説明

括り罠用仕掛け補助器具

【課題】石混じりの土質の地盤で括り罠の仕掛けをする際に、石が邪魔になって仕掛け用穴が形成しにくい場合でも括り罠を迅速に仕掛けることができるように補助し、トリガー具が落ちたときの下方へ回動する動きが比較的大きい括り罠と組み合わせた際、罠作動時にトリガー具が踏板の落下の邪魔にならないようにして罠を正常に作動させることができる括り罠用仕掛け補助器具を提供する。
【解決手段】括り罠用仕掛け補助器具(B1)は括り罠(3)と組み合わせられ、仕掛け用穴(4)に収容して使用するものである。括り罠用仕掛け補助器具(B1)は、中空体である器具本体(1)と、括り罠(3)のワイヤロープ(37)の括り部(370)を掛けるワイヤ掛け部(2)とを備えている。器具本体(1)は、括り罠(3)のトリガー具(33)を貫通させる通し部と、括り罠(3)が作動しトリガー具(33)が落ちたときに、落下する踏板(32)の邪魔にならないように逃がすための逃げ空間部(104)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、括り罠用仕掛け補助器具に関するものである。更に詳しくは、石混じりの土質の地盤で括り罠の仕掛けをする際に、石が邪魔になって仕掛け用穴が形成しにくい場合でも、括り罠を迅速かつ安定よく仕掛けることができるように補助することができると共に、トリガー具から踏板が外れる構造でトリガー具が落ちたときの下方へ回動する動きが比較的大きい括り罠と組み合わせた際、罠作動時に落下するトリガー具を逃がして踏板が分離するときの邪魔にならないようにし、踏板を円滑に落下させて罠を正常に作動させることができる、括り罠用仕掛け補助器具に関する。
【背景技術】
【0002】
小石や比較的大きな石を含む石混じりの土質の地盤で括り罠の仕掛けをする場合、獣道に罠の仕掛け用穴(落とし穴)を掘るときに、土に埋まっている石が邪魔になって、必要な形状の仕掛け用穴を短時間で形成することは難しい。このため、括り罠の仕掛けに時間が掛かりすぎて周辺に人のにおいを残してしまったり、仕掛けられた括り罠の固定が不安定になって捕獲率が低下する等、問題が生じていた。
【0003】
このような地盤で括り罠を仕掛ける場合、前記問題を解消するために、例えば大きめにあらかた形成した仕掛け用穴の内側に中空の筒状のものや箱状のものを収容して、これを所定形状の仕掛け用穴の代用とすることが考えられる。このように、仕掛け用穴に収容するようにした筒状部を有するものとしては、本願発明者が提案した「括り罠用仕掛け補助器具」がある(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の(図16)に記載されている括り罠用仕掛け補助器具(A5)は、崩れ防止板(4d)に土止め管(45)を装着した構造であり、括り罠設置後において、仕掛け用穴内に穴内壁が崩れた土や石、水(雨水等)が溜まるのを防止又は低減して仕掛け用穴の形状を保ち、括り罠を正常に作動させるというものである。
また、括り罠用仕掛け補助器具(A5)は、(図20,図21)に示すように、金属製の踏板(72)がトリガー具(73)と一体で外れない構造の括り罠(7)と組み合わせて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−178383
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記括り罠用仕掛け補助器具(A5)は、括り罠設置後において、仕掛け用穴内に土や石、水が溜まるのを防止又は低減して仕掛け用穴の形状を保ち、括り罠を正常に作動させることにおいては十分に有用である。
【0007】
しかしながら、括り罠には、(図20,図21)に示されるように踏板がトリガー具と一体で外れない構造の括り罠ばかりでなく、木製の踏板を使用し、罠作動時には踏板がトリガー具から外れる構造の括り罠もある(後述する図5乃至図7参照)。
両括り罠において、構造がより簡易な後者の括り罠がむしろ一般的であるが、括り罠用仕掛け補助器具(A5)は、前者の括り罠専用であり、後者の括り罠と組み合わせるようにはなっていない。
【0008】
すなわち、括り罠用仕掛け補助器具(A5)は、崩れ防止板(4d)に装着された土止め管(45)が単にほぼ円筒形状であり、トリガー具の逃げ代(逃げ空間部)が十分ではない。しかも、前記後者の括り罠のトリガー具は、獣足が深く踏み込んだ位置で括り罠が作動してワイヤロープの括り部が締まるように、踏板の載置部をより低くするため載置部に繋がる部分を下方に伸ばした構造となっている。
【0009】
このため、トリガー具が落下したとき、踏板と反対側へ逃げることができず、載置部が踏板の落下を邪魔し、さらには踏板の落下に支障が出ることにより捕獲対象獣の足の落下も邪魔されるので、ワイヤロープの括り部による瞬間的な足の括りが不十分になり、捕獲率が低下しやすくなる。
【0010】
(本発明の目的)
本発明は、石混じりの土質の地盤で括り罠の仕掛けをする際に、獣道の土を掘って形成する仕掛け用穴が、石が邪魔になって形成しにくい場合でも、括り罠を迅速かつ安定よく仕掛けることができるように補助することができると共に、トリガー具から踏板が外れる構造でトリガー具が落ちたときの下方へ回動する動きが比較的大きい括り罠と組み合わせた際、罠作動時に落下するトリガー具を踏板と反対側へ逃がして踏板が分離するときの邪魔にならないようにし、踏板を円滑に落下させて罠を正常に作動させることができる、括り罠用仕掛け補助器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
(1)本発明は、
括り罠と組み合わせられ、仕掛け用穴に収容して使用する括り罠用仕掛け補助器具であって、
上部側が開口した中空体である器具本体と、
前記開口した部分の縁部に設けられており組み合わせられる括り罠のワイヤロープの括り部を掛けるワイヤ掛け部と、
を備えており、
前記器具本体は、
前記括り罠のトリガー具を貫通させる通し部と、
前記括り罠が作動し、落ちたトリガー具を落下する踏板の邪魔にならない方向へ逃がすための逃げ空間部と、
を備えている、
括り罠用仕掛け補助器具である。
【0012】
(2)本発明は、
通し部近傍の開口した部分の縁部に、獣足の踏み込みを受けて、組み合わせられる括り罠のトリガー具を作動させないようにする踏力受部が設けられており、
逃げ空間部が、前記踏力受部の下方であって前記括り罠の踏板とは反対側へ膨出して設けられている、
前記(1)の括り罠用仕掛け補助器具である。
【0013】
(3)本発明は、
踏力受部の近傍に、組み合わせられる括り罠の器具本体内部側にセットされるトリガー具の爪を位置させる隙間部が設けられている、
前記(1)又は(2)の括り罠用仕掛け補助器具である。
【0014】
(4)本発明は、
器具本体に、組み合わせられる括り罠に角度調節自在に設けられている杭取付具を受ける杭取付具受部を備えている、
前記(1)、(2)又は(3)の括り罠用仕掛け補助器具である。
【0015】
(5)本発明は、
ワイヤ掛け部に掛けられるワイヤロープの括り部の近傍となる位置に、獣足の踏み込みを受けてトリガー具を作動させないようにする踏力受具を取り付ける受具取付部を備えている、
前記(1)、(2)、(3)又は(4)の括り罠用仕掛け補助器具である。
【0016】
(6)本発明は、
受具取付部が、踏力受具を取り付けたときに踏力受具でワイヤロープの括り部を整形することにより括り部の最小部の幅が所要幅に設定される位置に設けられている、
前記(5)の括り罠用仕掛け補助器具である。
【0017】
器具本体に形成されている逃げ空間部は、器具本体の通し部近傍の壁部を折り曲げる等して形成するが、その具体的な構造は特に限定するものではない。例えば、壁部を垂直に立ち上げ、さらにその上部から内部側へ向け水平に曲げた構造、又は壁部を内部側へ向け形成する部分が所要角度で傾斜した構造(後述する実施の形態参照)等、公知構造を採用することができる。
【0018】
(作用)
本発明に係る括り罠用仕掛け補助器具の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0019】
前記(1)の発明は、器具本体(1)にトリガー具(33)を踏板(32)と反対側へ逃がすための逃げ空間部(104)が形成されている。これにより、罠作動時にトリガー具(33)が落ちたときに踏板(32)が分離して落下する際の邪魔にならないので、踏板(32)が円滑に落下し括り罠を正常に作動させることができる。
また、器具本体(1)の通し部(105)にトリガー具(33)を貫通させることで、セットした括り罠(3)が括り罠用仕掛け補助器具に支えられるので、括り罠(3)の横倒れを防止できる。
【0020】
前記(2)の発明は、トリガー具(33)上方等、獣足を括ることができない位置での獣足の踏み込みを踏力受部(102a,103a)で受け止めることでトリガー具(33)の作動を防止し、いわゆる空打ち(空作動)が起こらないようにすることができる。なお、空打ちにより捕獲対象獣を逃がしてしまうと、その捕獲対象獣は学習して二度とその道を通らないので罠による捕獲がしにくくなる。
【0021】
また、逃げ空間部(104)が、踏力受部(102a,103a)の下方であって括り罠の踏板(32)とは反対側へ膨出して設けられており、踏力受部(102a,103a)が開口部の中心よりに位置するので、ワイヤロープ(37)の括り部(370)で獣足を括るときに、括り部(370)で獣足を踏力受部(102a,103a)側へ引き寄せて、踏力受部(102a,103a)と括り部(370)で挟むようにして引き絞ることができるので、獣足をよりきつく括ることができる。
【0022】
前記(3)の発明は、隙間部(109)に器具本体(1)の内部側にセットされるトリガー具(33)の爪(331)を位置させことによって、爪(331)にワイヤロープ(37)の輪状の括り部(370)を外側から掛けることができる。そして、爪(331)の傾きを調節することで、括り部(370)の浮き上がりを防止すると共に括り部(370)の形を整えることができる。
【0023】
前記(4)の発明は、杭取付具受部(15)で括り罠の杭取付具(34)を受けることにより、括り罠(3)と組み合わせて獣道に仕掛けたときに、括り罠(3)が捕獲対象獣に踏まれても器具本体(1)に対して沈み込むことを防止できる。これにより、括り罠(3)と括り罠用仕掛け補助器具のセッティング状態が狂いにくいので、これに起因する罠が作動しなくなる等の異常は生じにくい。
また、杭取付具受部(15)の高さを調節できるようにすれば、器具本体(1)に対して括り罠(3)の角度を傾斜させて仕掛けるときに、杭取付具受部(15)の高さを変えることで器具本体(1)の逃げ空間部(104)とトリガー具(33)の位置関係を好適に維持できるので、括り罠(3)と括り罠用仕掛け補助器具とを無理なく組み合わせることができる。
【0024】
前記(5)の発明は、受具取付部(180)に踏力受具(19)を取り付けることにより、獣足を括ることができない位置での獣足の踏み込みを踏力受具(19)で受け止めることでトリガー具(33)の作動を防止し、いわゆる空打ちが起こらないようにすることができる。
【0025】
前記(6)の発明は、狩猟法や条例等で括り罠のワイヤロープ(37)の括り部(370)の大きさに、例えば最小部幅12cmの規制が設けられている区域で使用する場合に、それに適合するように受具取付部(180)の位置を設定し、取り付けた踏力受具(19)で括り部(370)を整形することで、括り部(370)の最小幅が自動的に12cmになるようにすることができるので、括り罠を手早く仕掛けることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、罠設置箇所に大きめにあらかた形成した仕掛け用穴の内側に中空の器具本体を収容して、これを所定形状の仕掛け用穴の代用とすることで、例えば小石や比較的大きな石を含む石混じりの土質の地盤で括り罠の仕掛けをする際に、獣道の土を掘って形成する仕掛け用穴が、石が邪魔になって形成しにくい場合でも、括り罠を迅速かつ安定よく仕掛けることができるように補助することができる。
【0027】
また、本発明は、器具本体に括り罠が作動しトリガー具が落ちたときのトリガー具を、落下する踏板の邪魔にならないように逃がすための逃げ空間部を備えているので、トリガー具から踏板が外れる構造でトリガー具が落ちたときの下方へ回動する動きが比較的大きい括り罠と組み合わせた際、罠作動時にトリガー具が落ちたときに踏板が分離し落下するときの邪魔にならず、踏板を円滑に落下させて罠を正常に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の括り罠用仕掛け補助器具の第1実施形態を示す斜視図。
【図2】図1の括り罠用仕掛け補助器具の構造を示し、(a)は正面図、(b)は背面図。
【図3】図1の括り罠用仕掛け補助器具の構造を示し、(a)は平面図、(b)は底面図。
【図4】図1の括り罠用仕掛け補助器具の構造を示し、(a)は右側面図、(b)は図2(a)におけるA−A断面図。
【図5】図1の括り罠用仕掛け補助器具を使用して括り罠を仕掛けた状態の側面視断面説明図。
【図6】図1の括り罠用仕掛け補助器具を使用して括り罠を仕掛けた状態の平面視説明図。
【図7】括り罠が作動した状態の側面視断面説明図。
【図8】本発明の括り罠用仕掛け補助器具の第2実施形態を示す上方から視た斜視図。
【図9】図8の括り罠用仕掛け補助器具を下方から視た斜視図。
【図10】図8の括り罠用仕掛け補助器具を使用して括り罠を仕掛けた状態の側面視断面説明図。
【図11】図8の括り罠用仕掛け補助器具を使用して括り罠を仕掛けた状態の平面視説明図。
【図12】本発明の括り罠用仕掛け補助器具の第3実施形態を示す上方から視た斜視図。
【図13】図12の括り罠用仕掛け補助器具を下方から視た斜視図。
【図14】図12の括り罠用仕掛け補助器具を使用して括り罠を仕掛けた状態の側面視断面説明図。
【図15】図12の括り罠用仕掛け補助器具を使用して括り罠を仕掛けた状態の平面視説明図。
【図16】本発明の括り罠用仕掛け補助器具の第4実施形態を示す下方から視た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1乃至図7を参照する。
罠仕掛け補助器具B1は、金属製(鉄やステンレススチール等)であり、上下が開口した器具本体1と、器具本体1の上部開口側に固定されているワイヤ掛け具2、2aを備えている。
【0030】
器具本体1は、正面板10、背面板11及び左右の側面板12、13で構成され、上側と下側が開口したほぼ四角筒状である。正面板10は、直立する縦板101と当該縦板101上端の左右に形成されている傾斜板102、103で構成されている。
【0031】
縦板101は長方形状である。傾斜板102、103は、縦板101の上端に背面板11方向へ突出するように所要の角度(互いに同じ角度)で傾斜して設けられている。傾斜板102、103の上端部には、縦板101と平行になるように直立させて上端板102a、103aが形成されている。上端板102a、103aは、空打ちになりやすい位置での獣足の踏み込みを受けることにより、踏み込みによってトリガー具33が落ちたり、獣足が滑り落ちて踏板32を踏んだりして、タイミングがずれた状態で括り罠を作動させてしまうことを防止するための踏力受部となっている。
【0032】
上端板102a、103aは、外側が縦板101よりやや短くなるよう形成されている。これにより形成されるワイヤ掛け具2、2aとの隙間部109には、後述するように器具本体1の内部側にセットされるトリガー具33の両側の爪331を位置させる。そして、各爪331にワイヤロープ37の輪状の括り部370を外側から掛けて爪331の傾きを調節することで、括り部370の浮き上がりを防止すると共に括り部370の形を整えることができる。
【0033】
なお、傾斜板102、103の傾斜角度は、本実施の形態では縦板101に対して約40°の傾きに設定されているが、傾斜板102、103の下方に、括り罠3が作動しトリガー具33が落ちたときのトリガー具33を逃がすために十分な大きさの逃げ空間部104が形成できれば、この角度に限定されるものではない。逃げ空間部104は、前記構成により上端板102a、103aの下方に踏板32とは反対側に膨出するように形成されている。傾斜板102、103の間には、括り罠3と組み合わせてセットする際に、括り罠3のトリガー具33を貫通させる通し部105が設けられている。
【0034】
また、図2(a)に示すように縦板101には上部取付孔14及び下部取付孔14aが上下にやや離れた位置に設けられている。縦板101には、後述する括り罠3の杭取付具34を受ける杭取付具受具15が、取付孔14、14aで高さの調節ができるようにして取り付けられている。
【0035】
上部取付孔14は、縦孔140と、縦孔140の側部に等間隔で三箇所に設けられている掛止孔141で構成されている。各掛止孔141の先端部は下方へやや下がっており、後述する蝶ネジ156が掛止及びその位置で締め付け固定できるようになっている。
下部取付孔14aは、後述する掛止ピン154を挿通するもので、縦方向の長孔である。下部取付孔14aの長さは、前記最上部と最下部の掛止孔141間の距離よりやや長くなるように形成されている。
【0036】
杭取付具受具15は、長さ方向ほぼ中間部で直角に折り曲げられたL板状であり、縦板101に取り付ける側の縦部151と、杭取付具34を受ける側である横部152を有している。
縦部151には、折り曲げ部近傍にネジ孔153が貫通して形成されている。ネジ孔153には、蝶ネジ156が器具本体1内部側から上部取付孔14を通して螺合される。
【0037】
また、縦部151の先部側には掛止ピン154が折り曲げ方向とは反対側に突出するように固定されている(本実施の形態では図4(b)に示すようにネジをネジ孔にねじ込んで固定して形成している)。
横部152には、先端から基端側へ所要幅の切欠部155が形成されている。切欠部155の幅は、後述する杭取付具34に取り付けられる杭39を通すことができる幅に設定されている。
【0038】
なお、杭取付具受具15は、ネジ孔153に螺着した蝶ネジ156を上部取付孔14のいずれかの掛止孔141に掛け、さらに掛止ピン154を下部取付孔14aに差し込んで蝶ネジ156を締め付けることにより固定される。杭取付具受具15は、蝶ネジ156を上部取付孔14の高さの異なる他の掛止孔141に掛け替えることにより、器具本体1に対する杭取付具受具15の取り付け高さを多段階(本実施の形態では三段階)で調節することができる。
【0039】
左右の側面板12、13は、ほぼ長方形で同じ形状である。側面板12、13の上辺部の高さは、前記正面板10の傾斜板102、103の傾斜部上端よりやや低くなるように設定されている(図4参照)。
また、背面板11の上辺部は、側面板12、13の上辺部よりやや低くなるように形成されている。
【0040】
左側の側面板12の上部には、ワイヤロープ37の括り部370を載せて掛けるワイヤ掛け具2が固定され、右側の側面板13の上部には、ワイヤ掛け具2aが固定されている。ワイヤ掛け具2と2aの形状は対称形であるので、本明細書では一方のワイヤ掛け具2の構造のみを説明し、他方のワイヤ掛け具2aについては説明を省略する。なお、ワイヤ掛け具2、2aは相対向する位置に同じ高さで固定されている。
【0041】
ワイヤ掛け具2は、プレス成形によって形成されており、側面板12、13への固定部である縦部20を有している。縦部20の上部には、上部側が円弧状に拡がった傾斜誘導部21が続けて設けられている。これにより、傾斜誘導部21は外側へ膨らんだ湾曲した斜面となっている。
【0042】
傾斜誘導部21の上部には、上部縁から板材を断面凹状に窪ませるように曲げ変形させてワイヤ装入溝22が水平に設けられている。ワイヤ装入溝22は、溝の幅及び深さがワイヤロープ37の括り部370を装入することができると共に罠作動時に括り部370を離脱させることができるように形成されている。
【0043】
ワイヤ装入溝22は、平面視でほぼ円弧状に設けられ、その長さ方向の両端には、ワイヤ装入溝22を構成する外板220を一部上方へ突出させて係合爪部23が設けられている。各係合爪部23は、ペンチ等の工具を利用して内外方向へ簡単に塑性変形させることができる。
【0044】
各係合爪部23を変形させてワイヤ装入溝22の幅を変えることにより、括り部370を止める力を調節することができ、例えばワイヤに癖があるような場合も括り部370をワイヤ装入溝22に収めやすい。
【0045】
(作用)
図5乃至図7を主に参照して、罠仕掛け補助器具B1を使用して括り罠3を仕掛ける方法及び作用を説明する。
【0046】
ここで、跳上げ式の括り罠3の構造を簡単に説明する。括り罠3は、基アーム35と跳上げアーム30を有し、両アーム30、35はバネ36の付勢力で拡がる構造である。符号34は固定用の杭39を差し込んで固定する杭取付具である。
【0047】
杭取付具34は筒状であり、基アーム35に基端部が回動自在に取り付けられ、先端(下端)には円形のフランジ340が形成されている。基アーム35の先端にはトリガー具33が掛止されており、トリガー具33の先端の踏板載置部330には、踏板32が載置される。
【0048】
トリガー具33の四箇所には爪331が所要間隔をおいて立設されている。各爪331には、ワイヤロープ37の括り部370が外側から掛けられる。ワイヤロープ37には、括り部370を形成する締め金具371を有している。
【0049】
この括り罠3は、踏板32が捕獲対象獣の足で踏まれると、トリガー具33が外れてバネ36の付勢力で跳上げアーム30が跳ね上がり、ワイヤロープ37の輪状の括り部370が絞られて足が括られる。
【0050】
(仕掛け)
罠仕掛け補助器具B1を使用した括り罠3の仕掛けは次のように行われる。
まず、図5に示すように、獣道に仕掛け用穴4を掘り、仕掛け用穴4の横の傾斜地に仕掛け用穴4につながる横穴40を掘る。仕掛け用穴4に罠仕掛け補助器具B1を嵌め入れ、姿勢を水平に安定させる。
【0051】
このとき、罠を仕掛ける地域が仮に小石や比較的大きな石を含む石混じりの土質の地盤であり、獣道の土を掘って形成する仕掛け用穴4の形状が、石が邪魔になって多少いびつになっても、罠の作動に必要な穴の形状は嵌め入れた器具本体1の形状で補完できる。これにより、穴形状の補正等の手間がかからず、結果的に括り罠3を迅速かつ安定よく仕掛けることができる
【0052】
次に、横穴40に各アーム30、35を閉じて先端にトリガー具33を掛止したセット状態の括り罠3を設置する。まず、括り罠3の杭取付具34のフランジ340を罠仕掛け補助器具B1の杭取付具受具15の上に載せる。杭取付具34に取り付けられた杭39は杭取付具受具15の切欠部155に横から入れるようにする。切欠部155は、罠作動後に杭39が罠仕掛け補助器具B1から外れやすいようにする作用があり、これにより括り罠3の分離も早くなり、括り罠3自体の破損を防止できる。
【0053】
括り罠3は、横穴40が形成されている傾斜地の傾斜にほぼ沿うように傾けられる。この際、必要であれば、杭取付具受具15の高さを調節して括り罠3の傾きを合わせるようにする。
【0054】
なお、前記のように括り罠3の位置を設定する際、先端のトリガー具33を器具本体1の傾斜板102、103の間の通し部105に貫通させるようにする。これにより、トリガー具33の先端の踏板載置部330は、傾斜板102、103の内部側かつ逃げ空間部104の斜め上方に位置している。踏板載置部330の設定高さは、器具本体1の背面板11の上端とほぼ同じ高さである。
【0055】
そして、トリガー具33の踏板載置部330と器具本体1の背面板11の上辺部との間には、木製で四角形状の踏板32(二枚構成)が水平に載置される。ワイヤ掛け具2、2aのワイヤ装入溝22にワイヤロープ37の括り部370の形状を合わせるようにして装入する。
【0056】
また、ワイヤ掛け具2、2a後部の側面板12、13の上辺部に踏力受具である受木19を渡すように載置する。括り部370においてワイヤ掛け具2、2a間の浮いた部分は、この受木19で受けるようにする。最後に、括り罠3と罠仕掛け補助器具B1にカムフラージュのために土や草、枯れ葉等を被せて仕掛けを完了する。
なお、前記のように器具本体1の通し部105にトリガー具33を貫通させることにより、セットした括り罠3が器具本体1に支えられるので、括り罠3の横倒れを防止できる。
【0057】
(作動)
前記のように罠仕掛け補助器具B1と共に仕掛けられた括り罠3は、捕獲対象獣が通ることにより次のように作動する。
【0058】
図7に示すように、イノシシなどの捕獲対象獣が獣道を移動してきて、その獣足5がワイヤ掛け具2、2aのワイヤ装入溝22に装入されているワイヤロープ37の括り部370内側の踏板32を踏むか、或いはワイヤ掛け具2、2aの傾斜誘導部21に乗って斜面を滑り落ちて踏板32を踏むと、括り罠3のトリガー具33が下方へ外れて跳上げアーム30が跳ね上がる。外れたトリガー具33は、逃げ空間部104に回り込むように落ち、踏板32が分離して落ちるのを邪魔することがなく、踏板32は円滑に瞬時に落下する。
【0059】
同時に括り部370も引っ張られてワイヤ装入溝22から離脱して絞られ、捕獲対象獣の獣足5が括り部370によって括られて、捕獲対象獣は捕獲される。このとき、獣足5は、図7に示す状態からワイヤロープ37によって上端板102a、103a側へ瞬間的に引き寄せられ、上端板102a、103aに強く当たるため、獣足5はいわば括り部370と上端板102a、103aで挟まれるようにしてよりきつく括られ、捕獲率は向上する。
【0060】
また、罠仕掛け補助器具B1により、捕獲対象獣の獣足5が必ずしも踏板32を直接踏まなくても、少なくとも踏板32より拡がった傾斜誘導部21に入れば足を括ることができるので、この点も捕獲率の向上に寄与できる。
【0061】
なお、捕獲対象獣の獣足5がトリガー具33上方の足を括ることができない位置、例えばワイヤロープ37の括り部370の上で踏み込んだ場合、その踏力を器具本体1の上端板102a、103aで受け止めることができる。
【0062】
これにより、獣足5の踏力でトリガー具33が落ちることが防止され、いわゆる空打ち(空作動)が起こらない。捕獲対象獣の獣足5が括り部370の他の部分を踏んだときも、その踏力はワイヤ掛け具2、2a又は受木19で受けられることにより同様に空打ちが防止される。
【0063】
さらには、括り罠3の杭取付具34のフランジ340を器具本体1の杭取付具受具15の上に載せており、括り罠3が踏まれても器具本体1に対して沈み込むことがなく、罠仕掛け補助器具B1と括り罠3のセッティング状態が狂いにくいので、これに起因する罠が作動しなくなる等の異常は生じにくい。
【0064】
図8乃至図11を参照する。
なお、図8乃至図11において、前記罠仕掛け補助器具B1と同一又は同等箇所には同一の符号を付して示し、構造について重複する説明は省略する。
【0065】
罠仕掛け補助器具B2は、器具本体1aの側面板12a、13aの上部にワイヤ掛け具2、2aが設けられておらず、代わりに上部が外側に開くように所要角度で傾斜した載置片18が設けられている点において罠仕掛け補助器具B1と相違している。各載置片18は、側面板12a、13aの後端部に受木を載せることができるように側面板12a、13aよりやや短く形成されている。
【0066】
(作用)
図10及び図11を主に参照する。
罠仕掛け補助器具B2を使用して括り罠3を前記罠仕掛け補助器具B1を使用した場合とほぼ同様に仕掛ける。なお、ワイヤロープ37の括り部370のセットについては、まず側面板12a、13aの後部側上辺部に受木19を載置し、各載置片18の上辺部にワイヤロープ37の括り部370を載せ、括り部370の浮いた部分は、受木19で受けるようにする。
【0067】
罠仕掛け補助器具B2は、前記罠仕掛け補助器具B1と比較してより簡易な構造であるが、その作用(機能性)については、例えば逃げ空間部104によるトリガー具33の逃げ部の確保や空打ちの防止等、前記罠仕掛け補助器具B1とほぼ同様であるので説明は省略する。
【0068】
図12乃至図15を参照する。
なお、図12乃至図15において、前記罠仕掛け補助器具B1と同一又は同等箇所には同一の符号を付して示し、構造について重複する説明は省略する。
【0069】
罠仕掛け補助器具B3は、器具本体1bの側面板12b、13bの上部にワイヤ掛け具2、2aが設けられておらず、代わりに上部が外側に開くように所要角度で傾斜した載置片18aが設けられている点において罠仕掛け補助器具B1と相違している。各載置片18aの後部には、受木を嵌め込んで載せることができる受木嵌合部180が設けられており、その前側にはワイヤ掛け部181が設けられている。
【0070】
(作用)
図14及び図15を主に参照する。
罠仕掛け補助器具B3を使用して括り罠3を前記罠仕掛け補助器具B1を使用した場合とほぼ同様に仕掛ける。なお、ワイヤロープ37の括り部370のセットについては、まず受木嵌合部180に受木19を嵌め込み、ワイヤ掛け部181に括り部370を掛けて受木嵌合部180の内側に沿わせるようにする。
【0071】
これにより、狩猟法や条例等で括り罠3のワイヤロープ37の括り部370の大きさに例えば12cmの規制が設けられている区域で使用する場合に、それに適合するように受木嵌合部180とワイヤ掛け部181の位置を設定することで、括り部370の最小幅が自動的に12cmになるように整形することができ(図15参照)、括り罠3を手早く仕掛けることができる。
【0072】
また、罠仕掛け補助器具B3は、前記規制が設けられている区域だけでなく、受木嵌合部180とワイヤ掛け部181を使用せずに、前記罠仕掛け補助器具B2と同様にセットすることにより、規制のない区域でも使用することができる。
なお、逃げ空間部104によるトリガー具33の逃げ部の確保や空打ちの防止等、他のの作用は、前記罠仕掛け補助器具B1と同様であるので、説明は省略する。
【0073】
図16を参照する。
なお、図16において、前記罠仕掛け補助器具B2と同一又は同等箇所には同一の符号を付して示し、構造について重複する説明は省略する。
罠仕掛け補助器具B4は、正面板10c、背面板11c、側面板12c、13cの下辺部に内側へ直角に曲げて形成された底縁板16を有している。各底縁板16は、所要の幅で正面板10c、背面板11c、側面板12c、13cの全長にわたり設けられている。その他の構造は罠仕掛け補助器具B2と同様である。底縁板16は、前記罠仕掛け補助器具B1、B3に同様に設けることもできる。
【0074】
罠仕掛け補助器具B4は、括り罠3を前記罠仕掛け補助器具B1を使用した場合とほぼ同様に仕掛けるときに、仕掛け用穴4の中でより安定し、仕掛けがさらに容易にできる。すなわち、正面板10c、背面板11c、側面板12c、13cの下辺部に設けられている各底縁板16の作用により、罠仕掛け補助器具B4が必要以上に沈むことが防止され、より安定的かつ迅速な設置が可能になる。また、罠仕掛け補助器具B4によれば、罠本体から離脱したトリガー具33が各底縁板16の作用により器具内部に残りやすくなり、回収率が高くなる副次的な効果もある。
なお、逃げ空間部104によるトリガー具33の逃げ部の確保や空打ちの防止等、他のの作用は、前記罠仕掛け補助器具B1と同様であるので、説明は省略する。
【0075】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
B1 罠仕掛け補助器具
1 器具本体
10 正面板
101 縦板
102、103 傾斜板
102a、103a 上端板
104 空間部
105 通し部
109 隙間部
11 背面板
12 側面板
13 側面板
14 上部取付孔
140 縦孔
141 掛止孔
14a 下部取付孔
15 杭取付具受具
151 縦部
152 横部
153 ネジ孔
154 掛止ピン
155 切欠部
156 蝶ネジ
19 受木
2、2a ワイヤ掛け具
20 縦部
21 傾斜誘導部
22 ワイヤ装入溝
220 外板
23 係合爪部
3 括り罠
30 跳上げアーム
32 踏板
33 トリガー具
330 踏板載置部
331 爪
34 杭取付具
340 フランジ
35 基アーム
36 バネ
37 ワイヤロープ
370 括り部
371 締め金具
39 杭
4 仕掛け用穴
40 横穴
5 獣足
B2 罠仕掛け補助器具
1a 器具本体
12a、13a 側面板
18 載置片
B3 罠仕掛け補助器具
1b 器具本体
12b、13b 側面板
18a 載置片
180 受木嵌合部
181 ワイヤ掛け部
B4 補助器具
10c 正面板
11c 背面板
12c、13c 側面板
16 底縁板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
括り罠(3)と組み合わせられ、仕掛け用穴(4)に収容して使用する括り罠用仕掛け補助器具であって、
上部側が開口した中空体である器具本体(1)と、
前記開口した部分の縁部に設けられており組み合わせられる括り罠(3)のワイヤロープ(37)の括り部(370)を掛けるワイヤ掛け部(2,2a)と、
を備えており、
前記器具本体(1)は、
前記括り罠(3)のトリガー具(33)を貫通させる通し部(105)と、
前記括り罠(3)が作動し、落ちたトリガー具(33)を落下する踏板(32)の邪魔にならない方向へ逃がすための逃げ空間部(104)と、
を備えている、
括り罠用仕掛け補助器具。
【請求項2】
通し部(105)近傍の開口した部分の縁部に、獣足の踏み込みを受けて、組み合わせられる括り罠(3)のトリガー具(33)を作動させないようにする踏力受部(102a,103a)が設けられており、
逃げ空間部(104)が、前記踏力受部(102a,103a)の下方であって前記括り罠(3)の踏板(32)とは反対側へ膨出して設けられている、
請求項1記載の括り罠用仕掛け補助器具。
【請求項3】
踏力受部(102a,103a)の近傍に、組み合わせられる括り罠(3)の器具本体(1)内部側にセットされるトリガー具(33)の爪(331)を位置させる隙間部(109)が設けられている、
請求項1又は2記載の括り罠用仕掛け補助器具。
【請求項4】
器具本体(1)に、組み合わせられる括り罠(3)に角度調節自在に設けられている杭取付具(34)を受ける杭取付具受部(15)を備えている、
請求項1、2又は3記載の括り罠用仕掛け補助器具。
【請求項5】
ワイヤ掛け部(181)に掛けられるワイヤロープ(37)の括り部(370)近傍となる位置に、獣足の踏み込みを受けてトリガー具(33)を作動させないようにする踏力受具(19)を取り付ける受具取付部(180)を備えている、
請求項1、2、3又は4記載の括り罠用仕掛け補助器具。
【請求項6】
受具取付部(180)が、踏力受具(19)を取り付けたときに踏力受具(19)でワイヤロープ(37)の括り部(370)を整形することにより括り部(370)の最小部の幅が所要幅に設定される位置に設けられている、
請求項5記載の括り罠用仕掛け補助器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−193809(P2011−193809A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64701(P2010−64701)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(591181023)
【Fターム(参考)】