説明

担持型クロム触媒の調製および重合法

クロムタイプの担持型オレフィン重合触媒の製法。不活性キャリアガス中担体粒子の流動床が達成される。クロム(III)化合物が流動化担体粒子に添加されて、担持型触媒成分が提供される。担持型触媒成分が活性化されて、クロム(III)の少なくとも一部をクロム(VI)に転化する。クロム(III)含有粒子は流動床から回収され、そして次に活性化されるか、または流動床中で活性化されることができる。更に担体粒子は他の処理物質により流動床中で処理されることができる。担体粒子は流動床中への担体の取り込みの前にホウ素処理剤の溶液で前処理されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は担持型クロム触媒の製法並びにクロム基剤の重合触媒を使用する、エチレンホモポリマーおよびコポリマーを生成するためのエチレンの重合に関する。
【背景技術】
【0002】
ホモポリマーまたはエチレンアルファオレフィンのコポリマーとしてのポリエチレンは、優れた視覚的または光学的特性が重要な多数の商業的適用に使用することができる。例えば、ポリエチレンは吹き込み成形または押し出し成形操作により製造することができるビンまたは他の容器等のような種々の製品の製造に使用することができる。このような適用においては、ビンまたは他の容器の経時的な、強度の黄色化を伴わずに所望の色彩が維持される、優れた光学的特徴を有する製品に到達することが望ましい。経時的黄色化に対するポリマー製品の抵抗性は、米国材料試験協会の基準ASTM−D1925に準じて測定される黄色さ指数(YI)により測定することができる。重要な可能性がある他の光学的特性は、ASTMD1003に準じて測定される曇り(haze)およびASTMD2457に準じて測定される光沢(gloss)を含む。
【0003】
ポリエチレンポリマーの重要な物理的特徴は、密度、分子量分布、MWD(数平均分子量Mに対する重量平均分子量Mの比率)、メルトインデックスMI、MI、HLMIおよび基準ASTM D1238に準じて測定されるメルトインデックスの比率により決定される剪断応答(shear response)を含む。従って、剪断応答SR2はメルトインデックスMIに対する高負荷メルトインデックス(HLMI)の比率として特徴付けられ、そして剪断応答SR5はメルトインデックスMIに対する高負荷メルトインデックスの比率である。種々のメルトインデックスは、便利には、グラム/10分間(g/10分)のメルトフローまたはデシグラム/分(dg/分)で表される同様な指標について報告される。エチレンホモポリマーおよびコポリマーを生成するためのエチレンの重合において、エチレンおよび、場合により、ヘキセンのような高分子オレフィンを含んでなる供給流が重合触媒とともに重合反応器に供給される。重合触媒はチーグラーナッタ触媒、メタロセン基剤の触媒または、時々「フィリップス型」触媒と呼ばれるクロム基剤の触媒、の形態を採ることができる。このような触媒は典型的には、担持型触媒と混合することができるか、または重合反応器に別に供給することができる共触媒と一緒に、粒状形態で重合反応器に供給される担持型触媒である。主要触媒を活性化するために使用される共触媒は、チーグラーナッタおよびメタロセン触媒の場合のメチルアルモキサンのようなアルキルアルモキサンまたはトリエチルアルミニウムのようなトリ−アルキルアルミニウムおよびクロム基剤の触媒の場合のトリエチルボランを含む。
【0004】
重合反応器から回収されるポリマーの綿毛体は典型的には、重合反応がその中で進行する希釈剤から分離され、次に融解され、押し出されて、約1/8”〜1/4”(0.32cm〜0.63cm)のディメンションをもつ、典型的にはペレットの性状のポリマー製品の粒子を生成し、次にそれが最終的にポリエチレン容器または他の商業製品を製造するために使用される。押し出し工程中に、ポリマーに安定剤を取り込むことができる。このような安定剤は典型的には、立体妨害されたフェノールおよび亜リン酸塩抗酸化剤のようなフェノール抗酸化剤を含む。最終製品に対するポリマーの適合性において重要な他のポリマーの特徴は、ノッチド・コンスタント・リガメント・ストレス(notched constant ligament stress)(NCLS)により測定される機械的損傷に対する抵抗性および米国試験協会の基準ASTM D1693に準じて決定される環境的ストレス亀裂抵抗性(ESCR)を含む。
【発明の概要】
【0005】
発明の要約
本発明に従うと、クロム型担体のオレフィン重合触媒の製法が提供される。本発明を実施する際に、窒素のような不活性キャリアガス中に粒状担体の粒子の流動床が提供される。流動化担体粒子にはクロム(III)化合物が添加されて、粒状担体上に担持型触媒成分そして更に具体的には、0.1〜10重量%のクロムを有する触媒成分が提供される。担持型触媒成分は活性化されて、粒状担体上のクロム(III)の少なくとも一部をクロム(VI)に転化させる。所望される場合は、クロムIII含有粒子は流動床から回収され、次に活性化されることができる。更に担体粒子は他の処理剤により流動床中で処理することができる。本発明を実施する際には、酢酸第二クロム、硝酸第二クロム、t−ブチルクロメートおよび三酸化クロムを含むあらゆる適当なクロム(III)化合物を使用することができる。このようなクロムIII化合物の混合物も使用することができる。本発明の特定の適用において、クロム(III)化合物は5〜15重量%の範囲内のクロム濃度の酢酸第二クロム水溶液として添加される酢酸第二クロムである。酢酸第二クロム溶液は0.1〜10重量%の範囲内のクロム含量を担体粒子上に提供するために有効な量で添加することができる。
【0006】
本発明の更なる様相において、担体粒子は、流動床中への担体の取り込みの前に、炭化水素溶媒中のホウ素処理剤、具体的にはトリエチルホウ素の溶液で前処理される。本発明のこの様相において、トリエチルホウ素は、担体粒子上に担体粒子の0.1〜5.0重量%の範囲内のトリエチルホウ素含量を提供するために有効量で添加される。本発明の他の態様において、粒状担体は25〜150ミクロンの範囲内の平均粒度および少なくとも200m/g、そしてより具体的には300〜400m/gの範囲内の表面積を有するシリカである。本発明のより具体的な様相において、不活性キャリアガスは窒素ガスを含んでなる。担持型クロム触媒は、担体上のクロム(III)の大部分をクロム(VI)に転化させるために有効な時間、担持型触媒を450〜900℃の範囲内の温度に加熱することにより活性化される。担持型クロム触媒成分は流動床内で活性化されても、または流動床から回収されて次に活性化されてもよい。
【0007】
本発明の更に他の態様において、エチレンポリマーの重合法が提供される。この方法を実施する際、少量のエチレン含有不活性炭化水素希釈剤を含んでなる供給流が重合反応区域に供給される。担体粒子の流動床上へのクロム(III)のメッキ、その後の前記のようなクロム(VI)への転化により生成される担持型クロム触媒は、重合反応区域内の供給流中に取り込まれる。反応区域は重合条件下で操作されて、ポリエチレンポリマーの綿毛体を生成し、その綿毛体は反応区域から回収される。ポリエチレンポリマーの綿毛体は綿毛体を融解するために十分な温度に加熱され、その後押し出されて、ポリエチレンポリマーのペレットを生成する。重合反応区域において、反応区域は、同様な重合条件下で、しかし、担持型クロム触媒を製造するための従来の方法に従って対応する担体上のクロム(III)化合物の静的混合(static mixing)により、対応する担体上のクロム(III)成分のメッキにより生成される触媒を使用して製造されるポリマー製品の製造における、対応する活性より大きい、ポリマー製品の活性をもたらすために有効な条件下で操作される。本発明の1つの態様において、ポリエチレンポリマーの綿毛体はポリエチレンホモポリマーである。本発明の他の態様において、ポリマーはエチレンおよび、高分子オレフィンとエチレンを共重合することにより生成される高分子オレフィンのコポリマーである。本発明の更なる様相において、高分子オレフィンはC−Cオレフィンであり、そして更に具体的には、供給流中のエチレン濃度の50重量%未満の濃度のヘキセンである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に従う担持型オレフィン重合触媒の調製に使用することができる垂直流動床反応器の略図である。
【図2】本発明に従う重合法が実行されるエチレンおよびコモノマーの重合法の略図である。
【図3】本発明に従う担持型オレフィン重合触媒の調製に使用することができる活性化装置を含んでなる、他の反応器の略図である。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は担持型触媒の調製用の垂直配向活性化装置およびエチレンホモポリマーまたはコポリマーの製造に使用されるループ型反応器について説明される。最初に図1において、注入ライン3を通して適当な供給源2からシリカのような粒状担体物質を供給される垂直の管形反応器1を含んでなる触媒活性化装置が示される。注入ライン3は反応器の内部にシリカまたは他の粒状担体物質を供給し、そこで、それが下部注入口5を経て反応器の管中に導入される窒素の上方流中に混入される。下記に説明されるような本発明の1つの様相において、シリカ担体はトリエチルホウ素で前処理される。酢酸第二クロムの水溶液のようなクロム(III)化合物は、注入ライン6から、そしてマニホールドおよび、反応器に沿って縦に間隔をおいて配置された複数の注入ノズル8を含んでなるインジェクター7に対して、反応器の管中に供給される。反応器の管を通るシリカまたは他の粒子担体の流動床の流速、および注入ライン6およびインジェクター7を通るクロム(III)化合物の注入速度は、触媒担体上のクロムの所望の添加に到達するために有効なクロム(III)化合物およびシリカとの接触期間を提供するために制御される。クロム(III)触媒成分を含有する担体物質の流動床は流出ライン9を通して反応器の上部から引き出され、次に適当な濃縮装置(図示されていない)に通され、そこから添加クロム(III)触媒成分が回収される。次に担持型触媒成分は、クロム(III)化合物をクロム(VI)触媒成分に転化させるために、適当な活性化温度、具体的には450〜900℃の範囲内に触媒を加熱することにより活性化することができる。
【0010】
活性化後、担持型触媒成分をいずれかの適当な重合法に従って、エチレンの重合または共重合に使用することができる。大部分の営業的操作は典型的には1基または複数のループ型重合反応器を使用するであろうが、バッチ型またはループ型重合反応器を使用することができる。複数の反応器が使用される場合は、それらは直列に連結することができる。前記のように、シリカまたは他の担体は、担体とクロム(III)化合物を接触させる前にホウ素処理剤で前処理するか、または活性化の前に、ホウ素処理剤をクロムIII化合物とともに担体上に取り入れることができる。触媒担体がホウ素で前処理されない場合は、ホウ素処理剤を担持型触媒成分と一緒に、重合反応器に別に添加することができる。必須ではないかも知れないが、担持物質がホウ素処理剤で前処理されるか、またはホウ素処理剤がクロムIII化合物と一緒に取り入れられる場合でも、重合反応の経過中に更なる量のホウ素を添加することができる。
【0011】
本発明を実施する場合には、あらゆる適当なホウ素処理剤を使用することができる。前記のように、そして以下に説明されるように、ホウ素処理剤は前処理プロトコールによりシリカまたは他の担体上に取り入れるか、またはクロムIII化合物をクロムVIに転化するための触媒成分の活性化の前に、ホウ素をクロム化合物および他の遊離物質とともに触媒中に取り入れることができる。クロム触媒の形成に使用される一般的な処理剤であるトリエチルホウ素以外の、他のホウ素処理剤は、その全開示が引用により本明細書に取り入れたこととされる、Burmaster等に対する米国特許第7,241,850号明細書に開示されたような、トリブチルボラン、具体的にはトリ−n−ブチルボラン、トリブチルボレート、トリメチルボレート、ジメチルホウ素および種々の三置換ホウ素を含む。
【0012】
次に図2において、本発明を実施する際に使用することができるループ型重合反応器10が図示されている。反応器には注入ライン12を通る希釈剤およびエチレンモノマーを含んでなる供給流並びに注入ライン14を通る触媒系が供給される。連続的ループ型反応器は、当業者により理解されるように、制御温度および圧力条件下で重合反応素材(mass)をループ型反応器中を連続的に循環させる働きをするインペラー15を備えている。重合反応器はあらゆる適当な条件下で操作することができる。反応器10内の重合反応の経過中に、希釈溶媒として液化イソブタンを使用することができる。あるいはまた、ヘキサンのような高分子希釈剤を使用することができる。
【0013】
あらゆる適当な方法により、担持型媒成分および共触媒を重合反応器中に導入することができる。操作の1つの方法において、触媒系は、しばしばフィリップスタイプのシリカ担持型クロム触媒に対して使用されるタイプの触媒注入システムを使用して、反応器中に導入することができる。この適用法において、前記のような担持型クロム基剤の触媒成分および、最初は粒状担体物質へ添加されないとしても、トリエチルホウ素(TEB)共触媒のようなホウ素基剤の共触媒を含んでなる触媒系が触媒供給ライン14を通して重合反応器中に取り入れられる。触媒注入システムにおいて、イソブタンのような希釈剤が供給ライン19を通して混合ライン18に供給される。共触媒は別に添加される場合は、ライン21を通して供給され、担持型クロム基剤の触媒成分はライン22を通して導入され、そして次にその触媒系がライン14を通して反応器10中に導入される。あるいはまた、もしくはライン14を通る導入に加えて、触媒系は反応器10への導入のためにライン16を通ってライン12に通させることができる。触媒は反応器中への導入のために、キャリア流に連続的にまたは間欠的に供給することができる。触媒は重合反応器10中への導入前に前重合することができる。例えば、担持型クロム基剤の触媒成分および共触媒は、Ewen等に対する米国特許第4,767,735号に記載されたように、反応器中への導入の前に管形反応器中で前重合することができる。本発明を実施する際に使用することができる適当な前重合法の更なる説明のためには、その全体の開示が、引用により本明細書中に取り込まれたこととされる前記の特許4,767,735号が参照される。操作の他の方法において、担持型クロム基剤の触媒および共触媒は別々の供給ラインを通して重合反応器中に導入することができる。例えば、図2において、クロム基剤の触媒は、ライン14を通して(共触媒と前混合せずに)反応器中に導入することができ、そして共触媒は別のライン24を通して反応器中に導入される。別のライン24はライン14を通るクロム基剤触媒の導入地点の上流または下流に配置することができる。図面に示されるように、別のライン24の適当な位置はライン14の上流であり、担持型クロム基剤重合触媒の導入の直後に反応器中への共触媒の導入をもたらす。前記のように、クロム(III)化合物の取り込み前またはそれと同時に担体がトリエチルボランまたは他の処理剤の溶液で処理または前処理される場合は、TEB共触媒の別の導入は必要でない。あるいはまた、担体はTEBおよび、担持型触媒と一緒に導入される共触媒の別の溶液で前処理することができる。
【0014】
反応器の生成物側において、エチレンホモポリマーまたはコポリマーはライン26を通して引き出される。典型的には、ポリエチレンを含有する溶媒流中で重合反応を終結させるために生成物流中に失活剤を取り入れる。生成物はライン26を通して濃縮および回収システム28に供給され、そこでポリエチレンの綿毛体が抽出される。希釈剤および未反応エチレンは適当な精製および回収システム(図示されていない)を通して回収されて、反応器10に再循環される。今は気体のエチレンを含まないポリエチレン綿毛体を含有する生成物流がライン30を通して回収システムから引き出される。
【0015】
ポリエチレンの綿毛体は押出ダイシステム34のインプットホッパー32に供給される。安定化添加剤はライン31を通してホッパー32に供給される。押出ダイシステムにお
いて、ポリマーは溶融状態までに加熱され、溶融ポリマーが押し出され、次に適当な粒子に切断される。典型的には、ポリエチレン生成物が押し出され、ペレットにダイ切断され、それらが押出ダイシステム34の生成物側末端36から放出される。次にこれらのペレットは、ビンまたは他のポリエチレン製品の製造におけるような種々の適用において加熱され、押出され、成形されることができる。
【0016】
不溶性ポリマーの粒子のような有機担体物質は本発明を実施する際に粒状担体として使用することができるが、担体物質は通常、クロム基剤触媒に一般に使用されるタイプの無機物質であろう。このような担体は、Debrasに対する米国特許第6,423,663号およびDebras等に対する同第6,489,428号に開示されたようなシリカ、アルミナまたはシリカ−アルミナリン酸塩担体の形態を採ることができる。クロム(III)化合物が触媒のその後の活性化を伴って流動化担体粒子上に取り入れられる独特の方法とは別に、クロム触媒は前記の特許第6,423,663号および同第6,489,428号中に開示されたタイプのものであることができる。従って、担持型クロム基剤の触媒はまた、DebrasおよびDebras等の特許に開示されたチタンのような添加剤を含むことができる。本発明の担持型クロム含有担体成分の最終的クロム含量は通常、前記のDebrasおよびDebras等の特許に開示された触媒のクロム含量より幾らか高いであろう。従って、担体粒子上へのクロム添加は通常、クロム(III)のクロム(VI)への活性化後に、0.1〜10重量%の範囲内、そしてより具体的には0.5〜8重量%の範囲内にあるであろう。クロム基剤の触媒成分の更なる説明に対しては、その全開示が引用により本明細書中に取り込まれたこととされる、前記の米国特許第6,423,663号および同第6,489,428号を参照することができる。
【0017】
本発明を実施する際に、図1の活性化装置1中に使用されるシリカまたは他の担体物質は通常、約50℃〜300℃の温度で不活性ガス雰囲気を加熱することにより乾燥されるであろう。担体がチタンを取り入れる場合は、担体物質の流動床を形成する前にチタン化法(titanation procedure)を実施することができる。担体成分中にトリエチルホウ素もまた取り入れる場合は、シリカまたは他の担体物質をヘキサンのような有機溶媒中のトリエチルホウ素の溶液で前処理することができる。
【0018】
図1において前記のような触媒反応器の操作において、クロム(III)含有触媒粒子は流動床反応器から回収され、次に活性化にさらされて、粒状担体上のクロム(III)がクロム(VI)に転化される。本発明の他の態様においては、担体粒子、クロム化合物および、TEBのような処理剤が反応器に供給され得、そこで、最初に反応器から別々に回収されずに、クロム(III)が担体上に添加され、クロム(VI)に活性化させる。
【0019】
図3に示される本発明のこの態様において、流動床反応器40は、バーナー46を介して燃料ガスライン44および燃焼空気ライン45により供給される加熱炉42内に組み込まれる。炉コンパートメン42内の流動化触媒床48はライン50を通して前記のようなクロム(III)化合物を供給される。前記のようなホウ素またはチタンを取り入れる処理剤のような重合調整剤(modifiers)もまたライン50を通して添加することができる。担体粒子を取り込む働きをする窒素または空気のような流動化ガスはライン52を通して流動化触媒床48に供給される。シリカのような担体物質はライン54を通して触媒床に供給され、そこでクロム化合物を添加される。活性化装置の操作において、炉は活性化装置の操作の経過中にクロム(III)化合物をクロム(VI)触媒成分に転化させるために十分な温度まで加熱される。担持型活性化触媒はライン58を通して活性化装置から回収され、オレフィン重合における最終的使用のための触媒貯蔵庫(bin)(図示されていない)に供給される。熱い燃焼ガスは燃焼ガス排気塔60を通して炉から回収され、熱い活性化空気は流動床室の上部から回収され、そしてライン62を通して急冷室(図示されていない)に供給される。図1に示される反応器の操作において説明された
操作パラメーターはまた、図3に示される反応器の操作にも使用することができ、そこで担持粒子上へのクロム化合物の添加の経過中にクロム触媒の活性化が起る。
【0020】
前記のように、酢酸第二クロムは粒状担体粒子上にクロム(III)を取り込むために有効な処理剤である。酢酸第二クロムは5〜15重量%、そしてより具体的には9〜12重量%の範囲内の酢酸クロム濃度を有する水溶液中で使用することができる。酢酸第二クロム溶液は活性化反応器に添加されて、0.1〜10重量%、そしてより具体的には7〜9重量%の範囲内の担体粒子上へのクロム添加をもたらす。担体粒子上への約8重量%のクロム(III)の最終的添加が、本発明に従うエチレンポリマーの調製のために有効な触媒成分をもたらす。
【0021】
酢酸第二クロム以外に、本発明を実施する際に使用することができる他の適当なクロム(III)化合物は、酢酸第二クロム、硝酸第二クロム、t−ブチルクロメートおよび三酸化クロムを含む。担体上のクロム(III)化合物の所望される最終添加量は通常、酢酸第二クロム(III)を使用する時と同様な値に停まるであろう。約1重量%のクロム添加体はより高いクロム添加体と同様に有効か、またはそれとほとんど同様に有効であると期待される。
【0022】
次に、クロム(III)含有担持型触媒成分の回収時に、触媒成分は活性化されて、担体上のクロム(III)化合物をクロム(VI)に転化させることができる。活性化は450〜900℃、そしてより具体的には600〜850℃の範囲内の温度で実施することができる。担体粒子上のクロム(III)をクロム(VI)に転化させる適当な活性化法は、約1〜10時間の期間、約700℃の温度で、回収されたクロム担持型担体粒子を加熱する工程を伴う。活性化の加熱は担体上のクロム(III)の少なくとも大部分をクロム(VI)に転化させるために十分な時間実施される。エチレン重合において最適なまたは最適に近い触媒活性を提供するためには、望ましくは、実質的にすべてのクロム(III)がクロム(VI)に転化される。
【実施例】
【0023】
本発明に関して実施された実験研究において、担持型触媒成分を形成するために表1に示された物理的パラメーターを有するシリカ担体が使用された。1例において、シリカ担体は触媒Aとして表1に識別された触媒を形成するために窒素ブランケット下でヘキサン中トリエチルホウ素の1.0重量%溶液で前処理された。
【0024】
表1中で触媒Bと名付けた第2の触媒は、触媒Aと同様なシリカ担体を使用し、しかしトリエチルホウ素で前処理せずに形成された。実験研究に使用された他の担持型触媒は表1に示された担体パラメーターをもつ、触媒CおよびDとして表1中に識別された市販の触媒である。触媒CおよびDのシリカ担体はDebrasおよびDebras等に対する前記特許中に示されたような処理法後の、シリカ担体の、酢酸第二クロムの溶液を使用する含浸により形成された。すなわち、本発明に関与されたような担体粒子の流動床中にクロムIII化合物を取り入れるよりむしろ、シリカ床が完全に飽和されるまで、乾燥したシリカにクロムIIIの溶液を添加することにより、担体粒子を使用した。
【0025】
【表1】

【0026】
触媒A、CおよびDを使用して実施された重合試験において、エチレンホモポリマーおよびエチレンコポリマーは標準化実験室重合試験において製造され、各触媒に対応するポリマー綿毛体を生成した。重合は104℃の重合温度でイソブテン希釈剤中8重量%エチレンを使用して実施した。各事例の試験は触媒1グラム当たり約1000グラムのポリマーの最終生成をもたらすように実施した。コポリマーが調製された場合は、希釈剤は8重量%エチレンに加えて0.18重量%の1−ヘキセンを含んだ。
【0027】
エチレンホモポリマーを生成するために実施された重合の結果は表2に示され、エチレン1−ヘキセンコポリマーに対応する結果は表3に示される。
【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
表2および3に示されたデータの検討から認めることができるように、本発明に従って生成された触媒Aは単独重合および共重合実験の双方において実質的により高い活性をもたらした。表1に示された担体粒子の物理的パラメーターを考慮すると、触媒Dは表面積、細孔容積および平均孔径に関して触媒Aに非常に近いことが認められるであろう。触媒Cは触媒AおよびDより幾らか低い表面積を有し、触媒AおよびDのものより低い細孔容積および孔径を有した。触媒Aは、同様な細孔容積および表面積にも拘わらず、触媒CよりMIおよびMIにより測定された、より高いメルトフローポテンシャルを有したが、触媒Dより幾らか低い値を示した。触媒Dに対して使用されたより高い活性化温度は、その系に対するより高いメルトフローを幾らか説明する。触媒Aに対しSR2およびSR5により測定された剪断応答のデータは、触媒Cより低かったが、触媒Dより高かった。
【0031】
以上の実験データにより示されるように、本発明は、先行技術の含浸法により生成される触媒で達成される活性より実質的に大きい活性をもつ、いわゆる「グリーン」クロムIII−クロムVI触媒の形成を可能にする。更に、先行技術の触媒CおよびDのものの間にポリマーの特徴を提供するようなメルトフローおよび剪断応答容積を達成することができる。
【0032】
本発明の特定の態様を説明してきたが、当業者にはそれらの変更物が示唆され得、そして、添付の請求項の範囲内に入るようなすべての変更物を網羅することが意図されることは理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)不活性キャリアガス流中に粒状担体物質の粒子の流動床を提供し、
(b)前記流動化担体粒子にクロム(III)化合物を添加して、前記粒状担体上にクロムを含有する担持型触媒成分を提供し、そして
(c)前記担持型クロム触媒を活性化して、粒状担体上のクロム(III)の少なくとも一部をクロム(VI)に転化させる、
工程を含んでなる、担持型オレフィン重合触媒の製法。
【請求項2】
クロムIII化合物が、前記担体粒子上に、前記担体粒子につき0.1〜10重量%の範囲内のクロム添加をもたらす量で添加される、請求項1の方法。
【請求項3】
担体粒子の流動床が細長い反応器中を通され、そしてクロム(III)化合物が前記反応器の縦に間隔をおいた複数の部位で前記流動床に添加される、請求項1の方法。
【請求項4】
クロム(III)化合物が酢酸第二クロム、硝酸第二クロム、t−ブチルクロメートおよび三酸化クロムよりなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項5】
クロム(III)化合物が酢酸第二クロムである、請求項1の方法。
【請求項6】
酢酸第二クロムが5〜15重量%の範囲内のクロム濃度の酢酸クロム水溶液で添加される、請求項5の方法。
【請求項7】
酢酸第二クロム溶液が前記担体粒子上に0.1〜10重量%の範囲内のクロム添加をもたらす量で添加される、請求項5の方法。
【請求項8】
前記流動床中への前記粒状担体の取り込みの前に、前記担体粒子をホウ素処理剤で前処理する工程を更に含んでなる、請求項1の方法。
【請求項9】
ホウ素処理剤が前記担体粒子上に0.1〜5重量%の範囲内のトリエチルホウ素含量をもたらすような量で添加されるトリエチルホウ素である、請求項7の方法。
【請求項10】
粒状担体が25〜150ミクロンの範囲内の平均粒度および少なくとも200m/gの表面積を有するシリカである、請求項1の方法。
【請求項11】
シリカが300〜400m/gの範囲内の表面積を有する、請求項10の方法。
【請求項12】
不活性キャリアガスが窒素ガスを含んでなる、請求項1の方法。
【請求項13】
クロム(III)化合物が、前記担体粒子上に0.1〜10重量%クロムの範囲内のクロム添加をもたらす量で前記担体粒子に添加される、請求項12の方法。
【請求項14】
クロム(III)化合物が酢酸第二クロムである、請求項13の方法。
【請求項15】
粒状担体が25〜150ミクロンの範囲内の平均粒度および300〜400m/gの範囲内の平均表面積を有するシリカである、請求項14の方法。
【請求項16】
担持型クロム触媒が、前記粒状担体上の過半量の前記クロム(III)をクロム(VI)に転化するために有効な時間にわたり、前記担持型触媒を450〜900℃の範囲内の温度に加熱することにより活性化される、請求項1の方法。
【請求項17】
前記流動床から前記クロム含有担体成分を回収し、そして次にサブパラグラフ(c)に従って前記クロム含有担体成分を活性化する工程を更に含んでなる、請求項1の方法。
【請求項18】
(a)不活性ガス流中で担体粒子の流動床上にクロム(III)化合物を堆積して、担持型クロム(III)含有触媒成分の粒子を生成し、次に、前記担持型クロム触媒を活性化して、粒状担体粒子上の過半量のクロム(III)をクロム(VI)に転化することにより生成される、担持型クロム基剤の重合触媒を提供し、
(b)少量のエチレンを含有する不活性炭化水素の希釈剤を含んでなる供給流を重合反応区域に供給し、
(c)重合反応区域内の前記供給流中に前記クロム基剤の重合触媒を取り入れ、
(d)前記反応区域を重合条件下で操作して、前記エチレンモノマーの重合によりポリエチレンポリマーの綿毛体を生成し、
(e)前記反応区域から前記ポリエチレンポリマーの綿毛体を回収し、
(f)前記ポリエチレンポリマーの綿毛体を前記綿毛体を融解するために十分な温度に加熱し、その後前記加熱ポリマー綿毛体を押し出して、前記ポリエチレンポリマーのペレットを生成し、そして
(g)前記ポリエチレンの綿毛体が生成されるのと同様な重合条件下で生成される、対応するポリマー生成物の生成における、対応する活性より大きい、前記ポリマー綿毛体の生成における活性を提供するために有効な条件下で、しかし前記の対応するクロム(III)化合物および前記の対応する担体の溶液の静的混合(static mixing)により、対応する担体上の対応するクロム(III)成分の堆積により生成される触媒を使用して、前記反応区域を操作する工程、
を含んでなる、エチレンポリマーを提供するためのエチレンの重合法。
【請求項19】
ポリエチレンポリマーの綿毛体がポリエチレンホモポリマーである、請求項18の方法。
【請求項20】
エチレンの分子量より大きい分子量を有する高分子オレフィンが、前記供給体流中および、前記重合条件下で操作している前記反応区域中に取り込まれて、エチレンおよび前記の高分子オレフィンのコポリマーを生成する、請求項18の方法。
【請求項21】
高分子オレフィンがC−Cオレフィンである。請求項20の方法。
【請求項22】
高分子オレフィンが前記供給流中50重量%エチレン濃度より低い濃度のヘキセンである、請求項21の方法。
【請求項23】
ホウ素処理剤が前記重合反応区域に供給される、請求項18の方法。
【請求項24】
前記担体粒子上に前記ホウ素処理剤を取り込んで、サブパラグラフ(a)の重合触媒をもたらすことにより、ホウ素処理剤が前記反応区域に供給される、請求項23の方法。
【請求項25】
サブパラグラフ(a)中の前記担持型クロム基剤の重合触媒の供給に加えて、ホウ素処理剤が前記重合反応器に添加される、請求項23の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−511134(P2011−511134A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545135(P2010−545135)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/032322
【国際公開番号】WO2009/097379
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】