説明

振動ヘアブラシ

【課題】超音波振動の分布の中心、すなわち、超音波音軸の位置と機械的振動の分布の中心とを互いに近接、好ましくは一致させ、マッサージ効果に偏りのない振動ヘアブラシを提供することを課題とする。
【解決手段】支持体3の中央部に振動子10が配され、上記支持体3と平行な板面をなし支持体の板面に対する上記振動子10の領域よりも外方に位置する外周縁を有する剛性伝達板7がその板面で上記支持体3と一体をなすように該支持体3に取り付けられ、該剛性伝達板7の一部から延びる取付部7Bに振動モータ11が取り付けられ、上記剛性伝達板7の中心軸線が振動子10の超音波音軸と平行で、かつ上記振動子10の領域内に位置しており、好ましくは、剛性伝達板7の中心軸線は超音波音軸と一致して位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシのボディ内に超音波振動源と機械的振動源とを内蔵し、ブラシ条体が両振動源により複合振動する振動ヘアブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波振動源と機械的振動源とを有し、両振動源によりブラシ条体が複合振動する振動ヘアブラシは、例えば、特許文献1にて知られている。この特許文献1では、機械的振動を頭皮表層に、超音波振動を頭皮内部にその深さ方向で伝達させて、両振動の相乗効果により広範囲で高いマッサージ効果を得ることが開示されている。
【0003】
特許文献1の振動ヘアブラシの一部を図7(A)に示す。同図に示すように、振動ブラシ51のボディ52に取り付けられ複数のブラシ条体53が形成されている板状の支持体54がボディ52の内部空間を閉塞するように該ボディ52に取り付けられている。超音波振動源55および機械的振動源56は上記支持体54の内面に取り付けられて上記ボディ52の内部空間内に収められている。両振動源55,56は、物理的に同一位置には配設できないため、上記支持体54の内面上で互いに離れた位置にある。つまり、支持体54の板面に対して直角な、超音波振動源55の中心軸線57と機械的振動源56の中心軸線58は離れて位置している。
【0004】
図7(B)は、横軸で上記支持体上の対応位置、縦軸で振動の強度(パワー)を示した、両振動源55,56による振動の強度分布図である。同図において、超音波振動の強度分布59の中心軸線60および機械的振動の強度分布61の中心軸線62を一点鎖線で示す。ここで、強度分布の中心軸線とは、図7(B)に示す強度分布図において、振動の強度が最大となる領域の中心を通る線をいう。図7(A)に示す超音波振動源55の中心軸線57は超音波振動の強度分布59の中心軸線60と、機械的振動源56の中心軸線58は機械的振動の強度分布61の中心軸線62と、上記横軸方向での位置が対応している。
【0005】
両振動源55,56の振動変位方向が共に支持体54の板面に対して直角な方向であり、かつ、両振動源55,56の振動の中心軸線が互いに平行であっても、図7(B)に示すように、超音波振動の強度分布59の中心軸線60と機械的振動の強度分布61の中心軸線62が離れているため、両振動が複合された振動の様子は支持体54の中央に対して対称とはならない。換言すれば、超音波振動の領域の中心と機械的振動の領域の中心とが離れて別の位置に中心軸線をもつ振動強度分布を形成することとなる。
【特許文献1】特開2004−065914
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の振動ヘアブラシにあっては、図7(B)に見られるように、超音波振動の領域と機械的振動の領域とが偏在しているので、互いにマッサージ効果に差が生じてくる。機械的振動の領域は、比較的広い範囲に強度分布が及んでいるが、超音波振動はその分布が狭い範囲に集中してビームをなし、このビームの中心軸線は超音波音軸と称されている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、超音波振動の分布の中心、すなわち、超音波音軸の位置と機械的振動の分布の中心とを互いに近接、好ましくは一致させて複合振動を有効に生じさせることにより、マッサージ効果に偏りのない振動ヘアブラシを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る振動ヘアブラシは、超音波振動源と機械的振動源とをブラシのボディの内部空間に内蔵し、ボディの上記内部空間を閉塞する板状の支持体がその板厚方向で弾性撓み可能に上記ボディに取り付けられ、該支持体の内面に上記超音波振動源と機械的振動源とが取り付けられ、上記支持体の外面から複数のブラシ条体が延出して設けられている。
【0009】
かかる振動ヘアブラシにおいて、本発明では、支持体の中央部に超音波振動源が配され、上記支持体と平行な板面をなし支持体の板面に対する上記超音波振動源の領域よりも外方に位置する外周縁を有する剛性伝達板がその板面で上記支持体と一体をなすように該支持体に取り付けられ、該剛性伝達板の一部から延びる取付部に機械的振動源が取り付けられ、上記剛性伝達板の中心軸線が超音波振動源の超音波音軸と平行で、かつ上記超音波振動源の領域内に位置していることを特徴としている。
【0010】
このような構成の振動ヘアブラシでは、超音波振動源の中心軸線は支持体の中央部を通っている。そして、剛性伝達板の中心軸線は該超音波振動源の領域内に位置するので、剛性伝達板の中心軸線は、支持体の中央部付近にて、超音波振動源の中心軸線と平行で、かつ近接して位置することとなる。したがって、機械的振動源が発生させる機械的振動によって剛性伝達板がその板厚方向に振動すると、この機械的振動の強度分布の中心軸線は、超音波振動の強度分布の中心軸線、すなわち超音波音軸と平行で、かつ近接して位置する。これによって、超音波振動と機械的振動の複合振動の強度分布は、超音波音軸および機械的振動の強度分布の中心軸線に対してほぼ対称となる。
【0011】
剛性伝達板の中心軸線は超音波振動源の超音波音軸と一致して位置していることが好ましい。これによって、超音波音軸と機械的振動の強度分布の中心軸線とが一致して位置することとなるので、複合振動の強度分布を、これらの中心軸線に対して、より対称に近づけることができる。
【0012】
ブラシ条体は、超音波振動源の範囲に相当する中央範囲に分布する第一ブラシ条体と、該中央範囲よりも外周の範囲に分布する第二ブラシ条体を有し、第二ブラシ条体の素径は、第一ブラシ条体よりも小径に形成されていることが好ましい。ブラシ条体は、その先端部で使用者の頭皮に接触して、超音波振動および機械的振動を伝達する。機械的振動は超音波振動と比較して低周波の振動であるので、使用者の頭皮はその振動を敏感に感じやすく、その振動の刺激を受けやすい。そこで、素径が第一ブラシ条体よりも小径で形成され第一ブラシ条体よりも柔らかく弾力性を有する第二ブラシ条体を超音波振動源の範囲よりも外周の範囲に設けることにより、機械的振動が頭皮に過度に伝達されることを回避できる。一方、第一ブラシ条体は、第二ブラシ条体よりも大径に形成されており、主に超音波振動を頭皮に伝達する。このように、支持体における領域で伝達される振動の種類に対応させて第一ブラシ条体および第二ブラシ条体を支持体に設けることにより、マッサージ効果を最大限に発揮させることができる。
【0013】
第二ブラシ条体の分布範囲よりも外周の範囲における支持体の外面から複数の掻き条体が延出して設けられており、上記掻き条体は、該掻き条体の軸線に直角な断面が上記支持体の中心に向け長い形状をなしていることが好ましい。第二ブラシ条体の分布範囲よりも外周の範囲には超音波振動源および機械的振動源は位置しておらず、この範囲では各振動源による振動がほとんど伝達されてこない。したがって、把持部を有するボディには不快な振動が伝達されない。掻き条体は、使用者の手による掻き動作に用いられる。上記掻き条体は、該掻き条体の軸線に直角な断面が短い方向で曲がりやすくなっている。このように特定の方向で曲がりやすくすることにより、柔らかでかつ腰のある弾力性が得られる。したがって、超音波振動および機械的振動が及ばない範囲においても、上記形状の掻き条体に、使用者による掻き動作を伝達させることによって洗髪機能を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上説明したように、機械的振動源の振動を支持体に設けられたブラシ条体へ伝達する剛性伝達板を、支持体の板面に対する上記超音波振動源の領域よりも外方に位置する外周縁を有するように形成そして位置づけたので、機械的振動源の振動強度分布の中心軸線と超音波音軸とが近接して位置する。これによって、複合振動を良好に得られると共に、超音波音軸および機械的振動の強度分布の中心軸線、ひいては支持体の中心軸線に対して偏りのない、ほぼ対称な振動強度分布をもつようになり、マッサージ時あるいは洗髪時に両振動を効果的に頭皮に伝達する。また、機械振動源の振動強度分布の中心軸線と超音波音軸とが一致するよう、剛性伝達板を形成そして位置づけることにより、複合振動の振動強度分布を超音波音軸および機械的振動の強度分布の中心軸線に対してさらに対称に近づけて、より効果的に振動を頭皮に伝達させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
<第一実施形態>
図1(A)は本発明の一実施形態としての振動ヘアブラシの正面断面図、図1(B)は振動ヘアブラシによる振動の強度分布図、図2は図1(A)におけるII−II断面図、図3は図1(A)におけるIII−III断面図、図4は振動ヘアブラシの底面図である。振動ヘアブラシ1は、椀状に成形されたボディ2、後述のブラシ条体4および掻き条体5が外面に設けられ、上記ボディ2の内部空間を閉塞するよう取り付けられた略板状の支持体3、ボディ2の内部空間に内蔵され後述するような振動を発生する振動発生部6、振動発生部6が発生する振動を支持体3に設けられたブラシ条体4へ伝達するように支持体3の内面に取り付けられた剛性伝達板7を有する。
【0017】
ボディ2は、例えばプラスチック材料を成形して作られ、椀を伏せたような形状をしており、その上面には図2に示すように、略L字形状の把持部2Aが設けられている。円板状の支持体3は、その板厚方向で弾性撓み可能にボディ2の周端縁に取り付けられ、該ボディ2の内部空間を閉塞している。後述するように、支持体3の外面には、その中央部に複数のブラシ条体4、該ブラシ条体4の分布範囲よりも外周の範囲には掻き条体5が延出して設けられている。なお、振動ヘアブラシ1は、風呂場等の水気のある場所での使用を可能とするために、支持体3で閉塞されるボディ2の内部空間が水密構造となっている。
【0018】
ボディ2の内部空間に内蔵される振動発生部6は、使用者により電源投入操作を受ける電源スイッチ8、電源スイッチ8の電源投入によって高周波信号を発生する高周波発信器9、高周波発信器9が発生させた高周波信号に基づき支持体3の板厚方向で超音波振動を発生させる超音波振動源としての振動子10、電源スイッチ8の電源投入により機械的振動を発生させる機械的振動源としての振動モータ11を有する。なお、電源スイッチ8は、押圧操作可能な押しボタン8Aを有し、該押しボタン8Aの上部がボディ2の上面に形成された孔部から水密状態で突出しており、使用者による電源投入のための押圧操作を受け付ける。
【0019】
剛性伝達板7は、金属板から形成されており、図3にて破線で示すように、略円板状をなす円板部7Aと、図1(A),図2および図3に示すように、該円板部7Aの外縁の一部から該円板部7Aの板厚方向で上方に延びる取付部7Bとを有している。剛性伝達板7の円板部7Aは、支持体3と中心同士が一致して位置するように支持体3の内面中央部に配され、該支持体3と一体をなすように取り付けられている。
【0020】
振動子10は、剛性伝達板7の円板部7Aよりも小径の円板状をしており、その中心が該円板部7Aの中心と一致して位置するように該円板部7Aの上面に配されて取り付けられている。本実施形態では、セラミックス製の振動子10を金属製の剛性伝達板7の円板部7Aに取り付けるので、振動子10と円板部7Aとの接着性は良好となる。このように配された剛性伝達板7の円板部7Aおよび振動子10の中心軸線の位置は一致している。
【0021】
振動子10は、支持体3の板厚方向(図1に示すZ方向)での振動を発生させる。以下、説明の都合上、図1における紙面に直角な方向をY方向、Y方向およびZ方向に直角な方向(紙面の左右方向)をX方向として、立体空間座標軸系を設定した。
【0022】
振動モータ11は、図1に見られるように、剛性伝達板7の取付部7Bの外側面に取り付けられている。図2に示すように、該振動モータ11は、モータ本体11Aと、Y方向で該モータ本体11Aから突出する回転軸体11Bと、該回転軸体11Bに偏心して取り付けられた重錘11Cとを有している。重錘11Cの偏心状態は図1に良く見られる。回転軸体11Bがその軸線まわりに回転すると、重錘11Cの振れまわり回転により、X方向およびZ方向での振動が発生する。
【0023】
図4に示すように、支持体3の外面には、複数のブラシ条体4が中央部に、該ブラシ条体4の分布範囲よりも外周の範囲には複数の掻き条体5が設けられている。ブラシ条体は4および掻き条体5は、例えば、熱可塑性エラストマーで形成されており、撓み可能となっている。
【0024】
ブラシ条体4は、該ブラシ条体4が配された範囲の中央部に設けられた第一ブラシ条体4Aと、該第一ブラシ条体4Aの分布範囲よりも外周の範囲に設けられた第二ブラシ条体4Bとの二種を有する。第一ブラシ条体4Aが設けられる領域は、図1(A)および図2に示すように、支持体3の板面における超音波振動源の領域に対応している。また、第二ブラシ条体4Bが設けられる領域は、図1(A)および図2に示すように、支持体3の板面における剛性伝達板7の円板部7Aの領域よりも若干大きい径の外縁を有する円環状の領域に対応している。
【0025】
ブラシ条体は、図4に示すように、該ブラシ条体4(4Aおよび4B)の軸線方向に直角な断面が円形をなしている。また、第二ブラシ条体4Bは、第一ブラシ条体4Aより小径に形成されている。このように、本実施形態では、第二ブラシ条体4Bを第一ブラシ条体4Aより小径に形成して第一ブラシ条体4Aより柔らかく弾力性を有するようにしたので、ブラシ条体4が使用者の頭皮に当接したときに、超音波振動よりも頭皮で敏感に感ずる低周波である機械的振動が過度に頭皮に伝達されることを回避できる。
【0026】
掻き条体5は、図4に示すように、該掻き条体5の軸線方向に直角な断面が支持体3の中心に向け長くなっている略楕円形状をなしている。このように、本実施形態では、超音波振動および機械的振動が伝達されにくい第二ブラシ条体4Bの分布範囲よりも外周の範囲に上記複数の掻き条体5を設けたので、使用者の手によって該掻き条体5による洗髪時の掻き動作も行うことができる。
【0027】
該掻き条体5の軸線に直角な断面は、上述のように、略楕円形状をしており、該楕円の短径方向で曲がりやすくなっている。これによって、掻き条体5は柔らかでかつ腰のある弾力性を有することとなり、使用者の頭皮を効果的にマッサージできるようになっている。本実施形態では、掻き条体の断面形状は楕円としたが、該掻き条体の断面形状はこれに限られず、例えば、長円形状などであってもよい。すなわち、掻き条体の軸線に直角な断面が上記支持体の中心に向け長い形状をしていればよい。なお、本実施形態では、掻き条体5は、第二ブラシ条体4Bよりも大きな断面積を有し、あるいは大径に形成されていて、第二ブラシ条体4Bよりも剛性が高くなっている。
【0028】
振動ヘアブラシ1の使用者は、該振動ヘアブラシ1の電源を投入してブラシ条体4を振動させた状態で把持部2Aを把持し、ブラシ条体4および掻き条体5を頭皮に当接させあるいは同時に梳き動作を行う。そして、ブラシ条体4の振動を頭皮に伝達させることにより頭皮のマッサージを行う。上述のような構成の振動ヘアブラシ1は以下の要領で振動を伝達する。使用者により電源スイッチ8の押しボタン8Aが押圧されて電源が投入されると、高周波振動発信器9が高周波信号を発生させ、この高周波信号に基づいて振動子10が支持体3の板厚方向、すなわちZ方向で超音波振動を発生させる。また、上記電源の投入によって、振動モータ11が回転し、X方向およびZ方向で低周波の機械的振動を発生させる。
【0029】
剛性伝達板7は、支持体3に対して広い面積で接面して該支持体3と一体的をなすように取り付けられており、また、該剛性伝達板7の端縁が半径方向でも支持体3に当接してこの方向でもしっかりと固定されている。上述したように、機械的振動は振動モータ11の回転によりX方向およびZ方向で発生するが、支持体3はZ方向に比しX方向での剛性がきわめて高いので、X方向での機械的振動のブラシ条体4への伝達量は無視できる程度に小さい。支持体3はその板厚方向、すなわちZ方向においては弾性撓み変形が可能であるので、Z方向での機械的振動は第一ブラシ条体4Aおよび第二ブラシ条体4Bへ伝達される。つまり、剛性伝達板7がブラシ条体4へ伝達するのはZ方向の振動のみである。そして、振動子10が発生させたZ方向の超音波振動と振動モータ11が発生させたZ方向の機械的振動とが複合されて、ブラシ条体4に伝達される。
【0030】
振動子10による超音波振動は支持体3の板面方向に対する振動子10の領域で伝達される。すなわち、超音波振動は、主に第一ブラシ条体4Aに伝達される。一方、振動モータ11による機械的振動は支持体3の板面に対する剛性伝達板7の円板部7Aの領域で伝達される。すなわち、機械的振動は、第一ブラシ条体4Aおよび第二ブラシ条体4Bに伝達される。機械的振動は第一ブラシ条体4Aにも伝達されるが、第一ブラシ条体4Aは設けられている範囲が狭く、また、その数が少ないので、該第一ブラシ条体4Aにより頭皮へ伝達される機械的振動のエネルギ伝達量は然程大きくならない。したがって、第一ブラシ条体4Aの素径が大径であっても、頭皮への伝達振動が強過ぎるという問題は生じ得ない。なお、図1に示すように、第二ブラシ条体4Bは円板部7Aの領域から若干はみ出して設けられているが、機械的振動は低周波であるので、超音波振動と異なりZ方向での振動は集中性が高いわけではなく周囲にも伝わるので、該機械的振動は円板部7Aの外方近傍の領域でも伝達される。したがって、機械的振動は第一ブラシ条体4Aと第二ブラシ条体4Bを含む全域で伝達されることとなる。
【0031】
振動ヘアブラシ1における超音波振動および機械的振動の強度分布は、図1(B)に示すような曲線を描く。同図において、横軸はX方向での位置、縦軸は振動の強度を示している。該横軸で示される位置は、図1(A)に示す支持体3のX方向での位置と対応している。なお、本実施形態では、X方向の位置について強度分布を示したが、この強度分布は周方向のどの位置でも同じであり、図1(B)に示した強度分布と同様の分布が得られる。
【0032】
図1(B)に示すように、超音波振動強度を示す曲線20は、第一ブラシ条体4Aの領域で最大となり、振動子10の中心を通る中心軸線に対して対称となっている。一方、機械的振動の強度を示す曲線21は第二ブラシ条体4Bの広い領域で最大となっており、剛性伝達板7の円板部7Aの中心を通る中心軸線に対して対称となっている。
【0033】
上述したように、振動子10の中心および円板部7Aの中心は、支持体3の中心と一致して位置しているので、振動子10の中心軸線および円板部7Aの中心軸線は、支持体3の中心軸線と一致して位置している。したがって、超音波振動と機械的振動の複合振動の強度分布は、図1(B)に見られるように、支持体3の中心に対して半径方向で対称であり、また、該支持体3の周方向で均一となっている。この複合振動の強度分布は、支持体3の板面において、該支持体3の中心部で最大となり、半径方向に広がるにしたがって小さくなるような分布となる。このように、超音波振動および機械的振動の双方の強度分布が同一位置の中心軸線に対して対称となるようにして複合振動を偏りなく伝達させることにより、双方の振動は効果的に頭皮に伝達されマッサージの効果が向上する。
【0034】
本実施形態では、超音波振動の超音波音軸と機械的振動の中心軸線とを完全に一致させたが、これらの中心軸線を一致させなくとも、機械的振動の最大強度領域内に超音波振動の領域が存在していればよい。例えば、剛性伝達板7の中心軸線が振動子10の領域内に位置するように振動子10および剛性伝達板7を配置して、これらの軸線同士を互いに近接させてもよい。これによっても、超音波振動および機械的振動の複合振動の強度分布は、これらの中心軸線に対してほぼ対称となるので、支持体3の半径方向および周方向における振動の伝達の偏りも少なく、複合振動は十分効果的に頭皮に伝達され、良好なマッサージ効果が得られる。
【0035】
また、本実施形態では、支持体3の外面において、第二ブラシ条体4Bは、該第二ブラシ条体4Bよりも剛性の高い第一ブラシ条体4Aおよび掻き条体5により、支持体3の半径方向で挟まれて分布するように設けられている。これによって、振動ヘアブラシ1の使用の際、第一ブラシ条体4Aおよび掻き条体5が支柱のように作用するので、ブラシ条体4および掻き条体5を強く頭皮に当接させても、第二ブラシ条体4Bが塑性変形してしまうことはない。
【0036】
<第二実施形態>
本実施形態は、剛性伝達板が中央に孔を有し円環状をなしている点で、剛性伝達板が円板状をなす第一実施形態と異なる。以下、第一実施形態との相違点を中心に本実施形態を説明する。図5は本発明の他の実施形態としての振動ヘアブラシの側面断面図、図6は図5の高周波発信器の図示を省略した状態でのVI−VI断面図である。図5および図6において、第一実施形態と対応する部分には、第一実施形態での符号に30を加えた符号を付している。
【0037】
本実施形態では、金属板から形成される剛性伝達板37は、図6にて破線で示すように、中央に孔が形成されて略円環状をなす円環部37Aと、図5および図6に示すように、該円環部37Aの外延の一部から該円環部37Aの板厚方向で上方に延びる取付部37Bとを有している。剛性伝達板37は、支持体33の中心と剛性伝達板37の円環部37Aの中心が一致して位置するように支持体33の内面中央部に配され、該支持体33と一体をなすように取り付けられている。
【0038】
セラミックス製の振動子40は、剛性伝達板37の円環部37Aの孔の内径よりも小径の円板状をしており、該円環部7Aの中心と振動子40の中心とが一致して位置するように支持体33の内面に配されて取り付けられている。すなわち、剛性伝達板37Aの円環部37Aの中心軸線および振動子40の中心軸線は、互いに平行であり、それらの位置は一致している。そして、振動子40は剛性伝達板37の孔の内径領域に位置している。
【0039】
本実施形態に係る振動ヘアブラシ31では、振動子40は剛性伝達板37にではなく支持体33に直接取り付けられる。これによって、振動子40により発生するZ方向の超音波振動は剛性伝達板37を介さずに、支持体33に設けられた第一ブラシ条体34Aに伝達される。したがって、第一実施形態に係る振動ヘアブラシ1と比較して、超音波振動は、剛性伝達板37によって減衰しない分、より良好に第一ブラシ条体34Aに伝達され、マッサージ効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】(A)は、第一実施形態に係る振動ヘアブラシの正面断面図であり、(B)は、該振動ヘアブラシによる振動の強度分布図である。
【図2】図1(A)におけるII−II断面図である。
【図3】図1(B)におけるIII−III断面図である。
【図4】第一実施形態に係る振動ヘアブラシの底面図である。
【図5】第二実施形態に係る振動ヘアブラシの側面断面図である。
【図6】図5の高周波発信器の図示を省略した状態でのVI−VI断面図である。
【図7】(A)は従来技術に係る振動ヘアブラシの一部を示す正面断面図であり、(B)は従来技術に係る振動ヘアブラシによる振動の強度分布図である。
【符号の説明】
【0041】
1 振動ヘアブラシ
2 ボディ
3 支持体
4 ブラシ条体
4A 第一ブラシ条体
4B 第二ブラシ条体
5 掻き条体
7 剛性伝達板
7B 取付部
10 振動子
11 振動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動源と機械的振動源とをブラシのボディの内部空間に内蔵し、ボディの上記内部空間を閉塞する板状の支持体がその板厚方向で弾性撓み可能に上記ボディに取り付けられ、該支持体の内面に上記超音波振動源と機械的振動源とが取り付けられ、上記支持体の外面から複数のブラシ条体が延出して設けられている振動ヘアブラシにおいて、支持体の中央部に超音波振動源が配され、上記支持体と平行な板面をなし支持体の板面に対する上記超音波振動源の領域よりも外方に位置する外周縁を有する剛性伝達板がその板面で上記支持体と一体をなすように該支持体に取り付けられ、該剛性伝達板の一部から延びる取付部に機械的振動源が取り付けられ、上記剛性伝達板の中心軸線が超音波振動源の超音波音軸と平行で、かつ上記超音波振動源の領域内に位置していることを特徴とする振動ヘアブラシ。
【請求項2】
剛性伝達板の中心軸線は超音波振動源の超音波音軸と一致して位置していることとする請求項1に記載の振動ヘアブラシ。
【請求項3】
ブラシ条体は、超音波振動源の範囲に相当する中央範囲に分布する第一ブラシ条体と、該中央範囲よりも外周の範囲に分布する第二ブラシ条体を有し、第二ブラシ条体の素径は、第一ブラシ条体よりも小径に形成されていることとする請求項1又は請求項2に記載の振動ヘアブラシ。
【請求項4】
第二ブラシ条体の分布範囲よりも外周の範囲における支持体の外面から複数の掻き条体が延出して設けられており、上記掻き条体は、該掻き条体の軸線に直角な断面が上記支持体の中心に向け長い形状をなしていることとする請求項3に記載の振動ヘアブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−142100(P2008−142100A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328902(P2006−328902)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(392012401)アセック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】