説明

指サック

【課題】 めくる機能に優れ、通気性、伸縮性に富み、手にフィットしてずれることが無く、不快感のない指サックを、加工容易かつ安価に作製すること。
【解決手段】 基材として熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットを用いてなることを特徴とする指サック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は指サックに関し、さらに詳しくは、通気性に富み、使用感に優れた指サックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本や雑誌、新聞、書類等を読んだり伝票を確認したり、更には紙幣を数えたりする際には紙をめくる必要が有る。しかしながら、紙の種類やその表面状態及び指の状態により滑ってうまくめくれない事がしばしば発生する。
この為、紙めくりの際に滑ってうまくめくれない事を防止するために様々な方法が用いられている。一例としては、指の表面を湿らせて滑りを防ぐためにスポンジに水を含ませた容器がある。また、ゴムなどの比較的紙に対する摩擦係数の高い素材で出来た筒状のカバー、いわゆる指サックを指に嵌めて滑りを防ぐ方法が取られている。
【0003】
従来から本や書類、紙幣をめくるという目的の為に様々な場面で指サックが使用されている。確実にめくるには、上述のように表面の摩擦係数を高める必要が有るが、繰り返し使っていると素材が擦り減ってしまい、めくる機能が低下し、最後には滑ってうまくめくれなくなるという欠点が有った。
また、密閉性の高い材質を用いることが多いため、長時間に渡り指サックをしているうちに汗をかいてしまうという欠点も併せ持っていた。
【0004】
こうした欠点を改良するものとして特許文献1ないし特許文献2には網状の袋体または筒体とし、摩擦力と柔軟性を持つゴムあるいは合成樹脂等からなる指サックが提案されている。しかしながら、指の大きさは個人個人で異なり、単にゴムであるというだけでは緩すぎたり、きつすぎたりして指サックを嵌めたままで長い時間仕事をする事は難しかった。
【0005】
【特許文献1】特開平4−138293号公報
【特許文献1】実開昭56−140473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこうした紙めくりの際に有効な新しい指サックを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、基材として熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットを用いたことなどによって、本発明の指サックを完成した。
すなわち、本発明は、
「1.基材としてその一部または全部に熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットを用いてなることを特徴とする指サック。
2.熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットが二軸延伸性を有することを特徴とする、第1項に記載の指サック。
3.熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットの交叉部が直接成形により形成されたものであることを特徴とする、第1項または第2項の何れかに記載の指サック。
4.熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットの少なくとも一辺を熱で互いに融着して一片が開口した袋状あるいは筒状にしたことを特徴とする、第1項ないし第3項の何れかに記載の指サック。」に関する。
【発明の効果】
【0008】
上記構成の指サックは、めくる機能に優れ、通気性に富むので、蒸れが無く、伸縮性に富むため手にフィットしてずれることが無い、非常に優れた効果を奏するものである。
さらに、網が薄く、かつ指にフィットするので指サックをしたままでもペンを持ったりキーボードの操作が出来る、素材が熱可塑性エラストマーであり、それ自身が熱により溶融し接着性を発揮するので加工が容易、かつ安価に作製できる、そして特別な金型などを必要とせずに自由な任意の形状に成形できるなどの有用な効果もある。
また、他の素材と組み合せて加工する事も可能であり、用途に応じ様々な指サックを提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の指サックについて詳細に説明する。
【0010】
本発明の指サックは、基材としてその一部または全部に熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットを用いてなることを特徴とする。
素材として熱可塑性エラストマーを用いるが、熱可塑性エラストマーは、ある程度の伸縮性を有し、指サックの素材として適している。また、それ自身が熱により溶融し接着性を発揮するので、加工が容易、かつ安価に指サックを作製できることなどの利点もある。
そして、その柔軟な成形性などにより特別な金型などを必要とすることなく、自由な任意の形状に成形できる。
【0011】
また、基材が熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットであることから、ネットの凹凸形状がめくる紙面などに効率的に接触し、かつ、伸縮性ゆえに適度の密着性・柔軟性を有するので、めくる機能に優れている。
さらに、ネット形状であることから、通気性に富むので、蒸れが無く、汗をかく不快感からも解放される。
加えて基材自体が伸縮性に富み、ネット形状であることからどのような形状にも対応するので、個人差のある人間の指に対し、ある程度の汎用性を持ちつつ、個人個人の指にフィットしてずれることが無い、非常に優れたものとなる。
【0012】
さらに、熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットが二軸延伸性を有するとそのフィット感などがより良好になるので好ましい。
【0013】
熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットは、織物がそれぞれ複数の縦糸と横糸を交叉させることで形成されているように、溶融した素材を糸状にし、それぞれ複数の縦糸と横糸を交叉させることで形成されている。
その際、熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットの交叉部が直接成形により形成されたものであると伸縮させた際の破断強度が向上し、均一な形状を形成できるので好ましい。
【0014】
さらに、上記構成にすることなどにより、より伸長な破断伸度を有するものを得ることができ、熱可塑性エラストマーの破断伸度がある程度大きいと、めくる機能に優れ、フィット感がよく、耐久性も良好であるので好ましい。
【0015】
伸縮性ネットの素材としての熱可塑性エラストマー(TPE)としては、(1)ポリスチレン系、(2)ポリオレフィン系、(3)ポリジオレフィン系、(4)塩素系、(5)エンプラ系、(6)その他に大別され、それぞれ以下のものが例示できる。
(1)ポリスチレン系としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、官能基付与型SEBS(f−SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)、ランダムタイプの水素添加型スチレン・ブタジエンポリマー(HSBR)等が挙げられる。
(2)ポリオレフィン系としては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)として、単純ブレンドタイプ(s−TPO)、インプラント化TPO(i−TPO)、動的加硫タイプ(TPV)の3種類が挙げられる。いずれも、ハードセグメントにはポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)が主に用いられ,ソフトセグメントとしては、EPDM、NBRなどが主に用いられるが、構成成分の分子構造の差や組合せによりさらに多くの種類に分かれる。
(3)ポリジオレフィン系としては、シンジオタクチック−1,2ポリブタジエン(RB)、トランスポリイソプレン(TPI)および天然ゴム系TPE(TPNR)が挙げられる。RBは、結晶性シンジオタクチック1,2ポリブタジエンをハードセグメントに、無定形のポリブタジエンをソフトセグメントに有するマルチブロックコポリマーである。トランスポリイソプレンは結晶性のトランス構造をハードセグメントにしている。TPNRは、ハードセグメントとしてのPPなどの樹脂と天然ゴムからなるものなどが一般的である。
(4)塩素系としては、ポリ塩化ビニル系TPEすなわち塩ビ系TPE(TPVC)が主なものとして挙げられる。TPVCは、硬質塩化ビニル樹脂(PVC)をハードセグメントにして、軟質PVCやNBRなどの各種のゴムをソフトセグメントとしている。TPVCのほかに塩素化ポリエチレンなども挙げられる。
(5)エンプラ系としては、ポリウレタン系(TPU)、ポリエステル系(TPEE)、ポリアミド系(TPA)、フッ素系TPEなどが挙げられる。TPU、TPEE、TPAのソフトセグメントは、主にポリエーテルが一部でポリエステルが用いられ、ハードセグメントはポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドが用いられており、フッ素系TPEでは、フッ素樹脂がハードセグメントにフッ素ゴムがソフトセグメントに用いられる。
(6)その他の熱可塑性エラストマー(TPE)としては、シリコーン系TPEなどを挙げることができ、ポリシロキサン−ポリ尿素ブロックコポリマー、あるいはポリシロキサン−ポリカーボネートブロックコポリマー、ポリジメチルシロキサンにポリオレフィンを反応させたグラフトタイプのTPEなどがある。
【0016】
本発明の指サックに使用する伸縮性ネットの素材としては、中でもポリスチレン系の熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0017】
熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットを本発明の指サックの基材として使用すると、単なる合成樹脂やゴム系のものに比べて、めくる機能に優れ、伸縮性に富むため手にフィットしてずれることが無い。さらに、網を薄く構成しても破れにくい。また、熱可塑性エラストマーは、それ自身が熱により溶融し接着性を発揮するので加工が容易、かつ安価に作製できる。そして特別な金型などを必要とせずに自由な任意の形状に成形できるなどの有用な利点が多い。
また、他の素材と組み合せて加工する事も素材的に有利である。
【0018】
以下に具体的な指サックの例を挙げ、図面により本発明を説明する。
【0019】
本発明の指サックは、基材として熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットを用いることなどにより構成され、該構成によれば、その製法は特に限定されないが、素材が熱可塑性エラストマーからなるものであることから、伸縮性ネットの少なくとも一部を熱で互いに融着して指サックを形成することができる。
さらに具体的には、熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットの少なくとも一辺を熱で互いに融着して一片が開口した袋状あるいは筒状にしたものが挙げられ、図1〜4は、そのような指サックを示したものである。
【0020】
図1は、長方形にカットしたシート状の基材(2)を丸め、筒状にし、その一部(3)を融着して二片が開口した筒状の指サック(1)を作製したものである。この形状であれば、上下の別なく指サックを装着することができる利点を有する。
【0021】
図2ないし図3は、別の指サックの例である。図3に示したような形状にカットしたシート状の基材(2)を中央部(4)にて折り曲げ、重ね合わせた後に、その曲部(5,5’)を融着して一片が開口した袋状の指サック(1)を作製したものである。
【0022】
袋状にするには、図1の例においてその上部を融着することでも、簡単に袋状とすることができるが(図示せず)、その際は、二度の融着が必要になる上、角張った形状となってしまう。それに対し、図2ないし図3に示したものであれば、融着回数を減らすことができ、さらに立体的形状とすることができるので、より指にフィットしたものとすることができる。
【0023】
上記融着の際には、例えば、図1の例における図4の例などのように、融着しようとする端部を二重に折り曲げ、該二重端部(6)において融着するとさらに好ましい態様となる。
基材がネット構造であるため、本来、面状体で構成された基材同士を接着する場合に比べて接触面積が不足しがちであるが、二重にすることで融着部分の面積が増加することなどにより被融着部同士の接触確率が上がり、その結果、融着強度(破断強度)が上がるので好ましい。
また、融着による耐久性の低下を補う効果もある。
伸縮性ネットの目が粗い場合などには、被融着部において十分な融着面積を確保できなかったり、十分な耐久性が得られにくかったりすることから、特に有効である。
また、二重になった部分は、伸縮保持力が増加するので、つなぎ合わせる部分以外の部分、例えば開口部に用いることで、指サックの抜け落ち効果なども奏する。
【0024】
上記融着にあたっては、面状の熱可塑性端片材料などを複合して融着してもよい。その場合、融着するネット材の相互間に挟んで、または重ねて、融着するなどにより融着強度が向上することはもちろん、その他の複合方法により紙めくりに適した素材などを選択し表面に使用することなどもできるので、併用効果が現れ、好ましい態様となる。
【0025】
また、図5のように一体成形とすることももちろん可能である。その際は、成形型などを用意し、作製することができる。
【0026】
本発明の指サックにおいては、熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットと他のシート、フィルム、布、不織布、網等の素材を合せて、袋状あるいは筒状にした複合型の指サックとしてもよく(図示せず)、その際は、手袋のような形状とすることもできる。
上記複合型の指サックの合わせ方法は、適宜選択可能であるが、縫製、接着、融着など、いずれかの方法が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、紙めくりなどのための指サックに適用できる。また、他の素材と合わせることで、手袋状などの複合指サックとしても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の指サックの一例を示す。
【図2】本発明の指サックの別の一例を示す。
【図3】図2における指サックの展開例を示す。
【図4】本発明の指サックの別の一例を示す。
【図5】本発明の指サックの別の一例を示す。
【符号の説明】
【0029】
1 指サック
2 基材
3 融着部
4 中央部(折り曲げ部)
5,5’曲部(融着部)
6 二重端部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材としてその一部または全部に熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットを用いてなることを特徴とする指サック。
【請求項2】
熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットが二軸延伸性を有することを特徴とする、請求項1に記載の指サック。
【請求項3】
熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットの交叉部が直接成形により形成されたものであることを特徴とする、請求項1または2の何れかに記載の指サック。
【請求項4】
熱可塑性エラストマーからなる伸縮性ネットの少なくとも一辺を熱で互いに融着して一片が開口した袋状あるいは筒状にしたことを特徴とする、請求項1ないし3の何れかに記載の指サック。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−272878(P2006−272878A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99033(P2005−99033)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)