[110]ウェーハを用い、そして異方性エッチング技術を使用する場合は、円形あるいはほぼ円形の担体孔を得ることはできない。この場合、結局、<111>方向が好適エッチング方向を決定するため、ダイヤモンド形の担体孔が形成される。この孔もテーパが付いたものである。実質的に直線的に延びることのない各担体孔には、さらに、担体孔を通過する流れを妨げるという欠点がある。この米国特許第5,753,014号によって形成する濾過膜では、デバイス内での製造を中断することなく、膜および/あるいは担体の完全性を監視することは不可能である。これは、そのようなデバイスの稼働率にとって不利である。
【0007】
米国特許第5,753,014号によるそのような膜では、例えば、濾過効率や微細な破損に関わる作用を監視することも不可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、担体上に強化された膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
意図した目的を達成するために、前文で明記したタイプの担体上の膜は、担体孔が丸い断面を持つという本発明による特徴を持つ。
【0010】
驚くべきことに、担体孔が丸い断面を持つ場合、機械的強度が改善されるということを発見した。この丸みが、3マイクロメートルを超える、また好ましくは5マイクロメートルを超える曲率半径を持つ場合、その膜の機械的強度は、局所的欠陥またはより小さな曲率半径のエッジがある担体孔と比較して、50%以上増加する。この強度は、驚くべきことに、担体孔を3マイクロメートル未満、特に0.3マイクロメートル未満の非常に低い表面粗さで具現化することによって、さらに増加させることができる。これによって、割れ発生を、ある程度防止できる。
【0011】
表面粗さが3マイクロメートル未満であれば、機械的強度は、最低約30%改善できる。表面粗さが0.3マイクロメートル未満では、最低で80%改善できる。機械的強度は、担体を持つ膜を比較的均一に締着し、それに負荷を加え、破断圧を測定して判定する。
【0012】
濾過への適用には、担体を持つ膜を、通常、多数の平行な支持バーを備える膜ホルダ内に締着して支持する。前記支持バーに対する膜の担体内の担体孔の分布および大きさは、必要に応じて、担体の応力分布が可能な限り最適になるように最適化できる。
【0013】
機械的耐荷重性能が高い特定な実施例は、担体内に担体孔のパターンが、次のように配置されるという特徴を持つ。第一のパーツ・パターンが高密度の担体孔を持ち、第一のパーツ・パターンに隣接した第二のパーツ・パターンが、より少ない高密度の担体孔を持ち、そして第二のパーツ・パターンに隣接した第三のパーツ・パターンが、担体を持つ膜を膜ホルダ内に損傷なく締着するために、非常に低い密度の担体孔を持つ、または担体孔を全く持たない。この場合、担体内への機械的応力の蓄積も低下する。この場合の密度は、所定の総表面積に比べた、孔の開口面積の値を意味する。第二のパーツ・パターン内の密度は、第一のパーツ・パターン内の密度の半分未満であることが好ましい。これによって、機械的強度を、最低30%改善できる。もう一つの実施例では、パーツ領域毎に段階的な様式で担体孔の密度を変化させることをせずに、この密度を滑らかに変化させ、機械的応力の蓄積を可能な限り分配させることによって、機械的強度を最低50%改善する。
【0014】
驚くべきことに、担体に連続的な細長いシーブ・トラックを設けることで、かなり大きな機械的強度(>20%)が既に得られていることを発見した。したがって、前文に明示したタイプのデバイスの、もう一つの実施例は、担体が連続的なシーブ・トラックを備えるという本発明による特徴を持つ。この「連続的な」は、シーブ・トラックが、例えば、それに直角に配置した、担体孔を持たないストリップ等で中断されないことを意味する。担体にそのようなシーブ・パターンを設けることによって、実際の濾過作用に未使用の表面積を余り残さずに、担体上の膜に対して追加の強度を得ることができる。
【0015】
本発明の以降の目的は、担体上の膜の完全性を監視することが可能な手段を備える担体上の膜を提供することである。
【0016】
驚くべきことに、今は、少なくとも一つの電導体を備えることによって、そのような担体上の膜が得られることが分かっている。これによって、製造工程中でさえも、担体上の膜の完全性を監視することが可能である。
【0017】
したがって、本発明は、製造工程を中断させずに膜の完全性および膜の作用を監視できる、少なくとも一つの電導体を備える担体上の膜に関する。
【0018】
これによって、例えば、製造設備のより良い稼働率、そして膜のより良い保守管理が得られる。
【0019】
本発明の以降の目的は、担体上に強化した膜を製造するための方法を提供することである。
【0020】
今は、驚くべきことに、まず担体の第二の側面内に、またはそれに適用した層内にパターンをエッチングし、そして以降のステップにおいて、これを貫通エッチングすることによって、上述の欠点がない、所望の大きさ、深さ、そしてテーパーを持つ担体孔を得ることが可能なことが分かっている。したがって、本発明は、そのような担体上の膜を製造するための方法に関する。
【0021】
本発明による担体上の膜は、一方で、異なる大きさの粒子に対して良好な選択的分離能力を持つが、他方で、適用が容易であるため、流体、特に液体の濾過に適当である。それでなければ、本発明による担体上の膜は、ガス内で異なる大きさを持つ粒子の分離にも特に適当である。この分離は、2枚の膜を直列に使用することで、さらに改善することもできる。特定の粒度範囲を持つ粒子は、細分化手段によって、直列の2枚の膜で分離できる。
【0022】
さらに、本発明による担体上の膜は、破損の発生に対する耐性が優れている。例えば、担体上の膜を頻繁に置換する必要がないため、これは、重要な意義を持つ利点である。これは、工程デバイスの稼働率を改善する。破損がより少ないことに関する重要な利点は、さらに、通常のフィルタに比較して、分離が継続的により均一に進行し、加えて、付着物が非常に少ないということである。発明者は、これが、膜の薄いスムーズ面に起因していると考えている。とりわけ、担体上の膜の膜孔の特定なデザインのため、本発明による担体上の膜は、また、他のフィルタと比較して、バック・フラッシングおよび/あるいはバック・パルシングが容易に可能であるため、クリーニングを単純化して改善できる。フラッシング後に濾過は良好に進行するので、このバック・フラッシングおよび/あるいはバック・パルシングは、通常の濾過をさらに促進する。また、バック・フラッシングおよび/あるいはバック・パルシングは、例えば、工程時間のロスを少なくするように、頻度を少なく、または少ない時間で実行できる。
【0023】
本発明による担体上の膜は、さらに、かなり高い圧力に耐えるという点で、従来の類似な膜よりも非常に強力である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、担体上にある膜の例を示す概略断面図である。 図1は、膜孔14を備える膜13と、二側面が外層12で覆われた担体11とを示す。この場合、層13は、オプションとして保護層であってもよい。層13は、例えばSiの層であり、層12は、例えばSiOの層であり、この場合の層11は結晶質Siであり、そして15は、担体内の担体孔である。層12は、厳密には必要でなく、適当な場合は省略してもよい。
【0025】
図2は、担体上にある類似の膜を示す概略断面図である。この担体は、追加の「カップ」21を備える。このカップは、一回ではなく、二回のエッチング工程によって達成できる。下側は、(膜を通した等方性湿潤薬品による)上側とは異なるエッチング技術(D.R.I.E.)でエッチングする(詳細に関しては下記を参照)。利点は、比較的多量のSi担体物質が残るため、結果としてより強力なウェーハになり、可能な限りの有効濾過表面積を実現できることである。カップ21は、担体孔15の断面の約1から50倍の断面を持つ。これは、2から10倍であることがより好ましい。担体孔15の径は、非濾過液体が濾過液体に直接接触するような欠陥が膜にある場合に液体の流れを強く制限できるよう、小さく選択することもできる。担体孔15の流動抵抗は、膜領域14の流動抵抗よりも10から50倍低いことが好ましい。
【0026】
図3は、図2のような、担体上にある膜の例を示す概略上面図である。担体には担体孔31が設けられており、それらに対して相互に埋め合わせるように、例えば、250x2500マイクロメートルの寸法を持つ長方形の膜領域30が配置されている。担体の円形孔31は200マイクロメートルの径を持ち、孔31間の相互距離32は、担体の機械的強度を大いに向上させながら大きな有効濾過表面積が得られるよう、最低800マイクロメートルである。膜領域の表面積は、担体孔の断面積の2から20倍大きい。
【0027】
図4は、図1のような、担体上にある膜の例を示す概略下面図である。担体には担体孔15が設けられている。機械的耐力性能を高めるために、担体孔45の中心間距離を全くあるいはほとんど変化させずに、パーツ・パターン42、43、44毎に担体孔15のサイズ41が異なるように選択して、担体孔の密度を変化させている。このようにして、担体の応力分布を最適化できる。支持バー46の近くでは担体孔の密度は低く、二本の支持バーの間で、中央方向へ、担体孔の密度は高くなる。
【0028】
機械的な耐力性能が高い担体上にある膜の、特定な実施例では、担体孔パターンが担体に、次のように配置されるという特徴を持つ。損傷させずに、担体を持つ膜を膜ホルダ内に締着させるために、第一のパーツ・パターン42が高密度の担体孔を持ち、第一のパーツ・パターンに隣接した第二のパーツ・パターン43が、より少ない高密度の担体孔を持ち、そして第二のパーツ・パターンに隣接した第三のパーツ・パターン44が、非常に低い密度の担体孔を持つ、あるいは担体孔を全く持たない。この場合、担体内への機械的応力の蓄積も低下する。
【0029】
図5は、図4に示す例の変形を示す。担体内の応力分布を最適化するために、この図では、担体孔のサイズ41を変化させるのではなく、担体孔間の中心間距離45を変化させている。これは、という長所がある。直径に対して最適化させたエッチングプロセスは、担体上で一様に進行する(より大きな孔は、より急速にエッチングできる)。
【0030】
第一の実施例における本発明は、連続なシーブ・パターンを備える担体上の膜に関する。
【0031】
用語「膜」は、膜孔を備えた層を意味する。これらの膜孔は、大きさ、深さおよび形状に関して、高度に均一である。膜は、オプションとして、担体上に付着させた物質から構成してもよい。膜に適当な物質は、例えば、シリコン、炭素、酸化シリコン、シリコンナイトライド、シリコン・オキシナイトライド、シリコン化合物、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化チタン、チタン・オキシ・ニトリド、窒化チタンおよびイットリウム・バリウム酸化銅等の無機またはセラミック成分である。パラジウム、鉛、金、銀、クロミウム、ニッケル、鋼を含む金属または合金、鉄合金、タンタル、アルミニウムおよびチタンも、膜物質として用いることができる。膜は、シリコン・カーバイドまたはダイヤモンド・ライク・カーボン(DLCまたはSP)層からなることが好ましい。これによって、例えば、シリコン・ナイトライドを適用した膜層よりも、より高い機械的負荷が可能になる。
【0032】
もう一つの実施例は、膜が、化学的に不活性な、望ましくは親水性の被覆層、例えば親水性プラスチック層、または酸化チタン、カーバイドまたはシリコンカーバイド等の無機層を備えるという特徴を持つ。膜および/あるいは被覆層は、さらに、電導性を持つことが好ましい。これによって、濾過中に汚損を防ぎ、および/あるいは洗浄時に付着物を取り除くことが可能になる。この層の厚さは、長期に渡る薬品負荷に十分で、膜孔が小さくなり過ぎるほど必要以上に厚くもない、1から350ナノメートルであることが好ましい。
【0033】
担体と膜とを異材質から構成してもよい。また、必要に応じて、膜層の機械的性質を改善するために、または担体内への担体孔のエッチング中に、例えば、反応性イオン・プラズマから膜層を保護するために、例えば、酸化シリコン等の中間層を設けてもよい。酸化シリコンの代わりに、非常に薄い酸化チタンまたは酸化クロムまたは他の適当なオキシドあるいはニトリド層を、例えばエッチング停止層として適用することもできる。
【0034】
実際、膜の材料の選択に対しては、多くの制限はない。最も重要な制限は、膜に、担体に対する適合性があるということである。これは、膜と担体とが、化学的な、または物理的な接着によって、相互に十分に結合しなければならないことを意味する。これは、オプションとして、中間層によって達成できる。膜は、さらに、選択用途に対して適当でなければならない。例えば、無毒性で、化学的に不活性でなければならない。しかしながら、膜の材料としては、比較的単純な方式での付着が可能で、化学的に不活性であるシリコン・ナイトライドが好ましい。
【0035】
用語「担体」は、膜を支持することを意図した構造を示す。これによって、他の性能にあまりに悪影響を与えることなく、特に膜の機械的性質を改善できる。
【0036】
通常、例えば、膜を担体上に付着させることによって、担体と膜とを結合する。本発明による担体上の膜の、担体に適当な材料は、無機またはセラミック成分からなることが好ましい。この例としては、シリコン、炭素、酸化シリコン、シリコンナイトライド、シリコン・オキシナイトライド、シリコンカーバイド、シリコン化合物、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化チタン、チタン・オキシ・ニトリドおよび窒化チタン、そしてイットリウム・バリウム酸化銅がある。パラジウム、タングステン、金、銀、クロミウム、ニッケル、鋼を含む金属または合金、鉄合金、タンタル、アルミニウムおよびチタンも、担体材料として適用できる。オプションとして、担体に、例えば、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエステル、セルロース、ポリホルムアルデヒドおよびポリ・スルフォン等の高分子物質を適用してもよい。
【0037】
生物医学的な用途に対しては、担体を、シリコンナイトライド、シリコンカーバイド、シリコン・オキシナイトライド、チタン、酸化チタン、チタン・オキシ・ニトリド、窒化チタン、ポリアミドおよびポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))等の、生体適合材料から構成できる。また、担体に、これらの材料の生物適合性被覆を設けてもよいし、あるいは例えば、ヘパリン被覆等の、もう一つの生物適合性被覆を設けてもよい。
【0038】
担体は、屈曲孔構造、焼結セラミック材料、焼結金属粉または屈曲高分子膜等の、マクロ孔質材料から構成してもよいし、後で担体孔が形成できる初期に閉じた材料、例えば、半導体ウェーハ、金属担体または無機ディスク等から構成してもよい。さらに、太陽電池産業で一般的な多結晶シリコンを加工することさえも可能である。これは経済的に有利である。この場合、好適な結晶方位が存在しないため、担体上の膜は、最低で20%以上の耐荷重を達成可能である。
【0039】
膜側のマスクは、0.1×0.1マイクロメートルから5.0×5.0マイクロメートルの寸法の、複数の矩形スロットを持つパターンからなることが好ましい。このようなスロットの利点は、既存のリソグラフィ技術で容易に転写できる、そして良い作用を持つことである。これらのスロットは、他の理由もあるが、十分に均一に形成できるという理由で都合がよい。
【0040】
スロットの正確な寸法は、用途によって決定する。この例において、ミルクからの微生物の濾過には0.6〜0.9x2.0〜4.0マイクロメートル、脂肪の濾過には0.5〜3.0x1.0〜10マイクロメートル、タンパク質の濾過には0.05〜0.1x0.1〜0.5マイクロメートルである。
【0041】
用語「スロット」は、長方形の膜孔を意味する。担体側におけるマスクは、100マイクロメートルから1000マイクロメートルの径の、実質的に円形の膜孔を持つパターンからなることが好ましい。200マイクロメートルから500マイクロメートルの径であることがより好ましく、200マイクロメートルから300マイクロメートルの径であることが最もことが好ましい。この場合、担体孔のシーブ・パターンは、3から15mm幅の複数のトラック内に位置し、トラック間には1から8mmの非露光スペースが存在する。好適実施例では、これらは、幅約8mmの複数のトラックと、約3mmの一つの中間スペースである。膜の厚さは、50nmから2マイクロメートルであることが好ましい。さらに、300nmから1.5マイクロメートルであることが非常に好ましく、約1マイクロメートルであることが最も好ましい。膜の厚さの選択は、他の要因にもよるが、担体の担体孔の大きさの選択に依存する。例えば、薄い膜を選択した場合は、この減少した強度を、より小さな担体孔を担体に配置することによって補正することができる。同業者には明らかであるが、担体上の膜の他の特徴と組み合わせて、例えば、選択性、強度等の、所望の特性を得るために、そのようなパラメータを容易に修正できる。層が厚過ぎると、付着には比例してより長い時間が必要になるため、経済的に好ましくない。層が薄過ぎると、例えば、関連距離範囲に渡って厚さの均一性が不十分になり、そのため層の強度が十分でないため、層の作用が不十分になる。膜は上述の材料から形成できる。また、Siからなることが好ましい。
【0042】
従来の類似タイプの膜は、最高約2バールの圧力に耐えるだけであったが、このような担体上の膜は、概して、約7バールの圧力に耐えるに十分な強度を持つ。
【0043】
第二の実施例における本発明は、優先結晶方位と実質的に異なる方向の壁を持つ担体孔からなる担体上の膜に関する。
【0044】
本文における用語「結晶方位」は、結晶格子に関したベクトルに対して、結晶学において一般的な呼称である。
【0045】
用語「優先結晶方位」は、担体等の材料をエッチングした、特に材料を湿らせてエッチングした場合に生じるその方位、またはそれらの方位に言及する。例えばSiの場合は、<111>が、[100]面に意図した優先結晶方位である。そのような優先方位の欠点は、角度が負荷の際の応力の中心になり、担体の破損の開始点として作用するため、膜の破損にも至ると見なされることである。
【0046】
また、担体に形成した担体孔が、不利なパターンに位置する(例えば、担体孔のすべての四角い側面が、<100>方位にある)場合、破損は比較的急速に生じる。特に、担体上の膜の寿命にとって不利な、機械的負荷が存在する場合に、これらの転位に沿う破損のチャンスを増加させるメカニズムが本質的に存在する。
【0047】
典型的な例では、担体の担体孔は、実質的に円形または楕円形の断面を持つため、破断形成をかなり防止する。
【0048】
第三の実施例における本発明は、担体の担体孔の壁が、担体の表面に対して実質的に直角である、あるいは正のテーパーまたは負のテーパーを持つ、またはこれらの組み合わせを持つ担体上の膜に関する。
【0049】
そのような担体上の膜の例は、正のテーパー輪郭を持つ担体孔を少なくとも部分的に備えた担体を含む。担体の法線に対する輪郭の角度は、この場合、図1に概略的に示すように、1から25°、特に5から15°である。角度が大きくなりすぎると、担体上の膜を通過する流れが過度に制限されることになる。他方、大きな角度の場合は、より多くの担体材料が存在するため、強度は向上する。
【0050】
用語「テーパー」は、表面に対して直角な法線と、担体にエッチングした担体孔の壁に沿うベクトルとの間の角度を示す。担体孔は、実際円形または多少楕円形の円錐構造の形状である。
【0051】
用語「正のテーパー」は、膜の方向に見て、担体の外面から担体孔の大きさが減少するテーパーを意味する。
【0052】
用語「負のテーパー」は、膜の方向に見て、担体の外面から担体孔の大きさが増加するテーパーを指す。
【0053】
以降の実施例における本発明は、膜と担体との各々に化学的に不活性な保護層を設けた担体上の膜に関する。この層は、親水性の保護層、例えば、親水性プラスチック層であることが好ましい。あるいは例えば、酸化チタンまたはシリコンカーバイド等の無機層であることが好ましい。
【0054】
膜および担体の両方が保護層を備えることが好ましい。この保護層は、担体上の膜を環境の影響から保護するように機能するため、担体上の膜の、より長い寿命を実現する。
【0055】
この層は、さらに、親水性であることが好ましい。これによって、液体の濾過における、この層への粒子の粘着を低下させることができる。同業者には明らかであるが、親水性層の選択は、濾過すべき液体、および達成すべき効果に関係する。親水性層は、概して、水性液の場合に選択する。この選択は、担体上の膜の作用に有利である。
【0056】
保護層の厚さは、30nmから1マイクロメートルであることが好ましい。40nmから200nmであることがより好ましい。約50nmであることが最も好ましい。過度に薄い層では、保護が不十分であるし、逆に、厚い層を形成するには、非常に長い時間が必要である。保護層は、上記に明示した材料から構成できる。また、Siであることが好ましい。Siは、多くの種類の用途に対して、化学的にほぼ不活性であるばかりでなく、強力な材料でもある。Siは、親水性材料ではないが、そうであれば十分に適当である。
【0057】
用語「化学的に不活性な」は、担体上の膜を適用する条件において、膜および担体の寿命中に、化学的にほとんど影響を受けないことを保証する特性を意味する。用語「親水性保護層」は、親水性があり、例えば、温度、湿気、適用液体またはガス、光等の、周囲の影響から下位層を保護する層を指す。
【0058】
以降の実施例における本発明は、誘電体で封入した少なくとも一つの電導体を備える担体上の膜に関する。用語「電導体」は、十分な程度に電子を導く物質を意味する。電導体は、他の二つの寸法(幅および厚さ)に比べて、一つの寸法(長さ)がかなり大きい構造を持つ。電導体は、膜および/あるいは担体上に張ったワイヤとみなすことができる。
【0059】
受け入れられている方法によって電導体として配置できる材料の例としては、タングステン、アルミニウムおよびシリコンがある。これらは、オプションとして、電導性を増加させるためにドープしてもよい。
【0060】
そのような導体の目的は、膜および/あるいは担体の完全性を、より容易に判定することを可能にすることである。この判定は、担体上の膜の使用中、例えば、製造中、あるいは製造の休止中に行われることが好ましい。このようにして、ほぼ連続的に、または必要に応じた頻度で、担体上の膜の完全性を保証することができる。担体上の膜がもはや十分でない、すなわち、完全性が全体的に、または部分的に失われた場合は、担体上の膜を置換することを決定できる。このことは、使用濾過デバイスの稼働率をかなり増加させると共に、担体上の膜の作用を改善する。
【0061】
用語「誘電体」は、電導性が全くない、あるいはほとんどない物質を指す。そのような物質の例は、SiおよびSiOである。誘電体は、導電性に関していかなる状況にあっても、電導体をその環境から絶縁する。
【0062】
一般に、誘電体は、接点を除き、電導体を完全に封入する。誘電体は、電導体の前後に付着させた二層からなることが好ましい。第一の層はサブストレートから電導体を絶縁し、第二の層は、残りの環境および/あるいは後続層から導体を絶縁する。しかしながら、誘電体は、非導電性の、または導電性がほとんどないサブストレートと、電導体上に付着させた層とから構成してもよい。同業者には明白であるが、電導体を絶縁する目的で、一般的な技術、または複数の技術の組み合わせを適用することができる。以降の実施例における本発明は、第一の方向に少なくとも一つの電導体と、第一の方向と平行でない第二の方向に少なくとも一つの電導体とを備える担体上の膜に関する。本発明による好適実施例においては、少なくとも一つの電導体が第一の方向に延び、少なくとも一つの電導体が、膜の各交差部分上に、第二の方向に延びる。
【0063】
用語「交差部分」は、膜の多数の、隣接する膜孔間の領域を指す。これは、例えば、長方形のグリッドの場合、4である。この場合、4個の膜孔は、上下にペアとして位置する、あるいは同様に相互に隣接する。それらは、例えば、正方形等の長方形に配置できる。このような様式で、担体上の膜に複数の電導体を設けることによって、各々の膜孔の完全性を別個に判定することが本質的に可能である。局所的破損は、結局、(この例では)破損の位置の交差部分を横切る二本の電導体の抵抗を変化させる。通常、増加させて、非常に高い抵抗値をもたらす。個々の導電率に関する情報を組み合わせることによって、あり得る破損の位置を判定することができる。これは、相当な優位性を提供する。
【0064】
まず第一に、担体上の膜の完全性を全体として監視し、現在の電導体の抵抗を連続的に、または半連続的に測定することによって、直接、不完全な膜および担体の置換に帰結できる。
【0065】
さらに、適時の、膜の作用を監視することが可能である。結局、徐々により多くの微細な破損が発生していく。これは、実際、本来の膜孔よりも大きな膜孔が形成されることを意味する。これによって、より大きな粒子が膜を通過することが徐々に可能になり、より容易になるため、分離効率は減少する。
【0066】
小さな破損の数の増加を監視することによって、さらに、早期に膜全体を置換あるいは修復するという決定ができるため、予期可能な破損を防止できる。これは、破損の発生後、非浄化物質が工程の後方に現れることを防止できるという重要な利点を持つ。
【0067】
以降の実施例における本発明は、次のステップをからなる、担体上の膜を製造するための方法に関する。
a.担体の第一の側面上に膜を設けるステップ。なお、担体の第二の側面上にはエッチングのための層が設けられている。
b.担体の第二の側面上のエッチングのための層内にパターンをエッチングするステップ。
c.ステップb)で得たパターンを、担体のコアを通して膜までエッチングするステップ。
【0068】
用語「エッチング」は、層または層の一部を取り除く化学工程を意味する。エッチングは、ウェット・エッチング・ステップあるいはドライ・エッチング・ステップでもよい。
【0069】
ステップb)では、まず、膜の第二の側面上の第一の層内にパターンをエッチングする。このパターンを、この比較的薄い層にエッチングした後、エッチングを停止する。このパターンのエッチングは、R.I.E.で実行することが好ましい。そのとき、担体自体は、全くエッチングされない、またはほとんどエッチングされない。ステップc)では、担体を通して同じパターンを異なる技術でエッチングする。D.R.I.E.で実行することが好ましい。これは、担体が、担体を貫通する担体孔を備えることを意味する。この位置で、担体は完全にエッチングされる。エッチングは、例えば、膜層で、または反対側に位置する、膜と担体との間のオプション層で停止する。このため、膜は完全に、またはほぼ完全に無傷のままである。
【0070】
用語「パターン」は、リソグラフィで一般的な用語であり、ネガティブを感光層へ転写することに関連する。水溶性ラッカーは、感光層として使用するのに好ましい。このラッカーを、ネガティブを通して露光させ、そして硬化させる。これによって達成したパターンは、エッチング等の、次の処理の準備ができている。
【0071】
驚くべきことに、今は、パターンを、担体側の外層、あるいはそれに適用した層に第一にエッチングし、以降のステップにおいて、このパターンを貫通エッチングすることによって、上述の欠点なしで、所望の大きさ、深さ、そしてテーパーを持つ担体孔を達成できることが分かっている。得られる担体孔は、大きさ、深さおよびテーパー等の関連する特徴における均質性が大きい。さらに、エッチングすべき層のアンダー・エッチングは、全くあるいはほとんど起こらない。これは、担体上の膜の強度を大いに向上させる。
【0072】
さらにもう一つの実施例における本発明は、次のステップをからなる、担体上の膜を製造するための方法に関する。
a.担体を提供するステップ。
b.担体の膜側に膜を配置するステップ。
c.担体側に層を配置するステップ。
d.膜側にマスクを配置して露光するステップ。
e.膜側の膜をエッチングするステップ。
f.担体側にマスクを配置して露光するステップ。
g.担体側の層内にパターンをエッチングするステップ。
h.このパターンを膜側の膜まで貫通エッチングするステップ。
【0073】
本発明によるもう一つの好適実施例において、本発明は、ステップa)の後の、ステップb)の前に、担体の膜側に中間層を適用し、その中間層上で、ステップh)の貫通エッチングを停止させる、担体上の膜を製造するための方法に関する。
【0074】
本発明によるもう一つの好適実施例において、本発明は、両側に保護層を付着させる、担体上の膜を製造するための方法に関する。
【0075】
そのような保護層の付着によるもう一つの効果は、担体および/あるいは膜の担体孔の大きさが、ある程度変化することである。孔は、概して、ある程度埋められるため、小さくなる。用語「中間層」は、もう一つの層に適用した層、すなわち、このケースでは担体の膜側で担体に適用した層を指す。中間層の目的は、例えば、隣接する層の間の粘着を改善する、またはよりきれいな面を得ることである。この層は、さらに、以降の工程段階でエッチングを停止させる機能を持つことも可能である。例えば、そのような中間層まで、担体を反対側からエッチングすることができる。これには、エッチングが、この層で停止し、例えば膜を通過してさらに進むことがないという長所がある。したがって、この膜は、反対側からのエッチングに対して保護されており、全く影響を受けない。このため、より均一なエッチングを達成できる。実際、ここでは、エッチングすべき層で高く、エッチング停止層で低いエッチング速度の違いを利用する。中間層として適当な物質の例は、SiOである。
【0076】
用語「膜」は、上記に定義した層を指す。このためには、先に述べたように、Siを使用することが好ましい。
【0077】
用語「マスク」は、リソグラフィで一般的な用語であり、転写すべきパターンのイメージあるいはネガティブからなる。イメージは、通常、感光層またはラッカーへ転写する。この層またはラッカーを、一般的に硬化させて、それから、もう一つの処理工程を行う。その処理工程を行った後、感光層またはラッカーは、通常取り除く。
【0078】
用語「ウェット・エッチング」は、層または層の一部を化学的に活性な溶液によって除去する化学処理を意味する。この溶液は、例えば水性であり、金属酸化物または半導体酸化物をエッチングする場合には、例えば、水酸化物を含んでもよい。水酸化物の例としては、NaOHやKOHがあるが、KOHを勧める。膜側のマスクは、0.01×0.1マイクロメートルから5.0×5.0マイクロメートルの寸法の、矩形スロットのパターンを含むことが好ましい。そのようなスロットの利点は、既存のリソグラフィ技術で容易に転写でき、良い作用が得られることである。
【0079】
同業者には明白であるが、所望のパターンが転写可能なよう、イメージの大きさに応じて、波長は適当な範囲内で選択する。他の理由もあるが、十分に均一に形成できるとのことで、これらのスロットは十分に都合がよい。スロットの正確な寸法は、用途によって決定する。例として、ミルクからの微生物の濾過には、0.5〜1.0x1.0〜5.0マイクロメートルの平均膜孔を持つ膜を、脂肪の濾過には、0.5〜3.0のx1.0〜10マイクロメートルの平均膜孔、そしてタンパク質の濾過には、0.05〜0.2×0.1〜1マイクロメートルの膜孔を使用できる。同業者にはさらに明白であるが、通常、より小さな膜孔を選択すれば、流量は減少するという関係がある。
【0080】
円形膜孔と比較したスロットのもう一つの利点は、スロットは、遮断され難いということである。濾過すべき液体内に存在する円形粒子、または実質的に円形な粒子は、円形膜孔を容易に遮断することが可能であるが、スロットの場合、膜孔の一部は、開いたままに留まる。濾過すべき液体内の粒子の大部分は、いくぶん円形である。加えて、スロットは、バック・フラッシングおよび/あるいはバック・パルシングによって掃除するのが非常に容易である。用語「スロット」は、長方形の膜孔を指す。
【0081】
マスクは、さらに、100マイクロメートルから1000マイクロメートルの径を持つ、実質的に円形な担体孔のパターンを、担体側に含むことが好ましい。200マイクロメートルから500マイクロメートルの径であることがより好ましく、200マイクロメートルから300マイクロメートルの径であることが最も好ましい。この場合、担体孔は、幅3から15mmの複数のトラック内にあり、トラック間に非露光スペースが1から8mm存在する。好適実施例において、これらは、約8mmの幅を持つトラックと、約3mmの中間スペースである。担体側の層内へのパターンのエッチングは、R.I.E.によって行うことが好ましい。用語「R.I.E.」は、化学の用語、リアクティブ・イオン・エッチングを意味する。この場合の化学処理は、概して、反応性イオンが、層または層の一部を除去する。エッチングに適当な成分の利点は、同業者には既知である。例として、SF6/CHF/Oがある。
【0082】
図2は、膜面を拡大した好適実施例の断面図である。 図1による膜を製造した後、SFプラズマによる等方性エッチング処理を、低温度(−50から−150°C)で適用する。この場合、膜層の孔を通して、膜層下の例えば10から100マイクロメートルの深さまで、担体からシリコン21を除去する。これによって、シリコン担体内の異方性孔も直径が増加するが、このことは、膜デザインにおいて考慮できる。この方法は、シリコンナイトライドとシリコンとの間の良好なエッチング選択性を保証するために、低温(−50から−150℃)で、(オプションとして、振動させた)キセノン・ジフルオリド・ガスで実行することが好ましい。もう一つの方法は、ガス状のエッチング混合物の代わりに、HF/HNO溶液でウェット・エッチングを適用することである。これらの好適実施例の利点は、各々別個の膜領域の寸法が、シリコン担体内の孔の大きさに直接関連する必要がなくなるということである。さらに、等方性エッチング・ステップの適用は、驚くべきことに、多分より丸い、そしてスムーズな構造の結果として、機械的により強力な膜を生じる。
【0083】
同業者は、同様に、所望の用途および所望の結果に応じて、適当な温度範囲だけでなく、適当な圧力範囲およびエッチング・ガス成分をも容易に決定することができる。
【0084】
担体のコアを通過する担体側へのパターンのエッチングは、D.R.I.E.によって実行することが好ましい。用語「D.R.I.E.」は、化学において、ディープ・リアクティブ・イオン・エッチングを指す一般的な用語である。R.I.E.との違いは、主に、D.R.I.E.が、その名前が既に示唆するように、担体孔等の比較的深い構造を、均一な様式でエッチングできるという事実にある。この効果は、エッチングすること、そして担体孔の形成した側壁をポリマーまたは類似物質で被覆することを交互に行うことによって達成できる。これは、側面が過度にエッチングされるのを防止する。さらに、小さなテーパーまたは高アスペクト比を持つほぼ垂直な担体孔を達成できる。そのような処理の例としては、いわゆるボッシュ処理がある。そのエッチングに適当なエッチング・ガス成分の例は、同業者には既知である。同業者は、同様に、所望の用途および所望の結果に応じて、適当な温度範囲および適当な圧力範囲を容易に決定できる。
【0085】
膜の厚さは、50nmから2マイクロメートルであることが好ましい。100nmから1.5マイクロメートルであれば非常に好ましく、1マイクロメートルであることが最も好ましい。そして担体側の層の厚さは、50nmから2マイクロメートルであることが好ましい。100nmから1.5マイクロメートルであれば非常に好ましく、1マイクロメートルであることが最も好ましい。前述から明白であるが、担体上の膜の所望の特徴および特性に応じて、選択を行う。層が厚過ぎると、比例して付着には長時間が必要となるため、経済的に魅力がないものとなる。層が薄過ぎると、層は、例えば、関連距離範囲に渡る厚さの均一性が十分でないため、十分な作用を提供せず、また、十分な強度を持たない。膜は、上述の物質からなることができる。また、Siであることが好ましい。担体側の層は、上述の物質でもよいし、また、Siであることが好ましい。シリコン・カーバイドも、適当な代替物として言及できる。
【0086】
膜、担体層、そしてオプションの保護層は、CVD技術、エピタキシャル成長技術、スピン・コーティングまたはスパッタリングによって付着させることが好ましい。CVDによることが非常に好ましいが、LPCVDによるのが最も好ましい。これらの技術の利点は、比較的単純で安価な方式で、均一な層を付着させることができるということである。
【0087】
用語「CVD」および「LPCVD」は、化学蒸着および低圧化学蒸着を指す。
【0088】
オプションの保護層の厚さは、30nmから1マイクロメートルであることが好ましい。40nmから200nmであることが非常に好ましく、約50nmであることが最も好ましい。層が薄過ぎると、保護が不十分になる。逆に、厚い層を形成するには、長時間がかかる。保護層は、上述の物質からなることができる。また、Siであることが好ましい。
【0089】
以降の実施例における本発明は、次のステップからなる、担体上の膜を製造するための方法に関する。
a.第一の方向で少なくとも一つの電導体を付着させるステップ。
b.第一の方向にある少なくとも一つの電導体を誘電体で被覆するステップ。
c.第二の方向で少なくとも一つの電導体を付着させるステップ。そして
d.第二の方向にある少なくとも一つの電導体を誘電体で被覆するステップ。
【0090】
本発明によるそのような方法によって、膜および/あるいは担体を覆うネットワークが得られる。このネットワークは、破損の有無を両方向で判定できることを保証する。この破損は、微視的な場合も、また巨視的な場合もあるが、これによる外部での測定または一連の測定によって、単純な方式で膜および/あるいは担体の状態を判定できる。
【0091】
電導体はパッドに結合することが好ましい。そしてこれらのパッドは、金などの不活性な電導層を備えることが好ましい。パッドは、外界、例えば、電導体上の電導度を測定するデバイス等との接点として使用する。
【0092】
電導体は、担体上の膜の主要な方向に平行に配置する、すなわちシーブ・トラックの方向に平行および垂直に配置することが好ましい。
【0093】
通常の方法で配置できる電導体として適当な物質の例は、タングステン、アルミニウムおよびシリコンである。これらは、電導度を増加させるために、オプションとしてドープすることもできる。
【0094】
導体の幅は、膜孔の大きさおよび/あるいは膜孔間スペースの大きさよりもかなりより小さいことが好ましい。そのため、500nm以下であることが好ましく、200nmから300nmであればより好ましい。導体の厚さは、50nmから500nmであることが好ましい。200から300nmであればより好ましい。薄過ぎる、および/あるいは狭過ぎる電導体は、電流が不十分になるため、不適当である。以降の実施例における本発明は、流体の濾過のための、本発明による、すなわち本発明による方法で得た、担体上の膜の用途に関する。液体、特にミルク、果汁または乳漿の濾過に関する。
【0095】
本発明による担体上の膜は、一方で、異なる大きさの粒子に対する優れた選択的分離能力を持ち、他方で、適用が容易であるという理由から、液体の濾過に特に適している。本発明による担体上の膜は、破損の発生に対する耐性が非常に良いことに加えて、通常のフィルタと比較して、付着物の発生が非常に少ない。担体上の膜の、例えば担体孔の特別なデザインのため、本発明による担体上の膜は、また、他のフィルタよりも容易に、バック・フラッシングおよび/あるいはバック・パルシングが可能であるため、掃除が単純化され、改善される。さらに、このバック・フラッシングおよび/あるいはバック・パルシングは、フラッシング後に濾過が良好になるため、全体的な濾過作用を向上させる。また、バック・フラッシングおよび/あるいはバック・パルシングは、その頻度を少なくしても、あるいはより少ない時間をかけてもよいため、濾過デバイスの稼働率を向上できる。
【0096】
本発明による担体上の膜は、さらに、高圧に耐えるという点で、従来の類似の膜よりも非常に強力である。
【0097】
以降の実施例における本発明は、本発明による、すなわち本発明による方法によって達成した、担体上の膜を備えたモジュールに関する。そのようなモジュールは、例えば、担体上の膜を封入したホルダからなり、濾過デバイスへの取り付け取り外しが容易である。このようなモジュールの利点は、担体上の比較的脆弱な膜を、膜の置換等の作業の際に保護できることである。モジュールは、担体上の膜だけの場合と比較して、既存の濾過デバイス内への容易な取り付けが可能なように形成できる。
【0098】
用語「モジュール」は、担体上の膜のアセンブリを指し、それは例えば、ホルダである。このモジュールは、例えば、濾過工程に適用できる。
【0099】
以降の実施例における本発明は、本発明による、すなわち本発明によって達成した、担体上の膜内の破損を判定するための方法に関する。この方法は、電導体の導電率を測定するステップ、そしてステップa)で得た情報に基づいて、ありうる破損箇所を特定するステップからなる。
【0100】
既に上述したように、そのような方式で、本発明による担体上の膜の状態に関する情報を容易に得ることができる。このようにして得た情報に基づいて、例えば、担体上の膜の修復または置換等の、オプションのステップをさらに実行できる。
【0101】
本発明を非限定的な例に基づいて説明したが、それらは、本発明の範囲を説明することのみを意図したものである。
【0102】
(例)
直径が6インチ、そして厚さが525マイクロメートルの寸法を持つシリコン・ウェーハを、出発材料として用いる。既知の技術を使用して、シリコン・オキシド層を適用する。これは、後に、ディープ・リアクティブ・イオン・エッチング工程の停止層として機能する。この層の厚さは、約100nmである。工程の後期には、この層は、膜が設けられる側の、シリコンとシリコン・ナイトライドとの間に位置する。
【0103】
低圧化学蒸着(LPCVD)を使用して、両側に、厚さが1マイクロメートルの、シリコンの豊富なシリコン・ナイトライド層を適用する。
【0104】
シリコン・ナイトライドのこの層の上に、光化学ラッカー層を、スピン・コーティングによって適用する。この層内に、ホトリソグラフィーによって、膜孔を表すパターンを配置する。これらは、2.0×0.8マイクロメートルの大きさを持つスロットである。
【0105】
さて、写真技術によって、担体側にマスクを配置する。各々が幅8mmで、3mmの中間スペースを持つ、11本のトラックからなる枠組みを使用する。それから、この枠組み内に、以下の通りに担体孔を配置する。担体側には、250マイクロメートルの径の円形担体孔のみからなるマスクを使用する。
【0106】
両穿孔を相互に対して整列させることによって、マイクロ穿孔部全体を、結局、自由に吊着することができる。
【0107】
リアクティブ・イオン・エッチング(R.I.E.)を使用して、この感光性パターンをシリコン・ナイトライドへ転写する。これを、連続的に両側で行う。
【0108】
ディープ・リアクティブ・イオン・エッチング(D.R.I.E.)を使用して、反対側のシリコン・オキシド停止層までシリコン・ウェーハを通過する直線的な担体孔を形成する。本発明によるこの方法は、以下の利点を提供する。
【0109】
a)使用中、膜のバック・フラッシングおよびバック・パルシングを容易にする。b)D.R.I.E.とR.I.E.との違いは、D.R.I.E.では、アンダー・エッチングの発生なしで、シリコン・オキシド停止層まで、実質的に円錐形の担体孔が得られる。これは、R.I.E.の場合よりもD.R.I.E.の方が、側面エッチング速度がかなり低い(ウェーハに平行なエッチング速度が、垂直へのエッチング速度よりも非常に低い)ためである。
【0110】
使用目的に対して、6インチのウェーハの強度をさらに増加させるために、ウェーハには、この場合、各々が幅8mm、長さ6から12cmの、11ユニットのシーブ・トラックを設ける。この長さは、ウェーハ上の位置によって実質的に決定される。各シーブ・トラック間には、3mmのスペースがある。このスペースは、モジュール内にフィルタを締着させるために使用する。シーブ・トラックと円形担体孔との組み合わせから、フィルタの強度は、かなり増加する。
【0111】
最終ステップとして、SiでLPCVD付着をもう一度実行し、全面に、均一な50nmのSiを提供する(3D被覆工程)。これによって、使用中の不活性を保証する。Siは、結局、アルカリ性および/あるいは酸性クリーニングに対する耐性が良好である。
【0112】
本発明は、上記に概説した担体孔に限定されない。担体内の機械的応力の蓄積を低下させるために、相互に異なる径、相互に異なる形状、例えば、相互に隣接した長方形、多角形、円形および/あるいは楕円形の担体孔を持つ、および/あるいはそれらを混合させて持つことができる。必要に応じて、あり得る過負荷の場合に割れの発生を防止するために、担体には、非常に強力で耐性のある(例えば、SP炭素)エンベロープを設けることもできる。
【0113】
また、本発明は、一つの膜層を持つ担体に限られない。担体には、少なくとも一つの犠牲的な層を用いることにより、一つ以上の膜層を問題なく設けることができる。特定な実施例は、担体の上側と下側とに膜層を備えるという特徴を持つ。この場合、一枚あるいは二枚の膜層に既存の孔を通過させて、ドライ・エッチング・プロセス(プラズマ・エッチング)を実行して、担体内に孔を配置する。例えば、デッドエンド濾過、膜乳化または膜微粒化等の用途に応じて、この構成は、担体孔内に不要な粒子が蓄積することを防止できるという利点を提供する。一方の膜層は、異なる機能を持つ他方の膜層のための、プレフィルタとして機能できる。このような構成は、また、両膜側に横断流を適用することによって、比較的容易に洗浄できる。10から100マイクロメートルの厚さを持つ比較的薄い担体材料は、必要なプラズマ・エッチング時間が相対的に短いため、例えば、5x5mmよりも小さな寸法を持つ比較的小さなチップに有利に適用できる。また、表面の電気湿潤を意図して、膜層に導電層を設け、防汚作用を向上させるということも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】担体上にある膜の例を示す概略断面図である。
【図2】担体上にある類似の膜を示す概略断面図である。
【図3】図2のような、担体上にある膜の例を示す概略上面図である。
【図4】図1のような、担体上にある膜の例を示す概略下面図である。
【図5】図4に示す例の変形を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体上の膜からなるデバイスであって、前記膜が少なくとも一つの膜孔を備え、そして前記担体が少なくとも一つの担体孔を備え、前記担体孔が丸い断面を持つことを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記担体孔が、3マイクロメートル未満、特に0.3マイクロメートル未満の表面粗さを持つことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
第一のパーツ・パターンが第一の密度の担体孔を持つ、第一のパーツ・パターンに隣接した第二のパーツ・パターンが第二の密度の担体孔を持つ、そして第二のパーツ・パターンに隣接した第三のパーツ・パターンが第三の密度の担体孔を持つように、担体孔のパターンを前記担体内に配置するとき、前記第二の密度が、前記第一の密度よりも小さいが前記第三の密度よりも大きく、そして前記第二の密度が前記第一の密度の半分よりも小さいことが好ましいことを特徴とする、前述の請求項の一つ以上に記載のデバイス。
【請求項4】
前記担体が、複数の連続的な細長いパターンを備え、前記パターンが、ほぼ等しい密度の担体孔を持つことを特徴とする、前述の請求項の一つ以上に記載の担体上の膜。
【請求項5】
前記担体が、優先結晶方位を持つ単結晶材料からなり、前記担体が、前記優先結晶方位と実質的に異なる方向の壁を持つ孔からなることを特徴とする、前述の請求項の一つ以上に記載のデバイス。
【請求項6】
前記担体が、多結晶シリコンから製造されることを特徴とする、請求項1から4の一つ以上に記載のデバイス。
【請求項7】
前記担体孔の一つ以上の壁が、前記担体の表面に実質的に直角である、または前記表面に対して正のテーパーまたは負のテーパーを持つことを特徴とする、前述の請求項の一つ以上に記載のデバイス。
【請求項8】
前記膜が、相互にオフセット配置した多数の膜領域からなり、膜領域の表面積が、これに対応する一つ以上の担体孔の表面積の、2から20倍大きいことを特徴とする、前述の請求項の一つ以上に記載のデバイス。
【請求項9】
前記担体孔が、前記膜の直下に、遠隔に位置する担体孔の断面の約1から50倍、好ましくは2から10倍の断面を持つカップを備えることを特徴とする、前述の請求項の一つ以上に記載のデバイス。
【請求項10】
前記担体孔の流動抵抗が、対応する膜領域の流動抵抗よりも、約5から100倍、好ましくは10から50倍少ないことを特徴とする、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記膜および前記担体が、各々、好ましくは厚さが1から350ナノメートルの、化学的に不活性な保護層を備えることを特徴とする、前述の請求項の一つ以上に記載のデバイス。
【請求項12】
前記化学的に不活性な保護層が、親水性であることを特徴とする、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記担体が、二つの側面に、各々が少なくとも一つの膜孔を持つ膜を備えることを特徴とする、請求項1から7の一つ以上に記載のデバイス。
【請求項14】
前記膜が、誘電体で封入した少なくとも一つの電導体を備えることを特徴とする、前述の請求項の一つ以上に記載のデバイス。
【請求項15】
前記膜が、第一の方向に少なくとも一つの電導体、そして第二の、異なる方向に少なくとも一つの電導体を備えることを特徴とする、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
担体上の膜からなるデバイスであって、前記担体が、複数の連続的なシーブ・トラックを備えることを特徴とする、デバイス。
【請求項17】
担体上の膜を製造するための方法であって、
a.第二の側面にエッチングすべき層を備えた前記担体の第一の側面に膜を設けるステップ、
b.前記担体の第二の側面上の前記エッチングすべき層内にパターンをエッチングするステップ、そして
c.ステップb)で得た前記パターンを、前記担体のコアを通して、前記膜までエッチングするステップからなる、方法。
【請求項18】
担体上の膜を製造するための方法であって、
a.担体を提供するステップ、
b.前記担体の膜側に膜を配置するステップ、
c.担体側に層を配置するステップ、
d.前記膜側にマスクを配置して露光するステップ、
e.前記膜側の前記膜をエッチングするステップ、
f.前記担体側にマスクを配置して露光するステップ、
g.前記担体側の前記層にパターンをエッチングするステップ、
h.このパターンを、前記膜側の前記膜まで貫通エッチングするステップからなる、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の、担体上の膜を製造するための方法であって、ステップb)の前に、前記担体の前記膜側に中間層を適用し、この中間層上で、ステップh)の前記貫通エッチングを停止させることを特徴とする、方法。
【請求項20】
請求項17から19のいずれかに記載の、担体上の膜を製造するための方法であって、前記膜の両側と前記担体上に、保護層を付着させることを特徴とする、方法。
【請求項21】
完全性試験に適当な担体上の膜を製造するための方法であって、
a.第一の方向に少なくとも一つの電導体を付着させるステップ、
b.前記第一の方向にある前記少なくとも一つの電導体を誘電体で被覆するステップ、
c.第二の方向に少なくとも一つの電導体を付着させるステップ、そして
d.前記第二の方向にある前記少なくとも一つの電導体を誘電体で被覆するステップからなる、方法。
【請求項22】
請求項1から16のいずれかに記載の、または請求項17から21のいずれかに記載の方法で得た担体上の膜の、流体の濾過に対する適用。
【請求項23】
前記流体が、酪農飲料、特にミルクからなり、微生物の濾過に対しては、0.5〜1.0x1.0〜5.0マイクロメートルの平均膜孔を適用し、脂肪の濾過に対しては、0.5〜3.0x1.0〜10マイクロメートルの平均膜孔、そしてタンパク質の濾過に対しては、0.05〜0.2×0.1〜1マイクロメートルの膜孔を適用する、請求項22に記載の適用。
【請求項24】
請求項1から16のいずれかに記載の、または請求項17から23のいずれかに記載の方法によって得た、担体上の膜を備えるモジュール。
【請求項25】
請求項17から21のいずれかに記載の方法によって製造した担体上の膜。
【請求項26】
請求項1から16のいずれかに記載の、または請求項17から25のいずれかに記載の方法によって得た、担体上の膜内の破損を判定するための方法であって、
a.前記電導体の導電率を判定するステップ、そして
b.ステップa)で得た情報に基づいて、ありうる破損の箇所を特定するステップからなる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−536071(P2007−536071A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511302(P2007−511302)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000331
【国際公開番号】WO2005/105276
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(506214932)フリースランド・ブランズ・ビー・ヴイ (1)
【Fターム(参考)】