説明

振出式シャープペンシル

【課題】頭冠12の挿入部で重量体11や芯タンク3の主要部分を覆うとともに、頭冠12の挿入部に模様や表示あるいは着色等の加飾を行って、外観を向上させる振出式シャープペンシルに適用できる。
【解決手段】重量体11の慣性力によりチャック1を前進させて芯9を繰り出す振出式シャープペンシルにおいて、透明性を有する軸筒7と、軸筒に取り付けられる頭冠12と、頭冠12内に摺動可能に内蔵される押圧部材16と、頭冠12と押圧部材16の間に取り付けられ押圧部材16を長手方向後方に付勢するリターンスプリング14と、チャック1に連結されかつ押圧部材16の押圧面と当接可能な芯タンク3を有する。この芯タンク3の外面と頭冠12の内面との間に位置し長手方向に摺動可能に重量体11を設け、重量体11と頭冠12の内段を当接可能に構成するとともに、軸筒7内に挿入される頭冠12の挿入部が軸筒7の全長の半分以上に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量体の慣性力によりチャックを前進させて芯を繰り出す振出式シャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の低価格の振出式シャープペンシルは、軸筒の後部に頭冠が取り付けられ、この頭冠内に摺動可能に押圧部材が内蔵され、頭冠と押圧部材の間にリターンスプリングを取り付けて押圧部材を長手方向後方に付勢し、更に、チャックに連結された芯タンクと押圧部材の押圧面が当接可能に構成した振出式シャープペンシルが知られている。(特許文献1参照)
【0003】
しかしながら、上記振出式シャープペンシルは、軸筒に挿入される頭冠の挿入部の長さが軸筒の全長の3割程度以下であった。その為、軸筒を透明にした場合には重量体が透けて見えてしまうために軸筒に模様や表示を印刷してもはっきり確認できず、また頭冠の挿入部に模様や表示を印刷したりシールを貼着したりして加飾を行うことは不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3831071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、頭冠の挿入部に加飾ができない点と、透明性を有する軸筒から重量体や芯タンクが透けて見えてしまい、透明な軸筒に模様や表示を設けてもはっきり確認できない点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、軸筒を振ることにより生じる重量体の慣性力によりチャックを前進させて芯を繰り出す振出式シャープペンシルにおいて、透明性を有する軸筒と、軸筒の後部に取り付けられる頭冠と、頭冠内に摺動可能に内蔵される押圧部材と、頭冠と押圧部材の間に取り付けられ押圧部材を長手方向後方に付勢するリターンスプリングと、チャックに連結されかつ前記押圧部材の押圧面と当接可能な芯タンクを有し、芯タンクの外面と頭冠の内面との間に位置し長手方向に摺動可能に重量体を設け、該重量体と頭冠の内段を当接可能に構成するとともに、軸筒内に挿入される頭冠の挿入部長さが軸筒の全長の半分以上に構成したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、軸筒に取り付けられる頭冠の挿入部が軸筒の全長の半分以上挿入されるので、重量体や芯タンクの主要部分を覆うとともに、頭冠の挿入部に模様や表示あるいは着色等の加飾を行うことにより振出式シャープペンシルの外観を向上させることができる利点が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施例1の振出式シャープペンシルを示す正面図である。(実施例1)
【図2】図2は、本発明の実施例1の振出式シャープペンシルを示す断面図である。(実施例1)
【図3】図3は、図2のA−A線を示す拡大断面図である。(実施例1)
【図4】図4は、図2のB−B線を示す拡大断面図である。(実施例1)
【図5】図5は、図2のC−C線を示す拡大断面図である。(実施例1)
【図6】図6は、図2の頭冠を示す拡大正面図である。(実施例1)
【図7】図7は、図2の押圧部材を示す拡大正面図である。(実施例1)
【図8】図8は、図2の押圧部材を示す拡大平面図である。(実施例1)
【図9】図9は、本発明の実施例1の振出式シャープペンシルの頭冠に、押圧部材、リターンスプリング、消しゴム及びノブを組み込んだ構成を示す拡大正面図である。(実施例1)
【図10】図10は、図9のA−A線を示す拡大断面図である。(実施例1)
【図11】図11は、本発明の実施例2の振出式シャープペンシルを示す正面図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、重量体や芯タンクの主要部を頭冠で覆うことにより、頭冠や透明な軸筒に設けた模様や表示等が容易に目視できる振出式シャープペンシルを実現した。
【実施例1】
【0010】
以下、図1、図2、図3、図4、図5、図6、図7、図8、図9及び図10に基づいて、本発明における実施例1の振出式シャープペンシルを説明する。また、図1の左側を前方とし、右側を後方とする。先ず、チャック1と、チャック1にコネクター2を介して連結された芯タンク3と、チャック1の頭部1Aに外嵌された締具4と、締具4を受け止める連結具5と、連結具5とコネクター2の間に取り付けられるスプリング6とにより振出式シャープペンシルの機構部を構成する。軸筒7は透明あるいは着色された透明性を有する合成樹脂で構成され、かつ、軸筒7の前部孔7Aは前記機構部の芯タンク3及びコネクター2が挿通可能に構成される。この軸筒7の前部孔7Aより機構部を挿入し、軸筒7の前端と軸筒7の前部に螺合された先部材8の内段8Aにより前記連結具5を挾持する。先部材8には芯9を適宜の力で保持するゴム等の弾性体で構成された芯ホルダー10が内蔵されている。また、軸筒7には、後端より開口されかつ前記前部孔7Aより太径の内孔7Bを形成するとともに、軸筒7の後部に係止窓7Cを形成する。更に、軸筒7の係止窓7Cと対向する位置に後端より長手方向前方に伸びた凹溝7Dを形成する。この軸筒7の内孔7Bに、金属製の線材を巻回して円筒状に構成した重量体11が摺動可能に内蔵され、この重量体11の貫通孔に前記芯タンク3が挿入される。図6に示した頭冠12は、着色された不透明の合成樹脂で構成され、後部上側にクリップ13を一体に形成するとともに、太径の後部から前方に伸びて軸筒7内に挿入される挿入部の長手方向寸法は軸筒7の全長の半分以上好ましくは8割程度の長さに構成し、重量体11を覆う長さに構成される。この挿入部は細径部12Aで構成され、細径部12Aの後部外周面には前記クリップ13の真下に位置して突起12Bを形成する。更に、後部細径部の両側部に長手方向に伸びた開口窓12Cを対向して形成し、突起12Bが位置する細径部12Aが適宜弾性変形可能に構成する。また、頭冠12の後部細径部に、突起12Bの反対側に位置しかつ長手方向に伸びた隆起部12Dを形成する。この頭冠12には、芯タンク3の横振れを防止するための内鍔12Eが形成されるとともに、後部内側にはリターンスプリング14を当接するための段部12Fが形成される。更に、頭冠12の後部孔12Gの上下には前記開口窓12Cと軸心に対して90度ずれた位置にキー溝12Hが対向して形成されている。この頭冠12の細径部12Aの円周にわずかに凹陥した凹部12Iを長手方向に長く伸ばして形成し、この凹部12Iに印刷により表示15を設ける。尚、図示していないが、頭冠の凹部にシールを貼着して表示を設けても良い。
【0011】
また、図7及び図8に示したように、押圧部材16の前部筒16A外周面の両側にはそれぞれ突起16Bが形成されるとともに、前部筒16Aの上下に開口窓16Cが対向して形成され、突起16Bが位置する前部筒16Aが弾性変形可能に構成されている。この押圧部材16の後部には外鍔部16Dが形成され、該外鍔部16Dの上下には前記突起16Bと軸心に対して90度ずれた位置に外方に突出したキー16Eがそれぞれ形成される。更に、押圧部材16の内面には芯挿入口を有する内鍔16Fが形成され、この内鍔16Fの前面が芯タンク3の後端を押圧する押圧面となっている。この押圧部材16の前部にリターンスプリング14を外嵌した後、頭冠12の後方より、頭冠12のキー溝12Hに押圧部材16のキー16Eを合わせて挿入し、押圧部材16の突起16Bを頭冠12の開口窓12Cに長手方向に摺動可能に遊嵌する。しかも、前記リターンスプリング14が頭冠12の段部12Fと押圧部材16の外鍔部16Dの間に取り付けられることにより、通常押圧部材16は長手方向後方に付勢されている。しかも、押圧部材16の前部内孔16Gには芯タンク3の後部が挿入され、芯タンク3の後端と押圧部材16の押圧面は適宜離間して構成されている。更に、押圧部材16の後部内孔には消しゴム17が嵌合されて取り付けられ、かつ、消しゴム17を覆うノブ18が押圧部材16の後部外面に嵌合されて図9及び図10に示した状態となる。
【0012】
このように組み立てられた頭冠12が前記軸筒7の後端より挿入され、頭冠12の隆起部12Dが軸筒7の凹溝7Dに合わせて頭冠12を前進させ、頭冠12の突起12Bを軸筒7の後部上面に形成した係止窓7Cに嵌合させ、頭冠12を軸筒7に取り付ける。尚、軸筒7の係止窓7C及び頭冠12の突起12Bはクリップ13により隠されるために外観を損なうことはない。また、頭冠12の内鍔12Eには前記芯タンク3の後部が挿通されるとともに、前記重量体11はコネクター2の外鍔2Aと頭冠12の内鍔12Eにより構成された内段との間を長手方向に摺動可能に構成する。また、重量体11及び芯タンク3は頭冠12の細径部12Aにより殆どの部分が覆われて透明な軸筒7から隠れ、頭冠12の細径部12Aに設けられた表示15のみが透明な軸筒7を通してはっきりと目視可能となる。
【0013】
以上説明した振出式シャープペンシルは、軸筒7を振ることにより生じる重量体11の慣性力によりチャック1を前進させて芯9を繰り出すとともに、芯タンク3内の次の芯9を追従させるには、ノブ18を押圧することにより押圧部材16の押圧面が芯タンク3の後端を押圧し、芯タンク3及びチャック1が前進することにより先部材8内の短くなった残芯を排出するとともに次の芯9を先部材8の先端より突出させるものである。
【0014】
また、上記実施例1においては、着色された不透明の頭冠12の細径部12Aにより重量体11や芯タンク3といった軸筒7内に内蔵された部材を覆い隠すので、透明な軸筒7からは頭冠12の細径部12Aのみが目視され細径部12Aに設けられた表示15がはっきりと確認できるものである。
【実施例2】
【0015】
以下、図11に基づいて本発明の実施例2の振出式シャープペンシルを説明する。尚、図1と同一部材は同一の符号を付してその説明を省略する。先ず、頭冠12を着色した不透明の合成樹脂で形成する。更に、透明な軸筒7の周面に模様を印刷あるいは転写により設けて振出式シャープペンシルを構成したものである。
【0016】
この実施例2の振出式シャープペンシルは、軸筒7の周面に設けた模様19が着色された頭冠12の細径部12Aの上にはっきりと確認でき、外観が向上できる利点が得られるものである。
【0017】
尚、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、軸筒の把持部に、滑り止め用の凹部を円周方向等間隔に形成したり、あるいは不透明のゴム製のグリップを取り付けて構成しても良い。また、頭冠の細径部で重量体を全て覆い隠さなくても半分程度覆い隠せば十分本発明の効果が期待できるものである。更に、頭冠を透明に構成し、細径部に印刷やシールを設けて重量体や芯タンクを覆い隠しても外観を向上させる効果が得られる。また、クリップと頭冠を別部品で構成しても良い。更にまた、軸筒、頭冠、押圧部材、重量体、芯タンクといった部材は説明を簡略化するためにそれぞれ1個の部材として図示しているが、それぞれ2個以上の部材を螺合、圧入等により一体化すれば良い。また、コネクターと芯タンクを一体に構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0018】
透明な軸筒内に内蔵された重量体や芯タンクを長手方向に伸びた頭冠の挿入部により覆い隠すことによって、頭冠の細径部や軸筒の周面に設けた模様や表示がはっきり確認できる振出式シャープペンシルに適用できる。
【符号の説明】
【0019】
1 チャック
3 芯タンク
7 軸筒
9 芯
11 重量体
12 頭冠
14 リターンスプリング
16 押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒を振ることにより生じる重量体の慣性力によりチャックを前進させて芯を繰り出す振出式シャープペンシルにおいて、透明性を有する軸筒と、軸筒の後部に取り付けられる頭冠と、頭冠内に摺動可能に内蔵される押圧部材と、頭冠と押圧部材の間に取り付けられ押圧部材を長手方向後方に付勢するリターンスプリングと、チャックに連結されかつ前記押圧部材の押圧面と当接可能な芯タンクを有し、芯タンクの外面と頭冠の内面との間に位置し長手方向に摺動可能に重量体を設け、該重量体と頭冠の内段を当接可能に構成するとともに、軸筒内に挿入される頭冠の挿入部が軸筒の全長の半分以上に構成したことを特徴とする振出式シャープペンシル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−228781(P2012−228781A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96769(P2011−96769)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】