説明

指向性拡散フィルム、偏光板、液晶表示装置および指向性拡散フィルムの製造方法

【課題】 従来よりも簡便なプロセスによって、液晶表示装置において、広い視野角にわたって良好なコントラスト比を有する広視野角化と、高コントラスト化とを両立させることができる指向性拡散フィルム、偏光板および液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 入射角により拡散特性が異なる指向性拡散フィルムであって、フィルムの法線方向に対して下記拡散軸方向が20〜50°の範囲にあり、下記拡散半値角が20°以上であることを特徴とする。
拡散軸方向:フィルムに光照射したとき、最も強い拡散光が得られる光照射方向
拡散半値角:指向性拡散フィルムの法線方向と拡散軸方向とを含む面Aにおいて、指向性拡散フィルムの法線方向から30°の入射角でコリメート光を入射したとき、前記面Aにおける拡散光の出射強度がピーク強度の50%となる拡散角度

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性拡散フィルム、偏光板、液晶表示装置および指向性拡散フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、ATM,カーナビゲーションシステム機器等に、液晶表示装置(LCD)が幅広く使用されている。LCDのうち、TN(ツイステッド・ネマティック)モードを用いた透過型LCDは、視野角依存性が大きく、ある角度以上の斜め方向から見ると、画面品質が大きく変化し、本来は黒で表示されるべきものが白っぽく見える等、コントラスト比が低下したり、階調が反転することにより、正常な表示を認識しにくくなることがある。そこで、LCDの視野角を確保する目的で、装置の前面に光拡散フィルムを配置する方式が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この提案によれば、階調反転は抑制され視野角は拡大するが、正面方向のコントラストが低下してしまうという問題がある。そこで、とくに階調反転防止効果とコントラスト維持とのバランスを図りながら、画質低下を解消する指向性光散乱フィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、このような光散乱フィルムを配置した場合、階調反転については、ある程度改善できたものの、液晶パネル下方向については45°程度までの範囲にしか広がっておらず、また、液晶パネル正面方向のコントラストも、改善はあるものの、なお2〜3割は落ちてしまうことから、必ずしも十分とは言えないのが現状である。
【0003】
このように、従来の光散乱技術による方法では、指向性散乱特性(入射角を変えたときに散乱特性が変化する特性)が特定の方向でしか得られないため、視野角依存性の改良効果を特定の方向で得ると、その特定の方向から入射した光が略均一に散乱されるため、他の方向の表示品位が低下してしまうという現象が生じている。すなわち、液晶パネル下方向の階調反転抑制と正面コントラストの維持は、トレードオフの関係にあった。
【0004】
【特許文献1】特開平10−10513号公報
【特許文献2】特開2006−133463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、液晶表示装置において、広い視野角にわたって良好なコントラスト比を有する広視野角化と、高コントラスト化とを両立させることができる指向性拡散フィルム、偏光板および液晶表示装置を提供することを目的とする。また、本発明は、前記の良好な指向性拡散を示す指向性拡散フィルムを、従来よりも簡易に連続プロセスで製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の指向性拡散フィルムは、入射角により拡散特性が異なる指向性拡散フィルムであって、フィルムの法線方向に対して下記拡散軸方向が20〜50°の範囲にあり、下記拡散半値角が20°以上であることを特徴とする。
拡散軸方向:フィルムに光照射したとき、最も強い拡散光が得られる光照射方向
拡散半値角:指向性拡散フィルムの法線方向と拡散軸方向とを含む面Aにおいて、指
向性拡散フィルムの法線方向から30°の入射角でコリメート光を入射したとき、
前記面Aにおける拡散光の出射強度がピーク強度の50%となる拡散角度
【0007】
本発明の偏光板は、偏光子と保護層とが積層された偏光板であって、前記保護層が、前記本発明の指向性拡散フィルムであることを特徴とする。
【0008】
本発明の液晶表示装置は、指向性拡散フィルムまたは偏光板を備える液晶表示装置であって、前記指向性拡散フィルムが前記本発明の指向性拡散フィルムであり、前記偏光板が前記本発明の偏光板であることを特徴とする。
【0009】
本発明の指向性拡散フィルムの製造方法は、拡散フィルム原版および少なくとも二種類の屈折率の異なる材料からなる感光性樹脂を少なくとも準備する工程、前記拡散フィルム原版と前記感光性樹脂とを積層して積層体を形成する工程、コリメートしたレーザ光を前記拡散フィルム原版側から前記積層体に照射する工程を含み、前記照射工程において、前記拡散フィルム原版の下記半値幅が15〜45°の範囲、かつ、前記レーザ光の原版に対する照射角度が15〜45°の範囲の条件で前記レーザ光を照射することを特徴とする。
半値幅:拡散光の出射強度が、ピーク強度の50%となる拡散角度
【発明の効果】
【0010】
本発明の指向性拡散フィルムによれば、液晶表示装置の画面下方向全領域における階調反転現象の抑制と正面方向でのコントラスト維持とを両立させることができる。従来品においては画面下方向45度の領域までしか階調反転現象を抑制できなかったものを、本発明の指向性拡散フィルムにおいては、画面下方向の、例えば、50度という領域においても階調反転現象を抑制することができる。また、本発明の指向性拡散フィルムの製造方法によると、所定範囲の半値幅を有する拡散フィルム原版を用い、感光性樹脂の膜厚を制御し、かつ、レーザ光照射時のレーザ光源からの照射光を所定角度に設定することにより、前記の良好な指向性拡散を示す指向性拡散フィルムを、従来よりも簡易に連続プロセスで製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の指向性拡散フィルムにおいて、下記方位角方向長さに対する極角方向長さの比率が1〜3の範囲であることが好ましい。
方位角方向長さに対する極角方向長さの比率:
指向性拡散フィルムの法線方向と拡散軸方向とを含む面Aにおいて、指向性拡散
フィルムの法線方向から30°の入射角でコリメート光を入射したとき、指向性
拡散フィルムと平行に設置した投影板に映った前記コリメート光の拡散像を楕円
形にフィッティングし、前記楕円形の長軸と短軸のうち、前記面A上にある軸の
長さ(極角方向長さ)と、他方の軸の長さ(方位角方向長さ)を測長したときの
、極角方向長さ/方位角方向長さ
【0012】
本発明の偏光板において、前記保護層が偏光子の両面に積層され、両面に積層された前記保護層の少なくとも一方が、前記本発明の指向性拡散フィルムであることが好ましい。
【0013】
本発明の偏光板において、ハードコート層を含んでいることが好ましい。
【0014】
本発明の偏光板において、防眩層を含んでいることが好ましい。
【0015】
本発明の偏光板において、反射防止層を含んでいることが好ましい。
【0016】
本発明の液晶表示装置において、前記本発明の偏光板および光学補償層が視認側に設けられており、前記偏光板を構成する偏光子の透過軸方向と、前記光学補償層の配向軸方向とが同じ方向であり、かつ、前記偏光板を構成する指向性拡散フィルムの拡散軸方向が前記光学補償層の配向軸方向から−105〜−165°の範囲の角度をなして配置されていることが好ましい。
【0017】
本発明の指向性拡散フィルムの製造方法において、前記拡散フィルム原版として異方性を有する拡散フィルム原版を使用し、前記照射工程において、前記異方性を有する拡散フィルム原版の前記半値幅が最大となる方向を、前記照射角度の回転軸と垂直方向となるように設置して、前記レーザ光を照射することが好ましい。
【0018】
本発明の指向性拡散フィルムは、前記本発明の指向性拡散フィルムの製造方法によって製造されることが好ましいが、前記製造方法に限定されるものではない。
【0019】
つぎに、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の記載により制限されない。
【0020】
本発明において、「指向性拡散」とは、入射方向に応じて出射光の拡散特性が異なるような拡散状態を示し、ある特定の入射方向の光に対して拡散が起こるような特性をいう。本発明において、拡散軸方向とは、フィルムに光照射をしたとき、最も強い拡散光が得られる光照射方向をいう。図1(a)および図1(b)に、本発明における拡散特性を説明する斜視模式図を示す。本発明における拡散半値角とは、図1(a)に示すように、指向性拡散フィルム1の法線方向2と拡散軸方向3とを含む面Aにおいて、指向性拡散フィルム1の法線方向2から30°の入射角でコリメート光4を入射したとき、前記面Aにおける拡散光の出射強度がピーク強度の50%となる拡散角度である。
【0021】
本発明の指向性拡散フィルムにおいて、前記拡散軸方向は、フィルムの法線方向に対して20〜50°の範囲であり、前記拡散半値角は20°以上である。前記拡散軸方向は、好ましくは25〜47°の範囲であり、より好ましくは30〜45°の範囲である。前記拡散半値角は、好ましくは25°以上であり、より好ましくは30°以上である。
【0022】
本発明の指向性拡散フィルムは、下記方位角方向長さに対する極角方向長さの比率が1〜3の範囲であることが好ましい。前記図1において、極角5と方位角6はそれぞれ図1(a)、図1(b)中に示す角度をいう。すなわち、極角5とは、指向性拡散フィルム1の法線方向2と拡散軸方向3とを含む面Aにおいて、指向性拡散フィルム1の法線方向2から30°の入射角でコリメート光4を入射したときの、前記面Aにおける拡散光の拡散角度である。また、方位角6とは、前記面Aと直交する方向で拡散光の拡散が最大となる面Bにおける、拡散光の拡散角度である。本発明においては、後述の実施例に記載の方法で、指向性拡散フィルムの拡散特性として、前記方位角方向長さと極角方向長さの比率を、前記指向性拡散フィルムを通過したコリメート光の拡散像を楕円形にフィッティングし、方位角方向の軸の長さに対する極角方向の軸の長さの比として算出した。
【0023】
前記方位角方向長さに対する極角方向長さの比率(極角方向長さ/方位角方向長さ)は、好ましくは1.1〜2.5の範囲であり、より好ましくは1.2〜2.0の範囲である。
【0024】
本発明と、その効果との関係は、次のように推察されるが、本発明は、本推察によりなんら制限されない。すなわち、図2は、透過型液晶表示パネルの+80〜−80°の視野角範囲内における、白色から黒色までの9階調の輝度を測定した結果の一例であるが、一般に、液晶パネル(TNパネル)においては、パネルの下方向20〜50°の間の領域での階調反転が最も強いという階調特性を有している。そこで、指向性拡散フィルムの光拡散の生じる入射角度は、フィルムの法線に対して20〜50°の角度領域範囲内となるように選択した。しかし、単にその方向での指向性拡散を有するだけでは、正面方向のコントラストが低下してしまう。しかし、法線方向から30°で入射したコリメート光に対して、拡散光の広がりが、前記拡散半値角が20°以上の範囲であり、好ましくは、前記比率(極角方向長さ/方位角方向長さ)が1〜3の範囲である光拡散特性を持つ指向性拡散フィルムを用いると、液晶パネル黒表示部での光漏れが最適に拡散され、パネル下方向の全視野角度で階調反転が起こらない。すなわち、このような指向性拡散フィルムを用いて従来技術より広い視野角範囲の階調反転を抑制することができる。また、正面での入射光については光散乱を生じずにそのまま透過することによって、パネルの正面方向でのコントラストを落とさずに、十分な画質の画像が観察できる。すなわち、本発明の条件を具備することで、抜本的に透過型液晶表示装置パネルの階調反転の制御とコントラスト維持とのトレードオフ関係を解決する指向性拡散フィルムを得ることができる。
【0025】
本発明の指向性拡散フィルムは、例えば、拡散フィルム原版および少なくとも二種類の屈折率の異なる材料からなる感光性樹脂を少なくとも準備する工程、前記拡散フィルム原版と前記感光性樹脂とを積層して積層体を形成する工程、コリメートしたレーザ光を前記拡散フィルム原版側から前記積層体に照射する工程を含む方法によって製造することができる。前記照射工程において、前記拡散フィルム原版の下記半値幅が15〜45°の範囲、かつ、前記レーザ光の原版に対する照射角度が15〜45°の範囲の条件で前記レーザ光を照射する。ここで、半値幅とは、拡散光の出射強度が、ピーク強度の50%となる拡散角度をいう。
【0026】
前記拡散フィルム原版の半値幅は、16〜40°の範囲にあることが好ましく、より好ましくは17〜35°の範囲である。また、前記レーザ光の原版に対する照射角度は、17〜43°の範囲にあることが好ましく、より好ましくは20〜40°の範囲である。
【0027】
前記感光性樹脂は、少なくとも二種類の屈折率の異なる材料からなるものを用いる。屈折率の異なる複数種の感光性のモノマーを混合して用いてもよい。前記感光性樹脂には、光重合開始剤が配合される。前記モノマーとしては、市販の光硬化型モノマー等を用いることも可能である。また、光硬化型のホログラム用記録材料を用いることも好ましい。前記ホログラム用記録材料としては、例えば、日本ペイント(株)製の商品名オプトレム(登録商標)、デュポン(株)製の商品名OmniDex、ダイソー(株)製のホログラム用記録材料などがあげられる。オプトレム(登録商標)は、光ラジカル重合と光カチオン重合を併用したハイブリッド光硬化型のフォトポリマー材料である。
【0028】
前記感光性樹脂は、屈折率の異なる材料を含むが、前記屈折率の差は0.01より大きいことが好ましく、0.02より大きいことがより好ましい。屈折率の異なるそれぞれの材料は、異なる硬化条件で硬化する。屈折率の異なる材料が、ともに光重合で硬化する樹脂である場合には、例えば、光重合を開始する波長領域が異なったり、硬化速度が異なったりすることが好ましい。
【0029】
前記光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等があげられ、その他、チオキサント系化合物等が使用できる。
【0030】
前記感光性樹脂は、さらに、任意の適切な添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、界面活性剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、架橋剤、増粘剤、金属類等があげられる。
【0031】
前記界面活性剤は、例えば、前記感光性樹脂を前記拡散フィルム原版上に展開して感光性樹脂層を形成する際、平滑な表面を形成すること等を目的に配合するものである。前記界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等があげられる。
【0032】
前記感光性樹脂層の形成方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等があげられる。また、後述のように、別の基材と前記拡散フィルム原版との間に前記感光性樹脂を挟み込むという簡便な方法により形成することもできる。
【0033】
前記感光性樹脂層の厚みは、前記感光性樹脂を構成する材料の屈折率差等の性能に応じて、適切な範囲を設定することができるが、例えば、5〜100μmの範囲が好ましく、10〜45μmの範囲がより好ましい。
【0034】
拡散フィルム原版としては、半値幅が15〜45°の範囲の拡散フィルムを使用する。この拡散フィルム原版に前記感光性樹脂を積層して、前記拡散フィルム側からコリメート光を照射することで、用いた拡散フィルム原版の光学情報を前記感光性樹脂に記録することができる。
【0035】
前記積層体に照射されるコリメート光は、感光性樹脂を重合硬化することが可能な波長を含んでいることが必要である。Nd:YAGレーザ(SHG:532nm)を用いて前記指向性拡散フィルムを形成する場合、光強度は、0.01〜1000mW/cmの範囲であることが好ましい。光強度が0.01mW/cm未満であると、硬化に長時間を要するため、生産効率が悪くなるおそれがあり、1000mW/cmを超えると、感光性樹脂の硬化が速すぎて構造形成を生じず、所望の光拡散特性を発現できなくなるおそれがある。前記光強度は、0.1〜100mW/cmの範囲であることがより好ましい。前記Nd:YAGレーザの他にも、感光性樹脂の重合開始剤を選択することにより、Nd:YVOレーザ(532nm)、アルゴンイオンレーザ(488nm)、Nd:YAGレーザ(THG:355nm)、LED光源(405nm)、g線(436nm)等を使用することもできる。
【0036】
前記方法によると、前記光照射の方向と略平行方向に前記拡散軸が形成されるので、前記積層体に対して前記光照射方向を制御することによって、前記拡散軸方向を制御することができる。例えば、前記積層体の法線方向から光照射すると、前記積層体の厚さ方向に対して略平行方向に拡散軸が形成され、前記積層体に対して斜め方向から光照射すると、前記積層体の厚さ方向に対して斜め方向に拡散軸が形成される。
【0037】
前記レーザ光照射工程においては、例えば、前記積層体をコンベア上で移動させながら連続プロセスで光照射を行うこともできるし、一定面積の前記積層体に対して、その全面に光照射を行うというバッチ処理によっても行うことができる。
【0038】
前記積層体形成工程においては、図3に示すように、前記拡散フィルム原版31上に積層された前記感光性樹脂層32上に、さらに基材33を配置して、前記拡散フィルム原版31と前記基材33で前記感光性樹脂層32を挟持し、この状態で前記レーザ光34照射工程を実施することも好ましい。前記感光性樹脂層を基材で挟み込むと、前記感光性樹脂の粘度やレベリング性に影響されにくい状態で、レーザ光照射を行うことができる。また、前記感光性樹脂層を基材と拡散フィルム原版とで挟み込んだ状態でレーザ光照射を行うと、空気(酸素)による反応阻害が起こりにくいという点からも好ましい。
【0039】
前記基材は、特に制限されないが、光透過性基材であってもよい。光透過性基材としては、透明プラスチックフィルム基材を好適に使用することができる。透明プラスチックフィルムは、前記光照射工程での照射光の透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下のもの)が、前記積層体に照射光による熱や乱反射の影響を与えにくく、好ましい。また、前記透明プラスチックフィルム基材として、表面の一方に凹凸を有するフィルムを用い、前記凹凸を有する面と反対側の面に前記感光性樹脂層が配置されてもよい。前記凹凸を有するフィルムは、後述の防眩層として機能させることもできる。前記透明プラスチックフィルム基材の形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等があげられる。また、前記透明プラスチックフィルム基材の形成材料としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等もあげられる。さらに、前記透明プラスチックフィルム基材の形成材料としては、例えば、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等もあげられる。
【0040】
本発明において、前記透明プラスチックフィルム基材の厚みは、特に制限されないが、例えば、強度、取り扱い性などの作業性および薄層性などの点を考慮すると、10〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは15〜300μmの範囲であり、最適には、20〜200μmの範囲である。前記透明プラスチックフィルム基材の屈折率は、特に制限されず、例えば、1.30〜1.80の範囲であり、好ましくは、1.40〜1.70の範囲である。前記レーザ光照射工程において、前記透明プラスチックフィルム基材と前記感光性樹脂層との界面での反射の影響ができるだけ少なくなるように、フィルム基材と感光性樹脂層との屈折率差は0.2以内にあることが好ましく、より好ましくは0.1以内である。
【0041】
つぎに、本発明の指向性拡散フィルムを積層した偏光板について説明する。本発明の指向性拡散フィルムを、接着剤や粘着剤などを用いて偏光子又は偏光板と積層することによって、本発明の機能を有した偏光板を得ることができる。本発明の指向性拡散フィルムは、保護層として偏光子に積層して、偏光板とすることができる。この場合には、前記基材が、偏光子自体であってもよい。このような構成であると、トリアセチルセルロール(TAC)等からなる保護層を不要とし偏光板の構造を単純化できるので、偏光板若しくはLCDの製造工程数を減少させ、生産効率の向上が図れる。また、このような構成であれば、偏光板を、より薄層化することができる。
【0042】
前記偏光子としては、特に制限されず、各種のものを使用できる。前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が、偏光二色比が高く、好ましい。前記偏光子の厚みは特に制限されないが、例えば、5〜80μm程度である。
【0043】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。前記ヨウ素の水溶液は、必要に応じて、ホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいてもよい。また、別途、ホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系フィルムを浸漬してもよい。また、必要に応じて、染色の前に、ポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することで、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができ、その他に、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止するという効果もある。延伸は、ヨウ素で染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0044】
前記偏光子の片面には、前記指向性拡散フィルムとは異なる保護層を設けてもよい。前記保護層としては、透明保護フィルムを用いることができる。透明保護フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、位相差値の安定性などに優れるものが好ましい。前記透明保護フィルムを形成する材料としては、例えば、前記透明プラスチックフィルム基材と同様のものがあげられる。
【0045】
また、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載の高分子フィルムがあげられる。前記公報に記載の高分子フィルムは、例えば(A)側鎖に置換イミド基および非置換イミド基の少なくとも一方のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換フェニル基および非置換フェニル基の少なくとも一方のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物から形成された高分子フィルムがあげられる。前記樹脂組成物から形成された高分子フィルムとしては、例えば、イソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル−スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物から形成された高分子フィルムがあげられる。前記高分子フィルムは、前記樹脂組成物を、フィルム状に押出成型することにより製造できる。前記高分子フィルムは、位相差が小さく、光弾性係数が小さいため、偏光板等の保護フィルムに適用した場合には、歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0046】
前記透明保護フィルムは、偏光特性や耐久性などの点から、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂製のフィルムおよびノルボルネン系樹脂製のフィルムが好ましい。前記透明保護フィルムの市販品としては、例えば、商品名「フジタック」(富士フイルム社製)、商品名「ゼオノア」(日本ゼオン社製)、商品名「アートン」(JSR社製)などがあげられる。
【0047】
前記透明保護フィルムの厚みは、特に制限されないが、強度、取扱性等の作業性、薄層性等の点より、例えば、1〜500μmの範囲である。前記の範囲であれば、偏光子を機械的に保護し、高温高湿下に曝されても偏光子が収縮せず、安定した光学特性を保つことができる。前記透明保護フィルムの厚みは、好ましくは、5〜200μmの範囲であり、より好ましくは、10〜150μmの範囲である。
【0048】
本発明の偏光板は、ハードコート層を含んでいることが好ましい。本発明の指向性拡散フィルムによって生じる拡散は表面凹凸によるものではないので、前記指向性拡散フィルムを必ずしも最表層に設けなくともよい。前記ハードコート層は、最表層にあることが好ましいが、前記指向性拡散フィルム上に設けてもよいし、前記偏光子の前記指向性拡散フィルムを積層した面とは反対側の面に設けてもよい。
【0049】
ハードコート層を形成するハードコート樹脂としては、例えば、熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂、二液混合型樹脂等があげられる。これらの中でも、紫外線照射による硬化処理という簡単な加工操作にて効率よくハードコート層を形成できる紫外線硬化型樹脂が、特に好ましく用いられる。なお、前記紫外線硬化型樹脂には、紫外線重合開始剤(光重合開始剤)が配合される。
【0050】
前記紫外線硬化型樹脂としては、例えば、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられる。この紫外線硬化型樹脂には、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。特に好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂としては、紫外線重合性の官能基を有するもの、中でも、前記官能基を2個以上、特に3〜6個有するアクリル系モノマーやオリゴマーを含むものがあげられる。
【0051】
このような紫外線硬化型樹脂の具体例としては、例えば、多価アルコールのアクリル酸エステル等のアクリレート樹脂、多価アルコールのメタクリル酸エステル等のメタクリレート樹脂、ジイソシアネート、多価アルコールおよびアクリル酸のヒドロキシアルキルエステルから合成される多官能性のウレタンアクリレート樹脂、多価アルコールおよびメタクリル酸のヒドロキシメタクリルエステル等から合成される多官能性のウレタンメタクリレート樹脂等があげられる。さらに、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も必要に応じて好適に使用することができる。また、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、シリコーン系樹脂等も好ましく用いられる。
【0052】
前記光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等があげられ、その他、チオキサント系化合物等が使用できる。
【0053】
前記樹脂は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。また、前記樹脂として、市販の紫外線硬化型樹脂等を用いることも可能である。
【0054】
本発明の偏光板は、防眩層を含んでいることも好ましい。前記防眩層は、前記ハードコート層の表面に凹凸形状をつけることで得ることができる。前記ハードコート層は、その表面構造を凹凸構造にして防眩性を付与するために、微粒子を含有していることも好ましい。前記微粒子としては、例えば、無機微粒子と有機微粒子とがある。前記無機微粒子は、特に制限されず、例えば、酸化ケイ素微粒子、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化錫微粒子、炭酸カルシウム微粒子、硫酸バリウム微粒子、タルク微粒子、カオリン微粒子、硫酸カルシウム微粒子等があげられる。また、有機微粒子は、特に制限されず、例えば、ポリメタクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末(PMMA微粒子)、シリコーン樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂粉末等があげられる。これらの無機微粒子および有機微粒子は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0055】
前記微粒子の重量平均粒径は、前記ハードコート層の膜厚の30〜75%の範囲であり、好ましくは30〜50%の範囲である。前記微粒子の重量平均粒径が30%以上であれば、前記ハードコート層表面に十分な凹凸形状を形成でき、十分な防眩機能を付与することができる。一方、前記微粒子の重量平均粒径が75%以下であれば、表面の凹凸差を適切な大きさとすることができ、見栄えをよくすることができ、また反射光の散乱を適切なものとすることができる。
【0056】
前記微粒子の形状は特に制限されず、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよい。前記微粒子の重量平均粒径は、例えば、1〜30μmの範囲であり、好ましくは2〜20μmの範囲である。前記微粒子としては、略球形のものが好ましく、より好ましくは、アスペクト比が1.5以下の略球形の微粒子である。
【0057】
前記微粒子の配合割合は、特に制限されず、適宜設定できる。前記微粒子の配合割合は、前記樹脂成分全体100重量部に対し、例えば、2〜70重量部の範囲であり、好ましくは4〜50重量部の範囲であり、より好ましくは15〜40重量部の範囲である。
【0058】
前記微粒子と前記ハードコート層との界面に生じる光散乱や干渉縞を防止する等の観点から、前記微粒子と前記ハードコート層との屈折率差を小さくすることが好ましい。前記干渉縞は、ハードコートフィルムに入光した外光の反射光が虹色の色相を呈する現象である。最近、オフィス等では明瞭性に優れた三波長蛍光灯が多用されており、三波長蛍光灯下では、干渉縞が顕著に現れる。前記ハードコート層の屈折率は、1.4〜1.6の範囲が一般的であるので、この屈折率の範囲に近い屈折率の微粒子が好ましい。前記微粒子と前記ハードコート層の屈折率の差は、0.05未満であることが好ましい。
【0059】
前記ハードコート層の厚みは、例えば、15〜25μmの範囲であり、好ましくは、18〜23μmの範囲である。前記厚みが前記所定の範囲であれば、前記ハードコート層の硬度も十分なものとなり(例えば、鉛筆硬度で4H以上)、またカールの発生もより効果的に防止可能である。なお、ハードコート層の表面構造を凹凸構造にした場合のハードコート層の厚みは、例えば、15〜35μmの範囲であり、より好ましくは20〜30μmの範囲である。前記ハードコート層は、単層であっても二層以上が積層された複数層構造であってもよい。
【0060】
本発明の偏光板は、反射防止層を含んでいることも好ましく、前記ハードコート層の上に、反射防止層を配置してもよい。前記反射防止層は、屈折率が、1.25〜1.45の範囲にあることが好ましい。光は物体に当たると、その界面での反射、内部での吸収、散乱といった現象を繰り返して物体の背面に透過していく。例えば、画像表示装置にハードコート層が形成されている場合、画像の視認性を低下させる要因のひとつに、空気とハードコート層との界面での光の反射があげられる。反射防止層は、その表面反射を低減させるものである。
【0061】
本発明において、前記反射防止層は、厚みおよび屈折率を厳密に制御した光学薄膜若しくは前記光学薄膜を二層以上積層したものであってもよい。前記反射防止層は、光の干渉効果を利用して入射光と反射光の逆転した位相を互いに打ち消し合わせることで反射防止機能を発現する。反射防止機能を発現させる可視光線の波長領域は、例えば、380〜780nmであり、特に視感度が高い波長領域は450〜650nmの範囲であり、その中心波長である550nmの反射率を最小にするように反射防止層を設計することが好ましい。
【0062】
光の干渉効果に基づく前記反射防止層の設計において、その干渉効果を向上させる手段としては、例えば、前記反射防止層と前記ハードコート層との屈折率差を大きくする方法がある。一般的に、二ないし五層の光学薄層(厚みおよび屈折率を厳密に制御した薄膜)を積層した構造の多層反射防止層では、屈折率の異なる成分を所定の厚さだけ複数層形成することで、反射防止層の光学設計の自由度が上がり、より反射防止効果を向上させることができ、分光反射特性も可視光領域で均一(フラット)にすることが可能になる。前記光学薄膜において、高い厚み精度が要求されるため、一般的に、各層の形成は、ドライ方式である真空蒸着、スパッタリング、CVD等で実施される。
【0063】
多層反射防止層としては、屈折率の高い酸化チタン層(屈折率:約1.8)の上に屈折率の低い酸化ケイ素層(屈折率:約1.45)を積層した二層構造のものも好ましく、より好ましくは、酸化チタン層の上に酸化ケイ素層を積層し、この酸化ケイ素層の上に酸化チタン層を積層し、この酸化チタン層の上に酸化ケイ素層を積層した四層構造のものである。これらの二層反射防止層若しくは四層反射防止層を形成することにより、可視光線の波長領域(例えば、380〜780nmの範囲)の反射を均一に低減することが可能である。
【0064】
また、ハードコート層の上に単層の光学薄膜(反射防止層)を形成することによっても反射防止効果を発現させることが可能である。一般的に単層反射防止層の形成には、例えば、ウェット方式であるファンテンコート、ダイコート、スピンコート、スプレーコート、グラビアコート、ロールコート、バーコート等の塗工法が採用される。
【0065】
単層反射防止層の形成材料は、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等の樹脂系材料、樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド系材料、テトラエトキシシラン、チタンテトラエトキシド等の金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル系材料等があげられる。また、前記形成材料において、表面の防汚染性付与のためにフッ素基を含有するものが好ましい。前記形成材料において、耐擦傷性等の理由から、無機成分含有量が多い形成材料が好ましく、より好ましくは前記ゾル−ゲル系材料である。前記ゾル−ゲル系材料は、部分縮合して用いることができる。
【0066】
反射防止層としては、エチレングリコール換算数平均分子量500〜10000の範囲のシロキサンオリゴマーと、ポリスチレン換算数平均分子量5000以上であって、フルオロアルキル構造およびポリシロキサン構造を有するフッ素化合物とを含有する材料(特開2004−167827号公報に記載の材料)から形成されたものが、耐擦傷性と低反射が両立できること等により好ましい。
【0067】
反射防止層には、膜強度を向上させるために、無機ゾルを含有させてもよい。前記無機ゾルとしては、特に制限されず、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化マグネシウム等の無機ゾルがあげられ、この中で、シリカゾルが好ましい。前記無機ゾルの配合割合は、例えば、前記反射防止層形成材料の全固形分100重量部に対し10〜80重量部の範囲である。前記無機ゾル中の無機微粒子の粒径は、2〜50nmの範囲が好ましく、5〜30nmの範囲がより好ましい。
【0068】
前記反射防止層の形成材料には、中空で球状の酸化ケイ素超微粒子が含まれていることが好ましい。前記酸化ケイ素超微粒子は、平均粒子径が5〜300nm程度であることが好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましい。前記酸化ケイ素超微粒子は、細孔を有する外殻の内部に空洞が形成されている中空球状であり、その空洞内に前記酸化ケイ素超微粒子の調製時の溶媒および気体の少なくとも一方を包含したものである。また、前記酸化ケイ素超微粒子の前記空洞を形成するための前駆体物質が前記空洞内に残存していることが好ましい。前記外殻の厚さは、1〜50nm程度の範囲であり、かつ前記酸化ケイ素超微粒子の平均粒子径の1/50〜1/5程度の範囲であることが好ましい。前記外殻は、複数の被覆層から形成されていることが好ましい。また、前記酸化ケイ素超微粒子において、前記細孔が閉塞され、前記空洞が前記外殻により密封されていることが好ましい。これは、前記反射防止層中において、前記酸化ケイ素超微粒子の多孔質または空洞が維持されており、前記反射防止層の屈折率をより低減させることが可能なためである。このような中空で球状の酸化ケイ素超微粒子の製造方法としては、例えば、特開2000−233611号公報に開示されたシリカ系微粒子の製造方法が好適に採用される。
【0069】
反射防止層を形成する際の乾燥および硬化の温度は、特に制限されず、例えば、60〜150℃の範囲であり、好ましくは、70〜130℃の範囲であり、前記乾燥および硬化の時間は、例えば、1〜30分の範囲であり、生産性を考えた場合には、1〜10分の範囲が好ましい。また、前記乾燥および硬化後、さらに加熱処理を行うことにより、反射防止層を有する偏光板が得られる。前記加熱処理の温度は、特に制限されず、例えば、40〜130℃の範囲であり、好ましくは50〜100℃の範囲であり、前記加熱処理時間は、特に制限されず、例えば、1分〜100時間、耐擦傷性向上の観点からは、10時間以上行うことがより好ましい。前記加熱処理は、ホットプレート、オーブン、ベルト炉等を用いた方法により実施できる。
【0070】
反射防止層を有する偏光板を画像表示装置に装着する場合、前記反射防止層が最外層になる頻度が高いため、外部環境からの汚染を受けやすい。反射防止層は、単なる透明板等に比べて汚染が目立ちやすく、例えば、指紋、手垢、汗や整髪料等の汚染物の付着によって表面反射率が変化したり、付着物が白く浮き出て見えて表示内容が不鮮明になる場合がある。汚染物の付着防止および付着した汚染物の除去容易性の向上のために、フッ素基含有のシラン系化合物若しくはフッ素基含有の有機化合物等から形成される汚染防止層を前記反射防止層上に積層することが好ましい。
【0071】
本発明の液晶表示装置は、前記本発明の指向性拡散フィルムまたは前記本発明の偏光板を備える。前記液晶表示装置は、偏光板および光学補償層が視認側に設置されてなり、前記偏光板を構成する偏光子の透過軸方向と、前記光学補償層の配向軸方向とが同じ方向であり、かつ、前記偏光板を構成する指向性拡散フィルムの拡散軸方向が前記光学補償層の配向軸から−105〜−165°の範囲の角度をなして配置されていることが好ましく、より好ましくは−115〜−155°の範囲であり、特に好ましくは−125〜−145°の範囲である。階調反転は、−135°で最も顕著に発生するため、−135°付近で前記角度範囲を設定することが好ましく、前記角度範囲となるように配置することで、より効果的にパネル下方向の階調反転を抑制しつつ正面コントラストを維持した液晶表示装置を得ることができる。
【0072】
前記光学補償層としては、例えば、TAC等の支持フィルムに液晶性を示す材料を塗布して液晶層を形成したものであり、液晶層はディスコティック液晶を傾斜配向させたもの、ネマチック液晶を傾斜配向させたもの等の傾斜配向液晶層であることが好ましい。
【0073】
本発明の偏光板、液晶表示装置は、少なくとも偏光子と保護層とが積層されたものであり、前記保護層が、本発明の指向性拡散フィルムであるが、前記指向性拡散フィルムによって生じる拡散が表面凹凸によるものではないので、前記指向性拡散フィルムを必ずしも最表層に設けなくともよく、設計の自由度を広げることができる。本発明の液晶表示装置においては、例えば、視認側から、前記防眩層−指向性拡散フィルム−偏光子−光学補償層の順に積層して構成することが好ましい。
【0074】
本発明の指向性拡散フィルムを使用した液晶表示装置は、広視野角が要求される任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等である。
【実施例】
【0075】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例および比較例によってなんら限定ないし制限されない。また、各実施例および各比較例における各種特性および物性の測定および評価は、下記の方法により実施した。
【0076】
(感光性樹脂層、指向性拡散フィルムの厚さ)
デジタルマイクロメーター(アンリツ製(株)、商品名「K−351C型」)を用い、基材に挟まれた状態の指向性拡散フィルムの全体厚さを測定し、前記全体厚さから、基材の厚さを差し引くことにより、指向性拡散フィルムの厚さを算出した。
【0077】
(拡散軸方向測定)
拡散軸方向測定は、シグマ光機(株)製のゴニオフォトメーター光学系で行った。測定装置の概略図を図4に示す。波長532nmのレーザ光源41(SOC社製、商品名:J005GM)からのレーザ光を、ビームエキスパンダー42(シグマ光機(株)製、商品名:LBED−10)にて拡大し、λ/4波長板(図示せず)(シグマ光機(株)製、商品名:WPQW−VIS−4M)、偏光解消素子(図示せず)(シグマ光機(株)製、商品名:DEQ−2OP)を透過させた後に、スリット43(シグマ光機(株)製、商品名:IH−22R)を通して、φ3mmのレーザ光とした。前記φ3mmのレーザ光をサンプル44面に照射した。サンプル44からの出射光は、スリット45を通した後にレンズ46(シグマ光機(株)製、焦点距離f=114.6mm)により集光し、ピンホール47(シグマ光機(株)製)を通し、さらにレンズ48でコリメートして、検出器49(浜松ホトニクス(株)製、商品名:S2592−03)にて光量を測定した。前記スリット45、前記レンズ46、前記ピンホール47、前記レンズ48および前記検出器49は、レーザ光源41の光照射方向と同一直線上に位置するように、平面視長方形で図示したステージ装置40(シグマ光機(株)製、商品名:KST−160YAW)に設置されている。このとき、視野が0.5度になるように光学系を設計した。また、サンプル照射部において、レーザ光はコリメートチェッカーで確認できるコリメート性を示した。レーザ光源41、サンプル44、検出器49を同一直線上に位置するように配置し、ガラスに貼り付けたサンプル44をサンプルホルダーに設置し、サンプル44面に回転軸(シグマ光機(株)製、商品名:SGSP−120YAW)をおいて、サンプル44面の法線方向を0°とし、拡散が強くなる方向に0°〜80°までサンプル44を回転させて、1°毎に透過率データを得た。サンプル44は、目視で拡散軸方向を含む前記面A方向を探し、前記回転軸が前記面Aと垂直になるように(サンプル44の回転にともない、レーザ光が面Aに沿って照射されるように)、サンプルホルダーに配置した。前記拡散軸方向は、サンプル44を蛍光灯に透かす等しながら回したり傾けたりすると、白く濁ることでわかる。透過率は、サンプル44を置かない状態でリファレンス測定を行い、そのときの光量値で割り付けて算出し、算出した透過率が極小値を示す角度方向を拡散軸方向とした。前記算出した透過率が極小値を2つ持つ場合は、前記極小値を示す角度方向の平均値の角度を拡散軸方向とした。
【0078】
(拡散半値角測定)
上記シグマ光機(株)製のゴニオフォトメーター光学系において、前記検出装置49が設置された前記ステージ装置40が、サンプル44上の光照射位置を中心とする円弧上を回動するように設計し、サンプル44を光源に対してサンプル44の法線方向から拡散軸方向(拡散が強くなる向き)に30°の位置で配置した。図9(a)は、前記光学系を上から見た図である。図9(a)に示す通り、サンプル44の光照射位置を中心として、−50〜50°の範囲で左右に(図9(a)で示す矢印方向、紙面方向に)、ステージ装置40を回動させて検出器49を移動させ、0.5°毎に透過率データを得た。図9(b)および(c)に透過率データの一例を示す。図9(c)は、図9(b)を拡大したものである。透過率データのうち、透過成分91を除いた拡散成分92について、出射強度がピーク強度の50%となる拡散角度93を、拡散半値角とした。
【0079】
(拡散特性測定)
拡散特性の評価方法は、図5(a)および図5(b)に示す。作製した指向性拡散フィルム51に、入射角30°でレーザ光52(レーザポインタ(株)高知豊中技研製、商品名「GLP−FB」)を照射し、その拡散形状を写真撮影することで拡散特性を評価した。図5(a)に示すように、指向性拡散フィルム51と方眼紙53とを、一定の距離h(6cm)の間隔をあけて平行に設置し、方眼紙53に拡散光を投影して写った像を裏面から写真撮影する。前記写真を模式的に表したものが図5(b)である。前記写真(図5(b))において、極角方向54と方位角方向55の拡散光の径を、後述の方法により方眼紙(白色PSシート(日本プラスチック工業(株)製、厚さ:0.5mm)に目盛りを記入したもの)の目盛を用いて測長する。前記写真撮影は、デジタルカメラ(ソニー(株)製、「DSC−H5」)を用い、前記方眼紙とカメラレンズ面との距離は15cmとして行った。撮影条件は、ISO感度:200、ホワイトバランス:オート、シャッタースピード:1/25秒、絞り:F3.8、ピント調整:マニュアルとした。前記方位角方向の径の長さに対する前記極角方向の径の長さの比率により、指向性拡散フィルムの拡散特性を表わす。
【0080】
測長においては、得られた写真の画像を次の画像処理方法で2値化した。図8に画像処理の一例を示す。Media Cybernetics社製、「Imege−Pro Plus5.1」を用いて、写真の画像を取り込んだ。取り込んだ画像を8ビットグレースケールに変換し(図8(a))、2値化処理を実行した(図8(b))。なお、2値化処理としては、得られた画像を256階調(0:黒、255:白)で表したものを、50階調目で区分し、50〜255階調のデータを画像として取り込む処理を行った。前記2値化処理により得られた画像において、図形の外形をちょうど囲むように楕円図形81を配置させ(図8(c))、前記楕円図形81の極角方向の軸84と方位角方向の軸85を測定した(図8(d))。そして、測定した長さの比(=(極角方向長さ)/(方位角方向長さ))を計算した。
【0081】
(視野角(階調正常角度)測定)
コノスコープテストシステム(AUTRONIC−MELCHERS社製)で、指向性拡散フィルムを貼り付けた透過型液晶表示パネルの+80〜−80°の視野角範囲内における、白色から黒色までの9階調の輝度を測定した。プラス方向はパネルの上方向、マイナス方向はパネルの下方向を表わす。図2に、指向性拡散フィルムを使用していない透過型液晶表示パネル(BENQ社製FP−93VW)での測定結果を例示する。各階調がクロスしていない領域では階調反転はみられない。本実施例においては、パネルの下方向についての前記領域の角度を「階調正常角度」Rとした。前記指向性拡散フィルムを使用していない透過型液晶パネルとしては、BENQ社製FP−93VWの両面の偏光板を剥がし、日東電工(株)製SEG1424FWNLを、偏光板を剥がした前記パネルの両面に貼り合わせたものを用いた。
【0082】
(正面コントラスト比)
前記指向性拡散フィルムを使用していない透過型液晶表示パネルの正面コントラスト値をリファレンスとしたときの、各実施例および比較例についての正面コントラスト値の比率をパーセント表示した。正面コントラスト値とは、上記の階調正常角度測定での、0°における白輝度と黒輝度との比をいう。
【0083】
(露光装置)
本実施例において指向性拡散フィルムの作製に用いた露光装置の概略図を図6に示す。Nd:YVOレーザ61(532nm)(コヒーレント社製Verdi−V8)、ガリレオ式ビームエキスパンダー62、62’(シグマ光機(株)製、3倍(出射レンズ径φ20mm)および105倍(出射レンズ径φ100mm))を、防振台66(シグマ光機(株)製、HOA−2010−150LA)に設置して、ビーム光を拡大した。拡大したレーザ光は、50×50mmサイズの窓63を通すことで、中心部の光強度がほぼ均一の領域だけが出射できるように設置した。レーザ光は、前記各ビームエキスパンダー62を通過した後に、全面が平行光となるようにレンズ調整を行った。レーザ光の平行度は、コリメーションチェッカー(シグマ光機(株)製、SPV−25)を用いて確認した。レーザ光の光強度は、バリアブルアッテネータ64(シグマ光機(株)製)を使用することで減光し、パワーメーター(Gentec社製、PH100−Si)およびモニター(Gentec社製、SOLO)を用いて、所定の値に調整した。なお、面内の露光均一性は、前記パワーメーターにφ1mmのアパーチャを取り付けて、50×50mm面内均等に25点を測定し、誤差が15%以内であることを確認した。さらに、サンプルホルダー65はレーザ光に対して、角度をつけて設置した。
【0084】
[実施例1]
(試験片の作製)
日本ペイント社製フォトポリマーNPN−005をアプリケーター(テスター産業(株)製アプリケーターを使用して、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製、品番S27W、厚さ75μm)に塗布した。これを、加熱装置(エスペック(株)製、SPH−201)で90℃、5分間の条件で乾燥し、前記PETフィルム上に厚さ20μmの塗布フィルム(100×150mm)を得た。さらに、前記PETフィルムの前記塗布フィルム面に、前記PETフィルムと同じ第2のPETフィルムをラミネートした。そして、拡散フィルム原版として拡散フィルム(Luminit社製、商品名「LSD20PE5」、半値幅20°)を、粘着剤(日東電工(株)製、No.7)を介して、前記第2のPETフィルム表面に貼り付け、これを試験片とした。以上の作業は、(株)浅沼商会製「セーフライトガラス」No.3を装着した白熱灯(20W)を使用した環境下で行い、作製した試験片は、アルミホイルで包装し、露光がされないようにした。
【0085】
(指向性拡散フィルムの作製)
前記試験片の拡散フィルム原版を貼り付けた面に、前記露光装置を用い、光強度2.0mW/cm、積算光量27mJ/cm、照射角度30°にて光照射を行った。その後、拡散フィルム原版を試験片から剥がし、加熱装置(エスペック(株)製、SPH−201)に置いたガラス板上で100℃、10分間加熱した。ついで、紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、UVC−321AM1(高圧水銀灯))で4.0J/cm全面照射した後、前記第2のPETフィルムを前記試験片から剥離して、本実施例の指向性拡散フィルムを得た。なお、紫外線照射を行うまでの作業は、(株)浅沼商会製「セーフライトガラス」No.3を装着した白熱灯(20W)を使用した環境下で行い、加熱時にはアルミホイルで包装し、露光がされないようにした。
【0086】
(TNパネルへの実装)
液晶パネルとして、BENQ社製FP−93VWの両面の偏光板を剥がし、日東電工(株)製SEG1424FWNL(偏光子および傾斜液晶配向層を含む)を、偏光板を剥がした前記パネルの両面に貼り合わせたものを用いた。この液晶パネルの視認側に、前記で得られた指向性拡散フィルムの前記第2のPETフィルムを剥離した側を、図7に示す軸構成になるように貼り合わせた。すなわち、視認側から指向性拡散フィルム71、偏光子72、傾斜配向液晶層73をこの順に積層し、偏光子の吸収軸方向75と傾斜配向液晶層の配向軸方向76が同じ方向であり、指向性拡散フィルムの拡散軸方向74が傾斜配向液晶層の配向軸方向76となす角度が−135度となるようにした。前記指向性拡散フィルムと前記液晶パネルとの貼り合わせには、粘着剤(日東電工(株)製、No.7)を用いた。
【0087】
[実施例2]
前記照射角度を20°とした以外は、実施例1と同様な条件にて、本実施例に係る指向性拡散フィルムを作製した。
【0088】
[実施例3]
前記照射角度を40°とした以外は、実施例1と同様な条件にて、本実施例に係る指向性拡散フィルムを作製した。
【0089】
[実施例4]
拡散フィルム原版として拡散フィルム(Luminit社製、商品名「LSD」、半値幅40°)を用いた以外は、実施例1と同様な条件にて、本実施例に係る指向性拡散フィルムを作製した。
【0090】
[実施例5]
拡散フィルム原版として異方性拡散フィルム(Luminit社製、商品名「LSD」、半値幅18×5°)を用いた以外は、実施例1と同様な条件にて、本実施例に係る指向性拡散フィルムを作製した。ここで、異方性拡散フィルムにおいて、半値幅18×5°とは、半値幅が最も大きい方向と同一面内の垂直方向に半値幅が最も小さい方向が存在し、前記半値幅の最大値が18°、最小値が5°であることをいう。また、露光角度30°での露光は、半値幅が最も小さい方向を回転軸として行った。
【0091】
[実施例6]
拡散フィルム原版として異方性拡散フィルム(Luminit社製、商品名「LSD」、半値幅23×8°)を用いた以外は、実施例1と同様な条件にて、本実施例に係る指向性拡散フィルムを作製した。ここで、異方性拡散フィルムにおいて、半値幅23×8°とは、半値幅が最も大きい方向と同一面内の垂直方向に半値幅が最も小さい方向が存在し、前記半値幅の最大値が23°、最小値が8°であることをいう。また、露光角度30°での露光は、半値幅が最も小さい方向を回転軸として行った。
【0092】
[実施例7]
拡散フィルム原版として異方性拡散フィルム(Luminit社製、商品名「LSD」、半値幅40×10°)を用いた以外は、実施例1と同様な条件にて、本実施例に係る指向性拡散フィルムを作製した。ここで、異方性拡散フィルムにおいて、半値幅40×10°とは、半値幅が最も大きい方向と同一面内の垂直方向に半値幅が最も小さい方向が存在し、前記半値幅の最大値が40°、最小値が10°であることをいう。また、露光角度30°での露光は、半値幅が最も小さい方向を回転軸として行った。
【0093】
[実施例8]
前記フォトポリマーの塗布厚を7μmとした以外は、実施例6と同様な条件にて、本実施例に係る指向性拡散フィルムを作製した。
【0094】
[実施例9]
前記フォトポリマーの塗布厚を12μmとした以外は、実施例6と同様な条件にて、本実施例に係る指向性拡散フィルムを作製した。
【0095】
[実施例10]
前記フォトポリマーの塗布厚を40μmとした以外は、実施例6と同様な条件にて、本実施例に係る指向性拡散フィルムを作製した。
【0096】
[実施例11]
前記フォトポリマーの塗布厚を50μmとした以外は、実施例6と同様な条件にて、本実施例に係る指向性拡散フィルムを作製した。
【0097】
[実施例12]
実施例1で得られた指向性拡散フィルムを用い、偏光子の透過軸方向と傾斜配向液晶層の配向軸方向が同じ方向であり、指向性拡散フィルムの拡散軸方向が傾斜配向液晶層の配向軸方向となす角度が−105度となるようにした。
【0098】
[実施例13]
実施例1で得られた指向性拡散フィルムを用い、偏光子の透過軸方向と傾斜配向液晶層の配向軸方向が同じ方向であり、指向性拡散フィルムの拡散軸方向が傾斜配向液晶層の配向軸方向となす角度が−125度となるようにした。
【0099】
[実施例14]
実施例1で得られた指向性拡散フィルムを用い、偏光子の透過軸方向と傾斜配向液晶層の配向軸方向が同じ方向であり、指向性拡散フィルムの拡散軸方向が傾斜配向液晶層の配向軸方向となす角度が−145度となるようにした。
【0100】
[実施例15]
実施例1で得られた指向性拡散フィルムを用い、偏光子の透過軸方向と傾斜配向液晶層の配向軸方向が同じ方向であり、指向性拡散フィルムの拡散軸方向が傾斜配向液晶層の配向軸方向となす角度が−165度となるようにした。
【0101】
[実施例16]
実施例1で得られた指向性拡散フィルムを用い、偏光子の透過軸方向と傾斜配向液晶層の配向軸方向が同じ方向であり、指向性拡散フィルムの拡散軸方向が傾斜配向液晶層の配向軸方向となす角度が−95度となるようにした。
【0102】
[実施例17]
実施例1で得られた指向性拡散フィルムを用い、偏光子の透過軸方向と傾斜配向液晶層の配向軸方向が同じ方向であり、指向性拡散フィルムの拡散軸方向が傾斜配向液晶層の配向軸方向となす角度が−175度となるようにした。
【0103】
[実施例18]
実施例1で得られた指向性拡散フィルムを用い、偏光子の透過軸方向と傾斜配向液晶層の配向軸方向が同じ方向であり、指向性拡散フィルムの拡散軸方向が傾斜配向液晶層の配向軸方向となす角度が−45度となるようにした。
【0104】
[実施例19]
実施例1で得られた指向性拡散フィルムを用い、上板偏光板の構成として、視認側から偏光子、傾斜配向液晶層、指向性拡散フィルムの順に積層した偏光板において、偏光子の透過軸方向と傾斜配向液晶層の配向軸方向が同じ方向であり、指向性拡散フィルムの拡散軸方向が傾斜配向液晶層の配向軸方向となす角度が−135度となるようにした。
【0105】
[比較例1]
照射角度を10°とした以外は、実施例1と同様な条件にて、本比較例に係る指向性拡散フィルムを作製した。
【0106】
[比較例2]
照射角度を50°とした以外は、実施例1と同様な条件にて、本比較例に係る指向性拡散フィルムを作製した。
【0107】
[比較例3]
拡散フィルム原版として拡散フィルム(Luminit社製、商品名「LSD」、半値幅10°)を用いた以外は、実施例1と同様な条件にて、本比較例に係る指向性拡散フィルムを作製した。
【0108】
[比較例4]
拡散フィルム原版として拡散フィルム(Luminit社製、商品名「LSD」、半値幅50°)を用いた以外は、実施例1と同様な条件にて、本比較例に係る指向性拡散フィルムを作製した。
【0109】
[比較例5]
拡散フィルム原版として異方性拡散フィルム(Luminit社製、商品名「LSD」、半値幅64×7°)を用いた以外は、実施例1と同様な条件にて、本比較例に係る指向性拡散フィルムを作製した。ここで、異方性拡散フィルムにおいて、半値幅64×7°とは、半値幅が最も大きい方向と同一面内の垂直方向に半値幅が最も小さい方向が存在し、前記半値幅の最大値が64°、最小値が7°であることをいう。また、露光角度30°での露光は、半値幅が最も小さい方向を回転軸として行った。
【0110】
[比較例6]
本比較例に係る指向性拡散フィルムとして、指向性ディフューザーSDF(凸版印刷(株)製)を用いた。
【0111】
[比較例7]
本比較例に係る指向性拡散フィルムとして、視界制御フィルム「ルミスティー」MRF2555(住友化学(株)製)を用いた。
【0112】
各実施例および各比較例の指向性拡散フィルムの製造条件、ならびに各種特性および物性の評価結果を下記表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
前記表1に示すとおり、実施例の指向性拡散フィルムを備えた液晶表示装置は、前記表示装置の法線方向から下側50°以上の領域においても、階調反転が起こることなく正常に表示され、かつ、正面コントラストの低下も抑えられた、良好な表示特性を得ることができた。それに対して、比較例においては、階調が正常に表示される領域が狭いか、あるいは、階調正常領域は広がったものの正面コントラストが大幅に低下するものしか得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の指向性拡散フィルムは、液晶表示装置に好適に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】図1は、本発明における拡散特性を説明する模式図である。図1(a)は、極角を説明する模式図である。図1(b)は、方位角を説明する模式図である。
【図2】図2は、本発明の指向性拡散フィルムを使用していない液晶パネル(TN)の上下方向での階調特性の測定結果の一例を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の指向性拡散フィルムの製造方法を示す概念図である。
【図4】図4は、拡散軸方向測定装置の概略図である。
【図5】図5は、本発明における拡散特性の測定方法を説明する模式図である。図5(a)は、拡散像の撮影方法を説明する模式図である。図5(b)は、得られる写真を模式的に表した図である。
【図6】図6は、本実施例において指向性拡散フィルムの作製に用いた露光装置の概略図である。
【図7】図7は、実施例1における指向性拡散フィルムの配置方向を説明する図である。図7(a)は、偏光板の分解模式図である。図7(b)は、視認側から偏光板を見たときの軸構成を説明する図である。
【図8】図8は、本発明における画像処理方法を説明する図である。図8(a)は、8ビットグレースケールに変換した画像の一例である。図8(b)は、2値化処理により得られた画像の一例である。図8(c)は、2値化処理により得られた画像(b)に、楕円図形をフィッティングさせた画像である。図8(d)は、極角方向長さと方位角方向長さの測長位置を説明する図である。
【図9】図9は、本発明における指向性拡散フィルムの拡散半値角の測定方法を説明する図である。図9(a)は、拡散半値角測定装置の概略図である。図9(b)は、指向性拡散フィルムの透過率データの一例である。図9(c)は、前記図(b)の一部を拡大した図である。
【符号の説明】
【0117】
1 指向性拡散フィルム
2 指向性拡散フィルムの法線方向
3 拡散軸方向
4 コリメート光
5 極角
6 方位角
A 極角の測定面
B 方位角の測定面
R 階調正常角度
31 拡散フィルム原版
32 感光性樹脂層
33 基材
34 レーザ光
35 照射角度
40 ステージ装置
41 レーザ光源
42 ビームエキスパンダー
43、45 スリット
44 サンプル
46、48 レンズ
47 ピンホール
49 検出器
51 指向性拡散フィルム
52 レーザ光
53 方眼紙
54 極角方向
55 方位角方向
56 カメラ
61 Nd:YVOレーザ
62、62’ ガリレオ式ビームエキスパンダー
63 窓
64 バリアブルアッテネータ
65 サンプルホルダー
66 防振台
67 シャッター
71 指向性拡散フィルム
72 偏光子
73 傾斜配向液晶層
74 指向性拡散フィルムの拡散軸方向
75 偏光子の吸収軸方向
76 傾斜配向液晶層の配向軸方向
81 楕円図形
84 極角方向の軸
85 方位角方向の軸
91 透過成分
92 拡散成分
93 ピーク強度の50%の拡散角度(拡散半値角)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射角により拡散特性が異なる指向性拡散フィルムであって、フィルムの法線方向に対して下記拡散軸方向が20〜50°の範囲にあり、下記拡散半値角が20°以上であることを特徴とする指向性拡散フィルム。
拡散軸方向:フィルムに光照射したとき、最も強い拡散光が得られる光照射方向
拡散半値角:指向性拡散フィルムの法線方向と拡散軸方向とを含む面Aにおいて、指
向性拡散フィルムの法線方向から30°の入射角でコリメート光を入射したとき、
前記面Aにおける拡散光の出射強度がピーク強度の50%となる拡散角度
【請求項2】
指向性拡散フィルムであって、下記方位角方向長さに対する極角方向長さの比率が1〜3の範囲である、請求項1記載の指向性拡散フィルム。
方位角方向長さに対する極角方向長さの比率:
指向性拡散フィルムの法線方向と拡散軸方向とを含む面Aにおいて、指向性拡散
フィルムの法線方向から30°の入射角でコリメート光を入射したとき、指向性
拡散フィルムと平行に設置した投影板に映った前記コリメート光の拡散像を楕円
形にフィッティングし、前記楕円形の長軸と短軸のうち、前記面A上にある軸の
長さ(極角方向長さ)と、他方の軸の長さ(方位角方向長さ)を測長したときの
、極角方向長さ/方位角方向長さ
【請求項3】
偏光子と保護層とが積層された偏光板であって、前記保護層が、請求項1または2記載の指向性拡散フィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項4】
前記保護層が偏光子の両面に積層され、両面に積層された前記保護層の少なくとも一方が、請求項1または2記載の指向性拡散フィルムである請求項3記載の偏光板。
【請求項5】
ハードコート層を含んでいる請求項3または4記載の偏光板。
【請求項6】
防眩層を含んでいる請求項3から5のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項7】
反射防止層を含んでいる請求項3から6のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項8】
指向性拡散フィルムまたは偏光板を備える液晶表示装置であって、前記指向性拡散フィルムが請求項1または2記載の指向性拡散フィルムであり、前記偏光板が請求項3から7のいずれか一項に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置
【請求項9】
請求項3から7のいずれか一項に記載の偏光板および光学補償層が視認側に設けられており、前記偏光板を構成する偏光子の透過軸方向と、前記光学補償層の配向軸方向とが同じ方向であり、かつ、前記偏光板を構成する指向性拡散フィルムの拡散軸方向が前記光学補償層の配向軸方向から−105〜−165°の範囲の角度をなして配置されている請求項8記載の液晶表示装置。
【請求項10】
指向性拡散フィルムの製造方法であって、拡散フィルム原版および少なくとも二種類の屈折率の異なる材料からなる感光性樹脂を少なくとも準備する工程、前記拡散フィルム原版と前記感光性樹脂とを積層して積層体を形成する工程、コリメートしたレーザ光を前記拡散フィルム原版側から前記積層体に照射する工程を含み、前記照射工程において、前記拡散フィルム原版の下記半値幅が15〜45°の範囲、かつ、前記レーザ光の前記拡散フィルム原版に対する照射角度が15〜45°の範囲の条件で前記レーザ光を照射することを特徴とする指向性拡散フィルムの製造方法。
半値幅:拡散光の出射強度が、ピーク強度の50%となる拡散角度
【請求項11】
指向性拡散フィルムの製造方法であって、前記拡散フィルム原版として異方性を有する拡散フィルム原版を使用し、前記照射工程において、前記異方性を有する拡散フィルム原版の前記半値幅が最大となる方向を、前記照射角度の回転軸と垂直方向となるように設置して、前記レーザ光を照射する、請求項10記載の指向性拡散フィルムの製造方法。
【請求項12】
指向性拡散フィルムであって、請求項10または11記載の指向性拡散フィルムの製造方法によって製造されることを特徴とする指向性拡散フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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