説明

拡径部の傾斜面に作用する支圧力を用いた節付杭の引抜抵抗力の計算方法、押込抵抗力の計算方法、節付杭の設計方法、節付杭

【課題】コストの削減及び安全性の確保のため、より精度の高い拡径部の引抜抵抗力の算定方法を提供する。
【解決手段】下側ほど径が大きくなるように傾斜した上側の傾斜面8を含んだ拡径部3,4を有する節付杭1の引抜抵抗力を計算する方法であって、上側の傾斜面8が負担する極限引抜抵抗力を上側の傾斜面8の水平投影面積と、極限支圧力度の鉛直方向の成分との積に基づいて計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡径部の傾斜面に作用する支圧力を用いた節付杭の引抜抵抗力の計算方法、押込抵抗力の計算方法、節付杭の設計方法、節付杭の計算方法及び、節付杭に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の荷重を支える基礎杭として、その長手方向中間部又は下端部に拡径部を設けた節付杭が広く用いられている。節付杭によれば、拡径部が設けられることにより、基礎杭から地盤への荷重の伝達面積が大きくなるので、鉛直方向支持力及び引抜抵抗力を増大させることができる。
【0003】
かかる節付杭の引抜抵抗力を評価する手法として、例えば特許文献1には、節付杭を引抜いたときに、拡径部直上の地盤が拡径部の直径の2倍の有効高さを持つ円筒状にせん断されると仮定し、その円筒の周面積に地盤のせん断強度を乗じた値を拡径部の引抜抵抗力として設計することが記載されている。
【特許文献1】特開2002―21070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の拡径部の引抜抵抗力の計算方法では、せん断面の有効高さを一意に拡径部の2倍の値としているため、拡径部と軸部の径の差が小さい場合と、拡径部と軸部の径の差が大きい場合とでは、実際の引抜抵抗力が異なるにもかかわらず、計算される引抜抵抗力が同じ値になってしまうという問題がある。
【0005】
このように、特許文献1に記載された節付杭の引抜抵抗力の計算方法では、必ずしも十分な精度が得ることができないため、引抜抵抗力を過小評価してしまい、過剰設計を行いコストが割高になってしまう場合や、引抜抵抗力を過大評価してしまい、安全性が損なわれてしまう場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、節付杭の引抜抵抗力及び押込抵抗力を正確に計算できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の節付杭の引抜抵抗力の計算方法は、下側ほど径が大きくなるように傾斜した傾斜面を含んだ拡径部を有する節付杭の引抜抵抗力を計算する方法であって、前記傾斜面が負担する極限引抜抵抗力を、前記傾斜面の水平投影面積と、前記傾斜面付近の地盤の極限支圧力度の鉛直方向の成分との積に基づいて計算することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の節付杭の引抜抵抗力の計算方法は、下側ほど径が大きくなるように傾斜した傾斜面を含んだ拡径部を複数有する節付杭の引抜抵抗力を計算する方法であって、前記拡径部の個数をN、i番目の拡径部の傾斜面の水平投影面積をAvi[m]i番目の拡径部の傾斜面付近の地盤の極限支圧力度をpvi[kN/m]、i番目の拡径部の傾斜面の低減係数をβとした場合に、以下の式(1)で求めた各拡径部の傾斜面の極限引抜抵抗力の和T[kN]に基づいて計算することを特徴とする。

【0009】
上記の節付杭の引抜抵抗力の計算方法において、前記低減係数βを0.8以上かつ0.9以下の値にしてもよい。
また、式(1)における極限支圧力度の値として前記極限支圧力度pviを以下の式(2)により求め、式(2)により得られたpviの値が7500[kN/m]未満であれば、前記得られたpviの値を、式(2)により得られたpviの値が7500[kN/m]以上であれば、7500[kN/m]を用い計算方法でもよい。
vi=150N …(2)
【0010】
また、上記の節付杭の引抜抵抗力の計算方法において、粘性土内に埋設されたi番目の拡径部の傾斜面付近の非排水せん断強さの平均をCとしたとき、前記式(1)における極限支圧力度pviの値として、以下の式(3)により前記極限支圧力度pviを求め、式(3)により算出された極限支圧力度pviが7500[kN/m]未満である場合は、前記算出された極限支圧力度を、式(3)により算出された極限支圧力度pviが7500[kN/m]以上である場合は、7500[kN/m]を用いてもよい。
vi=6C …(3)
【0011】
また、本発明の節付杭の押込抵抗力の計算方法は、上側ほど径が大きくなるように傾斜した傾斜面を含んだ拡径部を有する節付杭の押込抵抗力を計算する方法であって、前記傾斜面が負担する極限押込抵抗力を、前記傾斜面の水平投影面積と、前記傾斜面付近の地盤の極限支圧力度の鉛直方向の成分との積に基づいて計算することを特徴とする。
また、本発明の節付杭の押込抵抗力の計算方法は、上側ほど径が大きくなるように傾斜した傾斜面を含んだ拡径部を複数有する節付杭の押込抵抗力を計算する方法であって、前記拡径部の個数をN、i番目の拡径部の傾斜面の水平投影面積をA’vi[m]i番目の拡径部の傾斜面付近の地盤の極限支圧力度をp’vi[kN/m]、i番目の拡径部の傾斜面の低減係数をβ’とした場合に、以下の式(4)で求めた各拡径部の傾斜面の極限押込抵抗力の和T’[kN]に基づいて計算することを特徴とする節付杭の押込抵抗力の計算方法。

【0012】
以上の節付杭の引抜抵抗力及び押込抵抗力の計算方法によれば、拡径部の傾斜面の鉛直方向投影面積を用いて計算を行なうため、拡径部と杭軸部の径の差を引抜抵抗力及び押込抵抗力の大きさに反映することができるので、より正確に節付杭の引抜抵抗力及び押込抵抗力を算出することができる。
【0013】
前記引抜抵抗力の計算方法において前記節付杭は節付丸杭又は節付壁杭であってもよい。前記押込抵抗力の計算方法において前記節付杭は節付丸杭又は節付壁杭であってもよい。
【0014】
さらに本発明は、下側ほど径が大きくなるように傾斜した傾斜面を含んだ拡径部を複数有する節付杭の設計方法であって、上記の節付杭の引抜抵抗力の計算方法により算出された引抜抵抗力が所定の基準抵抗力以上となるように設計することを特徴とする節付杭の設計方法を含むものとする。
【0015】
また本発明は、上側ほど径が大きくなるように傾斜した傾斜面を含んだ拡径部を複数有する節付杭の設計方法であって、上記の節付杭の押込抵抗力の計算方法により算出された押込抵抗力が所定の基準抵抗力以上となるように設計することを特徴とする節付杭の設計方法を含むものとする。
【0016】
なお、節付杭の設計方法において前記節付杭は節付丸杭又は節付壁杭であってもよい。
また、本発明は上記の節付杭の設計方法により設計されたことを特徴とする節付杭を含むものとする。
【発明の効果】
【0017】
節付杭の拡径部の引抜抵抗力及び押込抵抗力をより正確に求められるので、過剰設計や安全性の過小評価を防ぎ、コストの削減又は安全性の向上が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の節付杭の引抜抵抗力の計算方法の一実施形態について図面に基づき説明する。図1は、引抜抵抗力の算定の対象となる節付丸杭の断面図である。同図に示すように、節付丸杭1は円柱状の杭軸部2と一つ以上の節部3と拡底部4とを有しており、その上部は建物の地下構造(図示せず)に接続されている。なお、節部3と拡底部4が拡径部に相当する。また、拡径部は杭径の変化により、高さによらず杭径が一定な部分(鉛直部という)5と、鉛直部から上下に向かって径が変化していく部分(傾斜部という)6、7とにより構成される。
【0019】
また、図2は、(A)は引抜抵抗力の算定の対象となる節付壁杭の正面断面図、(B)は側面断面図である。同図に示すように、節付壁杭11は壁体状の壁杭本体12と一つ以上の節部3と拡底部4とが、壁杭本体12より突出しており、壁杭本体12の上部は建物の地下構造(図示せず)に接続されている。節付丸杭の場合と同様に、節部3と拡底部4が拡径部に相当し、拡径部は杭径の変化により、高さによらず杭径が一定な部分(鉛直部という)5と、鉛直部5から上下に向かって径が変化していく部分(傾斜部という)6、7とにより構成される。
【0020】
本実施形態の節付杭の引抜抵抗力の計算方法は、以下説明するように、拡径部の上側の引抜抵抗力をより精度よく算出するものであり、節付丸杭及び節付壁杭に同様の原理を用いることができる。そこで、以下、節付丸杭を例として説明する。
【0021】
発明者らは、地盤から節付杭1に作用する荷重を以下に説明するように想定し、節付杭1の引抜抵抗力を算出することとした。
図3は、発明者らが想定した節付杭1に引抜力が作用した時の、節部3及び拡底部4の周囲に働く力の分布を示した模式図である。同図に示すように、節付杭1に引抜力が作用すると、周囲の地盤より節部3及び拡底部4の上側の傾斜面8に引抜力と逆向き(すなわち鉛直下向き)に支圧力が作用する。また、鉛直部5には、節付杭1を包囲する地盤との間の摩擦力により、引抜力と逆向きに周面摩擦力が作用する。なお、下側の傾斜部7においては、地盤と下側の傾斜面9とが離間する方向に引抜力が働くため、引抜抵抗力は作用しない。
【0022】
ここで、図3に示すように、上側の傾斜面8の鉛直方向投影面積に鉛直方向に支圧力が作用するので、上側の傾斜部6が負担する引抜抵抗力は、支圧力の鉛直方向成分と上側の傾斜面8の鉛直方向投影面積の積と等しくなる。したがって、拡径部の個数をN、i番目の拡径部の上側の傾斜面8の水平投影面積をAvi[m]、i番目の拡径部の上側の傾斜面8付近の地盤の極限支圧力度をpvi[kN/m]とすると、i番目の拡径部の上側の傾斜面8の極限支圧力の鉛直成分はpvivi[kN]となる。このため、上側の傾斜面8が負担する極限引抜抵抗力の合計Tは、以下の式(5)のようになる。

なお、式(5)における低減係数βは、安全性を確保するための低減係数であり、後述する実験結果も踏まえ、0.85又はそれに近い値(0.8〜0.9程度)とした。
【0023】
ここで、式(5)を用いて、上側の傾斜面8が負担する極限引抜抵抗力を算出するためには、極限支圧力度pviの値が必要となるが、この値を算出する方法はこれまで確立されていない。そこで、発明者らは、通常、基礎構造を設計する際は、予め地盤調査等によりその土地のN値や土の一軸圧縮強さ等を調べ、それに基づき設計を行うことに鑑みて、これらの地盤調査により得られるN値や一軸圧縮強さ等の値から、極限支圧力度pviを算出することとした。
【0024】
具体的には、発明者らは、極限支圧力度pviを算出する方法として、地盤が砂質土及び粘性土である場合について、図4に示すN値又は非排水せん断強さと、極限支圧力度pviとの関係式を提案する。図中のNは上側の傾斜面付近の地盤の平均N値を示しており、Cは上側の傾斜面付近の地盤の平均非排水せん断強さを示している。また、非排水せん断強さは土の一軸圧縮強さの1/2とする。同図に示すように、極限氏圧力度pviは、砂質土の場合には150N、粘性土の場合には6Cとし、砂質土及び粘性土においてその上限値は7500[kN/m]とする。
【0025】
以下、各場合の値について説明する。
まず、図4に示すように、砂質土の地盤における極限支圧力度pviを150N[kN/m]としているが、この値は以下のように定めた。
「国土交通省告示第1113号」には基礎杭の先端の地盤の許容応力度qとして以下の式(6)が記載されている。なお、式中のNは基礎杭先端付近の地盤付近の平均N値である。
=150N/3 …(6)
【0026】
ここで、qは基礎杭に押し込み力が作用する際の地盤が耐えうる極限支持力度を表し、式(5)におけるpviは基礎杭に引抜力が作用する際の地盤の圧縮力に対する最大圧縮応力度を表している。pviとqは杭の押し込みと引抜という杭に働く力の状態は異なるが、地盤の極限支持力度は力の作用方向によらないため、この値を適用することができる。
【0027】
また、式(6)において150Nは極限支圧力度であり、150Nを3で除しているが、これはいわゆる安全率である。式(6)では、本実施形態における砂質土の極限支圧力度pviには安全率をかけずに、その値として150Nを用いることとした。
【0028】
また、図4に示すように、粘性土における極限支圧力度pviについては、6C[kN/m]としたが、この値は以下のように定めた。
日本建築学会著の「建築基礎構造設計指針2001年改定」(以下、建築学会設計指針という)の粘性土における杭の極限先端支持力度qとして、以下の式が記載されている。
=6C …(7)
【0029】
ここで、qは、基礎杭に押し込み力が作用する際の地盤が耐えうる極限支持力度を示しているので、上記の砂質土における極限支圧力度を定めた場合と同様に、式(5)のpviとして、式(7)の極限先端支持力度qを用いることができる。
【0030】
また、極限支圧力度pviの最大値としては、7500[kN/m]としたが、この値は以下のように定めた。国土交通省告示には、N値の最大値として60(つまり、極限支圧力度の最大値は150×60=9000[kN/m])と記載されているが、建築学会設計指針には、7500[kN/m]と記載されている。ここでは、両者のうち安全側の値であり、かつ、当業者の間で広く用いられている7500[kN/m]を適用することとした。
【0031】
以上の方法により得られた極限支圧力度pviを式(5)に代入することで上側の傾斜面が負担する引抜抵抗力を算出できる。このため、算出された拡径部の上側の傾斜面が負担する引抜抵抗力と、拡径部の鉛直部及び杭軸部の負担する引抜抵抗力とを合計することで節付杭の極限引抜抵抗力を算出することが可能となる。
【0032】
例えば、建築学会指針には、極限周面摩擦力度の値として、砂質土においてはτ=3.3N(上限N=50)、粘性土においては、τ=C(上限C=100[kN/m])と記載されている。そこで、砂質土においては杭周面地盤の平均N値をNに、粘性土においては杭周面地盤の平均非排水せん断強度をCに代入し、節付杭の杭軸部及び拡径部の鉛直部の周面積をかけることで、節付杭の杭軸部及び拡径部の鉛直部の引抜抵抗力を算出することができる。このため、節付杭全体の引抜抵抗力として、節付杭の軸部及び拡径部の鉛直部の引抜抵抗力の合計と、上側の傾斜面の引抜抵抗力の合計との和を用いることで、より正確な引抜抵抗力を算出することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、節付杭に引抜力が作用する場合について説明したが、節付杭に押込み力が働く場合も同様に考えることができる。図5は、発明者らが想定した節付杭1に押込み力が作用した時の、節部3及び拡底部4の周囲に働く力の分布を示した模式図である。同図に示すように、節付杭1に押込み力が作用すると、周囲の地盤より節部3及び拡底部4の下側の傾斜面9に押込み力と逆向き(すなわち鉛直上向き)に支圧力が作用する。また、鉛直部5には、節付杭1を包囲する地盤との間の摩擦力により、押込み力と逆向きに周面摩擦力が作用する。なお、上側の傾斜部6においては、地盤と上側の傾斜面8とが離間する方向に押込み力が働くため、押込み抵抗力は作用しない。
【0034】
したがって、拡径部の個数をN、i番目の拡径部の上側の傾斜面8の水平投影面積をA’vi[m]、i番目の拡径部の上側の傾斜面8付近の地盤の極限支圧力度をp’vi[kN/m]とすると、i番目の拡径部の上側の傾斜面8の極限支圧力の鉛直成分はp’viA’vi[kN]となる。このため、上側の傾斜面8が負担する極限引抜抵抗力の合計T’は、以下の式(8)のようになる。

【0035】
ここで、式(8)におけるβ’、p’ viは引抜抵抗力の計算方法におけるβ、pviを用いることができる。
なお、引抜抵抗力を算出する場合には、節付杭の底面は引抜力を受けると地盤と離間する方向に引抜力が作用するため、底面における地盤支持力は考慮する必要はなかったが、押込力を算出する場合には、節付杭の底面が負担する抵抗力も考慮しなければならない。
【0036】
本実施形態の節付杭の引抜抵抗力の計算方法によれば、拡径部の上側の傾斜面の鉛直方向投影面積を用いて計算を行なうため、拡径部と杭軸部の径の差を引抜抵抗力の大きさに反映することができるので、より正確に拡径部の引抜抵抗力を算出することができる。 このため、引抜抵抗力の過小評価による過剰設計や引抜抵抗力の過大評価による安全性の低下を減らし、コストの削減や安全性の向上が可能になる。
【0037】
また、図4に示すN値及び土の一軸圧縮強度と、極限支圧力度pviとの関係を用いることで、通常の地盤調査により得られたN値及び非排水せん断強度から極限支圧力度pviを求めることができる。これにより、容易に引抜抵抗力を算出することができ、コストの低減及び工期の削減が可能となる。
また、本実施形態では節付杭節付丸杭の引抜抵抗力を計算する場合について説明したが、本発明の引抜抵抗力の計算方法の原理は節付壁杭に節付杭も同様に適用することができる。
【0038】
ここで、実物大の節付壁杭を用いて、本実施形態の引抜抵抗力の計算方法の妥当性を検討したので、以下説明する。
図5は、本実験に用いた試験体である節付杭及び、その節付杭が埋設された地盤の土質及びN値を示す図である。同図に示すように、本実験は試験体として、壁杭の中間部及び下端部に拡径部を設けた節付壁杭を用いた。実験を行った地盤は、地盤表面付近の表土層と、表土層の下に位置する土丹層と、土丹層の下に位置する砂層からなる。土丹層は粘土質の地盤であり、そのN値は50N以上である。節付壁杭は、その下端が土丹層内まで達しており、また、その節部及び拡底部は土丹層内に位置するように設計されている。
【0039】
図6は、節部と拡径部における上記の引抜抵抗力の計算方法により得られた引抜抵抗力(以下、計算値という)と、本実験により得られた拡径部の引抜抵抗力(以下、実験値という)を比較した表である。表に示すように、計算値と実験値とは非常に近い値であり、かつ、計算値は実験値を下回っている。このように、上記の引抜抵抗力の計算方法は、拡径部の引抜抵抗力を安全側で正確に評価できることが確かめられた。
【0040】
また、図7は、本実験により得られた節部、拡底部に作用する支圧力度と鉛直変位との関係を示すグラフである。同図に示すように、鉛直変位が大きくなるにつれ、拡径部に作用する支圧力度は大きくなる。しかし、鉛直変位が大きくなるにつれ、その増加の割合は低下し、節部においては最大値が7500[kN/m]程度、拡径部においては最大値が13000[kN/m]程度となる。ここで支圧力度の差が生じたのは、拡径部の傾斜面の鉛直方向との角度が異なるためであると考えられるが、両者ともに、上記のように想定した支圧力度の最大値(7500[kN/m])を上回る値となり、その妥当性も確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】引抜抵抗力の算定の対象となる節付丸杭の断面図である。
【図2】(A)は引抜抵抗力の算定の対象となる節付壁杭の正面断面図、(B)は側面断面図である。
【図3】節付杭に引抜力が作用した場合における杭に作用する力を示した模式図である。
【図4】N値又は非排水せん断強さCと極限支圧力度pviと値との関係式を示す表である。
【図5】節付杭に押込力が作用した場合における杭に作用する力を示した模式図である。
【図6】節付杭における拡径部の引抜抵抗力の計算方法を用いて設計方法を用いて設計した節付杭を示す図である。
【図7】計算値と実験値とを比較した表である。
【図8】節部、拡底部に作用する支圧力度と鉛直変位との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
1 節付杭
2 杭軸部
3 節部
4 拡底部
5 鉛直部
6 上側の傾斜部
7 下側の傾斜部
8 上側の傾斜面
9 下側の傾斜面
11 節付壁杭
12 壁杭本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側ほど径が大きくなるように傾斜した傾斜面を含んだ拡径部を有する節付杭の引抜抵抗力を計算する方法であって、
前記傾斜面が負担する極限引抜抵抗力を、
前記傾斜面の水平投影面積と、前記傾斜面付近の地盤の極限支圧力度の鉛直方向の成分との積に基づいて計算することを特徴とする節付杭の引抜抵抗力の計算方法。
【請求項2】
下側ほど径が大きくなるように傾斜した傾斜面を含んだ拡径部を複数有する節付杭の引抜抵抗力を計算する方法であって、
前記拡径部の個数をN、i番目の拡径部の傾斜面の水平投影面積をAvi[m]i番目の拡径部の傾斜面付近の地盤の極限支圧力度をpvi[kN/m]、i番目の拡径部の傾斜面の低減係数をβとした場合に、
以下の式(1)で求めた各拡径部の傾斜面の極限引抜抵抗力の和T[kN]に基づいて計算することを特徴とする節付杭の引抜抵抗力の計算方法。

【請求項3】
前記低減係数βを0.8以上かつ0.9以下の値とすることを特徴とする請求項2記載の節付杭の引抜抵抗力の計算方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の節付杭の引抜抵抗力の計算方法であって、
砂質土内に埋設された拡径部の傾斜面付近の平均N値をNとしたとき、
式(1)における極限支圧力度pviの値として
前記極限支圧力度pviを以下の式(2)により求め、
式(2)により得られたpviの値が7500[kN/m]未満であれば、前記得られたpviの値を、
式(2)により得られたpviの値が7500[kN/m]以上であれば、7500[kN/m]を
用いることを特徴とする節付杭の引抜抵抗力の計算方法。
vi=150N …(2)
【請求項5】
請求項2から4のうちいずれか1項記載の節付杭の引抜抵抗力の計算方法であって、
粘性土内に埋設されたi番目の拡径部の傾斜面付近の非排水せん断強さの平均をCとしたとき、
前記式(1)における極限支圧力度pviの値として、
以下の式(3)により前記極限支圧力度pviを求め、
式(3)により算出された極限支圧力度pviが7500[kN/m]未満である場合は、前記算出された極限支圧力度を、
式(3)により算出された極限支圧力度pviが7500[kN/m]以上である場合は、7500[kN/m]を用いることを特徴とする節付杭の押込抵抗力の計算方法。
vi=6C …(3)
【請求項6】
上側ほど径が大きくなるように傾斜した傾斜面を含んだ拡径部を有する節付杭の押込抵抗力を計算する方法であって、
前記傾斜面が負担する極限押込抵抗力を、
前記傾斜面の水平投影面積と、前記傾斜面付近の地盤の極限支圧力度の鉛直方向の成分との積に基づいて計算することを特徴とする節付杭の押込抵抗力の計算方法。
【請求項7】
上側ほど径が大きくなるように傾斜した傾斜面を含んだ拡径部を複数有する節付杭の押込抵抗力を計算する方法であって、
前記拡径部の個数をN、i番目の拡径部の傾斜面の水平投影面積をA’vi[m]i番目の拡径部の傾斜面付近の地盤の極限支圧力度をp’vi[kN/m]、i番目の拡径部の傾斜面の低減係数をβ’とした場合に、
以下の式(4)で求めた各拡径部の傾斜面の極限押込抵抗力の和T’[kN]に基づいて計算することを特徴とする節付杭の押込抵抗力の計算方法。

【請求項8】
前記節付杭は節付丸杭であることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項記載の節付杭の引抜抵抗力の計算方法。
【請求項9】
前記節付杭は節付丸杭であることを特徴とする請求項6又は7記載の節付杭の押込抵抗力の計算方法。
【請求項10】
前記節付杭は節付壁杭であることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項記載の節付杭の引抜抵抗力の計算方法。
【請求項11】
前記節付杭は節付壁杭であることを特徴とする請求項6又は7記載の節付杭の押込抵抗力の計算方法。
【請求項12】
下側ほど径が大きくなるように傾斜した傾斜面を含んだ拡径部を複数有する節付杭の設計方法であって、請求項1から5のうちいずれか1項記載の節付杭の引抜抵抗力の計算方法により算出された引抜抵抗力が所定の基準抵抗力以上となるように設計することを特徴とする節付杭の設計方法。
【請求項13】
上側ほど径が大きくなるように傾斜した傾斜面を含んだ拡径部を複数有する節付杭の設計方法であって、請求項6又は7記載の節付杭の押込抵抗力の計算方法により算出された押込抵抗力が所定の基準抵抗力以上となるように設計することを特徴とする節付杭の設計方法。
【請求項14】
前記節付杭は節付丸杭であることを特徴とする請求項12又は13記載の節付杭の設計方法。
【請求項15】
前記節付杭は節付壁杭であることを特徴とする請求項12又は13記載の節付杭の設計方法。
【請求項16】
請求項12から15のうちいずれか1項記載の節付杭の設計方法により設計されたことを特徴とする節付杭。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−322257(P2006−322257A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147771(P2005−147771)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(504365799)株式会社特殊構工法計画研究所 (26)
【Fターム(参考)】