説明

拡散フィルムおよびその調製方法

【課題】拡散粒子を含まない拡散フィルムを提供する。
【解決手段】本発明は、基材および基材の少なくとも1つの面に凹凸の微細構造層を含み、JIS K7136標準法に従って測定して、5%を下回らないヘイズおよび50%を下回らない全光線透過率を有する拡散フィルムに関し、凹凸の微細構造の層は、基材の主成分と同じまたは類似である物質から構成されるポリマーおよび前記ポリマーと非相溶な物質を含むコーティング組成物を利用すること、ならびに前記基材に前記コーティング組成物を塗布することによって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散フィルム、特に液晶ディスプレイ(LCD)における使用のための、高い光拡散性および高い透明特性を有する拡散フィルム、ならびに拡散フィルムを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、LCDの主な構造には、2つの部分、つまり、パネルとバックライトモジュールが含まれる。パネル部分には、主に、例えば透明電極板、液晶、配向フィルム、カラーフィルター、偏光板、およびドライバー集積回路(IC)が含まれ、バックライトモジュール部分には、主に、例えばランプ、ライトガイド板、および様々な光学フィルムが含まれる。
【0003】
パネルで光を均一に分布させるために、現在産業において一般的に使用されている方法は、バックライトモジュール中に拡散フィルムまたは拡散板を加えること; または、さらに光拡散機能をプリズムフィルムまたは他の光学フィルムに統合することである。例えば、これは、拡散機能を備えるために、反射フィルムまたは反射板の表面に凹凸の微細構造を形成することによる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の拡散フィルムまたは拡散板は、樹脂バインダーと、拡散粒子として有機または無機粒子とを含む組成物を基材にコートし、拡散層を形成することによって主に形成される。拡散層を透過する場合、光は反射および散乱し、したがってこの種の拡散フィルムまたは拡散板は効果的に光を拡散することができ、光を均一にする効果が達成される。しかし、拡散層の形成の間、拡散粒子は容易に凝集またはお互いに付着し、これにより拡散される光の均一性が影響を受け、ディスプレイの表面にダークスポット(dark spot)が容易に発生する。さらに、拡散粒子が無機粒子である場合、無機粒子の密度は一般的に有機樹脂バインダーより大きいため、無機粒子は重力により加工プロセス中において、容易に沈殿し、フィルムの品質がコーティング後に不均一になる。さらに、拡散粒子ははがれる可能性があり、これによりフィルムまたは板の光学特性に影響を与える。
【0005】
当分野において一般的に使用される別の方法は、光学フィルムの表面に凹凸の微細構造を形成することであり、光は微細構造により全ての方向に放射され、したがって光を均一にする効果が達成される。一般的に使用される従来の方法の1つは、光学フィルムの表面に樹脂をプリントし、凹凸の構造の溝を有する型の使用、例えばブラスティングホイールコーティング方法(blasting wheel coating process)によって、所望の凹凸の構造を形成することである。しかし、この方法は、樹脂と型との間の離型特性によって制限される。例えば、ポリエステル樹脂が使用される場合、樹脂とプリントする型との間の弱い離型特性により、型に残留しやすく、作製される凹凸の構造は予想通りではなく、これにより光学フィルムの品質に影響を与える。
【0006】
光学フィルムのために一般的に使用される基材は、ポリエステル樹脂で形成され、一方、拡散層または凹凸の微細構造のために使用される樹脂は、一般的にアクリレート樹脂である。この種の樹脂が直接ポリエステル樹脂に加工される場合、フィルムは密着力が弱いためにゆがみやすい。このような問題を解決するために、産業においては最初に表面処理が基材に一般的に行われ、その後続けて加工が行われる。一般的に使用される表面処理方法には、コロナ表面処理、プラズマ表面処理、またはさらにプライマー層を基材に塗布することが含まれる。しかし、上記で述べた表面処理方法は、製造コストを上げるだけでなく、これら自身の制限を有する。例えば、プラズマ処理は、速度が遅く高コストの欠点を有し; コロナ処理は、貯蔵には好ましくない、処理された表面の特性が時間とともに変化するという欠点を有し; プライマー層の厚みはコーティング層の密着に影響を与える。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は拡散粒子を含まない拡散フィルムを提供する。本発明の拡散フィルムは光拡散特性を有するだけでなく、光拡散の均一性を改善し、したがって先行技術における問題を効果的に解決する。さらに、本発明の拡散フィルムは、追加の表面処理工程を必要とせず、拡散粒子を必要とせず、作製される微細構造層と基材との間の密着が優れ、これにより製造コストが下げられ、産業における適用価値が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施例1による拡散フィルムの表面の微細構造の顕微鏡写真である。
【図2】図2は、実施例2による拡散フィルムの表面の微細構造の顕微鏡写真である。
【図3】図3は、実施例3による拡散フィルムの表面の微細構造の顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例4による拡散フィルムの表面の微細構造の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上記の目的のために、本発明は、基材および基材の少なくとも1つの面の凹凸の微細構造層を含む拡散フィルムを提供し、JIS K7136標準法に従って測定して、5%を下回らないヘイズおよび50%を下回らない全光線透過率を有し、凹凸の微細構造層は、以下:
(a) 以下の成分:
(i) 基材の主成分と同じまたは類似である物質から構成されるポリマー;
(ii) 成分(i)と非相溶な物質; および
(iii) 溶媒;
をコーティング組成物に混合する工程;
(b) 基材の少なくとも1つの面にコーティング組成物を塗布してコーティング層を形成する工程;
(c) コーティング層を乾燥して成分(iii)を除去する工程であって、乾燥の間に成分(i)と成分(ii)の相分離が起こる工程; および
(d) 成分(ii)を除去し、凹凸の微細構造を形成する工程;
を含む方法によって形成される。
【0010】
本発明は、以下:
(a) 基材を供給する工程;
(b) 以下の成分:
(i) 基材の主成分と同じまたは類似である物質から構成されるポリマー;
(ii) 成分(i)と非相溶な物質; および
(iii) 溶媒;
をコーティング組成物に混合する工程;
(c) コーティング方法によって基材の少なくとも1つの面にコーティング組成物を塗布してコーティング層を形成する工程;
(d) コーティング層を乾燥して成分(iii)を除去する工程であって、乾燥の間に成分(i)と成分(ii)の相分離が起こり、場合によってエネルギー線で成分(ii)を硬化する工程; および
(e) 成分(ii)を除去し、凹凸の微細構造を形成する工程;
を含む、凹凸の微細構造を有する拡散フィルムを調製するための方法をさらに提供する。
【0011】
本記載において使用される専門用語は、実施形態を記載するのみの目的のためであり、本発明の保護範囲を制限することを意図していないことに注目すべきである。例えば、本明細書において使用される場合、他で文脈が明らかに指示していない限り、用語「1つの(a)」「1つの(an)」および「その(the)」には、単数および複数の参照が含まれる。
【0012】
本発明の拡散フィルムは、基材および基材の少なくとも1つの面の凹凸の微細構造層を含む。本明細書において使用される語句「基材の少なくとも1つの面」は、基材の入射光表面、放射光表面、または両方の面を表す。
【0013】
本発明において使用される基材は特に制限されず、プラスチック基材などの当業者に知られている任意の基材であり得る。プラスチック基材を形成するための樹脂は、ホモポリマーまたはコポリマーであり、樹脂の化学種は特に制限されず、例えば、これに制限されないが、ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN); ポリアクリレート樹脂、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA); ポリオレフィン樹脂、例えばポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP); ポリシクロオレフィン樹脂; ポリイミド樹脂; ポリカーボネート樹脂; ポリウレタン樹脂; トリアセテートセルロース(TAC); ポリ乳酸(PLA); またはこれらの混合物であり得る。ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、またはこれらの混合物が好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。一般的に、基材の厚みは、15μmから300μmの範囲であり、これはたいてい光学製品の所望の目的に依存する。
【0014】
本発明の拡散フィルムの凹凸の微細構造は、以下の工程:
(a) 以下の成分:
(i) 基材の主成分と同じまたは類似である物質から構成されるポリマー;
(ii) 成分(i)と非相溶な物質; および
(iii) 溶媒;
を均質なコーティング組成物に混合する工程;
(b) 基材の少なくとも1つの面にコーティング組成物を塗布し、コーティング層を形成する工程;
(c) コーティング層を乾燥し、成分(iii)を除去する工程であって、乾燥の間に成分(i)と成分(ii)の相分離が起こる工程; および
(d) 成分(ii)を除去し、凹凸の微細構造を形成する工程;
によって製造される。
【0015】
凹凸の微細構造と基材との間の密着を強化するために、基材の主成分と同じまたは類似である物質から構成されるポリマーが、主たる発明における成分(i)として使用される。基材の特性と同じまたは類似であるため、成分(i)と基材の密着は優れており、成分(iii)の除去後、成分(i)は対象と良好に密着し、はがれ難い。さらに、成分(i)および基材から成分(ii)を除去することを困難にする硬化工程の間、成分(i)が成分(ii)と重合することを防ぐために、成分(i)は、成分(ii)と反応しないポリマーまたは飽和ポリマーであることが好ましい。
【0016】
基材を選択した後、本発明において使用される成分(i)の化学種は、基材の化学種に応じて、基材と同じまたは類似の特性を有する物質から選択されることができる。上記の特性は、基材の物理的および/または化学的特性を意味する。例えば、基材がポリエステル樹脂から形成される場合、好ましい成分(i)はポリエステル樹脂、または類似の特性を有する他のポリマー、例えばアルキド樹脂またはこれらの組み合わせであり、これはホモポリマーまたはコポリマーに制限されない。上記で述べたポリエステル樹脂は、例えば、これに制限されないが、油を含まないポリエステル樹脂、例えば飽和ポリエステル; または高分子量を有するポリエステル樹脂であり得、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましい。上記で述べたアルキド樹脂は、例えば、これに制限されないが、長油性アルキド樹脂、例えば大豆油アルキド樹脂または亜麻仁油アルキド樹脂; 中油性アルキド樹脂、例えば大豆脂肪酸アルキド樹脂; 短油性アルキド樹脂、例えばヒマシ油アルキド樹脂またはココナッツ脂肪酸アルキド樹脂; あるいは変性アルキド樹脂、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)変性ヒマシ油アルキド樹脂、スチレン変性アルキド樹脂およびエポキシエステルアルキド樹脂である。ヒマシ油アルキド樹脂およびトリレンジイソシアネート変性ヒマシ油アルキド樹脂が好ましく、トリレンジイソシアネート変性ヒマシ油アルキド樹脂がより好ましい。
【0017】
本発明の一実施形態によると、基材は本質的にポリエチレンテレフタレートから形成され、成分(i)は変性アルキド樹脂、好ましくはトリレンジイソシアネート変性アルキド樹脂である。
【0018】
成分(i)として本発明に好適な、商業的に入手可能な製品には、例えば、これに制限されないが、Eternal社により製造されるEterkyd(登録商標)1101-M-70-5、Eterkyd(登録商標)1102-M-70-5、Eterkyd(登録商標)1103-M-70、Eterkyd(登録商標)1106-M-70、Eterkyd(登録商標)1107-M-70、Eterkyd(登録商標)1105-M-55、Eterkyd(登録商標)2105-M-55、Eterkyd(登録商標)2105-M-70、Eterkyd(登録商標)2109-M-70、Eterkyd(登録商標)3304-X-70、Eterkyd(登録商標)3306-X-70、Eterkyd(登録商標)3403-B-65、Eterkyd(登録商標)3401-XT-70、Eterkyd(登録商標)1170-XM-70、Eterkyd(登録商標)242-XM-60、Eterkyd(登録商標)NP1020-R-47、Eterkyd(登録商標)NP1021-R-60、Eterkyd(登録商標)5010-S-50、Eterkyd(登録商標)5016-R-33、Eterkyd(登録商標)5021-R-40、Eterkyd(登録商標)5081-R-40、Eterkyd(登録商標)5082-R-40、Eterkyd(登録商標)5000A、Eterkyd(登録商標)5051-R-60、Eterkyd(登録商標)5052-R-50およびEterkyd(登録商標)5054-TS-40; TOYOBO社により製造されるVYLON(登録商標)103、VYLON(登録商標)200、VYLON(登録商標)220、VYLON(登録商標)226、VYLON(登録商標)600、VYLON(登録商標)660、VYLON(登録商標)GK640、VYLON(登録商標)GK680およびVYLON(登録商標)GK810; Unitika社により製造されるElitel(登録商標)UE-3500、Elitel(登録商標)UE-3210およびElitel(登録商標)UE-3800; ならびにKao社により製造されるATR2010およびATR2009が含まれる。
【0019】
本発明に好適な成分(ii)は、成分(i)と非相溶な物質である。溶媒の不存在下において、成分(i)と(ii)の相溶性はより悪く、相分離現象が起こる。したがって、乾燥後、成分(ii)はコーティング層から除去され、成分(i)が基材に留まり、凹凸の微細構造を形成する。
【0020】
本発明に好適な成分(ii)の化学種は、成分(i)と非相溶であれば、当業者に知られている任意の物質であり得、好ましくは乾燥後、成分(ii)と基材の密着力が成分(i)と基材の密着よりも弱く、さらに成分(ii)の除去が容易なものである。成分(ii)はモノマー、オリゴマー、またはポリマー、あるいはこれらの混合物の形態であり得る。本発明の一実施形態によると、成分(i)がポリエステル樹脂または同様の特性を有する他のポリマーである場合、成分(ii)は、好ましくは、アクリレートモノマー、アクリレートオリゴマーまたはこれらの混合物、より好ましくはアクリレートモノマーとアクリレートオリゴマーの混合物である。
【0021】
本発明に好適なアクリレートモノマーには、例えば、これに制限されないが、エポキシジアクリレート、ハロゲン化エポキシジアクリレート、メチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、フルオレン誘導体ジアクリレート、ビフェニルエポキシエチルアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ポリエチレングリコールo-フェニルフェニルエーテルアクリレート、ハロゲン化ビフェニルエポキシエチルアクリレート、アルコキシ化エポキシジアクリレート、ハロゲン化アルコキシ化エポキシジアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、脂肪族ウレタンヘキサアクリレート、芳香族ウレタンヘキサアクリレート、またはこれらの混合物が含まれ、イソボルニルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、またはこれらの混合物が好ましい。
【0022】
商業的に入手可能なアクリレートモノマーには、例えば、これに制限されないが、Eternal社により製造されるEM210(登録商標)、EM211(登録商標)、EM221(登録商標)、EM223(登録商標)、EM231(登録商標)、EM235(登録商標)、EM265(登録商標)、EM70(登録商標)、EM215(登録商標)、EM218(登録商標)またはEM2108(登録商標)の商標名のアクリレートモノマーが含まれる。
【0023】
本発明に好適なアクリレートオリゴマーは約1000から100000の分子量を有し、これらの化学種には、例えば、これに制限されないが、アクリレート、例えば2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート; メタクリレート; ウレタンアクリレート、例えば脂肪族ウレタンアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、脂肪族ウレタンヘキサアクリレート、芳香族ウレタンヘキサアクリレートまたはアクリレート末端ウレタン; エポキシアクリレート、例えばビスフェノール-Aエポキシジアクリレートまたはノボラックエポキシアクリレート; あるいはこれらの混合物が含まれ、アクリレート、メタクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、脂肪族ウレタンヘキサアクリレート、芳香族ウレタンヘキサアクリレート、ビスフェノール-Aエポキシジアクリレートまたはこれらの混合物が好ましい。
【0024】
商業的に入手可能なアクリレートオリゴマーには、例えば、これに制限されないが、Sartomer社により製造されるSR454(登録商標)、SR494(登録商標)、SR9020(登録商標)、SR9021(登録商標)またはSR9041(登録商標); Eternal社により製造される6101-100(登録商標)、611A-85(登録商標)、6112-100(登録商標)、6113(登録商標)、6114(登録商標)、6123(登録商標)、6131(登録商標)、6144-100(登録商標)、6145-100(登録商標)、6150-100(登録商標)、6160B-70(登録商標)、621A-80(登録商標)または621-100(登録商標); およびUCB社により製造されるEbecryl 600(登録商標)、Ebecryl 830(登録商標)、Ebecryl 3605(登録商標)またはEbecryl 6700(登録商標)の商標名のアクリレートオリゴマーが含まれる。
【0025】
本発明のコーティング組成物における、成分(i)の成分(ii)に対する質量比(Rw)は以下で定義される:
【数1】

ここで、Wiは成分(i)の質量であり、Wiiは成分(ii)の質量である。Rwは、本発明の拡散フィルムの凹凸の微細構造層の粗さ(または凹凸の微細構造の高さの差)を調整するために使用されてもよく、これにより作製した拡散フィルムの光散乱効果を制御する。例えば、本発明の一実施形態によると、成分(i)は変性アルキド樹脂であり、成分(ii)はアクリレートモノマーとアクリレートオリゴマーの混合物であり、Rwは好ましくは約0.1から約0.8、より好ましくは0.15から約0.6の範囲である。この実施形態において、Rwが0.1よりも小さい場合、成分(i)の含有量が少なすぎ、したがって基材表面上に形成される突起の密度が小さすぎ、突起が小さすぎ、本発明により必要とされる光散乱効果が達成できない。Rwが0.8よりも大きい場合、成分(i)で連続平面が基材表面上に形成され、したがって表面粗さが不十分であり、必要な光散乱効果が達成できない。
【0026】
本発明の一実施形態によると、成分(i)は成分(ii)よりも大きい比重を有する。この実施形態において、成分(i)の比重が成分(ii)よりも大きいため、成分(i)は、コーティング層の形成および乾燥による溶媒の除去のプロセスの間、容易に定着する。それゆえ、成分(i)は基材に効果的に密着し、利用効率を改善することができるだけでなく、成分(ii)と基材との間の接触面積を小さくし、したがって基材から成分(ii)をはがれやすくすることができる。本発明の好ましい実施形態によると、成分(i)の比重は約1.25から約1.4であり、成分(ii)の比重は約0.8から約1.2である。本発明の別の実施形態によると、成分(ii)と基材との間の密着力は、成分(i)と基材との間より小さく、さらに成分(ii)の除去を容易にする。
【0027】
コーティング組成物が基材に均一にコートされるために、本発明において使用される成分(iii)は、成分(i)および成分(ii)の両方を溶解し、均一な相を発生することができる溶媒である。本発明の発明者らは、理論的な分析および広範囲の研究を通して、成分(i)および成分(ii)を溶解するための溶媒は、以下の原理に基づいて選択されてもよいことが分かった: 1. 類似の極性の原理; 2. 類似の溶解性パラメータの原理; および3. 溶媒和の原理。一般的に、成分(i)および成分(ii)は、それぞれ成分(iii)と類似の溶解性パラメータおよび/または極性を有しており、この場合において、成分(iii)は容易かつ効果的に成分(i)および成分(ii)を溶解し、均質な溶液を形成することができる。例えば、成分(i)が約8.7(cal/cm3)0.5から約11.1(cal/cm3)0.5の溶解性パラメータを有するトリレンジイソシアネート変性アルキド樹脂から選択され、成分(ii)が約8.8(cal/cm3)0.5から約9.9(cal/cm3)0.5の溶解性パラメータを有するアクリレートモノマーおよびアクリレートオリゴマーの混合物から選択される場合、成分(i)と成分(ii)との間の溶解性パラメータの範囲を有する、または成分(i)および成分(ii)の溶解性パラメータと類似の溶媒が成分(iii)として選択されてもよく、これには、例えば、これに限定されないが、キシレン溶媒(溶解性パラメータ: 8.8(cal/cm3)0.5)、トルエン溶媒(溶解性パラメータ: 8.9(cal/cm3)0.5)またはメチルエチルケトン溶媒(溶解性パラメータ: 9.3(cal/cm3)0.5)が含まれる。
【0028】
溶媒和は、溶質と溶媒分子との間の相互作用力が、溶質分子間よりも大きく、溶質分子がお互いに別々になり、溶媒中で溶解することを意味する。それゆえ、強い双極子-双極子相互作用が成分(i)/(ii)と成分(iii)との間で発生する場合、溶媒和が起こる。言い換えると、成分(iii)の分子は、それぞれ成分(i)および成分(ii)の分子と相互作用し、相互作用力が成分(i)および(ii)の自己凝集力より大きい場合、成分(iii)は成分(i)および(ii)を溶解することができる。
【0029】
本発明において、好適な溶媒が、成分(i)および(ii)の化学種に応じて、成分(iii)として選択されてもよい。例えば、成分(i)が変性アルキド樹脂であり、成分(ii)がアクリレートモノマーとアクリレートオリゴマーの混合物である場合、溶媒(iii)は、ベンゼン溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、またはこれらの混合物であってもよい。ベンゼン溶媒には、例えば、これに制限されないが、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、トリメチルベンゼン、スチレン、またはこれらの混合物が含まれる。エステル溶媒には、例えば、これに制限されないが、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸ジエチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エトキシエチル、酢酸エトキシプロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルエステル、またはこれらの混合物が含まれる。ケトン溶媒には、例えば、これに制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、またはこれらの混合物が含まれる。
【0030】
本発明のコーティング組成物は、場合によって、当業者に知られている任意の添加物を含んでもよく、これには、例えば、これに制限されないが、帯電防止剤、硬化剤、光開始剤、蛍光増白剤、UV吸収剤、無機粒子、湿潤剤、消泡剤、つや消し剤、レベリング剤、滑り剤(slipping agent)、分散剤、および安定剤が含まれる。
【0031】
本発明の一実施形態によると、本発明のコーティング組成物には、光開始剤がさらに含まれる。本発明において有用な光開始剤は、光を照射された場合にフリーラジカルを発生し、フリーラジカルの転移を通して重合を開始することができるものであり、例えば、これに制限されないが、ベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンジル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、またはこれらの組合せが含まれる。
【0032】
本発明のコーティング組成物の固形分含有量は、一般的に、コーティング組成物の全質量に基づいて、約15質量%から約75質量%、およびより好ましくは約30質量%から約65質量%である。固形分含有量が15質量%より低い場合、過剰に低い固形分含有量により、流体がたれる現象が容易に起こり; 固形分含有量が75質量%より高い場合、過剰に高い固形分含有量により、過剰に高い粘度の欠点および悪いコーティング特性が容易に起こる。
【0033】
本発明のコーティング組成物は、当業者に知られている任意の方法によって調製されてもよく、成分の違いによる好適な環境において処方されてもよい。本発明の一実施形態によると、本発明のコーティング組成物は、約25℃でそれぞれの成分を完全に混合することによって調製される。
【0034】
コーティング組成物は、当業者に知られている方法によって、基材に塗布され、コーティング層を形成し、これには、例えば、これに制限されないが、ナイフコーティング、ローラーコーティング、マイクログラビアコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、およびカーテンコーティングが含まれる。本発明の一実施形態によると、コーティング方法は、ローラーコーティングである。
【0035】
コーティング後、溶媒は、本発明において乾燥によって、コーティング層から除去される。溶媒は乾燥の間に除去されるため、成分(i)と成分(ii)との間の非相溶性による相分離が起こり、それゆえ、成分(ii)は乾燥後にコーティング層から除去され、成分(i)に基づく凹凸の微細構造が基材上に残る。乾燥温度および時間は、溶媒の化学種に応じて決定されもよい。本発明の一実施形態によると、乾燥温度は約60℃から約140℃、好ましくは約100℃から約120℃であり、乾燥時間は約10秒から約80秒、好ましくは20秒から約60秒である。
【0036】
さらに、成分(ii)をさらにはがれやすくするために、特に成分(ii)がモノマーまたはオリゴマーの形態である場合、本発明において、成分(ii)は、場合によって溶媒の除去後にエネルギー線を使用して硬化され、その後コーティング層からはがされる。エネルギー線は当業者に知られている任意のエネルギー線、例えば、これに制限されないが、熱エネルギー、放射エネルギー、および電子ビームであってもよく、2以上のエネルギー線を同時にまたは連続して使用し、硬化を行ってもよい。放射エネルギーには、IR光、可視光、UV光、およびレーザーが含まれる。本発明の一実施形態によると、硬化方法はUV硬化であり、放射強度は100 mJ/cm2から1000 mJ/cm2、好ましくは200 mJ/cm2から800 mJ/cm2であってもよい。
【0037】
上記で記載した通り、作製した凹凸の微細構造層の表面粗さまたは凹凸の微細構造の高さの差は、よりよい光散乱効果を得るために、コーティング組成物中の成分(i)の成分(ii)に対する質量比によって調整されてもよい。さらに、作製した凹凸の微細構造層の表面粗さまたは凹凸の微細構造の高さの差は、プロセス条件、例えば乾燥温度または時間を制御することによって調整されてもよい。本発明の一実施形態によると、凹凸の微細構造層の算術平均粗さ(Ra)は、約0.2μmから約2μm、好ましくは約0.4μmから1.5μmであり、10点平均粗さ(Rz)は、約2μmから約12μm、好ましくは約3μmから約7μmである。
【0038】
コーティング組成物をプラスチック基材上に塗布して凹凸の微細構造を形成するのに加えて、本発明の拡散フィルムは、基材として従来の光学フィルム(例えば、拡散反射フィルム、輝度向上フィルム、反射偏光フィルム、または光を均一にする機能の必要がある任意の光学フィルム)を使用し、凹凸の微細構造を作製するための基材にさらに加工し、これによりフィルムの光拡散効果を改善することによって製造されてもよい。
【0039】
JIS K7136標準法に従って測定する場合、本発明の拡散フィルムは5%を下回らない、好ましくは約15%から約75%の範囲のヘイズ; および50%を下回らない、好ましくは約70%から約95%の範囲の全光線透過率を有する。
【0040】
本発明の一実施形態によると、本発明の拡散フィルムはポリエチレンテレフタレート基材を含み、基材の少なくとも1つの面には凹凸の微細構造層が含まれ、ここで、凹凸の微細構造層は、本発明において記載される通り、相分離法によって形成され、トリレンジイソシアネート変性アルキド樹脂から構成され; 拡散フィルムは、JIS K7136標準法に従って測定される、5%を下回らないヘイズおよび50%を下回らない全光線透過率を有する。
【0041】
本発明の拡散フィルムは、追加の表面処理工程を必要とせず、作製された微細構造層と基材との間の密着は優れており、したがって製造コストが下げられ、産業における適用価値が改善される。凹凸の微細構造により、本発明において作製される拡散フィルムは、光源装置、例えば、LCDのバックライトモジュールにおいて使用されることができ、光拡散効果を提供する。凹凸の微細構造は、基材の発光表面、入射光表面、または両方に位置してもよく、基材の発光表面が好ましい。さらに、本発明の拡散フィルムは拡散粒子を含まず、したがって拡散粒子の凝集または付着によって起こる拡散光の均一性への影響が避けられ、拡散粒子の定着またははがれによって引き起こされる問題を解決する。
【0042】
以下の実施形態は、本発明をさらに例示するために提供され、本発明の範囲を制限するものではない。当業者によって容易になされる修正および変化は、本発明の明細書および請求の範囲の開示の範囲内に含まれる。
【実施例】
【0043】
調製実施例1
250mlのガラスフラスコに、30.0gのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、6.0gのトリメチロールプロパントリアクリレート、42.0gのペンタエリスリトールトリアクリレート、84.0gの脂肪族ウレタンヘキサアクリレート(Etercure 6145-100、Eternal社)、および光開始剤として18.0gの1-ヒドロキシルシクロヘキシルベンジルケトンを連続して加え、最終的に100%の固形分含有量および約180gの全質量を有する混合物を調製した。
【0044】
調製実施例2
100mlのガラスフラスコに、成分(iii)として46.5gのトルエン溶媒、成分(ii)および光開始剤として26.6gの調製実施例1の混合物、および成分(i)として26.6gのトリレンジイソシアネート変性ヒマシ油アルキド樹脂(Eterkyd 5010-S-50、Eternal社、約50%の固形分含有量)を連続して加え、最終的に40%の固形分含有量および約100gの全質量を有する、澄んで透明なコーティング組成物を調製した。
【0045】
調製実施例3
100mlのガラスフラスコに、成分(iii)として52.0gのトルエン溶媒、成分(ii)および光開始剤として32.0gの調製実施例1の混合物、および成分(i)として16.0gのトリレンジイソシアネート変性ヒマシ油アルキド樹脂(Eterkyd 5010-S-50、Eternal社、約50%の固形分含有量)を連続して加え、最終的に40%の固形分含有量および約100gの全質量を有する、澄んで透明なコーティング組成物を調製した。
【0046】
調製実施例4
100mlのガラスフラスコに、成分(iii)として54.4gのトルエン溶媒、成分(ii)および光開始剤として34.2gの調製実施例1の混合物、および成分(i)として11.4gのトリレンジイソシアネート変性ヒマシ油アルキド樹脂(Eterkyd 5010-S-50、Eternal社、約50%の固形分含有量)を連続して加え、最終的に40%の固形分含有量および約100gの全質量を有する、澄んで透明なコーティング組成物を調製した。
【0047】
実施例1
調製実施例2において調製したコーティング組成物を、188μmの厚みを有する透明なPET基材(TAIRILIN BH116、Nanya Plastics社)の表面にRDSコーティングバー#8でコートし、コーティング層を形成した。コーティング層を、1分間100℃で乾燥して溶媒を除去し、UV露光機(Fusion UV、F600V、600 W/インチ、Hタイプランプ)で200mJ/cm2のエネルギー線で硬化し、その後テープ(Scotch #610、3M社)をコーティング表面に貼って硬化した組成物(ii)をはがして、凹凸の微細構造を有し、190μmの全厚みを有する拡散フィルムを調製した。
【0048】
実施例2
溶媒を30秒間110℃で乾燥した以外は、実施例1と同じ方法を使用して、凹凸の微細構造を有し、190μmの全厚みを有する拡散フィルムを調製した。
【0049】
実施例3
調製実施例3において調製されたコーティング組成物を使用した以外は、実施例1と同じ方法を使用して、凹凸の微細構造を有し、190μmの全厚みを有する拡散フィルムを調製した。
【0050】
実施例4
調製実施例4において調製されたコーティング組成物を使用した以外は、実施例1と同じ方法を使用して、凹凸の微細構造を有し、190μmの全厚みを有する拡散フィルムを調製した。
【0051】
比較例1
トリレンジイソシアネート変性ヒマシ油アルキド樹脂(Eterkyd 5010-S-50、Eternal社、約50%の固形分含有量)を、188μmの厚みを有する透明なPET基材(TAIRILIN BH116、Nanya Plastics社)の表面にRDSコーティングバー#8でコートし、1分間100℃で乾燥して溶媒を除去し、190μmの全厚みを有する拡散フィルムを調製した。
【0052】
比較例2
調製実施例1の混合物を、188μmの厚みを有する透明なPET基材(TAIRILIN BH116、Nanya Plastics社)の表面にコートし、その後UV露光機(Fusion UV、F600V、600 W/インチ、Hタイプランプ)で200mJ/cm2のエネルギー線で硬化し、最終的に190μmの全厚みを有する拡散フィルムを調製した。
【0053】
比較例3
トリレンジイソシアネート変性ヒマシ油アルキド樹脂(Eterkyd 5010-S-50、Eternal社、約50%の固形分含有量)を、188μmの厚みを有する透明なPET基材(TAIRILIN BH116、Nanya Plastics社)の表面に、凹凸の構造化された切り欠き(notch)を有する吹き付け加工されたローラーでコートし、1分間100℃で乾燥して溶媒を除去し、最終的に190μmの平均厚みを有する拡散フィルムを調製した。
【0054】
試験方法
フィルム厚み試験: 試験コーティング層のフィルム厚みを、フィルム厚みゲージ(モデルPIM-100、TESA社)を使用して、10Nの圧力接点法で測定した。
【0055】
ヘイズ/全光線透過率試験: 試験コーティング層のヘイズ(Hz%)および全光線透過率(Tt%)を、JIS K-7136標準法に従って、ヘイズ計(モデルNDH 5000W、Nippon Denshoku Industries Co., Ltd)で測定した。試験結果を、以下の表1に示す。
【0056】
表面粗さ試験: 試験コーティング層の算術平均粗さ(Ra、単位: μm)および10点平均粗さ(Rz、単位: μm)を、JIS B-0601標準法に従って、粗さ計(モデルSurftest SJ-201、Mitsutoyo社)で測定した。試験結果を、以下の表1に示す。
【0057】
密着試験: コーティング層の表面をクロスハッチカッター(モデルCross-cut Guide CCJ-1、CHUO SEIMITSU KIKI社)で引っかき、その後テープを貼り、90°ではがして、はがれたグリッドの数を決定した。PET基材に対する試験コーティング層の密着は、JIS K-5400標準法に従って測定した。試験結果を、以下の表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例1から4の拡散フィルムの表面の微細構造を、それぞれ光学顕微鏡で観察した。得られた顕微鏡写真を図1から4に示す。成分(i)の割合が低くなるほど、調製された拡散フィルムの凹凸の部分の密度が小さくなることが、図1から4から分かる。
【0060】
成分(i)の成分(ii)に対する質量比が、拡散フィルムのヘイズおよび全光線透過率に影響を与えることが、実施例1から4の結果から分かる。成分(i)の割合が低くなるほど、作製された拡散フィルムのヘイズが小さくなる。それゆえ、異なるヘイズおよび全光線透過率を有する様々な拡散フィルムが、実際の用途の必要性に応じて、成分(i)の成分(ii)に対する比を調整することによって調製され得る。
【0061】
実施例1および2において、同じコーティング組成物を使用したが、後者では短い時間、高い温度で乾燥を行い、調製された拡散フィルムはより高いヘイズを有することが、実施例1および2の結果から分かる。それゆえ、拡散フィルムの拡散特性は、成分(i)の成分(ii)に対する比を調整することに加えて、プロセスパラメータ、例えば乾燥温度および/または時間を制御することによって制御され得、拡散フィルムはより望ましく実際の用途の必要性に対応する。
【0062】
実施例1から4において使用された透明PET基材の特性は、成分(i)の物質の特性と類似であり、したがって密着が優れ、全ての試験コーティング層は密着試験に合格し、基材からの凹凸の微細構造の層の剥離は起こらなかった。
【0063】
比較例1および2の拡散フィルムは、成分(i)または成分(ii)で形成されたコーティング層を有するが、明らかな凹凸の微細構造はその表面に発生しないことが、表1から分かる。したがって、フィルムのヘイズは、それぞれ2.3%および2.5%のみであり、これらは十分な光拡散効果を提供することができない。さらに、比較例1のコーティング層は、成分(i)で形成され、物質の特性は基材の特性と類似であり、したがって密着が優れ、コーティング層は密着試験に合格できたが、対照的に、比較例2のコーティング層は、成分(ii)で形成され、基材とのコーティング層の密着は、硬化後劣っており、コーティング層は密着試験後に完全に剥離した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材および基材の少なくとも1つの面に凹凸の微細構造層を含み、JIS K7136標準法に従って測定して、5%を下回らないヘイズおよび50%を下回らない全光線透過率を有する拡散フィルムであって、凹凸の微細構造層は、以下:
(a) 以下の成分:
(i) 基材の主成分と同じまたは類似である物質から構成されるポリマー;
(ii) 成分(i)と非相溶な物質; および
(iii) 溶媒;
をコーティング組成物に混合する工程;
(b) 基材の少なくとも1つの面にコーティング組成物を塗布してコーティング層を形成する工程;
(c) コーティング層を乾燥して成分(iii)を除去する工程であって、乾燥の間に成分(i)と成分(ii)との間で相分離が起こる工程; および
(d) 成分(ii)を除去し、凹凸の微細構造を形成する工程;
を含む方法によって形成される、拡散フィルム。
【請求項2】
前記凹凸の微細構造層を形成するための方法が、工程(c)の後かつ工程(d)の前に、エネルギー線で成分(ii)を硬化する工程をさらに含む、請求項1に記載の拡散フィルム。
【請求項3】
前記基材がプラスチック基材であり、ポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、セルローストリアセテート、ポリ乳酸、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の拡散フィルム。
【請求項4】
前記基材がポリエステル樹脂であり、かつ成分(i)がポリエステル樹脂、アルキド樹脂、またはこれらの混合物である、請求項1に記載の拡散フィルム。
【請求項5】
前記基材がポリエチレンテレフタレートであり、かつ成分(i)がトリレンジイソシアネート変性アルキド樹脂である、請求項4に記載の拡散フィルム。
【請求項6】
成分(ii)がアクリレートモノマー、アクリレートオリゴマー、アクリレートポリマー、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項4に記載の拡散フィルム。
【請求項7】
前記コーティング組成物が添加物をさらに含む、請求項1に記載の拡散フィルム。
【請求項8】
成分(i)の成分(ii)に対する質量比が、0.1から0.8の範囲である、請求項1に記載の拡散フィルム。
【請求項9】
成分(i)の比重が成分(ii)の比重より大きい、請求項1に記載の拡散フィルム。
【請求項10】
成分(iii)がベンゼン、エステル、ケトン、またはこれらの混合物である、請求項6に記載の拡散フィルム。
【請求項11】
JIS K7136標準法に従って測定して、15%から75%の範囲のヘイズおよび70%から95%の範囲の全光線透過率を有する、請求項1に記載の拡散フィルム。
【請求項12】
以下の工程:
(a) 基材を準備する工程;
(b) 以下の成分:
(i) 基材の主成分と同じまたは類似である物質から構成されるポリマー;
(ii) 成分(i)と非相溶な物質; および
(iii) 溶媒;
をコーティング組成物に混合する工程;
(c) コーティング方法によって基材の少なくとも1つの面にコーティング組成物を塗布してコーティング層を形成する工程;
(d) コーティング層を乾燥して成分(iii)を除去する工程であって、乾燥の間に成分(i)と成分(ii)との間で相分離が起こる工程; および
(e) 成分(ii)を除去し、凹凸の微細構造を形成する工程;
を含む、凹凸の微細構造を有する拡散フィルムを調製するための方法。
【請求項13】
前記コーティング方法が、ナイフコーティング、ローラーコーティング、マイクログラビアコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、およびカーテンコーティングからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コーティング方法がローラーコーティングである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(d)の後かつ工程(e)の前に、成分(ii)をエネルギー線で硬化する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記エネルギー線が、熱エネルギー、放射エネルギー、電子ビーム、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記エネルギー線がUV光である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの面に凹凸の微細構造層を有するポリエチレンテレフタレート基材を含む拡散フィルムであって、凹凸の微細構造層が相分離法によって形成され、かつトリレンジイソシアネート変性アルキド樹脂から構成され、JIS K7136標準法に従って測定して、5%を下回らないヘイズおよび50%を下回らない全光線透過率を有する、拡散フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−128620(P2011−128620A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−281921(P2010−281921)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(500202322)長興化學工業股▲ふん▼有限公司 (30)
【Fターム(参考)】