説明

振出竿

【課題】元上と元竿との合わせ部での固着現象を改善する振出竿を提供する点にある。
【解決手段】元上10の後端側端部の外周面と元竿11の先端側端部の内周面とに亘って形成した合わせ部Bによって、元上10と元竿11とを伸長状態に保持すべく構成する。元上10の後端側端面の外周面に、相手側周面に圧接する複数個の第1突部9を形成し、元竿11の竿先側端部に螺旋状の凹入部11aを設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小径竿体の外周面と大径竿体の内周面とに亘って形成した合わせ部によって、小径竿体と大径竿体とを伸長状態に保持する振出竿に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の振出竿において、合わせ部を構成するに、小径竿体の竿元端の外周面に大径竿体の竿先端の内周面に圧接する突部としての樹脂塗料製の突起を形成していた。
このように突起を形成することによって、突起間を水分が移動できるため、次のような利点がある。
例えば、小径竿体の竿元端の外周面を平坦面に形成し、外周面の全面が大径竿体の竿先端の内周面に圧接する状態に形成する。そうすると、互いに圧接する部位に水分が浸入すると、圧接状態がより強固になり、小径竿体を引き出した状態から元の収縮状態に戻すことができない、いわゆる固着状態が現出される。
これに対して、突起を形成していると、水分の浸入があっても、突起の間から水分が移動することとなり、水分が固着状態を現出することは少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−205626号公報(段落番号〔0018〕、〔0019〕図1,3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記突起が接触する相手側周面は、円錐台面となっており、凹凸の無い円滑面に形成してあるので、相手側周面に押し付けられた突起の先端部とその相手側周面との間には、水分や他の挟雑物が入り込み、これらが突起の先端部と相手側周面との間から脱出できない状態となり、合わせ部の固着現象が起こり得る余地があり、固着現象が解消されているわけではなかった。
【0005】
本発明の目的は、突部を形成した小径竿体または大径竿体の一方に対して、相手側となる小径竿体または大径竿体の他方にも工夫を施すことによって、固着現象の改善が図れる振出竿を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、前記外周面又は前記内周面の一方の周面に、相手側周面に向けて突出する複数個の突部を形成するとともに、前記相手側周面に凹入部を形成して、前記突部と前記凹入部とで前記合わせ部を備えてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
つまり、相手側周面に、凹入部を形成することによって、小径竿体を大径竿体から引き出していく過程で、相手側周面に付着する水分や他の挟雑物が、突部の先端部によって押され前記相手側周面上を移動して凹入部内に送り込まれる。
このような構成によって、突部の先端部と相手側周面との間に水分や他の挟雑物が挟み込まれることが抑制され、固着現象が抑制される。
【0008】
〔効果〕
このように、突部が摺接する相手側周面にも凹入部を形成する改善を施すことによって、固着現象を抑制する機能が高くなり、釣り操作が行い易い振出竿を提供できるに至った。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、前記外周面又は前記内周面の一方の周面に、相手側周面に向けて突出する複数個の第1突部を施して第1突部層を形成するとともに、前記第1突部と一部重なり合う状態でかつ前記第1突部同士の間に第2突部を施して第2突部層を形成し、前記相手側周面に凹入部を形成して、前記第1突部層及び前記第2突部層と前記凹入部とで前記合わせ部を構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
従来、外周面又は内周面の一方の周面に形成される突部は、外周面又は内周面に基端部を接着固定し、その基端部から相手側周面に向けて先端部分を延出する状態で設けられていた。このような構成を採る場合には、突部先端部の弾性変形性や突部基端部の踏ん張り性など、突部に期待される性質が単一のものに限定され、突部基端部の踏ん張り性を重視すると、突部先端部の弾性変形性が弱められて、相手側周面への圧接力が高くなり、固着現象を招来し易くなることも考えられる。
【0011】
これに対して、前記第1突部と一部重なり合う状態でかつ前記第1突部同士の間に第2突部を施して第2突部層を形成してあるので、第2突部を第1突部より柔軟性の高い性質(又は断面積の小さなもの)を有するものに構成し、一方、第1突部は踏ん張り力を大きく取れる硬質性(又は断面積の大きなもの)の高いものに形成するといったことが可能になる。
【0012】
このような構成によって、相手側周面に主として作用する第2突部は柔軟性(又は断面積の小さな点)を発揮して固着現象を未然に防止する機能が高く、第1突部は踏ん張り力が高く(又は断面積の大きな点を発揮して)、第2突部を支持して、早期に第2突部が摩滅等することを回避できる。
前記したように、第1突部と第2突部とで突部としての性質を異なるものに設定できるので、固着現象を回避する機能を長期に亘って維持することができる。
【0013】
〔構成〕
請求項3に係る発明の特徴構成は、前記小径竿体の最外層の竿元側端部の外側に竿元補強パターンを配置し、前記竿元補強パターンを、強化繊維群を竿軸線に対して傾斜する傾斜角に沿って引き揃え配置した下側プリプレグと、前記強化繊維群を前記下側プリプレグの強化繊維群と前記竿軸線に対して対称となる状態に引き揃え配置した上側プリプレグとを重ね合わせて構成し、前記上側プリプレグの更に外側に前記突部を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】
〔作用効果〕
通常、小径竿体の最外層の竿元側端部の外側に配置される竿元補強パターンは、竿の周方向に沿って強化繊維を配向したプリプレグで構成されることがある。そうすると、竿の周方向に沿って配向された強化繊維が、魚の引き力が竿に作用して、竿の断面が上下に短く左右に長い楕円状に変形しようとすることに対して、対抗力を発揮して、楕円状に変形しようとするのを阻止する働きをするものである。
これに対して、本願発明においては、竿元補強パターンとして強化繊維群を竿軸線に対して傾斜する傾斜角に沿って引き揃え配置したものであるので、強化繊維群は、竿の周方向に対しても傾斜する状態にある。したがって、竿の断面が上下に短く左右に長い楕円状に変形しようとすることに対して、竿の周方向に沿って強化繊維を配向した場合に比べて少し弱くなっている。
このことは、小径竿体の断面が多少変形し易くなっていることを意味し、変形し難い場合に比べて合わせ部が強く締まることが少なく、固着現象を未然に抑制できるものである。
【0015】
〔構成〕
請求項4に係る発明の特徴構成は、柔軟性繊維をクロスに組み合わせて構成したシート状のものに、マトリックス樹脂を含浸させて形成し前記柔軟性繊維を表出させた補助シート領域と、相手側周面に圧接する複数個の前記突部を突出高さが異なる状態に形成した突部領域とを前記合わせ部に備え、前記突部領域を前記補助シート領域より竿元側に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0016】
〔作用効果〕
つまり、相手側周面に圧接するものとして突部領域の突部とともに補助シート領域の柔軟性繊維を導入したので、突部のみで合わせ部を構成する場合に比べて、全体として柔らかな圧接力を得ることができる。
しかも、補助シート領域を竿先側に配置してあるので、まず、突部に比べて軟らかい柔軟性繊維が圧接し、次いで、突部が圧接することになるので、徐々に、圧接力が高まり、小径竿体を引き出して伸長状態に固定するまでに余裕があるので、急に固着状態に陥ることがなく、操作感が良好なものとなる。
【0017】
請求項5に係る発明の特徴構成は、前記小径竿体の最外層の外側に竿元補強パターンを配置し、前記竿元補強パターンを、前記上側プリプレグと下側プリプレグとを重ねたバイアス領域と、複数個の高さの異なる前記突部を形成した突部領域と、前記柔軟性繊維を組み合わせた前記補助シート領域とで構成し、前記小径竿体の最外層に前記突部領域を配置するとともに、前記突部領域の竿元側に前記補助シート領域と前記バイアス領域とをその順番に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0018】
〔作用効果〕
上記のように、順番に配置することによって、部分的に相手側周面に対して圧接し圧接力を調整し易い突部領域と補助シート領域とを、先行して圧接するように構成し、急激に圧接する状態を回避して、穏かな嵌合を開始することができる。そして、全面的に圧接するバイアス領域を竿元側に配置して、そのバイアス領域が伸長操作時の最終段階で圧接する構成によって、突部領域や補助シート領域に比べて大きな圧接力を作用させることができ、嵌合状態を確定できる。
このような構成によって、急な固着状態へ陥ることが少なく、嵌合操作を操作感よく行えながら、しっかりした伸長状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は元上を元竿内に収納した収縮状態を示す縦断側面図、(b)は元上を元竿から引き出した伸長状態を示す縦断側面図である。
【図2】元上に突部を設け、元竿に凹入部を設けて、両者を嵌合させた状態を示す縦断側面図である。
【図3】(a)はメインパターン及び補強パターンをマンドレルに巻回する前の状態を示す斜視図、(b)は突部を形成している状態を示す斜視図である。
【図4】(a)は第1突部を形成した後に第2突部を形成する前の状態を示す斜視図、(b)は第1突部の上に第2突部を形成した状態を示す縦断側面である。
【図5】竿の製造工程における前半工程を示し、(a)ワックスを塗布した状態(b)剥離用テープを巻回する状態、(c)凹入部形成用テープを巻回する状態、(d)剥離用テープを巻回する状態を示す斜視図である。
【図6】竿の製造工程における中間工程を示し、(a)第1層のプリプレグテープを巻回する状態、(b)プリプレグパターンを巻回する前の状態、(c)第2層のプリプレグテープを巻回する状態、(d)保形用テープを巻回する状態を示す斜視図である。
【図7】竿の製造工程における後半工程を示し、(a)竿を焼成する状態、(b)保形用テープを剥離する状態、(c)凹入部形成用テープを剥離する状態を示す斜視図である。
【図8】合わせ部の固着度合いを測定する状態を示す説明図である。
【図9】第2実施形態を示し、(a)口巻き補強パターンを巻回する前の状態、(b)第1プリプレグテープを巻回している状態、(c)第1、第2メインパターンを巻回する前の状態、(d)第2プリプレグテープを巻回し、外側竿元補強パターンを巻回する前の状態を示す斜視図である。
【図10】第2実施形態における、外側竿元補強パターンのうえに突部を設けて、元上と元竿とを嵌合させた状態を示す縦断側面図である。
【図11】第3実施形態を示し、(a)口巻き補強パターンと内側竿元補強パターンを巻回する前の状態、(b)第1プリプレグテープを巻回している状態、(c)第1、第2メインパターンと中間竿元補強パターンとを巻回する前の状態、(d)は第2スリットテープを巻回している状態を示す斜視図である。
【図12】第3実施形態を示し、(a)は補助シートのクロス組みプリプレグの柔軟性繊維のクロス組み状態を示す構成図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は補助シートを巻回する前の状態を示す斜視図、(d)竿元側端部に補助シートを施して元上を引き出した状態を示す縦断側面図である。
【図13】第4実施形態を示し、(a)外側竿元補強パターンとして、突部領域、補助シート領域、バイアス領域とで構成したもので、バイアス領域を施したものに、突部と補助シートを施す前の状態を示す斜視図、(b)外側竿元補強パターンとして、突部領域、補助シート領域、バイアス領域を施して元上を引き出した状態を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
伸縮式振出竿について説明する。図1に示すように、伸縮式振出竿は、小径竿体としての元上10と大径竿体としての元竿11を備え、図1(a)に示すように、元上10を元竿11内に収納した収縮状態と、図1(b)に示すように、元上10を元竿11より引き出した伸長状態とに切換可能に構成してあり、収縮状態と伸長状態とを保持できる機構を設けて構成してある。
【0021】
収縮状態に保持する機構について説明する。図1に示すように、元竿11の後端に、元上10の竿元側端部10Aを保持する保持具11Bを嵌着固定し、保持具11Bに尻栓2を螺着し、尻栓2の先端に穂先竿等が元竿11の竿元から抜け出すのを阻止する受けゴム30を挿入固定して、元上10を収縮保持する機構を構成する。保持具11Bにおける受けゴム30の装着部位より先端側には元上10の竿元側端部10Aを保持する保持面11bを形成してあり、元上10の竿元側端部10Aを保持面11bに嵌入保持することによって、元上10を収縮状態に保持することが可能である。
ここに、保持具11Bと元上10の竿元側端部10Aとで、元上10の収縮状態を保持する機構を構成する。
【0022】
伸長状態に保持する機構について説明する。図1(b)に示すように、元上10を元竿11より引き出して、元上10の竿元側端部10Aの外周面を元竿11の竿先側端部11Aの内周面に圧接させることによって、元上10を伸長状態に保持することが可能である。
ここに、元上10の竿元側端部10Aと元竿11の竿先側端部11Aとで、元上10の伸長状態を保持する機構と称する。また、元上10の竿元側端部10Aと元竿11の竿先側端部11Aとで合わせ部Bを構成する。
【0023】
次に、元上10の製造方法について説明する。図3に示すように、マンドレル4に対してプリプレグシートを巻回して竿体を構成する。周方向に炭素繊維等の強化繊維を引き揃え、その引き揃えた強化繊維に対してマトリックス樹脂としてエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させてプリプレグシートを構成し、プリプレグシートを所定形状に裁断して第1メインパターン15Aとしてマンドレル4に巻回し、第1層Aaを構成する。
【0024】
同様に強化繊維を竿軸線方向に配置したプリプレグシートを所定形状に裁断して第2メインパターン15Bとしてマンドレル4に巻回して、第2層Abを構成する。最外層としての第3層Acは、第1層Aaと同じく強化繊維を周方向に配置したプリプレグシートを所定形状に裁断して第3メインパターン15Cとしてマンドレル4に巻回して、構成されている。
【0025】
図1及び図2に示すように、第3層Acの外面で竿先側端部と竿元側端部とに、軸線方向長さがメインパターン15に比べて短い竿先側補強パターン12Aと竿元側補強パターン12Bとを巻回して、竿先側端部と竿元側端部での補強を図っている。竿先側補強パターン12Aと竿元側補強パターン12Bとにおいて使用されるプリプレグはメインパターン15と同様のものであり、強化繊維を周方向に引き揃えたものでなっている。
【0026】
強化繊維cとしては、炭素繊維以外にガラス繊維及びボロン繊維等が使用でき、熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂等が使用可能である。含浸させる樹脂としては、熱可塑性樹脂も使用できる。また、それらプリプレグの強化繊維cとしては、炭素繊維でメインパターンに20〜60トン/mm2の弾性率のもの、補強パターンに10〜20トン/mm2の弾性率のものを使用することになる。
【0027】
つぎに、合わせ部Bの一方を構成する元上10の竿元側端部10の外周面に複数個の第1突部9を配置してあるものについて説明する。
図2に示すように、第1突部9は、楕円状の断面を呈するものであり、整列状態に配置してあり、竿元側端部10の外周面からの突出高さを一定に揃えられている。
【0028】
第1突部9の製造工程について説明する。前記した竿先側補強パターン12A、竿元側補強パターン12Bを施した状態で、後記するように、保形用テープ28で竿体全長を緊縛し、その竿体をマンドレル4に取付状態で焼成し、焼成後所定長に裁断し、研磨工程によって仕上加工を施す。
【0029】
図3(b)に示すように、元上10の竿元側端部10Aに対して、紙製のマスキング材13を被覆する。マスキング材13には、多数の貫通孔13aが整列状に配置穿設され、第1突部9の形成に利用される。
図3(b)に示すように、マスキング材13を元上10の竿元側端部10Aに装着し、吹き付けガン14によって、吹き付け塗装を行うことができる。吹き付けガン14によって、樹脂塗料をマスキング材13に吹き付けることによって、マスキング材13の貫通孔13aを通して元上10の竿元側端部10Aの外周面に第1突部9が形成される。
【0030】
ここで、使用される樹脂塗料は、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂の塗料、または、ウレタン樹脂等に比べて軟質性の高いゴム入りのゴム系塗料が使用される。ゴム系塗料としては、軟質系ポリエステル型ポリウレタン樹脂塗料が使用される。この塗料はカシュウ株式会社製の商品名「セノソフト」「セノソフトII」として市販されているものであり、その他には、藤倉化成株式会社製の商品名「ベルベックス」等、東和ペイント株式会社製の商品名「ANEXTEL」、「ALEXIT」等の超微粒子プラスティック顔料を配合したウレタン樹脂塗料や、出光石油化学株式会社製の商品名「マティロ」等の天然コラーゲン繊維を超微粉化したプロテインパウダーと特殊ウレタン樹脂とを複合化したウレタン樹脂塗料等が該当する。これらの塗料は、感触が軟らかくかつ弾力性を有している。また、艶消し効果が大きく、均一の艶消し状態が得られる。更に、耐傷つき性や耐磨耗性が高く強靭で可撓性に富んでいる。耐水性、耐油性等に優れている。
ただし、ウレタン樹脂塗料からなる第1突部9とゴム系塗料からなる第2突部17を混在させる構成を採ってもよい。つまり、ゴム系塗料に比べて硬質なウレタン樹脂塗料を先行して施工し、その後に、比較的軟らかいゴム系塗料を施工する。
【0031】
具体的には、まず、図4(a)に示すように、前記したマスキング材13でウレタン樹脂塗料を施して第1突部9を形成する。この第1突部9を形成した層を第1突部層と称する。次に、前記したマスキング材13とは、貫通孔の位置や整列状態、貫通孔16aの孔径などが異なる第2のマスキング材16を介して、ゴム系塗料を施して新たな第2突部17を形成する。この新たな第2突部17を形成した部分を第2突部層と称する。
このような施工方法を採ることによって、図4(b)に示すように、ウレタン樹脂塗料製の第1突部9とゴム系塗料製の第2突部17とが、一部重なり合い、一部は並列状態で施工されることとなり、ウレタン樹脂塗料製の第1突部9とゴム系塗料製の第2突部17とが混在した新たな合わせ部Bを提供できる。
【0032】
次に、元竿11の製造方法について説明する。
図5(a)に示すように、マンドレル4に離型材としてのワックス22を塗布するとともに、図5(b)に示すように、この上から離型用のポリエステルテープ23をそのテープ23の側面同士が接触する状態に密巻きする。
ワックス22及び離型用のポリエステルテープ23を施す部位は、元竿11の竿先側端部11Aに限定してもよい。
【0033】
この状態から図5(c)に示すように、凹入部形成用テープ24を芯金軸芯方向に所定間隔を持って巻回するようにしてある。この凹入部形成用テープ24は基材が布であり、細いマンドレル4へも適用できるように柔軟性、凹面の精度を維持する為の耐熱性、芯金軸芯方向での所定間隔の精度を維持する為の無延伸性、を備えることが要求される。
【0034】
図5(d)に示すように、更に、凹入部形成用テープ24の上より、離型用のポリエステルテープ25をそのテープ25の側面同士が接触する状態に密巻きする。これによって、凹入部形成用テープ24の剥離が容易になる。
この凹入部形成用テープ24を巻回したものに油性ワックス26を塗布し、凹入部形成用テープ24の剥離を良好に行えるようにするとともに、凹入部形成用テープ24が施されていない竿内面部に油性ワックス26を残して撥水性を付与するようにしてある。
【0035】
この状態より、図6(a)に示すように、周方向に配した炭素繊維に樹脂を含浸させたシート状プリプレグをテープ状に成形し、そのテープ27Aを側面同士が接触する状態に密巻きして、最内層を形成する。
【0036】
これより更に、図6(b)に示すように、前後端部を形成するプリプレグパターン27aを巻回した後、図6(c)に示すように、炭素繊維を軸芯方向に配したプリプレグテープ27Bを、その側面同士が接触する状態になるように密巻きして、第2層を形成する。そして、さらに、周方向に炭素繊維を配したプリプレグテープ27Cと軸芯方向に炭素繊維を配したプリプレグテープ27Dを巻回して第3層及び第4層を形成し、4層構造の竿素材27を形成する。
【0037】
このような竿素材27の上から、図6(d)に示すように、保形用テープとしてのポリエステルテープ28を巻回して、図7(a)に示すように、焼成し、図7(b)に示すように、焼成後ポリエステルテープ28を剥離し、図7(c)に示すように、離型用テープ23,25とともに凹入部形成用テープ24を取り外す。これによって、元竿11の竿先側端部11Aの内周面に螺旋状の凹入部11aを有する竿素材27を形成することができる。
【0038】
以上のような構成により、図1(b)及び図2に示すように、元上10を元竿11より引き出した伸長状態においては、元上10の竿元側端部10Aの第1突部9を形成した外周面部分が、元竿11の竿先側端部11Aの凹入部11aを形成した内周面に当接し、元上10の伸長状態を維持するように構成してある。
【0039】
ここに凹入部11aの竿軸芯方向に沿った横幅W1を、第1突部9の楕円断面の長径W2より短い幅のもの設定して第1突部9が凹入部11a内に入り込まないように構成してあり、かつ、第1突部9の元上10の竿元側端部10Aの外周面からの突出量を、元竿11の竿先側端部11Aの内周面に圧接できるだけの突出量に設定してある。
【0040】
つまり、図示はしていないが、元上10を元竿11から所定長さだけ引き出した基準状態において、元上10の竿元側端部10Aの外周面から突出された第1突部9群の突出端同士を結んでできる仮想円の外径を、前記第1突部9群が当接することが予定されている元竿11の竿先側端部11Aの内周面の内径と同一径か僅かに大きな径に設定してある。
【0041】
このように構成することによって、元竿11より元上10を所定量だけ引き出した場合に、第1突部9群が元竿11の竿先側端部11Aの内周面に当接し、又は、第1突部9群が僅かに撓んで圧接し、元上10の伸長状態が維持される。
【0042】
以上のように、合わせ部Bの構成について説明した。ここでは、本願発明の構成が、合わせ部Bの固着現象を有効に回避できた点について、テストを行っているので、次に説明する。
表1〜4のデータを得るテスト装置が図8に示してあり、小径竿体としての元上10を大径竿体としての元竿11に嵌合させて、元竿11を吊り下げ支持する。元竿11と元上10の嵌合力は当初5kgに設定されている。
元竿11に対して錘Whを高さHから落下させ、元竿11に形成した受止フランジ11Dに受け止めさせた状態での元竿11の移動量Lを測定したのが、表1から4のデータである。
【0043】
錘Whの落下量を80mm〜180mmまで段階的に変化させて移動量(短縮寸法)L1を測定し、その移動状態から錘Wh=1Kgを落下させる前の初期状態に復帰させることができるかどうかを測定したものである。
つまり、測定する寸法は、1kgfの静荷重を加えて元上10を元竿11から引き出した状態の合わせ部Bの寸法(落下前寸法)L2と、所定の高さから錘Whを落下させた場合に移動した元竿11の移動した寸法(短縮寸法)L1と、両寸法から算出される落下後の合わせ部Bの寸法(落下後寸法)L3である。
【0044】
伸長状態から初期状態に復帰させることができるか否か、いわゆる固着状態に陥っていないかどうかを測定したもので、いずれも、もとの状態に復帰させるのに困難はなく、固着状態には陥ることが少ない合わせ部Bを提供できたことが分かる。
【0045】
テストに使用した釣り竿としては、突部9、17を形成した元上10と凹入部11aを形成した元竿11とからなる本発明品の釣り竿を使用した。尚、前記突部は、ウレタン樹脂塗料製の第1突部9とゴム系塗料製の第2突部17とが混在したものである。
従来品(塗装突部品)の竿としては、合わせ部Bを構成するのに、図12に示すように、元上10の竿元側端部10Aの外周面に樹脂製塗料を吹き付けて多数の第1突部9を形成した部分とその部分より竿先側に柔軟性の高い熱可塑性樹脂繊維を亀の子状に配置したプリプレグを巻回したものを有する竿を使用している。
【0046】
また、テストの方法として、ズーム耐久テストを行う前にデータを採取し、その後ズーム耐久テストを行い、ズーム耐久テストを行った後に再度同様のテストを行いそのデータを採取することとした。
ズーム耐久テストとは、元上10を元竿11内に収縮する状態と元上10を元竿11から引き出す状態を繰り返し行うことを言い、人為的に元上10を伸縮操作することによって行うものである。
【0047】
判定記号の意味は次のようなものである。
○・・・・楽に元の状態に戻せる
△・・・・固着があって硬くなっているが、元の状態に戻せる
×・・・・固着しているので、人力では戻せない(治具を使用すれば戻せる)
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
落下テストの評価としては、次のようになる。ズーム耐久テスト前の従来品においては、錘Whの落下距離として180mmの場合に、固着現象が起こっている。ズーム耐久テスト後においては、錘Whの落下距離として130mmの時点で既に固着現象が始まっている。したがって、以後の落下距離のテストは行っていない。
【0053】
これに対して、本発明品のテストでは、ズーム耐久テスト前では、錘Whの落下距離が270mmでも、楽に戻すことができ、ズーム耐久テスト後であっても、落下距離270mmでも戻し難い状態になっているだけで戻せないわけではない。
以上のところから、本発明品の固着現象に対する改善度が確認できる。
【0054】
〔第2実施形態〕
ここでは、第1突部9を形成する対象となる元上10の竿元側端部10Aに、バイアス式のプリプレグを配置してある形態について説明するが、第1実施形態と異なる点を主として説明する。
図9に示すように、マンドレル4に対して口巻補強パターン5を施してある。口巻補強パターン5は、竿軸線Xに対して第4傾斜角θ4だけ傾斜させて引き揃えた炭素繊維等の強化繊維cに対して、マトリックス樹脂としてのエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成した上側プリプレグと、強化繊維cの引き揃え向きを、上側プリプレグの強化繊維cと竿軸線Xを挟んで対称に配置して形成した下側プリプレグとを重ね合わせたバイアス式の重合体である。
【0055】
図9(b)に示すように、口巻補強パターン5を施したマンドレル4に対して、強化繊維cを周方向に引き揃えた第1プリプレグテープ1を第1層Aaとして螺旋状に巻回する。
図9(c)に示すように、第1プリプレグテープ1の上から二枚のメインパターンを施す。第1メインパターン2Aは強化繊維cを竿軸線Xに沿って引き揃えたプリプレグで、第2メインパターン2Bも同一のプリプレグである。
これら二枚のプリプレグを重ねた状態でマンドレル4に巻回するか、または、順番に巻回することによって、第2層Abを構成する。
【0056】
図9(d)に示すように、二枚のプリプレグを重ねた状態でその上から更に強化繊維cを周方向に引き揃えた第2プリプレグテープ3を第3層Acとして螺旋状に巻回する。
第2プリプレグテープ3を巻回した後に、外側竿元補強パターン6を巻回する。つまり、竿元補強パターン6は、竿軸線Xに対して第3傾斜角θ3だけ傾斜させて引き揃えた炭素繊維等の強化繊維cに対してエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成した上側プリプレグ6Aと、強化繊維cの引き揃え向きを、上側プリプレグ6Aの強化繊維cと竿軸線Xを挟んで対称に配置して形成した下側プリプレグ6Aとを重ね合わせたバイアス式重合体である。
【0057】
図10に示すように、バイアス式の外側竿元補強パターン6を施すことによって、元上10の竿元側端部10Aの外周面を元竿11の竿先側端部11Aの内周面に圧接させて振出竿を伸長状態に保持した場合に、強化繊維cを竿軸線Xを挟んで対称に配置しているので、それらの強化繊維cが竿軸線Xに沿った荷重、及び、竿軸線Xに直交する荷重のみならず、竿軸線Xに傾斜する荷重に対しても対抗力を発揮し、合わせ部位での対剪断力を強化する。
【0058】
以上のように構成された元上10の外側竿元補強パターン6の上から、図3で示したように、吹き付け塗装によって第1突部9を形成する。また、第1突部9としては、第1突部層と第2突部層との二種の突部9,17を混在させる構成であってもよい。
【0059】
〔第3実施形態〕
元上10の竿元側端部10Aの外周面に、異なる種類のプリプレグを施す形態について説明する。第2実施形態と異なる部分について主として説明する。
図11(a)(b)に示すように、口巻き補強パターン5と内側竿元補強パターン7とをマンドレル4に巻回するとともに、マンドレル4に巻回した口巻き補強パターン5及び内側竿元補強パターン7の上から第1層Aaとしての第1プリプレグテープ1を巻回する。
【0060】
内側竿元補強パターン7の構成としては、口巻き補強パターン5と同様の構成を採る。つまり、内側竿元補強パターン7は、竿軸線Xに対して第1傾斜角θ1だけ傾斜させて引き揃えた炭素繊維等の強化繊維cに対してエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成した上側プリプレグと、強化繊維cの引き揃え向きを、上側プリプレグの強化繊維cと竿軸線Xを挟んで対称に配置して形成した下側プリプレグとを重ね合わせたバイアス式重合体である。
【0061】
図11(c)に示すように、第1プリプレグテープ1の上から二枚のメインパターンを施す。第1メインパターン2Aは強化繊維cを竿軸線Xに沿って引き揃えたプリプレグで、第2メインパターン2Bも同一のプリプレグである。
これら二枚のプリプレグを重ねた状態でマンドレル4に巻回するか、または、順番に巻回することによって、第2層Abを構成する。第2メインパターン2Bの上から中間竿元補強パターン8を巻回する。
【0062】
中間竿元補強パターン8の構成としては、内側竿元補強パターン7と同様の構成を採る。つまり、中間竿元補強パターン8は、竿軸線Xに対して第2傾斜角θ2だけ傾斜させて引き揃えた炭素繊維等の強化繊維cに対してエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成した上側プリプレグと、強化繊維cの引き揃え向きを、上側プリプレグの強化繊維cと竿軸線Xを挟んで対称に配置して形成した下側プリプレグとを重ね合わせたバイアス式重合体である。
【0063】
さらに、図11(d)に示すように、第3段として第2メインパターン2B及び中間竿元補強パターン8の上から外側層としての第2プリプレグテープ3を巻回し、第2プリプレグテープ3の上から外側竿元補強パターン6を巻回するようにしてある。
【0064】
外側竿元補強パターン6の構成としては、次ぎのようなものである。
第3実施形態においては、外側竿元補強パターン6としては、強化繊維cを竿軸線Xに対して傾斜させて形成したプリプレグをその強化繊維cが互いに交差する状態となるように重ね合わせた上側プリプレグ6Aと下側プリプレグ6Aとからなる重合体を使用する。
ここでは、重合体6Aとともに、次ぎのような補助シート6Bを重ね合わせて使用するようにする。
【0065】
つまり、図12(c)に示すように、補助シート6Bは、炭素繊維等の強化繊維cを円周方向に引き揃えたものにエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグ6aに、ナイロンやポリエステル等の柔軟性の高い合成樹脂繊維c又は天然繊維cをクロス組したものにエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグ6bを重ね合わせ、炭素繊維等を円周方向に引き揃えたプリプレグ6aが内側となるように、重合体6Aの上から巻回する。
図12(c)に示すように、補助シート6Bの軸線方向に沿った長さは重合体6Aよりは短く、重合体6Aの竿先側に位置するように補助シート6Bを巻回する。
【0066】
以上のように、各パターンを順次マンドレル4に巻回することによって、竿体を構成する。また、各補強パターンにおける強化繊維の傾斜角θは、0°から90°の範囲で設定できるものであるが、望ましくは、45°から80°の範囲に設定するのがよい。さらに、第1傾斜角θ1〜第4傾斜角θ4までの傾斜角を同一角に設定してもよく、各傾斜角を異なる角度に設定してもよい。
【0067】
補助シート6Bにおける竿体の表側に位置するプリプレグ6bについて詳述すると、図12(a)に示すように、プリプレグ6bは柔軟性の高い合成樹脂繊維c又は天然繊維cをクロス編みして、繊維cを亀の子状に配置する形状を呈している。図12(b)に示すように、繊維cに含浸させた樹脂は研磨加工を施して削り取っているので、繊維cだけが表面に表出した状態となっており、亀の子状の凹部が形成されている。
【0068】
したがって、このプリプレグ6bが合わせ部Bの表面に位置して、相手側の合わせ部Bを構成するプリプレグと圧接する状態となっても、亀の子状の凹部の存在によって、水分が介在しても水分は亀の子状の凹部に溜まるだけで圧接状態を強化する方向には作用せず、合わせ部の固着状態が緩和される。
この補助シート6Bは、繊維体にマトリックス樹脂を含浸させてプリプレグとして完成させた後に、重合体6Aの上から巻回し、その状態で焼成して一体化する。
【0069】
図12に示すように、一体化した状態で、補助シート6Bを施した補助シート領域とその竿元側に続く外周面に対して研磨加工を施して、繊維を樹脂部分から浮き立たせるようにする。つまり、補助シート6B部分に研磨加工を施すと、硬い樹脂部分が削り取られ、軟らかい繊維体部分は柔軟性があるので砥石に接触してもその研削作用を受けずに、それから逃げることができる為に繊維体部分に囲まれた部分6cが凹むこととなり、繊維体部分が相対的に表出することとなる。
以上のような補助シート6Bを設けた後に、補助シート6Bより更に竿元側に、前記した第1突部9を形成する。第1突部9の形成方法については、既に、詳述したので、ここでは省略する。
【0070】
ここに、重合体6Aと補助シート6Bとの配置状態について説明する。つまり、図12(c)(d)に示すように、内側に位置する重合体6Aは、合わせ部Bの長さに相当する長さで配置される。これに対して、補助シート6Bについては、重合体6Aより短く、かつ、竿先側に寄った位置に配置されている。このように、重合体6Aを合わせ部Bに相当する長さで設置していても、合わせ部Bの長さよりも短くしてあるので、元上10を元竿11より引き出し操作した場合に、重合体6Aと補助シート6Bの竿先端が元竿11の竿先端よりは突出することはなく、美観の向上を図ることができる。
しかも、重合体6Aを合わせ部Bの竿先側の肩部分に設けてあるので、この部分の強度を向上させることができ、元上10の合わせ部Bにおける竿先側端近傍に発生する「際折れ」と言われている竿の折損を回避できる。
【0071】
以上のような構成になる重合体6Aの上から、前記したように、第1突部9を形成する。第1突部9としては、第1突部層と第2突部層からなる二種類の突部9、17を混在させる構成を採ってもよい。
【0072】
〔第4実施形態〕
ここでは、第3実施形態で記載した第3補強パターン6とは異なる構成となるものについて説明する。ただし、第4実施形態では、第3補強パターン6を施すまでの構成は、第1実施形態で示したものから第3実施形態で示したものまでのものだけに止まらず、他の構成のものについても適用できる。
【0073】
外側竿元補強パターン6の構成としては、次ぎのようなものである。
第3実施形態においては、外側竿元補強パターン6としては、強化繊維cを竿軸線Xに対して傾斜させて形成したプリプレグをその強化繊維cが互いに交差する状態となるように重ね合わせた重合体6Aを使用していた。
ここでは、重合体6Aとともに、次ぎのような補助シート6Bを重ね合わせて使用するようにする。
【0074】
つまり、図13(a)に示すように、補助シート6Bは、炭素繊維等の強化繊維cを円周方向に引き揃えたものにエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグ6aに、ナイロンやポリエステル等の柔軟性の高い合成樹脂繊維c又は天然繊維cをクロス組したものにエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグ6bを重ね合わせ、炭素繊維等を円周方向に引き揃えたプリプレグ6aが内側となるように、重合体6Aの上から巻回する。
図13(b)に示すように、補助シート6Bの軸線方向に沿った長さは重合体6Aよりは短く、重合体6Aの中間位置に位置するように補助シート6Bを巻回する。
【0075】
補助シート6Bを設けた後に、補助シート6Bより竿先側に、前記した第1突部9を形成する。第1突部9の形成方法については、既に、詳述したので、ここでは省略する。補助シート6Bより竿元側においては、重合体6Aがそのまま表出した状態にある。
【0076】
以上のように、外側竿元補強パターン6としては、竿先側から竿元側に向けて、第1突部9を施した突部領域P、柔軟性繊維cを表出させた補助シート領域M、重合体6Aを表出させたバイアス領域Nをその順番に配置して、第1突部9、柔軟性繊維c、重合体6Aの表面を、相手側周面に夫々圧接させた状態で、合わせ部Bを構成する。
【0077】
〔別実施構造〕
(1) 合わせ部Bを構成する対象は、元上10、元竿11以外の中竿等に適用してもよい。
(2) 第1突部9、17を形成する位置は、大径竿体の内周面に設けてもよく、凹入部としては、小径竿体の外周面に設けてもよい。
(3) 第1突部9、17を形成するには、吹き付け方法以外に型を使用した成形方法を使用してもよい。
(4) 第1突部9、17の断面形状としては、楕円以外に円形のもの、または、矩形のもの等制限はなく、かつ、高さも一定のものでなくてもよい。
(5)凹入部11aとしては、螺旋状を呈するものではなく、単に凹入する孔を複数個形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の構成は、振出竿式の渓流竿、鮎竿等に適用可能である。伸縮式ではない振出 竿にも適用できる。
【符号の説明】
【0079】
6 外側竿元補強パターン(竿元補強パターン)
6a、6b 上下プリプレグ
9 第1突部(突部)
10 元上(小径竿体)
11 元竿(大径竿体)
11a 凹入部
17 第2突部(突部)
B 合わせ部
L 突部領域
M 補助シート領域
N バイアス領域
X 竿軸線
θ 傾斜角
c 強化繊維(柔軟性繊維)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小径竿体の外周面と大径竿体の内周面とに亘って形成した合わせ部によって、小径竿体と大径竿体とを伸長状態に保持する振出竿であって、
前記外周面又は前記内周面の一方の周面に、相手側周面に向けて突出する複数個の突部を形成するとともに、前記相手側周面に凹入部を形成して、前記突部と前記凹入部とで前記合わせ部を備えてある振出竿。
【請求項2】
小径竿体の外周面と大径竿体の内周面とに亘って形成した合わせ部によって、小径竿体と大径竿体とを伸長状態に保持する振出竿であって、
前記外周面又は前記内周面の一方の周面に、相手側周面に向けて突出する複数個の第1突部を施して第1突部層を形成するとともに、前記第1突部と一部重なり合う状態でかつ前記第1突部同士の間に第2突部を施して第2突部層を形成し、前記相手側周面に凹入部を形成して、前記第1突部層及び前記第2突部層と前記凹入部とで前記合わせ部を構成してある振出竿。
【請求項3】
前記小径竿体の最外層の外側に竿元補強パターンを配置し、前記竿元補強パターンを、強化繊維群を竿軸線に対して傾斜する傾斜角に沿って引き揃え配置した下側プリプレグと、前記強化繊維群を前記下側プリプレグの強化繊維群と前記竿軸線に対して対称となる状態に引き揃え配置した上側プリプレグとを重ね合わせて構成し、前記上側プリプレグの更に外側に前記複数個の突部を設けてある請求項1記載の振出竿。
【請求項4】
柔軟性繊維をクロスに組み合わせて構成したシート状のものに、マトリックス樹脂を含浸させて形成し前記柔軟性繊維を表出させた補助シート領域と、相手側周面に圧接する複数個の前記突部を突出高さが異なる状態に形成した突部領域とを前記合わせ部に備え、前記突部領域を前記補助シート領域より竿元側に配置してある請求項1記載の振出竿。
【請求項5】
前記小径竿体の最外層の外側に竿元補強パターンを配置し、前記竿元補強パターンを、前記上側プリプレグと下側プリプレグとを重ねたバイアス領域と、複数個の高さの異なる前記突部を形成した突部領域と、前記柔軟性繊維を組み合わせた前記補助シート領域とで構成し、前記小径竿体の最外層に前記突部領域を配置するとともに、前記突部領域の竿元側に前記補助シート領域と前記バイアス領域とをその順番に配置してある請求項1記載の振出竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−193786(P2010−193786A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42557(P2009−42557)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】