説明

振動付与機能付き家具

【課題】 利用者への振動伝達効率が良く、しかも、周辺への振動の漏れや、振動に伴う騒音の発生が抑制された、振動付与機能付き家具を提供することを課題とする。
【解決手段】 利用者の体重を受ける面を備えた家具であって、柔軟性を有するシート状部材を張架して体重を受ける面の一部又は全部とし、その張架されたシート状部材の体重を受ける面とは反対側の面に、1又は2以上の振動発生器を取り付けた振動付与機能付き家具を提供することによって上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の体に振動を付与する機能を備えた振動付与機能付き家具に関し、詳細には、利用者の体重を受ける面を備えた家具であって、その体重を受ける面を振動させる機能を備えた振動付与機能付き家具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、利用者にマッサージ効果やストレス解消効果を与える目的で、利用者の体に振動を付与する機能を備えた家具が種々提案されている。例えば、特許文献1には、硬質板体を芯材とし、この芯材を囲むように配置された発泡マットの内部に振動発生器を埋設した寝装具が開示されている。しかしながら、この特許文献1に開示された寝装具においては、発泡マット内に振動発生器が埋設されているため、発生した振動の大部分は発泡マットに吸収されてしまい、利用者への振動の伝達効率が悪い上に、振動発生器が発生する熱が発泡マットの内部にこもるという欠点があった。
【0003】
また、特許文献2や特許文献3においては、クッション材の下側に配置された共振板或いは振動板と称される硬質の板状部材の裏側に振動発生器を取り付けたストレス解消機能付き家具、或いは、ベッドが開示されているけれども、これらのストレス解消機能付き家具及びベッドにおいては、振動発生器によって発生された振動は、共振板或いは振動板を介してクッション材に伝わるとともに、ベッドなどの家具の枠体や、枠体を通じて床などにも伝達され、騒音が発生するという問題点があった。
【特許文献1】実開昭54−68498号公報
【特許文献2】実開平1−122739号公報
【特許文献3】特開平3−73108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような不都合を解決するために為されたもので、利用者への振動伝達効率が良く、しかも、周辺への振動の漏れや、振動に伴う騒音の発生が抑制された、振動付与機能付き家具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、利用者の体重を受ける面を備えた家具であって、柔軟性を有するシート状部材を張架して体重を受ける面の一部又は全部とし、その張架されたシート状部材の体重を受ける面とは反対側の面に、1又は2以上の振動発生器を取り付けた振動付与機能付き家具を提供することによって、上記の課題を解決するものである。本発明において、柔軟性を有するシート状部材は、隙間のない連続したシートであっても良いが、部分的に部材が存在しない場所があるネット状のシートの方が、より柔軟性に富み、かつ軽量化を図ることができるので好ましい。
【0006】
本発明の振動付与機能付き家具は、好適には、ベッド及び/又はその付属品であり、シート状部材を張架した体重を受ける面は、ベッドの寝床面、マットレスの寝床面、又は、枕においては頭を載せる面である。本発明においては、ベッドとしては、脚付きのベッドであっても、脚なしで直接に床等の上に載置されるベッドであっても良い。本発明でいうベッドの附属品としてのマットレスとは、主として、ベッドの架台上に載置され、利用者に寝床面を提供するマットレスのことをいい、場合によっては、ベッドの架台なしに、床等の上に直接に載置して使用されるものであっても良い。
【0007】
また、本発明の振動付与機能付き家具は、好適には、椅子及び/又はその付属品であり、この場合、シート状部材を張架した体重を受ける面は、椅子の背もたれ面、椅子の座席面、椅子の肘掛け面、フットレストの脚載せ面、又は、ヘッドレストの頭もたせ面である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の振動付与機能付き家具によれば、振動発生器が、張架された柔軟性を有するシート状部材の体重を受ける面とは反対側の面に取り付けられているので、利用者への振動の伝達効率が良い上に、振動発生器によって発生された振動が、柔軟性を有するシート状部材において速やかに減衰するので、家具の枠体や、枠体を通じて周辺の床などに伝わることがなく、騒音の発生や振動の漏れを極めて低く抑えることができるという利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の振動付与機能付き家具を図面を用いて説明するが、本発明が図示のものに限られないことはいうまでもない。
【0010】
図1は、本発明の振動付与機能付き家具がベッドである場合の一例を示す平面図であり、図2は、図1のX−X’断面図である。図1及び図2において、1は振動付与機能付きベッド、2は振動付与機能付きベッド1の枠体、3は枠体2に張架されたシート状部材である。図示の例においては、シート状部材3は、固定ピン4、4、4・・・によって、その端部を枠体2に固定することによって、枠体2に張架されている。本発明でいう張架とは、張力を与えた状態で、かけ渡すことをいい、シート状部材3が、張力を付与された状態で、枠体2間に張り渡されていることを意味している。シート状部材3を枠体2に張架する手段としては、図示の固定ピン4、4、4・・・に限られず、シート状部材3を枠体2に張架することができる限り、どのような固定手段を用いても良い。シート状部材3の端部に補強部材を取り付けたり、適宜のネジ機構を用いて、張架されるシート状部材3の張力を可調整とすることも適宜可能である。
【0011】
シート状部材3としては、剛体ではなく、柔軟性を有している材料が用いられる。用いる材料としては、シート状部材が枠体2に張架された状態で、振動膜として機能することができ、かつ、利用者の体重を支えることができる程度の強度を備えたものであれば、どのような材料を用いても良いが、その上に利用者の体重が掛かったときに、それほど下方に沈みこむことがないように、伸縮性は小さい方が良い。また、耐久性は大きい方が良い。通常は、天然繊維や合成繊維で構成される織布、三軸織物、四軸織物に代表される二次元多軸織物、不織布、高分子ポリマーからなるシート、或いは、天然繊維、合成繊維、高分子ポリマーなどで構成されるネット状のシート、さらには、これらのシート状部材とゴムやエラストマーなどの薄層とを積層した複合シートなどをシート状部材として用いることができる。特に、ネット状のシートを用いる場合には、シート状部材をより柔軟性に富んだものとすることができる上に、シート状部材を軽量化することができ、有利である。なお、図示の例では、シート状部材3は、1枚のシート状部材から構成されているけれども、適宜分割して、複数枚のシート状部材3を適宜水平方向に並べて用いても良い。
【0012】
5a、5b、5cは、シート状部材3の裏側、すなわち、利用者の体重を受ける側とは反対側に取り付けられた振動発生器であり、6a、6b、6cはその接続線、7はコントローラーである。コントローラー7は、図示しない適宜の電源から電力の供給を受け、振動発生器5a、5b、5cを、所定のプログラムに従って、或いは、利用者の指示に従って、駆動することができる。振動発生器5a、5b、5cは、コントローラー7のコントロール下で振動を発生することができるものであれば、どのような機構で振動を発生するものであっても良い。また、図示の例では、振動付与機能付きベッド1には、3個の振動発生器5a、5b、5cが取り付けられているけれども、振動発生器の数は図示のものに限られない。振動発生器の数は、用いる振動発生器の大きさや能力によって適宜変更可能であり、1個であっても、2個であっても良く、4個以上であっても良い。
【0013】
図示の例においては、振動発生器5a、5b、5cは、シート状部材3の裏側に直接取り付けられており、発生した振動を直接、シート状部材3に伝達することができるようになっている。用いる振動発生器のタイプにも依るけれども、シート状部材3に伝達される振動の伝達範囲を拡大したい場合、或いは、振動の伝達を一定領域内で均一化したい場合には、剛性を備えた適宜の振動拡散板を、振動発生器5a、5b、5cとシート状部材3との間に介在させることができる。振動発生器5a、5b、5cによって発生された振動がシート状部材3に伝達される限り、振動発生器5a、5b、5cをシート状部材3に取り付ける方法には特段の制限はなく、用いる振動発生器5a、5b、5cの構造や、用いるシート状部材3の材質等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、接着、融着、ネジ又はビス等を用いた機械的な固着などによって、振動発生器5a、5b、5cをシート状部材3に取り付けることができる。利用者の使用感を損なわないという観点からは、振動発生器5a、5b、5cをシート状部材3に取り付けるための、例えばネジやビスなどの部材が、シート状部材3の表側、すなわち、利用者の体重を受ける側に現れないことが望ましいけれども、現れる場合には、その部分を、例えば、シート状部材3と同じ材質のシート状部材によって覆うようにしても良い。
【0014】
8、8は、振動付与機能付きベッド1の脚である。しかしながら、本発明の振動付与機能付きベッド1は、必ずしも脚付きのものに限られる訳ではない。脚8、8はなくても良く、枠体2を床等の上に直接載置する形式のものであっても良い。また、シート状部材3の上に、振動の伝達の妨げにならない範囲で、適宜のクッション材やふとん、敷物等を載置しても良いことは勿論である。
【0015】
図3は、図1及び図2に示した振動付与機能付きベッド1の振動状態を示す模式図である。コントローラー7を介して振動発生器5cを駆動すると、振動発生器5cは振動を発生し、その振動は、振動発生器5cが取り付けられているシート状部材3に伝達される。シート状部材3は、上述したとおり、枠体2に張架されているので、膜として機能し、図中矢印で示す上下方向に振動する。なお、図中、矢印の大きさは振動の大きさを示すものではあるけれども、理解し易くするために誇張されている。
【0016】
図3に示すとおり、振動発生器5cによって発生された振動は、シート状部材3に伝達され、シート状部材3は、振動発生器5cの直上の部分においては大きく振動するけれども、シート状部材3が柔軟性を有しているため、その振動は、シート状部材3を伝搬中に速やかに減衰し、枠体2にまで伝達されることがない。このように、本発明の振動付与機能付きベッド1においては、振動発生器5a、5b、5cが取り付けられている部分ではシート状部材3の振動は大きく、振動発生器5a、5b、5cからシート状部材3への振動の伝達、さらにはこのシート状部材と直接又は間接に接する利用者への振動の伝達は効率良く行われる一方で、シート状部材3に伝達された振動は、シート状部材3において速やかに減衰し、枠体2にまで伝達されることがないので、枠体2は振動せず、周囲への振動の漏れや、振動に伴う騒音の発生が極めて低く抑えられるという優れた効果が得られる。
【0017】
図4は、振動発生器5cとシート状部材3との間に振動拡散板9を介在させた場合を示している。図示のとおり、振動拡散板9が存在することによって、振動発生器5cからシート状部材3に伝達される振動は、振動拡散板9が取り付けられている範囲内でほぼ均一に大きなものとなり、シート状部材3が大きく振動する領域は拡大されることになる。なお、振動拡散板9が取り付けられている範囲を外れると、シート状部材3の振動が速やかに減衰することは図3の場合と同様である。
【0018】
図5は、本発明の振動付与機能付き家具がベッドである場合の他の例を示す平面図である。図5の例において、10、10は振動付与機能付きベッド1の頭の部分及び足下の部分に配置されたマットレスであり、シート状部材3は、振動付与機能付きベッド1の寝床面の全体ではなく、中央の一部を形成していることになる。このように、本発明の振動付与機能付き家具においては、張架されるシート状部材は、利用者の体重を受ける面の必ずしも全部を形成する必要はなく、利用者の体重を受ける面の一部だけを形成するようにしても良い。これにより、振動を付与したい利用者の体の部分に対応した部分にのみ、シート状部材3を配置することができる。
【0019】
図6は、本発明の振動付与機能付き家具が椅子及びその付属品である場合の例を示す側面図である。図6において、11は本発明の振動付与機能付き椅子であり、通常は、背もたれ部12、座席部13、及び肘掛け部14から構成されており、さらに付属品として、フットレスト15、及びヘッドレスト16を備えている。背もたれ部12の背もたれ面、座席部13の座席面、肘掛け部14の肘掛け面、フットレスト15の脚載せ面、及びヘッドレスト16の頭もたせ面のそれぞれには、シート状部材3が張架されており、シート状部材3の利用者の体重が掛かる面とは反対側の面には、それぞれ、振動発生器5d、5e、5f、5g、5hが取り付けられている。これらのシート状部材3の上に、振動の伝達の妨げにならない範囲で、適宜のクッション材やふとん、敷物等を載置しても良いことは、振動付与機能付きベッド1の場合と同様である。
【0020】
このように構成された本発明の振動付与機能付き椅子11及びその付属品によれば、上述した振動付与機能付きベッド1の場合と同様に、利用者の体に効率良く振動を付与することができるとともに、その振動が振動付与機能付き椅子11及びその付属品の枠体に伝達されることがないので、周囲への振動の漏れや、振動に伴う騒音の発生を極めて低く抑えることができるという利点が得られるものである。なお、図示の例では、肘掛け椅子タイプの振動付与機能付き椅子11を示したけれども、本発明の振動付与機能付き椅子11は、ソファタイプの椅子であっても、肘掛けがないタイプの椅子であっても、また、背もたれ部のない椅子であっても良いことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上説明したように、本発明の振動付与機能付き家具によれば、利用者の体に効率良く振動を付与することができるとともに、周囲への振動の漏れや、振動に伴う騒音の発生を極めて低く抑えることができるので、より少ないエネルギーで、かつ快適に、必要な振動を利用者に付与することができ、その利便性には多大のものがある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の振動付与機能付きベッドの一例を示す平面図である。
【図2】図1のX−X’断面図である。
【図3】本発明の振動付与機能付きベッドの振動状態を示す模式図である。
【図4】振動拡散板を用いた場合の振動状態を示す模式図である。
【図5】本発明の振動付与機能付きベッドの他の例を示す平面図である。
【図6】本発明の振動付与機能付き椅子の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 振動付与機能付きベッド
2 枠体
3 シート状部材
4 固定ピン
5a、5b・・・ 振動発生器
6a、6b・・・ 接続線
7 コントローラー
8 脚
9 振動拡散板
10 マットレス
11 振動付与機能付き椅子
12 背もたれ部
13 座席部
14 肘掛け部
15 フットレスト
16 ヘッドレスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の体重を受ける面を備えた家具であって、柔軟性を有するシート状部材を張架して体重を受ける面の一部又は全部とし、その張架されたシート状部材の体重を受ける面とは反対側の面に、1又は2以上の振動発生器を取り付けた振動付与機能付き家具。
【請求項2】
シート状部材がネット状のシートである請求項1記載の振動付与機能付き家具。
【請求項3】
振動付与機能付き家具がベッド及び/又はその付属品であり、柔軟性を有するシート状部材を張架した体重を受ける面がベッドの寝床面、マットレスの寝床面、又は、枕の頭を載せる面である、請求項1又は2記載の振動付与機能付き家具。
【請求項4】
振動付与機能付き家具が椅子及び/又はその付属品であり、柔軟性を有するシート状部材を張架した体重を受ける面が椅子の背もたれ面、椅子の座席面、椅子の肘掛け面、フットレストの脚載せ面、又は、ヘッドレストの頭もたせ面である請求項1又は2記載の振動付与機能付き家具。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate