説明

指笛さえずり

【課題】口、唇、手、脳を適度に刺激し、学習能力を引き出してお年寄りのボケ防止器具としても活用でき、高い音が出せる防犯笛付きのペンダントとしても活用できる指笛を提供する。
【解決手段】指笛に音程・音階の発生・調整機能を持たせるために、唄口2の近傍に音程の発生のために特別に調整された唄口の刃であるブレード3を具備し、その位置を調整し、さらに、唄口近傍に穴又はスリット5を設置して空気の流れ方向と空気量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指笛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
指笛には、沖縄指笛、ちんぶく竹の指笛が提案されている。沖縄指笛は、リード付きの笛の機能をもつ指笛であり、沖縄民謡用のお囃子楽器である。ちんぶく竹の指笛は、指笛を模した竹笛であるが、発生される音は、単調である。両者とも、音程及び音階を発生調整できる機能はない。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3125042号
【0004】
【非特許文献1】http://www.watchclip.org/video/pQBh5m8UL5Q/.html 製作者上原敏氏によるちんぶく竹の指笛の吹き方。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すでに提案されている沖縄指笛は、一種の笛であり、音程の変更に制限がある。ちんぶく竹の指笛は、穴1つの単純機構であり、短振動の音を発生する笛である。しかしながら、これらは唄口の刃にあたる部分がある形状に固定されているので、音程の変更が不可能であるという課題がある。本特許申請内容は、音程及び音階を、複雑な電子回路の力を借りずに、発生・調整できる機能の実現に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、提案物は、図1及び2のように、唄口に、音程の発生のために特別に調整された形状のブレード(唄口の刃)をもち、空気の流れ方向を調整して、つまり、笛を若干回転させて、異なった音程を発生できることを特徴とする竹笛である。また、ブレード(唄口の刃)の近傍に穴またはスリットをもたせ、スリット上を指でスライドすることにより音程及び音階を発生・調整できる機能を持たせる試みである。音階発生時の周波数帯域の過不足は、笛本体の回転により、ブレードにあたる空気の流れを調整することにより実現できる。この場合、ブレード(唄口の刃)形状は、指笛の性能に大きく影響する。吹きこむ空気の流れをスムーズにするため、平滑面を保持することが不可欠である。
【0007】
図3において、発音の原理は、ベルヌーイの定理(速度エネルギー、圧力エネルギーと位置のエネルギーの総和は一定)の関係より説明する。空気流1の圧力P,速度V、空気流2のそれらをP,Vとすると、V>Vの時、P<Pとなり、空気流2は空気流1に引き込まれる。Vは弱められ、空気流2は空気流1から、もとの空気流2に帰ろうとする。この現象を繰り返すと、単振動現象が起こり、波が発生する。これが空中を伝播すると、ピーという音になる。ブレードの形状を変え吹きこむ空気の方向を変更すると、P,V、P,Vは、それぞれ、別の値をとり、単振動の周波数は変化し、この物理現象を応用すれば、発生する音の周波数を変更できる。唄口に入る空気量と唄口の外に出る空気量の差が少なければ、周波数は低く、音も小さくなる。両空気量を調整して、異なる周波数の音を発生させるためには、特定形状のブレードを持ち、ブレードにあたる空気流の方向を調整すればよい。
【0008】
音階の発生原理を図4,5及び6を用いて説明する。図4おいて、空気流2は、指笛中で回転し、一種の定在波(カルマン渦)を発生する。空気流1、2の速度の差により速度・圧力差を生じ、結果として、図3の発音原理より振動波形を生じ笛が鳴ることになる。
【0009】
図5において、定在波は、唄口近傍ではほぼ一定値をとるが、はじめ、スリットを指で覆って閉じ、指をスライドしていくと、空気が指笛の外へ流れ出して、指笛内部の空気圧は減少する。結果として、周波数の高い音波の発生をもたらす。xは、スリット左端よりの距離を示す。
【0010】
図6において、この空気の流れの速度分布の差が、周波数の高さの差に比例した音波を発生する。この結果、音階の発生を可能ならしめる。これは、スリット上を指をスライドさせることにより実現できる。ここでは、速度分布の差及び指笛のスリットとの位置関係を示す。
【0011】
音階を広げるには、(1)唄口穴径を出来るだけ小さく、スリットを細く長くする。(2)ブレードの角度を調整する。(3)指笛本体を回転させ、吹きこむ空気の方向を調整する。
【発明の効果】
【0012】
特定形状のブレード(唄口の刃)と唄口近傍に穴またはスリットを備え、音程及び音階を発生・調整できる。また、カッコー鳥等の鳴き声を、さらに、種々の小鳥の鳴き声をも模擬できる。また、ブレードに幅を持たせ、大きな音が容易に出ることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係る指笛本体を示す図である。図1中の4は、音程・音階調整用穴を示す。
【図2】本発明の実施例に係る指笛本体を示す図である。図2中の5は、発声音歪補正機能を具備した音程・音階調整用スリットを示す。
【図3】異なる周波数の音を発生するメカニズムを説明する図である。
【図4】指笛の発音原理を説明する図である。
【図5】指笛中での空気の流れの速度分布を説明する図である。図中のxは、スリットの左端をx=0とし、右方向をプラスとする。
【図6】指笛中での空気の流れの速度分布の差を説明する図である。
【図7】符号6の空気流1、符号7の空気流2及び符号8の空気流3(スリットから出る空気流)の間の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。提案笛は、短い円筒物に、唄口、音程調整用穴を具備し指笛を構成し、指笛の回転及び音程調整用穴またはスリットに入る空気の流れの調整により、小鳥の鳴き声、さえずりの模擬器具や楽器として使用できるものである。
【実施例1】
【0015】
携帯型の指笛でどこでも自由に持ち運びができる。また、片手の一本の指で、スリット上を押さえスライドさせることにより、簡単な演奏を楽しむことができる。さらに、本体は小さく、首にでも掛けられ、また、ブレードを広くしてあり、大きな発生音が期待できるので、防犯笛機能付きペンダントとしても使用できる。
寸法の一例を以下に示す。
1.笛本体、長さ40−60mm、内径15mm程度、外形17−20mm程度。
2.唄口、横10−15mm、縦5−10mm。
3.ブレードの角度、φ=70°程度。
4.発生音歪補正付音程・音階調整用スリット、横15−20mm、縦1.5−2.0mm、内径4mm程度の穴。
上記の寸法は、材料が竹の場合の例としての参考値である。また、円筒形状物体の材料は、竹に限らず、木、鹿の角、プラスチック等が応用できる。これらの応用により、種々の音色が楽しめる指笛である。更に、指笛本体の内径及び外形を調整することにより音の高低を調整できる。ウグイス鳥の場合では、上記の寸法ように、半径外径を比較的小さくし、フクロウ鳥等の場合には、内径及び外径の比較的大きな笛本体を準備すればよい。
【産業上の利用の可能性】
【0016】
本発明は、以下のように利用できる。笛を鳴らしたり、曲を演奏したりするために、横笛、ケーナ等と同様に若干の学習を必要とする。即ち、唄口に空気を吹き込む場合、唄口にあるブレード面に平行になるよう空気を吹きこむ。この場合、指笛を鳴らすため、唇の位置、指、耳、笛本体との接触、これらの調整のため脳を働かせる必要があり、老人のボケ防止器具として活用できる。さらに、本提案の指笛に、空気を吹き込む補助用具を具備すれば、誰でも、ただ吹くだけで音を発生でき、指のスライド操作によりドレミ調の楽器として使用できる。
【符号の説明】
【0017】
1.笛本体
2.唄口
3.ブレード
4.音程調整部(楕円形の例)
5.音程調整部(スリットの例)
6.空気流1
7.空気流2
8.空気流3
9.空気流1の速度
10.定在波速度
11.速度分布
12.速度分布の差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状物体に、唄口、ブレード、音程調整用穴を備えることを特徴とする指笛さえずり。
【請求項2】
前記のブレードの近傍に1つ又は複数の穴のあることを特徴とする前記請求項1の指笛さえずり。
【請求項3】
前記の穴の1つをスリットに置き換え、これを指で押さえ順次スライドすることにより、また、指笛本体を若干回転することにより、音程を変更でき、音階の発生を可能とすることを特徴とする前記請求項1の指笛さえずり。
【請求項4】
音階の発生時に、歪みが発生する場合、これを補正する機能を具備することを特徴とする前記請求項1の指笛さえずり。
【請求項5】
上記指笛のブレード方向に空気を吹き込む補助具を具備すれば、音階を片手で発生できるので、補助具付きの上記指笛を複数同時に用いることにより、複数の音階及び和音を発生できることを特徴とする前記請求項1の指笛さえずり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−73232(P2013−73232A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227371(P2011−227371)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(511249866)